説明

操作スイッチ

【課題】カバー等の余分な部品を用いることなく簡単な構造のもとにロックアウトを実現する。
【解決手段】固定配置したフランジ3の側板31を押ボタン13(または操作つまみ)の側面に沿うように配置し、その側板31及び押ボタン13にそれぞれロック穴31a,13eを設けておき、押ボタン13が操作され、当該押ボタン13がフランジ3の側板31に対して移動(回転移動)したときに、押ボタン13のロック穴13eがフランジ3の側板31のロック穴31aに合って、南京錠4の掛け金41を通すことが可能な貫通穴が形成される構造とする。そして、このように押ボタン13自体にロック穴を設けることで、カバーなどの操作スイッチ以外の部品を用いることなくロックアウトを実現できるので、スイッチ操作性及びスイッチへの接近性が損なわれることがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、押ボタンスイッチ、非常停止スイッチ、回転式のセレクタスイッチなどの操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
制御盤などには、操作対象となる機器の押ボタンスイッチやセレクタスイッチ(切替スイッチ)などの各種の操作スイッチ及び各種の表示ランプ類が配置されている。
【0003】
また、工作機械等の制御パネルには、例えば、安全装置として押ボタン式の非常停止スイッチが配置されており、非常時にその非常停止スイッチを押込操作することにより、機械の主回路への電源供給を遮断して動作を停止できるようになっている。
【0004】
制御パネルなどに配置される操作スイッチのうち、非常停止スイッチなど、作業者の安全を確保するスイッチについては、作業者以外の者が勝手に操作できないようにするための対策(ロックアウト)が採られている場合がある。
【0005】
その防止策としては、例えば、図14に示すように、スイッチのパネル面に取り付ける固定カバー201と、この固定カバー201の上端にヒンジ203を介して回動自在に支持される可動カバー202によって保護カバー200を構成し、その保護カバー200の可動カバー202に、スイッチ210の操作つまみ(回転つまみ)211に対応する形状の回転規制用の穴202aを設けるとともに、固定カバー201の下部に、南京錠204の掛け金241を通す穴201aを設け、図15に示すように、可動カバー202を閉鎖した状態で、固定カバー201の穴201aに南京錠204の掛け金241を通して施錠を行うことによって、操作つまみ211を回転不可能な状態にする構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
さらに、切替スイッチと押ボタンスイッチを備えた操作盤において、押ボタンスイッチを開閉自在に覆うカバーを設け、そのカバーに切替スイッチの操作つまみに対応する形状の回転規制用の穴を形成するとともに、操作つまみの先端部に南京錠の掛け金を通す穴を形成し、前記カバーを閉鎖し操作つまみを先端部をカバーの前方側に突出させた状態で、操作つまみ先端部の穴に南京錠の掛け金を通して施錠を行うことにより、押ボタンスイッチを操作できない状態にする構造が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、非常停止スイッチのロックアウト構造についても、例えば図16(A)及び(B)に示すように、非常停止スイッチ310を開閉自在に覆う開閉カバー302を設け、その開閉カバー302を閉鎖した状態で開閉カバー302の穴302aと固定カバー301aに南京錠304の掛け金341を通して施錠する構造が採用されている。
【特許文献1】実開昭60−115423号公報
【特許文献2】特開平09−019015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した各対策によれば、いずれも、カバーにてスイッチのロックアウトを行う方式であるので、カバーによりスイッチの操作性が損なわれるという問題がある。また、スイッチ以外にカバー等の別部品が必要であり、その部品点数が多くなる。さらに、カバーを開放した状態のときに、そのカバー等の配置スペースが余分に必要になるとともに、カバー開放時の意匠性が悪いという問題がある。
【0009】
ここで、機械設備に使用される非常停止スイッチについては、IEC 60204−1やISO 13850等により、「非常停止スイッチ(非常停止装置)には簡単に接近できるようにすること」、及び、「不注意な操作に対する対策(ロックアウト)は、接近性が損なわれないようにすること」が規定されているが、上記したように、ロックアウト対策としてカバーを設けた場合、カバーが障害物となって接近性が損なわれる場合があり、IEC等の国際規格を満足できなくなるおそれがある。
【0010】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、カバー等の余分な部品を用いることなく簡単な構造のもとにロックアウトを実現することができ、しかも、スイッチ操作性が損なわれない構造の操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の操作スイッチは、接点を有する接点部と、前記接点部の接点を切り替え操作するための手動操作部材を有する操作部とを備えた操作スイッチにおいて、前記手動操作部材の側面に沿うように配置された側板と、前記手動操作部材と前記側板にそれぞれ形成されたロック穴とを有し、前記手動操作部材が非操作状態であるときに、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるように構成されていることによって特徴づけられる。
【0012】
この発明によれば、スイッチの押ボタンまたは操作つまみ等の手動操作部材(以下、解決手段の項では、総称して押ボタンともいう)が非操作状態であるときに、押ボタンのロック穴が側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるので、その貫通穴に南京錠の掛け金を通して施錠を行うことにより、押ボタンの操作が不可能となる(ロックアウト)。これにより、施錠を行った操作者以外の者による勝手な操作や、操作スイッチへの接触による誤動作を確実に防止することができる。
【0013】
しかも、押ボタン自体にロック穴を設けるとともに、押ボタンの側方周囲に固定配置(操作部本体に固定配置)した側板にロック穴を設けて、それらロック穴を利用して南京錠等によるロックアウトを行えるようにしているので、従来のようなカバーなどの操作スイッチ以外の部品を用いることなく、簡単な構成のもとにロックアウトを実現することができる。さらに、操作スイッチの周辺にロックアウト機構の部品が突出しない構造とすることが可能であるので、操作スイッチの操作性及び操作スイッチへの接近性が損なわれることがない。
【0014】
本発明の操作スイッチは、接点を有する接点部と、前記接点部の接点を切り替え操作するための手動操作部材(操作ボタンまたは操作つまみ)を有する操作部とを備えた操作スイッチにおいて、前記手動操作部材の側面に沿うように配置された側板と、前記手動操作部材と前記側板にそれぞれ形成されたロック穴とを有し、前記手動操作部材が操作され、当該手動操作部材が前記側板に対して移動したときに、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるように構成されていることによって特徴づけられる。
【0015】
この発明によれば、スイッチの押ボタンまたは操作つまみ等の手動操作部材(以下、解決手段の項では、総称して押ボタンともいう)を操作したときに、押ボタンのロック穴が側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるので、その貫通穴に南京錠の掛け金を通して施錠を行うことにより、押ボタンの操作が不可能となる(ロックアウト)。これにより、施錠を行った操作者以外の者による勝手な操作や、操作スイッチへの接触による誤動作を確実に防止することができる。
【0016】
しかも、押ボタン自体にロック穴を設けるとともに、押ボタンの側方周囲に固定配置(操作部本体に固定配置)した側板にロック穴を設けて、それらロック穴を利用して南京錠等によるロックアウトを行えるようにしているので、従来のようなカバーなどの操作スイッチ以外の部品を用いることなく、簡単な構成のもとにロックアウトを実現することができる。さらに、操作スイッチの周辺にロックアウト機構の部品が突出しない構造とすることが可能であるので、操作スイッチの操作性及び操作スイッチへの接近性が損なわれることがない。特に、非常停止スイッチにおいて、スイッチへの接近性が損なわれないことはIEC等の国際規格を準拠する上で有効な効果である。
【0017】
本発明において、前記押ボタンが前記側板に対して回転移動したときに、前記押ボタンのロック穴が前記側板のロック穴に合う状態(または押ボタンのロック穴が側板のロック穴に合わない状態)となるように構成されていることが好ましい。特に、本発明を適用する操作スイッチが押ボタンスイッチである場合、手動操作部材である押ボタンが押し込まれたときに、押ボタンが弾性体の弾性力によって回転して、押ボタンのロック穴が側板のロック穴に合うように構成されていることが好ましい。このような構成を採用をすると、以下のような作用効果を達成することができる。
【0018】
まず、非常停止スイッチ等の押ボタンスイッチにおいて、押ボタンに設けるロック穴と側板に設けるロック穴とを、押ボタンの押込み方向において位置をずらして配置した構造とすると、押込のストロークが短い場合、図13に示すように、押ボタンを押込操作していない状態で、押ボタン側のロック穴101と側板側のロック穴102の一部が重なり合ってしまい、その重なり部分13に細い針金などを挿し込むことにより、押ボタンスイッチの操作を意図的に妨害することができる。また、南京錠の掛け金の径が、ロック穴の径よりも小さくてガタがある場合、そのガタの存在により、施錠をしているのにも関わらず、接点が切り替わってしまう危険性がある。従って、ロックアウトを確実にするには、ロック穴の径を南京錠の掛け金の径にぴったりと合わせる必要があり、設計の自由度が狭くなる等の問題がある。
【0019】
これに対し、押ボタンが回転したときに、押ボタンのロック穴が側板のロック穴に合う構造とすると、回転方向において押ボタンのロック穴と側板のロック穴とをずらす距離を確保することができるので、押ボタンの押込ストロークが短くても、前記した押ボタンのロック穴と側板のロック穴との重なり合いが生じない構造とすることができる。
【0020】
また、押ボタンを回転構造とする場合、押ボタンが押し込まれ、接点部の接点が切り替わった直後に押ボタンが回転を開始するように構成するとともに、その押ボタンが回転終点位置にあるときに、接点部の接点の切り替えを阻止するための手段(例えば、図8に示すフランジ3のストッパ32と押ボタン13の係止溝13cの係止面13d等)を設けておくと、押ボタンが押込み方向または反押込み方向に多少動いても、その動きで接点部の接点が切り替わることがなくなる。
【0021】
本発明の操作スイッチにおいて、押ボタンや操作つまみ等の手動操作部材に、当該手動操作部材を貫通して両端が手動操作部材の側面で開口する貫通ロック穴と、手動操作部材の前面に開口部を有し、前記貫通ロック穴に連通する前面側ロック穴とを形成しておき、手動操作部材が操作状態または非操作状態であるときに前記貫通ロック穴が前記側板のロック穴に合うように構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の操作スイッチによれば、押ボタン(または操作つまみ等)を操作したときに(または非操作状態のときに)、押ボタンのロック穴が側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるので、その貫通穴に南京錠の掛け金を通して施錠を行うことにより、押ボタンの操作が不可能となる(安全ロックアウト)。これにより、施錠を行った操作者以外の者による勝手な操作や、操作スイッチへの接触による誤動作等を確実に防止することができる。また、従来のようなカバーなどの操作スイッチ以外の部品を用いることなく、簡単な構成のもとにロックアウトを実現することができる。さらに、操作スイッチの周辺にロックアウト機構の部品が突出しない構造とすることが可能であるので、操作スイッチの操作性及び操作スイッチへの接近性が損なわれることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
本発明を非常停止スイッチ(プッシュロックターンリセット式押ボタンスイッチ)に適用した例を、図1〜図11を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
この例の非常停止スイッチは、操作部1、接点部2及びフランジ3を備えている。接点部2には、図示はしないが、接点部アクチュエータを有するB接点が内蔵されている。
【0026】
操作部1は、円筒形状の操作部本体11、操作部アクチュエータ12及び押ボタン13を備えている。操作部アクチュエータ12は、操作部本体11内に摺動自在に嵌め込まれており、この操作部アクチュエータ12の前端に正面円形の押ボタン13が設けられている。押ボタン13は、操作部本体11に対し軸方向に摺動自在であり、また、操作部本体11の中心軸を中心として回転自在となっている。
【0027】
操作部本体11には、前面側が開放された円形筒状のフランジ3が固定されている。フランジ3の側板31は、円形状の押ボタン13の側面に沿って配置されている。また、操作部本体11にはフランジ3の後方側に雄ねじ部11aが形成されている。
【0028】
そして、以上の操作部1は、図示はしないが、操作パネルの取付穴にパネル表側から挿入し、操作部本体11に一体的に固定されたフランジ3の背面を操作パネルの表面に当接させた状態で、操作パネルの裏面側から締付ナット14を雄ねじ部11aにねじ込んで締め付けることにより操作パネルに固定される。なお、操作部本体11の雄ねじ部11aの後方側には円筒形状の連結部11bが設けられている(図3参照)。この連結部11bの外周面には連結溝11c等が形成されており、その連結溝11c等を利用して、接点部2を操作部1に連結することができる。
【0029】
操作部アクチュエータ12には、図2、図6及び図10に示すように、係止爪12a及びフランジ状のばね座12bが設けられている。このばね座12bと、押ボタン13の内面側のばね突当面13gとの間にねじりコイルばね10が挟み込まれている。ねじりコイルばね10の一端部(先端部)は、押ボタン13のばね突当面13gに設けられた係止穴13h(図2参照)に係止されており、ねじりコイルばね10の他端部(後端部)は、操作部アクチュエータ12のばね座12bに設けられた係止穴12cに係止されている。
【0030】
一方、操作部本体11の内部にロック片15が設けられている。ロック片15は、操作部本体11の軸方向(操作方向)と直交する方向に変位が可能である。ロック片15と操作部本体11の内面との間には、ロック片15を操作部本体11の中心に向けて押圧する押圧ばね(コイルばね)16が配置されている。
【0031】
そして、ロック片15は、押ボタン13の操作により、操作部アクチュエータ12が図6に示す位置から接点部2側に向けて押し込まれたときに、操作部アクチュエータ12の係止爪12aにて外方に押され、その係止爪12aを乗り越えた後に、係止爪12aの前端面に当接(係止)して操作部アクチュエータ12の動きをロックする(図10)。また、このようなロック状態から、押ボタン13の操作により、押ボタン13が押込み方向と逆向きに移動したときに、係止爪12aとロック片15との係合が解除される。なお、押ボタン13の操作に伴う動作の詳細は後述する。
【0032】
押ボタン13の側面には、図2に示すように、ガイド溝13aとこのガイド溝13aに連通して周方向に沿って延びる係止溝13cが形成されている。また、フランジ3の側板31の内面にはストッパ32が形成されており、押ボタン13を操作部本体11に後述する要領で装着した状態で、フランジ3のストッパ32が押ボタン13の側面のガイド溝13a内に配置される(押込み前の状態での配置)。なお、フランジ3のストッパ32と、押ボタン13のガイド溝13a及び係止溝13cとは、それぞれ、2箇所に設けられている。
【0033】
押ボタン13には2つの貫通ロック穴13e,13eが互いに並行に形成されている。これら2つの貫通ロック穴13e,13eは、押込み方向と直交する方向において押ボタン13を貫通しており、その両端がそれぞれ押ボタン13の側面で開口している。また、押ボタン13の前面には、2つの前面側ロック穴13f,13fが形成されている。その各前面側ロック穴13f,13fは押込み方向と平行に延びる穴であって、それぞれが対応する貫通ロック穴13eに連通している。
【0034】
また、フランジ3の側板31には4つのロック穴31a・・31aが形成されている。これら4つのロック穴31a・・31aの円周方向における角度ピッチ及び開口面積は、押ボタン13の2つの貫通ロック穴13e,13eの各両端の開口部13i,13iに対応している。
【0035】
さらに、フランジ3のロック穴31a・・31aと、押ボタン13の各貫通ロック穴13e,13eの開口部13i・・13iとの位置関係について説明すると、押ボタン13が押込み前の状態のときには、図7に示すように、フランジ3のロック穴31aに対して貫通ロック穴13eの開口部13iが円周方向に、後述する押ボタン13の回転量に相当する距離だけずれており、ロック穴31aと貫通ロック穴13eとは完全に重なり合う部分がない状態になっている。一方、押込み後の状態のときには、貫通ロック穴13eの開口部13iの全てがフランジ3のロック穴31aに一致するようになっている。
【0036】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。
【0037】
−押ボタンの回転力付与について−
押ボタン13は、前記したように、操作部本体11に対し軸方向に摺動自在にかつ回転自在な状態で取り付けられるが、この操作部本体11への取り付けの際に、ねじりコイルばね10を、図2に示す矢印Xの向きにねじた状態で操作部本体11に装着するとともに、フランジ3の側板31のストッパ32を、押ボタン13の側面のガイド溝13aに嵌め込む。この状態(ボタン押込み前の状態)で、ねじりコイルばね10の弾性力(復元力)により、押ボタン13は図2に示す矢印Yの向きに回転しようとするが、フランジ3のストッパ32が押ボタン13のガイド溝13aの規制面13bに当たって、押ボタン13の回転が規制される(図4)。これにより、ねじりコイルばね10の弾性力によって押ボタン13に図2に示す矢印Yの向きの回転力が付勢される。
【0038】
そして、押ボタン13の押し込みにより、フランジ3のストッパ32がガイド溝13aの規制面13bに沿って移動し、その規制面13bと係止溝13cの係止面13dとの角部を越えた時点で、ストッパ32による押ボタン13の回転規制が解除されて(図8)、押ボタン13が矢印Yの向きに回転する。なお、ボタン押込み前の状態のストッパ32の位置と、ストッパ32が上記角部を越える位置までの距離は、押ボタン13のストロークに対応する距離に設定されている。すなわち、b接点が開離し、なおかつ開離状態を保持する距離に設定されている。
【0039】
−押ボタンの操作及びロックアウトについて−
図4及び図7に示す状態(ボタン押込み前の状態)から、押ボタン13が押し込まれると、ねじりコイルばね10が圧縮(押込み方向の圧縮)されるとともに、操作部アクチュエータ12が接点部2側に向けて移動する。この操作部アクチュエータ12の移動過程において、接点部2の接点部アクチュエータ(図示せず)が移動するとともに、操作部本体11内部のロック片15が操作部アクチュエータ12の係止爪12aにて外方に押され、その係止爪12aを乗り越えときに接点部2のB接点(図示せず)が開離してOFF状態となる。さらに、B接点が開離した直後に、前記したフランジ3のストッパ32による押ボタン13の回転規制が解除され、押ボタン13がねじりコイルばね10の弾性力(復元力)によって回転を開始し、係止溝13c内にストッパ32が入り込む。そして、押ボタン13が回転終点まで回転した状態で、図8及び図11に示すように、押ボタン13の係止溝13c内にストッパ32が配置されるとともに、押ボタン13の貫通ロック穴13eの開口部13iの全てがフランジ3のロック穴31aに一致する。
【0040】
このように、押込み後の状態のときには、押ボタン13の貫通ロック穴13eの開口部13iとフランジ3のロック穴31aとが一致するので、図12に示すように、南京錠4の掛け金41をフランジ3のロック穴31aを通じて押ボタン13の貫通ロック穴13eに挿し込み、その掛け金41を貫通ロック穴13eに貫通させた後に、フランジ3の他方側のロック穴31aを通じて外部に突出させて施錠を行うことによってロックアウトを行うことができる。
【0041】
また、押ボタン13の前面側ロック穴13fを利用して、ロックアウトを行うこともできる。例えば、図12に示すように、複数(6つ)のロックが可能なロックハスプ(掛け金)5を用い、そのロックハスプ5の一対のロック部材51,51を開いた状態で、一方のロック部材51を押ボタン13の前面側ロック穴13fから貫通ロック穴13eに通し、他方のロック部材51をフランジ3の側板31のロック穴31aに通した状態でロックハスプ5を閉じて、前面側ロック穴13f、貫通ロック穴13e及びフランジ3のロック穴31aにロック部材51,51を通し、この後、ロックハスプ5の各ロック穴52・・52に短い掛け金の南京錠を施錠するという使用方法を採れば、7人の作業員について安全性を確保することが可能になる。なお、このような複数のロックが可能なロックハスプ5に替えて、短い掛け金の南京錠を、押ボタン13の前面側ロック穴13fを利用して施錠するようにしてもよい。
【0042】
ここで、この例では、接点部2のB接点が開離した直後に押ボタン13が回転し(ねじりコイルばね10による回転)、この押ボタン13の回転が開始された以後は、フランジ3のストッパ32と押ボタン13の係止溝13cの係止面13dによって、押ボタン13の押込み方向の移動が規制されるので(図8)、押ボタン13が押込み方向に多少動くことはあっても、その動きで接点部2の接点が切り替わることがなくなる。
【0043】
−ロックアウト解除について−
ロックアウトの解除を行う場合、押ボタン13に南京錠4等を掛けた作業者が、各々の南京錠4の施錠を開放し、最後の施錠開放を行った作業者が、南京錠4の掛け金41の押ボタン13から抜き取った後、押ボタン13を上記したねじりコイルばね10による回転方向とは逆向きに、ねじりコイルばね10の弾性力に抗して回転させる。
【0044】
この回転過程において、操作アクチュエータ12の係止爪12aと操作部本体11のロック片15との係合が解除されるとともに、フランジ3のストッパ32が、押ボタン13の係止溝13cの係止面13dに沿って移動し、その係止溝13cの係止面13dとガイド溝13aの規制面13bとの角部を越えた時点で、係止面13dによるストッパ32の係止が解除され、ねじりコイルばね10の弾性力(押込み方向の復元力)によって、押ボタン13が押込み方向の逆向き(接点部2に対して離反する向き)に移動し、接点部2のB接点がON状態となり、図4〜図7に示すような操作前の状態に戻る。
【0045】
以上の例では、接点部にB接点を設けた例を示したが、本発明はこれに限られることなく、接点部にA接点(常時開)を設けておいてもよい。また、1つの押ボタンスイッチに複数の接点を設ける場合、全ての接点をA接点またはB接点としてもよいし、A接点とB接点を組み合わせた構成としてもよい。
【0046】
以上の例では、本発明を非常停止スイッチに適用した例を示しているが、本発明はこれに限られることなく、一般的な押ボタンスイッチ、回転式のセレクタスイッチなどの他の操作スイッチにも適用可能である。
【0047】
以上の例では、押ボタンを操作したときに、押ボタンの貫通ロック穴と側板のロック穴とが合うように構成しているが、本発明はこれに限られることなく、押ボタン等の手動操作部材が非操作状態であるときに、手動操作部材の貫通ロック穴と側板のロック穴とが、一致し、手動操作部材を操作したときに、手動操作部材の貫通ロック穴と側板のロック穴とが完全に重なり合う部分がない状態となるように構成してもよい。この場合、手動操作部材を操作したときに、操作手動部材がねじりコイルばね等の弾性体の弾性力によって回転して、貫通ロック穴と側板のロック穴とが完全に重なり合う部分がない状態となるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、押ボタンスイッチ、非常停止スイッチ、回転式のセレクタスイッチなどの操作スイッチにおいて、簡単な構造のもとにロックアウトを実現するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用した非常停止スイッチの一例を示す斜視図である。
【図2】図1の非常停止スイッチの操作部の分解斜視図である。
【図3】図1の非常停止スイッチの操作部の平面図である。
【図4】図1の非常停止スイッチ(押込み前の状態)を示す斜視図である。
【図5】図1の非常停止スイッチの操作部(押込み前の状態)を示す正面図(A)と側面図(B)を併記して示す図である。
【図6】図5のC−C断面図(A)とD−D断面図(B)を併記して示す図である。
【図7】図6のE−E断面図である。
【図8】図1の非常停止スイッチ(押込み後の状態)を示す斜視図である。
【図9】図1の非常停止スイッチの操作部(押込み後の状態)を示す正面図(A)と側面図(B)を併記して示す図である。
【図10】図9のF−F断面図(A)とG−G断面図(B)を併記して示す図である。
【図11】図9のH−H断面図である。
【図12】図1の非常停止スイッチを使用状態で示す斜視図である。
【図13】ロック穴をスイッチの押込み方向に配置した場合の問題点の説明図である。
【図14】従来の操作スイッチのロックアウト構造の一例を示す斜視図である。
【図15】同じくロックアウト構造の一例を示す正面図である。
【図16】従来の操作スイッチのロックアウト構造の他の例を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 操作部
10 ねじりコイルばね
11 操作部本体
11a 雄ねじ部
11b 連結部
11c 連結溝
12 操作部アクチュエータ
12a 係止爪
12b ばね座
12c 係止穴
13 押ボタン(手動操作部材)
13a ガイド溝
13b 規制面
13c 係止溝
13d 係止面
13e 貫通ロック穴
13f 前面側ロック穴
13g ばね突当面
13h 係止穴
14 締付ナット
15 ロック片
16 押圧ばね(コイルばね)
2 接点部
3 フランジ
31 側板
31a ロック穴
32 ストッパ
4 南京錠
41 掛け金
5 ロックハスプ
51 ロック部材
52 ロック穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点を有する接点部と、前記接点部の接点を切り替え操作するための手動操作部材を有する操作部とを備えた操作スイッチにおいて、
前記手動操作部材の側面に沿うように配置された側板と、前記手動操作部材と前記側板にそれぞれ形成されたロック穴とを有し、前記手動操作部材が非操作状態であるときに、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるように構成されていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
接点を有する接点部と、前記接点部の接点を切り替え操作するための手動操作部材を有する操作部とを備えた操作スイッチにおいて、
前記手動操作部材の側面に沿うように配置された側板と、前記手動操作部材と前記側板にそれぞれ形成されたロック穴とを有し、前記手動操作部材が操作され、当該手動操作部材が前記側板に対して移動したときに、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合って、ロック部材を通すことが可能な貫通穴が形成されるように構成されていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項3】
前記手動操作部材が前記側板に対して回転移動したときに、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合う状態、または、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合わない状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の操作スイッチ。
【請求項4】
当該操作スイッチが押ボタンスイッチであって、手動操作部材である押ボタンが押し込まれたときに、前記押ボタンが弾性体の弾性力によって回転して、前記押ボタンのロック穴が前記側板のロック穴に合う状態、または、前記手動操作部材のロック穴が前記側板のロック穴に合わない状態となるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の操作スイッチ。
【請求項5】
請求項3または4記載の操作スイッチにおいて、前記押ボタンが押し込まれ、前記接点部の接点が切り替わった直後に前記押ボタンが回転を開始するように構成されているとともに、その押ボタンが回転終点位置にあるときに、前記接点部の接点の切り替えを阻止するための手段が設けられていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項6】
前記手動操作部材に、当該手動操作部材を貫通して両端が手動操作部材の側面で開口する貫通ロック穴と、手動操作部材の前面に開口部を有し、前記貫通ロック穴に連通する前面側ロック穴とが形成されており、前記手動操作部材が操作状態または非操作状態であるときに前記貫通ロック穴が前記側板のロック穴に合うように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の操作スイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−49176(P2006−49176A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230460(P2004−230460)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】