説明

操作案内表示装置

【課題】画像形成装置の紙詰まり発生箇所を容易に認識でき、除去操作が簡単に案内できる操作案内表示装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置に付されたタグに基づいて視方向を検出する視方向検出部170と、画像形成装置から入力されたメンテナンス要求イベントの発生に基づいて、像形成装置の内部構造を模擬する映像オブジェクトと紙詰まり位置を示す付加映像オブジェクトを重畳した視方向に対応する映像を生成するオブジェクト生成部180と、生成された映像を投影表示部167を介してスクリーン100に表示するオブジェクト表示部185を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成された映像オブジェクトをスクリーンに表示するオブジェクト表示部を備えた操作案内表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合機やプリンタなどの画像形成装置において、紙詰まりが発生すると、前記画像形成装置は停止し、ユーザが前記画像形成装置の通紙経路に詰まった用紙を取り除く必要があった。前記画像形成装置の表示に紙詰まりの位置と処理方法を表示する手段は提案されているが、ユーザは、前記表示に従い用紙を取り除く操作を行っても、詰まっている用紙や通紙経路に残っている用紙を見つけることができず、前記表示方法では、一般のユーザにとって用紙が詰まっている場所や用紙が留まっている場所から用紙を取り除く方法は解り辛いという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1では、複写機筐体の内部には、ドアの開閉を検知するドア開閉検知装置を配置し、ドアの内側面には、ジャム処理方法を説明する透光性のデカルを貼り、ジャム検出兼ジャム位置検出装置でジャムが検知されると、デカルの裏側でドアに設けた照明装置、LEDが点灯し、デカル中のジャム位置およびジャム処理方法表示が照明され、作業者は要作業箇所を容易に認識できる画像形成装置が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献2では、取り外し可能な操作部、操作部の位置を把握するために、必要個所に設置された位置情報受信装置と、位置情報受信装置より位置情報を受け取り操作部の位置を判断するための判断手段と、操作部位置に応じた情報を操作部装置に表示するための表示手段と、機器の手動操作の状況を判断するための処理装置と、操作部位置情報を判断しそれに応じた表示処理を行う表示手段と、手動操作の状況を判断するための判断手段とを持つことを特徴とする印刷処理装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−247235号公報
【特許文献2】特開2006−231675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の画像形成装置では、表示できる情報量に限りがあり、近年、多機能化された複合機においては、紙詰まりの発生する可能性のある箇所も多くなり、表示できる情報量が少ないため処理方法が解りづらいという問題点があった。また、上述した特許文献2に記載の印刷処理装置では、前記表示手段に処理装置全体を表示しているため、紙詰まりしている位置が十分把握できるような大きさのディスプレイが必要となり、前記印刷処理装置自体の大きさが非常に大きくなってしまうという問題点があった。
【0007】
さらに、ユーザは、紙詰まりが発生している箇所の紙を取り除くことができても、通紙経路に他の用紙が残留し、紙詰まりが解消してもエラーは解除されないとき、残留している用紙を容易に発見できないため、エラーを解除することができないという問題点もあった。また、通紙経路に用紙が残留した状態で画像形成装置が復旧してしまうと、用紙が残留した箇所で更なる紙詰まりが発生してしまい、前記画像形成装置の内部の機器を破損させてしまう虞もあった。
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、画像形成装置の紙詰まり発生箇所を容易に認識でき、除去操作が簡単に案内できる操作案内表示装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明による操作案内表示装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、対象物に付されたタグに基づいて視方向を検出する視方向検出部と、対象物の内部構造を模擬する複数の基準映像オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、前記基準映像オブジェクトから前記視方向検出部により検出された視方向に対応する映像オブジェクトを生成するオブジェクト生成部と、生成された映像オブジェクトをスクリーンに表示するオブジェクト表示部を備えて構成される操作案内表示装置であって、前記タグが画像形成装置の各部に付され、前記オブジェクト記憶部に前記画像形成装置の内部構造を模擬する基準映像オブジェクトとメンテナンスに対応する付加映像オブジェクトが格納され、前記オブジェクト生成部は前記画像形成装置から入力されたメンテナンス要求イベントの発生に基づいて、当該メンテナンス要求イベントに対応する付加映像オブジェクトを重畳した映像オブジェクトを生成する点にある。
【0010】
前記視方向検出手段により、前記画像形成装置に付された複数のタグの配置に基づいて視方向、つまり、どの方向より画像形成装置を見ているかが検出される。前記画像形成装置を見ている方向が検出されると、オブジェクト生成部によりオブジェクト記憶部に記憶されている基準映像オブジェクトに基づいて前記視方向に対応する映像オブジェクトが生成され、オブジェクト表示部に表示される。前記オブジェクト記憶部は、メンテナンスに対応する付加映像オブジェクトが格納されており、メンテナンス要求イベントが発生したとき、前記オブジェクト表示部に前記映像オブジェクトに重畳して付加映像オブジェクトが表示されるため、オペレータは、メンテナンスを必要とするイベントが発生したとき、スクリーンに表示される映像を一見してメンテナンスの必要な箇所を正確に把握することができる。さらに、内部の構造を把握することができるため、メンテナンスに必要な操作を容易に行うことができる。
【0011】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記メンテナンス要求イベントは、画像形成装置で検出された紙詰まり発生情報であり、付加映像オブジェクトは紙詰まり標識オブジェクトである点にある。
【0012】
上述の構成によれば、前記画像形成装置において紙詰まりが発生したとき、前記オブジェクト表示部に紙詰まりが発生した箇所を紙詰まり標識オブジェクトとして表示することができるため、ユーザは、紙詰まり及び残留した用紙が存在する箇所を正確に把握することができる。さらに、ローラ等の内部の構造を基準映像オブジェクトとしてオブジェクト表示部に表示される場合には、機器操作に不慣れなユーザであっても、ユーザは紙詰まり及び用紙の残留している箇所を一見して把握することができ、さらに、紙詰まりの用紙を取り除くための処理に必要な操作を容易におこなうことができる。
【0013】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記付加映像オブジェクトが操作位置を示す操作オブジェクトである点にある。
【0014】
上述の構成によれば、スクリーンに表示された操作オブジェクトの映像に基づいて紙詰まりの除去のための操作を容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した通り、本発明によれば、画像形成装置の紙詰まり発生箇所を容易に認識でき、除去操作が簡単に案内できる操作案内表示装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明による操作案内表示装置について説明する。操作案内表示装置150は、図1に示すように、画像形成装置の一例であるデジタル複合機1に組み込まれている。当該複合機1は、液晶表示部やハードウェアキー等が配置された操作部10と、原稿載置部にセットされた一連の原稿を順次読込んで電子データに変換する画像読取部12と、変換された原稿の画像データを出力画像データに変換生成する画像処理部16と、画像処理部16により生成された出力画像データに基づいて感光体上にトナー像を形成する電子写真方式の画像形成部13と、画像形成部13に供給する用紙が収容された給紙カセット14等を備えて構成され、上述した各機能ブロックを統括制御するシステム制御部15を備えている。複合機1の化粧パネル表面には操作案内表示装置150に用いられる複数のタグ101が付されている。
【0017】
前記給紙カセット14に収容された用紙は、図2に示すように、給紙ローラ131よりピックアップされ、複数の搬送ローラ対133で搬送ベルト134に搬送され、搬送ベルト134上の転写位置で感光体130に形成されたトナー画像が転写された後に定着ローラ132により加熱定着され、排紙ローラ135によって装置外に排出されるように構成されている。
【0018】
前記給紙ローラ131、前記搬送ローラ133、転写位置、前記定着ローラ132、及び、前記排紙ローラ134の前後の所定箇所に紙詰まりを検知するセンサ(図示せず)を備えて構成され、システム制御部15により所定時間内に所定のセンサにより用紙が検出されないとき、或いは通過しないと判断されたときに紙詰まりが発生したと検出され、装置が停止されるとともに操作部10に紙詰まり除去表示が行なわれる。
【0019】
前記操作案内表示装置150は、図5に示すように、左右一対の半透明スクリーン100を配したゴーグル160と、ゴーグル160に取り付けられた小型カメラ165及び投影装置167を備えて構成され、前記小型カメラ165の映像データからゴーグル160を装着したオペレータの視方向を検出する視方向検出部170と、複合機1の内部構造、詳しくは、給紙ローラや搬送ローラや定着ローラ等の用紙搬送パスに存在する搬送エレメントを三次元モデルで模擬する複数の基準映像オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部175と、前記基準映像オブジェクトから前記視方向検出部170により検出された視方向に対応する映像オブジェクトを生成するオブジェクト生成部180と、生成された映像オブジェクトを前記スクリーン100に表示するオブジェクト表示部185を備えて構成され、オブジェクト生成部180は前記システム制御部15に接続されている。
【0020】
オペレータがゴーグル160を装着して複合機1を目視したときに、ゴーグルに設けられた小型カメラ165により撮像された映像データが前記視方向検出部170に入力され、前記視方向検出部170では映像データに含まれる複合機1に付された複数のタグ101の位置情報に基づいて、オペレータの視方向を検出する。各タグ101は複合機1の予め設定された位置に大きさまたは色等を異ならせて配置され、それらの相互の距離や角度から位置関係を演算してオペレータの視方向を算出するのである。
【0021】
前記オブジェクト記憶部175には、上述の基準映像オブジェクトに加えてメンテナンスに対応する付加映像オブジェクトが格納されている。付加映像オブジェクトには、三次元モデルにより紙詰まり位置を示す紙詰まり標識オブジェクトと、詰まった紙を除去するために操作する必要のある搬送エレメントに対する操作位置を二次元モデルで示す操作オブジェクトが含まれる。
【0022】
前記オブジェクト生成部180は、前記複合機1から入力されたメンテナンス要求イベントの一例である紙詰まりの発生に基づいて、当該メンテナンス要求イベントに対応する付加映像オブジェクトを重畳した映像オブジェクトを生成する。
【0023】
詳述すると、紙詰まりが発生したときに、オペレータがゴーグル160を装着して複合機1を見ると、前記オブジェクト生成部180は、視方向検出部170により検出された視方向に対応して、オブジェクト記憶部175に格納されている基準映像オブジェクトから当該視方向に対応するように角度を変えた映像オブジェクトを生成するとともに、システム制御部15から入力された紙詰まり発生位置情報から対応する映像オブジェクトの位置に紙詰まり標識オブジェクト及び操作オブジェクトを重畳させた映像オブジェクトを生成する。具体的には所定位置に配置された複数の基準映像オブジェクト等を視方向に対応した二次元空間にレンダリング処理する。
【0024】
前記オブジェクト表示部185は、前記オブジェクト生成部180で生成された映像オブジェクトを前記半透明のスクリーン100に投影表示装置167を介して投影表示する。オペレータは、ゴーグル160を介して目視した複合機1に、レンダリング処理された搬送エレメント及び紙詰まり標識が重畳表示されるため、拡張現実感(Augmented Reality)が得られる。従って、外部から見辛い箇所で紙詰まりが生じても、スクリーン100に表示される紙詰まり標識オブジェクトに基づいて容易に紙詰まり位置を認識することが可能となる。その際に、スクリーン100に表示される操作オブジェクトに基づいて紙詰まりの処理を行なうことも可能となる。
【0025】
具体的に紙を除去するためには、装置の扉を開放操作して、給紙部や定着部に配置されているローラ対の圧着状態を解除レバーにより解除したり、ローラを回すためのノブを回転操作する必要がある。操作オブジェクトは、そのような操作位置を映像上に表示することにより紙の除去操作手順を案内するように表示される。
【0026】
操作すべきレバーやノブを案内表示するために、前記視方向検出部170には、前記小型カメラ165の映像データを解析してオペレータの操作状況を判断し、操作順に沿って表示される操作オブジェクトを選択する操作案内処理部が設けられており、前記オブジェクト生成部180は操作案内処理部により選択された操作オブジェクトがレンダリング処理される。
【0027】
尚、前記オブジェクト表示部185から出力される映像信号を表示する投影表示装置167に替えて小型液晶ディスプレイ装置等任意の表示デバイスを用いることができることはいうまでもない。
【0028】
紙詰まりが発生した場合、前記ゴーグル160を装着することにより、オペレータは、図3(a)に示す複合機の映像を、図3(b)に示すように、前記半透明のスクリーン100を透過して見える実際の映像である複合機1(点線)と、前記ゴーグル160に備えられた投影装置165により表示される前記生成オブジェクトより生成された前記基準映像オブジェクトから当該視方向に対応するように角度を変えた映像オブジェクトである搬送エレメント(実線)と、付加映像オブジェクトである紙詰まり位置を示す紙詰まり標識オブジェクト(斜線部)とを重畳した複合機の映像として目視することができる。
【0029】
上述の構成によると、紙詰まりの位置を確実に把握することができるため、ユーザは紙詰まりの用紙を取り除くための処理に必要な操作を容易に把握することができる。
【0030】
さらに、操作する必要のある搬送エレメントに対する操作位置を、例えば、点灯させ表示するなどの操作オブジェクトとして示すことにより、容易に紙詰まりの用紙を取り除くことができる。
【0031】
以下、別実施形態を説明する。上述の実施形態では、紙詰まりが発生した場合について説明したが、トナー交換や、ローラの劣化等のメンテナンスが必要な場合において操作案内をおこなう操作案内表示装置であってもよい。
【0032】
上述の実施形態では、前記操作案内表示装置を複合機に使用したものを説明したが、FAX、または、プリンタなどメンテナンスが必要な装置に使用してもよい。
【0033】
上述の実施形態では、操作案内表示装置は立体的に重畳した映像オブジェクトを表示するものを説明したが、図4に示すように、前記複数タグを前記複合機1の正面のみに配置し、前記複合機1を正面から見た平面で表示されるよう構成されてもよい。
【0034】
上述の実施形態では、前記給紙ローラ131、前記搬送ローラ133、定着位置、前記定着ローラ132、及び、前記排紙ローラ135に紙詰まりを検知するセンサを備えたものを説明したが、前記センサは前記ローラ等に限らず紙詰まりの発生する可能性のある箇所に設けるように構成してもよい。
【0035】
上述の実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】複合機の説明図
【図2】本実施例における記録紙通紙経路の説明図
【図3】本実施例における操作案内表示装置の説明図
【図4】本実施例における操作案内表示装置の説明図
【図5】本実施例における操作案内表示装置の説明図
【符号の説明】
【0037】
1:複合機
13:画像出力部
14:給紙カセット
100: スクリーン
101:タグ
130:感光体
131:給紙ローラ
132:転写ローラ
133:搬送ローラ
134:搬送ベルト
135:排紙ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付されたタグに基づいて視方向を検出する視方向検出部と、対象物の内部構造を模擬する複数の基準映像オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、前記基準映像オブジェクトから前記視方向検出部により検出された視方向に対応する映像オブジェクトを生成するオブジェクト生成部と、生成された映像オブジェクトをスクリーンに表示するオブジェクト表示部を備えて構成される操作案内表示装置であって、
前記タグが画像形成装置の各部に付され、前記オブジェクト記憶部に前記画像形成装置の内部構造を模擬する基準映像オブジェクトとメンテナンスに対応する付加映像オブジェクトが格納され、前記オブジェクト生成部は前記画像形成装置から入力されたメンテナンス要求イベントの発生に基づいて、当該メンテナンス要求イベントに対応する付加映像オブジェクトを重畳した映像オブジェクトを生成する操作案内表示装置。
【請求項2】
前記メンテナンス要求イベントは、画像形成装置で検出された紙詰まり発生情報であり、前記付加映像オブジェクトは紙詰まり標識オブジェクトである請求項1記載の操作案内表示装置。
【請求項3】
前記付加映像オブジェクトが操作位置を示す操作オブジェクトである請求項2記載の操作案内表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−201101(P2008−201101A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42718(P2007−42718)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】