説明

支持体及び研磨粒子を含む材料を切断及び/又は打抜くための方法

【課題】切断及び/又は打抜きの後にクリアな切断縁部が残り、切断された材料の汚染を招く摩耗が生じず、特に、切断された材料を電池において使用する際に短絡を招く金属摩耗が生じず、かつその際、使用する切断工具が長い寿命及びわずかな鈍化を示す、研磨材料を切断及び/又は打抜くための方法を提供する。
【解決手段】支持体及び研磨粒子を含み、その際、研磨粒子が支持体の内側及び/又は支持体の少なくとも一部の表面上に存在している材料を切断及び/又は打抜くための方法において、材料を切断及び/又は打抜くために、セラミック原料で被覆された切断工具又は打抜き工具、又はセラミック原料からなる切断工具又は打抜き工具、又はそれ以外のセラミック原料を含む切断工具又は打抜き工具を使用することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨材料、即ち、研磨粒子が支持体の内側及び/又は支持体の表面上に存在している材料を切断及び/又は打抜くための方法に関する。本発明は、特に、例えばリチウムイオン電池において使用されるセラミックないしセラミック成分又は酸化物成分を含有を含有するセパレータを切断及び/又は打抜くための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池における使用のために、とりわけ、例えばセラミック成分で被覆されているか又はセラミック成分を含有する支持体物質からなるセパレータが使用される。上記のいわゆるセラミックセパレータのセラミック成分は、酸化アルミニウム(Al23)及び酸化ケイ素(SiO2)並びに他の金属酸化物、例えばBaTiO3、ZrO2又はTiO2からなることができる。支持体物質は、この場合例えばポリマー、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミドからなることができる。セラミック成分は、ポリマー中に導入することもでき(その場合、ポリマーはマトリックスとして作用し、かつ酸化物は充填物として作用する)、また、多孔質ポリマー支持体上に含浸、圧入又は浸透の形で施与することもできる。
【0003】
セラミック又は半セラミック(ハイブリッド)セパレータ又はセパレータとして使用可能なセラミック膜は、例えばWO99/15262号から十分に公知である。前記刊行物から、セパレータ又はセパレータとして好適な膜の製造を引用することもできる。有利に、上記セパレータのための多孔質支持体として、当然のことながら、例えば金属織物のような導電性支持体は使用されない。なぜならば、そのような支持体を使用すると、支持体のセラミック被覆が完全でない場合に内部短絡が生じ得るためである。従って、上記セパレータは有利に非導電性材料からの支持体を有する。
【0004】
近年、セラミック及びポリマーを有するハイブリッドセパレータが開発されている。DE10208277号では、多孔質の電気絶縁性セラミック被覆を有する、ポリマー支持体材料、例えばポリマー不織布をベースとするセパレータが製造されている。
【0005】
かかるセラミックセパレータは、通常、市販の通常の切断工具、例えば、従来の、又は更には刃物用硬質鋼からなる刃を有するスリッター、はさみ、梃状はさみ等を用いて、所望の形状に切断することができる。この場合、切断及び/又は打抜きの際に、部分的に摩耗による著しい材料損失が認められることが不利である。更に、前記使用の際、摩耗のために極めて迅速に刃が鈍化する。その結果、とりわけ切断像がクリアでなくなる。
【0006】
例えば巻体として存在するセラミックセパレータは、リチウムイオン電池におけるその使用のために、必要な寸法に切断される。セパレータの切断及び/又は打抜きは、慣用的な切断工具、例えばはさみ、ナイフ、ポンチ等を用いて行うことができる。この場合、前記の慣用的な工具の製造のために、通常、鋼、例えば特殊鋼、スウェーデン鋼又は粉末冶金高速度鋼が使用される。しかしながら、鋼をベースとする工具を用いたセラミックセパレータの切断及び/又は打抜きによって工具の金属摩耗粉が生じ、これはセパレータ上に付着して残留する。この金属摩耗粉により汚染されたセラミックセパレータは、該セパレータをリチウムイオン電池において使用する際に望ましくない効果を招き得る。例えば、セパレータ上の金属摩耗粉は、電池における電気的短絡を招き得る。短絡はこの場合金属摩耗粉の導電性によっても引き起こされるが、摩耗粉粒子の寸法に基づき前記粒子の貫通又は押潰しが生じた場合にはセパレータの損傷によっても引き起こされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO99/15262号
【特許文献2】DE10208277号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、切断及び/又は打抜きの後にクリアな切断縁部が残り、切断された材料の汚染を招く摩耗が生じず、特に、切断された材料を電池において使用する際に短絡を招く金属摩耗が生じず、かつその際、使用する切断工具が長い寿命及びわずかな鈍化を示す、研磨材料を切断及び/又は打抜くための方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、意想外の様式で、支持体及び研磨粒子を含み、その際、研磨粒子が支持体の内側及び/又は支持体の少なくとも一部の表面上に存在している材料を切断及び/又は打抜くための方法において、材料を切断及び/又は打抜くために、セラミック原料で被覆された切断工具又はセラミック原料からなる切断工具又はそれ以外のセラミック原料を含む切断工具を使用することを特徴とする方法により解決される。
【0010】
本発明による方法における被覆された切断工具の使用は、従来の切断法に対して本質的な改善を意味する。この改善は特に、セラミック充填物又は被覆を有するセパレータ材料、例えばEVONIK社のSEPARION(R)の場合に認められるが、その他の、平面状の、場合により巻かれた、適切に切断されねばならないセラミック原料の場合にも認められる。SEPARION(R)は、リチウムイオン電池のためのセパレータとして使用するための、Al23並びにSiO2からなるセラミック粒子がポリマー不織布の中及び上に導入及び施与されているセラミックポリマー複合材料シートである。その他の研磨材料、例えば研磨紙も、上記切断工具又は打抜き工具を用いて抜群に切断又は打抜くことができる。本発明による使用の利点は、切断像が改善された、即ちクリアであり、摩耗が低減され、刃の摩耗ないしは鈍化がなく、使用する刃の寿命が本質的により長く、切断機のみならず切断された原料も汚染がわずかであり、かつ、原料を電池において使用する際に短絡を招き得る金属摩耗が回避されることである。
【0011】
本発明による方法により切断及び/又は打抜くべき材料は、例えば、プラスチック、多孔質プラスチック、前記プラスチックからなる不織布又は織物、紙又は板紙からなるか、又は前記材料の少なくとも1を含む支持体を含むことができる。しかしながら、切断及び/又は打抜くべき材料は、支持体として、前記材料の少なくとも1を含む積層体を含むこともできる。しかしながら支持体は、例えば、前記材料の少なくとも2からなる積層体であることもできる。
【0012】
支持体は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリアミド(PA;PA不織布、フロイデンベルク)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル(PET)又はポリカーボネート(PC)からのプラスチック繊維の使用下に、ポリマー不織布であることができ、その際、混合物を使用することもできる、膜は、可撓性でありかつ有利に100μm未満の厚さ並びに50g/m2未満の単位面積当たりの質量を有するポリマー不織布を有することができる。従って、有利に支持体は、30μm未満、特に10〜20μmの厚さを有する不織布である。特に有利に、支持体は、20g/m2未満、特に5〜15g/m2の単位面積当たりの質量を有する不織布である。
【0013】
電池、特にリチウムイオン電池において十分に高い導電性を達成し得るために、支持体が50%超、有利に50〜97%、特に有利に60〜90%、極めて特に有利に70〜90%の多孔度を有する場合に有利であることが判明した。多孔度Pはこの場合、不織布の体積(V不織布)−不織布の繊維の体積(V繊維)を全体積V不織布で除したものと定義され、その際、V不織布−V繊維=V空隙である。従って、P=(V不織布−V繊維)/V不織布が成り立つ。この場合、不織布の体積は、不織布の寸法から算出することができる。繊維の体積は、当該不織布の測定質量とポリマー繊維の密度とから求められる。支持体としての使用のためには、不織布中で細孔半径が可能な限り均一に分布していることが重要である。不織布中での可能な限り均一な細孔半径分布によって、所定のサイズの最適に調節された酸化物粒子と一緒に、特に、セパレータとしての使用を考慮して、本発明による膜の最適な多孔度がもたらされる。従って有利に、本発明による膜は、特にセパレータとして使用することのできる膜に関して、細孔の少なくとも50%が100〜500μmの細孔半径を有する細孔半径分布を有する不織布を有する。
【0014】
ポリマー繊維として、不織布は有利に、有利にポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、例えばポリアミド12又はポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)から選択されているポリマーの非導電性の繊維を有する。特に有利に、不織布は、ポリエステル、特にPET及び/又はポリアミド、特にポリアミド12からのポリマー繊維を有するか、又は、完全に前記ポリマー繊維からなる。不織布のポリマー繊維は、有利に0.1〜10μm、特に有利に1〜5μmの直径を有する。
【0015】
加工すべき膜/セパレータは、有利に100μm未満、有利に50μm未満、特に有利に5〜35μmの厚さを有する。セパレータの厚さはセパレータの特性に大きな影響を及ぼす。なぜならば、可撓性のみならず、電解質に含浸されたセパレータの面抵抗も、セパレータの厚さに依存するためである。わずかな厚さによって、電解質を用いた適用におけるセパレータの特にわずかな電気抵抗が達成される。セパレータ自体は絶縁特性を有しなければならないため、セパレータ自体は当然極めて高い電気抵抗を有する。更に、より薄いセパレータは、電池スタックにおける高められた充填密度を許容するため、同一の体積でより多量のエネルギーを蓄積することができる。切断ないし打抜きの際に、そのように薄い粒子含有材料が微視的範囲でクリアな切断面を達成するためには、従来の切断工具又は打抜き工具は好適でない。本発明による方法の切断工具及び/又は打抜き工具によって初めて、そのような再現可能なクリアな切断面及びそれに付随して刃材料の長い寿命が可能となる。
【0016】
しかしながら、支持体として、多孔質プラスチックシートを使用することもできる。片面又は両面にセラミック層を施与した場合、上記特性を有する類似の複合材料が得られる。プラスチック不織布と同様に、プラスチック織物の加工も可能である。文献WO 02/15299号及びWO 02/071509号には、ポリマー−セラミック−コンポジットをベースとするセパレータの製造法が記載されている。ここで、同様に、ポリマー材料からの無機材料の懸濁液が施与される。
【0017】
これとは異なり、例えば電池におけるより高い安全基準を遵守するために、可撓性のセラミックセパレータを使用することができる。かかるセパレータは、例えばDE10208277号、DE10347569号、DE10347566号又はDE10347567号に記載されている。
【0018】
更に、DE19918856A1号には、耐熱性芳香族ポリマーとセラミック粉末とからなるセパレータが記載されており、その際、前記セパレータは、被覆プロセスにおいて織物、不織布、紙又は多孔質シートからなる支持体に施与される。前記セパレータは、セルの許容不可能な高い加熱の際に溶融し、かつ分離エレメントの空隙を閉塞する熱可塑性樹脂を含有することができる。ここで、セラミック粉末の含分は、セパレータの全質量に対して95質量%までである。
【0019】
本発明による方法の有利な実施態様において、支持体はプラスチックからなるか又はプラスチックを含み、かつ研磨粒子の少なくとも一部はプラスチックにより形成されたマトリックス中に包含されている。それとは異なり、支持体は多孔質プラスチックからなるか、又は多孔質プラスチックを含み、その際、研磨粒子の少なくとも一部は少なくとも部分的にプラスチックの細孔中に存在することもできる。研磨粒子は、付加的に、又は専ら、支持体の少なくとも一部の表面上に存在することもできる。
【0020】
典型的なSEPARIONの代表物を製造するためには、有利に、全分散液中のセラミック粒子の割合10〜60質量%、有利に15〜40質量%、特に有利に20〜30質量%を有する分散液が使用される。バインダーに関して、有利に、有機バインダーの割合0.5〜20質量%、有利に1〜10質量%、特に有利に1〜5質量%を有する分散液が使用される。最終製品は、通常、20〜90質量%のセラミック割合を有し、かつ溶剤及び水不含である。
【0021】
本発明の意味における「研磨粒子」とは、相補的な材料よりも高い硬度を有する材料を指すと解釈される。摩耗性は、モース硬さに基づき予測可能である。かかる研磨粒子は、例えば9までのモース硬さを有する酸化物又はセラミック粒子を有することができる。これは、鋼玉、つまり酸化アルミニウムに相応する。本発明の有利な実施態様において、研磨粒子は酸化物又はセラミック粒子であり、かつ少なくとも7、有利に少なくとも8、特に有利に少なくとも9のモース硬さを有する。
【0022】
鉱物学において、モースによる引掻硬さ(モース硬さ)を、鉱物の定性的等級付け及び決定のために使用することができる。これは、鉱物が刃物、又は、強度の圧力で、新たな、風化していない、破断面、劈開面又は結晶面(劈開性を参照)を介して導かれる他の鉱物の進入に抗する抵抗と解釈される。例えば、鉱物Bのモース硬さは、引掻き傷を負わせる鉱物Aのモース硬さと、引掻き傷を負う鉱物Cのモース硬さとの間にある。この場合、モース硬さ値に関して、MhA>MhB>Mhcが成り立つ。モース硬さは、モース硬さ等級1(タルク)及び10(ダイヤモンド)の間の物理的な背景のない無次元の相対比較値である。
【0023】
【表1】

【0024】
上記表から、金属は、比較的低い硬さ(7以下)を有する、即ち、セパレータ材料により引掻き傷を負い得ることが分かる。それにより、刃物の摩耗及び刃の低減された寿命が説明される。従って、刃の硬さがより高いか、又は少なくとも同じであることが必要である。
【0025】
酸化物及び/又はセラミック粒子として、例示的に以下のものが挙げられる:酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ルチル(TiO2)、石英(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化マグネシウム(MgO)、インジウム−スズ−酸化物(ITO)又は更には前記原料の混合物ないし前記原料を含有する混合物。他の非酸化物又は非セラミック研磨粒子(例えば研磨体)は、以下のものであってよい:Si34、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、リン灰石(Ca5(PO43X)、金属(W)。
【0026】
本発明による方法の特に有利な実施態様において、切断ないし打抜くべき材料は、有利に、電気化学的適用、例えば(スーパー)コンデンサ、電池、リチウムイオン電池又はリチウム金属電池における使用が予定されているセラミックセパレータ材料である。
【0027】
本発明の意味における「セラミックセパレータ」とは、上記で定義されたような「研磨粒子」で被覆されているか、又はかかる粒子を含有する、電気化学的適用において使用される通常のセパレータを指すと解釈される。かかる電気化学的適用の例は、コンデンサ、スーパーコンデンサ、電池、リチウムイオン電池及びリチウム金属電池である。
【0028】
本発明による方法の実施態様において、切断及び/又は打抜きに使用する切断工具又は打抜き工具は、セラミック原料で被覆された切断工具又は打抜き工具であってよい。この場合、切断工具又は打抜き工具の表面又は表面の一部は、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、炭化ジルコニウム(ZrC)、窒化ジルコニウム(ZrN)、炭窒化ジルコニウム(ZrCN)、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、窒化クロム(CrN)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、ホウ化チタン(TiB2)又は多結晶の立方晶窒化ホウ素(cBN)からなるか又は主に前記材料を含む1以上の層で被覆されていることができる。1以上の被覆は、金属含有(金属は、特にTi、Cr、WCである)アモルファス炭素から成るか又は主に前記材料を含有することもできる。複数の層が重なり合っている場合、層はそれぞれ又は部分的に、上記材料の異なる材料から成ることができる。
【0029】
1以上の層が、TiC、TiN、TiCN、ZrC、ZrN、ZrCN、TiAlN、Al23、ZrO2、TiO2、金属含有二硫化モリブデン又は金属含有アモルファス炭素からなるか、又は前記材料を含有する場合、それぞれの層を、CVD法、PVD法又はPACVD法により施与することができる。
【0030】
PVD法において、被覆材料、即ち、例えば金属、例えばチタン、ジルコニウム又はアルミニウムの蒸発(蒸着)により、酸化物又は塩、例えば二酸化ケイ素は、高真空中で、固体状態から液状を経てガス状へと移行するまで加熱される。必要な加熱は、高エネルギー電子ビームにより、レーザーにより、又は電気抵抗加熱により、及び層材料(例えばTiAlN)に応じて、ガス(N2、Ar)によっても行われる。前記加熱技術の他に、2つの電極間でアークを点火することにより電極材料を蒸発させるアーク蒸着も使用される。
【0031】
PVD法とは対照的に、CVD法の場合には化学的プロセスが進行する。出発物質(前駆体)から、プロセスの間に初めて、成長させるべき成分が生じる。温度は前記プロセスの場合200〜2000℃である。エネルギー供給に応じて、熱的−、プラズマ−、光子−又はレーザー活性化気相成長と呼称される。個々のガス成分は、キャリヤガスを用いて1〜100kPaの圧力で反応室に導通され、該反応室で化学反応が生じ、ここで形成された固体成分が薄膜として成長する。例えば、2TiCl4+2NH3+H2→2TiN+8HCl。揮発性副生成物は、キャリヤガスと共に排出される。化学気相成長によって、支持体(該支持体は温度安定であることが前提となる)は、多数の金属、半導体、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物及び酸化物で被覆されることができる。適用は、とりわけ、例えば窒化チタン、炭化チタン、炭化二タングステンからの摩耗保護層、又は、例えば炭化ニオブ、窒化ホウ素、ホウ化チタン、酸化アルミニウム、タンタル及びケイ化物からの腐食保護層の製造である。前記層は、通常、0.1〜1μmの厚さを有する。
【0032】
結晶性ダイヤモンド層は、メタン1%及び水素99%を含有するプロセスガスから、真空下でかつ高温で成長させることができる。前記層は同様に0.1〜1μmの厚さに達する。
【0033】
前記層の重要な例は、以下の通りである:
窒化チタンアルミニウム(TiAlN):
硬さ:約3300HV
酸化:800℃まで
層厚:数μmまで
被覆温度:180〜450℃
適用の際の温度作用により、酸化アルミニウムが表面上に形成される。これは、卓越した導熱及び材料の極度に高い硬さをもたらす。
【0034】
炭窒化チタン(TiCN):
硬さ:約3000HV
酸化:400℃まで
層厚:数μmまで
被覆温度:300〜450℃
前記材料は極めて高い硬さをもたらす。
【0035】
【表2】

【0036】
1以上の層が、TiC、TiN、TiCN、ZrC、ZrN、ZrCN、TiAlN、Al23、ZrO2、TiO2、金属含有二硫化モリブデン又は金属含有アモルファス炭素からなるか、又は前記材料を含有する場合、それぞれの層を火炎噴霧法により施与することができる。
【0037】
いわゆる火炎噴霧法(該方法は、(金属)未完成製品の表面加工法である)において、刃の金属表面は、高温で、高い硬度を有する材料で被覆される。これは上記の酸化物であってよい。そのために、粉末又は線状の噴霧添加物を、可燃性ガス−酸素(又は別のガスも含む)−火炎中で溶融させ、かつ燃焼ガス単独によって、又は噴霧ガスによる援助により、適当に準備された未完成製品表面上に噴霧する。溶融された噴霧粒子は、凝固し、未完成品表面上に付着し、ここで多少なりともまとまった被覆を形成する。セラミック原料の他に、このようにして金属被覆を製造することもできる。文献:DIN 8522: 1980-09, Fertigungsverfahren der Autogentechnik, Uebersicht.; DIN EN 657: 2005-06, Thermisches Spritzen - Begriffe, Einteilung; Roempp Chemie Lexikon Online, Thieme Verlag.
前記方法によって、極めて多種の、場合より個々に準備された表面、特にそれぞれの寸法の被覆が許容される。それにより、全ての刃−、刃物−又は切断形を効果的に被覆することが可能である。得られた完成製品の層厚は、上記の他のPVD−/CVD−法で得られた層とは対象的に、2桁のμm範囲から数ミリメートルに達する。前記方法により、得ることのできる層厚の選択が拡張され、かつ得られる加工材料の適用可能性(刃及び刃物ないしポンチ)も拡張される。例えば、厚い層の場合には、一方ではよりわずかな摩擦抵抗を示し、かつ他方では、確かに切断ないし打抜くべきより硬度の高い原料に対して僅かな摩耗を示すものの、そのセラミック特性に基づき憂慮のない、より軟質の層を施与することができる。層厚に基づき、工具の寿命はなおも十分に長い。
【0038】
火炎噴霧法において得られた被覆は、本発明による適用のために、付加的な作業工程において、表面の非平坦性を除くために、後処理、即ち、研削及び研磨されるべきである。
【0039】
もう1つの可能性は、1以上の被覆がダイヤモンド又はダイヤモンド状の材料、特に炭素(C)及び立方晶窒化ホウ素(BN)からなることである。
【0040】
ナノ結晶質ダイヤモンド被覆の製造は、通常、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition - CVD)を用いて行われる。いわゆる高温フィラメントCVD(HFCVD)法 −熱的CVD法の代表例− において、ダイヤモンド被覆が施与される。これは、通常の原料の表面加工法である。ナノ−及び/又はミクロ結晶質ダイヤモンド層が得られる。得られた層の製造は煩雑であり(場合により、支持体に対する付着は劣悪である)、それにより極めてコストがかかるが、最良の摩耗保護及びそれと同時に極めてわずかな摩擦値をもたらす。更に、ダイヤモンド層は支持体上にPVD又はパルスレーザー堆積(PLD)により施与することができる。
【0041】
この場合、上記の場合に、被覆された切断工具自体は有利に鋼、例えば1.4034刃物用鋼からなる。
【0042】
支持体として使用可能な鋼は、可能な限り高いアニール温度を有することが望ましい。前記温度は、先行する硬化工程又は他の熱処理からの脆化現象が完全又は部分的に取り除かれる温度である。このような取り除きは、硬質の刃物用鋼においても、PVD又はCVD後処理にとっても望ましくないため、前記温度未満の鋼で処理しなければならない。鋼のアニール温度が高い程、この鋼を、使用の際に、その硬質構造を損失することなく、より高い温度にさらすことができる。
【0043】
典型的に使用される鋼は以下のものである:ドイツの刃物用鋼はX46Cr13(原料番号1.4034、米国記号 AISI 420 C)である。前記鋼は、原料番号によれば高合金化されており、かつ炭素0.46%及びクロム13%を含有する。クロムはフェライト形成体として、一方では弾性及び硬度に寄与し、かつ他方では抗酸化作用を有する(ステンレス)。
【0044】
特に刃物用の刃のために開発された鋼の1つが、Crucible Materials Corp., Syracuse USAの粉末冶金鋼CPM S30Vである。前記鋼は、炭素1.45%、クロム14%、バナジウム4%及びモリブデン2%を含有する。更に、ステンレス鋼を使用することができる:
【表3】

【0045】
本発明による方法の別の実施態様において、切断及び/又は打抜きに使用される切断工具又は打抜き工具は、少なくとも主にセラミック原料(C、ISO 513による略記)又は多結晶質立方晶窒化ホウ素(BN)からなることができる。セラミック原料からなる切断工具又は打抜き工具は、セラミック刃とも呼称される。このために、セラミック未加工鋳造部材が所望の形状に研磨される。そのようにして得られたセラミック刃は、鋼ベースのオリジナルと同様に使用することができる。多結晶質立方晶窒化ホウ素は、層として、いわゆる高圧液相焼結により硬質金属板上に施与されるか、又は塊状物として製造することができ、その際、結合相として窒化チタン又は炭化チタンを利用することができる。
【0046】
本発明により使用可能な刃物用セラミックは、酸化物セラミック(CA)、非酸化物セラミック(CN)、混合セラミック(CM)及び又はホイスカー強化セラミック(CR)であってよい。酸化物セラミックは、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)又は酸化チタン(TiO2)からなることができる。例えば、分散された二酸化ジルコニウム(ZrO2)20%までを含有する酸化アルミニウムをベースとする酸化物混合セラミックも特に好適である。非酸化物セラミックのうち、特に窒化ケイ素(Si34)からなるセラミックが好適である。同様に好適な混合セラミックは、例えば、酸化アルミニウム及び硬質体、例えば炭化チタン、炭化タングステン又は窒化チタンから焼結される。ホイスカー強化セラミック刃は、酸化アルミニウムをベースとする、ケイ素ホイスカー強化セラミック複合材料である。
【0047】
図1は、従来の特殊鋼をベースとする刃物を用いて切断された、約50μm厚のセラミックセパレータを示す。特殊鋼をベースとする刃物は、明らかに認め得る金属摩耗を招く。図1中の目盛りは、図2に示される目盛りに相応する。
【0048】
図2は、本発明によりセラミック刃を有するはさみを用いて切断された、約50μm厚のセラミックセパレータを示す。金属摩耗は、実質的に認められない。セラミック刃を有するスタック切断機又はセラミック被覆されたナイフを用いても、類似の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来の特殊鋼をベースとする刃物を用いて切断された約50μm厚のセラミックセパレータを示す図。
【図2】本発明によりセラミック刃を有するはさみを用いて切断された、約50μm厚のセラミックセパレータを示す図。
【実施例】
【0050】
図1及び2は、例示的に、標準的な切断機(未処理の鋼;図1)及び最適化された切断機(硬化ないしセラミック被覆されたもの;図2)を用いた切断結果を示す。
【0051】
実施例1
少量(数枚)のセラミック含有膜の切断のために、固定の金属テーブル;ゾーリンゲン刃物用鋼からなる、研磨面を有する飾り付き上部刃物及び研磨された下部刃物を有する、Dahle社製の梃状切断機(タイプ00561)の梃状はさみの刃を硬質表面で処理した。上部刃物及び下部刃物を分解及び洗浄した後、PVD法で、表面に窒化チタンアルミニウム(TiAlN)を施与した。厚さ約5μm。
【0052】
厚さ約50μmのSEPARION(R)シートを切断した場合、極めてクリアな切断像が、(図1中と同等の)金属摩耗なしに得ることができた。被覆により、寿命(定義:切断物品質が切断物における亀裂又は溝に基づき本質的に低下した場合に、必要とされる次の研磨までの時間)を5倍超改善することができた。後研磨は予め不要であった。
【0053】
実施例2
SEPARION(R)(厚さ約50μm、幅250mmまでの約100の切断片)のスタックされた層を切断するために、IDEAL社製スタック切断機(6550型)を使用した。付属の刃物を同様に洗浄し、引き続き、TiCNでPVD法で厚さ1μmで被覆する。上記の構成を用いて、上記のSEPARION(R)のスタックを切断した場合、いずれの切断においても切断縁部の変色は認められない。このことはREM−EDX分析によっても確認することができ、その際、汚染は認められなかった。
【0054】
実施例3
セラミックシートSEPARION(R)を、製造者Kyocera社のセラミック製はさみを用いて所望のサイズに適切に切断する。前記工具を用いて、原料をクリアにかつ残滓なく切断することができる。図1に示されているのと同等の金属摩耗なしに、クリアな切断像が認められる。
【0055】
実施例4
直径4cmの円形の穴ゲージを用いて、セラミックシートの円形の破片を打抜く。前記工具を用いて、原料をクリアにかつ残滓なしに切断することができる。図1に示されているのと同等の金属摩耗なしに、クリアな縁部が認められる。
【0056】
比較例1(実施例2に対して)
SEPARION(R)のスタック層を切断するために(厚さ約50μm、幅250mmまでの約100の切断片)、IDEAL社製スタック切断機(6550型)を使用した。かかるスタックSEPARION(R)を付属の刃で切断した場合、切断縁部に既に最初の切断で著しい刃の摩耗が認められる。これは、縁切断部の汚染(灰色の変色)により明らかである。
【0057】
比較例2(実施例3に対して)
セラミックシートSEPARION(R)の摩耗性を明確にするための単純な試験として、該シートを市販の事務用はさみ(硬質刃物用鋼)を用いて個々の層において切断する。切断縁部はクリアでなく、ささくれができ、かつ、切断縁部において、図1において示されている切断縁部と同等の灰黒色の粒子の形の摩耗が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体及び研磨粒子を含み、その際、研磨粒子が支持体の内側及び/又は支持体の少なくとも一部の表面上に存在している材料を切断及び/又は打抜くための方法において、材料を切断及び/又は打抜くために、セラミック原料で被覆された切断工具又は打抜き工具、又はセラミック原料からなる切断工具又は打抜き工具、又はそれ以外のセラミック原料を含む切断工具又は打抜き工具を使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
支持体がプラスチック、多孔質プラスチック、前記プラスチックからなる不織布又は織物、紙又は板紙からなるか又は前記材料の少なくとも1を含むか、もしくは、支持体が前記材料の少なくとも1を含む積層体であるか又は前記材料の少なくとも2からなる積層体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
支持体がプラスチックからなるか又はプラスチックを含み、かつ研磨粒子の少なくとも一部がプラスチックにより形成されたマトリックス中に包含されているか、もしくは、支持体が多孔質プラスチックからなるか又は多孔質プラスチックを含み、かつ研磨粒子の少なくとも一部が少なくとも部分的にプラスチックの細孔中に存在する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
研磨粒子が酸化物粒子又はセラミック粒子であり、かつ少なくとも7、有利に少なくとも8、特に有利に少なくとも9のモース硬さを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
切断及び/又は打抜くべき材料が、有利に電気化学的適用、特に有利にコンデンサ、スーパーコンデンサ、電池、リチウムイオン電池又はリチウム金属電池において使用するためのセラミックセパレータ材料である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
切断及び/又は打抜きに使用するための切断工具又は打抜き工具が、それぞれ相互に無関係にTiC、TiN、TiCN、ZrC、ZrN、ZrCN、TiAlN、Al23、ZrO2、TiO2、CrN、SiC、WC、TiB2、cBN又は金属含有アモルファス炭素からなるか又は主に前記材料を含む1以上の層で被覆されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
TiC、TiN、TiCN、ZrC、ZrN、ZrCN、TiAlN、Al23、ZrO2、TiO2、CrN、SiC、WC、TiB2、cBN又は金属含有アモルファス炭素から成るか又は前記材料を含有する1以上の層が、CVD法、PVD法又はPACVD法により施与されている、請求項6記載の方法。
【請求項8】
TiC、TiN、TiCN、ZrC、ZrN、ZrCN、TiAlN、Al23、ZrO2、TiO2、CrN、SiC、WC、TiB2、cBN又は金属含有アモルファス炭素から成るか又は前記材料を含有する1以上の層が、火炎噴霧法により施与されている、請求項6記載の方法。
【請求項9】
切断及び/又は打抜きに使用する切断工具又は打抜き工具が、ダイヤモンド又はダイヤモンド状の材料からなる1以上の層で被覆されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
切断及び/又は打抜きに使用する切断工具又は打抜き工具が、多結晶質立方晶窒化ホウ素(BN)からなるか、又は刃物用セラミック(C)、特に酸化物セラミック(CA)、非酸化物セラミック(CN)、混合セラミック(CM)又はホイスカー強化セラミック(CR)である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
切断及び/又は打抜くべき材料を、以下:ポンチ、はさみ、ナイフ、カッター、梃状はさみ、スタック切断機、ロール切断機、縦切断装置及び横切断装置を含む系列から選択された切断工具又は打抜き工具を用いて切断及び/又は打抜き、その際、使用する切断工具又は打抜き工具の切断が、場合により直線状、湾曲状、又は円形の切断又は打抜きとして行われている、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の材料を切断及び/又は打抜くための、請求項6から11までのいずれか1項に定義されている切断工具又は打抜き工具の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36336(P2010−36336A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179115(P2009−179115)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】