説明

操作システム、空中ポインティングデバイス及び操作方法

【課題】
非常に簡単な構成で表示画面上でのポインタの奥行き方向の操作を行うことができる操作システム、空中ポインティングデバイス及び操作方法を提供する。
【解決手段】
この操作システムは、表示画面上でポインタを操作するための操作システムであって、ミリ波帯域の電波を送信する第1の送信部と、第1の送信部との間で間隔の変位が可能で、第1の送信部から送信された電波を受信する第1の受信部と、第1の受信部により受信された電波の振幅を計測する計測部と、計測部により計測された電波の振幅の変化に応じて、表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するための操作信号を出力する出力部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空中ポインティングデバイスなどを使って表示画面上のポインタを操作する操作システム、そのようなシステムに用いられる空中ポインティングデバイス及び操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやゲーム機、家電機器のGUI(Graphical User Interface)における入力装置として空中ポインティングデバイスを使うことでポインティングデバイスを操作するための机などが不要となり、しかも空間を操作することから、表示画面上のXY座標ばかりでなく、画面上の奥行き方向(Z座標)に対する操作も直感的に行える。
【0003】
従来から、このような奥行き方向の位置検出では、ユーザが手で持っているデバイスに対して2箇所から反射光を得て、三角法で本体とデバイスとの間の距離を求めるような技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−127809号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、2箇所に光を発光して受光する部位が必要とされることからシステムの構成が複雑になる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、非常に簡単な構成で表示画面上でのポインタの奥行き方向の操作を行うことができる操作システム、空中ポインティングデバイス及び操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る操作システムは、表示画面上でポインタを操作するための操作システムであって、ミリ波帯域の電波を送信する第1の送信部と、前記第1の送信部との間で間隔の変位が可能で、前記第1の送信部から送信された電波を受信する第1の受信部と、前記第1の受信部により受信された電波の振幅を計測する計測部と、前記計測部により計測された電波の振幅の変化に応じて、前記表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するための操作信号を出力する出力部とを具備する。
【0007】
ここで、ミリ波帯とは、周波数が30GHz〜300GHz(波長が約10mmから1mm)の帯域をいう。
【0008】
従来から無線デバイスとしては、比較的波長が長く、自由空間伝播損失の小さい周波数の電波(ミリ波帯よりも波長の長い帯域の電波)が用いられていた。しかし、このように波長の比較的長い電波では、その波長の長さのため、アンテナの中心位置を特定することが難しくなり、電波強度での距離測定には向いていなかった。また、このように波長の比較的長い電波では、自由空間伝播損失が小さいため、室内では反射が多くおこり、定在波が容易に立つことも、電波強度での距離測定に向かない理由でもあった。これに対して、ミリ波帯域の電波は、このような波長の比較的長い電波のような欠点はないが、デバイスが大掛かりになっていたため、実用性に乏しかった。
【0009】
ところが、近年、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイスの高速化により、ミリ波回路を安価なCMOSデバイスで実現できるようになってきた。本発明者らは、この点に着目し、そのように実用が可能になってきたミリ波帯域の電波を利用し、奥行き方向に関する移動量及び移動方向を検知することを案出した。すなわち、本発明では、ミリ波帯域の電波を送信する第1の送信部とそれを受信する第1の受信部との間の距離に応じた電波の振幅を計測し、電波の振幅の変化に応じて、表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実現するものである。本発明では、1つの送信部と1つの受信部によってシステムを構成することできるので、非常に簡単な構成で表示画面上でのポインタの奥行き方向の操作を行うことができる。加えて、ミリ波帯域の電波を送信する第1の送信部とそれを受信する第1の受信部との間の距離(人間の奥行き方向の操作)に応じて表示画面上でのポインタの奥行き方向の操作を行っているので、人間の直感と合致した操作が実現できる。
【0010】
本発明の一態様として、表示画面を表示するための表示デバイスを有する第1の装置と、前記第1の装置に対する空間ポインティグデバイスとしての第2の装置とを有し、前記第1の装置が、前記第1の送信部と、前記第2の装置から送信される情報信号を受信する第2の受信部と、前記出力部とを有し、前記第2の装置が、前記第1の受信部と、前記計測部と、前記計測部により計測された電波の振幅の変化に応じた情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部により生成された情報を含む情報信号を送信する第2の送信部とを有するように構成することができる。
【0011】
ここで、前記情報生成部は、前記計測部により計測された電波の振幅のデータを記憶するメモリと、前記計測部により計測された電波の振幅のデータと前記メモリに記憶された以前のデータとを比較し、この比較結果に基づき前記表示画面でのポインタの奥行き方向への移動方向及び移動量を前記情報として生成するように構成することができる。
【0012】
また、前記第2の装置は、前記表示画面上でポインタをX−Y方向に操作するための情報が入力されるユーザインターフェース部を有し、前記第2の送信部は、前記ユーザインターフェース部により入力された情報を前記情報信号に含めて送信し、前記出力部は、前記情報信号に含まれる前記ユーザインターフェース部により入力された情報に応じて前記表示画面上でのポインタのX−Y方向への操作を実行するための信号を前記操作信号として出力するように構成することができる。
【0013】
前記第2の送信部と前記第2の受信部との間で赤外線を使って前記情報信号の送受信を行うように構成することができる。
【0014】
前記第2の送信部と前記第2の受信部との間でミリ波帯域の電波を使って前記情報信号の送受信を行うように構成することができる。
【0015】
本発明の別の態様として、表示画面を表示するための表示デバイスを有する第1の装置と、前記第1の装置に対する空間ポインティグデバイスとしての第2の装置とを有し、前記第1の装置が、前記第1の受信部と、前記計測部と、前記出力部とを有し、前記第2の装置が、前記第1の送信部を有するように構成することができる。
【0016】
本発明の別に観点に係る空中ポインティングデバイスは、表示画面上でポインタを操作するために用いられる空中ポインティングデバイスであって、ミリ波帯域の電波を受信する受信部と、前記受信部により受信された電波の振幅を計測する計測部と、前記計測部により計測された電波の振幅の変化に応じて、前記表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するための情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部により生成された情報を含む情報信号を送信する送信部とを具備する。
【0017】
本発明の更に別の観点に係る方法は、表示画面上でポインタを操作するための操作方法であって、ミリ波帯域の電波を送信し、前記ミリ波帯域の電波を送信する第1の位置との間で間隔の変位が可能な第2の位置で、前記送信された電波を受信し、前記受信された電波の振幅を計測し、前記計測された電波の振幅の変化に応じて、前記表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、非常に簡単な構成で表示画面上でのポインタの奥行き方向の操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る操作システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、操作システム1は、情報処理装置100と、情報処理装置100に対する入力装置(例えば3次元マウス)としての空間ポインティグデバイス200とを備えている。
【0020】
情報処理装置100は、発振器101、変調回路102、アンテナ103、赤外線受光器104、復調回路105、CPU(Central Processing Unit)106及び表示デバイス107を備えている。
【0021】
発振器101は、例えば30GHz〜300GHzのミリ波の信号を発生させ、変調回路102に送る。発振器101は、例えばミリ波回路を安価なCMOSデバイスにより実現している。変調回路102は、発振器101からのミリ波の信号を変調する。アンテナ103は、変調回路102で変調された信号波を発信する。
【0022】
赤外線受光器104は、後述する赤外線発光器208から発光された赤外線を受光し、その情報信号を復調回路105に送る。復調回路105は、赤外線受光器104からの情報信号を復調し、CPU106に送る。この復調された情報信号は、表示デバイス107の表示画面でのポインタの奥行き方向への移動方向及び移動量の情報を含んでいる。
【0023】
CPU106は、復調された情報信号の変化に応じて、表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するための操作信号を表示デバイス107に出力したり、情報信号に含まれるユーザインターフェース206により入力された情報に応じて表示画面上でのポインタのX−Y方向への操作を実行するための操作信号を表示デバイス107に出力したりする。表示デバイス107は、CPU106からの信号により例えば表示画面の適切な位置にポインタを表示する。図1において表示画面は例えばX−Y平面内にある。
【0024】
空間ポインティグデバイス200は、情報処理装置100との間で間隔の変位が可能であり、アンテナ201、復調回路202、振幅検知回路203、CPU204、メモリ205、ユーザインターフェース206、変調回路207及び赤外線発光器208を備えている。
【0025】
アンテナ201は、アンテナ103から発信されたミリ波帯域の電波を受信する。復調回路202は、アンテナ201からの信号を復調し、振幅検知回路203に送る。振幅検知回路203は、復調回路202により復調された信号の振幅を計測し、CPU204に送る。
【0026】
CPU204は、所定時間ごとにミリ波の受信信号の振幅を検知し、以前にメモリ205に保存されている振幅のデータとの差分をとることによって、表示画面でのポインタの奥行き方向(Z軸方向)への移動方向、Z軸方向の移動量を算出する。
【0027】
メモリ205は、振幅検知回路203で計測された振幅の値を記憶する。
【0028】
ユーザインターフェース206は、奥行き方向(Z軸方向)の移動を検知するための振幅検知回路の動作の開始を伝えるためのボタンあるいはタッチパネル(以下、検知開始ボタンと呼ぶ)216(図3参照)を備えている。ユーザインターフェース206にはX−Y平面の動きをユーザが入力するための図示しないボタン、タッチパネル、あるいはトラックボールを備えている。これらのボタン、タッチパネル、あるいはトラックボールによって、表示画面上でポインタをX−Y方向に操作するための情報が入力される。
【0029】
変調回路207は、CPU204で算出された移動方向、移動量及びユーザインターフェース206により入力された情報を変調し、赤外線発光器208に送る。赤外線発光器208は、赤外線受光器104に赤外線を発光し、情報信号を送信する。
【0030】
次に、表示画面上でポインタを奥行き方向に操作するときの動作について説明する。
【0031】
図2は表示画面上でポインタを奥行き方向に操作するときのフローチャートである。
【0032】
まず、情報処理装置100の発振器101がミリ波を発振する(ST201)。発振器101からのミリ波の信号は変調回路102に入力され変調され(ST202)、その後、アンテナ103から送信される(ST203)。
【0033】
空間ポインティグデバイス200は、例えば検知開始ボタン216(図3参照)が押下されたか否かを判断し(ST204)、押下されているときには、アンテナ201で電波を受信し、復調回路202で復調し(ST205)、復調した信号の振幅を振幅検知回路203で計測しメモリ205に記録する(ST206)。
【0034】
次に、前回の振幅がメモリ205に記憶されているか否かを判断し(ST207)、記憶されていないときにはステップ205に戻り所定時間間隔で振幅を計測しメモリ205に記録する(ST206)。
【0035】
前回の振幅がメモリ205に記録されているときには、例えば前回の振幅と今回の振幅との大小関係から表示画面でのポインタの奥行き方向(Z軸方向)への移動方向を算出し、前回の振幅と今回の振幅との差からZ軸方向の移動量を算出する(ST208)。
次いで、算出された移動方向、移動量の情報を変調回路207において変調し(ST209)、赤外線発光器208から赤外線302を送出する(ST210)。このとき、ユーザインターフェース206から入力されたX−Y平面に関する情報なども変調され、送信される。
【0036】
次いで、情報処理装置100の赤外線受光器104において赤外線を受光し(ST211)、復調回路105で復調した後、空間ポインティグデバイス200から送られた情報信号は、CPU106で処理され、操作信号が表示デバイス107に出力され、ポインタが適切な位置に表示される。
【0037】
このように本実施形態によれば、ミリ波を発振する発振器101を安価なCMOSデバイスを用いて実現し、振幅を高速で検出し、表示画面の奥行き方向(Z軸方向)に関する空間ポインティグデバイス200の移動量及び移動方向(向き)を算出することができる。すなわち、空間ポインティグデバイス200の表示画面に対するZ軸方向への移動に伴いアンテナ103とアンテナ201との間の距離dが変化するが、この距離dに応じた電波の振幅を振幅検知回路203で計測し(ST206)、電波の振幅の変化に応じて、表示画面でのポインタ10(図3参照)の奥行き方向での表示を制御することができる。アンテナ103とアンテナ201との間の距離d(人間の奥行き方向の操作)に応じて表示画面上でのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)の操作を行っているので、人間の直感と合致した操作が実現できる。
【0038】
また、1つの発振器101、変調回路102及びアンテナ103と、1つのアンテナ201、復調回路202及び振幅検知回路203によって操作システム1を構成することできるので、非常に簡単な構成で表示画面上でのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)の操作を行うことができる。
【0039】
更に、空間ポインティグデバイス200はメモリ205を備え、以前にメモリ205に記憶された振幅と今回の振幅との差分をとることで移動量などを検知するため、振幅の絶対値そのものに依存しない。また、同様にアンテナ103、201のビームの角度による変動などの影響も受けにくい。
【0040】
図3は空間ポインティグデバイス200により表示画面上の扉を押すときの図である。
【0041】
図3に示すように、奥行き方向(Z軸方向)に複数の平面20、30が表示されると共に扉40などが表示画面Gに表示されているときに、ポインタ10を扉40に位置合わせし、空間ポインティグデバイス200を奥行き方向(Z軸方向)で表示画面Gに近づける、すなわち、扉40を押すことで、アンテナ103とアンテナ201との間の距離d(図1参照)が変化する(小さくなる)。この距離dに応じた電波の振幅を振幅検知回路203で計測し(ST206)、移動量及び移動方向(向き)の情報信号を生成し情報処理装置100に送信する。空間ポインティグデバイス200から送られた移動量及び移動方向(向き)の情報信号をCPU106で処理し操作信号を表示デバイス107に出力し、扉40を開くように表示することができる。人間の奥行き方向の扉40を押す操作に応じて表示画面G上でのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)の操作を行っているので、扉40を押して開くときに人間の直感と合致した操作が実現できる。
【0042】
図4は空間ポインティグデバイス200により表示画面G上の扉40を引くときの図である。
【0043】
図3と同様に、ポインタ10を扉40に位置合わせし、空間ポインティグデバイス200を奥行き方向(Z軸方向)で表示画面Gから遠ざける、すなわち、扉40を引くことで、アンテナ103とアンテナ201との間の距離dが変化する(大きくなる)。この距離dに応じた電波の振幅を振幅検知回路203で計測し(ST206)、移動量及び移動方向(向き)の情報信号を生成し情報処理装置100に送信する。空間ポインティグデバイス200から送られた移動量及び移動方向(向き)の情報信号をCPU106で処理し操作信号を表示デバイス107に出力し、扉40を引くように表示することができる。人間の奥行き方向の扉40を引く操作に応じて表示画面G上でのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)の操作を行っているので、扉40を引くときに人間の直感と合致した操作が実現できる。
【0044】
図5は空間ポインティグデバイス200により表示画面G上の異なる平面20にポインタ10を移動させるときの図である。
【0045】
ポインタ10が扉40に位置合わせされている状態から空間ポインティグデバイス200を斜め右奥に移動させることで、アンテナ103とアンテナ201との間の距離dが変化する(小さくなる)。この距離dに応じた電波の振幅を振幅検知回路203で計測し(ST206)、移動量及び移動方向(向き)の情報信号を生成し情報処理装置100に送信する。空間ポインティグデバイス200から送られた移動量及び移動方向(向き)の情報信号をCPU106で処理し操作信号を表示デバイス107に出力し、ポインタ10を扉40より奥にある平面20上に表示することができる。人間の奥行き方向の操作に応じて表示画面G上でのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)の操作を行っているので、奥行き方向に異なる平面20などにポインタ10を合わせるときに、人間の直感と合致した操作が実現できる。
【0046】
図6は空間ポインティグデバイス200により表示画面G上の異なる平面30にポインタ10を移動させるときの図である。
【0047】
ポインタ10が平面20に位置合わせされている状態から空間ポインティグデバイス200を斜め右手前に移動させることで、アンテナ103とアンテナ201との間の距離dが変化する(大きくなる)。この距離dに応じた電波の振幅を振幅検知回路203で計測し(ST206)、移動量及び移動方向(向き)の情報信号を生成し情報処理装置100に送信する。空間ポインティグデバイス200から送られた移動量及び移動方向(向き)の情報信号をCPU106で処理し操作信号を表示デバイス107に出力し、ポインタ10を平面20より右手前にある平面30上に表示することができる。人間の奥行き方向の操作に応じて表示画面G上でのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)の操作を行っているので、奥行き方向に異なる平面30などにポインタ10を合わせるときに、人間の直感と合致した操作が実現できる。
【0048】
図7は自由空間伝播損失と装置間距離との関係をあらわす図である。
【0049】
電波の自由空間伝播損失(Lp デシベル)は、図6に示すように、Lp = 20×log(4πd/λ) (ただし、dはアンテナ間の距離、λは電波の波長)である。例えば、60GHzの電波では1/2m(50cm)で62dB減衰する。一方、従来から用いられている比較的低い周波数の電波、例えば1GHzの電波の場合同じ1/2m(50センチ)で26dB減衰しかせず、その差は36dBと大きい。このようにミリ波の電波では、まわりの反射物から1/2m(50cm)など少し離れているだけも、十分に信号が減衰する。この結果、従来のマルチパスによる定在波の影響による振幅の変動の問題を抑えることができる。ミリ波では波長が短いため、現実的な大きさのアンテナでアンテナのビームを絞ることが可能である。例えばアンテナの効率を55%とするとアンテナゲイン(Ga)は、Ga=0.55×4πA/λ (ただし、Aはアンテナの面積)であるから、例えば60GHzでは6mm角のサイズで10dBi(3dB半値角55度)にビームを絞ることができる。したがって、ミリ波ではアンテナ指向性で不要なマルチパスの発生を抑えることができる。ミリ波では波長が短いため、アンテナの位置判定の解像度も上げることができる。
【0050】
図8はミリ波よりも低い周波数における問題点を示した図である。
【0051】
図8に示すように、ミリ波よりも低い周波数の場合、自由空間伝播損失が小さく、マルチパスにより、定在波が立ってしまい、本実施形態のような単純な振幅による距離の判定が困難である。また、波長が長いため、装置の測定点が曖昧になる。更に、波長が長いため、アンテナに指向性をもたせることが難しい。これに対して、本実施形態では、ミリ波を用いている。ミリ波は波長が短いので、送受信のアンテナの位置の確度が高い。また、ミリ波は自由空間伝播損失が大きいので反射波の影響が小さく、定在波による計測の劣化が少ない。従って、正確に距離を求めることができる。
【0052】
図9は実際にミリ波(60GHz)での伝播実験を行ったときのセットアップの図である。
【0053】
情報処理装置100と、空間ポインティグデバイス200とを、距離d離し、情報処理装置100から例えば60GHzのミリ波を発信した。アンテナ103の絶対利得を10dBiまたは20dBi、アンテナ201の絶対利得を15dBiとし、情報処理装置100の出力パワーを−10dBmとした。
【0054】
図10は図9に示した実験の結果である。
【0055】
アンテナ間の距離d(m)と空間ポインティグデバイス200側での受信電力(dBm)とには相関関係があることが分かる。アンテナ間の距離d(m)と受信電力(dBm)との関係から、空間ポインティグデバイス200の移動が読み取れることが分かる。
【0056】
図11は送受信用のアンテナをどれくらい近傍まで近づけることができるか確認するために行ったシミュレーション結果である。
【0057】
ダイポールの長さが2.4mm(=λ/2)のダイポールアンテナを用いた(Simulator micro−stripes)。理論値と計算値とは、距離が3mm程度までほぼ一致している。
【0058】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図12は空間ポインティグデバイス200から戻る情報信号の伝送を赤外線ではなくミリ波で行う場合の操作システムの構成を示すブロック図である。
【0059】
本実施形態では、図1に比べて、情報処理装置100は、図1に示す赤外線受光器104の代わりにスイッチ110を備えている。
【0060】
スイッチ110は、CPU106からの制御信号により、所定時間ごとに、変調回路102−アンテナ103の接続と、復調回路105−アンテナ103の接続とを切り替える。
【0061】
空間ポインティグデバイス200は、図1に比べて、図1に示す赤外線発光器208の代わりにスイッチ210を備えている。
【0062】
スイッチ210は、CPU204からの制御信号により、所定時間ごとに、変調回路207−アンテナ201の接続と、復調回路202−アンテナ201の接続とを切り替える。
【0063】
この場合、時分割により、双方向にミリ波303でさまざまなデータをやり取りすることも可能である。例えば、表示画面Gでのポインタ10の奥行き方向(Z軸方向)への移動方向、Z軸方向の移動量の情報の送受信と、これらの情報とは異なるX−Y平面に関するポインタ10の移動量などの情報とを別々に送受信することができる。
【0064】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図13は空間ポインティグデバイス200側からミリ波303の基準信号の発信を行う場合の操作システムの構成を示すブロック図である。
【0065】
本実施形態では、図12に比べて情報処理装置100は、発振器101を備えず振幅検知回路120及びメモリ121を備えている。振幅検知回路120は、復調回路105とCPU106との間に配置され、復調回路105で復調された信号の振幅を検知し、メモリ121はCPU106の指示により所定時間ごとに振幅を記憶するように構成されている。
【0066】
空間ポインティグデバイス200は、図12に比べて振幅検知回路203〜ユーザインターフェース206を備えず、発振器221、CPU222及びユーザインターフェース223を備えている。
【0067】
発振器221は、変調回路207にミリ波の信号を発振し、CPU222は、復調回路202−アンテナ201の接続と、変調回路207−アンテナ201の接続とを切り替えるための信号をスイッチ210に送信する。ユーザインターフェース223はユーザインターフェース206と同様である。
【0068】
このように、ミリ波の発振を空間ポインティグデバイス200で行うようにしても、同様のシステムを構成することができる。
【0069】
この実施形態の変形例として、ミリ波301の情報伝送経路を利用し情報処理装置100で検出した振幅情報を空間ポインティグデバイス200に送り、空間ポインティグデバイス200側にメモリを持つようなシステムも可能である。
【0070】
なお、本発明は以上説明した実施の形態には限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、空間ポインティグデバイス200は情報処理装置100へ赤外線を用いて無線で情報を伝達している。しかし、これに限定されず、例えばUHF(Ultra−High Frequency)またはマイクロ波を用いてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、ミリ波の振幅の検出は単純に平均電力を求めることもできるし、特定のパターンを生成し、そのパターンについて受信側で相関をとって検出してもよい。
【0073】
更に、上記実施形態では、ミリ波の電波を用いている。このため、小さいアンテナでも所望の指向性を実現できるので、他のポータブルな装置に応用できる。
【0074】
また、上述したように容易にZ軸方向へのポインタ10の操作を行えるので、多様なユーザインターフェースが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る操作システムの構成を示すブロック図である。
【図2】表示画面上でポインタを奥行き方向に操作したときのフローチャートである。
【図3】空間ポインティグデバイス200により表示画面上の扉を押すときの図である。
【図4】空間ポインティグデバイス200により表示画面上の扉を引くときの図である。
【図5】空間ポインティグデバイス200により表示画面上の異なる平面にポインタを移動させるときの図である。
【図6】空間ポインティグデバイス200により表示画面上の異なる平面にポインタを移動させるときの図である。
【図7】自由空間伝播損失と装置間距離との関係をあらわす図である。
【図8】従来の低い周波数における問題点を示した図である。
【図9】実際にミリ波(60GHz)での伝播実験を行ったときのセットアップの図である。
【図10】図9に示した実験の結果である。
【図11】送受信用のアンテナをどれくらい近傍まで近づけることができるか確認するために行ったシミュレーション結果である。
【図12】空間ポインティグデバイス200から戻る情報信号の伝送を赤外線ではなくミリ波で行う場合の操作システムの構成を示すブロック図である。
【図13】空間ポインティグデバイス200側からミリ波303の発信(基準信号の発信)行う場合の操作システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
1 システム
10 ポインタ
100 情報処理装置
101 発振器
102、207 変調回路
103、201 アンテナ
105、202 復調回路
106、204 CPU
107 表示デバイス
200 空間ポインティグデバイス
203 振幅復調回路
205 メモリ
206 ユーザインターフェース
301、303 ミリ波
d 距離
G 表示画面
Z 奥行き方向(Z軸方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面上でポインタを操作するための操作システムであって、
ミリ波帯域の電波を送信する第1の送信部と、
前記第1の送信部との間で間隔の変位が可能で、前記第1の送信部から送信された電波を受信する第1の受信部と、
前記第1の受信部により受信された電波の振幅を計測する計測部と、
前記計測部により計測された電波の振幅の変化に応じて、前記表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するための操作信号を出力する出力部と
を具備することを特徴とする操作システム。
【請求項2】
請求項1に記載の操作システムであって、
前記表示画面を表示するための表示デバイスを有する第1の装置と、
前記第1の装置に対する空間ポインティグデバイスとしての第2の装置とを有し、
前記第1の装置が、前記第1の送信部と、前記第2の装置から送信される情報信号を受信する第2の受信部と、前記出力部とを有し、
前記第2の装置が、前記第1の受信部と、前記計測部と、前記計測部により計測された電波の振幅の変化に応じた情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部により生成された情報を含む情報信号を送信する第2の送信部とを有する
ことを特徴とする操作システム。
【請求項3】
請求項2に記載の操作システムであって、
前記情報生成部は、前記計測部により計測された電波の振幅のデータを記憶するメモリと、前記計測部により計測された電波の振幅のデータと前記メモリに記憶された以前のデータとを比較し、この比較結果に基づき前記表示画面でのポインタの奥行き方向への移動方向及び移動量を前記情報として生成することを特徴とする操作システム。
【請求項4】
請求項2に記載の操作システムであって、
前記第2の装置は、前記表示画面上でポインタをX?Y方向に操作するための情報が入力されるユーザインタフェース部を有し、
前記第2の送信部は、前記ユーザインタフェース部により入力された情報を前記情報信号に含めて送信し、
前記出力部は、前記情報信号に含まれる前記ユーザインタフェース部により入力された情報に応じて前記表示画面上でのポインタのX?Y方向への操作を実行するための信号を前記操作信号として出力する
ことを特徴とする操作システム。
【請求項5】
請求項1に記載の操作システムであって、
前記表示画面を表示するための表示デバイスを有する第1の装置と、
前記第1の装置に対する空間ポインティグデバイスとしての第2の装置とを有し、
前記第1の装置が、前記第1の受信部と、前記計測部と、前記出力部とを有し、
前記第2の装置が、前記第1の送信部を有する
ことを特徴とする操作システム。
【請求項6】
請求項2に記載の操作システムであって、
前記第2の送信部と前記第2の受信部との間で赤外線を使って前記情報信号の送受信を行うことを特徴とする操作システム。
【請求項7】
請求項2に記載の操作システムであって、
前記第2の送信部と前記第2の受信部との間でミリ波帯域の電波を使って前記情報信号の送受信を行うことを特徴とする操作システム。
【請求項8】
表示画面上でポインタを操作するために用いられる空中ポインティングデバイスであって、
ミリ波帯域の電波を受信する受信部と、
前記受信部により受信された電波の振幅を計測する計測部と、
前記計測部により計測された電波の振幅の変化に応じて、前記表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行するための情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部により生成された情報を含む情報信号を送信する送信部と
を具備することを特徴とする空中ポインティングデバイス。
【請求項9】
表示画面上でポインタを操作するための操作方法であって、
ミリ波帯域の電波を送信し、
前記ミリ波帯域の電波を送信する第1の位置との間で間隔の変位が可能な第2の位置で、前記送信された電波を受信し、
前記受信された電波の振幅を計測し、
前記計測された電波の振幅の変化に応じて、前記表示画面でのポインタの奥行き方向への操作を実行する
ことを特徴とする操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−15765(P2009−15765A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179560(P2007−179560)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】