説明

撹拌ボールミル

【課題】長時間にわたって安定した粉砕処理または分散処理を可能にする分離装置を備えた攪拌ボールミルを提供する。
【解決手段】攪拌ボールミルは、粉砕体を収容するための、及び、粉砕材料を収容するための粉砕室100を備え、粉砕室は粉砕材料のための入口110を有し、撹拌機200を備え、撹拌機200は回転駆動されることが可能で、粉砕体及び粉砕材料を移動させるための撹拌手段210を有し、粉砕材料から粉砕体を分離するための分離装置300が粉砕室に設けられ、また、粉砕室は、粉砕されて粉砕体から離された材料のための製品排出口320を有しており、粉砕材料は分離装置を通過して製品排出口へ送られる。分離装置は遠心沈降分離機300として設計され、回転駆動されることが可能で、粉砕体と混合された材料の軸方向の入口332または軸の少なくとも近傍にある入口を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルに記載の撹拌ボールミルに関する。
撹拌ボールミルは、例えば、液相にある固体を粉砕あるいは分散させるために用いられ、具体的には、ナノテクノロジー製品及び微粉砕技術による製品、例えば、染料懸濁液、塗料、インク、陶磁器、農薬、充填剤懸濁液、化粧品、食品、医薬品、または、微生物に用いられる。
【0002】
このような撹拌ボールミルでは、粉砕されるべきまたは液中で分散されるべき材料は、入口を介して粉砕室へ導入されて、粉砕室内にある粉砕体によって粉砕室において粉砕または分散される。この場合、材料は粉砕室内を徐々に移動し、粉砕または分散された材料は、まず、粉砕体を制止する分離装置を通って(例えば、動的な分離ギャップを通って、あるいは、溝付スクリーンを通って)、それから出口を通って、引き出される。このような撹拌ボールミルの基本的な機能は周知であり、例えば、欧州特許第0 627 262号あるいは独国特許2 215 790号に記載されている。
【0003】
粉砕または分散された材料(製品)を粉砕体から分離するために、撹拌ボールミルは様々な分離技術を利用している。これらの技術の例は、回転子と固定子とを含む動的な分離ギャップや、例えば溝付スクリーンのようなスクリーンである。貫通通路の表面積が大きいため、スクリーンを用いてより高い処理能力を実現させることが、一般的に可能である。しかしながら、粉砕体が微細(例えば、0.2mm以下)な場合には、非常に幅の狭い溝付スクリーンが必要であり、それに伴う損失圧力は極めて大きいものである。従って、達成可能な処理能力が限られてしまう。
【0004】
また、粉砕されるべき材料及び粉砕体の粒子は、極めて短い時間でスクリーンに堆積してしまうので、ミルが閉塞してしまう。
欧州特許第0 771 591号及び欧州特許第1 468 739号には、分類ホイールを用いて粉砕体を分離することが記載されている。分類ホイールでは、空気分離機の機構に類似した機構が作動し、それに対応して羽が設けられている。製品/粉砕体の混合物は、分類ホイールの遠心力に逆らう製品ポンプによって、分類ホイールへ供給される必要がある。粉砕体が遠心分離されて分類動作によって粉砕空間へと戻される一方で、製品は分類ホイールの中心へ送られ、そして製品排出口へと送られる。しかしながら、羽が設けられていることによって、分類ホイールが、同時に強力な遠心ポンプの働きをして、相応の高圧力を粉砕空間に生じさせる。それゆえ、この遠心ポンプでは、長期間にわたって安定した粉砕処理を確立することが難しい。そのうえ、ミルを通って粉砕材料を供給するためには、製品ポンプに相応の相当な高圧力を生成させなければならない。
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、粉砕体の分離に関して前述の問題が全く起こらないか、あるいは、少なくとも前述の問題がかなり低減される、上述のタイプの撹拌ボールミルを提案することである。具体的には、微細な粉砕体が上述の欠点を伴わずに分離されることを確実にすることである。
【0006】
この目的は、本発明による、独立請求項に記載の機能を特徴とするような撹拌ボールミルによって達成される。本発明による撹拌ボールミルの有利な実施例は、従属請求項の主題である。
【0007】
具体的には、材料を微細に粉砕または分散するための本発明による撹拌ボールミルは、好ましくは回転対称の形状を有する粉砕室を備える。粉砕室は、粉砕体を収容するためのものであって、また、粉砕または分散されるべき材料を収容するためのものである。粉砕室は、粉砕または分散されるべき材料のための入口を備える。粉砕室は、撹拌機を備える。撹拌機は、回転駆動可能であるとともに、少なくとも1つの撹拌手段を有する。撹拌手段は、粉砕体、及び、粉砕または分散されるべき材料を移動させるものである。分離装置は、粉砕体を、粉砕または分散された材料から分離するための分離装置であって、粉砕室に配置されている。粉砕室は、粉砕または分散されて粉砕体から離された材料のための製品排出口を備える。粉砕または分散された材料は、分離装置を通って製品排出口に送られる。分離装置は遠心沈降分離機として設計されている。遠心沈降分離機は回転駆動可能であって、粉砕体と混合された材料のための、軸方向入口、あるいは、軸の少なくとも近傍にある入口を有する。
【0008】
粉砕体を分離するために遠心沈降分離機を用いることで、溝付スクリーンの使用を省略することが可能となり、溝付スクリーンの使用に伴う問題が発生しない。分類ホイールを用いて分離された粉砕体に関しては、分離されるべき製品/粉砕体の混合物が軸方向に供給される、または、軸の近傍に供給されるため、混合物を遠心分離ポンプの働きをする分類ホイールによって生じる上昇圧力に逆らって供給する必要がない、という利点がある。遠心沈降分離機は、上述のポンプの働きをせず分離手段としてのみ機能する。本発明による撹拌ボ−ルミルは、水平方向及び垂直方向(また、基本的にはこの2つの方向以外の方向)のいずれにおいても、設置及び作動が可能である。撹拌機及び遠心分離機が互いに角度をなして、具体的には互いに垂直をなして、配置され得ることも想定される。
【0009】
一実施例では、分離装置は、本質的に杯状のアウターロータと、アウターロータに、回転するように支持されて接続されている同軸のインナーロータとを備える。また、本質的に環状の遠心分離室が、アウターロータとインナーロータとの間に配置されている。
【0010】
別の実施例において、インナーロータは、同軸の分離管を介して、アウターロータのベース部に接続されている。また、分離管には、当該分離管の円周に沿って、粉砕された材料のための貫通口が設けられている。遠心沈降分離機は、粉砕室の端壁を貫通している中空軸を介して有利に回転駆動され得、さらに、分離管は、同軸上において中空軸に開口している。
【0011】
さらなる実施例では、アウターロータには、当該アウターロータの円周に沿って、分離された粉砕体のための貫通口が設けられている。
インナーロータは、入口の方向を向いている端部において、好ましくは、円錐状の表面を有してもよい。この表面は、アウターロータの、半径方向内側を向いている環状のフランジとともに管状の通路を形成している。
【0012】
また、別の実施例では、遠心沈降分離機は、ディスク型の分離機として設計されている。少なくとも1つの、好ましくは円錐状の分離ディスクが、分離管に配置されている。複数の分離ディスクが、好ましくは等間隔を開けて、分離管に配置されていると有利である。
【0013】
さらなる実施例では、遠心沈降分離機はデキャンタとして設計されている。インナーロータは本質的には円筒形状に設計されており、好適に円錐状の端部表面を有する。
別の実施例では、撹拌機及び遠心沈降分離機は、互いに独立して回転駆動され得るように設計されている。それゆえ、具体的には、遠心沈降分離機の回転速度及び回転方向と、撹拌機の回転速度及び回転方向とを、互いに完全に独立して設定することができる。例えば、撹拌機及び遠心沈降分離機は、同じ方向あるいは逆の方向に回転されてもよいし、同じ回転速度であるいは異なる回転速度で回転されてもよい。これは、例えば、遠心沈降分離機及び撹拌機のそれぞれが別々の駆動軸を有し、別々のモータによって駆動され得るという設計事項によって達成できる。これによって、実際の作動状況に最適に適合させることができる。
【0014】
さらなる実施例では、撹拌機及び遠心沈降分離機は、一緒に回転駆動され得るように設計されている。これは、例えば、遠心沈降分離機及び撹拌機が、共通の駆動軸を有し、当該共通の駆動軸を駆動するモータによって駆動され得るという設計事項によって達成できる。
【0015】
また、別の実施例では、搬送手段が設けられており、具体的には、アウターロータに固定された搬送スクリュが設けられている。この搬送スクリュによって、遠心沈降分離機から送り出された粉砕体は、撹拌機を含む粉砕室の粉砕空間へと運び戻されることが可能である。
【0016】
さらに別の実施例では、撹拌ボールミルは、少なくとも1つの撹拌手段の周りに少なくとも部分的に配置されている偏向手段を備える。この偏向手段によって、粉砕または分散されるべき材料は、撹拌手段の周りに直接延在する粉砕室の当該延在する部分へ向けられる。また、一実施例では、偏向手段は静的であってもよく、例えば、偏向手段は粉砕室における固定位置に配置可能であり、例としては、偏向手段が粉砕室の内壁に固定され得る。もう1つの実施例では、偏向手段は動的であってもよく、例えば、偏向手段は遠心沈降分離機にあるアウターロータの延長部分によって形成されていてもよい。
【0017】
さらに有利な実施例では、粉砕室に追加の入口が設けられる。この追加の入口は、とりわけナノ懸濁液に生じ得る、粘度の著しい増大を抑えるために、追加の製品懸濁液に、あるいは、製品懸濁液および/または分散剤の液相に、供給を行うためのものである。
【0018】
また、さらなる実施例では、入口または追加の入口は、粉砕室の撹拌機側端部に、あるいは、粉砕室の遠心沈降分離機側端部に、設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による撹拌ボールミルの、第1実施例を示す軸方向断面図である。
【図2】本発明による撹拌ボールミルの、第2実施例を示す軸方向断面図である。
【図3】本発明による撹拌ボールミルの、第3実施例を示す軸方向断面図である。
【図4】本発明による撹拌ボールミルの、第4実施例を示す軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による撹拌ボールミルは、以下、4つの実施例を用いて、かつ、添付の図面を参照しつつ、より詳細に説明される。
次の点が、以下の説明に適用される。つまり、図面が不明瞭にならないように、詳細説明の直接関連する部分では言及されていない参照符号が図面に含まれている場合には、当該詳細説明における前の部分あるいは後続部分のそれらの参照符号について説明されている部分が参照される。また、図に示された、粉砕材料および/または粉砕体の流れを示す矢印に関していえば、矢印に付されたハッチングの濃淡によって、当該流れに含まれる粉砕体の割合が示される。すなわち、矢印のハッチングが顕著であるほど(矢印が暗いほど)、当該流れの中に粉砕体がより多く含まれていることを示している。それゆえ、ハッチングされていない矢印によって示される流れ(明色を呈する)は、粉砕体を全く含まないが、一方、ハッチングが顕著である矢印によって示される流れ(暗色を呈する)は、非常に多くの粉砕体を含む。
【0021】
また、簡略にするために、粉砕のために撹拌ボールミルへ供給される材料を、以下では粉砕材料という。また、粉砕動作によって、粉砕及び浮遊された材料、並びに、粉砕体から離された材料を、以下では製品という。
【0022】
図1に示される実施例である、本発明による撹拌ボールミルの第1の実施例においては、通常は実質的に回転対称の形状である、例えば、円筒状の粉砕室100が備えられている。粉砕室100には、撹拌機200と、遠心沈降分離機300である分離装置とが配置されている。
【0023】
撹拌機200そのものは従来の方法で設計されており、撹拌手段210が備えられている。撹拌手段210は、撹拌軸220に付設されている。撹拌軸220は、粉砕室100の一方側の端壁101を貫通して延在しており、駆動モータ(図示されていない)によって回転駆動される。撹拌機200には、公知の方法で、複数の撹拌手段が備えられていてもよく、また、該複数の撹拌手段は異なる設計のもの(例えば、外輪型、ディスク形状等)であってもよい。
【0024】
遠心沈降分離機300は、中空軸320に付設されている。中空軸320は、粉砕室100の他方側の端壁102を貫通しており、駆動モータ(これも図示されていない)によって回転駆動される。撹拌機200と遠心沈降分離機300とが、同一軸上に配置されていると好適であるが、これは必須ではない。撹拌ボールミルが実際に動作している間は、撹拌機200及び遠心沈降分離機300は、水平にまたは垂直に位置され得る。
【0025】
図1、図3、及び図4における実施例では、撹拌機200と遠心沈降分離機300とは、互いに独立してモータ駆動され得る。図2における実施例では、撹拌ボールミル220は、端壁101を貫通して外側へ延在するのではなく、遠心沈降分離機300に、回転するように支持されて接続され、および/または、一体的に、接続されている。それゆえ、撹拌機200は、遠心沈降分離機300と同期して回転する。撹拌機200と遠心沈降分離機300とをそれぞれ別のモータを用いて駆動すると、自由度が大きくなる。そのため、粉砕体の分離を促進させるために、例えば、撹拌機よりも回転速度をより早くして遠心沈降分離機を動作させることが可能である。また、撹拌機200と遠心沈降分離機300とは、逆の方向へ回転駆動され得る。これによって、粉砕材料はせん断作用されることとなり、このせん断作用によって、粉砕動作が支援され得る。
【0026】
遠心沈降分離機300は、アウターロータ330とインナーロータ340とを備える。アウターロータ330は、本質的には円筒の杯状である。インナーロータ340は、アウターロータ内において同軸上に配置されている。本質的に環状の遠心分離室350が、アウターロータ330とインナーロータ340との間に形成されている。
【0027】
アウターロータ330は、撹拌機側の端部またはわずかにその上流において、半径方向内側に突出した環状のフランジ331を備える。このフランジ331は、遠心分離室入口を形成する軸方向の開口332を有する。アウターロータ330の周壁は、貫通口333によって、多くの位置で途切れている。これらの貫通口333は、遠心沈降分離機300の遠心分離室350から外へ、粉砕体を通過させて流出させ得るのに十分な形状であって、該粉砕体は、粉砕室100の囲まれた空間へと流出される。図1及び図3の実施例では、アウターロータ330は同軸の管状延出部335を備える。この管状延出部335は、軸方向に突出し、遠心分離室入口332を超えて粉砕室100の粉砕空間或いは撹拌空間に延在し、撹拌機200を囲んでいる。管状延出部335には、偏向リング(図示されない)が備えられていてもよく、あるいは、管状延出部335が偏向手段として機能してもよい。そのような延出部は、図2には示されていない。
【0028】
インナーロータ340は、中空軸側端部で、同軸の分離管360によってアウターロータ330のベース領域334に固定されている。分離管360は、中空軸320と同軸上に延在しており、中空軸320内へと開口している。分離管360の壁部は、複数の貫通口361を含む。これらの貫通口361を通って、遠心沈降分離機300にある製品は、分離管360内へと流入され、さらに分離管360から中空軸320内へと流入され得る。それゆえ、遠心沈降分離機300の中空軸320は、撹拌ボールミルの製品排出口を形成している。
【0029】
図1の実施例においては、遠心沈降分離機がデキャンタとして設計されており、インナーロータ340は、本質的には円柱形状であって、好ましくは円錐状の先端を有する円柱形状である。この先端は、遠心分離室入口332の方向に向けられており、この先端の端部表面(円錐表面)には符号341が付されている。アウターロータ330の横方向の表面には、搬送スクリュ336が配置されている。搬送スクリュ336は、アウターロータ330の延出部335にまで達して配置されている。
【0030】
図2、図3、及び図4における実施例では、インナーロータ340は、本質的には2つの円錐を有するように設計され、当該インナーロータの軸方向の長さは、図1のインナーロータよりも非常に短い。このため、分離管360はそれに対応して長い。インナーロータ340の先端は、遠心分離室入口332の方向に向けられており、この先端の端部表面(円錐表面)には、符号341が付されている。アウターロータ330のベース部334は内部が円錐形であって、ベース部334の円錐角とインナーロータ340の分離管部側円錐部の円錐角とは、本質的に等しい。アウターロータ330の円錐形のベース部334とインナーロータ340との間には、分離管360に、複数の円錐形分離ディスク362が、本質的に等間隔で同軸状に配置されている。あるいは、複数の円錐形分離ディスク362は、分離管360と一体的に形成されている。分離管360の壁にある貫通口361は、分離管360の長さ全体にわたって配置されている。そのため、どの場合でも少なくとも1つの貫通口361が、分離ディスク362同士の間に配置されている一方で、最初の分離ディスクとインナーロータ340との間、及び最後の分離ディスクとアウターロータ330のベース部334との間にも配置されている。それゆえ、これらの実施例では、遠心沈降分離機は本質的にはディスク型分離機として構成されている。
【0031】
図1の実施例では、粉砕材料の入口110が、(撹拌機側において)粉砕室100の撹拌機側端壁101に設けられている。粉砕または分散された製品は、粉砕室100の対向する側の端部において、中空軸320を通って引き出される。図2、図3、及び図4における実施例では、粉砕材料の入口110が、粉砕室100の中空軸側端壁102に設けられており、この場合においても製品は中空軸320を通って引き出される。
【0032】
撹拌ボールミルは、通常、以下のように機能する。粉砕材料が、入口110を介して粉砕室100へ導入され、撹拌機200において、撹拌機200にある粉砕体によって粉砕及び懸濁される。粉砕された材料と粉砕体との混合物は、軸方向の遠心分離室入口332を通って遠心沈降分離機300の内室350へ進められる。この内室350で、粉砕体は、回転する遠心沈降分離機の遠心作用により半径方向外側へ遠心分離されることによって、分離される。この粉砕体は、アウターロータ330の貫通口333を通って、粉砕室に送り戻され、さらに撹拌機200へと流し戻される。粉砕体から離された製品は、貫通口361を介して分離管360内へ流入される。そして、製品は、分離管360から引き出されて中空軸320へ流入され、さらにこの中空軸からも引き出される。
【0033】
図2、図3、及び図4における実施例では、入口110から供給された粉砕材料は、撹拌機200へと送られる途中で、遠心沈降分離機300のアウターロータ330を流れる。粉砕体は、アウターロータ330の貫通口333を介してアウターロータ330から外へ出される。この粉砕体は、流入する粉砕材料に伴って粉砕空間に運び戻される。この粉砕空間には、撹拌機200及び粉砕体の多くが存在する。
【0034】
粉砕動作に続いて、製品/粉砕体の混合物は、遠心沈降分離機300の入口332を介して、遠心沈降分離機内へ、正確には撹拌機200とアウターロータ330との間の空間へ、軸に沿ってまたは軸の近辺に流入される。流入された製品/粉砕体の混合物は、遠心力により加速される。分離ディスク362の外側端部とアウターロータ330の内壁との間にある遠心分離室350の断面領域(流れがその断面領域に沿って生じている)が外側に向かって有利に拡がっており、それゆえ、可能な限り、速度が抑えられた層流を達成するために流れそれ自体が抑えられることができ、アウターロータ330の内壁における粉砕体の沈降が容易となる。その結果、可能な限り少ない数の粉砕体が、分離ディスク362同士の間に沿って運ばれることとなる。それにもかかわらず、分離ディスク362同士の間に沿って運ばれた粉砕体は、外側方向に遠心分離されて、アウターロータ330の内壁で、既に蓄積された粉砕体に加えて、集積される。粉砕体に貫通口333を通過させるため、また、粉砕体を新たに供給された粉砕材料と共に撹拌手段へと運び戻すためである。分離ディスク362同士の間にある空間(ディスク通路)も、可能な限り層流を達成するために、同様に有利に構成される。分離ディスク362の数は、所望の処理能力に応じて選択可能である。粉砕体から離された製品は、貫通口361を介して分離管362へ流入し、そこから中空軸320を介して製品排出口へ送られる。
【0035】
追加の入口111が、中空軸320と同じ側である、粉砕室100の他方側端部(遠心分離機側)に、任意に設けられてもよい。この追加の入口から、とりわけナノ懸濁液に生じる、粘度の著しい増大を抑えるために、追加の製品懸濁液の中に投入され得るし、あるいは、製品懸濁液の液相に及び可能であれば分散剤の中に、投入され得る。
【0036】
図1の実施例では、遠心沈降分離機300は、本質的にはデキャンタとして機能する。粉砕体は、インナーロータ340から外側方向に遠心分離されて、アウターロータ330の貫通口333を通って外へ送られる。外へ送られた粉砕体は、アウターロータ330に固定されている搬送スクリュ336によって、粉砕空間へ運び戻される。本実施例においても、追加の入口111を、中空軸320と同じ側である、粉砕室100の他方側端部に設けていてもよい。とりわけ、ナノ懸濁液に起こる粘性の著しい増大を抑えるために、追加の製品懸濁液が、あるいは、製品懸濁液の液相および/または分散剤が、この追加の入口を介して投入され得る。
【0037】
変形例では、撹拌機200または撹拌機200の撹拌手段210が、粉砕空間における流動状態に影響する偏向リングに囲まれていてもよい。偏向リングは、静的でも動的であってもよく、その場合、アウターロータに固定されてもよく、アウターロータと共に回転しうる。撹拌手段は様々な形態で設計され得る。撹拌手段は、例えば、外輪、ディスク、あるいは、他の形態であってもよい。この場合、ただ1つの撹拌手段をあるいは1つ以上の撹拌手段を、撹拌軸に設けてもよい。
【0038】
図4に示されている、本発明による撹拌ボールミルの4つめの実施例は、図3に示されている実施例と同様の部分を有する。しかしながら、図4の実施例では、固定配置された偏向リング337が、偏向手段として、粉砕室100の内壁に固定されている。固定配置された偏向リング337は、撹拌手段210の周りを囲んで配置されている。この場合、撹拌手段210は、例えば、ディスク形状に設計される。また、図4に示される実施例では、追加の入口開口111が図示されていないが、追加の入口開口111は、設けられていても、設けられていなくてもよい。図4に示される実施例の機能に関する限りは、図3に示される実施例の機能に関する上記説明が参照される。
【0039】
本発明による撹拌ボールミルの上述の実施例に関して、当業者にとって一般的な実務である他の変形例が多く想定される。具体的には、例えば、撹拌機の作動及び遠心沈降分離機の作動は、様々な方法で実施され得る。また、撹拌機及び遠心沈降分離機は、本発明の構成を逸脱することなく様々に変形され得る。それゆえ、用いられうる撹拌手段の例は、外輪型、ディスク形状、あるいは、他の好適な撹拌手段である。本発明は、撹拌ボールミルの上記実施例を参照して説明されてきたが、本発明は、それらの実施例に限定されるものとして理解すべきではない。むしろ、本発明の技術的な教示から逸脱せずに、そのような撹拌ボールミルの改良例及び変形例が多く想定される。例えば、粉砕体は、外輪などの他の搬送手段によって運び戻されてもよい。あるいは、遠心沈降分離機は、管状の遠心分離機として設計されてもよい。さらには、例えば、撹拌機が配置されている粉砕空間は、粉砕室の、中央が開いている中間壁によって、遠心沈降分離機から部分的に仕切られていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を微細に粉砕するまたは分散させるための撹拌ボールミルであって、
粉砕体を収容するための、及び、粉砕または分散されるべき前記材料を収容するための粉砕室(100)と、
粉砕または分散されるべき前記材料の入口(110)と、
回転駆動され得る撹拌機(200)であって、前記粉砕体、及び、粉砕または分散されるべき前記材料を、前記粉砕室(100)で移動させるための少なくとも1つの撹拌手段(210)を有する、撹拌機(200)と、
粉砕または分散された材料から前記粉砕体を分離するための分離装置(300)と、
前記粉砕または分散されて粉砕体から離された前記材料のための、製品排出口(320)と、を備え、
前記粉砕または分散された材料は、前記分離装置(300)を通過して前記製品排出口(320)へ送られ、
前記分離装置は遠心沈降分離機(300)として設計されており、回転駆動され得る遠心沈降分離機(300)は、前記粉砕体と混合された前記材料のための、軸方向の入口(332)または前記軸の少なくとも近傍にある入口を有することを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項2】
請求項1に記載の撹拌ボールミルであって、
前記分離装置(300)は、杯状のアウターロータ(330)と、前記アウターロータに、回転するように支持されて接続されている同軸のインナーロータ(340)とを備え、
環状の遠心分離室(350)が、前記アウターロータと前記インナーロータとの間に配置されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項3】
請求項2に記載の撹拌ボールミルであって、
前記インナーロータ(340)は、同軸の分離管(360)を介して、前記アウターロータ(330)のベース部(334)に接続されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項4】
請求項3に記載の撹拌ボールミルであって、
前記分離管(360)には、当該分離管の円周に沿って、前記粉砕または分散された材料のための貫通口(361)が設けられていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項5】
請求項4に記載の撹拌ボールミルであって、
前記遠心沈降分離機(300)は、前記粉砕室(100)の端壁(102)を貫通している中空軸(320)を介して回転駆動されることが可能であって、前記分離管(360)は、同軸上において前記中空軸(320)に開口していることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記アウターロータ(330)には、当該アウターロータの円周に沿って、分離された粉砕体のための貫通口(333)が設けられていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項7】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記インナーロータ(340)は、前記入口(332)の方向を向いている端部において、円錐状の端部表面(341)を有しており、当該端部表面(341)は、前記アウターロータ(330)の、半径方向内側を向いている環状のフランジ(331)とともに管状の通路(342)を形成していることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記遠心沈降分離機(300)は、ディスク型の分離機として設計されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項9】
請求項3及び請求項8に記載の撹拌ボールミルであって、
少なくとも1つの円錐状の分離ディスク(362)が、前記分離管(360)に配置されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項10】
請求項9に記載の撹拌ボールミルであって、
複数の分離ディスク(362)が、等間隔を開けて、前記分離管(360)に配設されており、
前記分離管(360)の前記貫通口(361)は、前記分離ディスク(362)の間に、かつ、前記分離ディスク(362)の横方向に沿って配置されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記遠心沈降分離機(300)はデキャンタとして設計されており、前記インナーロータ(340)は円筒形状に設計されているとともに、円錐状の端部表面(341)を有することを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記撹拌機(200)及び前記遠心沈降分離機(300)は、互いに独立してあるいは共に、回転駆動され得るように設計されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
搬送手段(336)が設けられ、当該搬送手段(336)によって、前記遠心沈降分離機(300)から送り出された粉砕体が、前記撹拌機(200)を含む前記粉砕室(100)の前記粉砕空間へ運び戻されることが可能であることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記少なくとも1つの撹拌手段の周りに少なくとも部分的に配置されている偏向手段をさらに備え、
前記偏向手段は、静的または動的であることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項15】
請求項14に記載の撹拌ボールミルであって、
前記偏向手段は、前記粉砕室における固定位置に配置されている、あるいは、前記遠心沈降分離機における前記アウターロータの延長部(335)によって形成されていることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記粉砕室(100)に追加の入口(111)をさらに備え、当該追加の入口(111)は、追加の製品懸濁液に、あるいは、前記製品懸濁液及び分散剤の少なくとも1つの液相に、供給を行うためのものであることを特徴とする、撹拌ボールミル。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の撹拌ボールミルであって、
前記粉砕室(100)は、回転対称の形状であることを特徴とする、撹拌ボールミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110555(P2011−110555A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−262645(P2010−262645)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(510187417)ヴィリー アー.バッホーフェン アーゲー (3)
【Fターム(参考)】