説明

操作用部材およびその製造方法

【課題】スイッチ部材を押圧し易い操作用部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】操作するためのキー3あるいはキー集合板と、キー3あるいはキー集合板を支持する支持部9と、支持部9を介してキー3あるいはキー集合板を支持するシート部材4とを備え、支持部9の裏面側には、キー3あるいはキー集合板と押圧方向で重なる位置に、シート部材4を介して、支持部9よりも硬質の押圧子7が固着されると共に、押圧子7は、その裏面側に、操作面から見た投影面積が、押圧検出用のスイッチ部材より小さい先端を有する突出部8を備える操作用部材としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話および携帯情報端末装置(PDA)等の電子機器の操作部に操作用部材が用いられている。たとえば、操作用部材としての押釦スイッチは、押釦スイッチ用部材と、押釦スイッチ用部材に対向して設けられたスイッチ部材を有する基板とから主に構成されている。押釦スイッチ用部材は、ユーザが押圧するためのキートップを弾性体からなるキーパッドに固着している。そのため、ユーザがキートップを押圧することで、キーパッドを押し下げ、スイッチをオンあるいはオフできる。また、キーパッドの裏面に、スイッチ部材と押圧方向で重なる位置に、スイッチ部材を押し込むことを容易にするための押圧子を一体化して形成しているものがある(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−178639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のキーパッドでは、以下のような問題がある。それは、押圧子がキーパッドと同じ弾性体から形成されているため、キートップの裏面からスイッチ部材までの距離が長い場合には、押圧子が容易に変形しやすく、スイッチ部材を押圧し難いという問題である。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、スイッチ部材を押圧し易い操作用部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の操作用部材の一実施の形態は、操作するためのキーあるいはキー集合板と、キーあるいはキー集合板を支持する支持部と、支持部を介してキーあるいはキー集合板を支持するシート部材とを備え、支持部の裏面側には、キーあるいはキー集合板と押圧方向で重なる位置に、シート部材を介して、支持部よりも硬質の押圧子が固着されると共に、押圧子は、その裏面側に、操作面から見た投影面積が、押圧検出用のスイッチ部材より小さい先端を有する突出部を備えるものとしている。
【0007】
さらに、押圧子、シート部材および支持部は、透光性の樹脂から構成され得る。
【0008】
また、シート部材は、透光性を有していると共に、少なくとも一部に非透光性の加飾層が設けられ得る。
【0009】
さらに、シート部材は、導電体がキーあるいはキー集合板に接触することで生じる静電容量の変化を検出するための導電層を備え得る。
【0010】
さらに、キーあるいはキー集合板は、透光領域を有し、導電層は、透光領域に対向する領域の少なくとも一部を透光性とし得る。
【0011】
また、本発明の操作用部材の製造方法の一実施の形態は、操作するためのキーあるいはキー集合板と、キーあるいはキー集合板を支持する支持部と、支持部を介してキーあるいはキー集合板を支持するシート部材とを備え、支持部の裏面側には、キーあるいはキー集合板と押圧方向で重なる位置に、シート部材を介して、支持部よりも硬質の押圧子が固着されると共に、押圧子は、その裏面側に、操作面から見た投影面積が、押圧検出用のスイッチ部材より小さい先端を有する突出部を備える操作用部材の製造方法であって、押圧子およびシート部材を金型に配置する配置ステップと、弾性体の原料を配置して、シート部材、押圧子および弾性体をインサート成型する成型ステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチ部材を押圧し易い操作用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る操作用部材を備える携帯端末の正面図である。
【図2】図1に示す携帯端末に組み込まれる操作用部材を操作面側から見た場合の斜視図である。
【図3】図2に示す操作用部材を操作面の裏側から見た場合の斜視図である。
【図4】図2に示す操作用部材の分解斜視図である。
【図5】図2に示す操作用部材のA−A線断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る操作用部材を備える押釦スイッチの断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る操作用部材の製造方法の概略的な流れを示すフローチャートである。
【図8】図7に示す各ステップにおける操作用部材の状態を示す図であって、図5と同様の断面図である。
【図9】本発明の変形例に係る操作用部材を、図5のBと同様の領域について示すA−A線断面図である
【図10】本発明の別の変形例に係る操作用部材を、図5のBと同様の領域について示すA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る操作用部材およびその製造方法の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(操作用部材の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る操作用部材2を備える携帯端末1の正面図である。
【0016】
図1に示すように、電子機器の一例である携帯端末1は、本実施の形態に係る操作用部材2を備える。また、携帯端末1の操作面側には、キーの一例であるキートップ3が露出している。なお、以後、操作面側(各図のZ方向)を表面側、操作面と逆の面側(各図の−Z方向)を裏面側という。また、表面と裏面との間の距離を厚さという。
【0017】
図2は、図1に示す携帯端末1に組み込まれる操作用部材2を操作面側から見た場合の斜視図である。
【0018】
図2に示すように、操作用部材2は、表面側に露出するキートップ3と、キートップ3を支持するシート部材4とを有する。シート部材4は、キートップ3の裏面側に配置されている。また、シート部材4は、補強部材5により支持されている。
【0019】
図3は、図2に示す操作用部材2を操作面の裏側から見た場合の斜視図である。
【0020】
図3に示すように、補強部材5は、厚さ方向にてキートップ3の少なくとも一部と重なる位置に、貫通孔6を有する板状の部材である。貫通孔6の内方には、押圧子7が配置されている。押圧子7の裏面側には、裏面側に突出する突出部8を有する。
【0021】
図4は、図2に示す操作用部材2の分解斜視図である。
【0022】
図4に示すように、操作用部材2は、表面側から、キートップ3、シート部材4、補強部材5および押圧子7を主に備える。キートップ3は、支持部9を介してシート部材4の表面に固定されている。補強部材5および押圧子7は、シート部材4の裏面に固定される。
【0023】
キートップ3は、ユーザが押圧する部材である。キートップ3としては、所定の強度を備えた材料であれば特に限定なく使用でき、例えば、厚さが約0.1〜2.0mm程度の樹脂、セラミックス、金属、ガラスあるいはそれらのコンポジットから構成される。
【0024】
シート部材4は、支持部9と押圧子7との間を隔てる部材である。シート部材4は、キートップ3が表面側から押圧された場合に、その下方に設けられたドーム状のスイッチ部材(後述する)を押し込むことができるように、柔軟な弾性材料から構成されるのが好ましい。また、シート部材4は、支持部9およびキートップ3を支持することから、支持部9よりも高強度であるのが好ましい。シート部材4が弾性材料から構成される場合には、キートップ3の押圧を解除すると、キートップ3は、支持部9の弾性により元の位置に復帰できる。
【0025】
シート部材4の材料としては、柔軟性に富む材料であれば制限なく用いることができ、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、熱可塑性ウレタン系エラストマー又は熱硬化性ウレタン系エラストマーを用いるのが好ましい。上記のポリエステル系材料は、透明性、強靭性および薄膜性を有し、かつ安価であるため好ましい。ウレタン系エラストマーは、強靭性を有し、他の部材との密着性に優れている。また、ウレタン系エラストマーは、弾性率が他の部材よりも比較的低いことから、インサート成型した場合に、型に対し追従できるので、様々な形状の要求に応えられるため好ましい。
【0026】
シート部材4および支持部9が透光性である場合には、補強部材5の貫通孔6の内部からキートップ3を照光できる。なお、本明細書において「透光性」とは、光を実質的に透過させるものであればよく、好ましくは、一方向から光を照射した際の全光線透過率が10%以上、好ましくは30%以上である状態を指すものとする。また、シート部材4は、補強部材5と一体的に成型されているのがより好ましい。シート部材4は、支持部9を有さないような形態であってもよいが、支持部9を有する場合には、キートップ3の押し込みに対してより撓みやすいため、好適である。
【0027】
補強部材5は、貫通孔6を有する板状の部材であり、シート部材4よりも硬質の樹脂から構成される。補強部材5としては、所定の強度を備えた材料であれば特に限定なく使用でき、例えば、厚さが約0.1〜1.5mm程度の樹脂、セラミックス、金属、ガラスあるいはそれらのコンポジットから構成される。また、操作用部材2の裏面からキートップ3を照光する場合には、補強部材5を非透光性の部材から構成することで、キートップ3以外の領域から光が漏れるのを防ぐことができる。さらに、補強部材5の裏面に光の反射機能を付与した場合には、補強部材5が反射板として、キートップ3以外の領域からの漏光をより効果的に防止できるので、好ましい。補強部材5によりシート部材4が固着されている場合には、キートップ3を押し下げた後でキートップ3の押圧が解除されると、シート部材4は、補強部材5に固着されている部分を起点として、元の形状に復帰できる。また、補強部材5は、筺体と嵌合する際に、操作部材を筺体に対し固定するための嵌合部として機能してもよい。さらに、補強部材5を設けることで、操作部材2の表面側に別途のカバー部材等を配置することなく、キートップ3の位置を固定することができる。
【0028】
押圧子7は、シート部材4から裏面方向に突出する部材である。押圧子7は、キートップ3が押し込まれた場合に、押圧子7が変形しにくいように、シート部材4および支持部9よりも硬質の部材から形成される。押圧子7は、その裏面側に突出部8を有する。操作面に対する投影面積を比較すると、押圧子7の面積は、突出部8の面積よりも大きい。
【0029】
突出部8は、キートップ3が表面側から押圧された場合に、その下方に設けられたスイッチ部材(後述する)を押し込む部分である。突出部8の先端は、スイッチ部材より操作面側から見た投影面積が小さい。本実施の形態では、突出部8は、押圧子7の裏面よりも操作面側から見た投影面積が小さく、突出部8は、押圧子7の一部として一体的に形成されている。押圧子7および突出部8が、透光性を有する場合には、押圧子7の側部あるいは突出部8から入射した光をより効率よく支持部9に伝搬させることができる。たとえば、押圧子7は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリウレタンあるいはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂等の透光性の部材から形成できるが、その中でも、ポリカーボネートから形成されるのがより好ましい。
【0030】
支持部9は、キートップ3とシート部材4との間に配置される部材である。支持部9は、キートップ3が表面側から押圧された場合に、その下方に撓むことができるように柔軟な弾性材料から構成されるのが好ましい。支持部9が弾性材料から構成される場合には、ユーザがキートップ3の押圧を解除すると、キートップ3は、支持部9の弾性により元の位置に復帰できる。そのような支持部9の材料としては、たとえば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムあるいはスチレンブタジエンゴム等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系あるいはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を主に用いることができる。それらの材料の中でも、耐久性が高くかつ柔軟なシリコーンゴムを用いるのが好ましい。
【0031】
図5は、図2に示す操作用部材2のA−A線断面図である。なお、図5およびそれ以後の断面図では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を実際の比率と変えて図示している。
【0032】
キートップ3は、補強部材5の貫通孔6を塞ぐように、支持部9を介してシート部材4の表面に固定されている。補強部材5は、シート部材4の裏面側に固定されている。また、押圧子7は、シート部材4の裏面側であって、補強部材5の貫通孔6から露出した領域に固定されている。かかる構成により、シート部材4は、キートップ3および押圧子7を支持している。
【0033】
キートップ3は、支持部9の表面に接着層(不図示)を介して固定される。たとえば、接着層としては、両面テープ、ホットメルトテープ、シアノアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂あるいは加熱した際の軟化点が低い樹脂等から成る層とすることができる。接着層の材料としてシアノアクリレート系の接着剤を用いた場合には、空気中の水分の作用により硬化できる。なお、キートップ3と支持部9とは、接着剤以外の方法により固定されてもよい。たとえば、レーザや火炎を用いた熱融着、化学反応を利用した固着を採用してもよい。
【0034】
なお、シート部材4と補強部材5との間、シート部材4と押圧子7との間、あるいは、シート部材4と支持部材9との間は、接着あるいは融着等どのような手段で固着されていてもよい。また、それらを固着する前に、接合面にプライマーあるいはシランカップリング剤を塗布する、またはブラスト処理等を行う等の表面処理を施してもよい。また、支持部9を形成するためのコンパウンドに自己接着性を発現するための接着成分を添加することで、支持部9とシート部材4とを固着してもよく、かかる場合には、プライマーあるいはシランカップリング剤をシート部材4あるいは支持部9に塗布しなくてもよい。あるいは、シート部材4、補強部材5および押圧子7をインサート成型等により一体的に成型してもよい。
【0035】
次に、操作用部材2を用いた押釦スイッチ2aの構造について説明する。
【0036】
図6は、本発明の実施の形態に係る操作用部材2を備える押釦スイッチ2aの断面図である。
【0037】
押釦スイッチ2aは、操作用部材2の裏面側に対向する基板10を有する。基板10の表面側には、押圧子7と対向する位置にスイッチ部材11が設けられている。
【0038】
基板10は、平板状の部材であり、好適には、その表側の面に配線パターンがプリントされたプリント基板である。スイッチ部材11は、固定接点12、導電部13および固定接点12を覆うように形成されたドーム状のドーム部14により主に構成される。固定接点12および導電部13は、上述の配線パターンの一部として基板10に設けられている。ドーム部14は、操作面側に向かって逆椀状に突出する導電性の部材である。また、導電部13は、ドーム部14と外縁部と接触する部分に形成されている。この結果、導電部13とドーム部14とは、電気的に接続される。
【0039】
また、押釦スイッチ2aは、操作用部材2と基板10との間に、導光板15を介在させている。導光板15の端部は、発光素子16と当接または近接しているので、発光素子16から導光板15に入射した光は、導光板15内部を伝搬する。押圧子7の突出部8は、導光板15と当接している。押圧子7が透光性の部材から構成される場合には、導光板15に当接する突出部8および空気層を介して押圧子7の裏面から光が入射し、押圧子7の表面側から出射する。したがって、透光性の支持部9およびキートップ3を用いている場合には、押圧子7の表面側から出射した光がユーザに視認される。
【0040】
押釦スイッチ2aでは、ユーザがキートップ3を押圧すると、シート部材4が撓み、押圧子7が押し下げられる。押圧子7が押し下げられると、ドーム部14が撓み、ドーム部14の内側に位置する固定接点12とドーム部14とが接触し、導通する。一方、ユーザがキートップ3から指を離すと、シート部材4および支持部9が弾性的に元の形状に戻り、ドーム部14が固定接点12から離間し、固定接点12と導電部13とが非導通状態となる。かかる導通/非導通により、スイッチのON/OFFが切替えられる。
【0041】
上述のような操作用部材2を構成することにより、キートップ3によりスイッチ部材11を押し込みやすい。なぜなら、押圧子7が支持部9よりも硬質の材料から構成されているため、ドーム部14の押圧動作により押圧子7が変形しにくいからである。特に、押圧子7の厚さが、押圧子7が設けられている部分の支持部9の厚さよりも大きい場合には、硬質の材料から構成された押圧子7を用いることで、ユーザがキートップ3を押圧した際に、良好なクリック感を得やすくなる。また、押圧子7の先端部分を突出部8として、ドーム部14との接触面積を小さくすることにより、クリック感をより向上させることができる。
【0042】
また、上述のような操作用部材2を構成し、かつ、シート部材4、支持部9および押圧子7を透光性の部材から構成することにより、押圧子7から光を入射させた場合に、キートップ3を効率よく照光できる。なぜなら、押圧子7が弾性体から構成されていないため、弾性体に含まれる補強材等による光の吸収や拡散の影響を受けにくく、光が効率よく押圧子7の内部を伝搬し、キートップ3へと導かれるからである。
【0043】
また、上述のような操作用部材2を構成することで、押圧子7とシート部材4とをより強固に固着できる。なぜなら、操作面と平行な面における投影面積で比較すると、実際にスイッチ部材11を押圧する突出部8の投影面積よりも、押圧子7のシート部材4側の投影面積の方が大きいので、より広い接触面積にてシート部材4と押圧子7とが固着できるからである。
【0044】
(操作用部材の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る操作用部材の製造方法について説明する。
【0045】
図7は、本発明の実施の形態に係る操作用部材2の製造方法の概略的な流れを示すフローチャートである。図8は、図7に示す各ステップにおける操作用部材2の状態を示す図であって、図5と同様の断面図である。
【0046】
まず、図8の(A)に示すように、下側金型20にシート部材4、補強部材5および押圧子7を配置する(ステップS101:配置ステップ)。なお、押圧子7を下側金型20に配置する際に、押圧子7の挿入あるいは成型品の脱型を考慮すると、操作面から見た場合の押圧子7の外周は、下側金型20と0.05mm程度の間隙を有するように設計される。
【0047】
次に、図8の(B)に示すように、上側金型21を下側金型20の上に配置する。そして、図8の(C)に示すように、支持部9の原料mを上側金型21と下側金型20との間に充填し、インサート成型を行う(ステップS102:成型ステップ)。たとえば、原料mとしては、液状のシリコーンコンパウンドを用いることができる。なお、図8の(B)の工程と(C)の工程とは、逆であってもよい。
【0048】
最後に、インサート成型品を金型から取り出した後、図8の(D)に示すように、支持部9の表面側に、接着層(不図示)を形成し、キートップ3を固着する。
【0049】
上述の方法にて操作用部材2を製造することにより、接着剤あるいは両面テープでシート部材4と押圧子7とを固着する場合よりも、より強固に固着できる。また、シート部材4、補強部材5、押圧子7および支持部9を一工程で成型できるため、工程数を減らすことができる。
【0050】
また、上述の方法にて操作用部材2を製造することにより、支持部9を形成するための原料mが、押圧子7の側面あるいは裏面側に回り込み、原料mの被膜が形成されるのを有効に防止できる。原料mと押圧子7との間に、シート部材4が配置されているからである。
【0051】
以上、本発明の操作用部材2およびその製造方法を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0052】
たとえば、上述の実施の形態では、支持部9は、各キートップ3の裏面側に個別に配置されるものとしているが、このような形態に限らない。支持部9は、1つのみまたは複数のキートップ3から構成されるキー集合板の裏面側に配置されるように、シート部材4の上面の全部または一部を覆ってもよい。さらに、支持部9は、シート部材4の上面の全部または一部を覆うシート形状のベース部と、キートップ3と押圧方向で重なる位置においてキートップ3側へ突出する突出部と、を有する形態であってもよい。
【0053】
また、シート部材4が透光性の部材から形成されている場合に、キートップ3等を照光するために導光する部材(いわゆる、ライトガイド)としてシート部材4を機能させてもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態では、補強部材5を備えているが、補強部材5は、必須ではない。さらに、上述の実施の形態では、1つのキートップ3に対し1つの貫通孔6を有する補強部材5を設けているが、複数のキートップ3に対し1つの貫通孔6を有するような補強部材を用いてもよい。また、補強部材5は、複数に分割されていてもよい。補強部材5は、シート部材4の表面側に設けられていてもよい。しかし、補強部材5がシート部材4の裏面側に配置されている場合には、キートップ3の裏面と補強部材5との間隙を大きくすることができることから、キートップ3のストローク量を大きくすることができる。
【0055】
上述の実施の形態では、各キートップ3は、別個に3つ配置されているが、このような形態に限らない。たとえば、複数のキートップ3を連接したキー集合体を用いてもよい。また、複数のキートップ3に対し、1つ若しくは複数のシート部材4を設けてもよい。同様に、補強部材5が透光性の部材から形成し、補強部材5をライトガイドとして機能させてもよい。
【0056】
上述の実施の形態では、押圧子7は、透光性の部材から形成されているが、このような形態に限らない。押圧子7が非透光性の部材から構成される場合であっても、押圧子7の厚さが大きくなる場合には、押圧子7を支持部9およびシート部材4よりも硬質の材料にて構成することにより、クリック感を向上できる。しかし、押圧子7が透光性の部材から構成される場合には、突出部8あるいはそれ以外の押圧子7の背面側から光を入射すると、その光は、押圧子7と空気層との界面で全反射を繰り返しながら、押圧子7の内部へ広がる。したがって、押圧子7は、支持部9を介してキートップ3を照光させるためのライトガイドとして機能できる。押圧子7をライトガイドとして機能させる場合には、押圧子7の全光線透過率を70%以上とするのが好ましい。また、突出部8を備える押圧子7をシート部材4に固着することで、シート部材4に突出部8を固着した場合のシート部材4と突出部8との接着面積よりも、押圧子7とシート部材4との接着面積の方が大きいため、照光面積を大きくすることができる。
【0057】
また、上述の実施の形態では、押釦スイッチ2aは、スイッチ部材11を有し、スイッチ部材11は、主に固定接点12、導電部13およびドーム部14から構成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、スイッチ部材11として、いわゆるタクトスイッチを用いてもよい。スイッチ部材11としてタクトスイッチを用いる場合にも、タクトスイッチを押し込み易くするために、シート部材4よりも押圧子7が硬質の部材から構成され、かつ、押圧子7が突出部8を有するのが好ましい。また、押圧子7が非透光性の場合には、導光板15および発光素子16を備えなくてもよい。さらに、導光板15および発光素子16は、図6で示す場所以外に設けられていてもよい。
【0058】
図9は、本発明の変形例に係る操作用部材30を、図5のBと同様の領域について示すA−A線断面図である。なお、操作用部材2と同じ構成要素については、同じ番号を用いて説明する。
【0059】
図9に示すように、操作用部材30は、透光性のキートップ3の一部に、加飾層として、非透光性の遮光層31を有してもよい。また、遮光層31は、透光領域として、文字、数字、記号あるいは図等の形状を型抜きした透光部32を有していてもよい。かかる場合には、シート部材4、支持部9および押圧子7を透光性の部材から構成し、押圧子7から光を入射させた場合に、キートップ3の透光部32のみから光が出射するので、透光部32により模した文字等を際立たせることができる。なお、透光部32には、透光性の加飾層を設けてもよい。
【0060】
また、操作用部材30は、キートップ3の一部に遮光層31を設ける場合には、透光部32以外の部分から光が漏れないように、シート部材4の表面または裏面のうち、遮光層31と厚さ方向で重なる領域に遮光層33を設けるのが好ましい。かかる場合には、支持部9の周囲に遮光性の部材を配置して遮光する場合と比較して、支持部9と厚さ方向で重なる部分にも遮光層33を形成できる。そのため、キートップ3のうち光を透過させる部分(すなわち、透光部32部分)と厚さ方向で重なるシート部材4の領域またはその付近のみを透光させることができる。そのため、支持部9の側面から漏れる光を少なくすることができる。
【0061】
なお、シート部材4に遮光層33を設ける場合には、遮光層33をシート部材4の表面側に設けるのが好ましい。シート部材4の表面側には、支持部9との接着力を向上させるためのプライマー層形成工程と前後して、遮光層33の形成を行うことで、効率よく遮光層を形成できる。
【0062】
図10は、本発明の別の変形例に係る操作用部材40を、図5のBと同様の領域について示すA−A線断面図である。なお、操作用部材2および操作用部材30と同じ構成要素については、同じ番号を用いて説明する。
【0063】
図10に示すように、操作層部材40は、シート部材4の表面に導電性の導電層41を有していてもよい。導電層41は、たとえば、導電体(たとえば、ユーザの指)がキートップ3に接触あるいは摺動することで生じる静電容量の変化を検出するための静電容量検出電極として用いることができる。導電層41を有する操作用部材40は、人の指がキートップ3に触れる動作およびキートップ3が押し込まれる動作の一方または両方を検出できる。
【0064】
導電層41は、たとえば、銀、アルミニウム、ニッケル、あるいは金等の金属もしくは炭素を含有する樹脂等を用いて形成できる。なお、導電層41は、シート部材4の裏面側に設けられてもよい。しかし、静電容量の変化を検出するために導電層41を用いる場合には、シート部材4の表面に導電層41を有するのが好ましい。キートップ3と導電層41との距離をできるだけ近くすることで、静電容量の変化を検出しやすくなるからである。また、導電層41を設ける場合には、導電層41を保護するための保護層42を設けるのが好ましい。さらに、シート部材40は、導電層41と共にまたは導電層41が形成されていない領域に、遮光層43を有してもよい。
【0065】
導電層41が静電容量検出電極として用いられる場合には、キートップ3は、高導電性または高誘電性であるのが好まく、人間の指よりも低電気抵抗値を示すことがさらに望ましい。また、キートップ3の一部に遮光層31が設けられている場合には、透光部32と厚さ方向で重なる領域に位置する導電層41は、透光性の材料により形成されるのが好ましい。透光性の導電層41としては、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide)あるいはポリチオフェン等から成る導電性ポリマーを用いることができる。また、透光部32と厚さ方向で重なる領域に導電層41が存在する場合には、表面側から導電層41が視認されにくくなるように、キートップ3の裏面または表面に光拡散効果のある加飾層をさらに付与してもよい。
【0066】
また、遮光層31,33,43および導電層41等の層は、どのような方法により形成されてもよい。たとえば、遮光層31,33,43および導電層41等の層は、スクリーン印刷、オフセット印刷若しくはグラビア印刷等の印刷手法、または、塗装、蒸着、イオンプレーティング若しくはめっき等の印刷以外の手法により形成することができる。また、また、透光領域は、その透光領域を避けて遮光層31,33,43を設けることにより形成される他、キートップ3やシート部材4を遮光性の部材にて構成し、透光させたい領域に、レーザあるいはケミカルエッチング等にて孔を形成することにより、透光領域を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、たとえば、各種電子機器の入力装置としての操作手段等に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
2,30,40 操作用部材
3 キートップ(キーまたはキー集合板)
4 シート部材
7 押圧子
8 突出部
9 支持部
11 スイッチ部材
32 透光部(透光領域)
33,43 遮光層(非透光性の加飾層)
41 導電層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作するためのキーあるいはキー集合板と、
上記キーあるいは上記キー集合板を支持する支持部と、
上記支持部を介して上記キーあるいは上記キー集合板を支持するシート部材と、を備え、
上記支持部の裏面側には、上記キーあるいは上記キー集合板と押圧方向で重なる位置に、上記シート部材を介して、上記支持部よりも硬質の押圧子が固着されると共に、
上記押圧子は、その裏面側に、上記操作面から見た投影面積が、押圧検出用のスイッチ部材より小さい先端を有する突出部を備えることを特徴とする操作用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の操作用部材であって、
前記押圧子、前記シート部材および前記支持部は、透光性の樹脂から構成されることを特徴とする操作用部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の操作用部材であって、
前記シート部材は、透光性を有していると共に、少なくとも一部に非透光性の加飾層が設けられていることを特徴とする操作用部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の操作用部材であって、
さらに、前記シート部材は、導電体が前記キーあるいは前記キー集合板に接触することで生じる静電容量の変化を検出するための導電層を備えることを特徴とする操作用部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の操作用部材であって、
前記キーあるいは前記キー集合板は、透光領域を有し、
前記導電層は、上記透光領域に対向する領域の少なくとも一部を透光性とすることを特徴とする操作用部材。
【請求項6】
操作するためのキーあるいはキー集合板と、上記キーあるいは上記キー集合板を支持する支持部と、上記支持部を介して上記キーあるいは上記キー集合板を支持するシート部材と、を備え、上記支持部の裏面側には、上記キーあるいは上記キー集合板と押圧方向で重なる位置に、上記シート部材を介して、上記支持部よりも硬質の押圧子が固着されると共に、上記押圧子は、その裏面側に、上記操作面から見た投影面積が、押圧検出用のスイッチ部材より小さい先端を有する突出部を備える操作用部材の製造方法であって、
上記押圧子および上記シート部材を金型に配置する配置ステップと、
上記弾性体の原料を配置して、上記シート部材、上記押圧子および上記弾性体をインサート成型する成型ステップと、
を含むことを特徴とする操作用部材の製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−203994(P2012−203994A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64518(P2011−64518)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】