説明

操作入力装置

【課題】ヨークの変形を抑えることができる、操作入力装置の提供。
【解決手段】操作面13に作用する操作入力によって下方に変位する方向キー10と、方向キー10に設けられた上ヨーク75と、上ヨーク75によって方向キー10の位置を検出し、方向キー10の下方への変位量に応じた信号を出力するコイル71a,74aと、方向キー10の下方に配置された下ハードストップ部30とを備え、下ハードストップ部30は、方向キー10が操作面13の外縁部18の直下で下ハードストップ部30に当接してから、その当接位置よりも方向キー10が下方に変位しないように規制する、操作入力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力の作用により変位する操作部材を備え、その変位量に応じた信号を出力する操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、特許文献1に開示された操作入力装置6の断面図である。図1は、操作入力が付与されていない初期状態を示している。操作入力装置6は、コイル271,273の上側に上ヨーク260及びコア261,263を備え、コイル271,273の下側に下ヨーク280を備える。
【0003】
キー240は、ケース230の開口部231との嵌合により、X方向及びY方向で保持され、Z方向に移動可能に支持された操作部材である。キー240は、コイル状のリターンバネ250によりZ方向へ初期荷重が与えられた状態で、ケース230の上側内面232に当接している。リターンバネ250は、その一方の端がキー240の下面中央部に当接し、もう一方の端が下ヨーク280の上面中央部に当接する。リターンバネ250は、キー240の下面に設置される上ヨーク260の中央部に設けられた孔を貫通している。上ヨーク260は、磁性体(例えば、鋼板、フェライト)によって成形され、キー240と同一の動きを伴う。
【0004】
図2は、キー240をXY平面に対してコイル271側に傾ける操作入力が付与された傾動状態での操作入力装置6の断面図である。このような操作入力が付与されると、カバー230の上側内面232(図上、左側)を傾動支点として、上ヨーク260及びコア261がコイル271に近接する。コイル271への近接によって、コイル271を取り巻く周辺の透磁率が上昇し、コイル271の自己インダクタンスが増加する。他の方向に傾けた場合も同様に考えることができる。したがって、各コイルのインダクタンスを評価することによって、キー240の傾倒方向と傾倒量(変位量)が検出できる。
【0005】
また、キー240がカバー230の上側内面232を支点として傾動する場合、その傾動動作は、キー240の下面中央部に形成された突起部が係止部281に接触することで止まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−3536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、キー240の下面中央部に形成された突起部が係止部281に接触した図2の状態において、上ヨーク260の塑性領域を超える応力が加わるような操作入力がさらに付与されると、上ヨーク260が変形するおそれがある。上ヨーク260が変形すると、各コイルのインダクタンスの評価値が変わるため、キー240の変位量の検出誤差が大きくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、ヨークの変形を抑えることができる、操作入力装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る操作入力装置は、
操作面に作用する操作入力によって下方に変位する操作部材と、
前記操作部材に設けられたヨークと、
前記ヨークによって前記操作部材の位置を検出し、前記操作部材の下方への変位量に応じた信号を出力するコイルと、
前記操作部材の下方に配置された係止部とを備え、
前記係止部は、前記操作部材が前記操作面の外縁部の直下で前記係止部に当接してから、その当接位置よりも前記操作部材が下方に変位しないように規制する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヨークの変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】操作入力が付与されていない初期状態での従来の操作入力装置6の断面図である。
【図2】キー240をXY平面に対してコイル271側に傾ける操作入力が付与された傾動状態での操作入力装置6の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態である操作入力装置1の分解斜視図である。
【図4】操作入力装置1の平面図である。
【図5A】図4のA−Aにおける操作入力装置1の断面図である。
【図5B】図4のB−Bにおける操作入力装置1の断面図である。
【図5C】操作入力によって方向キー10が変位して片側に傾いた状態における操作入力装置1の断面図である。
【図6A】ケース60の内側を正面から見たときの略図である。
【図6B】ケース60の内側を斜めから見たときの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。本発明の一実施形態である操作入力装置は、操作者の手指等による力を受けて、その受けた力に応じて変化する出力信号を出力する操作インターフェイスである。その出力信号に基づいて操作者による操作入力が検出される。操作入力の検出によって、その検出された操作入力に対応する操作内容をコンピュータに把握させることができる。
【0013】
例えば、ゲーム機、テレビ等の操作用リモートコントローラ、携帯電話や音楽プレーヤーなどの携帯端末、パーソナルコンピュータ、電化製品などの電子機器において、そのような電子機器に備えられるディスプレイの画面上の表示物(例えば、カーソルやポインタなどの指示表示や、キャラクターなど)を、操作者が意図した操作内容に従って、移動させることができる。また、操作者が所定の操作入力を与えることにより、その操作入力に対応する電子機器の所望の機能を発揮させることができる。
【0014】
一方、通常、コイル(巻線)等のインダクタのインダクタンスLは、係数をK、透磁率をμ、コイルの巻数をn、断面積をS、磁路長をdとした場合、
L=KμnS/d
という関係式が成り立つ。この関係式から明らかなように、コイルの巻数や断面積といった形状に依存するパラメータを固定した場合、周囲の透磁率と磁路長の少なくともいずれかを変化させるかによって、インダクタンスが変化する。
【0015】
このインダクタンスの変化を利用する操作入力装置の実施例について以下説明する。この操作入力装置は、X,Y,Z軸によって定まる直交座標系において、正のZ座標の方向から入力される操作者の力を受け付けるものである。操作入力装置は、操作入力の作用によりコイルとの位置関係が変化することによって、そのコイルのインダクタンスを変化させる変位部材を備えている。操作入力装置は、そのインダクタンスの大きさに応じて変化する所定の信号に基づいて、操作者の操作入力により変位する変位部材の動きを検知することにより、その操作入力を検出することができる。
【0016】
図3は、本発明の一実施形態である操作入力装置1の分解斜視図である。図4は、操作入力装置1の平面図である。図5Aは、図4のA−Aにおける操作入力装置1の断面図である。図5Bは、図4のB−Bにおける操作入力装置1の断面図である。図5Cは、操作入力によって方向キー10が変位して片側に傾いた状態における操作入力装置1の断面図である。操作入力装置1は、操作入力の作用により変位する方向キー10を備え、その変位量に応じた信号を出力するものである。
【0017】
操作入力装置1は、方向キー10と、上ヨーク75と、コイル71a,72a,73a,74aと、下ハードストップ部30とを備える。方向キー10は、操作面13を有し、操作面13に作用する操作入力によって下方に傾倒可能に変位する操作部材である。上ヨーク75は、方向キー10の下面14に設けられ、方向キー10の変位に連動して変位する。図示の形態では、方向キー10の下面14に形成された突起状のボス17a〜17dが、上ヨーク75の四隅に形成された取り付け孔78a〜78dに挿入されることによって、上ヨーク75は方向キー10の下面14に位置決めされている。コイル71a,72a,73a,74aのそれぞれは、上ヨーク75によって方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー10の下方への変位量に応じた信号を出力する。下ハードストップ部30は、方向キー10の下方に配置された係止部である。下ハードストップ部30は、方向キー10が操作面13の外縁部18の直下で下ハードストップ部30の当接面32(32a〜32d)に当接してから、当接面32の位置よりも方向キー10が下方に変位しないように規制するものである。言い換えれば、方向キー10は、当接面32に当接するまで下方に変位可能である。
【0018】
操作入力装置1は、このような構成を有しているので、方向キー10が外縁部18の直下で当接面32に当接したハードストップ状態において作用する高荷重の操作入力は、上ヨーク75には作用せずに、方向キー10と下ハードストップ部30に作用する。これにより、上ヨーク75の変形を防止できるため、方向キー10の変位量の検出誤差を抑制できる。また、方向キー10が下ハードストップ部30に当接する位置が方向キー10の外縁部18の直下であるため、方向キー10等の部品には曲げ応力ではなく圧縮応力がかかるので、ハードストップ構造の強度を上げることができる。
【0019】
また、下ハードストップ部30は、上ヨーク75の下面から下方に突き出るように方向キー10の下面14に設けられた突起部と当接する。図示の形態では、その突起部として、上ハードストップ部16a〜16dが例示されている(図5B,5C参照)。上ハードストップ部16a〜16dは、方向キー10の下面14のうち外縁部18の直下部分に形成され、上ヨーク75の中央部に形成された開口部76を貫通する。上ハードストップ部16a〜16は、それぞれに対向するように開口部76の周縁部に凹状に形成された肉抜き部77a〜77dを貫通し、それぞれに対向する位置に形成された当接面32に当接する。当接面32は、その法線方向が上下方向になるように、下ハードストップ部30の上面に形成されている。上ハードストップ部16a〜16dは、当接時の衝撃分散のため、当接面32と面接触することが好ましい。
【0020】
また、操作入力装置1は、方向キー10を上方に付勢して方向キー10のフランジ12を上方部材に当接させる弾性部材として、リターンバネ40を備える。図示の形態では、その上方部材として、ケース60が例示されている。ケース60は、例えば、操作入力装置1が搭載されるゲーム機等の電子機器の筐体である。このような弾性部材によって、操作入力が作用していない初期状態位置に戻す力を方向キー10に与えることができる。リターンバネ40は、上ハードストップ部16a〜16dが貫通する開口部と同じ開口部76を貫通する。リターンバネ40の上端は、方向キー10の下面14に環状に形成された凹部19との係合によって位置決めされる。
【0021】
また、下ハードストップ部30は、リターンバネ40を支えるリターンバネ支持部として、リターンバネホルダー33a〜33dを有する。これにより、リターンバネ40の下端の位置決め機能を、ハードストップ機能を実現する同一部品(下ハードストップ部30)で実現できる。リターンバネホルダー33a〜33dは、下ハードストップ部30の上面に円状に等間隔に設けられ、リターンバネ40の下端の側面を外側から支えるように形成された凸状部である。
【0022】
また、下ハードストップ部30は、方向キー10の中央部に設けられたセンターキー20によって変形するクリックバネ70を支えるクリックバネ支持部として、クリックバネホルダー34を有する。これにより、クリックバネ70の周縁部の位置決め機能を、ハードストップ機能を実現する同一部品(下ハードストップ部30)で実現できる。クリックバネホルダー34は、下ハードストップ部30の中央部に形成された開口部である。その開口部の下側の周縁部には、クリックバネ70の周縁部を基板50との間で挟むことでクリックバネ70を固定する段差が形成されている。段差を設けることにより、クリックバネの上面を覆うことでクリックバネを固定するラミネートフィルム等の固定用フィルムを削除できる。その結果、部品点数を削減でき、組み立てを簡素化できる。
【0023】
また、方向キー10の外縁部18の外側側面に凸状に形成された回転止め15a〜15dは、ケース60の開口部61の周縁部に凹状に形成された回転止め63a〜63dと係合することで(図6A,6B参照)、方向キー10が回転しないように規制する。回転止め15a〜15dが、凹状に形成され、回転止め63a〜63dが、凸状に形成されてもよい。回転止め15a〜15d及び63a〜63dの凹部又は凸部は、方向キー10の操作面13に対して平行な方向となるように形成される。これにより、方向キー10が、操作面13に平行な平面内で回転することを規制する。
【0024】
方向キー10とケース60の材料が共に樹脂であれば、回転止め15a〜15dと回転止め63a〜63dとの接触面の摩擦や磨耗の発生を抑制できる。また、方向キー10が、フランジ12とケース60の上側内面62との接触点を支点として傾動動作をするときや当該接触点での摺動動作をするときにおいて、そのような動作による摩擦や磨耗の発生を抑制できる。また、摩擦抵抗を軽減でき、操作者の操作感を改善できる。また、方向キー10の操作によりリターンバネ40が弾性変形するが、方向キー10の下面14に形成された凹部19でリターンバネ40を受けているため、凹部19の受け面とバネ変形により発生する磨耗や摩擦音を軽減できる。
【0025】
ケース60の上面には、方向キー10が貫通するように形成された開口部66を有するカバー65が配置されている。カバー65を金属製にすることにより、カバー65は、静電気から内部部品を守るシールドとして機能する。
【0026】
また、操作入力装置1は、方向キー10とクリックバネ70との間に挟まれることによって支持されるセンターキー20を備える。センターキー20は、方向キー10の操作面13に露出した面をZ軸上に有する押下部である。センターキー20の周縁部には、方向キー10の中央部に形成された開口部11に嵌合した状態で位置決めされるように、フランジ12が形成されている。センターキー20は、上方から押されることにより、基板50上に配置されたクリックバネ70をその頂点部から下方に変形させる。
【0027】
基板50の下側には、下ヨーク80が配置されている。下ヨーク80を構成することによって、インダクタンスの変化を検出しやすくできる。ケース60は、基板50を挟んで、下ヨーク80の四隅に取り付けられる。
【0028】
次に、操作入力装置1における変位量の検出構成について詳細に説明する。
【0029】
操作入力装置1は、例えば、複数のコイル(本構成の場合、4個のコイル71a,72a,73a,74a)が配置される配置面を有する基板50を有する。基板50は、XY平面に平行な配置面を有する基部である。基板50は、例えば樹脂製の基板(具体的には、フレキシブル基板、FR−4基板)でもよいし、絶縁性を確保すれば、ヨークとして機能させるために鋼板や珪素鋼板などを基材にした鉄板基板でもよい。
【0030】
4個のコイル71a,72a,73a,74aは、三次元の直交座標系の基準点である原点Oとの距離が等しい点を結んでできる仮想的な円の円周方向に並べられている。コイル71a等は、操作者の力のベクトルを算出しやすくするという点で、その円周方向に等間隔に配置されることが好ましい。各コイルが互いに同特性の場合、隣接する2つのコイルの重心間の距離が等しければよい。コイル71a〜74aは、X軸とY軸に挟まれるXY平面内の斜め45°の4方向に、円周方向に90°毎に配置されている。例えば、コイル74aは第1象限に配置され、コイル71aは第2象限に配置され、コイル72aは第3象限に配置され、コイル73aは第4象限に配置される。
【0031】
また、各コイルは、X(+),X(−),Y(+),Y(−)の4方向の各X,Y軸上に90°毎に配置されてもよい。X(−)方向は、XY平面上でX(+)方向に対して180°反対向きの方向であり、Y(−)方向は、XY平面上でY(+)方向に対して180°反対向きの方向である。
【0032】
方向キー10は、操作入力によって変位する操作部材であって、その操作入力の入力量に応じて、ケース60の開口部61からケース60の内方への変位量が連続的に変化するものである。
【0033】
操作入力装置1は、方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー10の変位量に応じた信号を出力する検出手段を備える。操作入力装置1は、この検出手段として、方向キー10の変位量及び変位方向によりインダクタンスがそれぞれ変化するコイル71a〜74aと、検出部160とを備える。
【0034】
コイル71a〜74aは、方向キー10の下面14に固定された上ヨーク75によって方向キー10の位置を非接触で検出し、方向キー10の変位量に応じた信号波形を出力する検出部材である。コイル71a〜74aは、例えば、円筒状に線材(導線)が巻かれたものである。コイル71a〜74aの形状は円筒状が望ましいが、筒状であればよく、例えば角筒状でもよい。また、コイル71a〜74aは、組み付け性や耐衝撃性を向上させる点で、ボビンに巻かれたものでもよい。
【0035】
上ヨーク75は、方向キー10の変位に連動して変位する。また、ヨークは、方向キー10のフランジ12の下面に、基板50上のコイル71a等と同じ数だけ設けられ、方向キー10の変位に連動して変位するものでもよい。方向キー10は、コイル71a等に対して操作者の力が入力されてくる側に設けられており、コイル71a等の上端面に対向する下面14と、操作者の力が直接又は間接的に作用しうる操作面13とを有する板状部材である。ヨークは、比透磁率が1よりも高い材質であればよい。例えば、比透磁率は1.001以上あると好適であり、具体的には、鋼板(比透磁率5000)などが好適である。上ヨーク75は、方向キー10と別部品である。上ヨーク75と各コイルは、互いに対向する位置に配置される。方向キー10は、操作者の力が操作面13に作用することにより、コイル71a等の上端面の上方における上ヨーク75の位置を変化させて、コイル71a等のインダクタンスを変化させる。
【0036】
上ヨーク75は、コイル毎に対向するコアが形成されたものでもよい。各コアは、操作入力の作用によりコイル71a等の内部(すなわち、中空部内)をコイル71a等の中心軸の軸線方向に変位することによって、コイル71a等のインダクタンスを変化させる。この場合、各コアは、コイル71a等が円筒状であれば、円柱状の磁性体であることが好ましく、コイル71a等が角筒状であれば、角柱状の磁性体であることが好ましい。
【0037】
各コイルのインダクタンスをそれぞれ検出することによって、直交座標系の原点Oに対する操作入力の入力方向(XY平面における操作入力の入力位置)とその操作入力の大きさ(Z方向への押し込み量)を演算することができる。
【0038】
リターンバネ40は、方向キー10を下方に変位可能に支持する支持部材である。リターンバネ40は、方向キー10の下面14に配置された上ヨーク75と基板50に配置された各コイルとの間隔が弾性的に変化するように、下面14と基板50との対向方向に方向キー10を弾性的に支持する弾性支持部材である。
【0039】
リターンバネ40は、基板50と方向キー10の下面14との間に設置されるとよい。リターンバネ40は、方向キー10に操作者の力が作用しても、上ヨーク75と基板50のコイル71a〜74aとが接触しないように、方向キー10を弾性的に支持する。リターンバネ40は、Z軸に直交するXY平面に対して傾き可能に方向キー10を支持し、Z軸方向に移動可能に支持する。また、リターンバネ40は、方向キー10の下面14が基板50上のコイル71a等から離れる方向に付勢された状態で、方向キー10を支持する付勢支持部材である。
【0040】
リターンバネ40は、操作者の力が作用していない状態で方向キー10の操作面13がXY平面に平行になるように、方向キー10を弾性的に支持する。方向キー10の操作面13は、平らな面でもよいし、XY平面に対して凹状に形成された面でもよいし、XY平面に対して凸状に形成された面でもよい。操作面13を所望の形状に変更することによって、操作者の操作性を向上させることができる。また、方向キー10の操作面13は、円状でもよいし、楕円状でもよいし、多角形状でもよい。
【0041】
リターンバネ40は、ケース60の内部側から開口部61に向けて付勢するように設けられたコイルバネである。リターンバネ40を円錐コイルバネにすることで、バネの耐久性を向上させ、方向キー10を開口部61に対して傾斜させやすくできる。リターンバネ40は、方向キー10が操作されて降下したときに、方向キー10に力が付与されていない初期位置状態の高さ(すなわち、図5A,5Bに示す位置)に戻す上向きの力を、方向キー10に常時付与している。リターンバネ40は、円錐状のコイルバネであるが、円筒状のコイルバネでも、無端状の弾性体(例えば、ゴム)でもよい。
【0042】
操作入力装置1は、図5A,5Bに示されるように、方向キー10がケース60の内側に付勢して接触された状態で、ケース60に取り付けられる。すなわち、方向キー10は、ケース60の上側内面62に当接して、リターンバネ40の反力によって支持されている。
【0043】
ケース60は、操作入力装置1が取り付けられる携帯電話などの電子機器の筐体である。操作入力装置1自体が、ケース60を備えていてもよい。ケース60の上面の開口部61の形状は、円状であるが、方向キー10の形状に合うように形成されていればよく、四角形や八角形などの多角形状であってもよい。
【0044】
ケース60によって、方向キー10がリターンバネ40の上方への付勢力に対して上方に移動可能な最大高さが決められる。方向キー10の最大ストローク量は、方向キー10の位置が非接触で検出可能な範囲内に設定される。つまり、この最大ストローク量に相当する分の空間は、ケース60内でまかなうことができる。
【0045】
検出部160は、コイル71a等のインダクタンスの変化を電気的に検出することで、上ヨーク75の連続的に変化するアナログ変位量(言い換えれば、方向キー10の変位量(操作入力量))に応じた検出信号を出力する。検出部160は、操作入力装置1の基板50又は不図示の基板(例えば、操作入力装置1が搭載される上述のゲーム機等の電子機器の基板)に実装される検出回路によって構成されるとよい。
【0046】
以下、検出部160が、コイル71aのインダクタンスの変化として、所定のインダクタンス評価値の変化を検出する場合について説明する。なお、コイル72b,73b,74bのインダクタンスの変化についても同様に考えればよいため、その説明は省略する。
【0047】
例えば、検出部160は、コイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出し、その物理量の検出値を上ヨーク75のコイル71a側の変位量に等価な値として出力する。また、検出部160は、コイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出することによりコイル71aのインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値を上ヨーク75のコイル71a側の変位量に等価な値として出力するものでもよい。また、検出部160は、その物理量の検出値又はそのインダクタンスの算出値から上ヨーク75のコイル71a側の変位量を演算し、その変位量の演算値を出力するものでもよい。
【0048】
具体的には、検出部160は、パルス信号をコイル71aに供給することによって、コイル71aのインダクタンスの大きさに対応して変化する信号波形をコイル71aに発生させ、その信号波形に基づいてコイル71aのインダクタンスの変化を電気的に検出するとよい。
【0049】
例えば、コイル71aの上端面の上方における(又は、コイル71aの中空部内における)上ヨーク75の下方への変位量が増加するにつれて、コイル71a周辺の透磁率が増加し、コイル71aのインダクタンスが増加する。コイル71aのインダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイル71aの両端に発生するパルス電圧波形の振幅も大きくなる。そこで、その振幅をコイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量とすることで、検出部160は、その振幅を検出することによって、その振幅の検出値を上ヨーク75のコイル71a側の変位量に等価な値として出力することができる。また、検出部160は、その振幅の検出値からコイル71aのインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値を上ヨーク75のコイル71a側の変位量に等価な値として出力することもできる。
【0050】
また、コイル71aのインダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイル71aに流れるパルス電流波形の傾きが緩やかになる。そこで、その傾きをコイル71aのインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量とすることで、検出部160は、その傾きを検出することによって、その傾きの検出値を上ヨーク75のコイル71a側の変位量に等価な値として出力することができる。また、検出部160は、その傾きの検出値からコイル71aのインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値を上ヨーク75のコイル71a側の変位量に等価な値として出力することもできる。
【0051】
図5Cは、方向キー10をコイル73aと74aの間の方向に傾ける操作入力が付与された傾倒状態での操作入力装置1の断面図である。リターンバネ40の上方への付勢力に抗して、Z方向に下向きの力で押された方向キー10が、フランジ12とケース60の上側内面62との接触点を支点に傾動する。これにより、上ヨーク75がコイル73aと74aに近接する(上ヨーク75に下方に突出するコアが形成されている場合、コイル73a,74aの中空部内に進入する)。コイル73a,74aへの近接(コイル73a,74aの中空部内への進入)によって、コイル73a,74aを取り巻く周辺の透磁率が上昇し、コイル73a,74aの自己インダクタンスが増加する。他の方向に傾けた場合も同様に考えることができる。したがって、コイル71a〜74a又は検出部160によって各コイルそれぞれについて検出されたインダクタンス評価値の大きさに基づいて、方向キー10の傾倒方向とストローク量が検出できる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0053】
例えば、方向キー10を弾性的に支持する支持部材は、リターンバネ40のような弾性部材に限らず、ゴム部材でもよいし、スポンジ部材でもよいし、空気や油が充填されたシリンダーでもよい。
【0054】
また、本発明の操作入力装置は、手指に限らず、手のひらで操作するものあってもよい。また、足指や足の裏で操作するものであってもよい。また、操作者が触れる面は、平面でも、凹面でも、凸面でもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 操作入力装置
10 方向キー
11 開口部
12 フランジ
13 操作面
14 下部(下面)
15a〜15d 回転止め
16a〜16d 上ハードストップ部
17a〜17d ボス
18 外縁部
19 凹部
20 センターボタン
21 フランジ
30 下ハードストップ部
31 開口部
32a〜32d 当接面
33a〜33d リターンバネホルダー
34 クリックバネホルダー
40 リターンバネ
50 基板
60 ケース
61 開口部
62 上側内面
63a〜63d 回転止め
65 カバー
66 開口部
70 クリックバネ
71a,72a,73a,74a コイル
75 上ヨーク
76 開口部
77a〜77d 肉抜き部
78a〜78d 取り付け孔
80 下ヨーク
160 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に作用する操作入力によって下方に変位する操作部材と、
前記操作部材に設けられたヨークと、
前記ヨークによって前記操作部材の位置を検出し、前記操作部材の下方への変位量に応じた信号を出力するコイルと、
前記操作部材の下方に配置された係止部とを備え、
前記係止部は、前記操作部材が前記操作面の外縁部の直下で前記係止部に当接してから、その当接位置よりも前記操作部材が下方に変位しないように規制する、操作入力装置。
【請求項2】
前記係止部は、前記ヨークの下面から突き出るように前記操作部材の下面に設けられた突起部と当接する、請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記操作部材を上方に付勢して前記操作部材のフランジを上方部材に当接させる弾性部材を備える、請求項1又は2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記係止部は、前記弾性部材を支える弾性部材支持部、及び/又は、前記操作部材の中央部に設けられた押下部によって変形するクリックバネを支えるクリックバネ支持部を有する、請求項3に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記操作部材の回転止め部は、前記上方部材の回転止め部と係合することで、前記操作部材が回転しないように規制する、請求項3又は4に記載の操作入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−221362(P2012−221362A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88351(P2011−88351)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】