説明

攪拌装置

【課題】 有機性廃棄物の粉砕を良好に行いことができ、かつ、有機性廃棄物の移動、攪拌を自由度高く行いうる構成を提供する。
【解決手段】 プラント200内には、自走移動体7が往復移動可能に構成されており、この自走移動体7には、回転軸50Aを中心として正転方向及び反転方向の両方向に回転駆動可能に取り付けられた回転体50と、この回転体50から突出して設けられる複数の爪部60とを備えた攪拌部9が設けられている。爪部60の先端部には、回転体50の正転時に有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う正転用耕耘爪63と、反転時に有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う反転用耕耘爪65とが回転体50の回転方向に沿って互いに対向して配されている。そして、正転用耕耘爪63には、反転用耕耘爪65が配される側とは反対側の周縁部に第1刃部63Aが形成され、反転用耕耘爪65には、正転用耕耘爪63が配される側とは反対側の周縁部に第2刃部65Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性廃棄物の処理プラントとして、例えば、鶏糞等を発酵処理することにより堆肥を生産するプラントなどが提供されている。この種のプラントでは、例えば、有機性廃棄物を収容する処理槽が設けられており、この処理槽の上を自走する攪拌装置によって収容される有機性廃棄物の攪拌を行うようにしている。
【特許文献1】特開2001−47013公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような従来の攪拌装置における爪部(攪拌爪)の例としては、特許文献1における図9ようなT字形のもの、或いは、特許文献1における図4のような略L字形のものが考えられている。しかしながら、前者の形態の爪では、有機性廃棄物の土塊などに大きな力が加わりにくく、粉砕性が不十分となりやすいという問題がある。また、後者の略L字形態のものでは、回転方向が一方向に定められてしまうという問題がある。このように回転方向が一方向に定められてしまうと、正逆自由に回転できないため移動及び攪拌に制約が課せられてしまう。例えば、処理槽内で全体的に満遍なく攪拌処理を行うといったことが難しく、一度に大量の原料を投入した場合などにおいて不利な構成となる。
【0004】
本発明は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、有機性廃棄物の粉砕を良好に行いことができ、かつ、有機性廃棄物の移動、攪拌を自由度高く行いうる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<請求項1の発明>
請求項1の発明は、有機性廃棄物の処理プラントに収容された前記有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置であって、
前記プラント内において往復移動可能な移動体と、
前記移動体において所定の回転軸を中心として正反転駆動可能に取り付けられる回転体と、
前記回転体において突出して取り付けられる複数の爪部と、
を有し、
前記爪部の先端部には、前記回転体の正転時に前記有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う正転用耕耘爪と、反転時に前記有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う反転用耕耘爪と、が前記回転体の回転方向に沿って対向して配されており、
前記正転用耕耘爪は、前記反転用耕耘爪が配される側とは反対側の周縁部に第1刃部が形成され、
前記反転用耕耘爪は、前記正転用耕耘爪が配される側とは反対側の周縁部に第2刃部が形成されていることを特徴とする攪拌装置。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の攪拌装置において、
前記正転用耕耘爪は、板状に構成されると共にその板面が前記回転軸と直交する仮想平面に沿うように配される第1縦爪部と、前記第1縦爪部の先端側において前記第1縦爪部の板面と交差する方向に折れ曲がる第1横爪部と、を備え、
前記反転用耕耘爪は、板状に構成されると共にその板面が前記回転軸と直交する仮想平面に沿うように配される第2縦爪部と、前記第2縦爪部の先端側において前記第1横爪部と同じ側に折れ曲がる第2横爪部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の攪拌装置において、
前記第1刃部は、前記反転用耕耘爪が配される側とは反対側に凸となるように湾曲して配されており、
前記第2刃部は、前記正転用耕耘爪が配される側とは反対側に凸となるように湾曲して配されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の攪拌装置において、
前記爪部は、前記回転体に装着される長手状の攪拌棒を有し、
前記攪拌棒の先端部に前記正転用耕耘爪及び前記反転用耕耘爪が装着されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の攪拌装置において、
当該攪拌装置は、前記処理プラントに設けられた処理槽内に収容される前記有機性廃棄物を攪拌するものであり、
前記回転体は、前記処理槽の上方に配され、
前記攪拌棒の先端側が前記処理槽内を移動する構成をなし、
前記正転用耕耘爪及び前記反転用耕耘爪の全体が、前記処理槽内を移動可能とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の攪拌装置において、
前記攪拌棒は、板状に構成されており、その板面が前記回転体の回転軸とほぼ直交する構成をなしていることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の攪拌装置において、
前記回転体の回転軸と直交する面方向において、前記回転体の回転軸から前記正転用耕耘爪における前記回転軸から最も遠い第1最遠部までの距離が、前記回転軸から前記反転用耕耘爪における前記回転軸から最も遠い第2最遠部までの距離と同一とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
請求項1の構成によれば、回転体の正転時には、正転用耕耘爪に設けられた第1刃部によってプラント内に収容された有機性廃棄物の粉砕、攪拌が良好になされ、反転時には、反転用耕耘爪に設けられた第2刃部によって有機性廃棄物の粉砕、攪拌が良好になされることとなる。即ち、正反転いずれの場合においても、刃部によって有機性廃棄物の切断・粉砕処理がなされるため、大きな塊の粉砕が良好に行われ、粒の均一化が効果的に図られることとなる。
また、正転用耕耘爪と反転用耕耘爪とが回転方向に沿って対向して設けられているため、正転時には、正転用耕耘爪の移動した軌跡を追うように反転用耕耘爪が移動することとなり、反転用耕耘爪が有機性廃棄物と緩衝しにくくなる。逆に、反転時には、反転用耕耘爪の移動した軌跡を追うように正転用耕耘爪が移動することとなるため、正転用耕耘爪は有機性廃棄物と緩衝しくくなる。つまり、正反転いずれの場合においても、一方の耕耘爪によって有機性廃棄物を良好に粉砕、攪拌でき、他方の耕耘爪が攪拌の妨げにならなくなるため、有機性廃棄物の処理を自由度高く良好に実現できる好適構成となる。
【0013】
<請求項2の発明>
請求項2の構成によれば、正転用耕耘爪において、回転軸から遠ざかる側に延びると共に板状形態をなし、かつその板面が回転軸と直交する仮想平面に沿うように配される第1縦爪部が設けられ、反転用耕耘爪において、回転軸から遠ざかる側に延びると共に板状形態をなし、かつその板面が回転軸と直交する仮想平面に沿うように配される第2縦爪部が設けられているため、正転方向及び反転方向のいずれにおいても有機性廃棄物を良好に粉砕できる構成となる。
また、第1縦爪部の先端側において第1縦爪部の板面と交差する方向に折れ曲がる第1横爪部が設けられ、第2縦爪部の先端側において第1横爪部と同じ側に折れ曲がる第2横爪部が設けられているため、掻き起こした有機性廃棄物を反転しやすくなる。
【0014】
<請求項3の発明>
請求項3の構成によれば、第1刃部及び第2刃部により正転方向及び反転方向のいずれにおいても有機性廃棄物の土塊に効率的に力が作用しやすくなり、より良好に土塊の切断、粉砕がなされることとなる。
【0015】
<請求項4の発明>
請求項4の構成によれば、正転用耕耘爪及び反転用耕耘爪の全体が有機性廃棄物内に潜り込むような場合であっても、回転体に生じる抵抗を効果的に抑えることができる。即ち、大量の有機性廃棄物を攪拌する場合であっても、回転体自体が有機性廃棄物に接触しにくくなり、回転体に負荷がかかりにくくなる。
【0016】
<請求項5の発明>
請求項5の構成によれば、処理槽上端に至るまで目一杯有機性廃棄物を収容した場合であっても、回転体に有機性廃棄物が接触しにくく、処理槽内の有機性廃棄物に対し攪拌棒及び耕耘爪を利用して回転抵抗を大きくすることなく効率的に攪拌を行うことができる。
【0017】
<請求項6の発明>
請求項6の構成によれば、攪拌時に攪拌棒に負荷がかかりにくい好適な構成となり、回転に伴う抵抗をより一層軽減できる。
【0018】
<請求項7の発明>
請求項7の構成によれば、回転体が正転方向及び反転方向のいずれに回転する場合であっても、正転用耕耘爪の回転軌跡の最外縁と反転用耕耘爪の回転軌跡の最外縁とが一致することとなり、粉砕・攪拌を行う耕耘爪ではない他方の耕耘爪(即ち、粉砕・攪拌を行わない側の耕耘爪)に有機性廃棄物が作用しにくくなる。従って、粉砕・攪拌を予定していない耕耘爪が有機性廃棄物に接触することに起因する爪部や回転体の負荷を効果的に減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図面を参照しつつ説明する。
図1は、有機性廃棄物の処理プラントの一部を概念的に説明する説明図である。なお、図1ではプラントの壁や天井は省略して示している。図2は、本実施形態に係る攪拌装置をレール45や処理槽5などと共に示す側面図である。なお、図1、図2では、一部の爪部60のみを示し、残りの爪部の図示は省略している。
1.全体構成
本実施形態の攪拌装置1は、有機性廃棄物の処理プラント200(以下、単にプラント200とも称する)に収容された有機性廃棄物を攪拌する装置として構成され、発酵処理を行うための処理槽5に敷かれたレール5A上を往復移動するものである。
処理槽5は、上部を開放した概ね長方形の箱形であり、例えばコンクリートによりその側壁及び底壁が形成されている。
なお、以下の説明では、処理槽5において攪拌装置1の移動方向の一方側の端部を一端部5B、他方側の端部を他端部5Cとする。この処理槽5は、例えば、いずれかの領域に鶏糞等の有機性廃棄物を投入し、この有機性廃棄物を攪拌しながら一端側に移動させたり、或いは攪拌しながら他端側に移動させるなどして、投入された有機性廃棄物を攪拌し、均一化できるようになっている。即ち、堆積する有機性廃棄物を両方向に攪拌・移動させることのできる往復攪拌可能な構成となっている。以下、この攪拌装置1の具体的構成について説明する。
【0020】
攪拌装置1は、処理槽5の両側壁に、一端部5Bと他端部5Cとの間で敷設された一対のレール5A上に沿って往復走行する自走移動体7と、これに備えられた攪拌部9を備えてなる。ダンプカーなどによって山状に投入された有機性廃棄物は攪拌部9によって攪拌されながら掬い上げられ、一端側から他端側、或いは他端側から一端側へ移動するようにされている。つまり両方向に移動可能となっている。
【0021】
自走移動体7は、鋼材などからなるフレーム23と、このフレーム23の四隅に回動可能に支持され、図示しないモータにより駆動される4つの走行車輪27とを備える。なお、モータの動力はチェーン(図示略)により走行車輪27に伝達されている。そして、自走移動体7は、図示しない制御装置によってそのモータを駆動制御することによって一端側に向かう第1方向、及び他端側に向かう第2方向に往復移動可能とされている。
【0022】
フレーム23には、台部23Aが設けられている。台部23Aには、アーム部材31が、その基端部を軸として上下に回動するように取り付けられている。詳細にはアーム部材31は、台部23Aの両側からほぼレール5Aの幅を開けつつ下流方向に向かって互いに平行となるように延び、ヒンジ24を介して取り付けられている。これにより、アーム部材31は、ヒンジ24を中心として回動し、攪拌部9がやや上方に位置する上昇位置と、図1、図2にて示すような下降位置との間で上下に変位するようにされている。
【0023】
攪拌部9の回転体50(図5)は、アーム部材31の上面に固定された取付台32上のモータ33によりチェーン34を介して駆動されるようになっている(例えば、約150rpmで回転する)。
【0024】
攪拌部9は、アーム部材31に取り付けられた油圧シリンダ35によって昇降可能とされている。すなわち、油圧シリンダ35は、その両端部を回動可能に軸受けされつつ、アーム部材31とフレーム23とを結ぶように取り付けられている。油圧シリンダ35が伸びた状態で、後述する攪拌部9の爪部60が、処理槽5の底部付近から離間するようにされており、油圧シリンダ35が縮んだ状態では、攪拌部9の爪部60の先端が処理槽5の底面付近まで下がるようにされている。なお、攪拌部9は後述するように下がった位置で回転駆動するように制御されている。また、台部23Aには、その上面に油圧シリンダ35を駆動するための油圧ポンプユニット(図示略)が備えられている。
【0025】
さらに、フレーム部23は、配線コード43を保持するためのコード保持フレーム23Bを有している。フレーム部23Bは、台部23Aから上方に突出するように立設されている。攪拌装置1の配線コード43は、コード保持フレーム23Bに沿って保持されている。
【0026】
また、処理槽5の上方には自走移動体7の移動方向に延びるレール45が設けられ、このレール45には、複数のスライダ47がレール45をスライド移動可能に取り付けられている。配線コード43は、コード保持フレーム23Bの先端からは複数のスライダ47のフック47Aに蛇行するように掛けられて図示しない制御装置に接続されている。
【0027】
2.爪部の構成
次に、図3ないし図5を参照し、爪部及びその付近の構成について説明する。
図3は、本実施形態の攪拌装置1に用いる爪部を例示する側面図であり、図4は、その正面図である。図5は、攪拌装置1に用いる回転体を例示する斜視図である。
上述したように、プラント200内には、上述の自走移動体7(自走移動体7は、特許請求の範囲でいう移動体に相当する)が往復移動可能に備えられておりこの自走移動体7には、上述の攪拌部9が、複数の爪部60を備えた形態で設けられている。攪拌部9は、自走移動体7において回転軸50Aを中心として正転方向及び反転方向の両方向に回転駆動可能に取り付けられた回転体50と、この回転体50から突出して設けられる複数の爪部60とを備えた構成となっている。
【0028】
爪部60を保持する回転体50は、図5に示すように、回転軸50Aに沿った長手状に構成され、軸状の回転基部52と、この回転基部52から放射方向に延びるように回転基部52に固定される複数の取付部51を備えている。複数の取付部51は、回転基部52の全幅にわたるように配されており、爪部60が回転体50の幅方向(本実施形態では回転軸50Aの方向を幅方向とする)において満遍なく配されるようになっている。取付部51には、図3、図4に示す爪部60の攪拌棒61がネジ等の締結部材などによって固定されるようになっている。なお、図1、図2に示すように、爪部60の全体の長さは、攪拌部9が下がった下降状態で、処理槽5の底壁に摺接する程度、或いは底壁からわずかに離れる程度とされている。
【0029】
図3、図4に示すように、爪部60の先端部には、回転体50の正転時に有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う正転用耕耘爪63と、反転時に有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う反転用耕耘爪65と、が回転体50の回転方向に沿って互いに対向して配されている。なお、本実施形態では、図1、図2において時計回り方向を正転方向としており、反時計回り方向を反転方向としているが、逆としてもよい。この場合、正転用耕耘爪と反転用耕耘爪の関係も逆となる。
【0030】
正転用耕耘爪63は、反転用耕耘爪65が配される側とは反対側の周縁部に第1刃部63Aが形成され、反転用耕耘爪65は、正転用耕耘爪63が配される側とは反対側の周縁部に第2刃部65Aが形成されている。
【0031】
正転用耕耘爪63は、第1縦爪部63Bと第1横爪部63Cとを備えている。第1縦爪部63Bは、回転軸50Aから遠ざかる側に延びると共に板状形態をなし、かつその板面が回転軸50Aと直交する仮想平面に沿うように配されている。第1横爪部63Cは、第1縦爪部63Bの先端側において第1縦爪部63Bの板面と交差する方向に折れ曲がる構成をなしている。
【0032】
反転用耕耘爪65は、第2縦爪部65Bと第2横爪部65Cとを備えている。第2縦爪部65Bは、回転軸50Aから遠ざかる側に延びると共に板状形態をなし、かつその板面が回転軸50Aと直交する仮想平面に沿うように配されている。また、第2横爪部65Cは、第2縦爪部の先端側において第1横爪部63Cと同じ側に折れ曲がる構成をなしている。
【0033】
また、正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65の先端に配される第1横爪部63C及び第2横爪部65Cは、回転軸50Aの方向にほぼ沿うように、互いに同じ方向を向いて屈曲している。これら正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65は、一般的に、なた爪と呼ばれているものであり、正転用耕耘爪63と反転用耕耘爪65は面Fを中心として対照形状とされている。なお、面Fは、回転軸50Aをその面上に含み、かつ攪拌棒61の中心を通る面のことである。
【0034】
また、第1刃部63Aは、反転用耕耘爪65が配される側とは反対側に凸となるように、第1耕耘爪63の基端側から先端側にかけて湾曲して形成されている。また、第2刃部65Aは、正転用耕耘爪63が配される側とは反対側に凸となるように、第2耕耘爪65の基端側から先端側にかけて湾曲して形成されている。
【0035】
また、第1横爪部63Cは、第1縦爪部63Bから反転用耕耘爪65側に屈曲するように配され、第2横爪部65Cは、第2縦爪部から正転用耕耘爪63側に屈曲するように配されており、第1横爪部63Cと第2横爪部65Cとが互いに対向している。
【0036】
上記のように構成される正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65は、図2、図3に示すように、回転体50の回転軸50Aと直交する面方向において、回転体50の回転軸50Aから正転用耕耘爪63における回転軸50Aから最も遠い第1最遠部63Dまでの距離が、回転軸50Aから反転用耕耘爪65における回転軸50Aから最も遠い第2最遠部65Dまでの距離と同一とされている。
【0037】
つまり、回転体50が正転方向及び反転方向のいずれに回転する場合であっても、回転軸50Aと直交する面方向に関し、正転用耕耘爪63の回転軌跡の最外縁(図2では、一点鎖線Cにて概念的に図示)と反転用耕耘爪65の回転軌跡の最外縁とが一致することとなり、粉砕・攪拌を行う耕耘爪ではない他方の耕耘爪(即ち、粉砕・攪拌を行わない側の耕耘爪)に有機性廃棄物が作用しにくくなっている。従って、粉砕・攪拌を予定していない耕耘爪が有機性廃棄物に接触することに起因する爪部や回転体の負荷を効果的に減らすことができることとなる。
【0038】
また、爪部60は、回転体50に装着される長手状の攪拌棒61を有している。攪拌棒61は、板状に構成されており、その板面が回転体50の回転軸50Aとほぼ直交する構成をなしており、より詳しくは、細長い板状に構成される第1プレート61Aと、第1プレート61に続く、第1プレート61よりも幅が広い板状の第2プレート61Bとを有している。第1プレート61Aと第2プレート61Bは一体部品として形成してもよく、溶接やネジ等の締結部材などによって固定してもよい。そして、攪拌棒61の先端部において、第2プレート61Bの幅方向両端部に正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65がそれぞれ装着されている。
【0039】
また、攪拌装置1では、回転体50が処理槽5の上方に配されており、攪拌棒61の先端側が処理槽5の内部を移動する構成をなしている。一方、正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65は、全体が処理槽内を移動可能とされている。そして、回転体50の回転に伴い、爪部60の先端が有機性廃棄物を攪拌しながら掬い上げ、斜め下方側に落すように作用する。これにより発酵処理に適した高さ約120cmの、処理槽5の長手方向に延びる断面略台形の畝が形成されるとともに、攪拌部9が畝を攪拌する毎に畝が所定距離、例えば2mずつ移動するようになっている。
【0040】
そして、本実施形態の構成によれば、回転体50の正転時には、正転用耕耘爪63に設けられた第1刃部63Aによってプラント内に収容された有機性廃棄物の粉砕、攪拌がなされ、反転時には、反転用耕耘爪65に設けられた第2刃部65Aによって有機性廃棄物の粉砕、攪拌がなされることとなる。つまり、正反転いずれの場合においても、刃部によって有機性廃棄物の切断処理がなされるため、大きな塊の粉砕が良好に行われ、粒の均一化が効果的に図られることとなる。
【0041】
また、正転用耕耘爪63と反転用耕耘爪65とが回転方向に沿って対向して設けられているため、正転時には、正転用耕耘爪63の移動した軌跡を追うように反転用耕耘爪65が移動することとなり、反転用耕耘爪65が有機性廃棄物と緩衝しにくくなる。逆に、反転時には、反転用耕耘爪65の移動した軌跡を追うように正転用耕耘爪63が移動することとなるため、正転用耕耘爪63は有機性廃棄物と緩衝しくくなる。
つまり、正反転いずれの場合においても、一方の耕耘爪によって有機性廃棄物を良好に粉砕、攪拌でき、他方の耕耘爪が攪拌の妨げにならなくなるため、有機性廃棄物の処理を自由度高く良好に実現できることとなる。
【0042】
また、本実施形態の構成では、板面が回転軸50Aと直交する仮想平面に沿うように配される第1縦爪部63B及び第2縦爪部65Bが設けられているため、正転方向及び反転方向のいずれにおいても有機性廃棄物を良好に粉砕できることとなる。
【0043】
さらに、第1縦爪部63Bの先端側において第1縦爪部63Bの板面と交差する方向に折れ曲がる第1横爪部63Cが設けられ、第2縦爪部65Bの先端側において第1横爪部63Cと同じ側に折れ曲がる第2横爪部65Cが設けられているため、掻き起こした有機性廃棄物が反転されやすくなっている。
【0044】
また、第1刃部63Aは、反転用耕耘爪65が配される側とは反対側に凸となるように湾曲して配されており、第2刃部65Aは、正転用耕耘爪63が配される側とは反対側に凸となるように湾曲して配されているため、これら第1刃部63A及び第2刃部65Aにより正転方向及び反転方向のいずれにおいても有機性廃棄物の土塊に効率的に力が作用しやすく、より良好に土塊が切断、粉砕されることとなる。
【0045】
また、攪拌棒61を介して正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65が装着されているため、正転用耕耘爪63及び反転用耕耘爪65の全体が有機性廃棄物内に潜り込むような場合であっても、回転体50に生じる抵抗を効果的に抑えることができる。即ち、大量の有機性廃棄物を攪拌する場合であっても、回転体50自体が有機性廃棄物に接触しにくく、回転体50に負荷がかかりにくい構成となっている。
【0046】
また、処理槽5の上方に回転体50が配されているため、処理槽上端に至るまで目一杯有機性廃棄物を収容した場合であっても、回転体50に有機性廃棄物が接触しにくく、処理槽内の有機性廃棄物に対し攪拌棒61及び耕耘爪を利用して回転抵抗を大きくすることなく効率的に攪拌を行えるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、攪拌棒61は、板状に構成されており、その板面が回転体の回転軸とほぼ直交する構成をなしているため、攪拌時に攪拌棒61に負荷がかかりにくい好適な構成となり、回転に伴う抵抗をより一層軽減できることとなる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0049】
(1)上記実施形態において、有機性廃棄物を発酵処理する場合について説明したが、有機性廃棄物にわら等の混合物を混合したものでも同様に処理することができる。なお、有機性廃棄物は、畜糞に限らず生ゴミであってもよい。
(2)上記実施形態は、攪拌装置1が、処理槽5の一端部5B側に移動する第1方向と、他端部5C側に移動する第2方向とに移動して攪拌する構成、即ち、有機性廃棄物を往復攪拌する構成を例示したが、上記実施形態に係る攪拌装置1を、処理槽5の一端部5B及び他端部5Cのいずれか一方を上流とし他方を下流とするような使用形態にも対応可能できるようにすることができる。つまり、絶えず往復攪拌を行うのではなく、状況によっては片道攪拌を行うようにすることもできる。
例えば、一端部5Bを有機性廃棄物の投入側とし、他端部5Cを発酵後の有機性廃棄物の回収側とするように使用できる。この場合、上流側(一端部5B側)に鶏糞等の有機性廃棄物を投入するようにし、この有機性廃棄物を下流側(他端部5C側)に移動させながら発酵を行い、下流において発酵後の有機性廃棄物(堆肥)を回収するように利用してもよい。この使用形態の場合、下流側に至った後、再び上流側に戻る際には、攪拌部9を上方位置に移動させて保持し(即ちリフトアップし)、攪拌装置1を上流側に移動させるようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態の攪拌装置を用いた発酵処理システムの側面図
【図2】攪拌装置の側面図
【図3】図1の攪拌装置に用いる爪部の側面図
【図4】その爪部の正面図
【図5】図1の攪拌装置に用いる回転体を例示する斜視図
【符号の説明】
【0051】
1…攪拌装置
5…処理槽
7…自走移動体(移動体)
50…回転体
50A…回転軸
60…爪部
61…攪拌棒
63…正転用耕耘爪
63A…第1刃部
63B…第1縦爪部
63C…第1横爪部
63D…第1最遠部
65…反転用耕耘爪
65A…第2刃部
65B…第2縦爪部
65C…第2横爪部
65D…第2最遠部
200…有機性廃棄物の処理プラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物の処理プラントに収容された前記有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置であって、
前記処理プラント内において往復移動可能な移動体と、
前記移動体において所定の回転軸を中心として正反転駆動可能に取り付けられる回転体と、
前記回転体において突出して取り付けられる複数の爪部と、
を有し、
前記爪部の先端部には、前記回転体の正転時に前記有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う正転用耕耘爪と、反転時に前記有機性廃棄物の粉砕及び攪拌を行う反転用耕耘爪と、が前記回転体の回転方向に沿って対向して配されており、
前記正転用耕耘爪は、前記反転用耕耘爪が配される側とは反対側の周縁部に第1刃部が形成され、
前記反転用耕耘爪は、前記正転用耕耘爪が配される側とは反対側の周縁部に第2刃部が形成されていることを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記正転用耕耘爪は、板状に構成されると共にその板面が前記回転軸と直交する仮想平面に沿うように配される第1縦爪部と、前記第1縦爪部の先端側において前記第1縦爪部の板面と交差する方向に折れ曲がる第1横爪部と、を備え、
前記反転用耕耘爪は、板状に構成されると共にその板面が前記回転軸と直交する仮想平面に沿うように配される第2縦爪部と、前記第2縦爪部の先端側において前記第1横爪部と同じ側に折れ曲がる第2横爪部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記第1刃部は、前記反転用耕耘爪が配される側とは反対側に凸となるように湾曲して配されており、
前記第2刃部は、前記正転用耕耘爪が配される側とは反対側に凸となるように湾曲して配されていることを特徴とする請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記爪部は、前記回転体に装着される長手状の攪拌棒を有し、
前記攪拌棒の先端部に前記正転用耕耘爪及び前記反転用耕耘爪が装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の攪拌装置。
【請求項5】
当該攪拌装置は、前記処理プラントに設けられた処理槽内に収容される前記有機性廃棄物を攪拌するものであり、
前記回転体は、前記処理槽の上方に配され、
前記攪拌棒の先端側が前記処理槽内を移動する構成をなし、
前記正転用耕耘爪及び前記反転用耕耘爪の全体が、前記処理槽内を移動可能とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記攪拌棒は、板状に構成されており、その板面が前記回転体の回転軸とほぼ直交する構成をなしていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記回転体の回転軸と直交する面方向において、前記回転体の回転軸から前記正転用耕耘爪における前記回転軸から最も遠い第1最遠部までの距離が、前記回転軸から前記反転用耕耘爪における前記回転軸から最も遠い第2最遠部までの距離と同一とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−69074(P2007−69074A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256361(P2005−256361)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(591196625)株式会社晃伸製機 (7)
【Fターム(参考)】