説明

改善された不透明なコーティング

【課題】画像形成することができ、揮発性有機化合物を必要とすることなく、基体からすべてのコーティングを容易に取り除くことができる、不透明で剥離可能なコーティングに対する必要性が存在する。
【解決手段】不透明なコーティング組成物およびこれらのコーティング組成物を用いる方法が開示される。これらの不透明なコーティング組成物は、基体に適用することができ、画像形成することができる。不透明なコーティング組成物上の画像を利用し、作業者に基体を改変するよう指示することができる。また、これらの不透明なコーティング組成物は基体から剥がすこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改善された不透明なコーティング組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、画像形成することができ、及び基体から剥がすことができる、改善された不透明なコーティング組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
様々なコーティングが知られている。多くのかかるコーティングは、ポリマーをベースとし、例えば金属、ガラスおよびポリマーをはじめとする基体の表面に適用され、これらの基体は、一以上のコーティング組成物で既にコーティングされていてよく、またはコーティングされていなくてもよい。これらのコーティングのうち多くのものは恒久的であることが意図されているが、一時的であることを意図したコーティングも存在する。このような一時的なコーティングは、不都合な環境条件、例えば尖った物体との接触、色移りする物を担持した物体との接触、ならびに酸性雨および他の気中および水中浮遊汚染物質との接触などによる劣化に対する表面の保護をもたらすことができる。コーティングが保護をもたらす時間的間隔は数ヶ月、更には数年にも及ぶ長きにわたることがあるが、作業者は、コーティングがもたらす保護レベルをもはや必要としないときには、かかる一時的なコーティングが除去可能であることが望ましい。
【0003】
除去可能なコーティングは、例えば車両、航空機、電気器具、コンピューター、家具、スポーツ用品、およびそれらを製造するための部品、並びに建築材料および様々なタイプの包装の、生産、保管および流通の過程において使用される。コーティングが除去可能であることに加え、このようなコーティングを用いる産業界は、これらのコーティングが、除去後にコーティング残留物を残さず、及び環境に優しいことを望んでいる。
【0004】
不透明で剥離可能な多層膜は、典型的には、食品包装業界で使用されている。かかる不透明で剥離可能な膜は、オレフィンポリマーを含有するコア層;ブチレンポリマーと他のオレフィンポリマーとの混合物、またはブチレンと少なくとも一つの他のオレフィンとのポリマーを含有する外皮層;および前述の外皮層上のコーティング層から構成することができる。かかる多層膜の不透明性は、空胞起始(vacuole initiating)固体粒子および微量の光吸収色素を含有するコア層によるものである。
【0005】
空胞起始粒子は、ポリマーマトリックスと相容れず、膜が伸ばされたときに空胞様の空洞の形成をもたらす粒子である。このような粒子の一例はナイロンである。空胞のサイズ、種類および数は、固体粒子の材料およびサイズ、ならびに延伸条件、例えば延伸比および延伸温度などに依存する。これらの空胞は密度を低減させ、膜に、空胞/ポリマーマトリックス界面における光の散乱によりもたらされる、特徴的な真珠質層の様な不透明な外観を与える。一般的に、空胞起始粒子の平均粒径は0.02μm〜10μmである。しかし、かかる不透明な膜は、当産業界においては、これらの膜が、典型的には、乏しい引裂伝播を有し、膜が剥がされる基体上に望ましくない膜残留物を残すため、適合性が限られていることが知られている。
【0006】
航空機産業は、現在、航空機のアルミニウム外板上に、アミン系コーティングを用いていており、その乾燥された膜は、高揮発性有機溶媒、例えばメチルエチルケトン系溶媒で除去することを必要とする。しかし、この膜は様々な問題を抱えている。例えば、アミン系コーティングを除去するために使用される有機溶媒の使用に関わるコストのため、この除去プロセスは経費が嵩む。更に、かかるコーティングはアルミニウム外板を完全には保護せず、これにより、外板を製造業者の仕様に合わせるためにコーティングの除去、研磨および再表面処理または仕上げ作業に多くの時間を必要とする。これらの付加的な再修復工程は製造コストを増大させる。
【0007】
更に、これらの従来のアミンコーティングは、それらの適用および除去の間に大気中に放出される大量の揮発性有機化合物(VOCs)のため、環境への重大な悪影響も有している。例えば、平均的な大きさの定期旅客機からアミン系コーティングを取り除くために約300ガロンのアミン系剥離剤を必要とし、この後、このアミン系剥離剤により残された残留物を取り除くため、一機の航空機当たり約250ガロンのメチルエチルケトンが必要になる。更に、アミンコーティングは解放能力をなくし、このため、より多量のより強い溶媒が必要になる。
【0008】
また、自動車業界も、製造中、取扱中、保管中および輸送中の、天候、大気からの汚染、薬品による攻撃または不慮の破損から自動車を保護するためのコーティングに対する必要性を有している。保護するコーティングが無い場合、車両の塗料は重大な社内での不具合化および組み立てラインでの物理的損傷を受けやすい。米国特許第第6,555,615号は、車両を異物、天候の悪影響および汚染物質(例えば酸性雨)による攻撃から保護するための除去可能なコーティングを開示している。このコーティングは、揮発性有機化合物を使用することなく、車両から剥がすことにより取り除くことができる。
【特許文献1】米国特許第6,555,615号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
剥離可能なコーティングが存在しているものの、画像形成することができ、揮発性有機化合物を必要とすることなく、基体からすべてのコーティングを容易に取り除くことができる、不透明で剥離可能なコーティングに対する必要性が尚も存在する。このようなコーティングは選択的に画像形成することができ、例えばコーティングにパターンを形成することができる。その後、パターン形成されたコーティングを基体へ適用し、そこで、作業者は、その基体についての一以上の作業を実施し基体を改変することができる。その後、このコーティングは、環境面で好ましくない溶媒を用いることなく、容易に除去し、廃棄することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本組成物は、5重量%〜80重量%の量の一以上の不透明化化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性(amphoteric)イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、それらのシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む。
【0011】
別の態様において、本組成物は、10重量%〜50重量%の量の一以上の不透明化化合物、ならびにα−アミノカルボン酸、β−アミノカルボン酸およびそれらの塩から選択される一以上の両性化合物を含む。
【0012】
本組成物は不透明であり、及び基体から容易に剥がすことができる。従って、基体から本組成物を除去するために、環境面で好ましくない溶媒は使用されない。更に、本組成物は、基体へ適用し、コーティングを形成し及び画像形成するすることができる。その後、作業者は、基体を改変するため当該画像により指示された通りに、これらの基体に一以上の作業を実施することができる。
【0013】
更なる態様において、画像形成する方法は、一以上の不透明化化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、それらのシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む組成物を提供する工程;この組成物を基体へ適用する工程;この組成物を選択的に画像形成し、パターン化されたマスクを形成する工程;および、この基体に一以上の作業を実施し、基体を改変する工程;を含む。このパターン化されたマスクは、剥がすことにより基体から取り除くことができる。
【0014】
更なる態様において、画像形成する方法は、一以上の不透明化化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、それらのシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む組成物を提供する工程;この組成物を第一の基体へ適用する工程;この組成物を選択的に画像形成し、パターン化されたマスクを形成する工程;このパターン化されたマスクを第一の基体から取り除く工程;そのパターン化されたマスクを第二の基体へ適用する工程、およびこのパターン化されたマスクによって指示された通りに、第二の基体に一以上の作業を実施する工程、を含む。このパターン化されたマスクは、剥がすことにより第二の基体から取り除くことができる。
【0015】
本組成物は、基体、例えば、これらに限定するものではないが、金属、ガラス、セラミックス、木材およびポリマー材料などに適用することができ、また、装置、例えば、これらに限定するものではないが、レーザー、レーザープリンターおよびインクジェット装置などを用いて画像形成することができる。マスクに画像形成されたパターンは、基体のどの部分に塗工すべきか、どの部分を切断すべきか、または留め具のためにどこに穴を開けるべきかを指示するために使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書中で使用されている場合、以下の省略記号は、文脈が他を示していない限り、以下の意味を有している。℃=摂氏温度、Tg=ガラス転移温度、gm=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、mL=ミリリットル、1mil=0.001インチ、2.54cm=1インチ、重量%=重量百分率、nm=ナノメートル=10−9メートル、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、およびμm=ミクロン。
【0017】
「ポリマー」および「コポリマー」という用語は、本明細書全体を通じ、互換可能に使用される。「(メタ)アクリレート」はメタクリレートおよびアクリレートの両方を含み、「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸およびアクリル酸の両方を含む。「希釈剤」は担体または賦形剤、例えば溶媒または固体増量剤などを意味する。「不透明性」は光線を通さない(即ち、透明または半透明でない)性質を意味する。「不透明な」は透明でなく、及び半透明でないことを意味する。「半透明の」は半分透明であることを意味する。「透明な」は可視スペクトルの光線を通すことを意味する。
【0018】
特に他に断りがない限り、すべてのパーセンテージは重量によるものであり、乾燥重量または溶媒を含まない重量に基づいている。すべての数値範囲は、境界値を含み、及びかかる数値範囲が合計して100%までに拘束されていると考えるのが論理的である場合を除き、任意の順番で組合せ可能である。
【0019】
本組成物は、5重量%〜80重量%、もしくは例えば10重量%〜50重量%、もしくは例えば20重量%〜40重量%の量の一以上の不透明化化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、前述の化合物のシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む。
【0020】
これらの画像形成性組成物は、これらに限定するものではないが、噴霧法、刷毛塗り法、ローラーコーティング法、浸漬法および手による適用などをはじめとする任意の好適な方法により基体に適用され得る。本組成物は剥がすことにより基体から取り除くことができる。剥離は、環境面で好ましくない溶媒の使用を回避する。
【0021】
基体との望ましいコントラストをもたらす任意の好適な不透明化化合物を使用することができる。このような化合物は、本組成物と本組成物が適用される基体との間にコントラストをもたらす。更に、この基体とのコントラストにより、作業者は、本組成物の除去後に基体に残ったどんな望ましくない残留物をも判別できるようになる。
【0022】
不透明化化合物は、これらに限定するものではないが、顔料(無機および有機)、金属塩、シリカ、ケイ酸塩およびクレーを含む。無機顔料には、これらに限定するものではないが、酸化物、例えば二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、五酸化ヒ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化カドミウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、酸化鉄および酸化鉛などが包含される。金属塩には、これらに限定するものではないが、硫化物、硫酸塩、炭酸塩および水酸化物が包含される。典型的には、不透明化化合物は無機顔料、例えば二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、五酸化ヒ素、酸化カドミウム、酸化クロム、酸化ジルコニウムおよびケイ酸塩など、ならびに有機顔料、例えばインジゴ、フタロシアニン、パラレッドおよびフラバノイド(例えば赤色、黄色、青色、オレンジ色および象牙色のフラバノイド)などである。また、例えばC.I.(色指数)Pigment Green−Yellow PY−53、C.I.Pigment Yellow PY−53およびC.I.Pigment Red−Yellow PBr−24などをはじめとする混合相チタン酸塩、例えばC.I.Pigment Yellow PT−119、C.I.Pigment Brown PBr−29およびC.I.Pigment Brown PBr−31などをはじめとする混合相金属酸化物である。より典型的には、不透明化化合物は、例えば二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムなどをはじめとする無機顔料である。最も典型的には、この無機顔料は二酸化チタンである。不透明化化合物は、0.01μm〜10μmの平均サイズ、または例えば0.5μm〜5μm、もしくは例えば1μm〜3μmの平均サイズを有する。
【0023】
一以上の両性界面活性剤が含められ、この両性界面活性剤は、本組成物を基体から剥がすことができるようにするための剥離剤として機能する。また、かかる界面活性剤は、水系乳化重合の過程中および重合後または他の分散重合の過程中および重合後にポリマーの粒子を安定化させる。好適な両性界面活性剤は、弱酸性の官能基、例えばカルボキシ官能基などを有し、及びpH3〜pH8の等電点を有する界面活性剤である。かかる両性界面活性剤は、当該膜形成性結合剤ポリマーの0.1重量%〜6重量%の量で、または例えば0.25重量%〜5重量%、もしくは例えば0.5重量%〜4重量%の量で、第二成分に含められ得る。このような両性界面活性剤は、アミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボンおよびそれらのシロキサンバージョン、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0024】
アミノカルボン酸はどれも、プロトン化された形態またはカルボン酸塩の形態のいずれかで存在するカルボキシ部分を有していてよい。一つの分子に一つより多くのカルボキシ基が存在する場合、これらのカルボキシ基は、すべてがプロトン化された形態もしくはカルボン酸塩の形態であってよく、またはプロトン化された形態とカルボン酸塩の形態とが混ざり合った形態として存在していてもよい。更に、プロトン化されたカルボキシ部分とプロトン化されていないカルボキシ部分との比は、ある与えられた系において、一つの分子と別の分子、さもなければ同じ分子で異なってよい。カルボン酸塩部分についての対イオンとして存在するカチオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、アミン(即ち、アミンのプロトン化または他の第四級置換から誘導されたアンモニウムカチオン)、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムのカチオンが包含される。アミノカルボン酸はどれも、プロトン化された形態(アンモニウム)または遊離アミンの形態(即ち、脱プロトン化された第一級、第二級または第三級アミンとして)のいずれかで存在するアミノ部分を有していてよい。一つの分子に一つより多くのアミノ基が存在する場合、これらのアミノ基は、すべてがプロトン化された形態もしくは遊離アミンの形態であってよく、またはプロトン化された形態と遊離アミンの形態とが混ざり合った形態として存在していてもよい。この場合も、プロトン化されたアミン部分とプロトン化されていないアミン部分との比は、ある与えられた系において、一つの分子と別の分子、さもなければ同じ分子で異なってよい。アンモニウム部分についての対イオンとして存在するアニオンには、クロリド、ブロミド、スルファート、カルボネート、ヒドロキシド、ホルメート、アセテート、プロピオネートおよび他のカルボキシレートアニオンが包含される。
【0025】
好適なアミノカルボン酸には、これらに限定するものではないが、一般式R12−NH−CHCOOH(式中、R12=C−C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、またはフルオロもしくはシリコーン疎水性官能基)を有するα−アミノカルボン酸;および一般構造式、R12−NH−CHCHCOOHおよびR12N(CHCHCOOH)(式中、R12=C−C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、またはフルオロもしくはシリコーン疎水性官能基)を有するβ−アミノカルボン酸が包含され、β−アミノカルボン酸は、DERIPHAT(商標)の商品名でHenkel Corporation,King of Prussia,Pa.から入手可能である。特に他に明記しない限り、DERIPHAT(商標)両性電解質は一般式R13−NHCHCHCOOH(式中、R13=ヤシ脂肪酸の残基、牛脂脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸の残基、他のC−C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニルおよびそれらの混合物)を有しており、本発明に有用なDERIPHAT(商標)両性電解質には:ナトリウム−N−ココ−β−アミノプロピオネート(DERIPHAT(商標)151、フレーク97%活性)、N−ココ−β−アミノプロピオン酸(DERPHAT(商標)151C、水中における42%溶液);N−ラウリル/ミリスチル−β−アミノプロピオン酸(DERIPHAT(商標)17°C、水中において50%);ジナトリウム−N−獣脂(tallow)−β−イミノジプロピオネート、R14N(CHCHCOONa)、(DERIPHAT(商標)154、フレーク97%活性);ジナトリウム−N−ラウリル−β−イミノジプロピオネート(DERIPHAT(商標)160、フレーク97%活性);およびN−ラウリル−β−イミノジプロピオン酸の部分的ナトリウム塩、R14N(CHCHCOOH)(CHCHCOONa)、(DERIPHAT(商標)16°C、水中において30%)、が包含される。有用なポリアミノカルボン酸には、R14C(==O)NHC(NHCNHCHCOOHおよびR14−置換エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(式中、R14=C−C20の直鎖または分枝鎖のアルキルまたはアルケニル、y=0〜3)が包含される。
【0026】
特許請求の範囲に記載された発明に有用な両性イミダゾリン誘導体には、五員環の1および3位置に窒素原子を有し、2,3位置に二重結合を有する、様々に置換された2−アルキル−2−イミダゾリンおよび2−アルケニル−2−イミダゾリンから誘導された誘導体が包含される。このアルキルまたはアルケニル基はC−C20の直鎖または分枝鎖であってよい。これらの両性イミダゾリン誘導体は、イミダゾリン環が、例えばナトリウムクロロアセテート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸などをはじめとするアルキル化剤との更なる反応を可能にする条件下において加水分解により開環する反応を介して生成される。1−(2−ヒドロキシエチル)−2−(R)−2−イミダゾリン(式中、R15=ヤシ脂肪酸の残基)とアクリル酸またはアクリル酸エステルとの反応から誘導される有用な両性界面活性剤は、以下である:
ココアンホプロピオネート、R15−C(==O)NHCHCHN(CHCHOH)(CHCHCOONa);
ココアンホカルボキシプロピオン酸、R15−C(==O)NHCHCHN(CHCHCOOH)(CHCHCHCHCOOH);
ココアンホカルボキシプロピオネート、R15−C(==O)NHCHCHN(CHCHCOONa)(CHCHCHCHCOONa);
ココアンホグリシネート、R15−C(==O)NHCHCHN(CHCHH)(CHCOONa);および
ココアンホカルボキシグリシネート、[R15−C(==O)NHCHCH(CHCHOH)(CHCOONa)]OH
【0027】
少なくとも一つの第四級アンモニウムカチオンおよび少なくとも一つのカルボキシアニオンを含有する界面活性分子内塩はベタインと呼ばれている。ベタインという命名は、ベタインと呼ばれかつ分子内塩として存在する単一の化合物(トリメチルアンモニオ)アセテートに由来している。特許請求の範囲に記載された本発明の両性界面活性剤として有用なベタインには、一般式、R16(CHCHCOO;R16CONHCHCHCH(CHCHCOO;およびR16−O−CH−N(CHCHCOO(式中、R16=C−C20の直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、またはフルオロもしくはシリコーン疎水性官能基)の化合物が包含される。ベタインの具体的な例としては、N−ドデシル−N,N−ジメチルグリシン、ならびにココアミドプロピルベタインおよび(Mona Industriesから入手可能なMONATERIC(商標)CAB)が挙げられる。
【0028】
典型的には、フルオロカーボン置換基が両性界面活性剤に結合されているときには、これらの置換基は、分枝状または非分枝状の、6個〜18個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。しかし、これらの置換基は、代わりに、部分的にフッ素化されていてよい。また、これらの置換基は、アリール官能性も持っていてもよい。フルオロカーボン両性界面活性剤の例としては、それぞれ、3MおよびDupontが製造しているフッ素化アルキルFLUORAD(商標)FC100およびフッ素化アルキルZONYL(商標)FSKが挙げられる。
【0029】
典型的なシロキサン官能性両性界面活性剤は、例えば、次の構造式を有している(式中、R17は両性部分を表し、及びm+n=3〜50である)。
【0030】
【化1】

【0031】
一例は、Goldschmidt Chemical Corporationから入手可能なポリアルキルベタインポリシロキサンコポリマーABIL(商標)B9950である。
【0032】
特許請求の範囲に記載されている本発明に有用な高分子両性界面活性剤には、タンパク質、タンパク質加水分解物、タンパク質加水分解物の誘導体、デンプン誘導体、ならびに合成の両性オリゴマーおよびポリマーが包含される。カルボキシ官能基を持った高分子両性電解質が特に有用である。
【0033】
不透明化剤および両性界面活性剤に加え、本組成物は、結合剤として機能させるための、一以上の膜形成性ポリマーを含んでいる。膜形成性ポリマーが、望ましい色または陰影の変化に悪影響を及ぼさず、また、−60℃から80℃より高いTg、または例えば−60℃から40℃より高いTg、もしくは例えば0℃〜35℃のTgを有していることを条件として、任意の膜形成性ポリマー結合剤を使用することができる。これらの膜形成性ポリマーは、10重量%〜90重量%の量、または例えば15重量%〜70重量%、もしくは例えば25重量%〜60重量%の量で含められる。典型的には、これらの膜形成性ポリマーは、酸官能性モノマーおよび非酸官能性モノマーの混合物から誘導される。好適な酸官能性モノマーには、これらに限定するものではないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチルアクリロールホスフェート、2−ヒドロキシプロピルアクリロールホスフェートおよび2−ヒドロキシ−アルファ−アクリロールホスフェートが包含される。
【0034】
好適な非酸官能性モノマーには、これらに限定するものではないが、(メタ)アクリル酸のエステル、例えばメチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレート、デカメチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート;、スチレンおよび置換スチレン、例えば2−メチルスチレンおよびビニルトルエン;、ならびにビニルエステル、例えばビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートが包含される。
【0035】
膜形成性ポリマーが−60℃〜0℃のTgを有しているときには、これらの膜形成性ポリマーは、典型的には、このポリマーの合計重量のうち0.1重量%〜6重量%の少なくとも一つのカルボキシ官能性モノマーを有しており、または例えば0.5重量%〜6重量%、もしくは例えば1重量%〜5重量%の少なくとも一つのカルボキシ官能性モノマーを有している。膜形成性ポリマーが0℃より高いTgから80℃より高いTgまでのTgを有していて、かつpH範囲を3〜11または例えば8〜11に維持するために一以上の塩基が本組成物に含められているときには、このポリマーは、場合によって、重合単位として、乾燥した膜形成性ポリマーの合計重量基準で、0.1重量%〜6重量%の量のカルボキシ官能性モノマーを含んでいてよく、または例えば乾燥した膜ポリマーの合計重量の0.5重量%〜6重量%、もしくは例えば0.1重量%〜5重量%のカルボキシ官能性モノマーを含んでいてよい。
【0036】
他の好適なポリマーには、これらに限定するものではないが、非イオン性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシ−エチルセルロースおよびヒドロキシエチルプロピルメチルセルロースなどが包含される。また、ポリビニルアセテートをはじめとするポリマーも使用することができる。
【0037】
場合によって、これらのポリマーを構成する一以上のモノマーに存在するカルボン酸基とイオン結合を形成させるべく、多価金属カチオンが含められてよい。架橋を達成すべくカルボン酸基とイオン結合を形成する任意の好適な多価カチオンを使用することができる。このようなカチオンには、これらに限定するものではないが、Mg+、Sr+、Ba+、Ca+、Zn+、Al+、Zr+またはそれらの混合物が包含される。このような多価カチオンは、これらの画像形成性組成物中に、0.001〜0.1モル/乾燥ポリマー100gm、または例えば0.01〜0.08モル/乾燥ポリマー100gm、もしくは例えば0.02〜0.05モル/乾燥ポリマー100gmの量で含められる。
【0038】
本組成物は、場合によって、一以上の添加剤を含んでいてよい。このような添加剤は、これらに限定するものではないが、可塑剤、増粘剤、レオロジー改変剤、イオン性および非イオン性界面活性剤、酸および塩基緩衝剤、防腐剤、流動化剤、ならびに希釈剤を含む。
【0039】
任意の好適な可塑剤を使用することができる。可塑剤は、第二成分の0.5重量%〜15重量%の量で、または例えば1重量%〜10重量%の量で含められ得る。好適な可塑剤には、これらに限定するものではないが、フタレートエステル、例えばジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジアリルフタレート、グリコール、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、グリコールエステル、例えばトリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテートおよびジプロピレングリコールジベンゾエート、ホスフェートエステル、例えばトリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、アミド、例えばp−トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−n−ブチルアセトンアミド、脂肪族二塩基酸エステル、例えばジイソブチル−アジパート、ジオクチルアジパート、ジメチルセバカート、ジオクチルアゼラート、ジブチルマラート、トリエチルシトラート、トリ−n−ブチルアセチルシトラート、ブチル−ラウラート、ジオクチル−4,5−ジエポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレートなど、ならびにグリセリントリアセチルエステルが包含される。
【0040】
また、一以上の流動化剤も含められ得る。流動化剤は、第二成分の0.05重量%〜5重量%の量で、または例えば0.1重量%〜2重量%の量で含めら得る。好適な流動化剤には、これらに限定するものではないが、アルキルアクリレートのコポリマーが包含される。このようなアルキルアクリレートの一例は、エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマーである。
【0041】
界面活性剤は、本成分の0.5重量%〜10重量%の量で、または例えば1重量%〜5重量%の量で本組成物に含められてよい。好適な非イオン性界面活性剤には、これらに限定するものではないが、ポリエチレンオキシドエーテル、ポリエチレンオキシドの誘導体、芳香族エトキシレート、アセチレン系エチレンオキシド、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーが包含される。好適なイオン性界面活性剤には、これらに限定するものではないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ならびにアルキルスルフェート、アルキルエトキシスルフェートおよびアルキルベンゼンスルホネートのアルカノールアンモニウム塩が包含される。
【0042】
任意の好適な増粘剤を本組成物に組み入れることができる。典型的には、増粘剤は、0.05重量%〜10重量%、または例えば1重量%〜5重量%の範囲である。好適な増粘剤には、これらに限定するものではないが、低分子量ポリウレタンが包含され、例えば親水性ポリエーテル基により相互に接続された少なくとも三つの疎水基を有する低分子量ポリウレタンなどが包含される。このような増粘剤の分子量は10,000〜200,000の範囲である。他の好適な増粘剤には、疎水的に修飾されたアルカリ可溶性乳濁液、疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースおよび疎水的に修飾されたポリアクリルアミドが包含される。
【0043】
レオロジー改変剤は通常の量で含められ得る。典型的には、レオロジー改変剤は0.5重量%〜20重量%の量、または例えば5重量%〜15重量%の量で使用される。レオロジー改変剤には、これらに限定するものではないが、ビニル芳香族ポリマーおよびアクリルポリマーが包含される。
【0044】
希釈剤は成分に対する賦形剤または担体を提供するために含められ得る。希釈剤は必要に応じて加えられる。固体の希釈剤または増量剤は、典型的には、成分の乾燥重量を100重量%に至らせる量で加えられる。固体希釈剤は、これらに限定するものではないが、セルロースを含む。液体の希釈剤または溶媒は、本組成物の溶液、懸濁液、分散液または乳濁液を作るために使用される。これらの溶媒は水もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物であり得る。有機溶媒には、これらに限定するものではないが、アルコール、例えばメチル、エチルおよびイソプロピルアルコールなど、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランまたは1,2−ジメトキシプロパン、ならびにエステル、例えばブチロラクトン、エチレングリコールカルボネートおよびプロピレングリコールカルボネート、エーテルエステル、例えばメトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、1−メトキシプロピル−2−アセテート、2−メトキシプロピル−1−アセテート、1−エトキシプロピル−2−アセテートおよび2−エトキシプロピル−1−アセテート、ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン、ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリルおよびメトキシプロピオニトリル、スルホン、例えばスルホラン、ジメチルスルホンおよびジエチルスルホン、ならびにリン酸エステル、例えばトリメチルホスフェートおよびトリエチルホスフェートが包含される。また、溶媒は、合体性溶媒(coalescing solvent)、例えばエーテルなども含む。このようなエーテルの例としては、エチレングリコールフェニルエーテルおよびトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルが挙げられる。
【0045】
不透明なコーティング組成物は、任意の好適な方法により調製され得る。一つの方法は、水に不溶性のこれらの化合物を合体性溶媒中において可溶化または分散することである。水に不溶性のこれらの化合物を分散または可溶化する任意の溶媒を使用することができる。このような合体性溶媒には、これらに限定するものではないが、エステルアルコールおよびグリコールエーテルが包含される。その後、この溶液または分散液は、水性塩基部分を含有したポリマー結合剤および他の水溶性化合物を用いて乳化される。通常の乳化方法を用いて水中油型乳濁液を調製することができる。
【0046】
本組成物は濃縮物の形態であってよい。このような濃縮物の場合、固形分含有量は80重量%〜98重量%、または例えば85重量%〜95重量%の範囲であり得る。濃縮物は、水、一つもしくはそれ以上の有機溶媒、または水と一つもしくはそれ以上の有機溶媒との混合物で希釈され得る。濃縮物は、固形分含有量が5重量%から80重量%未満までになるように、または例えば10重量%〜70重量%、もしくは例えば20重量%〜60重量%になるように希釈され得る。
【0047】
本組成物は、任意の好適な基体に、例えば金属、木材、ガラス、セラミックおよびポリマー材料などに画像形成することができる。典型的には、本組成物は高分子材料上で像が形成される。高分子材料には、これらに限定するものではないが、セルロースおよびセルロースの誘導体、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、アクリロニトリル−スチレンポリマー、塩化ビニリデン、アクリロニトリルアクリルスチレンポリマー、アクリロニトリルエチレン−プロピレン−ターポリマースチレンポリマー、ポリウレタン、ポリビニルブチラールポリマー、ポリ−4−メチルペンテン−1ポリマー、ポリブテン−1ポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)ポリマー、ポリフッ化ビニルポリマー、ポリカルボネート、コポリエステルカルボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスル、芳香族ポリエステル、グリコール化ポリエステル、ポリアリラート、ならびにこれらの混合物が包含される。
【0048】
このような高分子材料は、典型的には、支持膜として使用される。これらの膜は、厚みが0.5mil〜10milの範囲であってよく、または例えば2mil〜8milの範囲であってよい。本組成物は、この支持膜上にコーティングされ、乾燥させられる。乾燥後、本組成物は選択的に画像形成される。本組成物上に形成された画像は、切れ目がつけられ、選定部分がポリマー基体から剥がされて廃棄され得る。残りの部分は、この基体から剥がされ、マスクとして作用させるべく、別の基体上に置かれ得る。このマスクと第二基体との色のコントラストまたはパターンに沿った被加工物は、作業者にその被加工物を改変するよう指示する。例えば、このマスクはステンシルとして機能することができる。マスクは、金属、木材、ガラス、セラミックまたはプラスチック基体へ適用され得る。マスク上のパターンは金属、木材またはプラスチック基体を選択的に露出し、露出された部分は、例えば標識またはポスターを作成するためなどの目的で、基体上に画像またはロゴを形成すべく塗装される。あるいは、基体の露出された部分は、切断されまたは切れ目がつけられてよい。これらの切断または切れ目がつけられた部分は取り除かれ、留め具のための穴を残すことができ、またはガラスを切削加工する場合などの如く基体の形を改変することができる。基体に残った本組成物の部分は、剥がし取られ、廃棄することができる。揮発性有機溶媒は何ら必要でない。
【0049】
本組成物は、インクジェットプリンター、レーザープリンターまたはレーザーにより画像形成され得る。任意の好適なインクジェット装置を用いて本組成物にインクを選択的に適用することができる。例えば、画像形成性組成物をポリマー膜に適用し、乾燥させることができる。その後、乾燥された画像形成性組成物を伴うポリマー膜は、インクジェット装置またはレーザープリンターに通される。インクジェット装置またはレーザープリンターは、選択的マスク設計のため、記憶装置に情報をデジタル方式で保存することができる。画像形成性組成物を伴うポリマー膜がこの装置またはプリンターに通されると、インクが適用され、乾燥した本組成物上に画像が形成される。好適なコンピュータープログラムの例は、ツーリングデータを発生させるための標準的なCAD(コンピューター支援設計)プログラムである。作業者は、インクジェット装置またはレーザープリンターにデジタル方式で保存されているプログラムを変更することにより、本組成物上へのインクの選択的な堆積を容易に修飾することができる。
【0050】
代替的に、本組成物はレーザーにより画像形成することもできる。本組成物を基体へ適用し、この組成物に画像を選択的に形成するようプログラムされたレーザーを適用することができる。レーザーからの熱が、この画像を、乾燥した組成物に焼き込む。基体から一部が剥がされ、残った部分がマスクとして作用する。その後、作業者は、基体の露出された部分を改変することができる。作業者が作業を終えた後、マスクを基体から剥がし、廃棄することができる。残ったあらゆる残留物は、マスク残留物と基体との色または陰影のコントラストのため、肉眼で見ることができ、剥がして取り除くことができる。
【0051】
また、本コーティング組成物は、画像形成性組成物から色素が浸出するのを防ぐために使用することもできる。フォトイメージング組成物は、基体、例えば航空機、自動車および他の物品の一部に画像を形成するために使用することができる。このような基体は、塗装する前に、下塗り剤でコーティングされることが多い。フォトイメージング組成物からの感光色素は、フォトイメージング組成物から基体上の下塗りに浸出することがある。これは、望ましくない色の変化の原因となり、フォトイメージング組成物の性能を損ねる可能性がある。この浸出を防ぐため、フォトイメージング組成物を適用する前に、顔料を多く組み込んだコーティング組成物を基体に適用することができる。更に、コーティング組成物中に顔料を多く組み込むことは、基体とフォトイメージング組成物の色との間に顕著な色のコントラストを創出する。これは、基体上のはっきりとした画像を作業者に提供し、これにより、作業者は、フォトイメージング組成物の色によって指示された通りに、この基体で作業を果たすことができる。更に、フォトイメージング組成物にではなくコーティング組成物に顔料を含めることは、フォトイメージング組成物のフォトスピード(photospeed)をファクターΔ=+0.5〜+1だけ増大させる。これらのコーティング組成物およびフォトイメージング組成物は、その後、作業者により基体から剥がされ、廃棄され得る。基体からこれらのコーティング組成物およびフォトイメージング組成物を取り除く際、環境面で好ましくない溶媒は何ら必要でない。
【0052】
上で説明されている用途に加え、不透明なコーティング組成物は、基体の一般的なマスキングまたは隠蔽のために使用することもできる。例えば、不透明なコーティング組成物は、表示の上に適用され、このブランクテンプレートに新たな表示を作成することができるブランクテンプレートを提供し得る。広告キャンペーンが行われるときには、アートワークが施されている不透明な本組成物を基体から剥がすことができ、及びこのプロセスを繰り返すことができる。他の用途には、これらに限定するものではないが、部屋を涼しい温度に維持するため、またはプライバシーを守るために行われる、窓のマスキングが含まれる。
【実施例】
【0053】
実施例1
二酸化チタンによる不透明なコーティング組成物
この不透明なコーティング組成物は、以下の表1に開示されている通りの配合を有している。
【0054】
【表1】

【0055】
このアクリルポリマーはラテックスポリマーであり、当技術分野において既知の方法により調製することができ、またはRHOPLEX(商標)E−1801の商品名で、ペンシルベニア州フィラデルフィアのRohm and Haas Companyから商業的に入手することができる。これらの液体化合物を室温で共に混合し、乳濁液を形成する。その後、平均サイズが1μmの酸化チタン粒子を前述の乳濁液と室温で混合し、懸濁液を形成する。この懸濁液は、二酸化チタン顔料により、白色の外観を有している。
【0056】
その後、このコーティング組成物を、50cm×40cmの寸法を有し、厚みが1milのポリカルボネート膜上に噴霧コーティングする。このコーティングを室温で空気乾燥させた後、圧電型ドロップ・オン・デマンド式インクジェットヘッドを備えたSpectra Apolloドロップ・オン・デマンド式インクジェット装置に入れる。このインクジェット装置は、アルファベット文字の輪郭を形成すべく、本コーティング組成物にインクを選択的に適用するようプログラムされている。ポリカルボネート膜上の本コーティング組成物をインクジェット装置に通した後、本コーティング組成物は前述の輪郭に沿って切れ目がつけられ、これらの輪郭内の部分がポリカルボネート膜から剥がされる。アルファベット文字の像を有する、パターン化されたマスクがポリカルボネート膜に残る。
【0057】
その後、このパターン化されたマスクは、ポリカルボネート膜から剥がされ、矩形の金属プレート上に載せられる。マスクは、文字の像以外の金属プレート全体を覆う。その後、マスクを伴った金属プレートは噴霧塗装される。その後、マスクは、金属プレートに表示を形成するレタリングを残した状態で、金属プレートから剥がされる。
【0058】
実施例2
不透明なコーティング組成物およびフォトイメージング組成物
不透明なコーティング組成物は、以下の表2に開示されている化合物から構成されている。
【0059】
【表2】

【0060】
ビニルアセテート/アクリルコポリマーは、当技術分野において既知である。このようなコポリマーは、ROVACE(商標)661の商品名でRohm and Haas Companyから商業的に入手可能である。ココアンホカルボキシグリシネートをエチレングリコールと混合して一様な懸濁液を形成した後、上述のコポリマー乳濁液に加え、混合する。その後、この混合物を水と混合する。平均粒子サイズが0.5μmの二酸化チタン顔料をこの乳濁液と混合する。結果として生じるコーティング組成物は白色の外観を有している。
【0061】
以下の感光成分を赤色光下において室温で調製する。
【0062】
【表3】

【0063】
上述のコポリマー、ビニル芳香族ポリマーおよび2−アルキル−2−イミダゾリンを水中において混合し、乳濁液を形成する。
【0064】
これらの画像形成成分、ロイコクリスタルバイオレット、トリブロモメチルフェニルスルホン、2’,4’,5’,7’−テトラヨード−3,4,5,6−テトラクロロフルオレセインジナトリウム塩、およびマイクロカプセル化された2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tertブチルフェノール)、をエチレングリコールフェニルエーテル中に可溶化し、有機溶液を形成する。これらの水性乳濁液および有機溶液を混合し、水中油型乳濁液フォトイメージング組成物を形成する。
【0065】
この不透明なコーティングを、アルミニウム表面に暗緑色を与えるBR127エポキシ下塗り剤でコーティングされたアルミニウム製の飛行機の機体の表面にローラーコーティングする。この不透明なコーティングは白色であり、アルミニウム表面との色のコントラストを提供する。この不透明なコーティングは、アルミニウム表面で空気乾燥される。
【0066】
感光組成物がこの不透明なコーティング上に噴霧コーティングされる。この感光組成物は半透明であり、感光組成物の下側にある不透明なコーティングを見ることができる。その後、この感光組成物が乾燥される。
【0067】
作業者は、5mWにおける3D、532nm Nd:YAGレーザーを用いて、この感光組成物上に会社のロゴの輪郭を選択的に画像化する。この輪郭は紫色になり、不透明なコーティングからの白色の背景は、この紫色の輪郭と暗緑色のアルミニウム表面との間に鮮明なコントラストを提供する。作業者はこの紫色の輪郭を容易に識別することができる。
【0068】
この感光組成物およびその下側にある不透明なコーティングは、紫色の輪郭に沿って切れ目がつけられ、輪郭内の部分が機体から剥がされて廃棄され、露出されたアルミニウム表面が残る。その後、露出されたアルミニウムに塗装が施され、機体に会社のロゴが形成される。その後、これらの感光組成物および不透明なコーティングの残りが機体から剥がされ、廃棄される。機体からこれらの感光組成物および不透明なコーティングを除去する際、環境面で好ましくない有機溶媒は何ら使用されない。
【0069】
この感光組成物からエポキシ下塗り剤へ染料が浸出した徴候は存在しない。このような浸出に特徴的な赤色は何ら観測されない。更に、本コーティング組成物に顔料を含めることは、通常の反射濃度計で測定したときに、ファクターΔ=+0.5から+1だけの色変化のフォトスピードを増大させるものと期待される。
【0070】
実施例3
酸化アルミニウムによる不透明なコーティング組成物
以下の組成物を室温で調製する。
【0071】
【表4】

【0072】
ナトリウム−N−ココ−β−アミノプロピオネートをスチレンおよびアクリルコポリマーと混合し、懸濁液を形成する。次いで、この懸濁液をトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルと混合し、第二の懸濁液を形成する。その後、水をこの懸濁液と混合する。この混合プロセスは室温で行われる。次いで、平均粒子サイズが0.5μmの酸化アルミニウム顔料を加える。この混合は室温で行われる。
【0073】
その後、不透明なコーティング組成物を、2milの厚みを有する50cm×30cmのポリエチレンテレフタレート膜上にローラーコーティングする。不透明なコーティングを伴うこの膜を、文字および数字の輪郭を形成すべく、不透明なコーティングにインクを選択的に適用するようプログラムされた通常のレーザープリンターに通す。次いで、この不透明なコーティングにこれらの輪郭に沿って切れ目をつけ、これらの部分を膜から剥がし、文字および数字のパターンを有するマスクを形成する。
【0074】
その後、このマスクを膜から剥がし、矩形の金属プレートに適用する。スプレーガンで塗料を適用する。マスクを金属プレートから剥がし、廃棄する。金属プレートからマスクを取り除く際、環境面で好ましくない有機溶媒は何ら使用されない。レタリングを伴うこの金属プレートを表示板として使用することができる。
【0075】
実施例4
酸化ジルコニウムを伴う不透明なコーティング組成物
以下の表に示されている不透明なコーティング組成物を作成する。
【0076】
【表5】

【0077】
2−アルキル−2−イミダゾリンをポリビニルアセテートポリマー結合剤と混合し、懸濁液を形成する。次いで、この懸濁液をジエチレングリコールジメチルエーテルと混合する。その後、水をこの混合物に加える。この混合プロセスは室温で行われる。
【0078】
2μmの平均粒径を有する酸化ジルコニウムを上述の混合物に加え、分散液を形成する。この混合は室温で行われる。
【0079】
次いで、この分散液を、1milの厚みを有する50cm×50cmのポリエチレンテレフタレート膜上に噴霧コーティングする。このコーティングを室温で乾燥させ、上述の膜上に不透明なコーティングを形成する。
【0080】
次いで、このコーティングされた膜を、圧電型ドロップ・オン・デマンド式インクジェットヘッドを備えたドロップ・オン・デマンド式Spectra Apolloインクジェット装置に通す。このインクジェット装置は、数字および文字の輪郭を形成すべく、不透明なコーティング組成物にインクを選択的に適用するようプログラムされている。膜をインクジェットに通した後、前述の輪郭に切れ目がつけられ、これらの輪郭内の部分が膜から剥がされる。不透明なコーティング組成物の残りを膜から剥がして金属プレートに適用し、パターン化されたマスクを形成する。マスクを伴う金属プレートに噴霧塗装を施す。その後、金属上に数字および文字の像を残した状態で、マスクが金属プレートから剥がされる。その後、作業者は、この金属プレートを道路標識に作り上げる。
【0081】
実施例5
タルクによる不透明なコーティング組成物
以下の表に開示されている成分により不透明なコーティング組成物を作成する。
【0082】
【表6】

【0083】
ジナトリウム−N−獣脂−β−イミノジプロピオネートをポリビニルピロリドンと混合し、懸濁液を形成する。次いで、この懸濁液をジイソプロピルエーテルと混合する。その後、水をこの混合物に加える。この混合は室温で行われる。
【0084】
0.5μmの平均粒子サイズを有するタルク顔料をこの混合物に加える。混合は室温で行われる。
【0085】
次いで、この不透明な組成物を、実施例4で説明されている通りのポリエチレンテレフタレート膜上に噴霧コーティングする。この不透明なコーティングを用いて、実施例4の如き標識を作成する。この不透明なコーティングは、剥ぎ取ることにより、金属プレートから除去される。
【0086】
実施例6
三酸化アンチモンを伴う不透明なコーティング組成物およびフォトイメージング組成物
以下の表に記載されている成分により不透明なコーティングを作成する。
【0087】
【表7】

【0088】
ココアンホカルボキシプロピオネートをポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン混合物と混合し、懸濁液を形成する。エチレングリコールフェニルエーテルを水と混合し、この組み合わせを上述の懸濁液と混合する。3μmの平均粒子サイズを有する三酸化アンチモン顔料をこの混合物に加え、分散液を形成する。
【0089】
この不透明な分散液を、エポキシ下塗り剤BR127でコーティングされたアルミニウム製の飛行機の機体上に噴霧コーティングする。その不透明なコーティングを乾燥させた後、実施例2の配合を有するフォトイメージング組成物をこの不透明なコーティングに適用する。次いで、このフォトイメージング組成物に選択的に画像形成する。その後、作業者は、実施例2の如く、画像によって指示された通りに、アルミニウム製の機体で一以上の作業を実行する。
【0090】
本コーティング組成物に三酸化アンチモンを含めることは、反射濃度計で測定したときに、ファクターΔ=+0.5から+1だけ、レーザーに対するフォトイメージング組成物の応答を高めるものと期待される。また、フォトイメージング組成物からエポキシ下塗り剤への顕著な染料の浸出も存在しない。これらの不透明なコーティングおよびフォトイメージング組成物がアルミニウムから剥がされる。環境面で好ましくない有機溶媒は何ら必要でない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、5重量%〜80重量%の量の一以上の不透明化化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、それらのシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む、組成物。
【請求項2】
一以上の不透明化化合物が、顔料、金属塩、シリカ、ケイ酸塩およびクレーから選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
両性化合物が、組成物の0.1重量%〜6重量%の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
両性化合物がpH3〜pH8の等電点を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
組成物であって、10重量%〜50重量%の量の一以上の不透明化化合物、ならびにα−アミノカルボン酸、β−アミノカルボン酸およびそれらの塩から選択される一以上の両性化合物を含む、組成物。
【請求項6】
一以上の不透明化化合物が、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化セリウム、五酸化ヒ素、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化カドミウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化鉛および酸化亜鉛から選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
a)一以上の不透明化化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、それらのシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む組成物を提供する工程、
b)該組成物を第一の基体へ適用する工程、
c)該組成物に選択的に画像形成し、パターン化されたマスクを形成する工程、
d)第一の基体から該パターン化されたマスクを剥がす工程、
e)該パターン化されたマスクを第二の基体へ適用する工程、および
f)該パターン化されたマスクによって指示された通りに、第二の基体に一以上の作業を実施する工程、
を含む方法。
【請求項8】
組成物が、インクジェット装置、レーザープリンターまたはレーザーを用いて画像形成される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
a)一以上の不透明な化合物、ならびにアミノカルボン酸、両性イミダゾリン誘導体、ベタイン、フルオロカーボン、それらのシロキサンバージョンおよび高分子両性界面活性剤から選択される一以上の両性化合物を含む組成物を提供する工程、
b)該組成物を基体へ適用する工程、
c)該組成物に画像形成する工程、および
d)該画像によって指示された通りに、基体に一以上の作業を実施する工程、
を含む方法。
【請求項10】
画像がレーザーを用いて形成される、請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2007−92030(P2007−92030A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−212108(P2006−212108)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】