説明

操作子装置

【課題】軸方向の位置決め精度を高めて、円滑な回動による良好な操作感触を実現する。
【解決手段】孫ユニット50の操作子56の操作により、子ユニット30は孫ユニット50と共に、第1の軸中心AX1の周りに親ユニット10に対して相対的に回動する。子ユニット30において、第1の軸中心AX1に平行な方向の第1の端部31には被係合部40が設けられ、親ユニット10の第1の壁部19には軸受け穴53が形成される。係合部15と被係合部40とが係合することで、第1の壁部19における係合部15の外側対向面19a及び内側対向面19bを有する肉部を、被係合部40の外側規制部43及び内側規制部45が両側から挟み、親ユニット10、子ユニット30におけるそれぞれの一方の端部において第1の軸中心AX1の軸線方向における両ユニット同士の位置決めがなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に回動可能に連結されたユニットの動作を利用する操作子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユニット同士を相対的に回動可能に連結し、操作子の操作によりユニット間の回動を利用して操作子を回動動作させるようにした操作子装置が知られている(特許文献1)。従来のこの種の操作子装置において、ユニット間の回動軸方向の位置決めは、特に両持ちの軸支構造においては両側で行うのが一般的である。
【0003】
図5は、従来の一般的な操作子装置の構成を示す模式的な平面図である。この操作子装置は、装置に固定される固定体である親ユニット110と、それぞれ可動体である子ユニット130及び孫ユニット150の3つのユニットから構成される。子ユニット130は、親ユニット110に対して2つの軸部J1(J1L、J1R)にて両持ち構造で軸支される。孫ユニット150は、子ユニット130に対して1つの軸部J2で軸支される。
【0004】
操作子156をX方向に操作すると、孫ユニット150が軸部J2を中心に子ユニット130に対してX方向に回動する。操作子156をY方向に操作すると、孫ユニット150と子ユニット130とが一体となって軸部J1を中心に親ユニット110に対してY方向に回動する。
【0005】
ここで、軸部J1の方向における親ユニット110に対する子ユニット130の位置決めは、両側の軸部J1においてなされる。すなわち、親ユニット110の壁部111と同図左側の軸部J1L付近の当接面131との当接により、子ユニット130の同図左方の限界位置が規制され、親ユニット110の壁部112と同図右側の軸部J1R付近の当接面132の当接により、子ユニット130の同図右方の限界位置が規制される。
【0006】
壁部111と当接面131との間、または壁部112と当接面132との間の少なくとも一方に間隙が生じるように設計することで、子ユニット130が親ユニット110に対して回動自在となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3381852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような図5に示す従来の装置のように、回動軸方向の両側2箇所の軸部J1で位置決めを行う構造においては、子ユニット130では当接面131、132の位置の精度、親ユニット110では当接面131、132に対向する壁部111、112の対向面の位置の精度が、軸部J1方向における子ユニット130の位置決め精度に影響することになる。
【0009】
しかしながら、ユニットを構成する部品にはそれぞれ製造誤差がある。特に2箇所の軸部J1間の距離が大きいことから、各部品の寸法のばらつきがより大きくなる。ばらつきによって左右両側で共に当接状態となると、しまり嵌めとなって動きが悪くなる。しまり嵌めとなることを避けるためには、当接する箇所の間隙が確実に生じるように、製造誤差を考慮して余裕を持った設計とする必要がある。しかしそのような設計とした結果、ばらつきにより大きながたつきを生じることがある。がたつきが大きすぎると、ユニット同士が円滑に回動しなくなり、耐久性が低くなるだけでなく、操作子の操作感触にも悪影響を及ぼす。また、このことは、備わるユニットが3つでなく2つである場合にも生じ得る。
【0010】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、軸方向の位置決め精度を高めて、円滑な回動による良好な操作感触を実現することができる操作子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の操作子装置は、第1のユニット(10)と、前記第1のユニットの、第1の軸中心の軸線方向における両端部(19、12)に軸支され、操作子(56)の操作により、前記第1の軸中心(AX1)の周りに前記第1のユニットに対して相対的に回動する第2のユニット(30)と、前記第1のユニットの、前記第1の軸中心の軸線方向における両端部(19、12)のうち一方の端部(19)に設けられた係合部(15)と、前記第2のユニットの、前記第1の軸中心の軸線方向における両端部のうち一方の端部(31)に設けられた被係合部(40)とを有し、前記第1のユニットの前記係合部と前記第2のユニットの前記被係合部とが係合することで、前記第1、第2のユニットにおけるそれぞれの一方の端部において前記第1の軸中心の軸線方向における位置決めがなされていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記係合部及び前記被係合部の一方には、前記係合部及び前記被係合部の他方の肉部(19、49)を前記第1の軸中心の軸線方向における両側から挟むように位置する規制部(43、45、57、59)が設けられる。
【0013】
好ましくは、前記係合部と前記被係合部との係合は、当該操作子装置の使用時に前記第1のユニットに対して相対的に前記第2のユニットが回動し得る使用時回動範囲(θ)においては解除不能で、且つ、前記第1のユニットと前記第2のユニットとを前記使用時回動範囲ではなり得ない特定の位置関係としたときに解除可能となる。
【0014】
好ましくは、前記係合部及び前記被係合部の一方は、前記第1の軸中心を軸芯とする軸部(44、48)と該軸部に一体に設けられた鍔部(47、49)とを有し、前記係合部及び前記被係合部の他方は、前記軸部を軸支する軸受け部(55a、59a)と、挿通部(55b、57a)を有して前記鍔部が係止される係止部(55、57)とを有し、前記使用時回動範囲においては前記鍔部が前記係止部の前記挿通部を挿通不能となることにより前記係止部に係止状態となり且つ、前記第1のユニットと前記第2のユニットとを前記特定の位置関係としたときには前記鍔部が前記係止部の前記挿通部を挿通可能なように構成される。
【0015】
好ましくは、前記係合部は前記第1のユニットと一体に形成され、前記被係合部は前記第2のユニットと一体に形成される。
【0016】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によれば、軸方向の位置決め精度を高めて、円滑な回動による良好な操作感触を実現することができる。
【0018】
請求項2によれば、構成が簡単である。
【0019】
請求項3によれば、組み付けや分解が容易である。
【0020】
請求項5よれば、位置決め精度を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る操作子装置の斜視図である。
【図2】本操作子装置の模式的な平面図である。
【図3】係合部及び被係合部の第1、第2の変形例を示す模式図である。
【図4】係合部及び被係合部の第3の変形例を示す模式図である。
【図5】従来の一般的な操作子装置の構成を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係る操作子装置の斜視図である。この操作子装置は、例えばジョイスティックとして構成され、用途としては電子楽器の楽音制御用の入力装置等が適している。制御対象としては、例えば音高、音色、音量のほか、ビブラート、リバーブ等の各種効果に関する楽音パラメータが考えられる。ただし、楽音制御に限定されるものではなく、楽器以外の電気機器(ゲーム装置等)にも適用可能である。
【0024】
この操作子装置は、大別して3つのユニットから構成される。すなわち、第1のユニットである親ユニット10、第2のユニットである子ユニット30、第3のユニットである孫ユニット50を有する。孫ユニット50は、子ユニット30に対してX方向に相対的に回動自在である。子ユニット30は、親ユニット10に対してY方向に相対的に回動自在である。電気機器に親ユニット10が固定されるとし、親ユニット10を固定体と考えれば、子ユニット30と孫ユニット50は可動体といえる。
【0025】
操作子56は、操作者により直接操作される構成要素であり、孫ユニット50及び/又は子ユニット30の可動により、X方向及びY方向、またはこれら双方の成分を含む方向に操作が可能である。例えば操作子56をX方向の成分を含む方向に操作すると、それに応じて孫ユニット50がX方向に回動する。操作子56をY方向の成分を含む方向に操作すると、それに応じて子ユニット30が孫ユニット50と一体となって親ユニット10に対してY方向に回動する。
【0026】
親ユニット10は、上ケース11(図1)を含んで一体に構成され、通常、親ユニット10が電子機器に固定される。子ユニット30は、いずれも樹脂製のホイール41及び下フレーム42を有する。孫ユニット50は、樹脂製のカバー体51と操作子56とを有する。棒状の操作子56は、ゴム、またはカバー体51より柔らかい樹脂で一体に形成される。操作子56は、非操作時において上ケース11から突出している。以降の説明上、操作子56の突出方向を上方とする。
【0027】
図2は、本操作子装置の模式的な平面図である。この図では、本操作子装置を概念的に模式図として描いているが、図1に示すものと同じ構成要素には同じ符号が付されている。上ケース11の図示は省略されている。また、図1、図2では、各ユニットが、非操作状態である初期位置にある状態で示されている。
【0028】
図2に示すように、子ユニット30は親ユニット10に対して、第1の軸中心AX1を回動中心として第1の軸中心AX1の周りに(Y方向に)に回動自在とされる。また、孫ユニット50は子ユニット30に対して、第2の軸中心AX2を回動中心として第2の軸中心AX2の周りに(X方向に)回動自在とされる。
【0029】
まず、子ユニット30には、第2の軸中心AX2を軸芯とする軸部52が一体または別体で設けられる。軸部52が孫ユニット50の軸受け穴46により軸支される。従って孫ユニット50は、軸部52を介して子ユニット30に片持ち構造で軸支された形となっている。これにより、孫ユニット50は子ユニット30に対して相対的にX方向に(第2の軸中心AX2周りに)回動自在となる。子ユニット30に対する孫ユニット50の第2の軸中心AX2の方向における位置決めの手法は問わず、例えば、何らかの当接関係となるような構造を設ければよい。
【0030】
子ユニット30において、第1の軸中心AX1に平行な方向、すなわち長手方向において、図2の左側、右側の端部をそれぞれ第1の端部31、第2の端部32とする。親ユニット10において、図2の左側、右側の壁部をそれぞれ第1の壁部19、第2の壁部12とする。子ユニット30の第1の端部31には被係合部40が設けられ、第2の端部32には軸部33が設けられる。第1の壁部19、第2の壁部12にはそれぞれ、いずれも第1の軸中心AX1を軸芯とする軸受け穴53、54が形成されている。
【0031】
被係合部40は、外側規制部43、軸部44及び内側規制部45を有する。軸部33が軸受け穴54に軸支されると共に、被係合部40の軸部44が軸受け穴53に軸支され、軸部33及び軸部44が同心となってこれらの軸芯が第1の軸中心AX1と一致する。従って子ユニット30は、軸部33、軸部44を介して親ユニット10に両持ち構造で軸支された形となっている。これにより、子ユニット30は親ユニット10に対して相対的にY方向に(第1の軸中心AX1周りに)回動自在となる。
【0032】
被係合部40の外側規制部43及び内側規制部45はいずれも、軸受け穴53よりも大きい外郭部を有し、それぞれ親ユニット10の第1の壁部19に対向する。すなわち、外側規制部43の規制面43aと第1の壁部19の外側対向面19aとが対向し、内側規制部45の規制面45aと第1の壁部19の内側対向面19bとが対向する。第1の壁部19のうち、外側対向面19a及び内側対向面19bを有する肉部が、被係合部40と係合する「係合部15」として機能する。この肉部を外側規制部43及び内側規制部45が第1の軸中心AX1の方向(第1の軸中心AX1の中心線方向乃至軸線方向)における両側から挟むように位置し、位置決め構成が簡単となっている。
【0033】
本操作子装置の使用時、すなわち、操作子56の操作による孫ユニット50や子ユニット30の回動時において、規制面43aと外側対向面19aとの間、または規制面45aと内側対向面19bとの間の少なくとも一方には間隙が生じるように設計され、しまり嵌めとならないようになっている。従って、規制面43aが外側対向面19aに当接することで、親ユニット10に対する子ユニット30の図2の右方の位置が規制され、規制面45aが内側対向面19bに当接することで、親ユニット10に対する子ユニット30の図2の左方の位置が規制される。これにより、子ユニット30が親ユニット10に対して第1の軸中心AX1の方向(軸線方向)に所定の範囲内に位置決めされる。
【0034】
上記の所定の範囲は、規制面43aと規制面45aとの間隔と、第1の壁部19の板厚(係合部15の肉部の厚み)とによって決まる。ここで、これらの間隔や厚みの寸法はいずれも、第1の軸中心AX1に沿った方向における子ユニット30や親ユニット10の全長に比べれば極めて短いものである。従って、製造誤差が小さく抑えられ、上記所定の範囲を小さい値で確実に確保でき、位置決め精度が高い。上記所定の範囲はいわゆるがたつきの範囲でもあるが、このがたつきを小さく抑えることが可能であるので、円滑な回動動作が長期に亘って維持される。
【0035】
ところで、ユニット間の相対的な回動量を検出するためのロータリボリューム等の検出手段を設けてもよい。例えば、第1の軸中心AX1の周りの親ユニット10と子ユニット30とのY方向の相対的な回動量を検出するロータリボリュームを、軸部33または被係合部40付近に設ける。その際、軸部33または軸部44が、いずれかのユニットにより回転駆動されるよう構成して当該ロータリボリュームの軸部を兼ねるように構成してもよい。
【0036】
また例えば、第2の軸中心AX2の周りの子ユニット30と孫ユニット50とのX方向の相対的な回動量を検出するロータリボリュームを、軸部52付近に設ける。その際、軸部52が、いずれかのユニットにより回転駆動されるよう構成して当該ロータリボリュームの軸部を兼ねるようにしてもよい。
【0037】
ところで、外側規制部43については、製造段階において軸受け穴53に軸部44を挿通してから軸部44の先端に外側規制部43を取り付ける構成であってもよい。また、軸部と軸受け穴との関係を逆にしてもよい。例えば、軸部33を親ユニット10に設けると共に、それを軸支する軸受け穴54を子ユニット30に設けてもよい。同様に、軸部52を子ユニット30に設けると共に、それを軸支する軸受け穴46を孫ユニット50に設けてもよい。被係合部40と係合部15とを設ける位置関係も、子ユニット30と親ユニット10とで逆にしてもよい。
【0038】
本実施の形態によれば、親ユニット10の係合部15と子ユニット30の被係合部40とが係合することで、親ユニット10、子ユニット30におけるそれぞれの両端部のうち同じ一方の端部において第1の軸中心AX1の軸線方向における両ユニット同士の位置決めがなされる。これにより、がたつきが小さくなり、軸方向の位置決め精度を高めて、円滑な回動による良好な操作感触を実現することができる。
【0039】
なお、軸部33は子ユニット30に一体に形成してもよい。また、被係合部40については、以下に示す変形例を採用することで、子ユニット30または親ユニット10に一体に形成することができる。
【0040】
図3(a)〜(c)は、係合部及び被係合部の第1の変形例を示す模式図である。図3(a)、(b)はそれぞれ係合部及び被係合部の要部の平面図、側面図で、図3(c)は親ユニット10の第1の壁部19の側面図である。
【0041】
子ユニット30に構成される第1の変形例の被係合部40は、外側規制部43、軸部44及び内側規制部45を有する。外側規制部43の2箇所には鍔部47が形成されている。子ユニット30には弧状溝部34が形成されている。
【0042】
一方、第1の壁部19に構成される第1の変形例の係合部15は、係止部55を有する。係止部55は、一体に形成された軸受け穴55a及び挿通穴55bを有する。第1の壁部19にはまた、子ユニット30の側に突出するようにピン16が取り付けられる。ピン16は、弧状溝部34内を移動し、弧状溝部34の両端により移動範囲が規制されることにより、本操作子装置の使用時における親ユニット10に対する子ユニット30の使用時回動範囲θが規制される(図3(b))。
【0043】
なお、子ユニット30の使用時回動範囲θを規制する手段としては、ピン16と弧状溝部34による機構に限定されるものでなく、子ユニット30と親ユニット10との間の何れかの箇所が当接関係となって使用時回動範囲θが規制されるようにしてもよい。
【0044】
製品完成状態においては、外側規制部43が第1の軸中心AX1方向における第1の壁部19の外側(図3(a)の下側)に位置する。係止部55の穴、すなわち軸受け穴55a及び挿通穴55bで形成される穴の形状は、被係合部40の先端形状とほぼ同じで、挿通穴55bと鍔部47との位置を合致させると鍔部47が係止部55の穴を挿通可能となる。しかし、両者の回動方向の位置が一定以上ずれると挿通不能となる。具体的には、使用時回動範囲θにおいては挿通不能で、使用時回動範囲θを超えてさらに回転位相が一致すると挿通可能となる。
【0045】
この挿通不能な状態では、鍔部47が第1の壁部19における軸受け穴55aの周りの面に係止される。これにより、図2の例と同様に子ユニット30の第1の軸中心AX1方向の位置決め(片側)がなされると同時に、抜け止め状態となる。すなわち、係合部15と被係合部40との係合が解除不能である。係合が解除可能となるのは、製品の組み付け時や修理時が想定され、親ユニット10と子ユニット30との位置関係が、少なくとも使用時回動範囲θではなり得ないような特定の位置関係となった場合だけである。例えば、図3(b)に示す状態から子ユニット30が90°回動すると解除可能となる。
【0046】
このような構成により、位置決め機能を有しつつ、係合部15と被係合部40との係合状態を簡単に実現できるので、組み付けや分解が容易となる。また、被係合部40は、鍔部47を含めて一体に形成することが可能である。一体に形成することで部品精度が高まるので、子ユニット30の位置決め精度を一層高めることができる。
【0047】
図3(d)、(e)は、係合部及び被係合部の第2の変形例の要部を模式的に示す平面図、側面図である。この例では、第1の壁部19に溝部17が形成され、溝部17の端部には挿通穴17aが形成される。溝部17は、被係合部40の軸部44が通るが外側規制部43は通らず、挿通穴17aは外側規制部43が挿通可能となるような大きさや形状である。
【0048】
すなわち、上記した第1の変形例では、係合部15と被係合部40とを回動方向にずらすことで解除可能あるいは解除不能にする構成であった。これに対し第2の変形例では、被係合部40と係合部15とを第1の軸中心AX1とは平行でない方向(この例では直交方向)に変位させることで解除可能あるいは解除不能とする。なお、軸部44を軸支する軸受け機構は別途設ける。
【0049】
図4は、係合部及び被係合部の第3の変形例を示す模式図である。図4(a)、(c)は、それぞれ図4(b)のA−A線、図4(d)のB−B線に沿う断面図である。図4(a)、(b)は、係合部及び被係合部の係合の解除不能な状態を示し、図4(c)、(d)は解除可能な状態を示す。
【0050】
上記した図2の構成では、親ユニット10の第1の壁部19の肉部を、子ユニット30の外側規制部43及び内側規制部45が第1の軸中心AX1の軸線方向における両側から挟む構成であった。これに対し第3の変形例では、関係を逆とし、挟まれる肉部を子ユニット30の側に設ける。
【0051】
まず、子ユニット30に構成される第3の変形例の被係合部40は、軸部48と軸部48に形成された鍔部49とを有する。一方、親ユニット10の第1の壁部19に構成される第3の変形例の係合部15には、第1の軸中心AX1に沿って連通する挿通穴57a、逃げ穴58及び軸受け穴59aでなる貫通穴が形成される。軸部48は軸受け穴59aに軸支される。逃げ穴58は、軸部48と一体に回動する鍔部49が干渉しないように逃げている。
【0052】
第1の軸中心AX1方向における第1の壁部19の内側部(図4(b)の上側)に内側係止部57が形成され、内側係止部57の内周部分が上記した挿通穴57aとなっている。挿通穴57aはほぼ長穴であり、鍔部49は挿通穴57aとの位置が適切に合致すると挿通穴57aを挿通可能となる。また、第1の軸中心AX1方向における第1の壁部19の外側部(図4(b)の下側)に外側係止部59が形成され、外側係止部59の内周部分が上記した軸受け穴59aとなっている。
【0053】
かかる構成において、図4(a)、(b)に示すように、使用時回動範囲(図3(b)のθと同様)においては、鍔部49が逃げ穴58に遊嵌状態となっている。従って、鍔部49が内側係止部57と外側係止部59とに挟まれ、移動範囲が規制されることで、親ユニット10に対する子ユニット30の第1の軸中心AX1方向における位置決めがなされている。この場合、鍔部49が肉部、内側係止部57及び外側係止部59が規制部として機能する。
【0054】
図4(a)、(b)に示すように、使用時回動範囲(図3(b)のθと同様)においては、鍔部49が内側係止部57に係止状態となり、被係合部40と係合部15との係合が解除不能となる。しかし、両者の回転位相を適切に位置させて特定の位置関係とし、例えば、図4(c)、(d)に示す状態とすると、鍔部49が挿通穴57aを挿通可能となり、被係合部40と係合部15との係合が解除可能となる。この第3の変形例においても、被係合部40は、鍔部49を含めて一体に形成することが可能である。
【0055】
ところで、上記した実施の形態や各種の変形例においては、回動軸方向における位置決めに関して3つのユニットのうち親ユニット10と子ユニット30とを対象としたがこれに限られない。例えば、子ユニット30と孫ユニット50との関係に適用してもよい、あるいは、3つでなく2つのユニットだけで構成される操作子装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 親ユニット(第1のユニット)、 12 第2の壁部、 15 係合部、 19 第1の壁部(肉部)、 30 子ユニット(第2のユニット)、 31 第1の端部、 40 被係合部、 43 外側規制部(規制部)、 44、48 軸部、 45 内側規制部(規制部)、 47 鍔部、 49 鍔部(肉部)、 55 係止部、 55a、59a 軸受け穴(軸受け部)、 55b、57a 挿通穴(挿通部)、 56 操作子、 57 内側係止部(係止部、規制部)、 59 外側係止部(規制部)、 AX1 第1の軸中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユニットと、
前記第1のユニットの、第1の軸中心の軸線方向における両端部に軸支され、操作子の操作により、前記第1の軸中心の周りに前記第1のユニットに対して相対的に回動する第2のユニットと、
前記第1のユニットの、前記第1の軸中心の軸線方向における両端部のうち一方の端部に設けられた係合部と、
前記第2のユニットの、前記第1の軸中心の軸線方向における両端部のうち一方の端部に設けられた被係合部とを有し、
前記第1のユニットの前記係合部と前記第2のユニットの前記被係合部とが係合することで、前記第1、第2のユニットにおけるそれぞれの一方の端部において前記第1の軸中心の軸線方向における位置決めがなされていることを特徴とする操作子装置。
【請求項2】
前記係合部及び前記被係合部の一方には、前記係合部及び前記被係合部の他方の肉部を前記第1の軸中心の軸線方向における両側から挟むように位置する規制部が設けられることを特徴とする請求項1記載の操作子装置。
【請求項3】
前記係合部と前記被係合部との係合は、当該操作子装置の使用時に前記第1のユニットに対して相対的に前記第2のユニットが回動し得る使用時回動範囲においては解除不能で、且つ、前記第1のユニットと前記第2のユニットとを前記使用時回動範囲ではなり得ない特定の位置関係としたときに解除可能となることを特徴とする請求項1または2記載の操作子装置。
【請求項4】
前記係合部及び前記被係合部の一方は、前記第1の軸中心を軸芯とする軸部と該軸部に一体に設けられた鍔部とを有し、前記係合部及び前記被係合部の他方は、前記軸部を軸支する軸受け部と、挿通部を有して前記鍔部が係止される係止部とを有し、前記使用時回動範囲においては前記鍔部が前記係止部の前記挿通部を挿通不能となることにより前記係止部に係止状態となり且つ、前記第1のユニットと前記第2のユニットとを前記特定の位置関係としたときには前記鍔部が前記係止部の前記挿通部を挿通可能なように構成されたことを特徴とする請求項3記載の操作子装置。
【請求項5】
前記係合部は前記第1のユニットと一体に形成され、前記被係合部は前記第2のユニットと一体に形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の操作子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37527(P2013−37527A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173041(P2011−173041)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】