説明

擬似太陽光照射装置

【課題】光学設計を再度行うことなく照射範囲を拡大できる擬似太陽光照射装置を提供する。
【解決手段】上面6B及び下面6Aから光を放射する擬似太陽光照射ボックス6を納めたユニットであって、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aの対向位置に反射面8を設け、この反射面8で上方に反射した反射光、及び擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bから放射する直接光を、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bの対向位置に設けた被照射面10Aに照射する擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを複数備え、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを並設するとともに、擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の間に、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側方に漏れる光を遮光する遮光板130を配置しつつ、遮光板130の上端部131と被照射面10Aとの間に隙間部δを形成し、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所に、隙間部δを通じて各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの照射光を重ねて照射する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光を被照射面に照射する擬似太陽光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に代表される各種太陽エネルギー利用機器の性能測定や加速劣化試験などのために、自然太陽光の発光スペクトルを再現した擬似太陽光を、太陽エネルギー利用機器の被照射面に照射する擬似太陽光照射装置(ソーラーシミュレーターとも呼ばれる)が知られている。
この種の擬似太陽光照射装置においては、キセノンランプ等の光源を箱体の中に設置し、箱体の放射面に光学フィルターを設けて擬似太陽光を放射する照射ボックスと、この照射ボックスから放射される擬似太陽光を反射する反射面とを備え、光源から直接放射される直接光及び反射面で反射された反射光の両方で被照射面を照射する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−296319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、広面積の太陽電池にも対応可能にすべく、直管型の光源を複数本設けて照射範囲を拡大しようとした場合には、複数本の光源に合わせて反射面の形状や配置を変更しなければならず、その変更に時間が掛かかるといった問題がある。
また、光源及び反射面を有する光学系を一の擬似太陽光照射ユニットとし、複数の擬似太陽光照射ユニットを並べて、照射範囲を拡大することが考えられる。しかしながら、単に複数の擬似太陽光照射ユニットを並べただけでは、隣り合う擬似太陽光照射ユニットからの光が合成され、擬似太陽光照射ユニットの境界付近に位置する被照射面の箇所において照度が高くなってしまう。特に、光源から被照射面までの距離が数十cm程度となる比較的小型の擬似太陽光照射ユニットを用いる場合には、被照射面に入射する光の入射角が広くなるため、隣り合う擬似太陽光照射ユニットからの光がより多く合成されることとなり、被照射面の照度むらを調整することが困難になるという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、光学設計を再度行うことなく照射範囲を拡大できる擬似太陽光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、上面及び下面から光を放射する擬似太陽光照射ボックスを納めたユニットであって、前記擬似太陽光照射ボックスの下面の対向位置に反射面を設け、この反射面で上方に反射した反射光、及び前記擬似太陽光照射ボックスの上面から放射する直接光を、前記擬似太陽光照射ボックスの上面の対向位置に設けた被照射面に照射する擬似太陽光照射ユニットを複数備え、各擬似太陽光照射ユニットを並設するとともに、擬似太陽光照射ユニット同士の間に、各擬似太陽光照射ユニットの側方に漏れる光を遮光する遮光板を配置しつつ、前記遮光板の上端部と前記被照射面との間に隙間部を形成し、各擬似太陽光照射ユニット同士の境界部分に位置する前記被照射面の箇所に、前記隙間部を通じて各擬似太陽光照射ユニットの照射光を重ねて照射することを特徴とする。
【0006】
前記擬似太陽光照射ボックスは線状の光源を有し、前記擬似太陽光照射ユニットのそれぞれを、前記光源が並列に並ぶように配設してもよい。
【0007】
上記構成において、前記擬似太陽光照射ユニットの側方には、前記擬似太陽光照射ボックスの高さ位置から前記被照射面までの間に、入射する光を前記被照射面に向けて反射する補助反射面を配置してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の擬似太陽光照射ユニットを並設するとともに、擬似太陽光照射ユニット同士の間に、各擬似太陽光照射ユニットの側方に漏れる光を遮光する遮光板を配置したため、各擬似太陽光照射ユニットの照射光の合成による被照射面での照度上昇を抑制できる。
また、遮光板の上端部と被照射面との間に隙間部を形成し、各擬似太陽光照射ユニット同士の境界部分に位置する被照射面の箇所に、隙間部を通じて各擬似太陽光照射ユニットの照射光を重ねて照射するため、各擬似太陽光照射ユニット同士の境界部分に位置する被照射面の箇所において、遮光板を設けることによる照度の低下を抑制できる。これにより、擬似太陽光照射ユニットの光学設計を再度行うことなく照射範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る擬似太陽光照射装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】擬似太陽光照射装置を示す平面図である。
【図3】擬似太陽光照射装置の構成を示す横断面図である。
【図4】透過光量調整ユニットの構成を模式的に示す縦断面図である。
【図5】透過光量調整ユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【図6】図5に示すI−I’線の断面を模式的に示す図である。
【図7】擬似太陽光照射装置の配光をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)は被照射面の照度分布を示す図であり、(B)は被照射面の幅方向の平均照度を示すグラフであり、(C)は被照射面の長さ方向の平均照度を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る擬似太陽光照射装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図9】擬似太陽光照射装置を示す平面図である。
【図10】擬似太陽光照射装置の構成を示す横断面図である。
【図11】右側の擬似太陽光照射ユニットの右半分を示す縦断面図である。
【図12】光拡散部材の構成を示す図であり、(A)は擬似太陽光照射ユニットを、拡大した光拡散部材とともに模式的に示す縦断面図であり、(B)は被照射面側から見た光拡散部材を示す図である。
【図13】被照射面の照度むらの測定結果を示す図であり、(A)は被照射面の照度分布を示す図であり、(B)は被照射面の幅方向の照度を示すグラフであり、(C)は被照射面の長さ方向の照度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る擬似太陽光照射装置100の構成を模式的に示す縦断面図である。なお、図1においてWは幅方向を、Hは高さ方向を示している。
擬似太陽光照射装置100は、複数(本実施形態では、2つ)の擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを備え、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、複数の角材2を格子状に組んだ枠体4を有し、この枠体4は、例えば長さが略1.6m(メートル)、幅が略0.9m、及び高さが略0.8m程度の寸法に構成されている。枠体4の長さ方向の一側面(側方)を除く三方の各側面(側方)は、外部光の進入を防止するために遮蔽板5で覆われている。
【0011】
各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、枠体4の長さ方向において対面する側面間に、擬似太陽光を放射する擬似太陽光照射ボックス6が渡設されている。また各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aに対向させて反射面8が配置されており、上面6Bに対向させて配置された被照射体10の被照射面10A(例えば、太陽電池パネル等)が擬似太陽光照射ボックス6の直射光と反射面8の反射光とで照明される。また、被照射面10Aが枠体4の上面を閉塞することで当該上面からの外部光の進入が防止されている。
【0012】
図2は擬似太陽光照射装置100を示す平面図であり、図3は擬似太陽光照射装置100の構成を示す横断面図である。なお、図3においてXは長さ方向を示している。
擬似太陽光照射ボックス6には、図2及び図3に示すように、1本の直管型のランプ(光源)22が擬似太陽光照射ボックス6に沿って配置されて線状光源を構成している。これらのランプ22には、紫外領域〜可視領域〜赤外領域の広い波長領域に亘り、強い連続したスペクトルを有する、例えばキセノンフラッシュランプ等が用いられている。ランプ22の両端部には端子台40が配設されている。
【0013】
この擬似太陽光照射ボックス6は、図1に示すように、長手方向に沿った両側面を構成する長板状の一対のサイドフレーム24と、上面6Bを構成する上面光学フィルター26と、下面6Aを構成する下面光学フィルター27と、これらサイドフレーム24、上面光学フィルター26及び下面光学フィルター27を組み留める金具(図示せず)とを有している。サイドフレーム24は、光遮光性材により形成され、或いは、光の透過を防止する遮光材が付加または塗布されている。
【0014】
上面光学フィルター26及び下面光学フィルター27は、それぞれランプ22の放射光から赤外波長域をカットすることで、放射光の発光スペクトルを太陽光に近似させる、いわゆるエアマスフィルターであり、誘電多層膜フィルターを用いて構成されている。また、上面光学フィルター26及び下面光学フィルター27は、図1に示すように、入射光の入射角度を極力垂直に近づけ透過光の波長シフトを抑えるべく、それぞれ2枚の板状のフィルター材を山形(谷形)に係合させて構成されている。
擬似太陽光照射ボックス6は、該擬似太陽光照射ボックス6が放射する擬似太陽光のスペクトルを変調しない材質で形成されたランプハウス7に収納されている。
【0015】
反射面8は、図1に示すように、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aからの擬似太陽光を反射し、被照射体10の被照射面10Aを照射する反射板30を傾動自在に保持する複数の反射装置32を有して構成されている。
被照射体10は、被照射面10Aが擬似太陽光照射ボックス6から所定の距離Lだけ離間するように、枠体4の上に取り付けられた試料支持枠12に載置され、被照射面10Aに対して、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bからの直接光と、反射面8で反射された反射光が照射される。反射光の配光は、被照射面10Aでの直接光の照度むらを補償するように制御されている。
【0016】
反射板30は、表面が金属の板材であり、図2及び図3に示すように、擬似太陽光照射ボックス6に沿って略平行に延在している。反射板30と、該反射板30を保持する保持具31とにより反射装置32が構成されている。そして、枠体4の底床4A上に、複数の反射装置32が並設されることで、複数の反射板30が敷き詰められて設けられ、これらの反射板30により反射面8が形成されている。
保持具31は、反射板30の傾斜角度を調節するための角度調整機構を有し、これにより、反射板30のそれぞれを、互いに独立して光の反射角度を調整することができるようになっている。このとき、図1に示すように、枠体4の幅方向における両側面に近い幾つかの保持具31の高さが順次高くなされており、両側面側の反射板30の反射光が内側の反射板30に遮蔽されるのを防止している。
【0017】
また、図1〜図3に示すように、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの長さ方向の一側面を除く三方の側面には、擬似太陽光照射ボックス6の高さ位置から被照射面10Aまでの間に、入射する光を被照射面10Aに向けて反射する補助反射面150A,150Bが設けられている。補助反射面150Aは遮蔽板5で覆われない一側面に対向する他側面に配置され、一対の補助反射面150Bはそれぞれ擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの幅方向の両側面に配置されている。これらの補助反射面150A,150Bは、表面が金属の板材であり、例えば、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側面側での直接光の照度低下が顕著な場合に、この補助反射面150A,150Bの反射角度(傾斜角度)を調整して直接光の照度低下を補うことなどに使用可能である。補助反射面150A,150Bは、被照射面10Aの四隅での直接光の照度を低下させないように、調整された傾斜角度において、互いに隙間を生じさせない長さに形成される。
このように、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側面に補助反射面150A,150Bを配置したため、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側面に向かう光を有効利用して、被照射面10Aでの直接光の照度低下を補うことができるとともに、補助反射面を擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの下部に水平に設ける場合に比べ、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを小型化できる。
【0018】
これらの擬似太陽光照射ボックス6、反射面8、及び補助反射面150A,150Bは、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系の一部を構成しており、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系は、長さ方向に延在する補助反射面150Aが配置されない一側面側に寄せて配置されている。
図1に示すように、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aの間には、該被照射面10Aの全面を覆い該被照射面10Aでの照度分布を均一化するように透過光量を調整する透過光量調整ユニット60が設けられている。
すなわち、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bでは、反射面8の反射光による直接光の照度むら補償に加え、透過光量調整ユニット60によっても被照射面10Aの照度むらの低減が図られている。
【0019】
図4は透過光量調整ユニット60の構成を模式的に示す縦断面図であり、図5は同平面図である。
透過光量調整ユニット60は、図4に示すように、ベース板62と、透過光量調整用の透光板積層体64と、表面フィルム(押さえ部材)66とを備え、被照射面10Aの照度が高い箇所に向かう光の光量を透光板積層体64が減じることで、被照射面10Aで照度分布を低い照度に合せて均一化する。
これらベース板62、透光板積層体64、及び、表面フィルム66には、擬似太陽光照射ボックス6が放射する擬似太陽光のスペクトルを変調しないように、それぞれ擬似太陽光のスペクトル範囲において透過率が一定(フラット)であり、さらに、好ましくは高い透過率を有する材質が用いられている。この材質として、本実施形態では、アクリル樹脂が用いられている。なお、この材質にはガラスを用いてもよい。
【0020】
ベース板62は、透光板積層体64を担持するための上面視矩形状の板状部材であり、自重による撓みが生じない程度の剛性が得られる厚みを有して形成されている。係るベース板62は、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aとの間を完全に仕切るように配置されている。
ベース板62の上面には、図5に示すように、被照射面10Aを照明する光が通過する照明光通過範囲Rに、透過光量を減じるべき位置のそれぞれに透光板積層体64が配置され、また照明光通過範囲Rの残余の箇所には、透光板積層体64や、この透光板積層体64を構成する透光板65、ベース板62と同一の素材であるアクリル樹脂から成る1枚の透光板68(以下、「スペーサ透光板68」と言う)が配置されている。これにより、照明光通過範囲Rには透光板積層体64及びスペーサ透光板68が隙間無く敷き詰められることとなる。このスペーサ透光板68は、透光板積層体64と同一寸法に形成されており、スペーサ透光板68と透光板積層体64との入れ替えが容易となっている。
透光板積層体64は、複数枚の透光板65(図6)を積層して構成されており、図5において符号64に添えて記載した括弧書きは、各透光板積層体64の透光板65の積層枚数を示している。なお、この透光板積層体64の具体的な構成、及び、光量調整の作用については後に詳述する。
【0021】
照明光通過範囲Rの周囲には、図5に示すように、照明光通過範囲Rと擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側面との隙間を埋めるスペーサ板(スペーサ部材)70が設けられている。すなわち、ベース板62の上面は、透光板積層体64、スペーサ透光板68及びスペーサ板70で隙間無く埋め尽くされることとなり、透光板積層体64をベース板62に接着せずとも位置を固定することができる。これにより、透光板積層体64を交換自在にしつつ、設置時の衝撃や地震の振動が透過光量調整ユニット60に加わっても、透光板積層体64の位置ずれを防止できる。
なお、スペーサ板70の素材には、透光板積層体64と同一の素材(本実施形態ではアクリル樹脂)を用いることが好ましい。こうすることで、スペーサ板70の光学特性が、照明光通過範囲Rに設けたスペーサ透光板68と同等になるため、被照射面10Aの面積が広がり照明光通過範囲Rが多少周囲に拡張された場合でも、被照射面10Aの全域を照明することができる。
【0022】
表面フィルム66は、図4に示すように、ベース板62に載置された透光板積層体64の透光板65の横ずれを防止するために、これら透光板積層体64とともにスペーサ透光板68及びスペーサ板70の表面を覆って押さえる。この表面フィルム66は、アクリル樹脂と同様に擬似太陽光のスペクトルを変調しない素材であるPET(ポリエチレンテレフタラート)を薄いフィルム状に形成したものである。
【0023】
次に、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bへの透過光量調整ユニット60の取付構造を説明する。
図4に示すように、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bには、擬似太陽光照射ボックス6と平行に延びるズレ落ち防止ブラケット80が、該擬似太陽光照射ボックス6を挟んだ両側の側面にそれぞれ設けられている。また、各ズレ落ち防止ブラケット80には、断面L字状の固定用Lアングル82が固定されており、各固定用Lアングル82に、透過光量調整ユニット60のベース板62の両縁部62Aを載せることで該ベース板62が設置される。
ベース板62の両縁部62Aの上面には、スペーサ板70と擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側面の隙間を埋めてスペーサ板70の横ずれを防止する横ずれ防止用Lアングル84が設けられている。
【0024】
透過光量調整ユニット60の取付け時には、先ず、固定用Lアングル82を角材2にネジ止め固定する。この固定用Lアングル82にベース板62を載せた後、上側から横ずれ防止用Lアングル84を置いて、この防止用Lアングル84を固定用Lアングル82にネジ87で、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側面の角材2に固定する。これにより、ベース板62の縁部62Aが固定用Lアングル82及び横ずれ防止用Lアングル84で挟み込まれ、ベース板62のガタつきが防止される。
次いで、ベース板62の上に、スペーサ板70、透光板積層体64及びスペーサ透光板68を敷き詰める。そして、これらスペーサ板70、透光板積層体64及びスペーサ透光板68を横ずれ防止用Lアングル84とともに表面フィルム66で覆う。最後に、表面フィルム66の縁部を押さえバー86で押さえ、この押さえバー86を横ずれ防止用Lアングル84にボルト89で固定する。以上の作業により、透過光量調整ユニット60の取付けが完了する。
【0025】
次いで、透光板積層体64の構成について詳述する。
図6は、図5に示したI−I’線の断面を模式的に示す図である。
この図に示すように、透光板積層体64は、それぞれ矩形状の透光面が同一寸法のアクリル樹脂から成る透光板65を複数枚重ねて構成されている。この透光板積層体64に擬似太陽光Fを入射した場合、各透光板65の表裏の各界面で擬似太陽光Fの裏面反射が生じ、この裏面反射の分だけ透光板積層体64の透過光量が減じられる。また、この透光板積層体64の透過率は、透光板65の厚みには依らず、該透光板65を重ねた枚数で決定されている。
この理由としては、透光板65の材質であるアクリル樹脂が擬似太陽光Fに対して高い透過率を有するため、擬似太陽光Fが透光板65を透過する際に透光板65への吸収は、ほぼ生じないものの、透光板65の表裏の各界面で裏面反射が発生することから各裏面反射により透過光量が減じられるためと考えられる。
【0026】
したがって、図6に示した透過光量調整ユニット60において、透光板65を2枚重ねた透光板積層体64では、それぞれの透光板65の表裏の界面で裏面反射が生じるため、合計4回の裏面反射分だけ擬似太陽光Fの透過光量が減じられ、また、透光板65を4枚重ねた透光板積層体64では、合計8回の裏面反射分だけ擬似太陽光Fの透過光量が減じられることとなる。このように、透光板積層体64では、透光板65の枚数に比例して裏面反射回数が増えるため、透光板65の枚数に比例して擬似太陽光Fの透過光量が減じられる。
【0027】
ここで図6に示すように、透光板65同士が上下方向で重なり合う接触部Cで2回の裏面反射が生じるのは次のように考えられる。すなわち、接着剤等のバインダ−を使用せずに透光板65同士を単に重ねた場合、これら透光板65の間には薄い空気層90が形成される。この空気層90が透光板65同士の間に介在することで、擬似太陽光Fが下側の透光板65から空気層90に出るときに裏面反射が生じるとともに、空気層90から上側の透光板65に入射するときにも裏面反射が生じ、これにより接触部Cで2回の裏面反射が生じることとなる。
このように、接着剤等のバインダーを用いずに透光板65同士を単純に重ね合せ、これら透光板65の間に空気層90のみを形成することで、透光板積層体64の透過率が透光板65の積層枚数に比例して減少させることができ、透光量の調整が容易な透光板積層体64が得られることとなる。
なお、透過光量調整ユニット60では、透光板積層体64の下にベース板62を、上に表面フィルム66をそれぞれ備え、また、透光板積層体64が無い場所には、スペーサ透光板68が配置されるため、これらベース板62、表面フィルム66及びスペーサ透光板68の各界面でも同様に裏面反射が生じる。したがって、これらの裏面反射を加味して、透光板積層体64の透光板65の枚数が決定される。
【0028】
ここで、接着剤等のバインダーを用いずに透光板65同士を単純に重ねて透光板積層体64を構成しているため、地震などの衝撃により透光板65が横ずれを起こしやすい。そこで、図6に示すように、透光板積層体64においては、透光板65を重ねる枚数に応じて1枚当たりの透光板65の厚みを薄くすることで透光板65の枚数にかかわらず全体の厚みDが一定(本実施形態では3mm)となるようにし、また、スペーサ透光板68も同じ厚みDに形成されている。これにより、透光板65の横方向には、必ず、他の透光板65又はスペーサ透光板68が存在するため、透光板65の横ずれが防止される。
【0029】
ただし、透光板積層体64においては、透光板65を重ねる枚数が多くなるほど透光板65が薄くなるため、透光板積層体64やスペーサ透光板68の厚みに多少のバラつきがあるだけで透光板65の横ずれが生じやすくなる。そこで、本実施形態では、図6に示すように、これら透光板積層体64及びスペーサ透光板68の表面を上述した表面フィルム66で覆い、該表面フィルム66により、透光板積層体64の表面を押さえることで透光板65の横ずれを確実に防止することとしている。
このように構成された透過光量調整ユニット60を有する各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、当該各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの正面に位置する被照射面10Aの所定面積(600mm×1200mm程度)において、照度むらを良好に低減することができる。
【0030】
すなわち、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、有効照射面積が600mm×1200mm程度となるように構成されており、擬似太陽光照射装置100では、照射範囲を拡大すべく、図1及び図2に示すように、2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを隣接して並設している。各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bに用いられる直管型のランプ22は軸方向への光の放射が少ないため、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bはランプ22が並列に並ぶように配設されている。したがって、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、ランプ22の光の放射方向に沿って並設されることとなるので、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において、光の放射が少ない軸方向に光源を並設することによる照度低下を防止できる。
【0031】
また、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、補助反射面150A,150Bを側面に備えることで小型化されているため、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系(擬似太陽光照射ボックス6、反射面8、補助反射面150A,150B、及び透過光量調整ユニット60)が比較的近くに配置されることとなり、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系を離間配置することによる照度低下を防止できる。なお、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、長さ方向に延在する補助反射面150Aが配置されない一側面側を対向させて配置されている。擬似太陽光照射装置100には、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系の一部(擬似太陽光照射ボックス6、反射面8、及び補助反射面150A,150B)を一側面側に寄せて配置することによって形成された幅方向右端部のスペースに、2本のランプ22を始動させるイグナイタ23が配置されている。すなわち、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系の一部は、イグナイタ23の配置スペース分だけ、幅方向において中央に寄せて配置されている。
【0032】
本実施形態の擬似太陽光照射ユニット1A,1Bでは、ランプ22から被照射面10Aまでの距離Lが数十cm程度となっており、被照射面10Aに入射する光の入射角が広くなるため、単に2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを並設しただけでは、隣り合う擬似太陽光照射ユニット1A,1Bからの光が多く合成され、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの境界付近に位置する被照射面10Aの箇所において照度が高くなる。
そこで、擬似太陽光照射ユニット1A,1B間に、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側方に漏れる光を遮光する遮光板130が配置されている。遮光板130は、ランプ22の長手方向に延在し、平面が鉛直に配置された板材であり、その表面が光を吸収する性質を有するように、例えば、板材に黒色の遮光シートを被せる等の光吸収処理を施したものを用いて形成されている。また、遮光板130は、一方の擬似太陽光照射ユニット1A,1Bから放射され、他方の擬似太陽光照射ユニット1B,1Aに向かう光を十分に遮蔽可能にするために、ランプ22の長さ方向において対面する遮蔽板5間に渡って設けられている。
【0033】
ここで、隣り合う擬似太陽光照射ユニット1A,1Bからの光をすべて遮光してしまうと、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの境界に位置する被照射面10Aの箇所において照度が低下してしまう。
そこで、遮光板130は、その上端部131と被照射面10Aとの間に隙間部δを形成するように、被照射面10Aから所定の距離M1だけ離して配置されている。これにより、隣り合う擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの境界部分に位置する被照射面10Aの箇所に、隙間部δを通じて各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの照射光を重ねて照射することができるので、隣り合う擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において、遮光板130を設けることによる照度低下を抑制できる。距離M1は、2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1Bによる照度の境界が目立たなくなる距離に設定され、本実施形態では、例えば200mmに設定されている。
【0034】
図7は、擬似太陽光照射装置100の配光をシミュレーションした結果を示す図であり、図7(A)は被照射面10Aの照度分布を示す図であり、図7(B)は被照射面10Aの幅方向の平均照度を示すグラフであり、図7(C)は被照射面10Aの長さ方向の平均照度を示すグラフである。
この図に示すように、被照射面10Aにおいては、遮光板130を配置した幅方向中央部を除く大部分で、照度が0.0048−0.0055W/mm2の範囲にあり、遮光板130を配置した幅方向中央部では、照度が若干低下しているものの、最低照度は0.0035−0.0042W/mm2の範囲にあり、照度の低下度合いは小さい。したがって、本実施形態の擬似太陽光照射装置100によれば、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの擬似太陽光照射ボックス6、反射面8、補助反射面150A,150B、及び透過光量調整ユニット60等の光学設計を変更することなく、有効照射面積を1100mm×1400mm程度まで拡大できる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを並設するとともに、擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の間に、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側方に漏れる光を遮光する遮光板130を配置する構成としたため、各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの照射光の合成による被照射面10Aでの照度上昇を抑制できる。
また、遮光板130の上端部131と被照射面10Aとの間に隙間部δを形成し、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所に、隙間部δを通じて各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの照射光を重ねて照射するため、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において、遮光板130を設けることによる照度の低下を抑制できる。これにより、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学設計を再度行うことなく照射範囲を拡大できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、擬似太陽光照射ボックス6は線状のランプ22を有し、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bのそれぞれを、ランプ22が並列に並ぶように配設したため、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bがランプ22の光の放射方向に沿って並設することとなるので、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において、光の放射が少ない軸方向に光源を並設することによる照度低下を防止できる。
【0037】
また、本実施形態によれば、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの側方には、擬似太陽光照射ボックス6の高さ位置から被照射面10Aまでの間に、入射する光を被照射面10Aに向けて反射する補助反射面150A,150Bを配置する構成とした。この構成により、枠体4の側面に配置した遮蔽板5によって遮光されてしまう光を有効利用して、被照射面10Aでの直接光の照度低下を補うことができるとともに、補助反射面を枠体4の下部に水平に配置する場合に比べ、擬似太陽光照射装置100を小型化できる。したがって、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを近接配置できるので、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bの光学系が離間配置されることによる照度低下を防止できる。
【0038】
<第2実施形態>
第1実施形態では、2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1Bを並設していたが、第2実施形態では、3つの擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cを並設している。また、第1実施形態では、被照射面10Aの照度むらを低減するために、透過光量を調整する透過光量調整ユニット60を設けていたが、第2実施形態では、透過光量調整ユニット60に代えて、光を拡散する光拡散ユニット101を設けている。
図8は、第2実施形態に係る擬似太陽光照射装置200の構成を模式的に示す縦断面図である。また、図9は擬似太陽光照射装置200を示す平面図であり、図10は擬似太陽光照射装置200の構成を示す横断面図である。なお、これら図8〜図10では、図1〜3に示す擬似太陽光照射装置100と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
擬似太陽光照射装置200は、3つの擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cを備えている。各擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、長さ方向に延在する上下二枚の補助反射面150Aと、幅方向に延在する一対の補助反射面150Bとを備えている。擬似太陽光照射ユニット1Cでは、複数の角材2を格子状に組んだ枠体4が、例えば長さが略1.6m、幅が略0.8m、高さが略0.8m程度の寸法に構成され、擬似太陽光照射ボックス6及び反射面8が枠体4の幅方向において略中央に配置されている。擬似太陽光照射ユニット1Cは、枠体4の寸法が異なる点、擬似太陽光照射ボックス6及び反射面8が幅方向中央に配置される点、及び、長さ方向に延在する上下2枚の補助反射面150Aを備えない点以外は、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bと同一に構成されている。
【0040】
図8に示すように、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aの間には、該被照射面10Aの全面を覆い該被照射面10Aでの照度分布を均一化するように光を拡散する光拡散ユニット101が設けられている。
すなわち、各擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cでは、反射面8の反射光による直接光の照度むら補償に加え、光拡散ユニット101によっても被照射面10Aの照度むらの低減が図られている。
【0041】
図11は、擬似太陽光照射ユニット1Aの右半分を示す縦断面図である。また、図12は光拡散部材110、120の構成を示す図であり、図12(A)は擬似太陽光照射ユニット1Aを、拡大した光拡散部材110、120とともに模式的に示す縦断面図であり、図12(B)は被照射面10A側から見た光拡散部材120を示す図である。なお、図11及び図12では、擬似太陽光照射ユニット1Aの光拡散部材110、120が図示されているが、擬似太陽光照射ユニット1B,1Cの光拡散部材110、120も、擬似太陽光照射ユニット1Aの光拡散部材110、120と同一に構成されている。
光拡散ユニット101は、図11及び図12(A)に示すように、ベース板102と、光拡散効果を有する二層の光拡散部材110,120とを備え、被照射面10Aの照度が高い箇所に向かう光を光拡散部材110,120が拡散することで、被照射面10Aで照度分布を均一化する。
これらベース板102、及び光拡散部材110,120には、擬似太陽光照射ボックス6が放射する擬似太陽光のスペクトルを変調しないように、それぞれ擬似太陽光のスペクトル範囲において透過率が一定(フラット)であり、さらに、好ましくは高い透過率を有する材質が用いられている。
【0042】
ベース板102は、光拡散部材110を担持するための上面視矩形状の板状部材であり、自重による撓みが生じない程度の剛性が得られる厚み(例えば、15mm)を有して形成されている。本実施形態のベース板102には、上記材質として、アクリル樹脂が用いられている。なお、この材質にはガラスを用いてもよい。係るベース板102は、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aとの間を完全に仕切るように、枠体4の被照射面10A側に配置されている。
二層の光拡散部材110,120は、それぞれ複数枚の拡散板を積層して構成されており、被照射面10Aとランプ22との間に、距離Dだけ離して配置されている。光拡散ユニット101の光拡散効果、すなわち、被照射面10Aの照度むらの低減の効果は、この距離Dに依存している。本実施形態では、二層の光拡散部材110,120間の距離Dが、複数の反射板30による照度の境界が目立たなくなる距離(例えば、100mm<D≦200mm)に設定されている。
【0043】
次に、各擬似太陽光照射ユニット1A〜1Bへの光拡散ユニット101の取付構造を説明する。
図11及び図12に示すように、各擬似太陽光照射ユニット1A〜1Bには、被照射面10A側及び擬似太陽光照射ボックス6の上方に、擬似太陽光照射ボックス6と平行に延びる断面L字状の光拡散部材受け103が、該擬似太陽光照射ボックス6を挟んだ両側の側面にそれぞれ設けられている。また、被照射面10A側及び擬似太陽光照射ボックス6の上方に、擬似太陽光照射ボックス6と直交して延びる板状の光拡散部材受け104が、該擬似太陽光照射ボックス6の長さ方向において対面する側面にそれぞれ設けられている。
ベース板102及び光拡散部材110は被照射面10A側に設けられた光拡散部材受け103,104に載置され、図示しない抑え金具によって固定され、光拡散部材120は擬似太陽光照射ボックス6の上方に設けられた光拡散部材受け103,104に載置され、図示しない抑え金具によって固定される。
【0044】
次いで、図12を参照し、光拡散部材110、120の構成について詳述する。
被照射面10A側の光拡散部材110は、ベース板102の上面に配置され、複数枚(本実施形態では、2枚)の光拡散板111,112を積層して構成されている。被照射面10A側の光拡散板111は、被照射面10Aを照明する光が通過する照明光通過範囲全体を覆う大きさに形成された板状部材であり、両面に艶消し加工を施したマット状の拡散面を有している。本実施形態の光拡散板111は、厚みが約3mmであり、ベース板102とほぼ同じ光学的特徴を有する素材(本実施形態では、アクリル樹脂)を用いて形成されている。
【0045】
ベース板102側の光拡散板112は、光拡散板111と略同一の大きさに形成された板状部材であり、両面に拡散面を有している。この拡散面の片面はエンボス加工が施されることによりエンボス形状に形成されており、光拡散板112は、エンボス形状を有する拡散面を被照射面10A側に向けて配置されている。すなわち、光拡散板111のマット状の拡散面と光拡散板112のエンボス面とが接触することとなり、光拡散板111の横ずれを防止できる。本実施形態の光拡散板112は、厚みが約205μm、平行光線透過率と拡散光線透過率の比であるヘイズが約50%である素材を用いて形成されている。
【0046】
ランプ22側の光拡散部材120は、複数枚(本実施形態では、4枚)の光拡散板121,122,123A,123Bと、照度場所むら調整用の拡散板である照度調整板124とを積層して構成されている。光拡散板121は光拡散板111と略同一に構成され、光拡散板121の上面には、光拡散板112と略同一に構成された3枚の光拡散板122,123A,123Bがエンボス形状を有する拡散面を被照射面10A側に向けて載置されている。2枚の光拡散板122,123A間には、光拡散板121,122,123A,123Bより小さく形成された照度調整板124が配置されている(図12(B)参照)。照度調整板124は、両面に拡散面を有するとともに、片面にエンボス加工が施された板状部材であり、エンボス面をランプ22側に向けて配置されている。これにより、下側の光拡散板123Aのエンボス面と照度調整板124のエンボス面とが接触することとなり、照度調整板124の横ずれを防止できる。本実施形態では、照度調整板124は、厚みが約270μm、ヘイズが約90%である素材を用いて形成されており、大きさが80mm×400mm、150mm×600mm、80mm×300mmの3枚の照度調整板124が配置されている。
【0047】
このように、比較的光拡散効果の高い照度調整板124を、ランプ22側の光拡散部材120に設けたため、照度調整板124の位置を変えるだけで、被照射面10Aの照度が局部的に高い箇所に向かう光をより効果的に拡散し、照度むらの微調整を容易に行うことができる。これに加え、照度調整板124で拡散した光を被照射面10A側の光拡散部材110でさらに拡散できるので、被照射面10A側の光拡散部材110に照度調整板を配置する場合に比べ、照度むらをより低減できる。また、照度むらに経時変化が生じた場合や、ランプ22を交換して照度むらが変更した場合にも、照度調整板124の位置や大きさを変更することで、照度むらを容易に低減できる。さらに、照度調整板124は、光拡散板122,123の間に配置されているため、照度調整板124を固定する固定具を設ける必要がなくなり、部品点数を削減できる。
このように構成された光拡散ユニット101を有する各擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cは、当該各擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cの正面に位置する被照射面10Aの所定面積(600mm×1200mm程度)において、照度むらを良好に低減することができる。
【0048】
擬似太陽光照射装置200では、有効照射面積が600mm×1200mm程度である3つの擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cを、ランプ22が並列に並ぶように隣接して配設している。なお、擬似太陽光照射ユニット1A,1Bは、長さ方向に延在する補助反射面150Aが配置されない側を対向させて配置され、これら2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1B間に、擬似太陽光照射ユニット1Cが配置されている。
【0049】
また、本実施形態では、擬似太陽光照射ユニット1A,1C間、及び、擬似太陽光照射ユニット1B,1C間に、遮光板130が配置されており、遮光板130は、その上端部131と被照射面10Aとの間に隙間部δを形成するように、被照射面10Aから所定の距離M2だけ離して配置されている。距離M2は、2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1Bによる照度の境界が目立たなくなる距離に設定され、本実施形態では、被照射面10Aからランプ22側の光拡散部材120の下面までの距離に設定されている。
すなわち、遮光板130は光拡散部材110,120の下方に配置されているため、各光拡散部材110,120は、上述のように擬似太陽光照射ユニット1A〜1C毎に形成されてもよいが、擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cに渡って延在する大きさに形成されるのがより望ましい。これにより、擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cの境界部分に光拡散部材110,120が配置されることとなるので、各擬似太陽光照射ユニット1A,1B同士の境界部分に位置する被照射面10Aの箇所において照度むらをより低減できる。
【0050】
図13は、擬似太陽光照射装置200による被照射面10Aの照度むらの測定結果を示す図であり、図13(A)は被照射面10Aの照度分布を示す図であり、図13(B)は被照射面10Aの幅方向の照度を示すグラフであり、図13(C)は被照射面10Aの長さ方向の照度を示すグラフである。
この図に示すように、照度は1.11−1.12SUN(1SUN=1000W/m2)の範囲から1.15−1.16SUNの範囲にあるとともに、この図に示す照度分布から照度むらを計算すると約1.82%という値が得られており、擬似太陽光照射装置200では、被照射面10Aの照度むらを良好に抑制できることが実証された。したがって、本実施形態の擬似太陽光照射装置200によれば、各擬似太陽光照射ユニット1A〜1Cの擬似太陽光照射ボックス6、反射面8、補助反射面150A,150B、及び光拡散ユニット101等の光学設計を変更することなく、有効照射面積を1100mm×2100mm程度まで拡大できる。
したがって、2つの擬似太陽光照射ユニット1A,1B間に、複数の擬似太陽光照射ユニット1Cを並設することで、照射範囲をさらに拡大することができる。
【0051】
但し、上記実施形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施形態では、擬似太陽光照射ユニット毎に枠体を形成したが、複数の擬似太陽光照射ユニットを並設した全体の大きさに合わせて枠体を形成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、遮光板を被照射面から所定の距離だけ離して配置することにより、遮光板の上端部と被照射面との間に隙間部を形成していたが、遮光板を擬似太陽光照射ユニットの側面全体に配置し、遮光板の上端部分に、被照射面から所定の距離の範囲を開放する開放部を形成することにより、遮光板の上端部と被照射面との間に隙間部を形成してもよい。
また、上記実施形態では、複数の擬似太陽光照射ユニットをそれぞれ隣接して並設していたが、擬似太陽光照射ユニットを、若干(例えば、数cm)の間隔をあけて並設してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1A〜1C 擬似太陽光照射ユニット
6 擬似太陽光照射ボックス
6A 下面
6B 上面
8 反射面
10 被照射体
10A 被照射面
22 ランプ(光源)
150A,150B 補助反射面
100,200 擬似太陽光照射装置
130 遮光板
131 上端部
M 距離
δ 隙間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び下面から光を放射する擬似太陽光照射ボックスを納めたユニットであって、前記擬似太陽光照射ボックスの下面の対向位置に反射面を設け、この反射面で上方に反射した反射光、及び前記擬似太陽光照射ボックスの上面から放射する直接光を、前記擬似太陽光照射ボックスの上面の対向位置に設けた被照射面に照射する擬似太陽光照射ユニットを複数備え、
各擬似太陽光照射ユニットを並設するとともに、
擬似太陽光照射ユニット同士の間に、各擬似太陽光照射ユニットの側方に漏れる光を遮光する遮光板を配置しつつ、
前記遮光板の上端部と前記被照射面との間に隙間部を形成し、各擬似太陽光照射ユニット同士の境界部分に位置する前記被照射面の箇所に、前記隙間部を通じて各擬似太陽光照射ユニットの照射光を重ねて照射する
ことを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項2】
前記擬似太陽光照射ボックスは線状の光源を有し、
前記擬似太陽光照射ユニットのそれぞれを、前記光源が並列に並ぶように配設したことを特徴とする請求項1に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項3】
前記擬似太陽光照射ユニットの側方には、前記擬似太陽光照射ボックスの高さ位置から前記被照射面までの間に、入射する光を前記被照射面に向けて反射する補助反射面を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の擬似太陽光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−252814(P2011−252814A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127518(P2010−127518)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】