説明

支持型酸化物触媒の製造方法

本発明は、活性相の一様分布ならびに細孔サイズ全体の制御を伴う均一および制御多孔性の両方を有する触媒を達成するための、触媒的適用のための高品質多孔性支持物質の製造方法を開示する。1つまたは複数の可溶性の活性相前駆体は水または有機溶媒中の不溶性支持相からなるスラリーに付加され、スラリーは破砕されて支持相の粒子サイズを50μm未満に縮小し、加工助剤が破砕の前または後に付加され、細孔形成剤が付加され、スラリーは噴霧乾燥され、圧縮されて細孔形成剤の除去のために熱処理に付される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる活性相分布および制御多孔度を有するペレット触媒を生成するための多用性製造方法に関する。活性相分布および制御多孔度の要件は、対象の触媒反応(適用)の固有の特性により確定され、提唱された方法で調整され得る。
【背景技術】
【0002】
触媒の調製は、同時に制御することが難しい多数の変数により、いくつかのかなり複雑な段階で行われる。
【0003】
慣用的には、大量規模での触媒の調製は、2つの主なアプローチを伴う。第一は、共沈経路を介してである。第二は、初期湿式またはイオン交換技法により、活性相前駆体による予備成形支持体の含浸を介してである。
【0004】
共沈による触媒の調製により、該触媒構成成分が溶液形態で得られ、適切な比率および濃度で混合される。触媒前駆体相、典型的には炭酸塩、水酸化物または酸化物は、触媒溶液に沈殿剤を付加することにより得られる。典型的には、アルカリ金属水酸化物または炭酸塩は、沈殿剤として用いられる。混合、pH制御および温度は、重要なパラメーターである。触媒前駆体スラリーは、熟成されて、より好ましい形態または構造をもたらす。濾過または遠心分離を助成するために凝集剤が付加され得るし、そして固体前駆体が液体相から分離される。
【0005】
前駆体は、望ましくない陽イオンまたは陰イオンを除去するために洗浄される。吸着アルカリ金属イオンを除去するためには、再スラリー化し、そしてイオン交換手法を実行する必要があり得る。前駆体は乾燥され、次に焼成されて、酸化物相を形成する。この段階で、触媒は再スラリー化されて、付加的な相の沈殿を可能にし得る。
【0006】
ペレットが金型圧縮により形成されるものである場合、酸化物は、例えば再スラリー化そして噴霧乾燥により、または流動床もしくはロータリー式造粒機(rotary granulator)により粒状化されて、流動性粉末を生成する。滑剤のような加工助剤が付加され、そして該粒状物がペレットに成形され、その後熱処理が実行されて、該ペレットに所望の強度を与える。
【0007】
含浸による触媒の調製のための基本単位操作を以下に示す:
【0008】
初期湿式含浸:
触媒支持体が形成される。これは、多数の単位操作、例えば支持ペーストの押し出しおよび熱処理、もしくは支持相の粒状化、ペレット化および熱処理を伴う。活性相は、溶液の形態で得られる。支持相は、活性相溶液で含浸される。含浸ペレットは乾燥され、そして熱処理される。
【0009】
活性金属の金属使用量は、溶液中の金属前駆体の濃度を変えることにより制御され得る。高濃度の活性相が望ましいか、あるいは前駆体の溶解度が低い場合、多含浸−熱処理サイクルが必要とされ得る。さらに金属含有量は調整するのが難しい。バイメタル触媒が生成されるべきである場合、多サイクルも必要とされる。この方法の最も重要な段階は、乾燥過程である。活性相の一様分布が望ましい場合、急速乾燥が必要である。これは、大量製造方法では困難であり得る。緩徐乾燥は、ペレットの外側への活性相の分離および非均一活性相分離を引き起こす。これは、この物質の触媒性能に負の影響を及ぼす。
【0010】
イオン交換:
触媒支持体が形成される。該支持体は、活性相の希釈溶液中に浸漬される。pHは、活性相のイオン交換が支持体表面上の表面基と関係して生じる。ペレットは、支持体表面に吸着されていない活性相イオンを除去するために洗浄され、その後、熱処理される。活性相は、ペレット全体に均一に分布する傾向があるが、しかしその濃度は低い。達成され得る活性相の最大濃度は、支持相のイオン交換能力、および/または活性相溶液の飽和溶解度により限定される。
【0011】
酸化物触媒のその他の製造方法も既知である:
【0012】
米国特許第6107238号明細書から、酸化物に富む表面層を有する改良型耐摩耗触媒の製造処理であって、以下の:触媒、触媒前駆体または触媒支持粒子(例えば遷移金属酸化物)、コロイド酸化物ゾル(例えばコロイドシリカ)、ならびに溶媒および溶質の溶液(この場合、溶質は本質的には、5nm以下の粒子サイズを有する上記酸化物に富む表面の前駆体(例えば水性ケイ酸またはポリケイ酸)からなる)を含むスラリーの形成を伴い、次にスラリーを噴霧乾燥して、耐摩耗触媒の多孔性微小球を形成し、そして該噴霧乾燥された微小球を焼成することを包含する処理が既知である。このような触媒は、酸化が酸化型触媒により実施され、その結果生じる還元型触媒が別個に再生される(例えば、再循環固体リアクター、移送床リアクターまたは循環流動床リアクター等において実行される二段階気相処理)酸化過程において特に有用である。
【0013】
米国特許第6130184号明細書は、コバルト含有触媒または触媒前駆体の製造処理であって、(a)(1)二酸化チタンまたは二酸化チタン前駆体、(2)液体、および(3)用いられる量の液体中で少なくとも部分的に不溶性であるコバルト化合物を混合して、混合物を生成し、(b)このようにして得られた混合物を成形し、乾燥して、そして(c)このようにして得られた化合物を焼成することを含む方法を記載する。混合方法は、混合物の固体含量により、捏和(kneading)、混練(mulling)または撹拌であり得る。触媒の成形は、ペレット化、粒状化、押し出し、噴霧乾燥または熱油滴下法であり得る。この方法は、予測可能な特性、特に金属部位の制御分布および多孔性を有する触媒の域に達していない。これらのパラメーターにあわせることは、触媒的適用における最適化性能には不可欠なものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
<本発明の目的>
本発明の目的は、概して触媒の工業規模生産に適した簡単な製造処理を得ることである。さらなる目的は、明確に定義された活性相分布および制御多孔度を有する支持型酸化物触媒を得ることである。別の目的は、NO分解触媒のための再現可能且つ簡単な製造方法を得ることである。さらなる目的は、種々の触媒的方法において生成触媒を利用することである。
【0015】
本発明のこれらのおよびその他の目的は、下記に記載されているような方法で得られる。本発明はさらに、特許請求の範囲により特性化される。
【0016】
したがって本発明は、触媒的適用のための多孔性支持型物質の製造方法であって、1つまたは複数の可溶性活性相前駆体(単数または複数)が、水または有機溶媒中の不溶性支持相からなるスラリーに付加される方法に関する。該スラリーは、破砕されて支持相の粒子サイズを50μm未満に縮小し、破砕の前または後に加工助剤が付加され、細孔形成剤が付加され、スラリーが噴霧乾燥され、圧縮され、そして細孔形成剤の除去のために熱処理に付される。その後、該物質は焼結され、そして水素、還元ガスまたは不活性ガス中で焼結物質を前処理するのが好ましい。
【0017】
好ましくは該スラリーが湿式破砕されて、粒子サイズが0.1〜10μm、好ましくは1μmに縮小される。該スラリーの粘度は、100〜5,000cPに、好ましくは約1,000cPに保たれる。細孔形成剤は、好ましくはセルロース、デンプンまたはポリマー繊維であり、そして300〜400℃で不活性ガス中に希釈された10〜20mbarのOで除去される。加熱速度は、好ましくはできるだけ低く、典型的には1℃/分である。
【0018】
支持相は、好ましくはAl、SiO、ZrO、TiO、ZnO、MgO、MgAl、CoAlおよびCeOから選択されるもののうちの1つまたは複数のものである。活性相金属物質は、遷移金属(例えばCo、Ni、Cu、Fe)、貴金属(例えばPt、Rh、Ru)、ランタニド(例えばLa、Ce)、ならびに安定剤または促進剤として作用し得る周期律表からのその他の元素(アルカリ土類、例えばNa、Mg、K、Cs)、あるいはその他の三価非還元性金属(例えばAl、Ga)から選択される。活性相前駆体は、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、アセチルアセトネート、好ましくは酢酸塩から選択される1つまたは複数のものである。活性相陽イオンは、支持体スラリーへの付加前に有機相と錯体形成され得る。陽イオンの部分錯体形成が、大型結晶の形成を防止するために実行される陽イオンの部分錯体形成を実行することも可能である。付加される加工助剤は、分散剤、結合剤、可塑剤、滑剤、pH調整剤等であり得る。
【0019】
本発明は、NO分解のための多孔性支持型触媒物質の製造方法であって、可溶性コバルト前駆体が水中の酸化セリウムおよび加工助剤のスラリーに付加される方法にも関する。該スラリーは、その後、10μm未満の粒子サイズに破砕され、細孔形成剤が付加され、粘度が約1,000cPに調整された後、スラリーは噴霧乾燥され、その後圧縮され、細孔形成剤が除去されて、生成物が焼結される。ジルコニアおよび/または可溶性アルミニウム化合物が付加され得る。酢酸コバルトが前駆体として用いられるのが好ましい。
【0020】
本方法に従って生成される物質は、例えばNO分解、アンモニア酸化またはメタンの水蒸気改質のための触媒物質として用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0021】
<発明の詳細な説明>
本発明は、触媒的適用のための高品質多孔性支持型物質を調製するための、新規の、簡単な、安価な、再現可能な、多用途且つ規模拡大が容易な方法を記載する。これは、噴霧沈着法(SDM)と呼ばれる。SDMにおける単位操作は、図1における典型的共沈法と比較される。
【0022】
SDMの主な新規性は、以下の多数の触媒調製単位操作を同時に実行するための単一基本単位操作、即ち噴霧乾燥の導入である:
i)一段階で均質に支持体上に単数または複数の金属前駆体を沈着すること。
ii)触媒前駆体を乾燥すること(例えば濾過、遠心分離により下流の固体−液体分離を回避する)。
iii)加工助剤(分散剤、結合剤、可塑剤、滑剤、pH調整剤等)の混和。
iv)易加圧粉末を生成するための粉末の粒状化。
【0023】
活性種およびその支持体が一旦選択されれば、その課題はその特性および特質が工業ユーザーの要求を満たす触媒構造をこれらの活性種の前駆体から構築することである。噴霧沈着法の拡大(scalability)性は、NO分解触媒の生成に関して、相当多量の規模で立証されている。共沈および含浸/イオン交換といった方法は、SDMと比較して、スケールアップ中に重大な技術的問題をもたらす。その他の方法、例えばゾル−ゲル、グラフト(固着)、錯体の異物化(heterogenisation)および沈着−沈殿は、今までのところ、限定量の処方物に適用可能な実験室的好奇心である。これらの経路により合成される触媒は、工業規模では製造されない。
【0024】
可溶性活性相前駆体は、先ず適切な量および濃度で、水またはその他の溶媒中の支持相から成るスラリーに付加される。該スラリーは、連続撹拌媒質ミル中またはボールミル中で湿式破砕されて、支持相の粒子サイズを好ましくは1μm以下に縮小し、したがって安定した分散液を得る。造形のために触媒を調節するための加工助剤、例えば分散剤、結合剤、可塑剤、滑剤およびpH調整剤は、破砕の前または後に付加され得る。破砕後、細孔形成相、例えばデンプン、セルロースまたはポリマー繊維がスラリーに付加される。該スラリーは、噴霧乾燥されて、金型圧縮により形成するのに適した顆粒、即ち50〜400μmのサイズ分布を有する顆粒を形成する。
【0025】
噴霧乾燥中になされる極めて急速な乾燥過程は、噴霧乾燥顆粒全体に均一に支持相の表面上に沈着される活性相前駆体を生じる。この段階は、活性相および前駆体間の密接な接触を発生して、最終触媒中の金属の均質分布をもたらすために重要である。その後、該物質は加圧される。細孔形成物質の除去は、制御大気(不活性ガス、例えばN、HeまたはAr中に希釈された10〜20mbarのO)中で実行されるべきである。酸化大気中の細孔形成相の熱分解は、活性相中の金属により触媒作用を及ぼされ、熱上昇を引き起こす。これは、発熱性であることが既知であるデンプンおよびセルロースの酸化の場合にのみ起こるというわけではない。空気中で加熱される場合でさえ、吸熱的に分解する多数のポリマー加工添加剤、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)は、触媒相と接触して加熱される場合、発熱的に分解する。細孔形成剤の除去のために見出された方法も、本発明内の新規の態様とみなされ、これは一般に触媒製造に適用可能である。この過程の後、該物質は高温で焼結されて、最終触媒をもたらす。噴霧乾燥された顆粒中の活性相の分布の均一性は、最終触媒ペレット生成物中に保たれる。
【0026】
噴霧−沈着法は、慣用的方法より少ない3〜5の単位操作、例えば共沈および含浸を要する(図1参照)。新規の方法におけるいくつかの単位操作は、多目的であり、非常に興味をひくものにする(上記参照)。
【0027】
噴霧−沈着法は、広範囲の支持型触媒の調製を可能にする。唯一の要件は、可溶性活性相および不溶性支持体を有することである。適切な金属前駆体を見出す多数の可能性が存在する。周期律表中の異なる性質の金属元素が用いられ得るが、一方、他の方法はさらなる制限を有する。
【0028】
触媒中に用いられる慣用的支持体(例えばAl、SiO、ZrO、TiO、ZnO、CeO、MgO、MgAl、CoAl)は、この要件を満たす。活性相は、遷移金属(例えばCo、Ni、Cu、Fe)、貴金属(例えばPt、Rh、Ru)、ランタニド(例えばLa、Ce)、ならびに安定剤または促進剤として作用し得る周期律表からのその他の元素(アルカリ土類、例えばNa、Mg)、あるいはAl、Gaから選択される。酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩またはアセチルアセトネートを用いるのが好ましい。噴霧−沈着法の別の特徴は、高分散の構成成分を有する多金属触媒を調整する可能性である。これは、例えば二機能性触媒または反応促進に関してそれを興味をひくものにする。2つの金属塩の古典的同時含浸または連続含浸は、2つの金属間の密接な相互作用に関して要求を満たさないことを立証する。新規の技法が、試みられつつある。全ての場合に、これらの技法は一金属触媒(即ち親触媒)の調製を要求し、これは次に、第二金属の付加により修正される。これらの修正は、親触媒の一金属粒子上でのみ起こる選択的反応を介して起こる。SDMは、単一ポット操作により、この困難な且つ時間を要する調製を打開する簡単な方法を提供して、関与する金属の非常に密接な接触を実現する。
【0029】
支持型バイメタル相の合成のために、噴霧沈着合成経路は、支持体スラリーへの付加の前に、活性相陽イオンを有機相と錯体形成することにより、さらに増大され得る。これは、混合金属酸化物の製造に関して周知のペチーニ法の改変であり、この場合陽イオンは、重合処理を受ける有機分子と錯体形成される。このアプローチは、金属イオンの無作為分散を含有する前駆体相の形成をもたらし、これは次に、噴霧乾燥処理中に支持体上に沈着される。これは、低温での混合酸化物相の形成を可能にする。適切な錯化剤としては、クエン酸、グリシン、EDTA等が挙げられる。
【0030】
活性相濃度が高い場合、乾燥処理中、活性相の大型結晶が顆粒内に発生し得る。これは、小濃度の単座(mono−dentate)錯化剤、例えばトリエタノールアミン(TEA)の付加により回避され得る。その量は、活性相の陽イオンを完全に錯体にするために十分な、好ましくは単一分子の錯化剤のみにより各陽イオンの錯化を可能にするのに十分な量未満であるべきである。陽イオンのこの部分的な錯化の結果は、それが結晶格子の崩壊のため活性相前駆体の大型結晶の形成を防止するということである。
【0031】
SDMは、連続的にまたはバッチで操作するために多用性であり、これは、共沈法を連続的にすることの高需要と対照的である。パイロット規模から全規模製造へのスケーリングは、SDM法に関しては相対的に簡単であり、これは実証されている。最も重要な単位操作であるスラリー破砕および噴霧乾燥は、セラミック加工における標準操作であり、十分に理解されている。
【0032】
噴霧沈着法は、触媒構成成分の均質分布の生成に、あるいは限定化学量論を用いた前駆体の作製に非常に適している。最終触媒は、噴霧乾燥/沈着段階の前および後に、活性相(例えばバイメタル系における)および支持体の良好な接触の結果として、構成成分の小型で分散された混合結晶からなる。共沈も高分散をもたらすが、しかし技術的要求は非常に高く、ならびに沈殿生成物の高品質を追及する難しさおよび全沈殿処理を通して一定の生成物品質を保持する場合の問題を生じる。他の方法と比較した場合の噴霧沈着触媒の優れた性能は、コバルトベースの触媒を上回るNOの分解に関して立証されている。
【0033】
SDM処理はまた、最終触媒のマクロ構造(細孔サイズおよび細孔容積)に最適性能を与えるよう的確に工学処理させる。70%の多孔度を有する強力なペレットが、この方法を用いて生産されている。
【0034】
<触媒製造方法>
「噴霧沈着法」と呼ばれ、特許請求の範囲により定義される触媒製造方法を、以下に記載する。細孔形成相を含有するNO分解触媒の製造を参照しながら、該製造方法が記載される。その他の触媒適用も強調される。触媒のガス運搬特性に及ぼす細孔形成相の作用もまた記載される。その後に、図1に示したSDM法における各単位操作の詳細な説明が、Co−Al/CeO触媒に関して記載されている。
【0035】
<スラリー>
典型的には10〜20μの範囲の凝集体のサイズd50を有する、供給される酸化セリウム粉末を水に付加することにより、酸化セリウムまたはその他の支持相の水性スラリーが調製される。激しく撹拌してスラリーを分散させ、沈殿を防止する。このスラリーに、5〜10重量%水溶液の形態で、ポリビニルアルコール(PVA)が付加される。PVA溶液を加熱して、PVAを溶解することが一般的に必要である。PVAがスラリーに付加された後、それは12時間撹拌される。これは、PVAを酸化セリウムの表面に吸着させる。PVAの役割は2要素ある。スラリー中では、それは酸化セリウムのための立体安定剤として作用して沈殿傾向を減少する。製造における後期で、それは噴霧乾燥された顆粒のための一時的結合剤として作用する。
【0036】
酸化セリウムスラリーに、酢酸コバルト、ヒドロキシ酢酸アルミニウムおよびジルコニアが、激しく撹拌されながら付加される。いくつかの製剤に関しては、硝酸塩またはその他の塩が用いられ得る。スラリーは、ビーズまたは連続撹拌媒質ミルを用いて破砕されて、d50が0.1〜10μ(好ましくは1μ)に縮小されるよう、酸化セリウムの凝集体のサイズを縮小する。これは、沈殿に対して安定であるスラリーを生じ、このことは実用上の利点であり、そしてそれは触媒の改良された均一性により触媒の性能を改良し得る。スラリーの粘度は、100〜5,000cPの間、好ましくは約1,000cPに保たれるべきである。
【0037】
<細孔形成剤>
安定スラリーに、細孔形成相が付加される。10〜15μの平均粒子サイズを有するコーンスターチが用いられた。細孔のサイズは、デンプンの選択により制御され得る。その他のデンプン、例えばコメまたはジャガイモは、それぞれより小さいまたはより大きい細孔を得るために用いられ得る。デンプン以外の細孔形成相もまた用いられ得る。アビセル微晶質セルロースは、SDM技法を用いて、触媒の製造に首尾よく用いられてきた。
【0038】
主に不溶性であり、且つ無機残基を残すことなく熱で分解する任意の物質が用いられ得る。以前は、微晶質セルロースはデンプンの代替物として用いられてきたが、しかしその場合、利点は見出されなかった。ポリマー球または繊維も用いられ得るが、しかしそれらが熱分解前に融解する場合、熱処理において困難が生じ得る。デンプンは、細孔サイズを支配するデンプンの粒構造が保たれるよう、破砕処理後に付加される。スラリーの含水量は、スラリーの粘度が1,000cPであるよう調整される。
【0039】
<噴霧乾燥>
二流体噴霧器および回転噴霧器を用いて、パイロット規模で噴霧乾燥が実行されてきた。フルスケール噴霧乾燥は、回転および高圧の両噴霧器を用いて実行されてきた。各々の場合、重大な問題は認められず、そして良好な、流動性粉末が常に製造された。向流方式で高圧噴霧器を用いる場合、高すぎる注入温度が粉末の発火をもたらすという観察が、全規模製造中になされた。この場合、400℃より高い注入温度が用いられた。向流方式は、感熱材料にとって理想的ではない。したがって注入温度はより低くし、製造の減少をもたらすか、あるいは共流噴霧方式が用いられるべきである。
【0040】
企業内パイロット試験では、注入温度は、スラリーの注入速度により、典型的には250〜180℃であり、流出温度は典型的には105〜110℃の範囲であった。これは、0.2〜0.5%の含水率、ならびに60〜80μのd50を有する平均粒子サイズをもたらした。
【0041】
<圧縮(コンパクション)>
圧縮の前に、0.5%のステアリン酸アルミニウムが噴霧乾燥粉末に付加され、含水量が0.5%〜2%に調整された。これは、フォルベルク(Forberg)ミキサー中で実行された。水はPVAのための可塑剤として作用し、そして最適含水量は的確な触媒処方によっている。酸化セリウムの表面積およびPVAの結合度(grade)は、必要とされる水のレベルに一作用を及ぼす。ペントロニックスPTX612プレス機での一軸方向加圧により、ペレットが圧縮された。5mmまたはそれ以下のペレットに関しては、単一作用金床方式が許容可能であるが、しかし大型ペレット、例えば9mmのminilithに関しては、二重作用のプレス作業が必要とされる。圧縮比(充填深度と圧縮錠剤高の間の比)は、典型的には2.2である。
【0042】
細孔形成剤の除去
加圧後、ペレットは熱処理に付されて、細孔形成相を除去し、その後、それらは焼結されて、完成された触媒ペレットを形成する。細孔形成デンプンを除去するための熱処理は、製造における最も重要な且つ多大な労力を要する工程である。空気中でのデンプン含有ペレットの加熱は、ペレット床中の急速温度上昇およびデンプンの非制御燃焼を引き起こし、これはペレットの完全性に有害作用を及ぼす。窒素中でのペレットの加熱(この場合、少量の空気が付加される)は、デンプン除去を制御する。酸素濃度の範囲は、初期段階で0.1〜0.5体積%である。デンプン除去の全段階で、デンプンの主な分解産物は、酸素含量が0.5%である場合でさえ、COおよび水蒸気である。
【0043】
排ガス中のCOの非存在により立証されるように、デンプンの大部分が除去されれば、酸素含量は20体積%に増大される。デンプンは2つのポリマーからなり1つは約170℃で分解し、そして他方は250〜300℃で分解する。加熱速度は、できるだけ低くあるべきで、典型的には1℃/分である。ペレットは、孔の開いたバスケットに入れられて、窒素−酸素ガス混合物は低いほうからペレットの床を通って流動する。ガスはペレットを通り抜ける前に加熱される。ペレットの温度は、ガスの温度により、そして酸素含量により制御される。操作に際して、床の温度はガス注入温度より酸素含量に対してより感受性であり、したがってこれは、分解中にその温度が制御される手段である。第一段階は、0.1体積%酸素中で170℃までペレットを加熱することである。一旦安定温度が実現されれば、酸素含量は徐々に増大される。反応の進行は、垂直に直列で配置されるバスケット中の温度上昇を観察することにより進められる。最初のデンプンポリマーの分解が一旦完了すると、酸素含量は減少され、そして温度は250℃に上昇される。安定温度が一旦実現されれば、全バスケット中の二次分解過程が完了するまで、酸素含量は再び増大される。反応が観察されなくなるまで、温度は300℃に増大され、そして酸素含量は20%に増大される。バスケットは流動酸素中で一晩冷却される。この処理の総時間は、典型的には2 1/2日である。
【0044】
細孔形成バーンアウト炉(burnout oven)からの除去後、バスケットは垂直加熱管炉中に置かれる。それらは空気中で1℃/分で950〜1,000℃に加熱される。最大温度で6〜12時間後、炉は冷却される。この焼結過程は、典型的には2日を要する。焼結ペレットは完成製品である。
【0045】
以下の実施例により本発明をさらに説明する:。
【実施例】
【0046】
実施例1.
SDMによる活性相および金属負荷の異なる分布を有するCo/CeO触媒の調製
【0047】
実施例1a.
酸化セリウム上に支持された酸化コバルトの高分散を有する触媒
典型的には10〜20μmの範囲の凝集サイズd50を有する、供給されたままの酸化セリウム粉末(RhodiaHSA15)5kgを、40gのロドビオール25/140PVA(Rhodoviol 25/140PVA)を含有する5Lの水に付加することにより、酸化セリウム支持相の水性スラリーを調製した。激しく撹拌して酸化セリウムを分散させた後、それを15時間撹拌して、PVAを酸化セリウムの表面に吸着させた。
【0048】
酸化セリウムスラリーに、289gの酢酸コバルト(Fluka)を激しく撹拌しながら付加した。連続撹拌媒質ミルを用いてスラリーを破砕して、d50が1μm未満であるよう、酸化セリウムの凝集サイズを縮小する。
【0049】
スラリーの粘度が1,000cPであるよう、スラリーの含水量を調整する。典型的には、スラリーの含水量は40〜50%である。
【0050】
回転噴霧器を用いて乾燥機中で噴霧乾燥を実行し得る。注入温度は、スラリーの注入速度により典型的には180〜400℃であり、流出温度は典型的には105〜110℃の範囲であった。これは、噴霧器の型により、0.2〜0.5重量%の含水量、ならびに60〜200μmのd50を有する粒子サイズをもたらした。
【0051】
圧縮前に、0.5重量%のステアリン酸アルミニウムを噴霧乾燥粉末に付加し、含水量を0.5重量%に調整した。これは、フォルベルグ(Forberg)ミキサー中で実行した。水はPVAのための可塑剤として作用し、そして最適含水量は的確な触媒処方によっている。酸化セリウムの表面積およびPVAの結合度(grade)は、必要とされる水のレベルに一作用を及ぼす。ペントロニックス(Pentronix)PTX612プレス機での一軸方向加圧により、ペレットを圧縮した。7穴のminilith(d=9mm、d=1.7mm)を生成した。単純円筒形から多心ペレットまで、一連のペレット形状が生成され得る。慣用的なマッフル炉(muffle oven)を用いて、空気中で圧縮ペレットを焼結した。ペレットを1℃/分で900〜1,000℃に加熱し、最大温度で6〜12時間保持した。最終触媒の化学組成は、Coが1.9重量%およびCeOが98.1重量%であった。
【0052】
実施例1b.
酸化セリウム上に支持された酸化コバルトの低分散を有する触媒
酸化セリウム(RhodiaHSA15)5kg、および40gの溶解されたロドビオール25/140PVA(Rhodoviol 25/140PVA)を含有する水5Lを用いて、実施例1aに記載したように、酸化セリウムのスラリーを調製した。水性の酸化セリウムのスラリーに、酸化コバルト(Co、Merck)93gを激しく撹拌しながら付加した。1時間撹拌後、酸化コバルトの均一分散を確実にするために、ビーズミルを用いてスラリーを破砕して、d50が1μm未満であるよう、酸化セリウムの凝集サイズを縮小した。スラリーの粘度が1,000cPであるよう、スラリーの含水量を調整した。噴霧乾燥、滑剤付加、ペレット加圧および焼結を、実施例1aの記載のように実行する。最終触媒の化学組成は、Coが2.0重量%およびCeOが98.0重量%であった。
【0053】
図2は、調製物中に用いられるコバルト前駆体の性質によっている、活性相に関する触媒の異なる構成を示す。可溶性コバルト前駆体(酢酸コバルト、実施例1a)の使用は、高分散触媒をもたらす(図2A)。酸化コバルトの存在は高分解能透過型電子顕微鏡で観察されなかったが、このことは、酸化コバルト粒子が1nm未満であることを示す。不溶性コバルト前駆体を用いた場合(Co、実施例1b)に用いられ、酸化コバルトの大型凝集体がCeO支持体上に観察され(図2B)、このことは、最終触媒中の活性相のより不十分な分散を示す。異なるコバルト分散は、図4および5に示したように、物質の触媒性能に確実に影響を及ぼす。
【0054】
実施例2.
SDMによるNi/Al触媒の調製
【0055】
実施例1aに記載した方法を用いて、ガンマ・アルミナ上に支持された酸化ニッケル触媒を調製し得る。ロドビオール(Rhodoviol)15/140PVA40gを水5L中に溶解した。これに、ガンマ・アルミナ(Sigma−Aldrich)5kgを、激しく撹拌しながら付加した。該スラリーを15時間撹拌し、次に硝酸ニッケル(Fluka)3.715kgを該アルミナのスラリーに付加した。1時間撹拌後、ビーズミルを用いてスラリーを破砕して、1ミクロンのd50を実現した。破砕後のスラリーの含水量は42.9%、粘度は960cPで、これは噴霧乾燥に適していた。実施例1aに記載した手法に従って、スラリーを噴霧乾燥し、ペレット化した。ペレットを空気中標準マッフル炉内で焼結した。ペレットを1℃/分で700℃に加熱し、この温度で6時間保持した。最終触媒の化学組成は、NiOが16.6重量%およびAlが83.4重量%であった。
【0056】
実施例3.
SDMによる異なる多孔度を有するCo/CeO触媒の調製
【0057】
触媒を製造するSDMは、制御された細孔体積およびサイズを有する触媒の製造を可能にする。これは、噴霧乾燥前に、触媒スラリー中に不安定細孔形成相、例えばデンプン、セルロースまたはポリマーを混和することにより実現される。噴霧乾燥粒子をペレットまたは錠剤内に加圧後、制御された熱処理を用いて、細孔形成相を除去する。
【0058】
実施例1aに記載したように、酸化セリウムおよび酢酸コバルトの水性スラリーを調製し、破砕して、適切な粒子サイズにする。スラリーに、不安定細孔形成相、コーンスターチ(Collamyl)を、迅速に混合しながら付加した。触媒相およびコーンスターチ細孔形成相を含有するスラリーを、実施例1bに記載した技法を用いて、噴霧乾燥する。ステアリン酸アルミニウム滑剤の付加、ならびに噴霧乾燥粒子の含水量の調整後、実施例1aに記載されたように一軸方向金型圧縮により、ペレットまたは錠剤を生産する。
【0059】
ペレットの機械的集結性を保持しながら、制御された多孔度を創出するためには、制御方式で細孔形成相を除去しなければならない。低分圧の酸素中での細孔形成剤の加熱酸化により、これを実現する。酸素の濃度が0.1〜2体積%であるよう、大気は窒素中に希釈された空気からなる。コーンスターチは、2つの別個のポリマー、アミロースおよびアミロペクチンからなる。アミロースは、α結合グルコースの直鎖からなり、そしてアミロペクチンは、α結合グルコースの分枝鎖ポリマーからなる。コーンスターチは典型的には、アミロペクチン75%およびアミロース25%からなる。これら2つのポリマーは、アルミナのような固体と接触すると、それぞれ240および380℃で分解する。酸化触媒の存在下では、分解温度は80〜100℃ほど低減され得る。SDM法により調製されるコバルト/セリア触媒からのコーンスターチの焼却は、ペレットの浅床を徐々に170℃に加熱することを伴う。加熱過程中、酸素の濃度が1体積%未満になるよう、窒素中に希釈された空気からなるガスは、床全体を流動する。低濃度の酸素は、アミロペクチンの酸化のため、ペレット床中の温度上昇を50℃未満に制限する。排ガス中の低レベルの酸化炭素により立証されるように、アミロペクチンの分解が一旦完了したら、温度を徐々に300℃まで上昇し、そしてアミロースの分解が完了するまで、その温度を保持する。デンプンが除去されたら、ペレットを空気中で900〜1,000℃に加熱して、それらを焼結する。
【0060】
酸化セリウムの質量に基づいて、スラリーのデンプン含量を、0〜25重量%に変える。より高い細孔形成剤含量を有する触媒ペレットを調製し得るが、しかし細孔形成剤除去後のペレットの機械的特性は非常に乏しい。
【0061】
細孔形成相の量を変更することにより、細孔体積を制御し得る。図3は、異なる焼結温度を用いた、Co/CeO系(公称組成:2重量%のCoおよび98重量%のCeO)におけるペレットの多孔度に及ぼすデンプン含量の効果を示す。処方物のデンプン含量が約9%増大すると、ペレットの多孔度が増大する。触媒の多孔度により重大な影響を及ぼされる2つの特性は、自由空間におけるガスの拡散係数と比較した場合のペレット内の有効拡散係数、ならびにペレットの強度である。Co/CeO系に関するこれら2つの特性を図4に示す。多孔度の増大は、強度減少を示すペレットにおける有効拡散係数の増大をもたらす。それゆえ最適条件は、特定の適用による。
【0062】
細孔形成相の非存在下で、圧縮または押出し成形によりペレットまたは錠剤を製造する場合、焼結温度は非常に高いというわけではないという条件で、多孔度は40〜50%の範囲である。細孔サイズは主要粒子のサイズに左右され、そしてこれは破砕の程度により影響される。破砕処理が有効であるほど、粒子間の細孔サイズは小さい。しかしながら粒子サイズが1μ未満である場合、多孔度の大部分は0.1〜0.2μ未満である。細孔形成相を包含することにより、多孔度および細孔サイズはともに増大され得る。
【0063】
実施例4.
直接NO分解におけるCo/CeO触媒の性能
【0064】
異なる方法により調製されたCo/CeO触媒(公称組成:2重量%のCoおよび98重量%のCeO)を、125〜200μm粒子の形態で、NO分解で試験した。結果を図5に示す。触媒の活性とコバルト相の分散との間の明白な相関が実現されている。前駆体として酢酸コバルトを用いてSDMにより調製した触媒は、この触媒内のコバルトの高分散のため、最高活性を示す。前駆体として酸化コバルトで調製されたSDM触媒は、活性相の低分散の結果として、CeO支持体上に酸化コバルトの大きな凝集物を形成し極めて低い活性を示す(図2B参照)。酢酸コバルトを用いて初期湿式により調製したCo/CeO触媒は最低活性を生じ、これはこの方法を用いて達成された低分散と相関する。
【0065】
実施例5.
アンモニア酸化におけるCo/CeO触媒の性能に及ぼすコバルト前駆体の影響
【0066】
可溶性および不溶性コバルト前駆体を用いてSDMにより調製したCo/CeO触媒を、3mm×3mmの円筒形ペレットの形態で、アンモニア酸化において試験した(図6)。両触媒の化学組成は、Coが20重量%およびCeOが80重量%であった。触媒は、同様の初期NO選択性(〜85%)を示す。しかしながら、前駆体として酢酸コバルトを用いて調製した触媒における初期NO生産は、前駆体として酸化コバルトを用いて調製した触媒と比較して極めて低かった。さらに両触媒の安定性は大いに異なる。不溶性コバルト前駆体を用いて調製したCo/CeO触媒は非常に迅速に失活して、より低いNO選択性およびNO生産増大を生じた。
【0067】
実施例6.
O分解におけるCoAlO/CeO触媒の性能に及ぼすペレット多孔度の影響
【0068】
前駆体として酢酸コバルトを用いて、コーンスターチの付加を伴う場合と伴わない場合でも、CoAl/CeO触媒を調製した。両触媒の化学組成は、1重量%のCo、0.3体積%のAlおよび98重量%のCeOであった。NO分解活性におけるペレットの多孔度の影響を評価するために、5mm×5mmの円筒形ペレットの形態で、直接NO分解に関して、触媒を試験した。結果を図7に示す。デンプンの付加は、性能のために有益であることを証明する。デンプンを有する触媒(ペレットの多孔度65%)は、15重量%のデンプンを有する触媒(ペレットの多孔度50%)より若干高いNO転化を示す。
【0069】
実施例7.
O分解におけるCoAlO/CeO触媒の調製方法の影響
【0070】
前駆体として酢酸コバルトを用いてコーンスターチの付加(CeO重量に基づいて15重量%)をも伴って、SDMによりCoAl/CeO触媒を調製した。最終触媒の化学組成は、1重量%のCo、0.3体積%のAlがおよび98重量%のCeOであった。さらに、Co、AlおよびCe−前駆体(可溶性)の溶液と、塩基溶液(水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウム)とを共沈することにより、CoAl/CeO触媒を調製した。共沈触媒の化学組成は、42重量%のCo、13.9重量%のAlおよび42.7重量%のCeOであった。NO分解に関する触媒の活性を、5mm×5mmの円筒形ペレットの形態で評価した。結果は図8で比較する。SDM触媒の初期活性および生産時間下での安定性は顕著である。共沈により調製された触媒において、深刻な失活(30日で初期活性〜20%)が観察される。セリア中のコバルトの高分散は、活性相および支持体間の強力な相互作用を促進し、それが処方物を安定化する。これは図に示した共沈法のような、慣用的方法によっては達成されない。
【0071】
実施例8.
メタン改質におけるNiベースの触媒の性能
【0072】
異なる試料のHO/CO/CH比でのメタンの改質における実施例2に従ったSDMにより調製したNi/Al触媒の活性を、市販の改質触媒(G91−HGS、Sd-Chemie)の活性と比較した。両触媒中のニッケル含量は同様で、Ni/Al中のNiOが16.6重量%、および市販の触媒中のNiOが19重量%であった。この触媒は、その他の促進剤、例えばKも含有する。固有の活性が得られるよう、300〜500μm粒子で、触媒試験を実行した。生成物のモル分率(乾燥量基準)により表される650℃での非促進Ni/AlのSDMの活性は、最新技術のNi市販触媒の活性より高かった(図9)。26%(SDM)および23%(市販)のメタン転化が実現された。SDM触媒の活性は、試料混合物中の相対的CO含量を増大すると減少する(乾燥改質)。HO/CO/CH=1/1/1での市販触媒の活性はNi/AlのSDMより高い。これは、コークス生成率を減少するための市販触媒中の促進剤の存在のためであり、一方Ni以外の他の金属はSDM処方物中には存在しなかった。
【0073】
噴霧沈着法は、活性相の一様分布、ならびに細孔サイズに関して何らかの制御を伴う均一および制御された多孔度の両方を有する触媒の調製を可能にする。他の慣用的方法(共沈または含浸)と比較してSDMにより調製される触媒の優れた性能は、種々の用途、例えばNOの直接分解、アンモニア酸化、ならびにメタンの水蒸気改質において立証されている。
【0074】
本発明は、添付の図面(図1〜9)を参照としてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】支持型酸化物触媒を調製するための慣用的共沈法および本出願に記載されるような噴霧沈着法(SDM)間の単位操作の比較を示す。
【図2】(A)可溶性コバルト前駆体(高分散)、または(B)不溶性コバルト前駆体(低分散)を用いることにより、異なる金属分散を有するSDMにより調製されたCo/CeO触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図3】異なる温度で6時間焼結後のデンプン含量(CeO含量に基づく)の一関数としてSDMにより調製されたCo/CeO触媒(5mm×5mmの円筒形ペレット)の多孔度を示す。
【図4】SDMにより調製されたCo/CeO触媒(5mm×5mmの円筒形ペレット)の有効ガス拡散係数および圧壊強さ(radial crush strength)に及ぼす触媒多孔度の作用を示す。
【図5】異なる方法(a)可溶性コバルト前駆体を用いたSDM、(b)不溶性コバルト前駆体を用いたSDM、および(c)初期湿式により調製されたCo/CeO触媒(125〜200μm粒子)全体の実験室規模試験におけるNO転化対温度を示す。実験条件:試料=3mbarのNO、20mbarのNO、80mbarのO、50mbarのHO、全体圧=2bar、ガス毎時空間速度=140,000h−1
【図6】可溶性コバルト前駆体を用いた、ならびに不溶性コバルト前駆体を用いたSDMにより調製されたCo/CeO触媒(3mm×3mmの円筒形ペレット)全体のパイロット規模試験におけるアンモニア酸化中のNO選択性およびNO生産性対生産時間を示す。実験条件:試料=空気中のNH10.5体積%(vol%)、温度=900℃、全体圧=5bar、ガス毎時空間速度=60,000h−1
【図7】可溶性コバルト前駆体を用いた、コーンスターチの付加を伴う場合と伴わない場合の、SDMにより調製されたCoAlO/CeO触媒(5mm×5mmの円筒形ペレット)全体のパイロット規模試験におけるNO転化対生産時間を示す。実験条件:試料=6.5mbarのNO、50mbarのNO、30mbarのO、80mbarのHO、温度=900℃、全体圧=5bar、ガス毎時空間速度=100,000h−1
【図8】可溶性コバルト前駆体およびコーンスターチを用いたSDMならびに共沈により調製されたCoAlO/CeO触媒(5mm×5mmの円筒形ペレット)全体のパイロット規模試験におけるNO転化対生産時間を示す。実験条件:試料=6.5mbarのNO、50mbarのNO、30mbarのO、80mbarのHO、温度=900℃、全体圧=5bar、ガス毎時空間速度=100,000h−1
【図9】実験室規模でのメタンの水蒸気改質においてSDMにより調製されたNi/Alの活性、ならびに商用Niベースの触媒(G91−HGS、Sd-Chemie)との比較を示す。試験は、300〜500μmの触媒粒子を用いて実行した。実験条件:温度=650℃、試料=異なるHO/CO/CH比、総ガス流量=125Nl(L)h−1、2gの触媒+10gα−Al(希釈剤)、全体圧=25bar、重量毎時空間速度=1,000Nl(L)h−1−1、触媒前処理=純H、600℃で12時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒的適用のための多孔性支持物質の製造方法であって、1つまたは複数の可溶性活性相前駆体(単数または複数)が水または有機溶媒中の不溶性支持相から成るスラリーに付加され、該スラリーが破砕されて、支持相の粒子サイズを50μm未満に縮小し、加工助剤が破砕の前後に付加され、細孔形成剤が付加され、該スラリーが噴霧乾燥され、圧縮されて、細孔形成剤の除去のために熱処理に付される方法。
【請求項2】
前記スラリーが湿式破砕される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子サイズが0.1〜10μm、好ましくは1μmに縮小される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スラリーの粘度が100〜5,000cP、好ましくは約1,000cPに保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細孔形成剤が300〜400℃で不活性ガス中に希釈される10〜20mbarのOで除去される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱率ができるだけ低く、典型的には1℃/分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物質が焼結される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記焼結物質が水素、還元ガスまたは不活性ガス中で前処理される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記支持相がAl、SiO、ZrO、TiO、ZnO、MgO、MgAl、CoAlおよびCeOから選択されるうちの1つまたは複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記活性相金属が遷移金属(例えばCo、Ni、Cu、Fe)、貴金属(例えばPt、Rh、Ru)、ランタニド(例えばLa、Ce)、ならびに安定剤または促進剤として作用し得る周期律表からのその他の元素(アルカリ土類、例えばNa、Mg、K、Cs)、あるいはその他の三価非還元性金属(例えばAl、Ga)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記活性相前駆体が酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、アセチルアセトネート、好ましくは酢酸塩から選択されるもののうちの1つまたは複数である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性相陽イオンが支持体スラリーへの付加前に有機相と錯体形成される、請求項1または10に記載の方法。
【請求項13】
前記陽イオンの部分錯体形成が大型結晶の形成を防止するために実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
用いられる前記細孔形成剤がセルロース、デンプンまたはポリマー繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記加工助剤が分散剤、結合剤、可塑剤、滑剤、pH調整剤等である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
O分解のための多孔性支持型触媒物質の製造方法であって、可溶性コバルト前駆体が水中の酸化セリウムおよび加工助剤のスラリーに付加され、該スラリーが10μm未満の粒子サイズに破砕され、細孔形成剤が付加され、該粘度が約1,000cPに調整され、その後該スラリーが噴霧乾燥され、その後圧縮され、該細孔形成剤が除去されて、該生成物が焼結される方法。
【請求項17】
ジルコニアおよび/または可溶性アルミニウム化合物が付加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酢酸コバルトが前駆体として用いられる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
O分解のための触媒として、請求項16〜18のいずれか1項により生成される物質の使用。
【請求項20】
O分解のための触媒として、請求項1〜15のいずれか1項により生成される物質の使用。
【請求項21】
アンモニア酸化のための触媒として、請求項1〜15のいずれか1項により生成される物質の使用。
【請求項22】
メタンの水蒸気改質のための触媒として、請求項1〜15のいずれか1項により生成される物質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−527065(P2006−527065A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500802(P2005−500802)
【出願日】平成15年6月13日(2003.6.13)
【国際出願番号】PCT/NO2003/000197
【国際公開番号】WO2004/110622
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(504387698)ヤラ・インターナショナル・アーエスアー (2)
【氏名又は名称原語表記】Yara International ASA
【住所又は居所原語表記】Bygdoy alle 2, P.O.box 2464 Solli, N−0202 Oslo, Norway
【Fターム(参考)】