説明

改修用サッシ窓枠装置

【課題】必要な強度及びシール性等の性能を確保しつつ、低コストで造れる構造を実現する。
【解決手段】既存窓枠6aの屋外側に新規窓枠7aを、アタッチメント枠18aを介して結合固定する。これら新規窓枠7aとアタッチメント枠18aとの結合部に関しては、屋内側端部にのみ、タッピングねじ31、31を設ける。これら新規窓枠7aとアタッチメント枠18aとの結合部の屋外側端部に、弾性材製の水切り部材26を押し込み、この屋外側端部のがたつき防止とシール性の確保とを図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、古くなった窓枠を窓開口の内側に残したまま、この窓開口に新規な窓枠を組み込む事を可能にする、改修用サッシ窓枠装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金製の押し出し型材を組み合わせて成る窓装置が従来から広く使用されている。図7は、この様な窓装置の1例を示している。窓枠1の内側に1対のガラス障子2a、2bを、引き違い式に建て込んでいる。このうちの窓枠1は、上辺を構成する上枠3と、下辺を構成する下枠4と、左右の縦辺を構成する竪枠5a、5bとにより、矩形に構成している。これら各枠3、4、5a、5bは、それぞれアルミニウム合金の押し出し型材製である。前記両ガラス障子2a、2bは、それぞれの下辺部に設けた各戸車を、前記下枠4の上面に設けた下部案内レールに係合させると共に、上端部に設けたガイドブロックと前記上枠の下面に設けた上部案内レールとを係合させる事により、前記窓枠1の内側に、水平移動自在に建て込んでいる。
【0003】
例えば上述の様な窓装置が古くなったり、或は性能に問題を生じる等により新規な窓装置に交換する場合、工期の短縮、工事費の削減等を目的として、古い(既存の)窓枠1をそのままにして、新規窓枠7を組み付ける構造が、例えば特許文献1〜3、非特許文献1に記載される等により、従来から広く知られている。図8〜9は、このうちの非特許文献1に記載された、従来構造の1例を示している。この従来構造は、既存窓枠6を残したまま、この既存窓枠6よりも屋外側(図8の左側、図9の上側)に、新規窓枠7を組み付けるものである。先ず、この従来構造に就いて説明する。
【0004】
前記既存窓枠6は、既存上枠8と既存下枠9と左右の既存竪枠10とを矩形枠状に組み合わせて成り、建造物の開口部11の内周縁に固定されている。これら各枠8〜10は、アルミニウム合金の押し出し型材製である場合が多いが、前記既存窓枠6が特に古い場合には、鉄系合金製の場合もある。一方、前記新規窓枠7は、それぞれが押し出し型材製である新規上枠12と新規下枠13と左右の新規竪枠14とを矩形枠状に組み合わせて成る。この様な新規窓枠7は前記既存窓枠6の屋外側に、上部アタッチメント15と、下部アタッチメント16と、1対の竪方向アタッチメント17とを介して、結合固定している。
【0005】
即ち、アタッチメント枠18を構成する、前記各アタッチメント15〜17の屋内側端部を、前記既存窓枠6を構成する前記各枠8〜10にねじ止め固定する。そして、前記アタッチメント枠18の内側に、前記新規窓枠7を保持する。これら両枠18、7同士の結合作業は、この新規窓枠7の屋内側端部をこのアタッチメント枠18の中間部に複数本のリベット19により結合すると共に、前記新規窓枠7の屋外側端部をこのアタッチメント枠18の屋外側端部に、複数本のねじ20、20により結合する事により行っている。又、これら各ねじ20、20による、前記両枠7、18の屋外側端部同士の接合部には、粘着性を有するシール材21を貼付して、当該部分のシール性保持を図る。図8〜9中、斜格子を付した部分は、防音の為に充填したグラスウール22である。特に防音を図る必要がなければ、このグラスウール22は省略する。尚、上述の様にアタッチメント枠18の内側に新規窓枠7を保持する作業は、組み付けの現場ではなく、これら両枠18、7の組立工場で行う。現場で行う主な作業は、前記アタッチメント枠18の屋内側部分を、前記既存窓枠6の内側に組み付ける作業である。
【0006】
上述の様な従来の改修用サッシ窓枠装置の場合、前記アタッチメント枠18と前記新規窓枠7との屋外側端部同士の結合を、前記複数本のねじ20、20により行っている。これら両枠18、7の屋外側端部同士を十分な強度で結合固定する為には、相当数の前記各ねじ20、20の螺合及び締め付け作業を行う必要があり、面倒である。又、前記両枠18、7の屋外側端部同士の間のシール性保持を、これら両枠18、7の突き合わせ部に、粘着性を有するシール材21を貼付する事により行っている。この作業も面倒で、しかも時間を要する。これらにより図8〜9に示した従来構造の改修用サッシ窓枠装置は、低コスト化の面から不利である。
尚、特許文献4には、窓枠に対してガラスを建て込む為、特殊形状を有するシール材を使用したガラス取付構造に関する発明が記載されているが、このシール材を改修用サッシ窓枠装置に適用する事に関しては、一切記載されていない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−64952号公報
【特許文献2】特開2003−328645号公報
【特許文献3】特開2007−23565号公報
【特許文献4】特開平9−125834号公報
【非特許文献1】「納まり参考図集/不二サッシの取替サッシ」、不二サッシ株式会社/不二サッシリニューアル株式会社、2003年3月、p.31
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、必要な強度及びシール性等の性能を確保しつつ、低コストで造れる改修用サッシ窓枠装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の改修用サッシ窓枠装置は、前述の非特許文献1に記載される等により従来から知られている改修用サッシ窓枠装置と同様に、建造物の開口部の内周縁に固定された、既存上枠と既存下枠と左右の既存竪枠とから成る既存窓枠の屋外側に、それぞれが押し出し型材製である新規上枠と新規下枠と左右の新規竪枠とから成る新規窓枠を固定するものである。この為に、前記既存上枠の下面に上部アタッチメントの屋内側端部を、前記既存下枠の上面に下部アタッチメントの屋内側端部を、前記両既存竪枠の内側面に竪方向アタッチメントの屋内側端部を、それぞれねじ止め固定するアタッチメント枠の内側に、前記新規窓枠を保持する。
【0010】
特に、本発明の改修用サッシ窓枠装置に於いては、前記アタッチメント枠側に、上部係止溝と左右1対の側部係止溝とを設けている。
このうちの上部係止溝は、前記上部アタッチメントの屋外側端部から下方に垂下された垂下板部の屋内側面部に設けられたもので、下方開口部の幅寸法が上方奥部の幅寸法よりも狭くなっている。
又、前記両側部係止溝は、前記両竪方向アタッチメントの屋外側端部から内側に折れ曲がった折れ曲がり板部の屋内側面部に設けられたもので、それぞれ内側開口部の幅寸法が外側奥部の幅寸法よりも狭くなっている。
この様な各係止溝は、それぞれ前記垂下板部及び前記両折れ曲がり板部の屋内側面に、それぞれ屋内側に突出した断面直線状の第一突条と、先端縁をこの第一突条に対向させた断面L字形の第二突条との組み合わせにより設けている。
【0011】
一方、前記新規上枠を前記上部アタッチメントに対して、この新規上枠の上部屋外側端部に屋内側に突出する状態で設けた上部係合突片の先端縁を、前記上部アタッチメントの下面屋外寄り部分に設けた、屋外側が開口した上部係合溝に係合させると共に、前記新規上枠の屋内側端部に設けた被固定側上部平板部を前記上部アタッチメントの中間部に設けた固定側上部平板部に対しねじ止め固定する事により結合固定している。
又、前記両新規竪枠を前記両竪方向アタッチメントに対して、これら両新規竪枠の屋外側端部に屋内側に突出する状態で設けた側方係合突片の先端縁を、前記両竪方向アタッチメントの内面屋外寄り部分に設けた、屋外側が開口した側方係合溝に係合させると共に、前記両新規竪枠の屋内側端部に設けた被固定側側方平板部を、前記両竪方向アタッチメントの中間部に設けた固定側側方平板部に対し、ねじ止め固定する事により結合固定している。前記下部アタッチメントに対して前記新規下枠を結合固定する構造に就いては、特に問わない。
【0012】
更に、全体をゴムの如きエラストマー等の弾性材を押し出し成形する事により造られた水切り部材により、前記新規窓枠の屋外側端部と前記アタッチメント枠の屋外側端部との結合部のがたつきを抑えると共に、これら新規窓枠とアタッチメント枠との屋外側端部同士の間のシール性を保持している。前記水切り部材は、帯状の基板部の片面の屋外寄り部分に、この基板部寄りの基部の幅寸法に比べて先端部の幅寸法が大きくなった弾性係止部を、同じく屋内寄り部分に、前記基板部から突出した幹板部とこの幹板部から側方に突出した枝板部とから成る弾性押し込み部を、それぞれ備えている。前記がたつき防止と前記シール性保持とを図る為に、この様な水切り部材のうち、前記弾性係止部を前記各係止溝に圧入係止すると共に、この弾性押し込み部を、前記各第二突条の屋内端面と前記新規上枠及び前記新規竪枠の屋外側面との間の隙間に押し込んでいる。そして、この状態で、前記基板部により、この隙間及び前記各係止溝の内側開口を塞いでいる。
【0013】
上述の様な本発明の改修用サッシ窓枠装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記水切り部材を構成する弾性係止部及び弾性押し込み部を、前記上部アタッチメント及び前記新規上枠の両端部と前記両竪方向アタッチメント及び前記両新規竪枠の上端部との連続部に対応する部分で切断する。更に、この切断部で前記水切り部材の基板部を折り曲げた状態で、前記弾性係止部及び前記弾性押し込み部を前記各係止溝及び隙間に押し込む。そして、前記上部アタッチメント及び前記新規上枠の両端部と前記両竪方向アタッチメント及び前記両新規竪枠の上端部との間で、前記基板部を連続させる。
【発明の効果】
【0014】
上述の様に構成する本発明によれば、必要な強度及びシール性等の性能を確保しつつ、低コストで造れる改修用サッシ窓枠装置を実現できる。
先ず、必要な強度の確保は、新規窓枠の屋内側端部をアタッチメント枠の中間部にねじ止め固定すると共に、この新規窓枠の屋外側端部をこのアタッチメント枠の屋外側端部に、上部、側方各係合突片の先端縁と、上部、側方各係合溝との係合に基づいて結合し、更に前記新規窓枠と前記アタッチメント枠との間に存在する隙間に、水切り部材の弾性押し込み部を押し込む事により図れる。
又、シール性は、前記水切り部材の基板部が、前記隙間及び前記各係止溝の開口を塞ぐ事により図れる。特に、請求項2に記載した発明の構造によれば、前記新規窓枠及び前記アタッチメント枠の上辺の両端部と竪辺の上端部との連続部で、前記基板部を確実に連続させて、前記シール性を良好にできる。
更に、低コスト化は、前記アタッチメント枠の屋外側端部に対する前記新規窓枠の屋外側端部の結合部のがたつき防止と、この結合部のシール性確保とを、前記各係合溝及び前記隙間に対する、前記水切り部材の押し込み作業により同時に行える事で図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜6は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の改修用サッシ窓枠装置は、建造物の開口部11aの内周縁に固定された既存窓枠6aの屋外側に、新規窓枠7aを、アタッチメント枠18aを介して結合固定して成る。これら各枠6a、7a、18aを構成する部材は(このアタッチメント枠18aを構成する下部アタッチメント16a及びタッピングねじ等の結合用部品を除き)、何れもアルミニウム合金の押し出し型材製である。このうちの既存窓枠6aは、既存上枠8aと既存下枠9aと左右1対の既存竪枠10aとを、周知のタッピングねじによる結合構造により、四角枠状に組み合わせて成る。この様な既存窓枠6aは前記開口部11aの内側に、建造物の建設時に建て込まれている。尚、上記下部アタッチメント16aは、アルミニウム合金性の板材を曲げ成形する事により、既存下枠9aの寸法、形状に対応した寸法、形状としている。
【0016】
又、前記新規窓枠7aは、新規上枠12aと新規下枠13aと左右1対の新規竪枠14aとを、周知のタッピングねじによる結合構造により、四角枠状に組み合わせて成る。この様な新規窓枠7aは、前記既存窓枠6aの形状及び大きさに合わせて造られ、改修用サッシ窓枠装置の製造工場で、予め四角枠状に組み立てたものを、前記アタッチメント枠18aの組立に伴って(組立作業と同時に)、このアタッチメント枠18aの屋外側半部の内側に組み付け固定されている。このアタッチメント枠18aは、上部アタッチメント15aと、左右1対の竪方向アタッチメント17aとを、前記新規窓枠7aと同様、周知のタッピングねじによる結合構造により、下方が開いたコ字形の枠状に組み合わせて成る。
【0017】
前記アタッチメント枠18aを構成する前記各アタッチメント15a、16a、17aのうち、上部アタッチメント15aの、屋内外方向に関する幅寸法は、前記新規窓枠7aを構成する、新規上枠12aの、同方向の幅寸法よりも大きい。又、竪方向アタッチメント17aの屋内外方向に関する幅寸法は、前記新規竪枠14aの同方向の幅寸法よりも大きい。そして、前記新規上枠12aを前記上部アタッチメント15aの下面内側に、タッピングねじ31の螺合及び締め付けと、上部係合突片24の先端縁と上部係合溝25との係合と、水切り部材26の押し込みとにより、がたつきなく保持固定している。又、前記両新規竪枠14aを前記両竪方向アタッチメント17aの内面内側に、タッピングねじ31の螺合及び締め付けと、側方係合突片27の先端縁と側方係合溝28との係合と、水切り部材26の押し込みとにより、がたつきなく保持固定している。本例の特徴部分であるこれらの点に就いて、以下に詳しく説明する。
【0018】
前記上部アタッチメント15aの下面屋外側寄り部分に、屋外側が開口した前記上部係合溝25を設けている。この上部係合溝25は、前記上部アタッチメント15aの押し出し成形時にこの上部アタッチメント15aの所定部分に、断面L字形の突片を形成する事により設けている。又、前記新規上枠12aの屋外側端部上縁部に前記上部係合突片24を、屋内側に突出する状態で設けている。この上部係合突片24は、前記新規上枠12aの押し出し成形時にこの新規上枠12aの屋外側板部の上端縁部に、屋内側に折れ曲がった突片を形成する事により設けている。
【0019】
又、前記両竪方向アタッチメント17aの内側面屋外寄り部分に、屋外側が開口した前記側方係合溝28を設けている。この側方係合溝28は、前記竪方向アタッチメント17aの押し出し成形時にこの竪方向アタッチメント17aの所定部分に、断面L字形の突片を形成する事により設けている。又、前記両新規竪枠14aの屋外側端部外側縁に前記側方係合突片27を、屋内側に突出する状態で設けている。この側方係合突片27は、前記新規竪枠14aの押し出し成形時にこの新規竪枠14aの屋外側板部の外端縁部に、屋内側に折れ曲がった突片を形成する事により設けている。
【0020】
それぞれが上述の様な上部、側方、各係合突片24、27を設けた、新規上枠12a及び新規竪枠14aと、それぞれが上述の様な係合溝25、28を設けた、上部、竪方向、各アタッチメント15a、17aとを結合固定するには、前記各係合突片24、27を前記各係合溝25、28に、屋外側から挿入し、これら各係合突片24、27とこれら各係合溝25、28とを係合させる。この状態では、前記新規窓枠7aは、既に矩形枠状に組み立てられている。前記各係合突片24、27と前記各係合溝25、28とを係合させつつ、前記新規上枠12aの屋内側端部を前記上部アタッチメント15aの中間部に形成した上部中間板部29の屋外側面に当接させる。そして、これら前記新規上枠12aの屋内側端部と上部中間板部29とを、水平方向複数個所で、それぞれタッピングねじ31により結合する。又、前記両新規竪枠14aの屋内側端部を前記両竪方向アタッチメント17aの中間部に形成した側方中間板部30の屋外側面に、それぞれ当接させる。そして、これら両新規竪枠14aの屋内側端部と側方中間板部30とを、上下方向複数個所で、それぞれタッピングねじ31により結合する。尚、これら各タッピングねじ31、31の螺合及び締め付け作業を行う前に、前記、下部、側方各アタッチメント15a〜17aの端部同士を、別のタッピングねじにより結合固定しておく。
【0021】
前記各タッピングねじ31、31を締め付けた状態で、前記新規上枠12aが前記上部アタッチメント15aの屋外側半部の下側に、前記両新規竪枠14aが前記両竪方向アタッチメント17aの屋外側半部の内側面側に、それぞれ非分離に固定結合される。但し、前記各係合突片24、27と前記各係合溝25、28との係合状態が緩い分、前記新規上枠12aが前記上部アタッチメント15aに対し、前記両新規竪枠14aが前記両竪方向アタッチメント17aに対し、それぞれがたつく可能性がある。
【0022】
そこで、前記新規上枠12a及び前記両新規竪枠14aと、前記上部アタッチメント15a及び前記両竪方向アタッチメント17aとの間に、それぞれ前記水切り部材26を組み付ける事により、前記がたつきを防止する。この水切り部材26の組み付けを可能にする為に、前記アタッチメント枠18a側に、上部係止溝32と左右1対の側部係止溝33とを設けている。そして、これら各係止溝32、33に前記水切り部材26を、屋内外方向から見た形状が、図3に示す様に、下方が開いたコ字形となる様に掛け渡す。そして、前記新規上枠12a及び前記両新規竪枠14aが、前記上部アタッチメント15a及び前記両竪方向アタッチメント17aに対しがたつくのを防止すると共に、これら各アタッチメント15a、17aと前記各枠12a、14aとの結合部のシール性保持を図る。
【0023】
前記各係止溝32、33のうちの上部係止溝32は、前記上部アタッチメント15aの屋外側端部から下方に垂下された垂下板部34の屋内側面部に設けられたもので、下方開口部の幅寸法が上方奥部の幅寸法よりも狭くなっている。この様な上部係止溝32を構成する為に、前記垂下板部34の屋内側面に、第一、第二両突条35、36を、上下方向に離隔した状態で、それぞれが屋内側に突出する状態で設けている。このうち、前記垂下板部34の下端寄り部分に設けた第一突条35は、高さ寸法が比較的低く、断面直線状である。これに対して前記第二突条36は、高さ寸法が比較的大きく、断面L字形であり、その先端縁を、前記第一突条35の先端縁に対向させている。これら両突条35、36により囲まれた部分を前記上部係止溝32とし、これら両突条35、36の先端縁同士の間部分を、この上部係止溝32の開口部としている。
【0024】
これに対して、前記両側部係止溝33は、前記両竪方向アタッチメント17aの屋外側端部から内側に折れ曲がった折れ曲がり板部37の屋内側面部に設けられたもので、それぞれ内側開口部の幅寸法が外側奥部の幅寸法よりも狭くなっている。この様な両側部係止溝33に就いても、屋内側に突出した断面直線状の第一突条35と、先端縁をこの第一突条35に対向させた断面L字形の第二突条36との組み合わせにより構成している。
【0025】
それぞれが上述の様な形状を有する、前記各係止溝32、33に装着する、前記水切り部材26は、全体をゴム、ビニルの如きエラストマー等の弾性材を押し出し成形する事により一体に造っている。この様な水切り部材26は、基板部38と、弾性係止部39と、弾性押し込み部40とを備える。このうちの基板部38は、全体が帯状であって、前記新規窓枠7aと前記アタッチメント枠18aとの結合部屋外側端部の上辺及び左右両竪辺の内周側を覆うもので、図4に示す様に、内周となる片面側を凹円弧としている。又、上記弾性係止部39は、前記水切り部材26を前記各係止溝32、33に係止する為のもので、前記基板部38の片面、即ち、前記アタッチメント枠18aへの装着状態で外周側となる面の屋外寄り部分に設けている。前記弾性係止部39は、図4に示す様に、家型の断面形状を有し、幅寸法が、前記基板部38寄りの基部で狭く、中間部で最も大きく、この中間部から先端部に向けて漸減している。又、内部は中空として、中間部の幅寸法を、弾性的に拡縮自在としている。一方、前記弾性押し込み部40は、前記基板部38の片面の屋内寄り部分に設けている。この弾性押し込み部40は、この基板部38から突出した幹板部41と、この幹板部41から側方に突出した複数の枝板部42a、42bとから成る。尚、図1、2、4に記載した構造の弾性押し込み部40は、前記幹板部41の片側面にのみ前記枝板部42a、42bを設けているが、図5〜6に示した水切り部材26aの弾性押し込み部40aの様に、幹板部41の両側面に枝板部42a、42bを設ける事もできる。
【0026】
何れの形状を有する水切り部材26、26aの場合も、次の様にして、前記アタッチメント枠18aと前記新規窓枠7aとの結合部屋外側端部の上辺及び左右両竪辺のがたつき防止及びシール性保持を図る。即ち、前記アタッチメント枠18aと前記新規窓枠7aとを組み合わせた(予め組み立てておいた、この新規窓枠7aをこのアタッチメント枠18aの内側に、このアタッチメント枠18aの組立と同時に抱持した)後、前記弾性係止部39を、前記上部、側部各係止溝32、33に圧入係止する。又、前記弾性押し込み部40、40aを、前記アタッチメント枠18側に設けた、前記各第二突条36、36の屋内端面と、前記新規窓枠7aを構成する、前記新規上枠12a及び前記両新規竪枠14aの屋外側面との間の、隙間43に押し込む。そして、この状態で、前記基板部38により、この隙間43及び前記各係止溝32、33の内側開口を塞ぐ。
【0027】
前記アタッチメント枠18aと前記新規窓枠7aとの結合部屋外側端部の上辺及び左右両竪辺には、図3に示す様に、単一の連続した水切り部材26(26a)を装着し、前記隙間43及び前記各係止溝32、33の内側開口を前記基板部38により、隙間なく塞ぐ。この為に、前記水切り部材26(26a)の中間部2箇所位置で、この水切り部材26(26a)を構成する前記弾性係止部39及び前記弾性押し込み部40(40a)を切断する。切断箇所同士の間隔は、左右1対の側部係止溝33同士の間隔に一致させる。又、前記基板部38は、切断せずに連続させたままとする。そして、前記弾性係止部39及び前記弾性押し込み部40(40a)の切断部で前記基板部38を直角に折り曲げつつ、これら弾性係止部39及び弾性押し込み部40(40a)を、前記各係止溝32、33及び前記隙間43に押し込む。この結果、前記単一の連続した水切り部材26(26a)が前記アタッチメント枠18aと前記新規窓枠7aとの結合部屋外側端部の上辺及び左右両竪辺に装着され、連続した前記基板部38により、これら3辺を塞ぐ。同時に、前記アタッチメント枠18aと前記新規窓枠7aとの結合部屋外側端部ががたつく事を防止する。
【0028】
以上の作業は、改修用サッシ窓枠装置の製造工場で行うが、現場で作業する事も可能である。この製造工場で、前記アタッチメント枠18aの屋外側半部の内側に前記新規窓枠7aを保持固定した構造物(改修用サッシ窓枠装置のうちで既存窓枠以外の部分)を造ったならば、この構造物を現場に搬送して、前記アタッチメント枠18aの屋内側半部を前記既存窓枠6aの内側に支持固定する。この支持固定作業は、上下左右の各辺毎に、次の様にして行う。先ず、前記下部アタッチメント16aを前記既存下枠9aの上面に、複数本のタッピングねじ45aにより結合固定した後、下方が開いたコ字形に枠組みされた、前記上部アタッチメント15aと前記両竪方向アタッチメント17a、17aとを、上記下部アタッチメント16a上に載置する。そして、前記既存上枠8aの下面に前記上部アタッチメント15aの屋内側端部の上面を、スペーサ44を介して突き当て、複数本のタッピングねじ45、45により結合固定する。更に、前記両竪方向アタッチメント17aの屋内側半部を前記両既存竪枠10aの内側面に、スペーサ44aを介して突き当て、複数本のタッピングねじ45b、45bにより結合固定する。この状態で、前記既存窓枠6aの屋外側に前記新規窓枠7aが、前記アタッチメント枠18aを介して結合固定される。
【0029】
この様に、前記既存窓枠6aの屋外側に前記新規窓枠7aを結合固定した後、前記アタッチメント枠18aの内側を、上下左右の化粧板46a、46b、46cにより覆う。このうち、下部アタッチメント16aの屋内半部を覆う化粧板46bはこの下部アタッチメント16aの上方に、ブラケット47を介して支持固定する。又、前記各化粧板46a、46b、46cの屋内側端部と前記開口部11aの内周面屋内側端部との間にシールリップ48を設けて、この開口部11aの内周面と前記アタッチメント枠18aの外周面との間の空間49の屋内側開口を塞ぐ。尚、本発明を実施する場合に、前記下部アタッチメント16aに対して前記新規下枠13aを結合固定する構造に就いては、特に問わない。本例の場合には、前記ブラケット47及び複数本のタッピングねじ45c、45cにより結合固定している。又、本発明を実施する場合に、前記図8〜9に示した従来構造と同様に、図1〜2に斜格子を付した部分に防音の為に充填したグラスウール22を設ける事もできる。
【0030】
上述の様に本例の構造の場合には、前記新規窓枠7aを前記アタッチメント枠18aに対し、前記各タッピングねじ31、31のねじ止め固定と、前記水切り部材26(26a)を構成する弾性押し込み部40(40a)の弾性に基づく突っ張り力とにより、必要且つ十分な強度により支持できる。又、前記水切り部材26(26a)の基板部38が、前記隙間43及び前記各係止溝32、33の開口を連続して塞ぐので、前記新規窓枠7aと前記アタッチメント枠18aとの組み合わせ部の屋外側端部のシール性を十分に確保できる。更に、前記アタッチメント枠18aの屋外側端部に対する前記新規窓枠7aの屋外側端部の結合部のがたつき防止と、この結合部のシール性確保とを、前記各係合溝32、33及び前記隙間43に対する、前記水切り部材26(26a)を構成する弾性係止部39及び弾性押し込み部40(40a)の押し込み作業により同時に行える為、低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、ガラス障子を省略した状態で示す、図7のA−A断面に相当する図。
【図2】同B−B断面に相当する図。
【図3】水切り部材の設置位置を示す、改修用サッシ窓枠装置に組み込んだ水切り部材を屋内外方向に見た略正面図。
【図4】水切り部材の第1例の端面図。
【図5】同第2例の端面図。
【図6】この第2例の水切り部材の組み付け状態を示す、図1の左上部に相当する図。
【図7】一般的な窓装置を屋内側から見た状態で示す略正面図。
【図8】従来から知られている改修用サッシ窓枠装置の1例を、ガラス障子を省略した状態で示す、図7のA−A断面に相当する図。
【図9】同B−B断面に相当する図。
【符号の説明】
【0032】
1 窓枠
2a、2b ガラス障子
3 上枠
4 下枠
5a、5b 竪枠
6、6a 既存窓枠
7、7a 新規窓枠
8、8a 既存上枠
9、9a 既存下枠
10、10a 既存竪枠
11、11a 開口部
12、12a 新規上枠
13、13a 新規下枠
14、14a 新規竪枠
15、15a 上部アタッチメント
16、16a 下部アタッチメント
17、17a 竪方向アタッチメント
18、18a アタッチメント枠
19 リベット
20 ねじ
21 シール剤
22 グラスウール
24 上部係合突片
25 上部係合溝
26、26a 水切り部材
27 側方係合突片
28 側方係合溝
29 上部中間板部
30 側方中間板部
31 タッピングねじ
32 上部係止溝
33 側部係止溝
34 垂下板部
35 第一突条
36 第二突条
37 折れ曲がり板部
38 基板部
39 弾性係止部
40、40a 弾性押し込み部
41 幹板部
42a、42b 枝板部
43 隙間
44、44a スペーサ
45、45a、45b、45c タッピングねじ
46a、46b、46c 化粧板
47 ブラケット
48 シールリップ
49 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の開口部の内周縁に固定された、既存上枠と既存下枠と左右の既存竪枠とから成る既存窓枠の屋外側に、それぞれが押し出し型材製である新規上枠と新規下枠と左右の新規竪枠とから成る新規窓枠を固定する為、前記既存上枠の下面に上部アタッチメントの屋内側端部を、前記既存下枠の上面に下部アタッチメントの屋内側端部を、前記両既存竪枠の内側面に竪方向アタッチメントの屋内側端部を、それぞれねじ止め固定するアタッチメント枠の内側に、前記新規窓枠を保持して成る改修用サッシ窓枠装置に於いて、
前記上部アタッチメントの屋外側端部から下方に垂下された垂下板部の屋内側面部に、下方開口部の幅寸法が上方奥部の幅寸法よりも狭くなった上部係止溝を、前記両竪方向アタッチメントの屋外側端部から内側に折れ曲がった折れ曲がり板部の屋内側面部に、それぞれ内側開口部の幅寸法が外側奥部の幅寸法よりも狭くなった側部係止溝を、それぞれ前記垂下板部及び前記両折れ曲がり板部の屋内側面に、それぞれ屋内側に突出した断面直線状の第一突条と、先端縁をこの第一突条に対向させた断面L字形の第二突条との組み合わせにより設けており、
前記新規上枠を前記上部アタッチメントに対して、この新規上枠の上部屋外側端部に屋内側に突出する状態で設けた上部係合突片の先端縁を、前記上部アタッチメントの下面屋外寄り部分に設けた、屋外側が開口した上部係合溝に係合させると共に、前記新規上枠の屋内側端部に設けた被固定側上部平板部を前記上部アタッチメントの中間部に設けた固定側上部平板部に対しねじ止め固定する事により結合固定しており、
前記両新規竪枠を前記両竪方向アタッチメントに対して、これら両新規竪枠の屋外側端部に屋内側に突出する状態で設けた側方係合突片の先端縁を、前記両竪方向アタッチメントの内面屋外寄り部分に設けた、屋外側が開口した側方係合溝に係合させると共に、前記両新規竪枠の屋内側端部に設けた被固定側側方平板部を前記両竪方向アタッチメントの中間部に設けた固定側側方平板部に対しねじ止め固定する事により結合固定しており、
全体を弾性材を押し出し成形する事により造られて、帯状の基板部の片面の屋外寄り部分に、この基板部寄りの基部の幅寸法に比べて先端部の幅寸法が大きくなった弾性係止部を、同じく屋内寄り部分に、前記基板部から突出した幹板部とこの幹板部から側方に突出した枝板部とから成る弾性押し込み部を、それぞれ備えた水切り部材のうち、前記弾性係止部を前記各係止溝に圧入係止すると共に、前記弾性押し込み部を、前記各第二突条の屋内端面と前記新規上枠及び前記新規竪枠の屋外側面との間の隙間に押し込んだ状態で、前記基板部により、この隙間及び前記各係止溝の内側開口を塞いでいる事を特徴とする改修用サッシ窓枠装置。
【請求項2】
上部アタッチメント及び新規上枠の両端部と両竪方向アタッチメント及び両新規竪枠の上端部との連続部に対応する部分で、水切り部材を構成する弾性係止部及び弾性押し込み部を切断し、この切断部で水切り部材の基板部を折り曲げた状態で、これら弾性係止部及び弾性押し込み部を各係止溝及び隙間に押し込み、前記上部アタッチメント及び前記新規上枠の両端部と前記両竪方向アタッチメント及び前記両新規竪枠の上端部との間で前記基板部を連続させた、請求項1に記載した改修用サッシ窓枠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−150817(P2010−150817A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330277(P2008−330277)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【Fターム(参考)】