説明

撮影装置

【課題】適切に保護機能が働き、誤判定による撮影中断の問題がなくなり、さらに、保護機能をオフで使いつづけることによる危険状態での使用をなくすことができる撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影装置は、自身の落下または振れをレベル検出する加速度検出センサ114を備える。また、加速度検出センサ114の出力信号を判定する判定手段(CPU105、113)と、判定手段の判定結果によって記録メディアの記録動作を停止する保護制御手段(CPU105、113)とを備える。また、撮影モードまたは電源モードに応じて加速度検出センサ114における複数の検出レベルを設定し、判定手段または保護制御手段の動作を制御する動作制御手段(CPU105、113)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置に関し、特に、ハードディスクメディアに撮影した画像情報を記録する、所謂HDDデジタルビデオカメラ装置またはデジタルカメラ装置のメディア保護動作技術に特徴のある撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルビデオカメラでは、記録メディアとして磁気テープが広く利用されている。これに対して近年、小径(8cm)DVDディスクを使ったビデオカメラや、小型ハードディスクドライブ(HDD)を内蔵したビデオカメラなどが製品化されており、徐々にテープメディアに対してのシェアを伸ばす傾向にある。
【0003】
中でも小型ハードディスクドライブを内蔵したビデオカメラは、DVDディスクに比べて莫大な記録容量を背景に、撮影前に記録メディアを購入したり、何枚ものディスクを持って撮影に出る必要がないことから、人気を得てきている。
【0004】
但し、HDDユニットは、ユーザーが簡単に交換することができないこと、現状でも30GBもの記録容量があることなどにより、HDDユニットが故障したり、再生困難な状況になると、全ての記録済みのコンテンツが消失する虞がある。そのため、撮影装置の落下やぶつけることによるショックからHDDユニットを保護するための機能が内蔵されている。
【0005】
この保護機能は、主に加速度センサを内蔵することで、落下を迅速に検出して、HDDの書き込み動作と通電を停止する動作を行うものである。しかし、時としてユーザーが被写体を追ったり、構図を取る撮影動作で誤動作をしたりする場合もあり、撮影の邪魔になる場合は、メニューで検出動作をオフにすることも可能である。
【0006】
カメラの落下/振動に対しての保護機能の公知技術として、以下のものがある。
【0007】
特許文献1には、振動検出手段により所定レベル以上の振動が検出された場合に、振動検出を報知し、撮像された画像データを記憶手段に記憶するか否かを指定する技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、撮影者により把持された際に加えられる圧力を検出して落下判定して撮影者毎に落下判定に用いる基準値を設定する制御を行い、撮像装置が固定部材により固定されている場合には、その制御を中止する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−174027号公報
【特許文献2】特開2004−117845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術は、落下や振動からHDDドライブを保護するための基本機能は実現できる。しかし、その保護機能レベルが、ユーザーのカメラ操作に対して適切なレベルに設定されているかという観点、また、その保護機能が適切な時間で働くのかという観点での提案にはなっておらず、一律的な保護動作に留まっている。
【0010】
このため、ユーザーのカメラ操作が、落下や振動の検出感度に達すると、実際に落下したわけではなくても、誤検出となり保護機能が働き、撮影は中断されてしまう問題が生ずる。これが気になるユーザーは、保護機能をメニュー操作でオフしてしまうことになり、そのまま保護機能が働かない状態で使いつづける問題も生ずる。
【0011】
本発明の目的は、適切に保護機能が働き、誤判定による撮影中断の問題がなくなり、さらに、保護機能をオフで使いつづけることによる危険状態での使用をなくすことができる撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の撮影装置は、撮像手段で撮像した画像データを符号化して記録メディアに記録する撮影装置において、自身の落下または振れをレベル検出するレベル検出手段と、前記レベル検出手段の出力信号を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果によって前記記録メディアの記録動作を停止する保護制御手段と、撮影モードまたは電源モードに応じて前記レベル検出手段における複数の検出レベルを設定し、前記判定手段または前記保護制御手段の動作を制御する動作制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の撮影装置は、自身の落下または振れをレベル検出するレベル検出手段と、レベル検出手段の出力信号を判定する判定手段と、判定手段の判定結果によって記録メディアの記録動作を停止する保護制御手段とを備える。また、撮影モードまたは電源モードに応じてレベル検出手段における複数の検出レベルを設定し、判定手段または保護制御手段の動作を制御する動作制御手段を備える。
【0014】
このように、撮影装置の落下または振れのレベルを各モードに応じて検出し、その結果により、記録メディアの記録動作を停止するよう保護する。従って、適切に保護機能が働き、誤判定による撮影中断の問題がなくなり、さらに、保護機能をオフで使いつづけることによる危険状態での使用をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る撮影装置のシステムブロック図である。
【0017】
図1において、撮影装置は、カメラ・レコーダ処理部100とHDDドライブユニット部110とを備えている。
【0018】
カメラ・レコーダ処理部100は、撮像手段としてのカメラ回路101、撮像画像データを符号化圧縮して記録データにエンコード、または再生時にデコードするCODEC102、モニター手段であるLCDパネル103を備える。
【0019】
また、カメラ・レコーダ処理部100は、記録データをHDDドライブユニット部110に転送するATAインターフェース回路104、CPU105、撮影モードダイヤルスイッチ106、電源モードダイヤルスイッチ107を備える。
【0020】
HDDドライブユニット部110は、記録データを受けるATAインターフェース回路111、HDDにデータを記録再生するHDD駆動回路112、CPU113、装置の落下を検出するための加速度検出センサ114を備える。
【0021】
ATAインターフェース回路104と111はATA通信データ121が送受信される。CPU105からCPU113に、装置の動作状態に応じて保護検出レベルを制御するレベル制御信号122が出力される。CPU113からHDD駆動回路112に、保護動作を制御する動作制御信号123が出力される。加速度検出センサ114からはセンサ出力信号124がCPU113に出力される。
【0022】
以下、上記構成の撮影装置の基本動作について説明する。
【0023】
CPU105は、電源モードダイヤルスイッチ106と撮影モードダイヤルスイッチ107の設定に基づいて装置全体の動作制御を行いながら、落下検出のレベル制御信号122に、D/A変換して動作モードに適したアナログレベル信号を出力している。
【0024】
CPU113は、このレベル制御信号122を受けて、A/D変換して定まった判定用閾値のレベルデータとして保持し、これとセンサ出力信号113を比較判定する。そして、加速度検出センサ114の出力信号124が閾値よりも大きいと判断した時には、直ちに動作制御信号123を出力し、HDD駆動回路112の動作を停止し、通電を停止する。
【0025】
これによってHDDドライブユニット部110では、ピックアップがディスクから離れショックが起こっても、ディスクにピックアップが衝突することがないように動作する。
【0026】
その後、保護機能が動作したことはCPU105にも伝達され、カメラ・レコーダ処理部100で、記録動作が中断されたことに対しての修復動作処理が開始され、ユーザーにはLCDパネル103で記録中断のメッセージ表示がなされる。ユーザーは、修復動作処理が完了後、改めて撮影操作が可能となる。
【0027】
図2は、図1における加速度検出センサによる加速度検出の動作モード表を示す図である。
【0028】
図2は、撮影装置が落下する際の、HDDドライブユニット部110を保護するための加速度検出レベル(保護レベル)が、モードによってどのように設定されているかを示している。
【0029】
図2において、電源モードダイヤルスイッチ107の設定内容を示す列201、撮影モードダイヤルスイッチ106の設定内容を示す列202、メニュー設定で保護動作のオンとオフを設定できるかどうかの内容を示す列203が示される。また、保護検出レベルの検出感度を示す列204が示される。
【0030】
同様に、対応表の列内容を説明している行205、再生モードを示す行206、電源オフ状態を示す行207、カメラ撮影モードの中で撮影モードが6種類設定可能であることから各設定に応じた内容208が示される。各撮影モードのプログラムAE動作は、公知の撮像技術であるので詳細説明は省略する。
【0031】
ここで、加速度検出感度を複数設定する意義について説明する。
【0032】
撮影モード設定は、全対応が必要なオートモードを除いて、スポーツやサーフアンドスノーは、屋外で比較的大きな動きや速い動きを伴う被写体を撮影するモードであることから、カメラの移動や構図とりのための振れなどは比較的大きい場合が多い。このため、加速度検出感度は低めに設定し、オン状態のままでも誤検出することのないように検出閾値を高く選定している。
【0033】
一方、ポートレートやスポットライト、ナイトモードでは、被写体の動きは小さく、シャッター速度が比較的遅い撮影となるため、ユーザーがカメラを早く振る可能性は少ないことになる。このため、検出感度は比較的に高く設定し、保護力を向上させることで、よりHDDメディアにとって安全な撮影が可能となる。
【0034】
以上説明した様に、撮影モードダイヤルの設定によって落下検出の閾値が制御されることにより、ユーザーがその撮影時に行うカメラ操作に適した保護動作が可能となり、保護機能をオフ設定することによるその後のトラブルから回避される効果が得られる。
【0035】
また、行206の再生モードでは、撮影と異なりユーザーはモニター画面に注目している状態であり、装置を振る必要がないことから落下検出の感度は「高」と設定することができる。これにより少しの落下であってもメディア保護機能が働き、撮影装置は、より安全に保護される。
【0036】
列203は、落下保護検出動作の撮影モード時にメニュー画面を開いて、オン/オフをメニュー設定で選択できる内容と動作を示している。「常にオン」は、常時動作を意味しメニュー設定に関わらず、動作オンである。「オン/オフ」は、メニュー選択の設定状態が反映された動作である。「(オンセット)」は、そのモードに入ったことによりメニュー設定がオン設定に初期化される動作を意味する。
【0037】
本実施の形態では、撮影モードダイヤルスイッチ106と電源モードダイヤルスイッチ107の各設定により、加速度検出のオン、オフ、加速度検出感度を図2に示すように設定する。
【0038】
このことにより、適時、撮影装置の使用状況に応じた保護動作(加速度検出のオン、オフ)と保護レベル(加速度検出感度)が選択され、HDDドライブユニット部110の保護機能を制御することができる。
【0039】
また、各ダイヤル操作により、メニューで保護機能を「オフ」設定して撮影した後でも、電源オフモードを経由した後は、自動的に保護機能が「オン」に設定されることにより、保護機能のメニュー設定に戻すことも可能となる。
【0040】
図3は、図1における撮影モードダイヤルスイッチを示す図である。
【0041】
図3において、撮影モードダイヤルスイッチ106は、撮影モード操作ダイヤル301、全自動モードポジション302、スポーツモードポジション303、ポートレートポジション304、サーフアンドスノーポジション305を有する。また、同様に、撮影モードダイヤルスイッチ106は、スポットライトポジション306、ナイトポジション307を有する。
【0042】
図4は、図1における電源モードダイヤルスイッチを示す図である。
【0043】
図4において、電源モードダイヤルスイッチ107は、電源モード操作ダイヤル401、カメラモードポジション402、メイン電源オフポジション403、再生モードポジション404を有する。
【0044】
図5は、図1におけるLCDパネルのメニュー設定画面を示す図である。
【0045】
具体的には、図5は、カメラメニュー設定の下の階層であるシステム設定サブメニューの設定項目一覧を表示中のLCD表示画面を示す。
【0046】
設定項目「落下検出」は、動作の「オン」と「オフ」が選択されEEPROMに情報が保持される。図5では、ユーザーが動作オフを選択した場合を示している。この設定に応じて、装置の動作モードに対応した適切な前述の落下保護動作が実行される。
【0047】
以上説明したように、撮影装置の撮影モードや電源モードにより、記録メディアを落下のショックから守るための保護機能の検出動作を制御することで、ユーザーの操作に適した保護機能を実現することが可能となる。
【0048】
上記実施の形態は、装置の設定モードに対応して、加速度検出レベルまたは加速度検出時間を予め情報として装置内に保持し所定の検出制御を施した例である。ここで、ユーザーが加速度検出レベルまたは加速度検出時間をモード別に選択し設定する不図示の手段をそなえることも可能である。これによれば、よりユーザーの狙ったレベルでの保護機能を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮影装置のシステムブロック図である。
【図2】図1における加速度検出センサによる加速度検出の動作モード表を示す図である。
【図3】図1における撮影モードダイヤルスイッチを示す図である。
【図4】図1における電源モードダイヤルスイッチを示す図である。
【図5】図1におけるLCDパネルのメニュー設定画面を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100 カメラ・レコーダ処理部
101 カメラ回路
102 CODEC
103 LCDパネル
104 ATAインターフェース回路
105 CPU(判定手段、保護制御手段、動作制御手段)
106 撮影モードダイヤルスイッチ
107 電源モードダイヤルスイッチ
110 HDDドライブユニット部
111 ATAインターフェース回路
112 HDDドライブユニット部
113 CPU(判定手段、保護制御手段、動作制御手段)
114 加速度検出センサ(レベル検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段で撮像した画像データを符号化して記録メディアに記録する撮影装置において、
自身の落下または振れをレベル検出するレベル検出手段と、
前記レベル検出手段の出力信号を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果によって前記記録メディアの記録動作を停止する保護制御手段と、
撮影モードまたは電源モードに応じて前記レベル検出手段における複数の検出レベルを設定し、前記判定手段または前記保護制御手段の動作を制御する動作制御手段と、
を備えることを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記レベル検出手段の出力信号を所定レベルと比較し、または、前記出力信号の継続時間を所定レベルと比較して判定することを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記記録メディアは、ハードディスクドライブまたは、光ディスクドライブであることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項4】
前記電源モードは、カメラモード、電源オフモード、再生モードを含むことを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項5】
前記撮影モードは、自動モード、スポーツモード、ポートレートモード、サーフアンドスノーモード、スポットライトモード、ナイトモードを含むことを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項6】
前記レベル検出手段における複数の検出レベル設定を行うための複数の閾値情報を、選択設定する選択設定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項7】
メニュー設定により前記保護制御手段の動作を予め指定する指定手段を備え、前記指定手段は、前記撮影モードまたは電源モードに応じて初期化されることを特徴とする求項1記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−10126(P2008−10126A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182523(P2006−182523)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】