説明

攪拌分離装置及び攪拌分離方法

【課題】ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物を、容易に攪拌分離することができる攪拌分離装置及び攪拌分離方法を提供する。
【解決手段】ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物の分離を行う攪拌分離装置であって、複数の固体物と液体との混合液が収容される収容槽と、上下方向に延在しモータによって回転駆動される回転軸と、回転軸の下端に取り付けられた攪拌翼と、攪拌翼の回転周囲方向に、攪拌翼を囲むように配置された円筒状ケーシングと、収容槽内の混合液の液面に取出口が配置され、浮力の大きい固体物を取り出す排出手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌分離装置及び攪拌分離方法に関する。特に、浮力の異なる複数の固体物を浮力に応じて分離を行う攪拌分離装置及び攪拌分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックごみを含む家庭ごみ等のごみ混合物からリサイクル可能なプラスチックを回収し、リサイクル成形品の原材料として用いることが行われている。このリサイクル成形品の原材料として用いられるプラスチック廃材を回収するにあたり、有害ガスを発生する塩化ビニル等を除去すること等を目的として、ゴミ混合物を細かく裁断した後、比重の差を利用して分離回収することが一般的に行われている。
【0003】
例えば、複数種類のプラスチック廃材を湿潤処理槽内で湿潤剤溶液中に浸漬させた後、攪拌分別槽に導入して液中で攪拌することにより、プラスチック廃材に付着している気泡を分離させるとともに、略鉛直方向の上昇流を生じさせて、高比重プラスチックと低比重プラスチックとに分別し、ついで、分別された低比重プラスチックを浮上分別槽に導入して浮上分別処理を施し、撥水性の差を利用して低比重プラスチックを分別する樹脂系廃棄物の分別方法及び装置が開示されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−58382号公報 (特許請求の範囲、図7等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、プラスチック廃材を用いてリサイクル成形品を成形する場合、まず、プラスチック廃材を加熱溶融してスラリーを形成した後、このスラリーが金型に流し込まれて固化させられる。このとき、スラリー中に気泡が混入していると、スラリーの密度が低くなって、成形品の強度や外観を低下させる原因となるおそれがある。
一方、家庭ごみに含まれるプラスチックごみには、発泡スチレン等の発泡性プラスチックが含まれている場合が多い。この発泡性プラスチックは、加熱すると発泡する性質を有する材料からできている。そのため、この発泡性プラスチックがリサイクル成形品の材料に混入していると、プラスチック廃材を加熱溶融した際に発泡性プラスチックが発泡してしまい、スラリー中に気泡が混入されやすくなる。そのため、リサイクル可能なプラスチック廃材を回収するにあたり、発泡性プラスチックをできる限り除去することが望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の分別方法は、プラスチック廃材から油化適材(PE、PP、PS)と油化不適材(ABS、PET、PVC)とを分別することを目的としており、発泡性プラスチックを分別除去することについては考慮されていない。発泡性プラスチックが混入していた場合には、攪拌分別処理及び浮上分別処理のいずれの工程においても液面に浮上することになるため、最終的には必ず回収されることになる。したがって、発泡性プラスチックの分離除去がなされないまま、発泡性プラスチックがプラスチック廃材に混入したままリサイクル成形品の原材料として使用されるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物を浮力に応じて分離するにあたり、複数の固体物が混合された液体を、浮力の大きい固体物のみが液体表面に浮上した状態となるように液体を攪拌しながら、浮力の大きい固体物を取り出すように構成することにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物を、容易に攪拌分離することができる攪拌分離装置及び攪拌分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物の分離を行う攪拌分離装置であって、複数の固体物と液体との混合液が収容される収容槽と、上下方向に延在しモータによって回転駆動される回転軸と、回転軸の下端に取り付けられた攪拌翼と、攪拌翼の回転周囲方向に、攪拌翼を囲むように配置された円筒状ケーシングと、収容槽内の混合液の液面に取出口が配置され、浮力の大きい固体物を取り出す排出手段と、を備えることを特徴とする攪拌分離装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0009】
また、本発明の攪拌分離装置を構成するにあたり、取出口の高さを可変とする取出口高さ調節機構を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の攪拌分離装置を構成するにあたり、モータは載置板上に載置され、回転軸はモータの下方側に延在しており、載置板の高さを可変とする載置板高さ調節機構を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明の攪拌分離装置を構成するにあたり、円筒状ケーシングの軸方向の幅と攪拌翼の回転軸方向の幅とが等しいことが好ましい。
【0012】
また、本発明の別の態様は、ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物の分離を行う攪拌分離方法であって、混合物を液体中に投入し、混合物のうちの浮力の大きい固体物のみが液体表面に浮上した状態となるように液体を攪拌しながら、浮力の大きい固体物を取り出すことを特徴とする攪拌分離方法である。
【0013】
また、本発明の攪拌分離方法を実施するにあたり、複数の固体物が、発泡性プラスチックを含む、プラスチック廃材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の攪拌分離装置によれば、攪拌翼の回転周囲方向に、攪拌翼を囲むように配置された円筒状ケーシングが備えられていることにより、混合液が円筒状ケーシング内を上方側から底面側に向けて通過する一方、円筒状ケーシング外では混合液が収容槽の側壁に沿って底面側から上方側に向けて流動する、循環流が発生する。すなわち、攪拌翼の回転に応じた旋回流だけなく、上下方向の循環流も発生する。したがって、混合液の攪拌効果が著しく向上する一方、液面側において旋回流の回転中央部に形成される気相部分の大きさが小さくされる。
したがって、浮力の大きい固体物のみが液面に浮上した状態となるように混合液を攪拌したときに、浮上した固体物が液面の中央部に集められ、取出口が液面に配置された排出手段によって、浮上した固体物が容易に回収される。
【0015】
また、本発明の攪拌分離装置において、取出口高さ調節機構が備えられていることにより、収容槽内の混合液の液面に対応させて取出口の高さが変えられるため、混合物の液面中央部に浮上した固体物が容易に回収される。また、取出口の高さが正確に調節されれば、できる限り液体を伴わないように、浮上した固体物のみを取出すようにすることもできる。
【0016】
また、本発明の攪拌分離装置において、回転軸が接続されるモータが載置された載置板の高さの調節機構が備えられていることにより、攪拌翼及び円筒状ケーシングの高さ位置が制御され、混合液の流動状態を調節することができる。
【0017】
また、本発明の攪拌分離装置において、円筒状ケーシングの軸方向幅を攪拌翼の軸方向幅と一致させることにより、混合液の残量が少ない場合であっても、円筒状ケーシングの上部開口を混合液中に浸漬させることができ、循環流を発生させることができる。したがって、混合液の残量が少ない場合であっても攪拌分離装置の使用が可能になる。
【0018】
また、本発明の攪拌分離方法によれば、浮力の大きい固体物のみが液面に浮上した状態となるように混合液を攪拌しながら浮上した固体物を取り出すことにより、固体物の表面に気泡が付着していることによって相対的に浮力の小さい固体物が浮上することがなく、相対的に浮力の大きい固体物を容易に、かつ、確実に回収することができる。
【0019】
また、本発明の攪拌分離方法において、固体物が、発泡性プラスチックを含むプラスチック廃材であることにより、プラスチック廃材に混入する発泡性プラスチックを容易に分離回収することができ、リサイクル成形に適したプラスチック廃材のみを分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照して、本発明の攪拌分離装置及び攪拌分離方法にかかる実施の形態について具体的に説明する。ただし、以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0021】
1.攪拌分離装置
まず、本実施形態で用いられる攪拌分離装置の構成について説明する。
図1及び図2は、本実施形態にかかる攪拌分離装置10の全体構成を説明するための図である。図1は本実施形態の攪拌分離装置10の側面図を示し、図2は図1の攪拌分離装置10を矢印Xの方向に見た正面図を示している。
【0022】
本実施形態にかかる攪拌分離装置10は、鉄等の枠によって構成された支持体11と、モータ13によって回転駆動される回転軸15と、回転軸15の下端に固定された攪拌翼17と、攪拌翼17を囲むように配置された円筒状ケーシング43と、攪拌翼17によって攪拌される混合液が収容される収容槽23と、モータ13が載置された載置台19の高さを可変とする載置板高さ調節機構30と、液面に浮上した固体物を取出す排出手段としての吸引排出装置52等を主たる要素として構成されている。
このうち、収容槽23は、攪拌分離作業時において混合液が排出される排出管22を側面に有するとともに、メンテナンス時等に収容槽23内を空にするための放出口24を底面に有している。この放出口24には放出管26が接続され、この放出管26には放出口24を開閉するバルブ25が備えられている。
【0023】
また、モータ13が載置される載置台19の周縁部には廃プラ混合液を収容槽23に導入するための導入開口(図示せず。)が設けられており、この導入開口には、例えば、攪拌分離装置が使用される工程の前工程としての塩化ビニル等の比重の高いプラスチックごみを分離する工程で用いられる分離装置の排出口に接続された導入管(図示せず。)が接続されている。
また、載置台19の中央部には開口部19aが設けられ、当該開口部19aには円筒状のモータ固定用治具27が取り付けられている。モータ固定用治具27の上部には、モータ固定用治具27の内部に駆動軸(図示せず)を向けるようにして、モータ13が載置されて固定されている。また、モータ13の駆動軸には、モータ固定用治具27の内部を介して下方側から挿通された回転軸15が連結されている。この回転軸15は下方側に延在し、下端部には攪拌翼17が固定されている。
【0024】
また、モータ固定用治具27のうち、載置台19よりも下方側に位置する箇所には整流ケーシング40が取り付けられている。図3は、本実施形態の攪拌分離装置10に用いられている整流ケーシング40を示す斜視図である。
この整流ケーシング40は、下方の円筒状ケーシング43とその中間に配置された回転軸ブレ止め47とを含む構成となっており、互いに三本の連結部材45に溶接され固定されている。また、連結部材45の上方側の端部が、モータ13等が載置された載置台19にボルト等によって固定されることによって、整流ケーシング40が固定されている。
【0025】
このうち、円筒状ケーシング43は、攪拌翼17の直径よりも大きい直径の内部孔43aを有する円筒状の部材であって、図4に示すように、攪拌翼17を回転させることによって円筒状ケーシング43内から底面側に向かう液体の下降流S1を強められるようになっている。円筒状ケーシング43によって強められた下降流S1は、底面から側壁に沿って流動し、液面付近に到達すると今度は円筒状ケーシング43の上部開口から円筒状ケーシング43内に導かれるようになる。すなわち、収容槽23内の混合液に対して、攪拌翼17の回転による回転軸15を中心とした旋回流Tだけでなく、円筒状ケーシング43の内部を下降する一方、円筒状ケーシング43の外部では上昇する循環流Sを発生させることができるようになる。
【0026】
このように、本実施形態の攪拌分離装置10では、収容槽23内の混合液に、旋回流Tだけでなく循環流Sを発生させることができるため、混合液の攪拌効果を著しく向上させることができる。
また、この循環流Sは、液面付近では、収容槽23の周囲の壁面側から中央の気相部分Aに向かって流れるようになるため、旋回中心に形成される気相部分Aの大きさは小さくされている。また、この循環流Sは、液面付近で、収容槽23の周囲の壁面側から中央の気相部分Aに向かって流れた後、今度は、下方側の円筒状ケーシング43に向かって下降していくため、液面に浮上する固体物は、気相部分Aに集まるようになる。
【0027】
この円筒状ケーシング43によって循環流Sを発生させるためには、混合液の液面を円筒状ケーシング43の上端部よりも上方に位置させておく必要がある。そのため、収容槽23内の混合液の収容量が少ない場合には、円筒状ケーシング43の上端部が、収容槽23の底面から近い位置にあるとよいため、円筒状ケーシング43の軸方向の幅はできるだけ小さくすることが好ましい。ただし、円筒状ケーシング43よりも攪拌翼17の軸方向の幅の方が大きくなって、攪拌翼17が円筒状ケーシング43からはみ出すと、混合液の旋回流Tが強くなってしまい、上述の循環流Sが弱くなって、十分に攪拌させることができなくなるおそれがある。
【0028】
図1及び図2に示す本実施形態の攪拌分離装置10の例では、円筒状ケーシング43の軸方向の幅と攪拌翼17の軸方向の幅とが等しくされている。そのため、収容槽23内に収容された混合物の量が少ない場合であっても、混合物の攪拌効果が高められる。
【0029】
また、図3に示す整流ケーシング40のうちの回転軸ブレ止め47は、中央に回転軸の挿入孔47aを有するブレ止め部47bと、三本の連結部材45に対してブレ止め部47bを固定する三つのブレ止め支持プレート47cとを備え、円筒状ケーシング43の上部に配置されている。ブレ止め部47bの挿入孔47aには回転軸15が挿入され、回転軸15が回転駆動される際に回転ブレが生じないように支持され、安定した回転駆動が行われる。
また、ブレ止め部47bを連結部材45に固定する三枚のブレ止め支持プレート47cによって、円筒状ケーシング43の上方空間が三つの領域に区切られているために、上述の循環流Sが円筒状ケーシング43内に流入する際に整流され、円筒状ケーシング43内で下降流がより発生しやすくなっている。
【0030】
図1及び図2に戻り、本実施形態の攪拌分離装置10には、モータ13が載置された載置台19の高さを可変とする載置板高さ調節機構30が備えられている。本実施形態の攪拌分離装置10に備えられた載置板高さ調節機構30は、ホイストクレーン31とチェーンワイヤー33とを用いて構成されている。チェーンワイヤー33の先端にはフック35が設けられ、当該フック35が載置台19に連結されており、ホイストクレーン31によってチェーンワイヤー33を巻き上げたり、逆に下ろしたりすることによって載置台19を上昇又は下降させることができる。載置台19を支持する載置台支持治具37は、上下方向に組まれた支持体11によって上下方向に移動可能にガイドされる。
【0031】
ただし、載置板高さ調節機構30の構成については特に限定されるものではなく、ラック及びピニオンギアを用いた構成としたり、あるいはモータやエアシリンダ等を用いた構成としたりすることができる。
このような載置台19の載置板高さ調整機構30を備えていることによって、攪拌翼17及び整流ケーシング40の高さ位置を調節することができるため、形成される攪拌流の流れを液体の容量に合わせて制御することができるようになる。また、収容槽23内の清掃作業を行う際には載置台19を上昇させることができるため、収容槽23内の清掃が容易になる。
【0032】
また、本実施形態の攪拌分離装置10には吸引排出装置52が備えられており、当該吸引排出装置52に接続された吸引管53の先端の取出口53aが、収容槽23内の混合液の液面近傍に配置されている。この吸引排出装置52は、混合液を攪拌する際に浮上する、複数の固体物のうち浮力の大きい固体物を吸引して収容槽23外へ取出すものである。この吸引排出装置52は、図示しないサイクロン装置に接続され、吸引した固体物と、同時に吸引された液体とが分離されて、回収される。
具体的には、攪拌分離装置10のモータ13を駆動して、収容槽23内の混合液を攪拌して、旋回流及び循環流を発生させたときに、モータ13の回転数がある回転数になると、ともに液体上に浮上する複数の固体物のうちの、浮力が小さい方の固体物は液体とともに旋回及び循環する一方、浮力が大きい方の固体物は液面上に浮上する状態になる。上述のように、本実施形態の攪拌分離装置10の場合、収容槽23内には旋回流だけでなく循環流が発生するため、旋回中央の気相部分が小さくなるとともに、浮上した固体物が旋回中央の気相部分に集まるようになる。この攪拌分離装置10は、この浮力の大きい固体物が集まった気相部分に吸引管53の取出口53aを近づけて配置した上で吸引排出装置52を稼動させることにより、浮力の大きい固体物を吸引して取出すことができる。
吸引排出装置52としては、例えば吸引ポンプが用いられる。
【0033】
また、吸引管53の取出口53aの形状は、少なくとも収容槽23内の液体の流れを阻害することがなく、また、吸引排出装置52の吸引力によって浮上した固体物を吸引することができるものであれば、特に制限されるものではない。一例としては、取出口を図5(a)〜(d)のように構成することができる。
このうち、図5(a)〜(b)は、吸引管53の先端部分の開口面が単に水平面あるいは傾斜面となるように構成された取出口53aA、53aBであり、開口面が傾斜面となるように構成される取出口53aBの場合には、液面に近くなる部分が、収容槽内の液体の旋回方向下流側に位置するように配置される。
また、図5(c)及び(d)は、吸引管53の先端部分において、収容槽内の液体の旋回方向上流側を開口した構成の取出口53aC、53aDであり、取出口53aCは下流側の部分が鍬状に構成され、取出口53aDは吸引管53の先端部分が扁平にされるとともに、タンク内の液体の旋回方向下流側の部分が、両端部分が突出する円弧状に構成されたものである。
【0034】
また、吸引管53は、ボルト(図示せず。)によって締め付けられるリング状の固定部55によって、モータ固定用治具27に固定されている。この固定部55は、ボルトを緩め、吸引管53の固定部分を変えることによって、先端の取出口53aの高さを調節することができる。したがって、収容槽23の内部に投入した混合液の攪拌を行っている際の液面の高さ位置に応じて取出口53aの高さを調節することができ、液体や浮力の小さい固体物をできる限り含まない状態で、浮上した固体物を吸引して排出することができる。
【0035】
また、本実施形態の攪拌分離装置10に備えられた部品のうち、モータ13、回転軸15、攪拌翼17、整流ケーシング40、吸引排出装置52、吸引管53等については、すべてフッ素樹脂によるコーティングがなされている。したがって、離形性に優れており、付着した液体を容易に洗い流すことができ、清掃作業を効率的に行うことができる。
【0036】
2.攪拌分離方法
次に、図1で示した攪拌分離装置10を用いて行われる攪拌分離方法について、リサイクル適材プラスチックP1(水よりも比重の小さいポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等)中に発泡性プラスチックP2が混入しているプラスチック廃材Pから発泡性プラスチックP2を取出す方法について説明する。
【0037】
まず、図6(a)に示すように、リサイクル適材プラスチックP1及び発泡性プラスチックP2を水中に混ぜた廃プラ混合液を、載置台19の導入開口を介して収容槽23内に投入する。この状態では、リサイクル適材プラスチックP1及び発泡性プラスチックP2ともに水面に浮上した状態となる。このとき、収容槽23の排出管22からは廃プラ混合液が排出されないようになっている。
【0038】
次いで、モータを駆動して廃プラ混合液を攪拌し、図6(b)に示すように、相対的に浮力の小さいリサイクル適材プラスチックP1が水とともに収容槽23内を旋回及び循環する一方、相対的に浮力の大きい発泡性プラスチックP2のみが浮上した状態を作る。
このような状態にするためには、収容槽23内の状態を確認しながらモータの回転数を調節するようにしてもよいし、あるいは、このような状態になるようなモータの回転数をあらかじめ設定しておくようにしてもよい。
【0039】
次いで、図7(a)に示すように、吸引管53の取出口53aの高さを調節し、発泡性プラスチックP2が集められた、廃プラ混合液に形成された気相部分Aに取出口53aを近接させる。
なお、収容槽23に投入する廃プラ混合液の量を規定量にするとともに、この廃プラ混合液が攪拌された状態での気相部分Aの液面の位置をあらかじめ確認し、取出口53aの高さをあらかじめ設定しておいてもよい。
【0040】
次いで、図7(b)に示すように、吸引排出装置52を作動させ、気相部分Aの水面に浮上している発泡性プラスチックP2を吸引し、収容槽23内から排出する。
一旦収容槽23内に旋回流及び循環流が発生し、浮上した発泡性プラスチックP2の回収が開始されると、あとは、図8に示すように、収容槽23の排出管22から廃プラ混合液が排出されるようにしつつ、廃プラ混合液の排出量に応じて連続的に廃プラ混合液を導入することによって、浮力の大きい発泡性プラスチックP2の回収が連続的に行われる。排出管22に流された廃プラ混合液は、次工程に搬送される。
【0041】
このように行われるプラスチック廃材の攪拌分離方法によれば、ともに水に浮上するリサイクル適材プラスチック及び発泡性プラスチックが混在するプラスチック廃材の中から発泡性プラスチックのみを容易に除去することができる。また、リサイクル適材プラスチックを用いてリサイクル成形品を成形する場合に、プラスチックの破砕物の表面に付着した気泡や異物を除去することを目的としてプラスチックの破砕物を水に混合して攪拌する工程が行われる場合があるが、本実施形態の攪拌分離装置を用いてかかる工程を行うことにより、発泡性プラスチックを除去しつつ優れた攪拌効果が得られ、プラスチックの破砕物の表面に付着した気泡や異物を効率的に除去することができる。
【0042】
なお、廃プラ混合液の導入口及び排出口については、適宜の箇所に設けることができる。また、攪拌分離装置を用いて行われる攪拌分離作業は、上述の実施の形態のように連続的に行うだけでなく、収容槽への廃プラ混合液の導入、攪拌分離、廃プラ混合液の排出の各工程を繰り返し行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明の攪拌分離装置及び攪拌分離方法によれば、攪拌翼の回転周囲方向に、攪拌翼を囲むように配置された円筒状ケーシングを備えることにより、収容槽内の混合液に旋回流及び循環流を生じさせ、相対的に浮力の大きい固体物を液面中央に浮上させることができる。また、液面中央に取出口が設けられた排出手段を備えることにより、液面に浮上した固体物を容易に排出することができる。したがって、ともに液体に浮上する浮力の異なる複数の固体物を含む場合であっても、浮力の違いに応じて容易に分離することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態においては、リサイクル適材プラスチックと発泡性プラスチックとが混在するプラスチック廃材を例に採って説明したが、複数の固体物がこれに限られるものでないことは言うまでもなく、ともに液体に浮上する浮力の異なる複数の固体物を含むものであれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態にかかる攪拌分離装置の構成例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる攪拌分離装置の構成例を示す正面図である。
【図3】攪拌分離装置に備えられた整流ケーシングを示す斜視図である。
【図4】収容槽内に生じる旋回流及び循環流を説明するための図である。
【図5】吸引管の取出口の構成例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる攪拌分離方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる攪拌分離方法を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる攪拌分離方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
S:循環流、S1:下降流、T:旋回流、A:気相部分、P1:リサイクル適材プラスチック、P2:発泡性プラスチック、10:攪拌装置、11:支持体、13:モータ、15:回転軸、17:攪拌翼、19:載置台、19a:開口部、22:排出管、23:収容槽、24:放出口、25:バルブ、26:放出管、27:モータ固定用治具、40:整流ケーシング、43:円筒状ケーシング、43a:内部孔、45:連結部材、47:回転軸ブレ止め、47a:挿入孔、47b:ブレ止め部、47c:支持プレート、52:吸引排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物の分離を行う攪拌分離装置において、
前記複数の固体物と前記液体との混合液が収容される収容槽と、
上下方向に延在しモータによって回転駆動される回転軸と、
前記回転軸の下端に取り付けられた攪拌翼と、
前記攪拌翼の回転周囲方向に、前記攪拌翼を囲むように配置された円筒状ケーシングと、
前記収容槽内の前記混合液の液面に取出口が配置され、前記浮力の大きい前記固体物を取り出す排出手段と、
を備えることを特徴とする攪拌分離装置。
【請求項2】
前記取出口の高さを可変とする取出口高さ調節機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の攪拌分離装置。
【請求項3】
前記モータは載置板上に載置され、前記回転軸は前記モータの下方側に延在しており、前記載置板の高さを可変とする載置板高さ調節機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の攪拌分離装置。
【請求項4】
前記円筒状ケーシングの軸方向の幅と前記攪拌翼の前記回転軸方向の幅とが等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の攪拌分離装置。
【請求項5】
ともに液体上に浮上する一方、浮力の異なる複数の固体物の分離を行う攪拌分離方法において、
前記混合物を前記液体中に投入し、前記混合物のうちの浮力の大きい前記固体物のみが前記液体表面に浮上した状態となるように前記液体を攪拌しながら、前記浮力の大きい前記固体物を取り出すことを特徴とする攪拌分離方法。
【請求項6】
前記複数の固体物が、発泡性プラスチックを含む、プラスチック廃材であることを特徴とする請求項5に記載の攪拌分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−46635(P2010−46635A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214910(P2008−214910)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000150512)株式会社仲田コーティング (40)
【Fターム(参考)】