説明

操作ペダルの構造

【課題】本発明は、簡単な構成で剛性を確保しつつ重量を低減し、更にコストを低減することのできる操作ペダルの構造を提供する。
【解決手段】ブレーキペダル(1)のアーム(20)は、金属の薄板材で一方が開口した断面略コの字形状の長尺状に形成され、アーム(20)の側壁(22)には支持軸(30)を挿通する挿通孔(23)が設けられている。また、挿通孔(23)の周縁部(24)は、側壁(22)がアーム(20)の外側方向に突出するように形成され、アーム(20)の挿通孔(23)には、支持軸(30)が挿通され、ブレーキペダル(1)を車体構成部材(40)に回転可能に支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ペダルの構造に係り、ペダルアームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操作ペダルは、特許文献1のように、平板状の金属板によって形成されたアーム部と、アーム部の一端側に設けられる足踏プレートと、踏力を伝達するロッド等が連結される踏力伝達部と、アーム部に溶接で固着される中空のボス部で構成されている。
そして、操作ペダルは、中空のボス部に挿入されるスペーサを介して回転可能に車体に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−16182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上記特許文献1の操作ペダルは、アーム部を平板状の金属板で形成するようにしている。また、操作ペダルは、中空のボス部をアーム部に貫通させた状態で溶接して固着し、ボス部にスペーサを挿入しスペーサを介して車体に回転可能に取り付けるようにしている。
しかしながら、アーム部を平板状の金属板で形成すると、アーム部の剛性を確保するために板厚を厚くしなければならず、操作ペダルの重量が増加する傾向にある。更に、板厚を厚くすることでアーム部の成形がしにくくなり、製造コストの増大に繋がっていた。
【0005】
また、ボス部や足踏プレートは、溶接によりアーム部材に接合されるが、アーム部が平板状の金属板であるとボス部や足踏プレートとの接合面が少ないため、アーク溶接で接合するしかなかった。アーク溶接は、母材の溶け込み量が不安定であるなど溶接のバラツキが発生しやすく、品質管理が難しい上、溶接の作業時間を要することから製造コストの増大に繋がる要因となっている。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構成で剛性を確保しつつ重量を低減し、更にコストを低減することのできる操作ペダルの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の操作ペダルの構造では、車体に支持軸を介して回転可能に支持されるアーム部材と、車両の運転者が踏み込み操作する操作部材とからなる操作ペダル構造において、前記アーム部材は、金属の薄板で一方が開口した断面略コの字形状の長尺状に形成され、前記アーム部材の長手方向の一端部には前記操作部材を取り付ける取付部と、前記アーム部材の長手方向の他端部の互いに向かい合う側壁には前記支持軸を挿通する挿通孔とが設けられ、前記挿通孔の周縁部は、前記側壁が前記アーム部材の外側方向に突出するように形成され、前記支持軸は、前記挿通孔に挿通され、前記アーム部材を前記車体に回転可能に支持することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の操作ペダルの構造では、請求項1において、前記アーム部材の前記取付部と前記挿通孔との間の前記アーム部材の前記側壁に、車載機器に踏力を伝達する伝達部材を接続する接続部が形成され、前記伝達部材が前記アーム部材の内側で両側の前記側壁に接続されることを特徴とする。
また、請求項3の操作ペダル構造では、請求項1或いは2において、前記アーム部材のそれぞれの前記側壁には、前記アーム部材の長手方向に延伸し、前記アーム部材の外側方向に突出するように補強部が形成されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の操作ペダル構造では、請求項3において、前記補強部は、少なくとも前記挿通孔と前記接続部との間の前記アーム部材の前記側壁に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、アーム部材を金属の薄板で断面略コの字形状に形成しているので、アーム部材全体の剛性を確保しつつ、重量を低減させることができる。また、アーム部材の互いに向かい合う側壁に支持軸を挿通する挿通孔を設けるとともに挿通孔の周縁部をアーム部材の外側方向に突出するように形成して、支持軸を回転可能に支持するようにしているので、例えば従来のようにアーム部材に中空のボスを設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。従って、重量及びコストを低減することができる。また、ボスを固定するための溶接工程が無くなるので、作業工程数を減らすことができ、更にコストを低減することができる。
【0011】
また、請求項2の発明では、アーム部材の取付部と挿通孔との間のアーム部材の側壁には、車載機器に踏力を伝達する伝達部材が接続される接続部を形成している。そして、車載機器をアーム部材の内側で両側壁に接続するようにしているので、伝達部材との接続部においてアーム部材の剛性を高くすることができ、例えば運転者によるペダル操作時のアーム部材のねじれ変形を抑制することができる。
【0012】
また、請求項3の発明では、アーム部材の側壁には、アーム部材の長手方向に延伸しアーム部材の外側方向に突出する補強部を形成しており、アーム部材の剛性をより一層高くすることができるので、例えば運転者によるペダル操作時のアーム部材のねじれ変形に加え曲げ変形も抑制することができる。
また、請求項4の発明では、少なくとも挿通孔と接続部との間のアーム部材の側壁に補強部が設けられていることが好ましい。これにより、挿通孔と接続部との間におけるアーム部材の剛性が接続部と両側壁の補強部によって確実に確保されて挿通孔近傍でのアーム部材の変形を抑制することができるので、ペダル操作時におけるアーム部材の回転動作に対する悪影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る操作ペダルの構造を適用したブレーキペダルの概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係るアームの側面視図である。
【図3】図2のA−A線における断面である。
【図4】図2のB−B線における断面である。
【図5】本発明に係る操作ペダルの構造を適用したブレーキペダルの車体への取り付け状態を示す図である。
【図6】図5のC−C線における断面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まずは、本発明に係る操作ペダルの構造を適用したブレーキペダルの概略構成を説明する。
図1は、本発明に係る操作ペダルの構造を適用したブレーキペダルの概略構成を示す図である。また、図2は、本発明に係るアームの側面視図である。そして、図3と図4は、図2のA−A線とB−B線における断面である。なお、それぞれの図中の矢印「前」は車体前方向を、矢印「横」は車体幅方向を、矢印「上」は車体上方向をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、ブレーキペダル1は、運転者が操作する足踏プレート(操作部材)10と、車体の上下方向に延設されて足踏プレート10を支持するアーム(アーム部材)20とで構成されている。足踏プレート10は、アーム20の下端部(一端部)に溶接で固着され、アーム20は、その上端部(他端部)が支持軸30にて車体構成部材40に回転可能に支持された状態で取り付けられている。
【0016】
図1から図4に示すように、アーム20は、金属の薄板材によって断面略コの字形状で車体上下方向に延びる長尺状に形成されている。アーム20の下端部(一端部)には、アーム20の中間部に比べ幅広に形成され、足踏プレート10を溶接で固着する足踏プレート取付部(取付部)21が設けられている。また、アーム20の上端部(他端部)には、コの字形状の開放部分を挟み互いに向かい合うように設けられる側壁22に、同軸となるように貫通して形成される挿通孔23が設けられている。アーム20の側壁22は、図3のように挿通孔23の周縁部24が外側方向に突出するように形成されている。具体的には、挿通孔23の周縁部24は、当該周縁部24にバーリング加工を施すことで外側方向に突出するように形成されている。また、アーム20の中間部の側壁22には、図示しない車両のブレーキブースタ(車載機器)に繋げられて踏力を伝達するプッシュロッド(伝達部材)を取り付けるプッシュロッド取付部(接続部)25が設けられている。プッシュロッド取付部25は、向かい合う側壁22に同軸上で円形状の孔を貫通して形成されている。また、図1及び2に示すように、足踏プレート取付部21とプッシュロッド取付部25との間の側壁22及び挿通孔23とプッシュロッド取付部25との間の側壁22には、図4に示すように、それぞれアーム20の外側方向に突出し、アーム20の長手方向に延伸するようにリブ(補強部)26,27がそれぞれ形成されている。
【0017】
足踏プレート10は、金属の薄板材で形成されている。そして、足踏プレート10は、アーム20の足踏プレート取付部25に溶接にて固着される。また、アーム20への固着後の足踏プレート10には、ゴム材等で形成された図示しないカバーが被せられる。
なお、溶接方法としては、溶接品質が比較的安定し溶接時間の短いスポット溶接やプロジェクション溶接が好ましい。
【0018】
次にこのように構成された操作ペダル構造を適用したブレーキペダル1の車体への取り付けについて説明する。
図5は、本発明に係る操作ペダルの構造を適用したブレーキペダル1の車体への取り付け状態を示す図である。また、図6は、図5のC−C線における断面である。なお、図中の矢印「前」は車体前方向を、矢印「上」は車体上方向をそれぞれ示す。
【0019】
図5及び図6に示すように、ブレーキペダル1は、アーム20の挿通孔23に支持軸30が挿入され、車体構成部材40に回転可能に取り付けられる。また、図6のように、車体に備えられる図示しないブレーキブースタ(車載機器)より延伸するプッシュロッド(伝達部材)41の先端は、アーム20の内側に配設され、アーム20のプッシュロッド取付部25にプッシュロッド支持軸42にて回転可能に支持される。そして、プッシュロッド支持軸42は、両端部にスナップリング等のプッシュロッド取付部材43が取り付けられ、アーム20に脱着可能に固定される。
【0020】
以下、このように構成された本発明に掛かる操作ペダル構造を適用したブレーキペダル1の作用及び効果について説明する。
ブレーキペダル1のアーム20は、金属の薄板材で一方が開口した断面略コの字形状の長尺状に形成され、アーム20の対向する両側壁22には支持軸30を挿通する挿通孔23が設けられている。また、挿通孔23の周縁部24は、側壁22がアーム20の外側方向に突出するように、バーリング加工で形成されている。そして、支持軸30は、アーム20の挿通孔23に挿通され、ブレーキペダル1を車体構成部材40に回転可能に支持している。
【0021】
このように、ブレーキペダル1のアーム20を金属の薄板材で断面略コの字形状に形成しているので、アーム20の全体的な剛性を維持しつつ、重量を低減させることができる。また、アーム20の互いに向かい合う側壁22に支持軸30を挿通する挿通孔23を設けるとともに挿通孔23の周縁部24をバーリング加工によりアーム20の外側方向に突出するように形成することで、支持軸30が挿通される挿通孔23の周縁部24の剛性を確保し、アーム20を安定して支持させることが可能となる。したがって、例えば従来のようにアーム20に中空のボスを設けて支持軸30に支持させる必要がないので、ブレーキペダル1における部品点数を削減して、重量及びコストを低減することができる。また、挿通孔23の周縁部24の溶接工程、即ちボスを接合するための工程が無くなるので、検査工程も含めて作業工程数を低減することができ、更にブレーキペダル1のコストを低減することができる。
【0022】
また、ブレーキペダル1のアーム20の足踏プレート取付部21と挿通孔23との間のアーム20の側壁22には、ブレーキブースタより延伸するプッシュロッド41をプッシュロッド支持軸42を介して取り付けるプッシュロッド取付部25を形成している。そして、プッシュロッド41をアーム20の内側に取り付け、アーム20の両側壁22に接続するようにしているので、アーム20の内側に接続されたプッシュロッド42によりアーム20の剛性を更に高くすることができ、例えば運転者によるブレーキペダル1操作時のアーム20のねじれ変形を抑制することができる。
【0023】
また、ブレーキペダル1のアーム20の側壁22には、アーム20の長手方向に延伸しアーム20の外側方向に突出するリブ26,27が形成されており、より一層、アーム20の剛性を高くすることができるので、例えば運転者によるブレーキペダル1操作時のアーム20のねじれ変形に加え曲げ変形も抑制することができる。
特に、アーム20上端部の挿通孔23とプッシュロッド取付部25との間にリブ27が設けられているので、挿通孔23とプッシュロッド取付部25との間におけるアーム20の剛性が確保されて、挿通孔23近傍でのアーム20の変形を抑制することができる。したがって、例えば、ブレーキペダル1操作時においてアーム20の変形により互いに対向する挿通孔23の位置がずれると、アーム20がスムーズに回動できなくなる虞があるが、このような現象を抑制することができ、ブレーキペダル1の正確な作動を図ることができる。
【0024】
また、アーム20を断面略コの字形状とするとともに足踏プレート取付部21を薄板で幅広に形成しているので、足踏プレート10との接触面を広くすることができ、足踏プレート10をアーム20に安定して接合することができる。その上、足踏プレート10の取り付けに、溶接品質が比較的安定し溶接時間の短いスポット溶接やプロジェクション溶接を用いることが可能となり、従来の接合方法と比べ溶接品質を向上させつつ、溶接にかかる時間を削減することができる。したがって更にコストを低減することができる。
【0025】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、発明の形態は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態は、操作ペダルの構造をブレーキペダルに適用しているが、これに限定するものではなく、ブレーキペダルの他にクラッチペダル等に適用してもよく、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ブレーキペダル
10 足踏プレート(操作部材)
20 アーム(アーム部材)
21 足踏プレート取付部(取付部)
22 側壁
23 挿通孔
24 周縁部
25 プッシュロッド取付部(接続部)
26 リブ(補強部)
27 リブ(補強部)
30 支持軸
41 プッシュロッド(伝達部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持軸を介して回転可能に支持されるアーム部材と、車両の運転者が踏み込み操作する操作部材とからなる操作ペダル構造において、
前記アーム部材は、金属の薄板で一方が開口した断面略コの字形状の長尺状に形成され、前記アーム部材の長手方向の一端部には前記操作部材を取り付ける取付部と、前記アーム部材の長手方向の他端部の互いに向かい合う側壁には前記支持軸を挿通する挿通孔とが設けられ、
前記挿通孔の周縁部は、前記側壁が前記アーム部材の外側方向に突出するように形成され、
前記支持軸は、前記挿通孔に挿通され、前記アーム部材を前記車体に回転可能に支持することを特徴とする操作ペダルの構造。
【請求項2】
前記アーム部材の前記取付部と前記挿通孔との間の前記アーム部材の前記側壁に、車載機器に踏力を伝達する伝達部材を接続する接続部が形成され、前記伝達部材が前記アーム部材の内側で両側の前記側壁に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の操作ペダルの構造。
【請求項3】
前記アーム部材のそれぞれの前記側壁には、前記アーム部材の長手方向に延伸し、前記アーム部材の外側方向に突出するように補強部が形成されることを特徴とする、請求項1或いは2に記載の操作ペダルの構造。
【請求項4】
前記補強部は、少なくとも前記挿通孔と前記接続部との間の前記アーム部材の前記側壁に設けられることを特徴とする、請求項3に記載の操作ペダルの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69031(P2013−69031A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205853(P2011−205853)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】