説明

操舵用油圧ポンプ及び操舵装置

【課題】 操舵用油圧ポンプの斜板又はシリンダブロックの傾転角を変更するための制御を行う傾転角制御装置の中立調整作業時間の短縮化及び中立調整作業の簡略化を図ること。
【解決手段】 シリンダブロックのシリンダ内をピストンが往復移動して、作動油を、バルブプレート51の第1ポート55側から吸い込んで、第2ポート56から吐出して舵板駆動部を駆動させる操舵用油圧ポンプにおいて、第1及び第2ポート55、56には第2及び第1ノッチ61、60が形成され、第2ポート56から吐出される圧油の吐出流量を変更するためのシリンダブロックの傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲内にあるときに、第2ポート56側の圧油の一部又は全部が、第1ノッチ60、及びシリンダポート62を介して第2ポート56に逆流することによって、舵板駆動部に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵用油圧ポンプに設けられている斜板及びシリンダブロックを含む斜体の傾転角を変更するための制御を行う傾転角制御装置の中立(零点)調整作業時間の短縮化、及び中立調整作業の簡略化を図ることができる操舵用油圧ポンプ、及びそれを備える操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操舵用油圧ポンプ(例えば斜軸型油圧ポンプ)のシリンダブロック(斜体)の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置を製造したときに、この傾転角制御装置に設けられているサーボピストンの中立位置(零点位置)を調整して設定することが行われる。
【0003】
このサーボピストンの中立位置とは、この傾転角制御装置が舵角を零度とする命令を操舵用油圧ポンプに発したときに、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないようにすることができる零点位置である。
【0004】
従って、この傾転角制御装置を備える操舵装置の出荷前の試験運転では、傾転角制御装置が、舵角を零度とする命令を操舵用油圧ポンプに発したときに、フィードバックのないノンフォロー操作において、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないことの確認を行なっている。
【0005】
そして、この試験運転において、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動した場合は、作業者が、傾転角制御装置に設けられている中立調整ピンを操作して、サーボピストンの中立位置(零点位置)を調整し直して設定することが行われている。
【0006】
しかし、作業者が、中立調整ピンを操作してサーボピストンの中立位置を調整することができる分解能は、サーボピストンの中立位置の許容中立範囲よりも大きいので、中立(零点)調整作業時間が長引くことがあり、中立調整作業が困難なものとなっていた。
【0007】
次に、このサーボピストンの中立位置について更に詳細に説明する。この操舵装置によると、操舵者が傾転角制御装置を操作してサーボピストンを進退移動させると、このサーボピストンと連結する油圧ポンプが備えるシリンダブロックの傾転角を変更することができ、そして、シリンダブロックの傾転角が変更されると、その傾転角に応じた流量の圧油(作動油)が舵板駆動部に供給され、更に、この舵板駆動部の作動が、旋回アーム、舵柄、舵軸、及び舵板に伝達され、この舵板が、サーボピストンの移動量に応じた舵角に変更される。このとき、シリンダブロックの傾転角が零度、又はその近傍の角度に戻り、舵板駆動部に供給される圧油の流量が零又はそれに近い値となり、舵板が変更後の舵角又はそれに近い角度で保持されるようになっている。
【0008】
従って、サーボピストンを中立位置に操作したときに、油圧ポンプが備えるシリンダブロックの傾転角を零度又はその近傍の角度に設定することができる。このとき、舵板駆動部に供給される圧油の流量が零又はそれに近い値となり、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないように、サーボピストンの中立位置を調整する必要がある。
【0009】
サーボピストンの中立位置を調整することによって、サーボピストンの中立位置時のシリンダブロックの傾転角を零度に、又はその近傍の許容角度範囲(不感帯角度範囲)内に設定する。これにより、油圧ポンプから舵板駆動部に圧油が許容流量範囲内で供給されるために、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないように設定される。
【0010】
ところで、操舵用油圧ポンプとして、例えばアキシャルピストン式油圧ポンプが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。この油圧ポンプ(図示せず)には、図7に示すバルブプレート1が設けられ、このバルブプレート1には、作動油を吸い込むことができる第1及び第2吸込みポート2、3と、圧油を吐出することができる第1及び第2吐出ポート4、5とが形成されている。そして、このバルブプレート1には、第1吸込みポート2及び第1吐出ポート4の両方の各上端部から、上死点にある上死点切換ランド6に向かって延びる第1及び第2ノッチ7、8が形成されている。同様に、バルブプレート1には、第2吸込みポート3及び第2吐出ポート5の両方の各下端部から、下死点にある下死点切換ランド9に向かって延びる第3及び第4ノッチ10、11が形成されている。これらの第1〜第4ノッチ7、8、10、11が設けられている目的は、下記の通りである。
【0011】
この油圧ポンプによると、複数の各シリンダと連通する複数のシリンダポート12(図7に二点鎖線で1つのシリンダポート12のみを示す。)が、固定して取り付けられているバルブプレート1の摺動面13に沿って矢印14の方向に回転移動するときに、このシリンダポート12は、第1吸込みポート2との間での連通状態が断たれた後に、上死点切換ランド6によって閉鎖され、しかる後に、第1吐出ポート4に連通するようになっている。このため、シリンダポート12は、上死点切換ランド6によって閉鎖されている状態で、このシリンダポート12内の作動油が膨張し、しかる後に圧縮され、次に、このシリンダポート12が第1吐出ポート4に対して連通を開始した瞬間に、圧油がシリンダポート12側から第1吐出ポート4側への流出を開始する。このとき、シリンダポート12(及びシリンダ)と第1吐出ポート4との間の圧力差によって、この油圧ポンプに振動や騒音が発生するという問題がある。
【0012】
そこで、このようなシリンダポート12及びシリンダの内圧の急激な変化を緩和するために、図7に示す第1〜第4ノッチ7、8、10、11が設けられている。例えばこの第1及び第2ノッチ7、8によると、シリンダポート12が上死点切換ランド6を移動するときに、シリンダポート12がこれら第1及び第2ノッチ7、8を介して第1吸込みポート2及び第1吐出ポート4と連通するようになっており、シリンダポート12が第1吐出ポート4に対して連通を開始した瞬間における、シリンダポート12(及びシリンダ)と第1吐出ポート4との間の圧力差を小さくして、この油圧ポンプに起こる振動や騒音を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】2009−68336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図7に示すバルブプレート1に形成されている第1〜第4ノッチ7、8、10、11は、シリンダポート12が第1吐出ポート4等に対して連通を開始した瞬間における、シリンダポート12(及びシリンダ)と第1吐出ポート4との間の圧力差を小さくして、この油圧ポンプに起こる振動や騒音を抑制することができるが、複数のシリンダが形成されているシリンダブロック(斜体)の傾転角が零度、又はその近傍の所定の許容角度範囲内に設定されているときに、油圧ポンプから舵板駆動部に圧油が許容流量範囲内で供給されるようにして、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないようにするものではない。
【0015】
従って、この第1〜第4ノッチ7、8、10、11は、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動するような場合に、作業者が、傾転角制御装置に設けられている中立調整ピンを操作して、サーボピストンの中立位置(零点位置)を調整するときに、その中立(零点)調整作業時間を短縮することはできないし、中立調整作業を簡単に行なえるようにすることもできない。
【0016】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、操舵用油圧ポンプに設けられている斜板及びシリンダブロックを含む斜体の傾転角を変更するための制御を行う傾転角制御装置の中立(零点)調整作業時間の短縮化、及び中立調整作業の簡略化を図ることができる操舵用油圧ポンプ、及びそれを備える操舵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る操舵用油圧ポンプは、シリンダブロックに形成された複数の各シリンダ内をピストンが往復移動することによって、バルブプレートに貫通して形成された吸込みポート側から作動油を吸い込んで、この吸い込んだ作動油を吐出ポートから吐出して舵板駆動部を駆動させることができる可変容量型の操舵用油圧ポンプにおいて、前記吸込みポート及び前記吐出ポートは、切換ランドを挟んだ位置に形成され、前記バルブプレートには、前記吸込みポート及び前記吐出ポートのうちのいずれか一方又は両方から前記切換ランドに向かって延びるノッチが形成され、前記吐出ポートから吐出される作動油の吐出流量を変更するための斜板及びシリンダブロックを含む斜体の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲内にあるときに、吐出ポート側の作動油の一部又は全部が、前記ノッチ、及び前記シリンダと連通するシリンダポートを介して前記吸込みポートに逆流することによって、前記舵板駆動部に供給される作動油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができることを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る操舵用油圧ポンプによると、シリンダブロックに形成された複数の各シリンダ内をピストンが往復移動することによって、バルブプレートに形成された吸込みポート側から作動油を吸い込んで、この吸い込んだ作動油を吐出ポートから吐出して舵板駆動部を駆動させ、この舵板駆動部が駆動することによって舵板を所望の舵角に変更することができる。
【0019】
そして、上記のようにノッチを設けることによって、ポンプの斜板及びシリンダブロックを含む斜体の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲を、所望の大きさの角度範囲に設定することができる。そして、斜体の傾転角を、当該所定の不感帯角度範囲内に設定することによって、油圧ポンプの吐出ポートから作動油が吐出されないか、又は作動油が吐出ポートから吐出されていても、その作動油の一部又は全部が、ノッチ、及びシリンダポートを介して吸込みポートに逆流して、舵板駆動部に供給される作動油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができる。これによって、舵板を零度を含む現在の舵角、又は許容角度範囲内のそれに近い舵角で保持することができる。
【0020】
このように、ノッチを設けた構成すると、斜体の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲を、所望の大きさの角度範囲に設定することができるので、斜体を所定の不感帯角度範囲に設定するための後述するサーボピストンの中立位置の許容範囲(許容中立範囲)を所望の角度範囲に拡大させることができる。
【0021】
つまり、サーボピストンの中立位置をこの拡大された許容中立範囲内に設定すれば、斜体の傾転角を所定の不感帯角度範囲内に設定することができる。
【0022】
よって、例えばこのポンプの斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置を製造したときに、この傾転角制御装置に設けられているサーボピストンの中立位置を極めて簡単に短時間で、しかも正確に当該許容中立位置範囲内に調整して設定することができる。
【0023】
なお、このサーボピストンの中立位置が規定の位置に設定されているか否かの試験は、傾転角制御装置が舵角を零度とする命令を操舵用油圧ポンプに発したときに、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないようにすることができる零点位置に設定されているか否かを確認することによって行なわれる。
【0024】
この発明に係る操舵用油圧ポンプにおいて、前記ノッチは、前記バルブプレートの上死点にある前記切換ランド、及び下死点にある前記切換ランドの両方のそれぞれ、又はいずれか一方に向かって延びるように形成することができる。
【0025】
このように、ノッチを、上死点にある切換ランド、及び下死点にある切換ランドの両方に形成すると、吐出ポート側の作動油の一部又は全部を吸込みポート側に安定した流れで逆流させることができ、舵板駆動部に供給される作動油の流量を所定の許容流量範囲内となるように正確に安定して制限することができる。そして、上死点にある切換ランド、及び下死点にある切換ランドのうちのいずれか一方に形成すると、ノッチの加工が簡単となり、コストの上昇を抑えることができる。
【0026】
この発明に係る操舵用油圧ポンプにおいて、前記ノッチは、当該ノッチの延びる方向に対して垂直な断面形状が、その延びる方向の各位置において略一定の幅及び深さを有する溝部とすることができる。
【0027】
このようにすると、シリンダポートとノッチとが互いに接続した直後から、作動油がノッチ内を安定した状態で流れることができ、ポンプが微小傾転角において作動油を吐出しない領域である不感帯を拡大することができる。
【0028】
この発明に係る操舵用油圧ポンプにおいて、前記吸込みポートと前記吐出ポートとが、前記シリンダポート及び前記ノッチによって互いに連通するように、前記ノッチが形成されているものとすることができる。
【0029】
このようにすると、吐出ポート側の作動油の一部又は全部を吸込みポート側に安定した流れ及び流量で逆流させることができ、舵板駆動部に供給される作動油の流量を所定の許容流量範囲内となるように正確に安定して制限することができる。
【0030】
この発明に係る操舵用油圧ポンプにおいて、前記吸込みポートと前記吐出ポートとが、前記シリンダポート、前記ノッチ、及び前記シリンダブロックと前記バルブブロックとの間の隙間を介して互いに連通するように、前記ノッチが形成されているものとすることができる。
【0031】
このようにすると、吐出ポート側の作動油の一部又は全部を吸込みポート側に逆流させるためのバイパス流路が、ノッチ、及びシリンダブロックとバルブブロックとの間に存在する隙間によって形成され、ノッチの長さ方向の寸法を大きく(又は小さく)することによって、当該隙間の吐出ポート又は吸込みポートに向かう方向の長さ(シール長さ)を短く(又は長く)することができる。これによって、このバイパス流路を流れる作動油の流量を大きく(又は小さく)することができる。要は、ノッチの長さを任意に選択することによって、本発明を適用する操舵用油圧ポンプが必要とするバイパス流路を流れる作動油の流量を得られるようにすることができる。
【0032】
本発明に係る操舵装置は、本発明に係る操舵用油圧ポンプと、サーボピストンを有し、このサーボピストンを進退移動させて前記操舵用油圧ポンプに設けられている前記斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置とを備えるものである。
【0033】
本発明に係る操舵装置によると、傾転角制御装置のサーボピストンを進退移動させることによって、操舵用油圧ポンプに設けられているシリンダブロック及び斜板を含む斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができ、これによって、舵板駆動部を駆動させて、舵板を所望の舵角に変更することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る操舵用油圧ポンプ及び操舵装置によると、このポンプの斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置を製造したときに、この傾転角制御装置に設けられているサーボピストンの中立位置(零点位置)を極めて簡単に短時間で、しかも正確に許容中立範囲内に調整して設定することができる構成としたので、傾転角制御装置の品質の向上及び均一化を図ることができ、更に、製造コストの低減及び納期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施形態に係る操舵用油圧ポンプが備えるバルブプレートを示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、A−A断面図である。
【図2】図1(a)に示すバルブプレート及びシリンダブロックのB−B部分拡大断面図である。
【図3】図2に示すバルブプレート及びシリンダブロックの拡大部分の平面図である。
【図4】同実施形態に係る操舵用油圧ポンプを示す平面図である。
【図5】図4に示す操舵用油圧ポンプのシリンダブロックが傾斜した状態を示す断面図である。
【図6】同実施形態に係る操舵装置の油圧回路図である。
【図7】従来のアキシャルピストン式油圧ポンプが備えるバルブプレートを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る操舵装置の一実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。この操舵装置16は、図6に示すように、船舶の船尾に回動自在に取付けられる舵柄17を備え、この舵柄17に、舵軸17aを介して舵板18が固定されている。また、舵柄17には旋回アーム19の一端部が固定され、この旋回アーム19の他端部に、略U字状の凹部から形成された受部20が設けられている。
【0037】
また、この操舵装置16は、舵柄17を回動駆動するための舵板駆動部21を備えている。この舵板駆動部21は、一対の第1及び第2シリンダ機構22、23と、第1及び第2シリンダ機構22、23の出力部を構成するラム24とを有している。第1及び第2シリンダ機構22、23は、相互に対向して配置された第1及び第2シリンダ25、26を有し、一方の第1シリンダ25にラム24の一端部が伸縮自在に装着され、また他方の第2シリンダ26にラム24の他端部が伸縮自在に装着されている。
【0038】
このラム24の軸線方向中央部にはラムピン27が設けられ、このラムピン27が旋回アーム19の受部20に装着されている。従って、ラム24が矢印28で示す方向(図6において右方向)に移動すると、これと共にラムピン27が移動し、これによって旋回アーム19、舵柄17、舵軸17a、及び舵板18が一体的に矢印29で示す反時計方向に回動される。そしてこれとは逆に、ラム24が矢印30で示す方向(図6において左方向)に移動すると、これと共にラムピン27が移動し、これによって旋回アーム19、舵柄17および舵板18が一体的に矢印31で示す時計方向に回動される。
【0039】
そして、この操舵装置16は、図6に示すように、舵板駆動部21(第1及び第2シリンダ機構22、23)を駆動するための操舵用油圧ポンプ32を備えている。この操舵用油圧ポンプ32は、図4及び図5に示すように、例えば可変容量型、両傾転型の斜軸型油圧ポンプである。
【0040】
また、図6に示すように、この操舵用油圧ポンプ32には、シリンダブロック33(斜体)の傾転角を制御するための傾転角制御装置34が設けられ、この傾転角制御装置34には、補助油圧ポンプ35が設けられている。そして、これら操舵用油圧ポンプ32及び補助油圧ポンプ35は、電動モータ等の駆動部36、37によって回転駆動される。従って、各駆動部36、37が作動すると、それぞれと連結する操舵用油圧ポンプ32及び補助油圧ポンプ35が所定方向に回転する。
【0041】
この傾転角制御装置34は、図6に示すように、操舵用油圧ポンプ32のシリンダブロック33(斜体)と連結するサーボピストン38を備えている。このサーボピストン38が図6の左右方向に進退移動することによって、シリンダブロック33の傾転角を変更することができ、このシリンダブロック33の傾転角を変更すると、操舵用油圧ポンプ32の圧油の吐出流量及び吐出方向を変更することができる。そして、操舵用油圧ポンプ32からの圧油の吐出流量及び吐出方向を変更すると、舵板駆動部21によって舵板18を所望の方向及び速度で回動させることができる。
【0042】
そして、この傾転角制御装置34は、ケーシング(図示せず)の内部にスリーブ39を備えており、このスリーブ39の内部にスプール40が内蔵されている。このスプール40は、例えばトルクモータ等の制御モータ41によって、図6の左右方向に進退移動されるようになっている。
【0043】
また、スリーブ39には、図6に示すように、入力ポート42、タンクポート43、Aポート44、及びBポート45が形成されている。この入力ポート42は、補助油圧ポンプ35の吐出口と接続し、タンクポート43はタンク46と接続している。そして、Aポート44は、サーボピストン38を収容するシリンダ部47に形成されているロッド室48と接続し、Bポート45は、シリンダ部47に形成されているヘッド室49と接続している。
【0044】
更に、スリーブ39とサーボピストン38とは、フィードバックレバー50によって互いに固定して結合されている。これによって、サーボピストン38が、図6の左右方向に所定距離だけ移動すると、スリーブ39は、サーボピストン38に伴ってこれと同方向に同じ距離だけ移動するようになっている。
【0045】
上記のように構成された傾転角制御装置34によると、入力ポート42に供給された圧油(補助油圧ポンプ35から吐出された圧油)をAポート44、又はAポート44及びBポート45に導き、更にその圧油をサーボピストン38に導くことによってサーボピストン38を進退移動させるようになっている。
【0046】
つまり、この傾転角制御装置34によると、図6に示すように、例えば制御モータ41が中立位置にあり、スプール40も中立位置にあるときは、サーボピストン38及びスリーブ39は、同図に示す中立位置に保持される。
【0047】
そして、制御モータ41が所定方向に所定角度だけ駆動して、スプール40が図6に示す位置から右方向(又は左方向)に所定距離だけ移動すると、補助油圧ポンプ35から吐出された圧油がシリンダ部47のロッド室48(又はロッド室48及びヘッド室49)に流入し、ヘッド室49(又はロッド室48)内の作動油がタンク46に戻される。このとき、サーボピストン38、及びこれと結合するスリーブ39が、スプール40と同じ右方向(又は左方向)に移動する。そして、サーボピストン38及びスリーブ39が、スプール40と同じ右方向(又は左方向)に同距離だけ移動すると、スリーブ39とスプール40との位置関係が図6に示す中立状態に戻り、サーボピストン38の右方向(又は左方向)への移動が停止してその位置で保持される。
【0048】
このように、図6に示す制御モータ41が所定方向に所定角度だけ駆動することによって、サーボピストン38を左右方向に所望の距離だけ進退移動させることができ、これによって、このサーボピストン38と連結する操舵用油圧ポンプ32のシリンダブロック33(斜体)の傾転角を所望の角度だけ変更することができる。これによって、舵板駆動部21は、舵板18を所望の方向及び速度で所望の角度だけ回動させることができる。
【0049】
つまり、例えば操舵手が所望の舵角となるように操舵輪(図示せず)を操作すると、図6に示す傾転角制御装置34が操舵用油圧ポンプ32を駆動制御して、舵板18を所望の舵角となるように回動させることができる。そして、図には示さないが、舵板18が所望の舵角となると、舵板18の舵角を舵角検出部(図示せず)が検出して、舵角検出部が舵角検出信号を出力するようになっている。そしてこの舵角検出信号が制御モータ41に入力して、スプール40、スリーブ39、及びサーボピストン38が図6に示す中立位置に自動的に戻され、操舵用油圧ポンプ32のシリンダブロック33(斜体)の傾転角が零度、又はそれに近い所定の角度範囲(不感帯角度範囲)内に設定される。
【0050】
このように、シリンダブロック33の傾転角が所定の不感帯角度範囲内に設定されると、操舵用油圧ポンプ32から吐出されて舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができる。これによって、舵板18を所望の舵角、又は許容角度範囲内のそれに近い舵角で保持することができる。
【0051】
そして、シリンダブロック33の傾転角が所定の不感帯角度範囲内に設定されると、操舵用油圧ポンプ32から吐出されて舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限して、舵板18を所望の舵角、又は許容角度範囲内のそれに近い舵角で保持できるようになっているが、この不感帯角度範囲を設定することができる本発明の特徴とするバルブプレート51について、図1〜図3、及び図5を参照して説明する。
【0052】
このバルブプレート51は、図4及び図5に示す斜軸型の操舵用油圧ポンプ32に設けられている。この操舵用油圧ポンプ32は、図5に示す駆動軸52が回転されると、複数のピストン53及びシリンダブロック33が、駆動軸52と同方向に回転するようになっている。そして、図には示さないが、駆動軸52とシリンダブロック33とが互いにユニバーサルジョイント等を介して連結しており、シリンダブロック33の中心軸が駆動軸52に対して、或る角度θ1で傾斜しているときは、駆動軸52の回転によって各ピストン53は、各ピストン53が装着されているシリンダ54内で往復運動をすることができる。
【0053】
その結果、シリンダ54とピストン53とで形成される容積が増加する領域で作動油を吸込み、容積が減少する領域で圧油を吐出することができる。この2つの領域は、図5に示すバルブプレート51で仕切られ、このバルブプレート51に形成されている第1ポート55及び第2ポート56が、吸込みポート及び吐出ポートとして機能する。
【0054】
そして、図5に示すようにシリンダブロック33の傾転角が+θ1に設定されているときは、バルブプレート51(図5に円形に表しているバルブプレート51の表面は、シリンダブロック33と接触する側の摺動面57である。)の左側部に形成されている第1ポート55が吸込みポートとして機能し、バルブプレート51の右側部に形成されている第2ポート56が吐出ポートとして機能する。
【0055】
ただし、図4に示すように、シリンダブロック33の傾転角が−θ1に設定されているときは、上記とは逆に、第1ポート55が吐出ポートとして機能し、第2ポート56が吸込みポートとして機能する。
【0056】
そして、図4及び図5に示すようにシリンダブロック33の傾転角を+θ1側に設定したときは、例えば図6に示す舵板18を右方向に回動させることができ、傾転角を−θ1側に設定したときは、舵板18を左方向に回動させることができる。
【0057】
また、操舵用油圧ポンプ32から吐出される圧油の吐出流量を変更するときは、シリンダブロック33の傾転角θ1の大きさを変更すればよい。これによって、ピストン53のストロークが変更され、圧油の吐出流量を変更することができる。
【0058】
更に、この操舵用油圧ポンプ32は、シリンダブロック33(斜体)の傾転角θ1を零度、又はそれに近い所定の角度範囲(不感帯角度範囲)内に設定すると、操舵用油圧ポンプ32から吐出されて舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができ、これによって、舵板18を所望の舵角、又は許容角度範囲内のそれに近い舵角で保持することができるように構成されている。
【0059】
次に、図5に示す操舵用油圧ポンプ32が備えているバルブプレート51を、図1〜図3を参照して説明する。このバルブプレート51は、図1(a)、(b)に示すように、円板状に形成され、第1ポート55及び第2ポート56が左右対称に例えば1つずつ、このバルブプレート51を貫通するように形成されている。そして、これら各第1及び第2ポート55、56は、所定長さの円弧状の長孔であり、バルブプレート51の中心から所定の半径位置に形成されている。
【0060】
また、図1(a)に示すように、第1及び第2ポート55、56のそれぞれの上端部の間には、上死点切換ランド58が形成され、それぞれの下端部の間には、下死点切換ランド59が形成されている。更に、バルブプレート51には、第2ポート56の上端部から、上死点切換ランド58に向かって延びる第1ノッチ60が形成されている。同様に、バルブプレート51には、第1ポート55の下端部から、下死点切換ランド59に向かって延びる第2ノッチ61が形成されている。
【0061】
更に、第1及び第2ノッチ60、61は、当該ノッチの延びる方向に対して垂直な断面形状が略半円形状であって、その延びる方向の各位置において略一定の大きさ及び形状の溝部として形成されている。
【0062】
そして、図1(a)に示すように、シリンダポート62が上死点切換ランド58に移動してきたときに、第1ポート55と第2ポート56とが、シリンダポート62及び第1ノッチ60によって互いに連通するように、第1ノッチ60が形成されている。このシリンダポート62は、図5に示すように、シリンダブロック33の後部に開口するように複数形成され、このシリンダブロック33に形成されている各シリンダ54と連通するように形成されているものである。
【0063】
図2は、バルブプレート51及びシリンダブロック33を図1(a)のB−B方向から見た部分拡大断面図である。図3は、図2に示すバルブプレート51及びシリンダブロック33の拡大部分の平面図である。この図2及び図3から分かるように、シリンダポート62が上死点切換ランド58を移動するときは、第1ポート55と第2ポート56とが、シリンダポート62及び第1ノッチ60によって互いに連通するように、第1ノッチ60が形成されている。
【0064】
このように第1ノッチ60を設けた構成すると、図2に示すように、シリンダブロック33(斜体)の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲を、所望の大きさの角度範囲に設定することができる。そして、シリンダブロック33(斜体)の傾転角が所定の不感帯角度範囲内にあるときは、吐出ポートとして機能している第2ポート56(又は第1ポート55)側の圧油の一部又は全部が、第1ノッチ60及びシリンダポート62を介して吸込みポートとして機能している第1ポート55(又は第2ポート56)側に逆流することによって、舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができる。
【0065】
同様に、図には示さないが、シリンダポート62が下死点切換ランド59を移動するときは、第1ポート55と第2ポート56とが、シリンダポート62及び第2ノッチ61によって互いに連通するように、第2ノッチ61が形成されている。
【0066】
このように第2ノッチ61を設けた構成すると、シリンダブロック33(斜体)の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲を、所望の大きさの角度範囲に設定することができる。そして、シリンダブロック33(斜体)の傾転角が所定の不感帯角度範囲内にあるときは、吐出ポートとして機能している第2ポート56(又は第1ポート55)側の圧油の一部又は全部が、第2ノッチ61及びシリンダポート62を介して吸込みポートとして機能している第1ポート55(又は第2ポート56)側に逆流することによって、舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができる。
【0067】
次に、上記のように構成された操舵用油圧ポンプ32及び操舵装置16の作用を説明する。図5及び図6に示す操舵用油圧ポンプ32によると、シリンダブロック33に形成された複数の各シリンダ54内をピストン53が往復移動することによって、バルブプレート51に形成された第1ポート55(又は第2ポート56)(吸込みポートとして機能するポート)側から作動油を吸い込んで、この吸い込んだ作動油を第2ポート56(又は第1ポート55)(吐出ポートとして機能するポート)側から吐出して舵板駆動部21を駆動させ、この舵板駆動部21が駆動することによって舵板18を所望の舵角に変更することができる。
【0068】
そして、図1(a)に示すように、第1及び第2ノッチ60、61を設けた構成すると、シリンダブロック33(斜体)の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲を、所望の大きさの角度範囲に設定することができる。そして、操舵用油圧ポンプ32のシリンダブロック33(斜体)の傾転角を、所定の不感帯角度範囲内に設定することによって、舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができ、舵板18を零度を含む現在の舵角、又は許容角度範囲内のそれに近い舵角で保持することができる。
【0069】
このように、第1及び第2ノッチ60、61を設けた構成すると、シリンダブロック33(斜体)の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲を、所望の大きさの角度範囲に設定することができるので、シリンダブロック33(斜体)を所定の不感帯角度範囲に設定するためのサーボピストン38の中立位置の許容範囲(許容中立範囲)を所望の角度範囲に拡大させることができる。
【0070】
つまり、サーボピストン38の中立位置をこの拡大された許容中立範囲内に設定すれば、シリンダブロック33の傾転角を所定の不感帯角度範囲内に設定できるようにすることができる。
【0071】
よって、例えばこのポンプ32のシリンダブロック33(斜体)の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置34を製造したときに、この傾転角制御装置34に設けられているサーボピストン38の中立位置を極めて簡単に短時間で、しかも正確に当該許容中立範囲内に調整して設定することができる。
【0072】
これによって、傾転角制御装置34の品質の向上及び均一化を図ることができ、更に、製造コストの低減及び納期の短縮を図ることができる。
【0073】
なお、このサーボピストン38の中立位置が規定の位置に設定されているか否かの試験は、図6に示すように、傾転角制御装置34が舵角を零度とする命令を操舵用油圧ポンプ32に発したときに、舵角が所定時間内に零度(直進舵角)から予め決められた角度以上に変動しないようにすることができる零点位置に設定されているか否かを確認することによって行なわれる。
【0074】
そして、図6に示すサーボピストン38の中立位置を調整する方法としては、例えばサーボピストン38に設けられている中立調整ピン63を作業者が手作業で調整して、サーボピストン38及びスリーブ39の進退方向の相互の位置関係を調整して設定することによって行なわれている。
【0075】
また、図1(a)に示すように、第2ポート56の上端部、及び第1ポート55の下端部に、第1及び第2ノッチ60、61を1つずつ形成してあり、このように、2つの第1及び第2ノッチ60、61を設けるだけで、サーボピストン38の中立位置を極めて簡単に調製して設定できるようにすることができる。そして、このように2つだけの第1及び第2ノッチ60、61を形成することにすると、ノッチ60、61の加工が簡単であり、加工コストの上昇を抑えることができる。
【0076】
更に、図2及び図3に示すように、第1及び第2ノッチ60、61は、当該ノッチの延びる方向に対して垂直な断面形状が略半円形状であって、その延びる方向の各位置において略一定の幅及び深さを有する(大きさ及び形状の)溝部としているので、シリンダポート62と第1及び第2ノッチ60、61とが互いに接続した直後から、圧油が第1及び第2ノッチ60、61内を安定した状態で流れることができ、ポンプ32が微小傾転角において作動油を吐出しない領域である不感帯を拡大することができる。
【0077】
そして、図2及び図3に示すように、第1ポート55と第2ポート56とが、シリンダポート62及び第1ノッチ60(又は第2ノッチ61)によって互いに連通するように、第1ノッチ60(又は第2ノッチ61)が形成されているので、吐出ポート(第1ノッチ60又は第2ノッチ61)側の圧油の一部又は全部を吸込みポート(第2ノッチ61又は第1ノッチ60)側に安定した流れ及び流量で逆流させることができ、舵板駆動部21に供給される作動油の流量を所定の許容流量範囲内となるように正確に安定して制限することができる。
【0078】
ただし、上記実施形態では、操舵用油圧ポンプ32として、斜軸型油圧ポンプを使用したが、これに代えて、斜板型油圧ポンプを使用してもよい。そして、両傾転型の油圧ポンプを使用したが、これに代えて、片傾転型の油圧ポンプを使用してもよい。このように、片傾転型の油圧ポンプを使用するときは、例えば油圧回路に方向制御弁を設けることによって、舵板18を左右の方向に回動させることができる。
【0079】
そして、上記実施形態では、図1に示すように、バルブプレート51に第1及び第2ポート55、56を1つずつ形成したが、これに代えて、複数ずつ形成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、図1(a)に示すように、第1及び第2ノッチ60、61を形成したが、これに代えて、図には示さないが、第1ポート55及び第2ポート56の両方の各上端部から、上死点切換ランド58に向かって延びる第3ノッチ及び第1ノッチ60をバルブプレート51に形成すると共に、第1ポート55及び第2ポート56の両方の各下端部から、下死点切換ランド59に向かって延びる第2ノッチ61及び第4ノッチを形成してもよい。また、これに代えて、第1〜第4ノッチのうち、少なくとも1つのノッチを形成したものとしてもよい。
【0081】
つまり、ノッチを、上死点切換ランド58、及び下死点切換ランド59の両方に形成すると、吐出側のポートの圧油の一部又は全部を吸込み側のポートに安定した流れで逆流させることができ、舵板駆動部21に供給される圧油の流量を所定の許容流量範囲内となるように正確に安定して制限することができる。そして、上死点切換ランド58、及び下死点切換ランド59のうちのいずれか一方に形成したり、ノッチの数を少なくすると、ノッチの加工が簡単となり、加工コストの上昇を抑えることができる。
【0082】
更に、上記実施形態では、図2及び図3に示すように、第1及び第2ノッチ60、61は、当該ノッチの延びる方向に対して垂直な断面形状を略半円形としたが、これ以外の断面形状としてもよい。
【0083】
そして、第1及び第2ノッチ60、61は、当該ノッチの延びる方向に対して垂直な断面形状が、その延びる方向の各位置において略一定の大きさ及び形状の溝部としたが、これに代えて、ノッチの延びる方向の各位置での断面形状が任意の大きさ及び形状である溝部としてもよい。要は、第1及び第2ノッチ60、61は、シリンダブロック33の傾転角の不感帯角度範囲を発明の目的を達成することができる適切な大きさに設定することができて、傾転角制御装置34に設けられているサーボピストン38の中立位置(零点位置)を極めて簡単に短時間で、しかも確実に許容中立範囲に調整して設定することができるものであればよい。
【0084】
そして、上記実施形態では、図1(a)に示すように、第1ポート55と第2ポート56とが、シリンダポート62及び第1ノッチ60(又は第2ノッチ61)によって互いに連通するように、第1ノッチ60及び第2ノッチ61を形成したが、これに代えて、第1ポート55と第2ポート56とが、シリンダポート62、第1ノッチ60(又は第2ノッチ61)、及びシリンダブロック33の後端面とバルブブロックの摺動面57との間の隙間を介して互いに連通するように、第1ノッチ及び第2ノッチを形成してもよい。
【0085】
このようにすると、吐出ポート側の圧油の一部又は全部を吸込みポート側に逆流させるためのバイパス流路が、第1ノッチ60(又は第2ノッチ61)、及びシリンダブロック33とバルブブロックとの間に存在する隙間によって形成され、第1及び第2ノッチ60、61の長さ方向の寸法を大きく(又は小さく)することによって、この隙間の吐出側のポート又は吸込み側のポートに向かう方向の長さ(シール長さ)を短く(又は長く)することができる。これによって、このバイパス流路を流れる圧油の流量を大きく(又は小さく)することができる。要は、第1及び第2ノッチ60、61の長さを任意に選択することによって、本発明を適用する操舵用油圧ポンプ32が必要とするバイパス流路を流れる圧油の流量を得られるようにすることができる。
【0086】
また、上記実施形態では、図6に示すような傾転角制御装置34を設けたが、これ以外の構成の傾転角制御装置を設けてもよい。要は、シリンダブロック33及び斜板を含む斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置であればよい。本発明は、斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置の中立(零点)調整作業時間の短縮化、及び中立調整作業の簡略化を図ることを目的とするものだからである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る操舵用油圧ポンプ及び操舵装置は、操舵用油圧ポンプに設けられている斜板及びシリンダブロックを含む斜体の傾転角を変更するための制御を行う傾転角制御装置の中立(零点)調整作業時間の短縮化、及び中立調整作業の簡略化を図ることができる優れた効果を有し、このような操舵用油圧ポンプ及び操舵装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0088】
16 操舵装置
17 舵柄
17a 舵軸
18 舵板
19 旋回アーム
20 受部
21 舵板駆動部
22 第1シリンダ機構
23 第2シリンダ機構
24 ラム
25 第1シリンダ
26 第2シリンダ
27 ラムピン
28、29、30、31 矢印
32 操舵用油圧ポンプ
33 シリンダブロック
34 傾転角制御装置
35 補助油圧ポンプ
36、37 駆動部
38 サーボピストン
39 スリーブ
40 スプール
41 制御モータ
42 入力ポート
43 タンクポート
44 Aポート
45 Bポート
46 タンク
47 シリンダ部
48 ロッド室
49 ヘッド室
50 フィードバックレバー
51 バルブプレート
52 駆動軸
53 ピストン
54 シリンダ
55 第1ポート
56 第2ポート
57 バルブプレートの摺動面
58 上死点切換ランド
59 下死点切換ランド
60 第1ノッチ
61 第2ノッチ
62 シリンダポート
63 中立調整ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックに形成された複数の各シリンダ内をピストンが往復移動することによって、バルブプレートに貫通して形成された吸込みポート側から作動油を吸い込んで、この吸い込んだ作動油を吐出ポートから吐出して舵板駆動部を駆動させることができる可変容量型の操舵用油圧ポンプにおいて、
前記吸込みポート及び前記吐出ポートは、切換ランドを挟んだ位置に形成され、
前記バルブプレートには、前記吸込みポート及び前記吐出ポートのうちのいずれか一方又は両方から前記切換ランドに向かって延びるノッチが形成され、
前記吐出ポートから吐出される作動油の吐出流量を変更するための斜板及びシリンダブロックを含む斜体の傾転角が零度に近い所定の不感帯角度範囲内にあるときに、吐出ポート側の作動油の一部又は全部が、前記ノッチ、及び前記シリンダと連通するシリンダポートを介して前記吸込みポートに逆流することによって、前記舵板駆動部に供給される作動油の流量を所定の許容流量範囲内に制限することができることを特徴とする操舵用油圧ポンプ。
【請求項2】
前記ノッチは、前記バルブプレートの上死点にある前記切換ランド、及び下死点にある前記切換ランドの両方のそれぞれ、又はいずれか一方に向かって延びるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の操舵用油圧ポンプ。
【請求項3】
前記ノッチは、当該ノッチの延びる方向に対して垂直な断面形状が、その延びる方向の各位置において略一定の幅及び深さを有する溝部であることを特徴とする請求項1又は2記載の操舵用油圧ポンプ。
【請求項4】
前記吸込みポートと前記吐出ポートとが、前記シリンダポート及び前記ノッチによって互いに連通するように、前記ノッチが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の操舵用油圧ポンプ。
【請求項5】
前記吸込みポートと前記吐出ポートとが、前記シリンダポート、前記ノッチ、及び前記シリンダブロックと前記バルブブロックとの間の隙間を介して互いに連通するように、前記ノッチが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の操舵用油圧ポンプ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の操舵用油圧ポンプと、
サーボピストンを有し、このサーボピストンを進退移動させて前記操舵用油圧ポンプに設けられている前記斜体の傾転角を変更するための制御を行うことができる傾転角制御装置とを備えることを特徴とする操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17711(P2012−17711A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156591(P2010−156591)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】