説明

操作位置検出装置及びシフト装置

【課題】操作量が小さくても操作位置を精細に検出することができる操作位置検出装置を提供すること。
【解決手段】操作位置検出装置の操作部材16は、所定の方向に移動可能に設けられ、該操作部材16は、その移動方向に交わる磁束中心線Mを中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁されている。そして、操作位置検出装置の制御部は、MRE素子20から出力される操作部材16の移動に伴う磁束の方向の変化に応じた検出信号に基づいて、操作部材16の操作位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作位置検出装置及びシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シフト装置には、シフトレバー等の切替操作を検知して電気的な切替信号に変換し、その切替信号に基づき自動車等の変速機の接続状態を切り替える所謂バイワイヤ方式のものがある。
【0003】
例えば特許文献1に記載されているシフト装置は、フロアコンソール等の設置部の内部においてその基端部が回動可能に支持されるとともに先端部が同設置部の一側面に設けられたシフトゲートから突出するシフトレバーと、該シフトレバーの基端部に設けられシフトゲートに沿ったシフトレバーの操作位置に応じた検出信号を出力する操作位置検出装置とを備えている。
【0004】
この操作位置検出装置は、シフトレバーの回動軸に固定され該回動軸と一体で回動するマグネットと、該マグネットに対向するよう配置された磁気抵抗素子(以下、MRE(Magneto Resistive Effect)素子という)とを備えている。MRE素子は、シフトレバーの切替操作にともなって回転するマグネットの磁束の方向の変化を非接触で検出し、その変化に応じた検出信号(出力電圧)を出力する。シフト装置は、MRE素子からの検出信号に基づきシフトレバーの操作位置を判別し、該操作位置に対応する切替信号を変速機へ出力する。このようなシフト装置では、リンク機構等の機械的な構成が低減され、小型化が容易となる。
【特許文献1】特開2003−154868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、シフト装置のシフトレバーは、シフトゲートに沿って操作されるものである。したがって、シフトレバーの操作範囲は、シフトゲートの長さが長くなるほど広くなり、逆に、シフトゲートの長さが短くなるほど狭くなる。このため、シフト装置の設置スペースの縮小化を図るべくシフトゲートを短く設定すると、シフトレバーの操作範囲が狭くなり、該シフトレバーの回動軸に固定されたマグネットの回転角度の範囲も狭くなる。したがって、シフトレバーの操作量(各操作位置)に対応するマグネットの磁束の方向の変化量が少なくなり、これに伴い各操作位置に対応する出力電圧の間の差も小さくなる。このため、MRE素子の感度や寸法精度のばらつき等によりシフトレバーの操作位置が誤って検出されることが懸念される。
【0006】
ここで、シフトレバーの各操作位置に対応するマグネットの磁束の方向の回転範囲を広くするべく、シフトレバーの操作量を増幅してマグネットを回転させるギヤ機構を設けるということが考えられるが、このようなギヤ機構を設けることによりシフト装置が大型化してしまうため好ましくない。
【0007】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、操作量が小さくても操作位置を精細に検出することができる操作位置検出装置及びシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、所定の方向に移動可能に設けられ、その移動方向に交わる磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁された磁極部を有する操作部材と、前記操作部材の移動に伴う前記磁束の方向の変化に応じた検出信号を出力する検出信号出力手段と、前記検出信号に基づいて前記操作部材の操作位置を検出する位置検出手段とを備えたことをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、検出信号出力手段から出力される操作部材の移動に伴う磁束の方向の変化に応じた検出信号に基づいて、操作部材の操作位置が検出される。この操作部材の磁極部は、移動方向に交わる磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するため、操作部材の移動に伴い磁束中心線が移動すると、磁束の方向が大きく変化する。したがって、操作部材の操作量が小さくても、磁束の角度の変化量を確保することが可能となり、操作位置を精細に検出することができる。なお、この操作部材の移動に伴う磁束の方向の変化量は、磁束中心線の移動軌跡に近い位置ほど大きくなる。このため、検出信号出力手段を、より磁束中心線の移動軌跡に近づけることにより、操作部材の操作量に対する磁束の方向の変化量をより大きくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記磁極部は、前記操作部材の移動方向に直交する磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁され、前記検出信号出力手段は、前記磁極部の移動方向に沿う検出面を備えたことをその要旨とする。
【0011】
本発明によれば、磁極部は、操作部材の移動方向に直交する磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁され、検出信号出力手段は、磁極部の移動方向に沿う検出面を備えたため、磁極部が形成する磁束において検出信号出力手段の検出面に沿う磁束の割合が増加する。よって、検出面に沿った磁束の方向の変化をより的確にとらえ、操作位置をより精細に検出することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記操作部材は、基準位置と該基準位置とは異なる位置との間を移動可能に設けられるものであり、前記操作部材を前記基準位置側へ常時付勢する付勢部材を備えたことをその要旨とする。
【0013】
本発明によれば、操作部材は、付勢部材により基準位置側へ常時付勢される。このため、操作力の入力により操作部材が付勢部材の付勢力に抗して基準位置から移動しても、操作力が解除されると、操作部材は、付勢部材の付勢力により基準位置側へ移動する。よって、操作力が入力されていない状態において基準位置に保持することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、シフトゲートから突出し該シフトゲートに沿って操作されるシフトレバーと、前記シフトレバーの操作位置を検出する操作位置検出装置とを備え、該操作位置検出装置の検出結果に基づいて車両の変速機の接続状態を切り替えるシフト装置であって、前記操作位置検出装置は、前記シフトレバーの操作に基づいて所定の方向に移動可能に設けられ、その移動方向に交わる磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁された磁極部を有する操作部材と、前記操作部材の移動に伴う前記磁束の方向の変化に応じた検出信号を出力する検出信号出力手段と、前記検出信号に基づいて前記操作部材の操作位置を検出する位置検出手段とを備えたことをその要旨とする。
【0015】
本発明によれば、検出信号出力手段から出力される操作部材の移動に伴う磁束の方向の変化に応じた検出信号に基づいて、操作部材の操作位置が検出される。この操作部材の磁極部は、移動方向に交わる磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するため、操作部材の移動に伴い磁束中心線が移動すると、磁束の方向が大きく変化する。したがって、操作部材の操作量が小さくても、磁束の角度の変化量を確保することが可能となり、操作位置を精細に検出することができる。なお、この操作部材の移動に伴う磁束の方向の変化量は、磁束中心線の移動軌跡に近い位置ほど大きくなる。このため、検出信号出力手段を、より磁束中心線の移動軌跡に近づけることにより、操作部材の操作量に対する磁束の方向の変化量をより大きくすることができる。その結果、シフトレバーの操作範囲を狭く設定することが可能となり、車両におけるシフト装置の設置スペースを縮小化することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記シフトレバーは、前記シフトゲートに沿って複数の操作方向に操作されるものであり、前記操作方向に対応する複数個の前記操作位置検出装置を備えたことをその要旨とする。
【0017】
本発明によれば、シフトレバーの操作方向に対応する複数個の操作位置検出装置が設けられているため、シフトレバーがシフトゲートに沿って複数の操作方向に操作された場合の操作位置を精細に検出することができる。よって、シフトレバーの操作位置が誤って検出されてしまうことをより好適に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作量が小さくても操作位置を精細に検出することができる操作位置検出装置及びシフト装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、シフト装置1のベースハウジング2は略箱状に形成され、車両のフロアコンソールFに締結固定されている。また、ベースハウジング2の上部には、カバープレート3が被せられている。カバープレート3には、シフトゲート3aが形成されている。シフトゲート3aは、車両前後方向(図1中、左右方向)に延びる直線状に形成されている。シフト装置1のシフトレバー4は、その基端部4aよりも若干先端側(図1中、上側)に設けられた支持軸5をベースハウジング2に支承された状態で、その先端部4bがシフトゲート3aから上方に突出している。これにより、シフトレバー4の先端に設けた把持部4cを把持して操作することにより、シフトレバー4は、該支持軸5を支点として、前後方向(図1中、左右方向)に移動(回動)する。なお、本実施の形態において、シフトレバー4は、シフトゲート3aに沿った3箇所の位置へ移動可能となっている。詳しくは、シフトレバー4は、同図に示す中立位置と、その中立位置から後方(矢印F1方向)に回動(傾動)された位置と、該中立位置から前方(矢印F2方向)に傾動された位置とに移動可能となっている。また、シフトレバー4は、図示しない復帰機構により各位置から中立位置に自動的に復帰するようになっている。そして、中立位置が「N(ニュートラル)」ポジション、後方(矢印F1方向)への傾動位置が「D(ドライブ)」ポジション、前方(矢印F2方向)への傾動位置が「R(リバース)」ポジションとなるように設定されている。
【0020】
また、ベースハウジング2の内部においてシフトレバー4の基端部4aの近傍には、シフト装置1の操作位置を検出するための操作位置検出装置6が設けられている。操作位置検出装置6は、ベースハウジング2に固定されシフトレバー4の支持軸5の軸方向を板厚方向とする板状の設置プレート7と、該設置プレート7においてシフトレバー4の基端部4aに対向する側の設置面7aに固定された一対の操作量検出装置8a,8bと、ベースハウジング2内に配置された位置検出手段としての制御部9とを備えている。一対の操作量検出装置8a,8bは、シフトレバー4の基端部4aを挟んで同シフトレバー4の操作方向両側に設けられ、各操作量検出装置8a,8bは、シフトレバー4の各操作方向への操作量(傾動量)を検出し検出信号としての操作量検出信号を出力する。各操作量検出装置8a,8bは、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットにより構成されている。制御部9は、各操作量検出装置8a,8bから出力された操作量検出信号(出力電圧)に基づいてシフトレバー4の操作位置を検出する。詳しくは、制御部9は、各操作量検出装置8a,8bから出力された操作量検出信号が閾値TH(図6参照)を超えた場合に、各操作量検出装置8a,8bの対応する方向に設定された操作位置にシフトレバー4が操作されたと判別する。そして、制御部9は、該操作位置に対応する接続状態に変速機10aを設定するための制御信号をアクチュエータ10に出力する。これにより、変速機10aの接続状態が切り替えられる。
【0021】
次に、操作量検出装置8a,8bについて説明する。なお、後方側に配置された操作量検出装置8bは前方側に配置された操作量検出装置8aと基本構造は同じであるので、後方側に配置された操作量検出装置8bについては説明を省略し、本実施の形態ではシフトレバー4の前方側に配置された操作量検出装置8aについて説明する。
【0022】
図4にて示すように、操作量検出装置8aのケース11は、樹脂等の非磁性体材料によりシフトレバー4側に開口する箱状に形成され、その開口部には、カバー12が被せられている。詳しくは、図2及び図3に併せて示すように、ケース11の外側面には、3つの係合突起11aが設けられており、カバー12の周縁部においてケース11の係合突起11aに対応する部分には、爪部12aが設けられている。カバー12は、爪部12aが係合突起11aに係止されることにより、ケース11に固定される。なお、図2はケース11にカバー12を装着した状態を示し、図3はカバー12を取り除いた状態を示す。
【0023】
図3に示すように、ケース11には、前後方向(図3中、左右方向)に長い略矩形状に開口する操作部材収容部13と、該操作部材収容部13の短手方向一側(図3中、上側)の内面に設けられた連通部13aを介して操作部材収容部13に連通する付勢部材収容部14とが設けられている。また、図4に示すように、操作量検出装置8aのケース11の底部において操作部材収容部13に対応する部分には、操作部材収容部13の短手方向(図4中、紙面奥行き方向)に沿って延びる溝状のセンサ収容部15が凹設されている。図2に示すように、カバー12において操作部材収容部13に対応する部位には、同操作部材収容部13の前後及び上下方向の幅よりも小さな幅を有する矩形状の開口部12bが設けられている。
【0024】
図4に併せて示されるように、ケース11の操作部材収容部13には、操作部材16が設けられている。操作部材16は、操作部材収容部13に収容された磁極部17と、カバー12の開口部12bを介して外部に突出する入力部18とを備えている。磁極部17は、カバー12の開口部12bの上下方向の幅よりも大きく且つ操作部材収容部13の上下方向の幅よりも小さい直径を有する円柱状に形成されている。入力部18は、該磁極部17において操作部材収容部13の開口側の端面17a(図4参照)中央部分から前記シフトレバー4の支持軸5の軸方向に延びるとともにカバー12の開口部12bの上下方向の幅よりも小さい直径を有する円柱状に形成されている。これにより、図5に示すように、操作部材16は、操作部材収容部13の長手方向において磁極部17の外周面17cが操作部材収容部13の長手方向後側(図5中、右側)の内面13bに当接する基準位置P1と、磁極部17の外周面17cが操作部材収容部13の長手方向前側(図5中、左側)の面13cに当接する移動終了位置P2との間を移動する。また、本実施の形態では、磁極部17は、操作部材収容部13の前後方向の幅の略2/3の直径を有する円柱状に形成されている。このため、操作部材収容部13に沿った操作部材16の操作量(移動量)Dは、操作部材16の直径の略1/2となっている。また、上述したように、操作部材16の磁極部17の外径が開口部12bの上下方向の幅より大きいことから、カバー12の開口部12bを介して操作部材16が抜け落ちることが防止される。また、磁極部17は、その開口側の端面17aがN極、反開口側の端面17bがS極となるように着磁されている(図4参照)。すなわち、磁極部17は、その移動方向に直交する磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁されている。
【0025】
図3に示すように、付勢部材収容部14には、付勢部材としての捩りコイルばね19が収容されている。捩りコイルばね19は、その一端において付勢部材収容部14に設けられた係止部14aに係止され、他端において操作部材16の磁極部17の外周面17cに当接する。操作部材16は、捩りコイルばね19に付勢されて磁極部17の外周面17cが操作部材収容部13の長手方向一側(図3中、右側)の内面13bに当接した状態に保持される。これにより、操作部材16の操作部材収容部13に沿った移動が許容された状態において、操作部材16は、基準位置P1に保持される(図5参照)。
【0026】
図5に示すように、一対の操作量検出装置8a,8bは、その操作部材16の入力部18が基準位置P1にある状態においてシフトレバー4の基端部4aに当接するように配置される。これにより、シフトレバー4が「D」ポジション側(図5に示す矢印F1方向)へ操作されると、シフトレバー4の前方側(図5中、左側)に配置された操作量検出装置8aの操作部材16がシフトレバー4の基端部4aに押されて捩りコイルばね19の弾性力に抗して前方側へ移動する。また、シフトレバー4が「R」ポジション側(図5に示す矢印F2方向)へ操作されると、シフトレバー4の後方側(図5中、右側)に配置された操作量検出装置8bの操作部材16がシフトレバー4の基端部4aに押されて捩りコイルばね19の弾性力に抗して後方側へ移動する。すなわち、シフトレバー4が操作されると、そのシフトレバー4の操作方向に対応する方向の操作量検出装置8a,8bの操作部材16がシフトレバー4の操作量に応じた位置に移動する。
【0027】
図4に示すように、前記設置プレート7の設置面7aにおいて操作量検出装置8aのセンサ収容部15に対応する部位には、検出信号出力手段としての一対の磁気抵抗素子(以下、MRE(Magneto Resistive Effect)素子という)20,21が固定されている。なお、一対のMRE素子20,21のうち一方はフェールセーフを図るためのものである。図3に示すように、各MRE素子20,21は、センサ収容部15において操作部材収容部13の長手方向中央部分に対応する位置に設けられている。また、操作部材収容部13の短手方向(図3中、上下方向)において離間して配置されている。これにより、各MRE素子20,21は、ケース11を挟んで操作部材16の磁極部17の上側の部分と下側の部分とに対向するようにそれぞれ配置されている。また、各MRE素子20,21は、その検出面20a,21aが操作部材16の移動方向に沿うように配置されている。また、各MRE素子20,21の操作部材収容部13の長手方向に沿った長さは、操作部材16の直径の略1/2に設定されている。このため、磁極部17の磁束中心線Mは、操作部材収容部13の長手方向において各MRE素子20,21の一端部に対応する位置から他端部に対応する位置へと移動する。そして、各MRE素子20,21は、操作部材16の磁極部17の移動に伴う磁束の方向の変化を検出し、該磁束の変化に対応する操作量検出信号(出力電圧)を出力する。MRE素子20,21から出力された操作量検出信号は、制御部9に入力される。制御部9は、MRE素子20,21から入力された操作量検出信号と操作位置毎に予め定められた閾値THとを比較し、該所定の閾値THを超えた場合に、「D」ポジションにシフトレバー4が操作されたと判別し、該操作位置に対応する接続状態に変速機10aを設定するための制御信号をアクチュエータ10に出力する。また、後方側に配置された操作量検出装置8bの操作部材16が操作され、操作量検出信号が所定の閾値THを越えた場合は、「R」ポジションにシフトレバー4が操作されたと判別し、該操作位置に対応する接続状態に変速機10aを設定するための制御信号をアクチュエータ10に出力する。すなわち、操作位置検出装置6において操作量検出装置8a,8bは、シフトレバー4が各操作位置(「D」若しくは「R」ポジション)に操作された場合に所定の信号(閾値THを越える操作量検出信号)を出力するスイッチとして機能する。
【0028】
次に、本実施の形態の操作量検出装置8a,8bの作用について図6(a)〜(c)を用いて説明する。なお、図6(a)〜(c)は、シフトレバー4の前方側に配置された操作量検出装置8aについて、シフトレバー4の各操作位置における操作部材16とMRE素子20との位置関係を示すものである。詳しくは、図6(a)は、シフトレバー4が「N」ポジションにあるときの位置関係を示し、図6(c)は、シフトレバー4が「D」ポジションにあるときの位置関係を示し、図6(b)は、シフトレバー4が「N」ポジションと「D」ポジションとの略中間にあるときの位置関係を示すものである。
【0029】
図6(a)に示すように、シフトレバー4が中立位置(「N」ポジション)にあるとき、操作部材16は、その左上側の部分がMRE素子20の検出面20aの右下の部分に対向するように配置される。これにより、操作部材16の磁極部17の磁束中心線Mは、MRE素子20の下方右側に配置される。したがって、MRE素子20の検出面20aには、操作部材16の移動方向に対して略45°をなす方向の磁束が入射する。
【0030】
図6(b)に示すように、シフトレバー4が後方に操作されると、操作部材16は、その中央上側の部分がMRE素子20の検出面20aの下部中央に対向する位置に至る。これにより、操作部材16の磁極部17の磁束中心線Mは、MRE素子20の下方中央に配置される。したがって、MRE素子20の検出面20aには、操作部材16の移動方向に対して略90°をなす方向の磁束が入射する。
【0031】
シフトレバー4がさらに後方に操作され操作位置(「D」ポジション)に配置されると、操作部材16は、その右上側の部分がMRE素子20の検出面20aの左下の部分に対向するように配置される。これにより、操作部材16の磁極部17の磁束中心線Mは、MRE素子20の下方右側に配置される。したがって、MRE素子20の検出面20aには、操作部材16の移動方向に対して略135°をなす方向の磁束が入射する。すなわち、シフトレバー4が「N」ポジションから「D」ポジションに移動する間に(操作部材16が基準位置P1から移動終了位置P2に移動する間に)、MRE素子20に入射する磁束の方向は略90°変化する。なお、この操作部材16の移動に伴う磁束の方向の変化量は、磁束中心線Mの移動軌跡に近い位置ほど大きくなる。このため、MRE素子20,21を、より磁束中心線Mの移動軌跡に近づけることにより、操作部材16の操作量Dに対する磁束の方向の変化量をより大きくすることができる。
【0032】
制御部9は、操作量検出装置8a,8bから出力された操作量検出信号(出力電圧)と所定の閾値THとを比較してシフトレバー4が「D」ポジションに操作されたか否かを判別する。したがって、シフトレバー4の各操作位置に対応する操作量検出信号(出力電圧)の範囲が広くなり、MRE素子の感度や寸法精度のばらつき等により操作量検出信号(出力電圧)がオフセットすることによる誤動作が好適に防止されるようになる。
【0033】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)操作位置検出装置6(操作量検出装置8a,8b)の操作部材16は、所定の方向(基準位置P1と移動終了位置P2との間)に移動可能に設けられ、該操作部材16の磁極部17は、その移動方向に交わる磁束中心線Mを中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁されている。そして、操作位置検出装置6の制御部9は、MRE素子20,21から出力される操作部材16の移動に伴う磁束の方向の変化に応じた検出信号に基づいて、操作部材16の操作位置を検出する。この操作部材16の磁極部17は、移動方向に交わる磁束中心線Mを中心とする放射状の磁束を形成するため、操作部材16の移動に伴い磁束中心線Mが移動すると、磁束の方向が大きく変化する。したがって、操作部材16の操作量Dが小さくても、磁束の角度の変化量を確保することが可能となり、操作位置を精細に検出することができる。なお、この操作部材16の移動に伴う磁束の方向の変化量は、磁束中心線Mの移動軌跡に近い位置ほど大きくなる。このため、MRE素子20,21を、より磁束中心線Mの移動軌跡に近づけることにより、操作部材16の操作量Dに対する磁束の方向の変化量をより大きくすることができる。その結果、シフトレバー4の操作範囲を狭く設定することが可能となり、車両におけるシフト装置1の設置スペースを縮小化することができる。
【0034】
(2)操作部材16の磁極部17は、操作部材16の移動方向に直交する磁束中心線Mを中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁され、MRE素子20,21は、磁極部の移動方向に沿う検出面20a,21aを備えたため、磁極部17が形成する磁束においてMRE素子20,21の検出面20a,21aに沿う磁束の割合が増加する。よって、検出面20a,21aに沿った磁束の方向の変化をより的確にとらえ、操作部材16の操作位置をより精細に検出することができる。
【0035】
(3)操作部材16は、捩りコイルばね19により基準位置P1側へ常時付勢される。このため、操作力の入力により操作部材16が捩りコイルばね19の付勢力に抗して基準位置P1から移動しても、操作力が解除されると、操作部材16は、捩りコイルばね19の付勢力により基準位置P1側へ移動する。よって、操作力が入力されていない状態において基準位置P1に保持することができる。
【0036】
(4)操作位置検出装置6にはシフトレバー4の操作方向に対応する複数個の操作量検出装置8a,8b(複数組の操作部材16及びMRE素子20,21)が設けられているため、シフトレバー4がシフトゲート3aに沿って複数の操作方向に操作された場合の操作位置を精細に検出することができる。よって、シフトレバー4の操作位置が誤って検出されてしまうことをより好適に防止することができる。
【0037】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、MRE素子20,21を該設置プレート7の設置面7aに固定したがこのような態様に限定されない。MRE素子20,21は、操作部材16の移動に伴う磁束の方向の変化を検出可能な位置に配置されればよく、例えばMRE素子20,21をベースハウジング2に固定したりベースハウジング2の内部に組み込んだりするなど適宜変更可能である。
【0038】
・上記実施の形態では、操作部材16の磁極部17の磁束中心線Mが、操作部材16の移動方向に直交するよう着磁したが、磁束中心線Mが移動方向に交わる(傾斜する)ように着磁されれば直交していなくてもよい。
【0039】
・上記実施の形態では、操作位置検出装置6の各操作量検出装置8a,8bにおいて、1つの操作部材16に対して2つ(一対)のMRE素子20,21を設けたが、このような態様に限定されず、1つの操作部材16に対して1つのMRE素子を設けてもよい。
【0040】
・上記実施の形態では、シフトレバー4の各操作方向への操作量を検出するために、シフトレバー4の操作方向両側に別部材からなる一対の操作量検出装置8a,8bを設けたが、このような態様に限定されず、操作量検出装置8a,8bを一体的に形成してもよい。また、上記実施の形態では、操作量検出装置8a,8b(操作部材16)をシフトレバー4の操作方向両側に配置し、それぞれが対応する操作方向のみにおけるシフトレバー4の操作量を検出するようにしたが、このような態様に限定されない。例えば、シフトレバーの操作方向両側への移動に追従する1つの操作部材と該操作部材に対応するMRE素子とを備えた1つの操作量検出装置により操作方向両側への操作量を検出するようにしてもよい。
【0041】
・上記実施の形態では、操作部材16の磁極部17を略円柱状に形成したが、このような態様に限定されず、放射状の磁束を形成する構成であれば、例えば円環状に形成するなど適宜変更可能である。また、上記実施の形態では、磁極部17の端面に入力部18を設けたが、磁極部17の外周面17cから突出するように入力部を設けてもよい。
【0042】
・上記実施の形態では、操作部材16の操作量(移動量)Dを、操作部材16の直径の略1/2に設定したがこのような態様に限定されず、適宜変更可能である。
・上記実施の形態では、操作位置検出装置6の制御部9をベースハウジング2の内部に設けたが、該制御部9をベースハウジング2の外部に設けてもよい。また、上記実施の形態では、位置検出手段としての制御部9から、シフトレバー4の操作位置に対応する接続状態に変速機10aを設定するための制御信号をアクチュエータ10に出力するようにしたが、このような態様に限定されず、該制御部9とは別体のアクチュエータ制御部から前記制御信号を出力するようにしてもよい。なお、このアクチュエータ制御装置はベースハウジング2の外部に設けてもよく、また内部に設けてもよい。
【0043】
・上記実施の形態では、2つの操作量検出装置8a,8bに対して1つの制御部9を設けたが、操作量検出装置に対応する数(例えば、上記実施の形態では2つ)の制御部を設けて各制御部から操作部材の操作位置に対応する信号を出力するようにしてもよい。
【0044】
・上記実施の形態では、シフトレバー4は、シフトゲート3aに沿った3箇所の位置へ移動可能となっているが、2箇所の位置へ移動可能となっていてもよい。また、4箇所以上の位置へ移動可能な構成としてもよい。なお、この場合、操作位置検出装置6の制御部9が、2つ以上の閾値に基づいて複数の操作位置にシフトレバー4が操作されたと判別するようにすれば、操作量検出装置の数が大幅に増加してしまうことを防止することができる。
【0045】
・上記実施の形態では、シフトレバー4を各位置(操作位置「D」ポジション、「R」ポジション)から中立位置(「N」ポジション)に自動的に復帰させるための復帰機構(図示略)を設けたが、該復帰機構を省略し、シフトレバーが各操作位置から復帰しないタイプのシフト装置に適用してもよい。
【0046】
・上記実施の形態では、車両のフロアコンソールFに固定される所謂フロアタイプのシフト装置1に本発明の操作位置検出装置6を適用したが、例えばインストルメントパネル等に固定されるシフト装置1に適用してもよい。この場合、省スペース化の観点から特に有効である。
【0047】
・上記実施の形態では、直線状に形成したシフトゲート3aに沿ってシフトレバー4を一次元的に操作するシフト装置1に適用したが、H型やT型などに形成したシフトゲートに沿ってシフトレバーを二次元的に操作するシフト装置に適用してもよい。また、シフトレバーを例えばシフトゲートからの突出方向(シフトレバーの長手方向)に移動可能な構成とし、シフトレバーを三次元的に操作するシフト装置に適用してもよい。
【0048】
・上記実施の形態では、シフト装置1のシフトレバー4の操作位置を検出するためのスイッチとして本発明の操作位置検出装置6を適用したが、このような態様に限定されず、例えば、ジョイスティック等の操作レバーの操作位置を検出するものなど、シフト装置1以外に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施の形態のシフト装置の概略構成図。
【図2】操作量検出装置の平面図。
【図3】操作量検出装置のカバーを取り除いた平面図。
【図4】図2におけるA−A線断面図。
【図5】操作量検出装置の動作を説明するための図。
【図6】(a)〜(c)操作位置検出装置の作用を説明するための図。
【符号の説明】
【0050】
1…シフト装置、3a…シフトゲート、4…シフトレバー、6…操作位置検出装置、8a,8b…操作位置検出装置を構成する操作量検出装置、9…操作位置検出装置を構成する位置検出手段としての制御部、10a…変速機、16…操作部材、17…磁極部、19…付勢部材としての捩りコイルばね、20,21…検出信号出力手段としてのMRE素子、20a,21a…検出面、D…操作量、M…磁束中心線、P1…基準位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に移動可能に設けられ、その移動方向に交わる磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁された磁極部を有する操作部材と、
前記操作部材の移動に伴う前記磁束の方向の変化に応じた検出信号を出力する検出信号出力手段と、
前記検出信号に基づいて前記操作部材の操作位置を検出する位置検出手段と
を備えたことを特徴とする操作位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作位置検出装置において、
前記磁極部は、前記操作部材の移動方向に直交する磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁され、
前記検出信号出力手段は、前記磁極部の移動方向に沿う検出面を備えたことを特徴とする操作位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の操作位置検出装置において、
前記操作部材は、基準位置と該基準位置とは異なる位置との間を移動可能に設けられるものであり、
前記操作部材を前記基準位置側へ常時付勢する付勢部材を備えたことを特徴とする操作位置検出装置。
【請求項4】
シフトゲートから突出し該シフトゲートに沿って操作されるシフトレバーと、前記シフトレバーの操作位置を検出する操作位置検出装置とを備え、該操作位置検出装置の検出結果に基づいて車両の変速機の接続状態を切り替えるシフト装置であって、
前記操作位置検出装置は、
前記シフトレバーの操作に基づいて所定の方向に移動可能に設けられ、その移動方向に交わる磁束中心線を中心とする放射状の磁束を形成するよう着磁された磁極部を有する操作部材と、
前記操作部材の移動に伴う前記磁束の方向の変化に応じた検出信号を出力する検出信号出力手段と、
前記検出信号に基づいて前記操作部材の操作位置を検出する位置検出手段と
を備えたことを特徴とするシフト装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシフト装置において、
前記シフトレバーは、前記シフトゲートに沿って複数の操作方向に操作されるものであり、
前記操作方向に対応する複数個の前記操作位置検出装置を備えたことを特徴とするシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−296882(P2008−296882A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148487(P2007−148487)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】