説明

操舵装置

【課題】 ゴムブーツを損傷させることなく車両本体に組み付けることが可能な操舵装置を提供する。
【解決手段】 本発明の操舵装置10によれば、アクチュエータ18の下端角部が、弾性が高いキャップ80で覆われているので、組み付け作業時にアクチュエータ18の下端角部が第1筒形ブーツ46に当接しても、その第1筒形ブーツ46の損傷を防ぐことができる。また、そのキャップ80が先細り形状となっておりかつ、支持リブ85Dがキャップ80を内側から支持しているので、車両が衝突してアクチュエータ18が下方に押された際に、その先細り形状のキャップ80にて、下方の部品を押しのけるようにしてアクチュエータ18を下方に移動することができる。これにより、車両が衝突した際に、アクチュエータ18と共にハンドル17が運転者から離れる方向にスムーズに移動し、運転者の前方の空間を広くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルから下側に延びた第1ステアリングシャフトと、1対の転舵輪の間の転舵装置から上側に延びた第2ステアリングシャフトとの間をアクチュエータで連結し、それら第1と第2のステアリングシャフトの間で伝達される回転の伝達比を運転状況に応じて変更する操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14に示された従来の操舵装置では、ハンドル7Aから延びた第1ステアリングシャフト7と、図示しない1対の転舵輪の間の転舵装置から延びた第2ステアリングシャフト8とがアクチュエータ2にて連結されている。詳細には、アクチュエータ2の上端部には筒状の入力側連結軸4が備えられ、この入力側連結軸4の内側に第1ステアリングシャフト7がスプライン結合されている。また、第2ステアリングシャフト8は筒状をなし、その内側にアクチュエータ2の下端部から突出した出力側連結軸5がスプライン結合されている。そして、そのアクチュエータ2により第1と第2のステアリングシャフト7,8の間で回転を伝達しかつ、その回転の伝達比を運転状況に応じて変更することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、第1ステアリングシャフト7は、コラムアッシ6の一部として備えられ、そのコラムアッシ6は車両本体におけるフロントパネルの近傍に固定されている。また、アクチュエータ2には防水・防塵用のゴムブーツ3が装着されており、このゴムブーツ3がダッシュボード1に固定されている。そして、この操舵装置を車両本体に組み付けるには、図15に示すように予めコラムアッシ6を車両本体のインパネリーンフォース(図示せず)に固定しかつゴムブーツ3をダッシュボード1に固定した状態にしておき、次いで、図16に示すように、ゴムブーツ3を圧縮変形させながら、アクチュエータ2を下方に移動することで入力側連結軸4と第1ステアリングシャフト7とを突き合わせる。そして、この状態からアクチュエータ2を上方に移動して、それら入力側連結軸4と第1ステアリングシャフト7とをスプライン結合する。
【0004】
しかしながら、従来の操舵装置では、図16に示すように、アクチュエータ2を下方に移動した際に、アクチュエータ2の下端角部に露出した金属部品のエッジ部2Aがゴムブーツ3に当接して、ゴムブーツ3が損傷する事態が生じ得た。
【0005】
なお、上記した従来の構造を記載した先行技術文献は、見つからなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ゴムブーツを損傷させることなく車両本体に組み付けることが可能な操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る操舵装置は、ハンドルから下側に延びた第1ステアリングシャフトと、1対の転舵輪の間に設けられた転舵装置から上側に延びた第2ステアリングシャフトと、それら第1及び第2のステアリングシャフトの間を連結して回転を伝達すると共に、運転状況に応じて回転の伝達比を変更可能なアクチュエータと、アクチュエータの上端部に設けられて、第1ステアリングシャフトと一体回転可能に嵌合結合された入力側連結軸と、アクチュエータの下端面から突出し、第2ステアリングシャフトと一体回転可能に嵌合結合された出力側連結軸と、アクチュエータの側面と下端面とを覆い、その下端面を覆った部分に出力側連結軸が貫通しかつ、上端部がアクチュエータに嵌合固定されたゴムブーツと、ゴムブーツのうち軸方向の中間部を、車両本体のダッシュボードに固定するためのブラケットとを備えてなり、予めゴムブーツをブラケットにてダッシュボードに固定しかつ第1ステアリングシャフトを車両本体に軸支した状態にして、ゴムブーツを圧縮変形させながらアクチュエータを下側に移動することで入力側連結軸と第1ステアリングシャフトとを突き合わせ、アクチュエータを上側に移動して、それら入力側連結軸と第1ステアリングシャフトとが嵌合結合される操舵装置において、アクチュエータの下端角部を覆いかつそのアクチュエータの下端角部を構成する部材より弾性が高い部材で構成されたキャップを設けたところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の操舵装置において、キャップは、アクチュエータの下端角部から下端面の中心部近傍までを覆うと共に、外縁部から中心部に向かって徐々に下方に膨出した先細り形状をなし、アクチュエータは、ハンドル側から所定値以上の衝撃を受けて下方に移動するように構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の操舵装置において、アクチュエータの下端面には、その外縁部から中心部に向かって徐々に下方に突出した先細り形状をなしかつ、キャップを内側から支持するキャップ支持部が備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の操舵装置において、キャップの一端をアクチュエータの下端部の外側に嵌合し、それらキャップとアクチュエータとの嵌合部分には、互いに凹凸係合する係合突起と係合溝とが備えられたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、アクチュエータの下端角部が、弾性が高いキャップで覆われているので、組み付け作業時にアクチュエータの下端角部がゴムブーツに当接しても、そのゴムブーツの損傷を防ぐことができる。
【0012】
請求項2の構成によれば、アクチュエータの下端面を覆ったキャップが先細り形状となっているので、車両が衝突してハンドルと共にアクチュエータが下方に押された際に、その先細り形状のキャップにて、下方の部品を押しのけるようにしてアクチュエータを下方に移動することができる。これにより、車両が衝突した際に、アクチュエータと共にハンドルが運転者から離れる方向にスムーズに移動し、運転者の前方の空間を広くすることができる。
【0013】
請求項3の構成によれば、車両の衝突時にキャップが下方の部品を押しのける際に、キャップ支持部によってキャップが補強される。また、そのキャップ支持部は先細り形状であるから、仮にキャップが破損しても、キャップ支持部によって下方の部品を押しのけることができる。
【0014】
請求項4の構成によれば、キャップをアクチュエータに嵌合することで、係合突起と係合溝とが凹凸係合し、キャップをアクチュエータに係止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る操舵装置10を備えた車両が示されている。この車両に備えた1対の前輪11,11(本発明に係る「転舵輪」に相当する)の間には、転舵装置69が設けられている。転舵装置69は、筒状のラックケース12C内に挿通したラック12にピニオン15を噛合して備えている。そして、ラックケース12Cが車両本体14に固定され、ラック12の両端部がタイロッド13,13を介して各前輪11,11に連結されている。
【0016】
図3に示すように、ピニオン15は、ラックケース12Cの中間部に形成された軸受部12D内に回転可能に軸支され、そのピニオン15の上端部には、本発明に係る第2ステアリングシャフト70が連結されて斜め上方に延びている。第2ステアリングシャフト70は、中間部にユニバーサルジョイント部71を備え、ユニバーサルジョイント部71より下側のベース軸73Aがピニオン15の同軸上に延び、上側の連結スリーブ73Bがそのベース軸73Aに対して傾動可能となっている。
【0017】
詳細には、ユニバーサルジョイント部71は、ベース軸73Aの上端部と連結スリーブ73Bの下端部とを二股構造とし、ベース軸73Aに両端を軸支された第1軸73Cと、連結スリーブ73Bに両端を軸支された第2軸73Dとを直交させた構造になっている。これにより、ベース軸73Aと連結スリーブ73Bの回転軸同士を交差させた状態にして、それらベース軸73Aと連結スリーブ73Bとの間で回転を伝達することができる。また、連結スリーブ73Bは、円筒状をなし、その内面にはスプラインが形成されている。さらに、連結スリーブ73Bの先端部には、連結スリーブ73Bを縮径させるためのボルト72が備えられている。
【0018】
図2において符号75は、コラムアッシであって、車両本体14に備えた図示しないインパネリーンフォースに取り付けられている。また、コラムアッシ75は、一般的な車両に適用されているように、車両本体14に対して上下方向に角度を変更することができる。さらに、コラムアッシ75には、第1ステアリングシャフト74が回転可能に軸支されている。そして、第1ステアリングシャフト74のうちコラムアッシ75の上端面から突出した部分(図3参照)には、ハンドル17が着脱可能に取り付けられている。また、ハンドル17には、エアバッグ17Aが備えられている。
【0019】
第1ステアリングシャフト74のうちコラムアッシ75から下方に突出した下端部と、第2ステアリングシャフト70の上端部との間には、アクチュエータ18が連結されている。図5に示すように、アクチュエータ18は、差動式の減速機20とその減速機20を駆動するためのモータ25とを備えている。減速機20には、1対のアウターリング21,22が軸方向に並べて備えられている。これら両アウターリング21,22の内周面には、細かい複数の歯が形成されると共に、一方のアウターリング22の歯数が、他方のアウターリング21の歯数より例えば1つだけ少なくなっている。また、両アウターリング21,22の内側に共通してインナーリング23が嵌合され、そのインナーリング23の外周面には、両アウターリング21,22の歯に共通して噛合可能な細かい複数の歯が備えられている。さらに、インナーリング23は、アウターリング21,22の中心から僅かに偏心して配置され、インナーリング23の一部の歯と、アウターリング21,22の一部の歯とが噛合している。
【0020】
モータ25は、減速機20の上側同軸上に配置されている。そして、モータ25のロータ26に減速機20のインナーリング23が一体回転可能に連結されている。そして、モータ25のステータ28と、減速機20における上側のアウターリング21は、アッシスリーブ19内に嵌合固定されている。
【0021】
一方、減速機20における下側のアウターリング22は、図7に示すように、アッシスリーブ19の内面との間に複数のニードル22Nを挟んで備え、これによりアッシスリーブ19内をスムーズに回転するようになっている。そして、モータ25によりインナーリング23が回転駆動されると、下側のアウターリング22が、上側のアウターリング21に対して歯数が1つ少ない分だけ先に回転する。即ち、インナーリング23の一回転に対して、アウターリング22が1歯分だけ僅かに回転し、これにより、モータ25とアウターリング22との間で減速効果を得ることができる。
【0022】
アウターリング22には、出力側連結軸16が連結されている。具体的には、図4に示すように、出力側連結軸16は、パイプ状の第1シャフト構成体16Aと、その第1シャフト構成体16Aの下端部に嵌合された第2シャフト構成体16Bとからなり、その第1シャフト構成体16Aの上端部には連結円盤24が備えられている。そして、この連結円盤24がアウターリング22に一体回転可能に固定されている。
【0023】
また、第2シャフト構成体16Bの上端部には、摩擦係止部16Cが設けられ、その摩擦係止部16Cが第1シャフト構成体16Aの下端部内面に押し付けられている。通常は、この摩擦係止部16Cと第1シャフト構成体16Aの下端部内面との間の摩擦係止により、第1シャフト構成体16Aの下端部分に第2シャフト構成体16Bの上端部が保持され、出力側連結軸16の軸方向に所定値以上の軸力がかかると、第2シャフト構成体16Bが第1シャフト構成体16Aの奥部に押し込まれて、出力側連結軸16全体が短くなる。なお、摩擦係止部16Cによる摩擦係止力は、摩擦係止部16Cに備えたセット螺子16Dの螺合操作によって変更することができる。
【0024】
図7に示すように、アッシスリーブ19の下端開口には、閉塞盤85が装着されている。閉塞盤85は、環状の円板部85Eの中心から筒部85Cを下方に突出した構造をなし、この筒部85Cの内部を出力側連結軸16が貫通している。筒部85Cの内面には、出力側連結軸16に密着したオイルシール82が備えられている。円板部85Eの外周面における上寄り位置には、螺合部85Aが形成され、この螺合部85Aをアッシスリーブ19の内面に螺合することで、閉塞盤85がアッシスリーブ19に固定されている。
【0025】
円板部85Eの外周面における下寄り位置からは、鍔部85Bが側方に張り出されている。そして、鍔部85Bが、アッシスリーブ19の下端面に密着してアッシスリーブ19の下端開口を密閉している。また、アッシスリーブ19の下端面における外縁部と、鍔部85Bの上面における外縁部は面取り加工されており、これにより、鍔部85Bとアッシスリーブ19との間に本発明に係る係合溝85Mが形成されている。
【0026】
円板部85Eと筒部85Cとの間には、本発明に係る「キャップ支持部」に相当する複数の支持リブ85Dが形成されている。支持リブ85Dは、図6に示すように、周方向に均等配置されている。また、図7に示すように、支持リブ85Dの縁部は、円板部85Eの外縁部と筒部85Cの下端面との間を繋ぎかつ丸みを帯びている。これにより、閉塞盤85の下面全体が外縁部から中心部に向かって徐々に下方に突出した先細り形状になっている。
【0027】
さて、図6に示すように、アクチュエータ18には、閉塞盤85の下方からキャップ80が装着されている。キャップ80は、例えば、合成樹脂(より具体的には、「PET」,「PP」など)の成形品であって、アクチュエータ18の下端角部を構成する金属部品(アッシスリーブ19,閉塞盤85)より弾性が高い。
【0028】
また、キャップ80は、図7に示すように、閉塞盤85の下面の形状に対応させて外縁部から中心部の近傍に向かうに従って下方に膨出しかつ丸みを帯びた先細り形状(所謂、ドーム形状)になっており、その中心部には出力側連結軸16が貫通された軸孔80Aが形成されている。また、キャップ80の上端部には、アクチュエータ18の下端部外周面に嵌合された扁平筒部80Bが備えられている。そして、扁平筒部80Bの内面に備えた係合突起80Cを、前記した係合溝85Mに凹凸係合させてキャップ80がアクチュエータ18に固定されている。
【0029】
図5に示すように、モータ25の上端部には、ロータ26の回転位置を検出するための位置センサ31が設けられている。また、ロータ26の中心に備えた回転シャフト26Sは、モータ25の上端面から上方に突出しており、その突出部分にはロック円盤32が一体回転可能に固定されている。さらに、図8に示すように、モータ25の上端面における外縁寄り位置からは支柱34が起立しており、その支柱34にはロックアーム33が回動可能に軸支されている。このロックアーム33は、トーションバネ33Cによって、ロック円盤32に係合するように付勢されると共に、モータ25の上面に備えたソレノイド35を励磁することで、ロック円盤32との係合を解除することができる。そして、非常時にはソレノイド35の励磁が停止されて、ロータ26がロックされる。
【0030】
なお、モータ25の上面には、モータ25の巻線及びソレノイド35用の端子金具25Xと、位置センサ31用の端子金具25Yとが露出して設けられている。
【0031】
図5に示すように、モータ25の上端部は連結ハウジング36によって覆われている。連結ハウジング36は、モータ25の上面に対向した天板部36Aと、天板部36Aから下方に延びた大径円筒部36Bと、天板部36Aから上方に延びた小径円筒部36Cとを備えてなる。そして、大径円筒部36Bの下端部はアッシスリーブ19の上端部に嵌合固定されている。
【0032】
また、図8に示すように、大径円筒部36Bには、その一部を切除して作業窓36Wが形成されている。そして、作業窓36Wを介してモータ25の上面の端子金具25X,25Yを外側に臨ませることができる。なお、この作業窓36Wは、最終的には、後述する内側筒部材43によって塞がれる。
【0033】
図5に示すように、小径円筒部36Cの内側底面には、本発明に係る入力側連結軸78が固定されている。具体的には、入力側連結軸78は、中間部にユニバーサルジョイント部79を備え、ユニバーサルジョイント部79より下側のベース部76と上側の連結スリーブ77とからなる。ベース部76はU字形になっており、そのベース部76の下部に備えた台座の下面からはエンボス76Eが突出している。そして、このエンボス76Eが、小径円筒部36Cの内側底面に形成された中心孔に嵌合されて、ベース部76がアクチュエータ18全体の軸上に芯だしされている。
【0034】
ユニバーサルジョイント部79は、ベース部76に両端部を軸支された第1軸76Aと、その第1軸76Aに直交しかつ回転可能に軸支された第2軸76Bとを備え、その第2軸76Bに連結スリーブ77の下端部が固定されている。これにより、ベース部76と連結スリーブ77との間で屈曲した状態を保持しつつ、それらベース部76と連結スリーブ77とが一体回転することができる。また、連結スリーブ77には、円筒空間が備えられ、その内面にはスプラインが形成されている。そして、この連結スリーブ77の内側に第1ステアリングシャフト74が嵌合されてスプライン結合される。
【0035】
連結ハウジング36の上部には、ケーブルケース39が組み付けられている。ケーブルケース39は、ケース内側構成体40とケース外側構成体41とを相対回転可能に嵌合してなる。ケース内側構成体40は、連結ハウジング36の小径円筒部36Cに嵌合固定された円筒状をなし、その下端部から円形底壁40Aを張り出している。また、ケース内側構成体40における円形底壁40Aの下面には、内側筒部材43の上端部が固着され、その内側筒部材43が、前述の如く連結ハウジング36の作業窓36Wを塞いでいる。
【0036】
一方、ケース外側構成体41は、円形底壁40Aより大きな内径を有してケース内側構成体40全体を囲む略円筒状をなし、そのケース外側構成体41の周面の一部には、図9に示すように電線導出部41Dが外側に膨出している。また、ケース外側構成体41の上端開口は、図5に示すように、円環蓋42によって閉塞されている。さらに、円環蓋42の内縁部からは、下方に向けて円筒壁42Aが垂下されており、その円筒壁42Aの下端部がケース内側構成体40の上端内側に遊嵌されている。
【0037】
ケース外側構成体41の下端部からは、円形底壁40Aの下面に重なるように円環形底壁41Aが内側に張り出され、その円環形底壁41Aの内縁部から下方に向けて略円筒状のブーツ保持筒41Cが垂下されている。
【0038】
図8に示すように、ブーツ保持筒41Cのうち連結ハウジング36の作業窓36Wに対応した部分には、そのブーツ保持筒41Cの一部を切除して作業窓41Wが形成されている。また、ブーツ保持筒41Cの外面には板金リング44が嵌合されている。この板金リング44により作業窓41Wを塞ぐことができる。さらに、図5に示すように、ブーツ保持筒41Cの下縁部からは側方に鍔部41Tが張り出され、ここに板金リング44の下端部が係止している。
【0039】
図9に示すように、ケース内側構成体40とケース外側構成体41とに挟まれたドーナッツ状の空間には、スパイラルケーブル45が収容されている。具体的には、スパイラルケーブル45は、フラットケーブルをケース内側構成体40の円筒部分の周りに巻回してなり、そのスパイラルケーブル45の内側の端末部がケース内側構成体40に固定され、スパイラルケーブル45の外側の端末部がケース外側構成体41の電線導出部41Dに固定されている。また、電線導出部41Dの内部では、スパイラルケーブル45に備えた複数の電路に電線52が接続され、その電線52がケーブルケース39の外部に導出されている。さらに、電線導出部41Dの外面には、図6に示すように、ケーブルケース39を車両本体14に固定するためのケースブラケット39Bが固定されている。
【0040】
図10には、ケーブルケース39の下面図が示されている。同図に示すように、ケーブルケース39のうちケース内側構成体40の円形底壁40Aには、モータ25の端子金具25X、位置センサ31用の端子金具25Yに対応した複数の端子金具40X,40Yが備えられている。これら端子金具40X,40Yは、ケース内側構成体40の円形底壁40Aを貫通し、スパイラルケーブル45に備えた複数の電路に接続されている。なお、連結ハウジング36の天板部36Aには、図11に示すように、端子金具40X,40Y(図10参照)を上下方向で挿通させるための切り欠き36Fが形成されている。
【0041】
連結ハウジング36にケーブルケース39を装着すると、図5に示すようにケース内側構成体40の端子金具40X,40Yがモータ25の端子金具25X、位置センサ31用の端子金具25Yに突き合わされる。このとき、作業窓36W,41Wを開放した状態にしておき、作業窓36W,41Wを通して、端子金具40X,40Yと端子金具25X,25Yとを接続する。このように、作業窓36W,41Wを設けたことにより、端子金具25X,25Y,40X,40Y同士を容易に接続することができる。また、接続作業を終えたら、前記した内側筒部材43及び板金リング44を所定箇所に装着して作業窓36W,41Wを塞げばよい。
【0042】
ケース外側構成体41のブーツ保持筒41Cには、第1筒形ブーツ46の上端部が取り付けられている。具体的には、第1筒形ブーツ46は、ゴム製であって、その上端部に備えた上端嵌合部46Aが、ブーツ保持筒41Cに嵌合された板金リング44の外側に嵌合され、さらに、その上端嵌合部46Aの外側から締め付けリング47が装着されている。なお、上端嵌合部46Aの上端部には抜け止めを強固に行うための鍔部46Bが側方に向けて張り出されている。
【0043】
第1筒形ブーツ46の下端部には、上端嵌合部46Aと略同径の下端嵌合部46Cが形成され、上下の嵌合部46A,46Cの間が、それら嵌合部46A,46Cより径が大きくなった本体筒部46Dになっている。本体筒部46Dは、軸方向の中央部分の径が最大になるように、1対のテーパ筒を上下に並べて接合した構造をなし、その本体筒部46Dの軸方向の中央部分には、稜線46Rを有する屈曲部46Kが形成されている。また、本体筒部46Dのうち下端嵌合部46Cとの境界部分の内側には周方向に複数のリブ46Lが形成されている。さらに、下端嵌合部46Cの下縁部からは、側方に向けて鍔部46Eが張り出されている。
【0044】
下端嵌合部46Cの内周面には、金属製の内側円筒管48が嵌合されている。内側円筒管48は、その上端部から側方に張り出した鍔部48Aを下端嵌合部46Cの上縁部に係止して抜け止めされている。また、内側円筒管48は、その上側半分が下端嵌合部46C内に嵌合され、下側半分が下端嵌合部46Cから下方に突出している。そして、その内側円筒管48の下側半分に、第2筒形ブーツ49の上端部が嵌合固定されている。
【0045】
第2筒形ブーツ49は、上から下に向かって順番に、円筒状の本体部49Aと、蛇腹部49Bと、シール部49Cとを備えた構造になっている。本体部49Aの外面には、金属製の外側円筒管50が嵌合されている。外側円筒管50の上端部からは側方に鍔部50Aが張り出しており、その鍔部50Aの上方に重なるようにして本体部49Aの上端部から側方に鍔部49Dが張り出している。また、外側円筒管50の下縁部には、例えば複数の貫通孔が形成されており、本体部49Aの下縁部から突出した突部49Hがそれら貫通孔に係合し、本体部49A全体が外側円筒管50によって密着固定されている。
【0046】
蛇腹部49Bは、全体として下方に向かうに従って内径が小さくなっており、軸方向の途中に複数の屈曲溝49Eを備えた所謂蛇腹構造になっている。シール部49Cは、出力側連結軸16の外周面に密着している。そして、ハンドル17の操舵に連動して出力側連結軸16が回転したときには、シール部49Cが出力側連結軸16に摺接する。このように、アクチュエータ18全体を第1筒形ブーツ46及び第2筒形ブーツ49で覆いかつ第2筒形ブーツ49の下端部のシール部49Cを出力側連結軸16に摺接可能に密着させたことにより、防水効果及び防塵効果のみならず、アクチュエータ18の動作音に対する防音効果も奏する。
【0047】
図12に示すように、外側円筒管50の外側には、アクチュエータ18を車両本体14に備えたダッシュボード100に固定するためのブラケット101が嵌合装着されている。ブラケット101は、ダッシュボード100に形成された貫通孔100Aの開口縁にあてがわれる平板部103から筒部102を斜め上方に起立した構造になっている。そして、この筒部102の内部にアクチュエータ18における外側円筒管50が嵌合され、外側円筒管50の鍔部50Aが筒部102の上端面に当接して、位置決めされている。また、筒部102の外周面の上端側には、固定リング105が装着されており、筒部102の内側に外側円筒管50を配置した状態で固定リング105を締め付けることで抜け止めが図れている。
【0048】
上記のように構成された操舵装置10は、以下のようにして車両本体14に組み付けられる。アクチュエータ18を組み付ける前に、予め車両本体14の底部に転舵装置69を固定しかつインパネリーンフォースにコラムアッシ75を固定する。これにより、第1と第2のステアリングシャフト74,70がダッシュボード100の貫通孔100Aを介して互いに向き合った状態になる。なお、このとき、ハンドル17は、コラムアッシ75の第1ステアリングシャフト74から離脱しておく。
【0049】
次いで、アクチュエータ18にブラケット101を装着し、ブラケット101の下端から突出した出力側連結軸16をダッシュボード100の貫通孔100A内に挿入して、第2ステアリングシャフト70の上端部にスプライン結合する。この状態で、ブラケット101の平板部103を、ダッシュボード100における貫通孔100Aの開口縁にボルト止めする。
【0050】
次いで、図13に示すように、アクチュエータ18を下方に押し下げる。具体的には、ケーブルケース39を把持して下方に押し下げればよい。すると、第1筒形ブーツ46の屈曲部46Kが押し潰されて第1筒形ブーツ46が圧縮変形し、第1及び第2の筒形ブーツ46,49に対してアクチュエータ18が下方に移動する。このとき、アクチュエータ18の下端角部が第2筒形ブーツ49に当接しても、本実施形態のアクチュエータ18の下端角部は、弾性が高いキャップ80で覆われているので、第1筒形ブーツ46の損傷が防がれる。これにより、アクチュエータ18を下側に移動する際に注意を払わなくてもよくなり、組み付け作業の効率を従来より向上させることができる。
【0051】
次いで、アクチュエータ18を下方に移動した状態で、入力側連結軸78の連結スリーブ77と、第1ステアリングシャフト74とを突き合わせる。そして、アクチュエータ18を上方に移動して、第1ステアリングシャフト74の下端部を連結スリーブ77の内部に挿入する。これにより、アクチュエータ18の入力側連結軸78に第1ステアリングシャフト74がスプライン結合される。そして、ケーブルケース39に装着されたケースブラケット39Bを車両本体14にボルト止めし、第2ステアリングシャフト70に備えたボルト72を締め付けて、第2ステアリングシャフト70に出力側連結軸16を抜け止めする。
【0052】
最後に、アクチュエータ18から導出された電線52を、図1に示したECU60(ECUは、Electronic Control Unitの略である。)に接続する。以上によりアクチュエータ18が車両本体14に組み付けられ、操舵装置10が完成する。
【0053】
このように構成された操舵装置10を搭載した車両では、ECU60が運転状況に応じてアクチュエータ18を駆動制御し、第1と第2のステアリングシャフト74,70の間で伝達される回転の伝達比を変更する。具体的には、ECU60に備えたROM63(図1参照)には、車速と操舵伝達比とを対応させたマップ(図示せず)が記憶されている。そして、ECU60は、車速センサ62(図1参照)の検出結果とこのマップに基づいて操舵伝達比を決定する。そして、操舵角センサ61にて検出したハンドル17の操舵角と操舵伝達比とから出力側連結軸16の目標の回転角を演算し、出力側連結軸16の実際の回転角を目標の回転角に一致させるためにスパイラルケーブル45を通してモータ25に駆動電流を流し、ロータ26を回転させる。
【0054】
なお、マップには、車速が大きくなるに従って操舵伝達比が小さくなるように設定されている。これにより、低速域では、僅かなハンドル操作で前輪11,11を切ることができるようになり、旋回性が向上する。それとは逆に高速域では、所謂、急ハンドルが規制され、安定した走行が可能になる。
【0055】
ところで、車両が衝突すると、その衝撃によりエアバッグ17Aが膨らむ。このとき、運転者の腕又はエアバッグ17Aによってハンドル17が押され、ハンドル17に瞬間的に所定値以上の軸力がかかる。すると、コラムアッシ75がインパネリーンフォースから離脱し、アクチュエータ18が下方に押される。これにより、ケーブルケース39の内側筒部材43及びケース内側構成体40が連結ハウジング36及びアッシスリーブ19から外れ、ケーブルケース39が車両本体14に固定されたまま、アクチュエータ18の本体部分が、出力側連結軸16を圧縮させながら斜め下方に移動する。
【0056】
このとき、本実施形態では、アクチュエータ18の下端面を覆ったキャップ80が先細り形状となっておりかつ、アクチュエータ18に設けた複数の支持リブ85Dがキャップ80を内側から支持しているので、その先細り形状のキャップ80にて、下方の部品(例えばダッシュボード100)を押しのけるようにしてアクチュエータ18を下方に移動することができる。このとき仮にキャップ80が破損しても、支持リブ85Dによって、下方の部品を押しのけることができる。これにより、車両が衝突した際に、アクチュエータ18と共にハンドル17が運転者から離れる方向にスムーズに移動し、運転者の前方の空間を広くすることができる。
【0057】
このように本実施形態の操舵装置10によれば、アクチュエータ18の下端角部が、弾性が高いキャップ80で覆われているので、組み付け作業時にアクチュエータ18の下端角部が第1筒形ブーツ46に当接しても、その第1筒形ブーツ46の損傷を防ぐことができる。また、そのキャップ80が先細り形状となっておりかつ、支持リブ85Dがキャップ80を内側から支持しているので、車両の衝突時にアクチュエータ18と共にハンドル17が運転者から離れる方向にスムーズに移動し、運転者の前方の空間を広くすることができる。
【0058】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0059】
(1)前記第1実施形態のキャップ80は、アクチュエータ18の下端角部のみならず、下端面の中心部近傍まで覆っていたが、本発明に係るキャップは、アクチュエータ18の下端部のみを覆った構造であってもよい。
【0060】
(2)前記第1実施形態のキャップ80は、丸みを帯びたドーム形状になっていたが、キャップ80は、円錐形状、又は、角錐形状であってもよい。
【0061】
(3)前記実施形態では、アクチュエータ18の下端面には複数の支持リブ85Dが間隔を空けて形成されていたが、それらアクチュエータ18の下端面全体をアクチュエータ18の内面に対応した先細り形状にしてもよい。
【0062】
(4)前記実施形態では、アクチュエータ18を下方に移動可能とするために、そのアクチュエータ18に備えた出力側連結軸16が圧縮変形可能な構成となっていたが、転舵装置69に備えた第2ステアリングシャフト70が圧縮変形される構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る操舵装置を備えた車両の概念図
【図2】操舵装置の側面図
【図3】操舵装置の斜視図
【図4】操舵装置の側断面図
【図5】操舵装置の部分拡大断面図
【図6】操舵装置の分解側面図
【図7】操舵装置の下端部の拡大断面図
【図8】図5のA−A切断面における断面図
【図9】図5のB−B切断面における断面図
【図10】ケーブルケースの平面図
【図11】ケーブルケースの底面図
【図12】ゴムブーツがダッシュボードに取り付けられた状態の側断面図
【図13】ゴムブーツが圧縮変形した状態の側断面図
【図14】従来の操舵装置の概念図
【図15】アクチュエータをダッシュボードに取り付けた状態の概念図
【図16】アクチュエータの下端角部がゴムブーツに当接した状態の概念図
【符号の説明】
【0064】
10 操舵装置
11 前輪(転舵輪)
14 車両本体
15 ピニオン
16 出力側連結軸
17 ハンドル
18 アクチュエータ
20 減速機
46 第1筒形ブーツ
49 第2筒形ブーツ
69 転舵装置
70 第2ステアリングシャフト
74 第1ステアリングシャフト
78 入力側連結軸
80 キャップ
80C 係合突起
85D 支持リブ
85M 係合溝
100 ダッシュボード
101 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルから下側に延びた第1ステアリングシャフトと、
1対の転舵輪の間に設けられた転舵装置から上側に延びた第2ステアリングシャフトと、
それら第1及び第2のステアリングシャフトの間を連結して回転を伝達すると共に、運転状況に応じて前記回転の伝達比を変更可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータの上端部に設けられて、前記第1ステアリングシャフトと一体回転可能に嵌合結合された入力側連結軸と、
前記アクチュエータの下端面から突出し、前記第2ステアリングシャフトと一体回転可能に嵌合結合された出力側連結軸と、
前記アクチュエータの側面と前記下端面とを覆い、その下端面を覆った部分に前記出力側連結軸が貫通しかつ、上端部が前記アクチュエータに嵌合固定されたゴムブーツと、
前記ゴムブーツのうち軸方向の中間部を、車両本体のダッシュボードに固定するためのブラケットとを備えてなり、
予め前記ゴムブーツを前記ブラケットにて前記ダッシュボードに固定しかつ前記第1ステアリングシャフトを前記車両本体に軸支した状態にして、前記ゴムブーツを圧縮変形させながら前記アクチュエータを下側に移動することで前記入力側連結軸と前記第1ステアリングシャフトとを突き合わせ、前記アクチュエータを上側に移動して、それら入力側連結軸と第1ステアリングシャフトとが嵌合結合される操舵装置において、
前記アクチュエータの下端角部を覆いかつそのアクチュエータの下端角部を構成する部材より弾性が高い部材で構成されたキャップを設けたことを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記キャップは、前記アクチュエータの下端角部から下端面の中心部近傍までを覆うと共に、外縁部から中心部に向かって徐々に下方に膨出した先細り形状をなし、
前記アクチュエータは、前記ハンドル側から所定値以上の衝撃を受けて下方に移動するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの下端面には、その外縁部から中心部に向かって徐々に下方に突出した先細り形状をなしかつ、前記キャップを内側から支持するキャップ支持部が備えられたことを特徴とする請求項2に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記キャップの一端を前記アクチュエータの下端部の外側に嵌合し、それらキャップとアクチュエータとの嵌合部分には、互いに凹凸係合する係合突起と係合溝とが備えられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の操舵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate