説明

操作スイッチ

【課題】要求されるノブへの操作フィーリングに合わせた特性を簡単な構造で得る。
【解決手段】スイッチ接点8が配置された基板2と、スイッチ接点8と対応した可動接点10を有した状態で間隔を有してスイッチ接点8を覆うドーム部9が形成され、基板2上に重ね合わせられる樹脂シートからなる第1反転板3と、第1反転板3のドーム部9を間隔を有して覆うドーム部13が形成され、第1反転板3上に重ね合わせられる弾性材料からなる第2反転板4と、第2反転板4のドーム部13に対応するように配置されて押圧操作されるノブ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ、エアコンやカーナビゲーション等の機器に用いられる操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した機器においては、多数のスイッチを配置することにより、多種類の信号を入力したり、切り換える構造の操作スイッチが使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、このような操作スイッチの従来構造を示し、基板100と、複数のノブ110と、これらを収容するケース120とを備えている。基板100には、複数のタクトスイッチ130が整列状に配置されている。複数のノブ110は、それぞれのタクトスイッチ130に対応するように配置されるものであり、それぞれがベース140内に仕切られた状態で収容されて使用される。
【0004】
タクトスイッチ130は、基板100から立ち上がる箱形状に形成されたスイッチ本体131と、スイッチ本体131の内部に位置するように基板100上に形成されたスイッチ接点(図示省略)とを備えている。スイッチ本体131は変形及び復元が可能な弾性が付与されており、ノブ110を押圧することにより押し潰されるように座屈し、この座屈によってスイッチ接点に接触してスイッチングが行われる。一方、ノブ110への押圧力を解除した場合、スイッチ本体131は自らの復元力によって図8の状態に復元する。
【0005】
符号140は、各タクトスイッチ130との近接位置となるように基板100上に実装された発光ダイオード等の発光部材であり、光を発することによりノブ110及びその近辺の照明を行う。
【0006】
このようなスイッチ装置は、基板100をケース120に収容し、ノブ110を整列状に収容したベース140を基板100上に位置するようにケース120に収容することにより、個々のノブ110をタクトスイッチ130に対向させ、この状態でケース120を上述した機器の所定箇所に固定することにより機器に組み込まれて使用される。
【特許文献1】特開2000−268662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の操作スイッチにおいては、スイッチ操作のフィーリングに対して多彩な要求が増加している。しかしながら、上述した従来の操作スイッチでは、タクトスイッチ130が有している弾性力がタクトスイッチ130自体の材料や構造、あるいは大きさによって決定されるため、固定的であり、要求される操作フィーリングに対して対応することが難しいものとなっている。このため、操作フィーリングに合ったものを選んだり、操作フィーリングに合わせた新たな操作スイッチを開発する必要があり、面倒であると共にコストが必要以上にかかる問題を有している。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、要求される操作フィーリングに対応することが可能な多彩な特性を有した操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明の操作スイッチは、スイッチ接点が配置された基板と、スイッチ接点と対応した可動接点を有した状態で間隔を有してスイッチ接点を覆うドーム部が形成され、基板上に重ね合わせられる樹脂シートからなる第1反転板と、第1反転板のドーム部を間隔を有して覆うドーム部が形成され、第1反転板上に重ね合わせられる弾性材料からなる第2反転板と、第2反転板のドーム部に対応するように配置されて押圧操作されるノブとを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の操作スイッチであって、基板上に発光部材が実装されており、第1反転板が透明、第2反転板が半透明となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の操作スイッチであって、発光部材を間隔を有して覆う覆い部が第1反転板及び第2反転板に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、樹脂シートからなる第1反転板のドーム部と、弾性材料からなる第2反転板のドーム部とが重なり状態となって基板上のスイッチ接点に対応しているため、第1反転板のドーム部及び第2反転板のドーム部を合わせた特性で操作フィーリングに対応することができる。このため、広範で多彩な特性となり、要求される操作フィーリングに呼応することが可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1反転板が透明、第2反転板が半透明となっているため、基板上の発光部材からの光が第1反転板及び第2反転板を透過することができる。このため、照明機能を備えたものとすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、第1反転板及び第2反転板の覆い部が間隔を有して発光部材を覆うため、発光部材の保護を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の操作スイッチを示す分解斜視図、図2は要部の断面図、図3は操作前の断面図、図4は操作時の断面図、図5〜図7はノブの変位と押し力との関係を示す特性図である。
【0016】
図1に示すように、この実施形態の操作スイッチは、ケース1と、基板2と、第1反転板3と、第2反転板4と、ベース5と、複数のノブ6とを備えている。
【0017】
ケース1は、オーディオ、エアコンやカーナビゲーション等の機器の所定位置に固定されるものであり、樹脂により横長の箱形状に形成されている。
【0018】
基板2は、信号を出力するものであり、そのための配線パターンが形成されている。基板2の一面には、スイッチングを行うためのスイッチ接点8が配線パターンと接続された状態で形成されている。スイッチ接点8は、例えば、+極8a及び−極8bによって構成される。このスイッチ接点8は基板2の一面に整列状に複数が配置されている。
【0019】
この実施形態において、それぞれのスイッチ接点8との近接位置には、発光ダイオード(LED)等の発光部材7が実装されている。発光部材7は、発光することにより照明を行うものである。
【0020】
第1反転板3は、基板2上に重ね合わせられるものであり、基板2上のそれぞれのスイッチ接点8との対向位置にはドーム部9が形成されている。ドーム部9は、図1及び図2に示すように、基板2との重ね合わせ部分から円弧状となって隆起しており、これにより、基板2上のスイッチ接点8とは間隔を有している。このドーム部9における基板2との対向位置には、基板2上のスイッチ接点8と対向する可動接点10が形成されている。可動接点10がスイッチ接点8と接触することにより、スイッチ接点8から信号が出力される。
【0021】
ドーム部9に加えて、第1反転板3には発光部材7を覆う覆い部11が形成されている。覆い部11は、発光部材7と間隔を有して覆っており、これにより発光部材7を保護している。
【0022】
以上の第1反転板3は、薄い樹脂シートによって形成されるものであり、樹脂としては、PET樹脂やアラミド樹脂、その他の樹脂が使用される。従って、第1反転板3は使用された樹脂材料やその厚さに起因した弾性等の特性を有している。この第1反転板3は、基板2の全面を覆うように基板2に重ね合わせられ、ドーム部9及び覆い部11を除く部位が接着や溶着あるいはビス止め等により基板2に接合される。なお、第1反転板3の樹脂としては、上述した樹脂の中から透明な樹脂が選択されるものである。
【0023】
第2反転板4は、第1反転板3上に重ね合わせられるものであり、第1反転板3のドーム部9との対向位置にはドーム部9を覆うドーム部13が形成されている。ドーム部13は、第1反転板3の対応したドーム部9の周囲から立ち上がり、且つドーム部9を覆う形状に形成されており、ドーム部9とは間隔を有して覆うようになっている。
【0024】
ドーム部13の頂部は、肉厚となっていると共に、第1反転板3のドーム部9側に突出する押圧部13aが形成されている。押圧部13aがドーム部9を押圧することにより、ドーム部9が押し潰されるように座屈する。この場合、樹脂シートからなる第1反転板3は、押圧部13aからの押圧力が解除したときに、自力で元の形状に復元する弾性力を有している。
【0025】
第2反転板4には、第1反転板3の覆い部11を覆う覆い部14が形成されており、基板2の発光部材7は第1反転板3の覆い部及び第2反転板4の覆い部14によって覆われるようになっている。
【0026】
第2反転板4は、ゴムあるいは弾力を有した樹脂によって形成されるものであり、ノブ6への押圧操作力が作用したときに座屈方向に変形すると共に、押圧操作力が解除したときには、元の形状に復元するようになっている。第2反転板4は、第1反転板3の全面を覆うように第1反転板3に重ね合わせられ、ドーム部13及び覆い部14を除く部位が接着や溶着、ビス止め等により第1反転板3に重ね合わせられる。なお、第2反転板4としては、半透明の樹脂が選択されるものである。
【0027】
ベース5は、硬質樹脂により矩形桝状に成形されており、第2反転板4上に載置されることにより第2反転板4を押し付けるように作用する。ベース5の内部には、仕切壁15が縦横方向に形成されており、仕切壁15によって仕切られることにより空洞状のノブ室16が整列状に形成されている。ノブ室16は基板2のスイッチ接点8を囲む位置に対応するものである。
【0028】
ノブ6は、ベース5のそれぞれの仕切壁15内に収容され、この収容状態で指等により押圧操作される。ノブ6が仕切壁15に収容されることにより、それぞれのノブ6が基板2のスイッチ接点8に対応している。ノブ6には、第2反転板4におけるドーム部13の頂部に当接するように延びた押圧バー6aが形成されており、ノブ6を押圧操作することにより押圧バー6aがドーム部13を押して変形させる。
【0029】
図3は、ノブ6への押圧操作前の状態を示し、第1反転板3のドーム部9が基板2のスイッチ接点8と間隔を有した状態で覆っていると共に、第2反転板4のドーム部13が対応したドーム部9と間隔を有した状態で覆っている。
【0030】
図4は、ノブ6に対して押圧操作した状態を示す。ノブ6への押圧操作によりノブ6が基板2方向に移動し、その押圧バー6aが第2反転板4のドーム部13を押圧して座屈方向に変形させる。このドーム部13の座屈変形により、ドーム部13の押圧部13aが第1反転板3の対応したドーム部9を押圧するため、ドーム部9が押し潰されるように座屈変形する。この座屈変形により、ドーム部9に形成された可動接点10が基板2のスイッチ接点8と接触するため、スイッチ接点8によるスイッチングが行われる。
【0031】
図4の状態では、基板2上に第1反転板3のドーム部9及び第2反転板4のドーム部13がいずれも変形した状態で重なり合っており、ノブ6にはこれらの弾性に基づいた反力が作用している。従って、ノブ6への押圧力を解除すると、第1反転板3及び第2反転板4の反力が合わさった反力によりノブ6が元の位置に復帰し、図3の状態となる。
【0032】
このような実施形態では、第1反転板3のドーム部9と、第2反転板4のドーム部13とが重なり状態となっているため、これらの反転板3及び4を合わせた特性とすることができる。このため、第1反転板3及び第2反転板4の組み合わせを変更するだけで、広範で多彩な特性とすることができ、要求される操作フィーリングに簡単に対応することができ、しかも安価とすることができる。
【0033】
図5は、ノブ6への押圧操作による押し力に対応してノブ6が変位する量を第2反転板4に関してプロットした特性図であり、図6は同様にノブ6が変位する量を第1反転板3に関してプロットした特性図である。この実施形態では、第1反転板3及び第2反転板4が重ね合わせられた状態となっているため、図5及び図6を合わせた図7の特性図となる。図7に示すように、押圧操作当初からノブ6が一定以上変位したときがピークP1となり、このピークP1の後は、押圧操作力が小さくてもノブ6が変位する。これにより、クリック感のある操作を行うことができる。
【0034】
また、第1反転板3及び第2反転板4として金属を用いる必要がないと共に、これらの反転板3,4に金属製ばね等の金属部品を組み込み必要がないため、操作音が発生することがなく、周囲への雑音発生を防止することができる。
【0035】
以上に加えて、この実施形態では、第1反転板3として透明の樹脂、第2反転板4として半透明の樹脂を使用しているため、基板2上の発光部材7からの光が第1反転板3及び第2反転板4を透過することができる。このため、発光部材7近辺の明るくする照明機能を備えたものとすることができ、ノブ6への押圧操作を誤りなく行うことが可能となる。
【0036】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく種々変更が可能であり、例えば、発光部材7を基板2に実装しない構造に対しても同様に適用することができる。また、第1反転板3を透明以外の樹脂とし、第2反転板4を半透明以外の樹脂としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態における操作スイッチの分解斜視図である。
【図2】操作スイッチの要部を示す断面図である。
【図3】ノブへの押圧操作前の断面図である。
【図4】ノブへの押圧操作時の断面図である。
【図5】第2反転板におけるノブの変位と押し力との関係を示す特性図である。
【図6】第1反転板におけるノブの変位と押し力との関係を示す特性図である。
【図7】第1反転板及び第2反転板を合わせた場合におけるノブの変位と押し力との関係を示す特性図である。
【図8】従来の操作スイッチの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ケース
2 基板
3 第1反転板
4 第2反転板
5 ベース
6 ノブ
7 発光部材
8 スイッチ接点
9 ドーム部
10 可動接点
11 覆い部
13 ドーム部
14 覆い部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ接点(8)が配置された基板(2)と、
スイッチ接点(8)と対応した可動接点(10)を有した状態で間隔を有してスイッチ接点(8)を覆うドーム部(9)が形成され、基板(2)上に重ね合わせられる樹脂シートからなる第1反転板(3)と、
第1反転板(3)のドーム部(9)を間隔を有して覆うドーム部(13)が形成され、第1反転板(3)上に重ね合わせられる弾性材料からなる第2反転板(4)と、
第2反転板(4)のドーム部(13)に対応するように配置されて押圧操作されるノブ(6)とを備えていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
基板(2)上に発光部材(7)が実装されており、第1反転板(3)が透明、第2反転板(4)が半透明となっていることを特徴とする請求項1記載の操作スイッチ。
【請求項3】
発光部材(7)を間隔を有して覆う覆い部(11,14)が第1反転板(3)及び第2反転板(4)に形成されていることを特徴とする請求項2記載の操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−107821(P2006−107821A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290205(P2004−290205)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】