説明

撮影装置

【課題】本発明は、レリーズボタンを備え、そのレリーズボタンの押下により静止画撮影を行なう、例えばデジタルカメラやカメラ内蔵の携帯電話機等の撮影装置に関し、シャッタチャンスを逃がすおそれを低減させる機能を備える。
【解決手段】スルー画を第1のフレームレートで生成して表示する第1のスルー画生成モードと、スルー画を第1のフレームレートよりも高速な第2のフレームレートで生成して表示する第2のスルー画生成モードとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レリーズボタンを備え、そのレリーズボタンの押下により静止画撮影を行なう、例えばデジタルカメラやカメラ内蔵の携帯電話機等の撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従前の写真フィルム上に写真撮影を行なうタイプのカメラに代わりCCD撮像素子等の撮像素子上に結像した被写体を表わす画像データを得るデジタルのカメラが広く普及してきており、さらに、そのようなタイプのカメラが内蔵された携帯電話機も広く普及してきている。ここでは、それらを総称あるいは代表させて、デジタルカメラという名称で説明を続ける。
【0003】
このようなデジタルカメラでの問題点の1つは、撮影者による撮影操作から実際に撮影が行なわれるまでの時間遅れである。現在市販されているデジタルカメラの多くはこの時間遅れが大きく、シャッタチャンスを逃がすことも多い。
【0004】
特許文献1,2には、この時間遅れを短縮化するために、動画撮影から静止画撮影に移行したときに静止画撮影のための測光(AE)を新たに行なうことを省略して動画撮影の測光結果を採用して静止画撮影の露出制御を行なうことが記載されている。
【特許文献1】特公平2−30633号公報
【特許文献2】特公平2−30634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上掲の特許文献1,2に開示された提案は、動画撮影から静止画撮影に切り替えた時点から実際に静止画撮影を行なうことができるようになる迄の時間を短縮しようとするものであり、これは例えば半押しと全押しとの2段押下型のレリーズボタンを備え、半押しをする前に表示用の動画であるスルー画を表示していて半押しにより静止画撮影モードに切り替えたときの、半押しのタイミングから静止画撮影準備が完了して全押しすれば実際の静止画撮影を行なうシーケンスを実行することができるようになる迄の時間を短縮しようとするものである。
【0006】
この時間を短縮することも重要であるが、シャッタチャンスを逃がさないという観点からはもう1つの解決すべき重大な時間遅れが存在する。すなわち、半押し後静止画撮影準備が完了した後に再度スルー画を表示するカメラが一般的であるが、半押しから全押しまでの時間は十分な時間が存在し、半押し後静止画撮影準備が完了した後に再度スルー画が表示されそのスルー画を見ながら画角を確認して全押しする場合に、スルー画を見ながら最終的に決定した画角で全押ししたつもりが、その決定した画角の中心に写っていた動きのある被写体が実際に撮影された静止画上では画像の隅に写っていたり最悪の場合はその画像から外れてしまっているという現象が生じる。これは、撮像素子でスルー画用の撮影が行なわれそのスルー画が表示される迄に時間遅れがあり、現在表示されているスルー画は既に過去のものであるという点に原因がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、シャッタチャンスを逃がすおそれを低減させた機能を備えた撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の撮影装置は、レリーズボタンを備えレリーズボタンの押下により静止画撮影を行なう撮影装置において、
このレリーズボタンは、半押しと全押しとの2段押下型のレリーズボタンであって、
この撮影装置が、
半押し状態にあって、かつ、静止画用の測光および測距終了後に、表示用の動画であるスルー画を生成して表示するスルー画生成手段と、
全押しに応じて静止画撮影を行なう撮影手段とを備え、
上記スルー画生成手段が、スルー画を第1のフレームレートで生成して表示する第1のスルー画生成モードと、スルー画を第1のフレームレートよりも高速な第2のフレームレートで生成して表示する第2のスルー画生成モードとを有することを特徴とする。
【0009】
ここで、上記第1のスルー画生成モードは、50ms/フレームのフレームレートでスルー画を生成するモードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の撮影装置によれば、スルー画を高速なフレームレートで生成して表示する第2のスルー画生成モードを有するため、この第2のスルー画生成モードでは、時間遅れの小さいスルー画が表示され、スルー画で確認した画角とのずれの少ない画角の静止画を得ることができる。
【0011】
ここで、第1のスルー画生成モードが50ms/フレームのフレームレートでスルー画を生成するモードである場合、50Hz又は60Hzの商用電源で点灯している灯かりの下での撮影においてフリッカが防止され、シーンに応じてフリッカ防止を優先するかあるいはシャッタチャンスを優先するかを切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラを前面斜め上から見た外観斜視図である。
【0014】
図1に示すデジタルカメラ10の前面中央部には、光学ズームレンズを含む撮影レンズ11を内部に備えたズーム鏡胴12が備えられている。また、このデジタルカメラ10の前面上部には、撮影に同期してフラッシュ光を発するフラッシュ発光装置13と、光学式ファインダ対物窓14とが備えられている。
【0015】
また、このデジタルカメラ10の前面左側には、スライド式の電源スイッチ15が備えられている。
【0016】
さらに、このデジタルカメラ10の上面には、レリーズボタン16が備えられている。
【0017】
図2は、図1に示すデジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。
【0018】
このデジタルカメラ10には、前述した撮影レンズ11を構成するズームレンズ21およびフォーカスレンズ22と、絞り径を多段階に調節可能なアイリス23と、撮影レンズ(ズームレンズ21およびフォーカスレンズ22)およびアイリス23を経由して結像された被写体像を受光してアナログ信号を生成するCCD撮像素子(以下、「CCD」と称する)24と、撮影レンズおよびアイリス23を経由して入射してきた被写体光の、CCD24への照射時間を制限する機械式シャッタ25が備えられている。
【0019】
また、このデジタルカメラ10には、CCD24での電子シャッタのタイミングや画像信号の読出し等のタイミングを制御するタイミングジェネレータとCCD24から読み出したアナログ信号をデジタルの画像信号を生成するA/D変換回路とからなる読出回路26と、その読出回路26からのデジタルの画像信号をバスライン50に伝達する画像入力コントローラ27と、バスライン50を介して入力されたデジタルの画像信号を輝度(Y)と色(C)とで表わされるYC信号に変換する画像信号処理回路28とが備えられている。
【0020】
さらに、このデジタルカメラ10には、バスライン50を介して入力されたYC信号を圧縮処理する圧縮処理回路29と、バスライン50を介して入力されたYC信号をNTSC(National TV Standards Committee)信号に変換するビデオエンコーダ30が備えられている。ビデオエンコーダ30から出力されたNTSC信号は、液晶モニタ(以下、「LCD」と称する)31に供給されてそのLCD31に画像が表示される。
【0021】
また、デジタルカメラ10には、このデジタルカメラ10全体の制御を行なうCPU32と、ズームレンズ21、アイリス23、フォーカスレンズ22、およびメカニカルシャッタ25をそれぞれ駆動する各モータドライバ33〜36と、図1に示すレリーズボタン16の押下によりオンとなる2つのスイッチS1,S2が備えられている。これら2つのスイッチS1,S2のうちの一方のスイッチS1は、レリーズボタン16が半押しされたときにオンとなるスイッチであり、もう一方のスイッチS2はレリーズボタン16が全押しされたときにオンとなるスイッチである。そこで、以下では、レリーズボタン16が半押しされている状態を「S1状態」、全押しされた後の状態を「S2状態」と称することがある。またデジタルカメラ10の電源がオンとなっており、かつ撮影モードとなっているが未だレリーズボタン16を押してない状態を「S0状態」と称することがある。
【0022】
さらに、このデジタルカメラ10には、各種時間を計測するためのタイマ37、デジタルの画像信号に基づくコントラスト検知により合焦位置を検出するAF検出回路38、デジタルの画像信号に基づいて被写界輝度およびホワイトバランスを検出するAE&AWB検出回路39、デジタルの画像信号が一時的に記憶されるメモリ(SDRAM)40、圧縮処理回路29で圧縮された後の画像信号を可搬型記録媒体である記録メディア100に記録するためのメディアコントローラ41が備えられている。
【0023】
さらに、このデジタルカメラ10には、レリーズボタン16の押下に応じて撮影を行なう撮影モードと記録メディア100に記録されている撮影済の画像を記録メディア100から読み出して液晶モニタ31に表示する再生モードとを切り替えたり、さらに撮影モードの中の各種モードや感度の切り替え、ズームレンズの繰出し等を行なうための各種スイッチからなるスイッチ群42、図1に示すも電源スイッチ15、その電源スイッチ15のオン/オフにより制御され各部に電力を供給する電源回路43、電源回路43へ電力を供給する電力源としてのバッテリ44、図2にも示す、撮影に同期して閃光を発光するフラッシュ発光装置13が備えられている。
【0024】
図3は、図1、図2に示すデジタルカメラの一般的な撮影シーケンスを示す図である。
【0025】
電源がオン(ON)されると、撮影レンズが繰り出されるとともにLCD31(図2参照)がオンとなり、その後、そのLCD31上に、表示用の動画であるスルー画が表示される。その後、レリーズボタンが半押しされてS1状態に移行すると、静止画用の露光を決めるための測光(AE)および合焦位置の検出(AF)が行なわれ、それらAEやAFが終了すると再びスルー画表示が行なわれる。その状態で今度はレリーズボタンが全押しされる(S2状態となる)と、図2に示すブロック図中の読出回路26による、CCD24に供給するタイミングクロックを静止画用のタイミングクロックに変更するなどの露光準備が行なわれ、露光準備の終了直後に露光が行なわれ、その後CCD24から画像信号が読み出され、読出し終了後に、CCD24に供給するタイミングクロックをスルー画用のタイミングクロックに変更するなどのスルー画表示のための準備が行なわれ、その後、次の撮影のためのレリーズボタンの押下が可能となる。
【0026】
ここで、一般的な撮影方法では、ユーザは撮影をしようとしてレリーズボタンを半押しし(S1状態)、その状態のままスルー画による撮影シーンを確認し、所望の撮影シーンが得られた瞬間にレリーズボタンを全押しする。このときスルー画で確認した撮影シーンは既に過去のものであるので、実際に得られる静止画が所望の撮影シーンとはずれたシーンになってしまうおそれがある。そこで、本実施形態のデジタルカメラではクイック撮影モードが用意されている。
【0027】
図4は、クイック撮影モードオフ時の、S1押下後のスルー画シーケンスを示す図、図5は、クイック撮影モードオン時の、S1押下後のスルー画シーケンスを示す図である。
【0028】
図4(A)の(a)は垂直同期信号を示しており、隣接するパルスどうしの間隔(ここでは50ms)が1フレームあたりの時間であり、したがって、フレームレートは20フレーム/秒となる。
【0029】
その垂直同期信号に同期して露光を行ない(b)、CCDからの読出しを行ない(c)、スルー画を表示出力する(d)。このスルー画の表示出力にあたっては、ここでは図4(B)に示すように画像バッファメモリを3フレーム分用意しておき、それら3フレーム分の画像バッファメモリを使って、1フレームごとのスルー画用画像信号の格納と読出しが循環的に行なわれる。
【0030】
この図4に示す、クイック撮影モードオフ時のS1押下後のスルー画シーケンスの場合、1フレームあたりの時間は50msであり、50Hzの商用電源あるいは60Hzの商用電源のいずれで点灯しているランプあるいは蛍光灯下での撮影であっても、そのランプあるいは蛍光灯の発光光量の繰り返し変動によるフリッカがスルー画に現われることが防止されるが、スルー画の表示までの時間遅れは83ms〜100ms程度となる。
【0031】
これに対し、クイック撮影モードオン時の場合、図5(A)に示すように、1フレームあたりの時間は16msに短縮され(フレームレートが60フレーム/秒に高速化され)、その結果、表示スルー画の時間遅れは50ms〜66ms程度に短縮され、その分シャッタチャンスを逃がすおそれが低減する。
【0032】
図6は、クイック撮影モードオフ時のS1押下後のスルー画のプログラム線図、図7は、クイック撮影モードオン時のS1押下後のスルー画のプログラム線図である。
【0033】
図6に示すクイック撮影モードオフ時では、撮影絞りを選択するとその選択された絞りのまま高速シャッタ側からTV4.5までは電子シャッタが追随する。ただし、図4に示すように1フレームあたりの時間は50msであるためTV4.5よりも長時間露出は行ない得ないため、視野界がさらに暗く、TV4.5よりも遅いシャッタ秒時が欲しい時は、シャッタ秒時自体はTV4.5とし、図6に破線で示す光量が不足する領域では、感度を上げる(CCDから読み出した画像信号を増幅するアンプゲインを上げる)ことによって対処し、EV7.5まで適正な明るさのスルー画が表示される。
【0034】
これに対し、図7に示すクイック撮影モードオン時は、1フレームあたりの時間が16msと短かい(フレームレートが60フレーム/秒と高速である)ため、TV6までしかシャッタ秒時(露出時間)を確保できず、したがってTV6よりも遅いシャッタ秒時が欲しいときはシャッタ秒時自体はTV6とし、図7に破線で示す、光量が不足する領域では感度を上げる(CCDから読み出した画像信号を増幅するアンプゲインを上げる)ことによって対処し、EV7.5まで適正な明るさのスルー画が表示される。
【0035】
ここで、クイック撮影モードオン時をオフ時と比べると、クイック撮影モードオン時はシャッタチャンスを逃がすおそれが低減されるが、それとの引き換えとしてフリッカ補正は行なわれず、また、アンプゲインに頼る領域が広がることからアンプゲインを上げることによる、スルー画にノイズが増える可能性がある。
【0036】
ただし、クイック撮影モードは、例えば運動会のように屋外でシャッタチャンスを逃がしたくない場合に使用することが予定されたモードであり、屋外であってフリッカが生じる光源下での撮影ではなく、もともとフリッカは生じないためフリッカ対策は不要であり、また、屋外であって比較的明るいためアンプゲインに頼る場面は少なく、この点も問題は少ない。
【0037】
本実施形態では、以上の観点から、クイック撮影モードを設け、シャッタチャンスを逃がすおそれを低減化している。
【0038】
尚、ここでは図1に示す外観のデジタルカメラについて説明したが、本発明は、「カメラ」としての外観を有する撮影装置のみに適用されるものではなく、例えば携帯電話内蔵のカメラ等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラを前面斜め上から見た外観斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図3】図1、図2に示すデジタルカメラの一般的な撮影シーケンスを示す図である。
【図4】クイック撮影モードオフ時の、S1押下後のスルー画シーケンスを示す図である。
【図5】クイック撮影モードオン時の、S1押下後のスルー画シーケンスを示す図である。
【図6】クイック撮影モードオフ時のS1押下後のスルー画のプログラム線図である。
【図7】クイック撮影モードオン時のS1押下後のスルー画のプログラム線図である。
【符号の説明】
【0040】
10 デジタルカメラ
11 撮影レンズ
12 ズーム鏡胴
13 フラッシュ発光装置
14 光学式ファインダ対物窓
15 電源スイッチ
16 シャッタボタン
21 ズームレンズ
22 フォーカスレンズ
23 アイリス
24 CCD
25 機械式シャッタ
26 読出回路
27 画像入力コントローラ
28 画像信号処理回路
29 圧縮処理回路
30 ビデオエンコーダ
31 LCD
32 CPU
33,34,35,36 モータドライバ
37 タイマ
38 AF検出回路
39 検出回路
40 メモリ(SDRAM)
41 メディアコントローラ
42 スイッチ群
50 バス
100 記録メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーズボタンを備え該レリーズボタンの押下により静止画撮影を行なう撮影装置において、
前記レリーズボタンが半押しと全押しとの2段押下型のレリーズボタンであって、
この撮影装置が、
半押し状態にあって、かつ、静止画用の測光および測距終了後に、表示用の動画であるスルー画を生成して表示するスルー画生成手段と、
全押しに応じて静止画撮影を行なう撮影手段とを備え、
前記スルー画生成手段が、スルー画を第1のフレームレートで生成して表示する第1のスルー画生成モードと、スルー画を該第1のフレームレートよりも高速な第2のフレームレートで生成して表示する第2のスルー画生成モードとを有することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記第1のスルー画生成モードは、50ms/フレームのフレームレートでスルー画を生成するモードであることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−217505(P2006−217505A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30577(P2005−30577)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】