説明

改善された中間接着性を有する2層被覆システム

(A)少なくとも1つのヒドロキシ官能性結合剤を含む、光線により硬化可能な、又は光線と熱により硬化可能な透明なクリアコート組成物、及び(B)顔料着色されたコート組成物を含む、二層被覆を製造するための二層被覆システムであって、この際、前記顔料着色されたコート組成物は、少なくとも1つの水溶性又は水分散性のブロックトイソシアネートを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線及び場合により熱で硬化可能な透明なコートと、顔料着色されたコートとを含む、二層被覆を製造するための二層被覆システムに関し、このシステムは少なくとも1つのヒドロキシ官能性結合剤を前記透明なコートの被覆組成物中に含むものである。
【0002】
多層被覆はとりわけ、自動車塗装、及びシート塗装で多岐にわたって適用される。ここで自動車塗装の場合には通常、電着塗装、充填材、並びにベースコートとクリアコートとから成るトップコートからの多層被覆システムが使用される。例えば成形部材を製造するために使用可能な多層の着色及び/又はエフェクトをもたらすシートは、通常、担体シート、少なくとも1つのベースコート、及びクリアコートを含み、これらは自動車塗装の相応するコートに通常組成の点で対応している。
【0003】
トップコート塗装は通常、ウェットオンウェット法で施与され、この際に両方のコートはベースコートのフラッシュオフ(中間乾燥)後に近距離で、しかしながらベースコートはその間の時間に架橋されずに適用され、その後一緒に硬化される。ベースコートのフラッシュオフ(中間乾燥)後に前記ベースコートは、施与されたクリアコートによって溶け出さないのが望ましいので、両方の塗料は通常、著しく異なる極性を有する溶剤をベースとする。この際には通常、水性ベースコートと非水性クリアコートが使用される。
【0004】
溶剤放出を回避するために近年では、純粋に光線硬化性のクリアコートと、デュアルキュアのクリアコート(化学線と熱により硬化可能なクリアコート)が使用されるが、これはとりわけ、まだ硬化していない被覆剤の溶剤含分が僅かな場合でも低粘度であることが特徴であり、またそれ自体良好な特性として利用できる。
【0005】
そこでWO 2006/058680 A1には、光線により硬化可能な、及び場合により付加的に熱によっても硬化可能であり、かつカバー層として、とりわけ自動車クリアコートと自動車トップコートとして、又は自動車クリアコートと自動車トップコートで、並びにシートの被覆として使用される、耐引掻性の被覆が記載されている。前記被覆は構成成分として、少なくとも1つのイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物、少なくとも1つのケイ素原子と少なくとも1つのイソシアネート反応性基とを含有する少なくとも1つの化合物、並びに少なくとも1つのイソシアネート反応性基と少なくとも1つのラジカル重合可能な基とを有する少なくとも1つの化合物を含む。しかしながらここには、耐引掻性の被覆に使用可能な多層被覆は記載されていない。
【0006】
DE 10 2005 053 663 A1には、ラジカル重合により硬化可能な、水性で構造粘性の粉末分散液が記載されており、前記分散液は分散相として平均粒径が80〜750nmの粒子を有し、ここで前記粒子は、ガラス転移温度が−70℃〜+50℃であり、オレフィン性不飽和二重結合含分が2〜10当量/kgであり、かつ酸基含分が0.05〜15当量/kgを、粒子に対して50〜100質量%の量で有する、少なくとも1つのラジカル架橋性結合剤を含むものである。粉末分散液はとりわけ、クリアコートとして使用できる。しかしながら、ラジカル重合により硬化可能な、水性で構造粘性の粉末分散液を使用することができる特別な多層被覆は、記載されていない。
【0007】
WO 2006/067003 A1には、イソシアネート反応性官能基を有し、イソシアネート不含であり、かつ化学線で活性化可能な結合を有する官能基を有するか、又はこれらの官能基を含まない、少なくとも1つの成分(A)を含む、多成分システムが記載されている。前記システムはさらに、イソシアネート基を含み、イソシアネート反応性基不含であり、かつ場合により化学線で活性化可能な結合を有する官能基を有する、少なくとも1つの成分(B)を含む(ただし、2つの成分(A)又は(B)の少なくとも片方は、化学線で活性化可能な結合を有する官能基を有する)。この際に成分(A)、又は成分(A)の少なくとも1つの成分は、少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基を含む低分子性、オリゴマー性、及びポリマー性の光保護剤から成る群から選択される少なくとも1つの光保護剤(L)、並びに少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基を有する少なくとも1つの光開始剤(P)を含む。これらから製造されるデュアルキュア可能な混合物は、シート及び成形部材の製造に、並びに被覆物質として、とりわけ多層塗装のクリアコート塗装に適している。この際に使用可能なベースコート塗料は、詳細には記載されていない。
【0008】
DE 10 2005 049 520 A1には、被覆されたシートから成形部材を製造するための方法と、この方法から製造される成形部材が記載されている。この文献に記載されたシートは、顔料着色された被覆剤(P)で、そしてまたラジカル架橋可能な成分(KK)を含み、かつ最終架橋後に透明な被覆(KE)をもたらす架橋可能な被覆剤(K)で被覆されている。ここでラジカル架橋可能な成分(KK)は、
(i)1つ又は複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は1つ又は複数のポリウレタン(メタ)アクリレート、及び
(ii)平均で1分子当たり1つより多いエチレン性不飽和二重結合、
(iii)1,000〜10,000g/molの数平均分子量
(iv)反応性成分(KK)1,000g当たり1.0〜5.0molの二重結合含分、
(v)1分子当たり平均で>1の分枝点、
(vi)成分(KK)の質量に対してその都度、5〜50質量%の環状構成要素、
(vii)鎖中に少なくとも6個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪族構成要素、
を有し、この際にラジカル架橋可能な成分(KK)は、カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基を含む。ラジカル架橋性成分(KK)はこの際、ポリウレタン(メタ)アクリレートの他に、さらに他の官能基、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、及び/又はチオール基を有する成分を有することができる。さらに顔料着色された被覆剤(P)としては、溶剤含有性又は水性の被覆剤が使用され、この被覆剤は通常、
(I)1つ又は複数の溶剤及び/又は水、
(II)1つ又は複数の結合剤、好ましくは1つ又は複数のポリウレタン樹脂、及び/又は1つ又は複数のアクリレート樹脂、及び
(III)場合により少なくとも1つの架橋剤、
(IV)少なくとも1つの顔料、並びに
(V)場合により1つ又は複数の通常の助剤と添加剤
を含むものである。
【0009】
WO 2006/117091 A1には、まず透明な被覆によって、そしてそれから顔料着色された被覆で被覆されたシートの製造方法、そのシート自体、そして成形部材としての前記シートの使用が記載されている。ここでシートは、被覆から剥がすことができる。架橋可能な被覆剤(K)は、1つのラジカル架橋可能な成分(KK)を含み、この成分(KK)は、
(i)1つ又は複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は1つ又は複数のポリウレタン(メタ)アクリレートを含み、かつ
(ii)1,000〜50,000g/molの数平均分子量、及び
(iii)反応性成分(KK)1,000g当たり1.0〜5.0molの二重結合含分を有し、この際にラジカル架橋可能な成分(KK)は、
(iv)1分子当たり平均で>1の分枝点、
(v)成分(KK)の質量に対してその都度、5〜50質量%の環状構成要素、
(vi)鎖中に少なくとも6個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪族構成要素、及び
(vii)カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基を含むものである。ポリウレタン(メタ)アクリレートはこの際、さらに他の官能基、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及び/又はチオール基を有することができる。顔料着色された被覆の結合剤としてはこの際、自動車工業の分野におけるベースコートで通常使用されるポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂が適している。その上、顔料着色された被覆剤は、さらに少なくとも1つのアミノプラスト樹脂を架橋剤として含むことができる。
【0010】
しかしながら多層コートの外観形成には、多様な要求が求められており、これらの要求は従来公知のシステムによっては、不充分にしか満たされていない。よって、ベースコート上でのクリアコートの接着性は、多くの場合で求められる要求を持続的には満たさない。
【0011】
従って本発明の課題は、二層システムの光学特性(「外観」)とその硬化性、とりわけその光線硬化性に否定的な影響を与えることなく、光線及び場合により熱により硬化可能な透明なコートと、2つの層の間の改善化された中間接着性を有する顔料着色されたコートとから成る多層被覆を製造するために使用可能な二層被覆システムを提供することである。さらに、とりわけ被覆されたシートの範囲では、生じる被覆の可撓性が高いことが望ましい。
【0012】
前掲の課題は、透明なコートの被覆組成物中に少なくとも1つのヒドロキシ官能性結合剤と、顔料着色されたコート組成物中に少なくとも1つの水溶性又は水分散性のブロックトイソシアネートとを有する、二層被覆システムによって解決される。
【0013】
ここで本発明の意味合いにおいて「ブロックトイソシアネート」とは、イソシアネート基が他の化合物(ブロック剤)によって可逆的に変換されている(ブロックされている)イソシアネートと理解されるべきである。通常のブロック剤は例えば、カプロラクタム、ブタノンオキシム、又はマロン酸ジエチルエステル、並びに芳香族若しくは脂環式のアミン、とりわけトリアゾール誘導体とピラゾール誘導体、並びに第二級アミンである。これらのブロック剤はその適用後、硬化の際に初めて脱離し、その結果、放出されたイソシアネート基はこの後、反応に利用可能になる。本発明の意味合いにおいて「ブロックトイソシアネート」とは特に好ましくは、トリアゾール誘導体又はピラゾール誘導体でブロックされたイソシアネートである。
【0014】
さらに、使用されるブロックトイソシアネートは水溶性又は水分散性である。この際ブロックトイソシアネートは、水への溶解性が25℃で10g/L超であれば水溶性とみなされる。ブロックトイソシアネートは、水相で最大平均粒径が5μmの微細に分散された相が得られるように水相で分散可能であれば、水分散性とみなされる。粒径は当業者に公知の適切な手法で、例えば顕微鏡又はレーザー回折法で測定できる。
【0015】
本発明の意味合いにおいて使用可能なブロックトイソシアネートとは、脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、又は脂環式のイソシアネートであってよい。特に好ましくは、被覆の充分なUV安定性を保証するために、脂肪族イソシアネートを使用する。
【0016】
使用されるブロックトイソシアネートは、モノマー性、オリゴマー性、又はポリマー性であってよい。使用される少なくとも1つのイソシアネートがポリマー性であれば、特に良好な中間接着が生じる。極めて特に好ましくは、使用されるイソシアネートは、平均官能性が2〜5個のイソシアネート基であり、かつ平均モル質量が500〜20000g/mol(質量平均)である。
【0017】
モル質量の測定は、ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィーで行う。
【0018】
特に有利に使用されるブロックトイソシアネートは、水溶性改善のためにポリエチレンオキシド基又はオリゴエチレンオキシド基を含む、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)又はIPDI(イソホロンジイソシアネート)のポリマー又はオリゴマーをベースとするポリマー性イソシアネートである。
【0019】
顔料着色されたコート組成物中のブロックトイソシアネート割合は、顔料着色されたコート組成物の固体含分に対して好適には15質量%〜35質量%、特に好ましくは20質量%〜30質量%である。
【0020】
特に好ましくは、≦150℃の温度、好ましくは≦130℃の温度で脱ブロック化可能な非結晶性ブロックトイソシアネートを使用する。前記ブロックトイソシアネートの使用によってエネルギーを節約した接着が可能になることとは別に、前記ブロックトイソシアネートは、被覆されたシートを製造するために使用可能な顔料着色されたベースコート組成物中で特に良好に使用可能である。非結晶性イソシアネートとは、大部分、又はほとんどが非晶質状態又は液状で存在するイソシアネートと理解される。そのような非結晶性ブロックトイソシアネートはとりわけ、HDI又はIPDIのオリゴマー、若しくはこれら2つの混合物である。オリゴマーとは、アロファネート、ウレトジオン、イソシアヌレート、又は他のイソシアネート付加生成物であってよい。
【0021】
本発明の意味合いにおいて二層被覆システムとは好ましくは、顔料着色された水性コート組成物と、透明な非水性クリアコート組成物とからのシステムである。このようなコート組成物は、硬化後に2層システムとして、例えば自動車生産塗装において、環境の影響に対して高い耐性を有するトップコートを形成する。ここで水性コート組成物とは、その溶媒割合が主に水からなる、すなわち場合により存在する非水性補助溶媒の割合が、水性の特徴が残ったままであるくらい高く、かつその水含分が5質量%超、好適には20質量%超、及びとりわけ好ましくは40質量%超であると理解される。ここで非水性コート組成物とは、その水含分が5質量%超、好ましくは3質量%超、及び特に好ましくは1質量%超であると理解される。ここで「非水性コート組成物」という用語は、均一な非水性溶剤含有コート及び粉末塗料を含む。
【0022】
好ましくは、顔料着色されたコート組成物中で、溶剤含有性又は水性の顔料着色された被覆剤(P)(一般的には物理的に、又は熱的に、及び/又は化学線により硬化可能なもの)を使用する。この被覆剤は好ましくは
(I)1つ又は複数の溶剤及び/又は水、
(II)1つ又は複数の結合剤、好ましくは1つ又は複数のポリウレタン樹脂及び/又はアクリレート樹脂、
(III)場合により、少なくとも1つの架橋剤、
(IV)1つ又は複数の顔料、並びに
(V)場合により、1つ又は複数の通常の助剤と添加剤、
を含み、これらは例えばDE 10 2005 049 520 A1に記載されている。この際、この被覆剤によって最適な結果が達成される。
【0023】
(P)のための有利な例は、通常の及び公知の物理的及び/又は熱的に硬化可能な慣用の又は水性のベースコートであり、例えばWO 03/016095 A1 10頁15行目〜14頁22行目、又はとりわけUS-A-5,030,514 第2コラム63行目〜第6コラム68行目、及び第8コラム53行目〜第9コラム10行目から、並びにEP-B-754 740 第3コラム37行目〜第6コラム18行目から公知である。
【0024】
極めて特に好ましくは、熱硬化性の水性ベースコート(P)を使用する。
【0025】
ここで結合剤として適しているのはとりわけ、自動車工業分野におけるベースコートで通常使用されるポリウレタン樹脂とアクリレート樹脂であり、この際、この結合剤製造のために使用される構成成分の種類と量の選択によって、当業者に公知の方法で、とりわけ可撓性、ひいては本発明による方法のための結合剤の特性が制御される。詳細については、再度、例えばUS-A-5,030,514 第2コラム63行目〜第6コラム68行目、及び第8コラム53行目〜第9コラム10行目を指摘しておく。
【0026】
その上、顔料着色された被覆剤は好ましくは、さらに少なくとも1つのアミノプラスト樹脂を架橋剤として含む。原則的には、塗料工業分野で通常使用されるアミノプラスト樹脂が適切であり、この際、アミノプラスト樹脂の反応性によって、顔料着色された被覆剤の特性を制御することができる。
【0027】
この際、顔料着色された被覆剤中の結合剤若しくは場合により存在するアミノプラスト樹脂の割合は、結合剤とアミノプラスト樹脂との総和量に対してその都度、ポリウレタン樹脂を0〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、アクリレート樹脂を0〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、そしてアミノプラスト樹脂を0〜45質量%、好ましくは5〜40質量%含む。
【0028】
顔料着色された被覆剤(P)の全質量に対して、結合剤と場合により存在するアミノプラスト樹脂の割合は通常、10〜70質量%、好ましくは30〜60質量%である。
【0029】
顔料着色されたコート組成物は加えて、少なくとも1つの顔料を含む。顔料は好適には、有機、無機、着色性、エフェクト付与性、着色エフェクト付与性、磁気遮蔽性、電気伝導性、腐食防止性、蛍光性、及びリン光性の顔料から成る群から選択される。好適には、着色及び/又はエフェクトを付与する顔料を使用する。
【0030】
適切なエフェクト顔料(さらに着色性であってもよい)の例は、金属フレーク顔料、例えば市販のアルミニウムブロンズ、DE 36 36 183 A1に記載のクロム化されたアルミニウムブロンズ、及び市販の特殊鋼ブロンズ、並びに非金属性エフェクト顔料、例えばパール光沢顔料若しくは干渉性顔料、酸化鉄ベースのフレーク状エフェクト顔料、又は液晶エフェクト顔料である。これらの顔料は補完的に、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, 1998, p176、及びp380〜381の"Metalloxid-Glimmer-Pigmente"〜"Metallpigmente"で指摘されている。
【0031】
適切な有機及び/又は無機の着色性顔料は、塗料工業で通常使用される顔料である。
【0032】
顔料着色されたコート組成物中における顔料の含分は、非常に幅広く変えることができるが、第一に調整されるべき色の濃さ及び/又はエフェクトの強度に従って、並びに顔料着色されたコート組成物中の顔料の分散性に従って調整される。顔料含分は好適には、顔料着色されたコート組成物の全質量に対してその都度、0.5〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは2〜20質量%、及びとりわけ2.5〜10質量%である。
【0033】
前述の顔料のほかに、顔料着色されたコート組成物は通常の、及び公知の助剤と添加剤、例えば有機及び無機の、透明な、及び隠蔽性の充填材及びナノ粒子を含むことができ、並びにさらなる通常の助剤と添加剤を被覆剤(P)に対して通常の量、好ましくは0〜40質量%で含むことができる。
【0034】
顔料着色されたコート組成物は通常、少なくとも15μm、好ましくは20〜100μm、特に好ましくは20〜50μmの乾燥膜厚が生じる量で塗布する。
【0035】
本発明による二層被覆システムはさらに、少なくとも1つのヒドロキシ官能性結合剤を含有する、光線により、又は光線と熱により硬化可能な透明なクリアコート組成物を含む。クリアコートとは、EN ISO 4618:2006に従い、基材上に施与されて、保護作用のある、装飾性の、又は特定の工業特性を有する透明な被覆を形成する被覆剤と理解される。透明なクリアコートは一般的に顔料又は充填材を含まず、最良の場合には着色剤又は非常に微細な透明の顔料を含む。クリアコートの透明な特徴は、この際残ったままである。本発明による二層被覆システムの透明なクリアコートは、その隠蔽力が、本発明による二層被覆システムの顔料着色されたコート組成物よりも低い。
【0036】
透明なコートの組成物中のヒドロキシ官能性結合剤は好適には、さらに少なくとも1つのラジカル反応基を有する通常のオリゴヒドロキシ官能性又はポリヒドロキシ官能性の結合剤である。この文脈でラジカル反応基とは、炭素炭素二重結合を有する基、及び炭素炭素三重結合を有する基と理解され、好ましいのはビニル基と(メタ)アクリル基である。これらの基が存在することにより、ヒドロキシ官能性結合剤と、透明なコート組成物の光線硬化性成分との反応が可能になる。ヒドロキシ官能性結合剤のための好ましい化合物は、(メタ)アクリレート基という観点では、モノ官能性、オリゴ官能性、又は多官能性の(メタ)アクリレートポリオール、ヒドロキシ官能性ウレタンアクリレート並びに(メタ)アクリル化されたポリエーテル、及びポリエステルポリオールである。特に良好な結果は、ペンタエリトリトールトリアクリレート、及びジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリレートによって達成される。ヒドロキシ官能性ウレタンアクリレートによっても、特に良好な結果が得られる。
【0037】
ヒドロキシ官能性結合剤は好適には、50〜150のヒドロキシ数(OHZ)を持っている。ヒドロキシ数は、ヒドロキシ官能性結合剤の試料を無水酢酸−ピリジンで煮沸し、そして生じる酸を水酸化カリウム溶液で滴定することによって測定される。ヒドロキシ数は、何ミリグラムの水酸化カリウムが、アセチル化の際にヒドロキシ官能性結合剤1gと結合される酢酸量と等量であるかによって得られる。
【0038】
さらにヒドロキシ官能性結合剤は好適には、ラジカル反応基について1000gあたり4.0〜11.0molの官能性を有する。
【0039】
ヒドロキシ官能性結合剤の質量平均分子量は、好ましくは300〜2000g/molである。モル質量の測定は、ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィーで行う。
【0040】
透明なコート組成物中のヒドロキシ官能性結合剤の割合は、透明なコート組成物の固体割合に対して好適には1.5〜10質量%である。とりわけこの範囲で、最適な結果が達成される。
【0041】
透明なコート組成物はさらに、好適には非水性のコート組成物であり、かつ好適には、1つ又は複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又は1つ又は複数のポリウレタン(メタ)アクリレートを含有するラジカル架橋性成分(KK)を含む。
【0042】
ここで、そしてこれ以降、オリゴマーとは、一般的に平均で2〜10個の基礎構造又はモノマー単位を有する化合物と理解される。これに対してポリマーとは、一般的に平均で10個より多い基礎構造又はモノマー単位を有する化合物と理解される。このような混合物若しくは物質総体(Gesamtheit)は、専門分野では結合剤又は樹脂とも呼ばれる。これとは異なり、ここで、そしてこれ以降、低分子化合物とは、基本的に1つの基礎構造又はモノマー単位から誘導される化合物と理解される。
【0043】
ラジカル架橋性成分(KK)は好ましくは、その都度成分(KK)の固体含分に対して、少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも70質量%、1つ又は複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は1つ又は複数のポリウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0044】
ここでラジカル架橋性成分(KK)好ましくは、その都度成分(KK)の質量に対して5質量%未満、好ましくは1質量%未満、遊離イソシアネート基を含み、とりわけ検出可能な遊離イソシアネート基をほとんど含まない。
【0045】
ここでラジカル架橋性成分(KK)が
(i)1つ又は複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は1つ又は複数のポリウレタン(メタ)アクリレート、及び
(ii)平均で1分子当たり1つより多いエチレン性不飽和二重結合、
(iii)1,000〜10,000g/molの数平均分子量
(iv)反応性成分(KK)1,000g当たり1.0〜5.0molの二重結合含分、
(v)1分子当たり平均で>1の分枝点、
(vi)成分(KK)の質量に対してその都度、5〜50質量%の環状構成要素、
(vii)鎖中に少なくとも6個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪族構成要素、及びさらに
(viii)カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基
を含んでいれば、特に良好な二層被覆が生じる。
【0046】
架橋可能な被覆剤(K)中に含まれているラジカル架橋性成分(KK)はまた、様々な二重結合含分、分子量、二重結合等価質量、分枝点含分、及び環式並びに鎖式の脂肪族構成要素含分、及びカルバメート基、ビウレット基、アロファネート基、アミド基、及び/又は尿素基を有することができる様々なオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートを含有し得る。
【0047】
ここでこの混合物は、様々なオリゴウレタン(メタ)アクリレート若しくはポリウレタン(メタ)アクリレートを混合することによって、或いは相応するオリゴウレタン(メタ)アクリレート若しくはポリウレタン(メタ)アクリレートを製造する際に同時に異なる生成物が生成することによって得られる。
【0048】
ウレタン(メタ)アクリレートの他に、成分(KK)のさらなるラジカル架橋性成分として考慮されるのは、モノマー、好ましくはまたオリゴマー及び/又はポリマー、とりわけポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル官能性(メタ)アクリルコポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、アミノ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、及び/又はシリコーン(メタ)アクリレート、好ましくはポリエステル(メタ)アクリレート、及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート、及び/又はポリエーテル(メタ)アクリレートである。ここで好ましいのは、二重結合に加えて付加的にさらにヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及び/又はチオール基を含むポリマーである。
【0049】
良好な架橋を得るために好ましくは、官能基の反応性が高いラジカル架橋性成分(KK)を使用し、特に好ましくは、官能基としてアクリル二重結合を有するラジカル架橋性成分(KK)を使用する。
【0050】
ウレタン(メタ)アクリレートは当業者に公知の方法で、イソシアネート基含有化合物と、イソシアネート基に対して反応性の基を有する少なくとも1つの化合物から、任意の順序でこれらの成分を混合することによって、場合により高められた温度で製造することができる。好ましくはこの際、イソシアネート基に対して反応性の基を有する化合物を、好ましくは複数の工程で、イソシアネート基含有化合物に添加する。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレートはとりわけ、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを装入し、そしてそれから少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又は他のエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルを添加し、これによってまずイソシアネート基の一部を変換することによって得られる。この後、ジオール/ポリオール、及び/又はジアミン/ポリアミン、及び/又はジチオール/ポリチオール、及び/又はアルカノールアミンの群からの連鎖延長剤を添加し、それによって残りのイソシアネート基を連鎖延長剤と反応させる。
【0052】
さらに、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを連鎖延長剤と反応させ、そして引き続き残りの遊離イソシアネート基と少なくとも1つのエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルとを反応させることによって、ウレタン(メタ)アクリレートを製造することが可能である。
【0053】
もちろんまた、これら2つの方法の全体的な中間形態も可能である。例えば、ジイソシアネートのイソシアネート基の一部をまず、ジオールと反応させ、引き続きイソシアネート基のさらなる一部をエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルと、そしてこれに連続して残りのイソシアネート基とジアミンとを反応させることができる。
【0054】
反応は通常、5〜100℃、好ましくは20〜90℃、及び特に好ましくは40〜80℃、とりわけ60〜80℃の温度で行うことができる。
【0055】
この際に好ましくは、水不含条件下で作業する。ここで水不含とは、反応系内の水含分が5質量%以下、好ましくは3質量%以下、及び特に好ましくは1質量%以下であることを意味する。
【0056】
重合可能な二重結合の重合を抑制するために、好ましくは酸素含有ガス下で、特に好ましくは空気又は空気−窒素混合物下で作業する。酸素含有ガスとして好ましくは、空気、又は酸素若しくは空気と、使用条件下で不活性のガスとからの混合物を使用できる。不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、低級炭化水素基、又はこれらの混合物を使用できる。酸素含有ガスの酸素含分は例えば、0.1〜22体積%、好ましくは0.5〜20体積%、特に好ましくは1〜15体積%、極めて特に好ましくは2〜10体積%、及びとりわけ4〜10体積%であり得る。所望の場合にはもちろん、より高い酸素含分を使用することができる。
【0057】
反応は不活性溶媒、例えばアセトン、イソブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、又はエトキシエチルアセテートの存在下で行うこともできる。
【0058】
この際、使用されるジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、連鎖延長剤、及びヒドロキシアルキルエステルの種類と量を選択することによって、ウレタン(メタ)アクリレートのさらなる特性値、例えば二重結合含分、二重結合等価質量、分枝点含分、環状構成要素含分、少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素含分、ビウレット基含分、アロファネート基含分、カルバメート基含分、尿素基含分、若しくはアミド基含分などが制御される。
【0059】
ジイソシアネート又はポリイソシアネート、連鎖延長剤、及び連鎖延長剤の使用量をその都度選択することによって、並びに連鎖延長剤の官能性によってさらに、エチレン性不飽和二重結合の他にさらに他の官能基、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及び/又はチオール基などを含むウレタン(メタ)アクリレートの製造が可能になる。この際に好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレートはさらにヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基を含む。
【0060】
とりわけ、ウレタン(メタ)アクリレートを水性被覆剤(K)中で使用すべき場合には、反応混合物中で前処理された遊離イソシアネート基の一部をさらに、イソシアネート反応性基、好ましくはヒドロキシ基、チオール基、及び第一級と第二級アミノ基の群から選択される基、とりわけヒドロキシ基、並びに少なくとも1つの、とりわけ1つの酸基、好適にはカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基から成る群から選択される酸基、とりわけカルボキシ基を有する化合物と反応させる。この種類の適切な化合物の例は、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、又はγ−ヒドロキシ酪酸、とりわけヒドロキシ酢酸である。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートの他に適切なポリエステル(メタ)アクリレートは、原則的に当業者に公知である。これらは様々な手法によって製造可能である。例えばアクリル酸、及び/又はメタクリル酸は、ポリエステル合成の際に酸成分として直接使用できる。この他に、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを、アルコール成分としてポリエステル合成の際に直接使用する可能性がある。またポリエステル(メタ)アクリレートは好ましくは、ポリエステルのアクリル化によって製造される。例えばまず、ヒドロキシ基含有ポリエステルを合成し、それからアクリル酸又はメタクリル酸と反応させることができる。また、まずカルボキシ基含有ポリエステルを合成し、それからアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルと反応させることができる。未反応の(メタ)アクリル酸は、洗浄、蒸留によって、又は好ましくは適切な触媒、例えばトリフェニルホスフィンを用いて等量のモノエポキシド化合物若しくはジエポキシド化合物と反応させることによって、反応混合物から除去することができる。ポリエステルアクリレート製造のさらなる詳細についてはとりわけ、DE公開公報33 16 593とDE公開公報38 36 370を、そしてまたEP-A-54 105、DE-AS 20 03 579、及びEP-B-2866を指摘しておく。
【0062】
さらに適切なポリエーテル(メタ)アクリレートは原則的に、当業者に同様に公知である。これらは様々な手法によって製造可能である。アクリル酸及び/又はメタクリル酸でエステル化されるヒドロキシ基含有ポリエーテルは例えば、二価及び/又は多価のアルコールと、様々な量のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとの反応によって、よく知られた手法(例えばHouben-Weyl, Band XIV, 2, Makromolekulare Stoffe II, (1963)を参照)で得ることができる。テトラヒドロフラン又はブチレンオキシドの重合生成物も使用可能である。
【0063】
この際、使用されるアルコール成分及び酸成分の種類と量を選択することによって、ポリエーテル(メタ)アクリレートとポリエステル(メタ)アクリレートのさらなる特性値、例えば二重結合含分、二重結合等価質量、分枝点含分、環状構成要素含分、少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素の含分などが制御される。
【0064】
さらに、エポキシ(メタ)アクリレートも当業者に充分に公知であるため、より詳細に説明する必要はないだろう。これらは通常、アクリル酸をエポキシ樹脂に、例えばビスフェノールAベースのエポキシ樹脂又は他の市販のエポキシ樹脂に付加させることにより製造される。
【0065】
本発明に重要なのはさらに、ラジカル架橋性成分(KK)が一分子当たり平均で1つより多い、好適には少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有することである。ラジカル架橋性成分(KK)は特に好ましくは、一分子当たり2つ超〜最大10.0、とりわけ3.0〜9.5、好ましくは3.5〜9.0、及び極めて特に好ましくは4.0〜8.5の二重結合を有する。
【0066】
ラジカル架橋性成分(KK)は一般的に、一分子基当たりエチレン性不飽和二重結合を1つだけ有する化合物を、10質量%以下、好ましくは7.5質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、極めて特に好ましくは2.5質量%以下、とりわけ1質量%以下、及び特に0質量%含む。
【0067】
ラジカル架橋性成分(KK)の一分子当たりの二重結合含分が増加するにつれて、一般的に最終架橋された透明な被覆(KE)の架橋密度が上昇する。しかしながら同時に一般的には、ラジカル架橋性成分(KK)の一分子当たりの二重結合含分が増加するにつれて、最終架橋された透明な被覆(KE)の破断点伸びが低下する、すなわちシステムがより脆くなる。従って最終架橋された透明な被覆(KE)は、一分子当たりの二重結合含分が増加するにつれて、UV硬化後に応力亀裂を生じる傾向がより高い。
【0068】
この際、成分(KK)への二重結合の導入は上述のように一般的に、1つ又は複数のエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルと、ウレタン(メタ)アクリレートの場合にはイソシアネート若しくはイソシアネートプレポリマーのイソシアネート基との反応によって、若しくはポリエステル(メタ)アクリレートの場合にはポリエステルの酸基との反応によって行われる。同様に上記の出発オリゴマー若しくは出発ポリマー、例えばポリエステル、ポリエーテル、エポキシド、及びアクリレートポリマーと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又は他のエチレン性不飽和酸と反応させることができる。
【0069】
適切なエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルの例は、アクリル酸及びメタクリル酸の、マレイン酸及びフマル酸の、クロトン酸及びイソクロトン酸の、並びに酢酸ビニルのヒドロキシアルキルエステルであり、好ましいのはアクリル酸のエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルである。特に好ましくは、上記不飽和酸、とりわけアクリル酸の、エチレン性不飽和ヒドロキシエチルエステル、及び/又はヒドロキシプロピルエステル、及び/又はヒドロキシブチルエステル、及び/又はヒドロキシペンチルエステル、及び/又はヒドロキシヘキシルエステルを、極めて特に好ましくは、上記不飽和酸、とりわけアクリル酸の、エチレン性不飽和ヒドロキシエチルエステルを使用するか、前記エチレン性不飽和ヒドロキシエチルエステルをエチレン性不飽和ヒドロキシブチルエステルと共に使用する。
【0070】
成分(KK)に二重結合を導入するためにはもちろん、一分子当たり1つより多い二重結合を有するヒドロキシアルキルエステル、例えばペンタエリトリットジアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレート、及びペンタエリトリットテトラアクリレートなどを使用することができる。極めて特に好ましくは、成分(KK)に二重結合を導入するために、2−ヒドロキシエチルアクリレート、及び/又は4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び/又はペンタエリトリットトリアクリレートを使用する。
【0071】
この際、二重結合を導入するために使用される化合物は、その構造に従って、状況次第で、被覆の特性に影響を与える。と言うのも、二重結合含分の他に、状況次第で他の数値、例えばウレタン基含分が変わるからである。成分(KK)の二重結合含分は例えば、連鎖延長剤の一部をヒドロキシエチルアクリレートで置き換えることによって高められ、このためウレタン基含分は、連鎖延長剤対ヒドロキシエチルアクリレートの質量比に相応して変化する。これに対して例えば、ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに、一分子当たり1つより多い二重結合を有するヒドロキシアルキルエステル、例えばペンタエリトリットトリアクリレート、及び/又はペンタエリトリットテトラアクリレートを使って成分(KK)の二重結合含分を高めれば、ウレタン基含分は適度に下がる。
【0072】
ラジカル架橋性成分(KK)はさらに、好適には1,000〜10,000g/molの数平均分子量、好ましくは2,000〜5,000の数平均分子量、及び特に好ましくは2,500〜3,500g/molの数平均分子量を有する。
【0073】
この際、反応性成分(KK)の分子量が大きければ大きいほど、一般的にはそれだけ最終架橋された透明な被覆(KE)の架橋密度が低くなる。同時に一般的には、反応性成分(KK)の分子量が高くなればなるほど、未だ最終架橋されていない透明な被覆(KT)の耐性が一般的に高くなる。
【0074】
好適にはラジカル架橋性成分(KK)は、二重結合含分が反応性成分(KK)1,000g当たり1.0〜5.0mol二重結合、好適には反応性成分(KK)1,000g当たり1.5〜4.0mol二重結合、及び特に好ましくは反応性成分(KK)1,000g当たり2.0〜3.5mol二重結合であり、この際にこれらの値はその都度ラジカル架橋性成分(KK)の質量に対するものであるが、もちろん非反応性成分、例えば溶剤、水又は添加剤は含まない。
【0075】
ここで成分(KK)の二重結合含分は、当業者に公知のように、一分子当たりの二重結合含分の他に、とりわけ成分(KK)の数平均分子量と関連している。
【0076】
成分(KK)の二重結合含分が低下するとともに、特性は改善されるが、乾燥した、しかしながら未だ最終架橋されていない透明な被覆(KT)はもはや流れることはなく、かつ場合により施与された保護シートにもはや影響されることはない。同時に成分(KK)の二重結合含分が低下するとともに、一般的には、最終架橋された透明な被覆(KE)の架橋密度は低下する。当業者に公知のように、この際、分子量と二重結合含分は使用する構成成分の種類と量によって、並びに反応条件によって調整できる。
【0077】
ラジカル架橋性成分(KK)は好ましくは、一分子当たり平均で>1、好ましくは1.4>、特に好ましくは>2の分枝点を有する。
【0078】
成分(KK)中の一分子当たりの分枝点の平均数が低下すると、一般的には最終架橋された透明な被覆(KE)の耐引掻性が下がる。一分子当たりの分枝点の平均数が低下するのと同時に、一般的には乾燥した、しかしながら未だに最終架橋されていない透明な被覆(KT)の耐久性が下がる。
【0079】
成分(KK)中の一分子当たりの分枝点の平均数は一般的に、成分(KK)の合成のために使用される、官能性が2超、とりわけ官能性が少なくとも3の化合物によって調整される。
【0080】
ラジカル架橋性成分(KK)の分枝点は、好ましくは官能性が2超の、とりわけ官能性が少なくとも3のイソシアネートを用いることによって導入する。特に好ましくは、ラジカル架橋性成分(KK)で使用されるオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、三量体及び/又はポリマーのイソシアネート、とりわけイソシアヌレート、及び/又はイソシアネート官能性が2超の付加生成物若しくはプレポリマー、とりわけアロファネート、及び/又はビウレットを用いることによって、分枝点を導入する。極めて特に好ましくは、1つ若しくは複数のイソシアヌレート、及び/又は1つ若しくは複数のビウレットを用いて、分枝点を導入する。また、ラジカル架橋性成分(KK)を合成する際、アルコール、チオール、又は官能性が2超のアミンが使用可能であり、例えばペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、及びトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートによって可能である。
【0081】
ラジカル架橋性成分(KK)はさらに、成分(KK)の質量に対して(もちろん、非反応性成分、例えば溶剤、水、又は添加剤無しで)その都度、有利には5〜50質量%、好適には10〜40質量%、特に好ましくは15〜30質量%、環状構成要素を有する。
【0082】
成分(KK)の環状構成要素の含分が上昇するとともに、一般的に特性は改善され、乾燥した、しかしながら未だ最終架橋されていない透明な被覆(KT)はもはや流れることはなく、かつ場合により施与された保護シートにもはや影響されることはない。
【0083】
成分(KK)の環状構成要素の含分が上昇するとともに、一般的に、最終架橋された透明な被覆(KE)の耐薬品性、耐候性、並びに耐引掻性が増加する。さらに、成分(KK)の環状構成要素含分が高いほど、最終架橋された被覆(KE)の破断点伸びが低下し、それにより脆さが増大する。
【0084】
ラジカル架橋性成分(KK)が環状構成要素として4〜8個、特に好ましくは5〜6個の員環を有する単環式構成要素、及び/又は7〜18個の員環を有する多環式構成要素、特に好ましくは10〜12の員環を有する二環性及び/又は三環性の構成要素、極めて特に好ましくはトリシクロデカン環を有すること、及び/又は環状構成要素が置換されていることが好ましい。
【0085】
環状構成単位は脂環式、複素環式、また芳香族であってよく、この際に構成単位は好ましくは脂環式及び/又は複素環式である。とりわけ、脂環式構成単位と複素環式構成単位とからの組み合わせを使用する。
【0086】
複素環式構成単位は鎖中にあってよく(例えばウレトジオンを用いる場合)、かつ/又は分枝点を形成し得る(例えばイソシアヌレートを用いる場合)。脂環式構成単位は同様に鎖中にあってよく(ウレタン合成のために例えば脂環式ジオール、例えば水素化されたビスフェノールAを用いる場合)、かつ/又は分枝点を形成し得る。しかしながら特に好ましくは、脂環式構成単位が鎖中に有りながら、複素環式構成単位が分枝点を形成する。
【0087】
好ましい脂環式構成要素は、場合により置換されたシクロペンタン環、場合により置換されたシクロヘキサン環、場合により置換されたジシクロヘプタン環、場合により置換されたジシクロオクタン環、及び/又は場合により置換されたジシクロデカン環、及び/又は場合により置換されたトリシクロデカン環、とりわけ場合により置換されたトリシクロデカン環、及び/又は場合により置換されたシクロヘキサン環である。
【0088】
複素環式構成単位は、飽和、不飽和、また芳香族であってよい。好ましくは、飽和複素環式構成単位を使用する。ヘテロ原子は好ましくは、窒素、及び/又は酸素、及び/又は硫黄、及び/又は燐、及び/又はケイ素、及び/又はホウ素の群から選択されており、特に好ましいのは窒素である。環1つあたりのヘテロ原子の数は、通常1〜18、好ましくは2〜8、及び極めて特に好ましくは3である。複素環式構成単位として特に好ましくは、イソシアヌレート環、及び/又はウレトジオン、及び/又は場合により置換されたトリアジン環、極めて特に好ましくはイソシアヌレート環を使用する。
【0089】
環状構成要素を導入するためには原則的に、芳香族構成要素も適しており、この際に好ましくは芳香族構成要素の含分は、成分(KK)の質量に対してその都度、最大10質量%、好ましくは最大5質量%、及び特に好ましくは最大2質量%である。つまり芳香族構成要素は一般的に、生成する最終架橋された透明な被覆(KE)の耐候性に対して不利な影響を有しており、その結果、このことが原因で芳香族構成要素の含分が制限されている。
【0090】
反応性成分(KK)への環状構成要素の導入は、成分(KK)を製造するための環状構成要素を有する相応する化合物を用いて行うことができる。とりわけ、成分(KK)を製造するために、環状構成要素を有するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、及び/又は環状構成要素を有するジオール若しくはポリオール、ジアミン若しくはポリアミン、ジチオール若しくはポリチオールを使用することができる。特に好ましくは、環状構成要素を有するジオール及び/又はポリオール、及び/又はジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを使用する。
【0091】
従って、ラジカル架橋性成分(KK)中で使用されるオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、好ましくは少なくとも部分的にイソシアネート成分として、通常塗料工業で使用されるジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートのイソシアヌレートを使用する。これらのイソシアヌレートの代わりに、又はこれらのイソシアヌレートとともに、通常塗料工業で使用されるジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートのプレポリマー及び/又は付加生成物、とりわけビウレット及び/又はアロファネート及び/又はウレトジオンを使用することができる。特に好ましくは、脂肪族及び/又は脂環式イソシアネートのイソシアヌレート及び/又はビウレット及び/又はアロファネート及び/又はウレトジオンを使用する。その他にさらに、単独で、又は前述のイソシアヌレート及び/又はビウレット及び/又はアロファネート及び/又はウレトジオンと組み合わせて、脂環式ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートが使用可能である。
【0092】
通常塗料工業で使用される(環式)脂肪族ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−又は1,3−又は1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−又は2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、二量体脂肪酸から誘導されるジイソシアネート、例えばHenkel社から商品番号DDI 1410で市販されているもの、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−オクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−ヘプタン、又は1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、又はこれらのポリイソシアネートの混合物である。
【0093】
さらに適しているのはまた、芳香族構成要素を有するイソシアネート(ただしイソシアネート基が少なくとも部分的に脂肪族基及び/又は芳香族基に結合されているもの)、とりわけ1,3−ビス−(2−イソシアナトプロピル−2−)ベンゾール(TMXDI)である。
【0094】
特に好ましくは、ラジカル架橋性成分(KK)中で使用されるオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するため、少なくとも部分的に、(環式)脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート、とりわけイソホロンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートを使用する。極めて特に好ましくは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、及び/又はヘキサメチレンジイソアネートのイソシアヌレート、及び/又はヘキサメチレンジイソアヌレート及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び/又はジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートのビウレットからの混合物を使用する。
【0095】
さらに適切なのは、EP-B-1 144 476の4頁43行目〜5頁31行目に記載されている、イソシアヌレート(同文献a2.1に記載)、ウレトジオン(同文献a2.2に記載)、ビウレット(同文献a2.3に記載)、ウレタン基及び/又はアロファネート基を有するポリイソシアネート(同文献a2.4に記載)、オキサジアジントリオン基を有するポリイソシアネート(同文献a2.6に記載)、及びカルボジイミド変性若しくはウレトンイミン変性されたポリイソシアネート(同文献a2.7に記載)をベースとする比較的多官能性のポリイソシアネートである。
【0096】
ラジカル架橋性成分(KK)で使用されるオリゴマー及び/又はポリマー、とりわけオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、さらに好ましくは少なくとも部分的に、脂環式のジオール若しくはポリオール、及び/又は脂環式のジアミン及び/又はポリアミン、とりわけ脂環式のジオール、例えばシクロヘキサンジメタノール、1,2−、1,3−、又は1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、水素化されたビスフェノールA、水素化されたビスフェノールF、及びトリシクロデカンジメタノールを使用する。
【0097】
ラジカル架橋性成分(KK)で使用されるオリゴマー及び/又はポリマー、とりわけオリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、特に好ましくは水素化されたビスフェノールAを使用する。
【0098】
すでに言及したように、環状構成要素はまた、芳香族構成要素を用いることによって導入することもでき、例えば芳香族イソシアネート、若しくは芳香族イソシアネートの三量体及び/又はプレポリマー及び/又は付加生成物、例えば1,2−、1,3−、及び1,4−ベンゾールジイソシアネート、2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)プロパン、及び位置異性体のナフタリンジイソシアネート、とりわけ2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネートの工業的な混合物を部分的に用いることによって導入できる。適切な芳香族構成単位のさらなる例は、トリアジン環である。
【0099】
これらの構成単位は例えば、US-PS 4 939 213、US-PS 5 084 541、及びEP-A-624 577に従って、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンを用いて導入できる。同様に、上記化合物の誘導体が使用可能である。
【0100】
ラジカル架橋性成分(KK)は好適には、鎖中に少なくとも6個のC原子、好ましくは6〜18個のC原子、特に好ましくは6個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪族構成要素を含む。
【0101】
この構成要素は、成分(KK)に対して可撓化作用をもたらす。従って、鎖中に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素の含分が成分(KK)中で上昇するとともに特性は悪化するが、乾燥した、しかしながら未だ最終架橋されていない透明な被覆(KT)はもはや流れることはなく、かつ場合により施与された保護シートにもはや影響されることはない。
【0102】
さらに最終架橋された透明な被覆の薬品耐性は、鎖中に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素の含分が低下した分だけ改善される。
【0103】
ラジカル架橋性成分(KK)は好ましくは、成分(KK)の質量に対して(もちろん、非反応性成分、例えば溶剤、水、又は添加剤無しで)その都度、3〜30質量%、好適には5〜25質量%、特に好ましくは8〜20質量%、鎖中に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素を有する。成分(KK)への導入には、あらゆる長鎖の炭化水素鎖が適している。
【0104】
鎖中に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素の、反応性成分(KK)への導入は、成分(KK)を製造するための、鎖中に少なくとも6個のC原子を有する当該脂肪族構成要素を有する相応する化合物の使用によって行う。とりわけ、ウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、鎖中に少なくとも6個のC原子を有する当該脂肪族構成要素を有する、ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート及び/又は連鎖延長剤(ジオール若しくはポリオール、ジアミン若しくはポリアミン、ジチオール若しくはポリチオール、ジカルボン酸及び/又はポリカルボン酸など)を使用できる。特に好ましくは、鎖中に少なくとも6個のC原子を有する当該脂肪族構成要素を有する、ジオール及び/又はポリオール、及び/又はジカルボン酸及び/又はポリカルボン酸、及び/又はジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを使用する。
【0105】
ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを変性するためには例えば、二量体及び/又は三量体の脂肪酸が適している。
【0106】
特に好ましくは、オリゴウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン(メタ)アクリレートの製造の際に、鎖中に少なくとも6個のC原子を有するこの脂肪族構成要素を、ヘキサメチレンの相応する官能化された誘導体を用いることによって、とりわけ、さらに付加的に少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのイソシアネート基、又はOH基、及び/又はNH基、及び/又はSH基を有するヘキサメチレンベースの化合物を用いることによって、ラジカル架橋性成分(KK)に導入する。
【0107】
使用可能なのは例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び/又はイソシアネート官能性トリマー若しくはポリマー、及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート官能性付加生成物、とりわけビウレット、及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである。さらに使用可能なのはまた、ヘキサメチレンジオール、及び/又はヘキサメチレンジアミン、又は類似の化合物である。最後にまた、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合及び少なくとも1つの反応性基(イソシアネート基又はOH基又はNH基に対して反応性のもの)の他に、さらに鎖中に少なくとも6個のC原子を有する当該脂肪族構成要素を有する化合物、例えばヒドロキシヘキシルアクリレートを使用することも可能である。
【0108】
これに相応してまた、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートの可撓化は、例えば相応するOH官能性プレポリマー若しくはオリゴマー(ポリエーテル又はポリエステルベース)と、長鎖の脂肪族ジカルボン酸、とりわけ少なくとも6個のC原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及び/又は二量体脂肪酸との反応によって可能である。ここで可撓化反応は、アクリル酸若しくはメタクリル酸をオリゴマー若しくはプレポリマーに付加させる前、又は後に行うことができる。エポキシ(メタ)アクリレートの可撓化は同様に例えば、相応するエポキシ官能性プレポリマー若しくはオリゴマーと、長鎖の脂肪族ジカルボン酸、とりわけ少なくとも6個のC原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及び/又は二量体脂肪酸との反応によって可能である。ここで可撓化反応は、アクリル酸若しくはメタクリル酸をオリゴマー若しくはプレポリマーに付加させる前、又は後に行うことができる。
【0109】
前述のように、ポリエーテル(メタ)アクリレート若しくはポリエステル(メタ)アクリレート若しくはエポキシ(メタ)アクリレートの可撓化、つまり鎖中に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族構成要素の含分上昇は、特性の悪化につながるが、乾燥した、しかしながら未だ最終架橋されていない透明な被覆(KT)はもはや流れることはなく、かつ場合により施与された保護シートにもはや影響されることはない。
【0110】
ラジカル架橋性成分(KK)はさらに好適には、カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基を含む。特に好ましくは、成分(KK)はビウレット基、及び/又はアロファネート基を含む。
【0111】
カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基の含分が高くなるほど、その分だけ乾燥された、しかしながら未だ最終架橋されていないクリアコート層(KT)の流れやすさは少なくなる。
【0112】
カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基の含分が高くなるほど、一般的にはその分だけ最終架橋されていないクリアコート被覆(KE)の特性もよくなる。
【0113】
極めて特に好ましくは、カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基の含分は、使用されるイソシアネート付加生成物若しくはイソシアネートプレポリマーの種類と量によって調整する。
【0114】
ラジカル架橋性成分(KK)は好ましくは、カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基の平均含分が、反応性成分(KK)1000gあたり、0超〜2.0mol、好適には0.1〜1.1mol、及び特に好ましくは反応性成分(KK)1000gあたり0.2〜0.7molであり、この際、これらの値はそれぞれ、ラジカル架橋性成分(KK)の質量(もちろん、非反応性成分、例えば溶剤、水、又は添加剤は除く)に対するものである。
【0115】
透明なコート組成物は好ましくは、その都度被覆剤(K)の全質量に対して30.0〜99.9質量%、特に好ましくは40〜85質量%、及び極めて特に好ましくは50〜75質量%、成分(KK)を含む。
【0116】
透明なコート組成物は好適には、少なくとも1つの化学架橋開始剤を含む。これらの開始剤は好適には、光開始剤である。1つの、又は複数の光開始剤は好ましくは、単分子性の(タイプI)、及び二分子性の(タイプII)光開始剤から成る群から選択される。特に好ましくは、タイプIの光開始剤は、第三級アミン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミッヒラーケトン)、アントロン、及びハロゲン化されたベンゾフェノンと組み合わされたベンゾフェノンから成る群から、そしてタイプIIの光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、とりわけベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、とりわけ、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及びエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、及びα−ヒドロキシアルキルフェノンから成る群から選択される。
【0117】
被覆剤が完全に、又は付加的に熱で最終架橋される場合、この被覆剤は好ましくは、C−C開裂開始剤、好適にはベンゾピナコールを含む。適切なベンゾピナコールの例は、ベンゾピナコールシリルエーテル、又は置換された、及び非置換のベンゾピナコール、例えば米国特許US 4,288,527 Aの第3コラム5〜44行目、及びWO02/16461、8頁1行目〜9頁15行目に記載されているものである。好ましくはベンゾピナコールシリルエーテル、とりわけモノマーとオリゴマーのベンゾピナコールシリルエーテルからの混合物を使用する。
【0118】
透明なコート組成物中の開始剤含分は、幅広く変えることができ、個々の場合の要求に応じて、そしてこれから製造される被覆(KE)が有するべき適用技術特性に応じて調整される。この含分は好適には、透明なコート組成物の固体に対してその都度、0.1〜10質量%、とりわけ1.0〜7.0質量%である。
【0119】
その上さらに、透明なコート組成物は通常の、そして公知の添加剤を作用量で含むことができる。この添加剤の量は通常、被覆剤(K)の固体に対してその都度、0〜10質量%、好ましくは0.2〜5.0質量%である。
【0120】
好適にはこの添加剤は、光保護剤、例えばUV吸収剤、及び可逆性ラジカル捕捉剤(HALS);抗酸化剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ剤;重合禁止剤;接着改良剤;均展剤;塗膜形成助剤;レオロジー調整剤;難燃剤;顔料ではない腐食防止剤;アグロメレート化防止剤(Rieselhilfe);ワックス;乾燥剤;殺生剤、及びつや消し助剤(Mattierungsmittel)から成る群から選択される。
【0121】
適切な添加剤の例は、教科書の"Lackadditive" Johan Bieleman著, Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998、D. Stoye und W. Freitag (編)、ドイツ国特許出願DE 199 14 896 A1、第14コラム26行目〜第15コラム46行目、又はドイツ国特許出願DE 199 08 018 A1、9頁31行目〜8頁30行目に詳細に記載されている。
【0122】
架橋性被覆剤(K)は一般的には、さらに慣用の溶剤及び/又は水を含むが、しかしながら、ほとんど又は完全に溶剤不含であり、そしてほとんど又は完全に水不含に、いわゆる100%システムとして調製することもできる。被覆剤(K)が溶剤を含む場合、前記被覆剤は被覆剤(K)の全質量に対してその都度、20〜70質量%、特に好適には30〜64.5質量%、及び極めて特に好ましくは40〜60質量%、1つ又は複数の溶剤及び/又は水、好ましくは1つ又は複数の有機溶剤を含む。
【0123】
クリアコート中で使用される通常のあらゆる溶剤が適しており、とりわけ、アルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステル、及びケトン、脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、3−ブトキシ−2−プロパノール、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、グリコール酸ブチルエステル、Shellsol(登録商標)T、松根油(Pine Oel)90/95、ソルベントナフサ(登録商標)、Shellsol(登録商標)A、ベンジン135/180などが適している。
【0124】
架橋性被覆剤は好ましくは、ほとんど又は完全に水不含である。
【0125】
架橋性被覆剤(K)は、成分(KK)の質量に対してその都度、好ましくは20質量%未満、とりわけ10質量%未満、特に好ましくは5質量%未満、ポリマー性不飽和成分(KS)、とりわけ熱可塑性ポリマーを含むか、極めて特に好ましくはこれらを全く含まない。
【0126】
方法上では、被覆剤(K)の製造には特筆すべき点はなく、前記の成分を慣用かつ公知の混合法及び装置、例えば撹拌槽、撹拌ミル、混練機、ウルトラツラックス(Ultraturrax)、インラインディゾルバ、スタティックミキサ、リングギア分散機(Zahnkranzdispergator)、圧力解放ノズル(Druckentspannungsduese)及び/又はマイクロフルイダイザを用いて、好ましくは化学線の排除下に行われる。
【0127】
透明な被覆剤は通常、少なくとも15μm、好ましくは20〜100μm、特に好ましくは20〜50μmの乾燥膜厚が生じる量で塗布する。
【0128】
透明な被覆剤はさらに、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する低分子性、オリゴマー性、及びポリマー性の光保護剤から成る群から選択される少なくとも1つの光保護剤(L)、並びに少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基を含む少なくとも1つの光開始剤(P)を含むことができる。
【0129】
光保護剤(L)は、少なくとも1つ、とりわけ1つのイソシアネート反応性基を有する低分子性、オリゴマー性、及びポリマー性の光保護剤から成る群から選択される。好適には前記光保護剤は、UV吸収剤及び可逆性ラジカル捕捉剤から成る群から選択される。UV吸収剤(L)は好ましくは、ベンゾトリアゾール及びトリアジンから成る群から、及び可逆性ラジカル捕捉剤(L)は立体障害性環式アミン、とりわけHALSから成る群から選択される。
【0130】
イソシアネート反応性官能基は好適には、ヒドロキシ基である。ここで、ベンゾトリアゾールシステムと直接隣接しており、よってトリアゾール環の窒素と相互作用を生じるヒドロキシ基、並びに、例えば2つの第三級ブチル基の間に配置されている強度の立体障害性フェノール基は、本発明の意味合いにおいてはイソシアネート反応性官能基ではない。
【0131】
適切な低分子光保護剤(L)の例は、
Tinuvin(登録商標)400という商品名でCiba Spezialitaetenchemie社から購入可能な、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ウンデシル−オキシプロピル)−オキシル)−2−ヒドロキシフェニル)4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)1,3,5−トリアジンと、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシル−オキシプロピル)オキシル−2−ヒドロキシフェニル)4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとからの混合物、
1つのトリアジン基と2つの立体障害性環式アミノエーテル基を含む、Ciba Spezialitaetenchemie社の試験商品、Tinuvin(登録商標)CGL 052、及び
ドイツ国特許出願DE 100 10 416 A1, p4に記載された光保護剤モノマー(a3)
である。
【0132】
適切なオリゴマー性、及びポリマー性の光保護剤(L)の例はまた、ドイツ国特許出願DE 100 10 416 A1、3頁31行目〜5頁32行目、及び14頁42行目〜17頁20行目に記載されている、光保護剤モノマー(a3)の(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0133】
使用される光保護剤(L)の含分は非常に幅広く変化してよく、個々の場合の必要量に応じて調整する。好適には光保護剤(L)は光保護剤で通常の、及び公知の作用量で、透明なコート組成物の固体割合に対してその都度、好適には0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜4.5質量%、特に好ましくは0.3〜4質量%、極めて特に好ましくは0.4〜3.5質量%、とりわけ0.5〜3質量%の量で使用する。
【0134】
透明なコート組成物はさらに、少なくとも1つの、とりわけ1つのイソシアネート反応性官能基を有する、少なくとも1つの、及びとりわけ少なくとも2つの光開始剤(P)を含有することができる。
【0135】
光開始剤(P)は好適には、ベンジルモノケタール、アセトフェノン誘導体、ベンジルホルミエート、モノアシルホスフィンオキシド、及びジアシルホスフィンオキシドから成る群から選択される。光開始剤(P)はとりわけ、アセトフェノン誘導体である。
【0136】
イソシアネート反応性官能基は好適には、ヒドロキシ基である。ここで、ケト−エノール互変異性によって隣接するカルボニル基と相互作用をもたらし、かつ/又は強度に立体障害性のヒドロキシ基は、本発明の意味合いにおいてはイソシアネート反応性官能基ではない。
【0137】
適切な光開始剤(P)の例は、Irgacure(登録商標)2959という名でCiba Spezialitaetenchemie社から市販されている、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンである。
【0138】
光開始剤(P)の含分は非常に幅広く変化してよく、個々の場合の必要量に応じて調整する。好適には光開始剤(P)は、光開始剤で通常の、及び公知の作用量で、透明なコート組成物の固体割合に対してその都度、好適には0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜4.5質量%、特に好ましくは0.3〜4質量%、極めて特に好ましくは0.4〜3.5質量%、とりわけ0.5〜3質量%の量で使用する。
【0139】
本発明による二層被覆−被覆システムは、被覆された材料の製造、とりわけシート、成形部材、被覆、接着剤、及び封止剤の製造に役立つ。
【0140】
本発明による二層被覆組成物はとりわけ、多層塗装の製造、とりわけ自動車生産塗装及び自動車修理塗装におけるトップコート塗装の製造に役立つ。
【0141】
ここで通常は、場合によりカソード浸漬塗装によって、及び既に充填材で予備被覆された普通の基材が被覆される。
【0142】
そこでとりわけ、クリアコートに例えば前述のヒドロキシ官能性結合剤を添加することによって、及びベースコートに例えば前述の相応するブロックトイソシアネートを添加することによって、改善されたトップコート中間接着が得られる。
【0143】
しかしながら本発明による二層被覆組成物はまた、複数回被覆されたシートの製造に使用可能である。被覆されたシートはその後それ自体で、非常に様々な基材の被覆に、又は成形部材の製造に役立つ。本発明による二層被覆で記載されたシートはとりわけ、熱可塑性担体シートであるか、又は保護シートであってよい。
【0144】
ここで熱可塑性担体シートとは、成形部材のプラスチック成型材料によって接合されていてよいシートである。表面(T1)と後の被覆(B)の間にはさらに、少なくとも1つ、とりわけ1つの中間層(ZS)、例えば充填層(FS)、及び/又は接着改良層(HS)が存在していてよい。ここで表面(T1)と接着改良層(HS)との間、及び/又は接着改良層(HS)と被覆(B)との間に、少なくとも1つの、とりわけ1つの移行層(UES)が存在していてよい。しかしながら被覆(B)は好ましくは、直接、つまり中間層無しで表面(T1)上に配置されている。
【0145】
熱可塑性担体シートはほとんど、又は完全に少なくとも1つの熱可塑性ポリマーから成る。熱可塑性ポリマーは好適には、通常の、及び公知の、線状、分枝状、星型、くし型、及び/又はブロック状に構成されたホモポリマー及びコポリマーから成る群から選択される。ホモポリマー及びコポリマーは好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、塩化ポリビニル、ポリビニリデンフルオリド、ポリ(メタ)アクリレート、とりわけポリメチルメタクリレートとポリブチルメタクリレート、及び耐衝撃性変性ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチロール、とりわけ耐衝撃性変性ポリスチロール、特にアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、アクリルスチレンアクリロニトリルコポリマー(ASA)、及びアクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレンコポリマー(A−EPDM);ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、及びこれらのポリマーの混合物から成る群から選択される。
【0146】
ここでASAとは一般的に、ビニル芳香族化合物、とりわけスチレンのグラフトコポリマー、及びシアン化ビニル、とりわけアクリロニトリルのグラフトコポリマーが、ポリアルキルアクリレートゴム上にとりわけスチレンとアクリロニトリルからのコポリマーマトリックスで存在する、耐衝撃性変性されたスチレン/アクリロニトリルポリマーと理解される。
【0147】
特に有利には、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、又は耐衝撃性変性ポリメチルメタクリレートとからのブレンド、とりわけASAとポリカーボネートとからのブレンド、好ましくはポリカーボネート割合が>40%、とりわけ>50%のものを使用する。
【0148】
熱可塑性担体シートに好適に使用される材料はまた、とりわけDE-A-101 13 273、2頁61行目〜3頁26行目に記載された熱可塑性ポリマーである。
【0149】
ホモポリマーとコポリマーは、熱可塑性プラスチックの分野で通常の、及び公知の添加剤を含むことができる。さらに前記ポリマーは、通常の、及び公知の充填材、補強充填材、及び繊維を含むことができる。とりわけ前記ポリマーはまた、エフェクト顔料及び/又は通常の、及び公知の着色剤を含む顔料を含有することができ、これによって担体シートの色調を、顔料着色された被覆剤(P)から得られる被覆の色調に適合させることが可能になる。
【0150】
熱可塑性担体シートの層厚は通常、0.5mm超、好ましくは0.7〜2.0mm、及び特に好ましくは0.9〜1.2mmである。
【0151】
移行層(UES)としては通常の、及び公知の、好適には厚さ1〜50μmの熱可塑性材料からの、とりわけ上記熱可塑性ポリマーからの層を使用することができる。
【0152】
担体シート(T)とプラスチック材料(KM)との接着性が不充分な場合、例えば(T)又は(KM)のためにポリオレフィンを使用する場合には、接着改良層を使用する。接着改良層(HS)としては、通常の、及び公知の、例えばDE-A-101 13 273、4頁27〜29行目に記載の、好適には厚さ1〜100μmの、通常の接着改良剤からの層を使用することができる。
【0153】
保護シート(S)として適しているのは、すべての通常使用される保護シート(一層又は多層であり得る)である。とりわけ、DE-A10335620、17頁20行目〜19頁22行目に記載されている保護シートを使用する。適切なのはとりわけ、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、及びエチレン−プロピレンコポリマーからのホモポリマーとコポリマーをベースとする保護シート(S)である。
【0154】
保護シートは好適には、層厚が50μm、UV光線に対する透過度が>70%、そして可視光の波長が230〜600nmであるように選択する。
【0155】
さらに好ましくは、室温〜最大100℃の温度範囲で貯蔵モジュールE’が少なくとも107Paであり、かつ保護シートの製造の際に適切な製造方法で生じた適切な方向に対して縦方向と横方向で23℃で破断点伸びが>300%の保護シートを使用する。特に好ましくは、被覆(B)に向けられた保護シート面側がさらに、23℃で<0.06GPaの硬度を有し、そして原子力間顕微鏡(AFM)を用いて測定した粗さ(50μm2から得られるRa値に相当)が、<30nmである。
【0156】
極めて特に好ましくは、保護シート(S)は厚さが10〜100μm、とりわけ30〜70μmである。
【0157】
本発明により使用可能な保護シート(S)は、通常の、及び公知のものであり、例えばLengerich D-49525在、Bischof + Klein社から、GH-X 527、GH-X 529、及びGH-X-535という名称で提供されている。
【0158】
本発明はさらに、自動車生産塗装と自動車修理塗装において本発明による多層塗装で被覆された被覆基材の製造方法を含み、この際、場合によりカソード浸漬塗装と通常の充填材で予備被覆された基材を、まず顔料着色されたコート組成物で、そしてそれから透明なクリアコート組成物で被覆する。ここで被覆は好適には、ウェットオンウェット法で行う。すなわち透明なクリアコート組成物を顔料着色されたコート組成物上に、顔料着色されたコート組成物の中間乾燥(フラッシュオフ)後、しかしながら顔料着色されたコート組成物をその間にベーキングせずに塗布し、そして両方の層を引き続き一緒に硬化させる。
【0159】
この際、顔料着色されたコート組成物による被覆、及び透明なコート組成物による被覆は、生産塗装又は修理塗装におけるトップコート層施与のための通常の条件で行う。ここで利点となるのは、二層被覆の硬化を130℃未満の温度で行えることである。
【0160】
本発明はさらに、シートをまず顔料着色されたコート組成物で、それから透明なコート組成物で被覆する、本発明による二層被覆システムで被覆されたシートの製造方法を含む。
【0161】
本発明はその上、シートをまず透明なコート組成物で、それから顔料着色されたコート組成物で被覆する、本発明による二層被覆システムで被覆されたシートの製造方法を含む。
【0162】
両方の場合で好ましくはまず、最初に施与すべき二層システム層によるシートの被覆を、ベーキングせずに行う。
【0163】
その上に二層システムの第二層を施与し、そして第一層と一緒にベーキングする。ここでもまた、層の硬化は好適には130℃未満で行う。
【0164】
基材上への二層システム各層の塗布は、当業者に公知の適切な方法で行うことができ、例えば刷毛塗り、ロール塗り、ローラ塗布、ブレード塗布、フローコート、流し塗り、浸漬塗布、又はスプレーにより行うことができる。
【0165】
施与された二層システム層の硬化は同様に、当業者に公知の適切な手法によって行うことができ、例えば化学線、好適にはUV線によって、又は熱硬化によって、好適には130℃未満の温度で行うことができる。照射硬化と熱硬化はさらに組み合わせることもでき、そしてこのためにこれらは連続して、又は同時に行うことができる。化学線とは、電磁線、とりわけ電子線、UV線、及び可視光と理解される。
【0166】
まず透明なコート組成物によって、そしてそれから顔料着色されたコート組成物によって被覆されているシートは、有利には二層被覆された成形体を製造するために使用することができ、これらの成形体からは製造後に、シートを(成形体上に二層被覆を残したまま)成形体から再度剥がすことができる。
【0167】
実施例
ベースコートの製造
ベースコートAを製造するために、BASF Coatings AGから市販の顔料着色された水性ベースコート「Brillantsilber」を、完全脱塩水を用いて120mPas・sの粘度に調整した(粘度計(Rheomat RM 180、Spindel 2)で23℃で測定、剪断速度1000s-1)。
【0168】
本発明によるベースコートBを製造するために、BASF Coatings AGから市販の顔料着色された水性ベースコート「Brillantsilber」を、全ベースコートBに対して7.5質量%の、ジメチルピラゾールでブロックされた水溶性HDIポリイソシアネートと混合し、そして完全脱塩水を用いて120mPas・sの粘度に調整した(粘度計(Rheomat RM 180、Spindel 2)で23℃で測定、剪断速度1000s-1)。
【0169】
クリアコートの製造
適切な撹拌槽内にウレタンアクリレートを装入した。装入物に30分以内に第1表に記載した成分(OH基含有結合剤、UV吸収剤、HALS、光開始剤、及び均展剤)を、常に撹拌しながら室温で添加し、そして1−メトキシプロピル−2−アセテートで48%の固体含分に調整した。引き続き、生成する混合物を30分間、室温で撹拌した。
【0170】
【表1】

【0171】
適用
箱形ブレードで150μmのベースコート湿潤層を、Luran S PFMタイプのシート切片に施与し(湿潤で150μm、乾燥で約25μm、ブレード速度10mm/s)、10分室温で、そして引き続き10分、90℃で排気炉で乾燥させた。
【0172】
乾燥させたベースコート層上に、引き続き箱形ブレードでクリアコートを施与し(湿潤で200μm、乾燥で約60μm、ブレード速度10mm/s)、20分室温で、そして引き続き15分、105℃で排気炉で乾燥させた。
【0173】
クリアコートはUV光によって架橋させ(IST社の装置、供給量2300mJ/cm2、出力200W/cmのGa/Hgランプ、ベルト速度5m/分で85%/95%のランプ出力に調整、O2 200ppm)、そして7日後DC(Daimler Chrysler)仕様DBL 5416仕様に従って、蒸気放射試験に供した。得られた二層被覆をさらに、その接合性の観点からDIN EN ISO 2409に記載の格子法で試験した。結果は、第2表参照。
【0174】
【表2】

【0175】
製造:成分は撹拌しながら添加する。
【0176】
蒸気放射試験結果の符号:
0・・・充分、内層マイグレーション(Unterwanderung)無し。
1・・・なお充分、軽度の内層マイグレーション。
2〜5・・・常に激しい内層マイグレーション。
【0177】
格子切片結果の符号:
0・・・切片の縁は完全に平滑。正方形のうち1つも剥離せず。
1・・・剥離面積は、基本的に格子切片面積の5%より大きい。
2・・・剥離面積は明らかに格子切片面積の5%より大きいが、基本的に15%以下。
3・・・剥離面積は明らかに格子切片面積の15%より大きいが、基本的に35%以下。
4・・・剥離面積は明らかに格子切片面積の35%より大きいが、基本的に65%以下。
5・・・すべての結果が、4の等級に入れられない。
【0178】
本発明による実施例(B.II〜B.V)は、良好な外観特性と同時に、明らかに改善された中間層接着を示す。生成したシートはさらに、高い可撓性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つのヒドロキシ官能性結合剤を含む、光線により硬化可能な、又は光線と熱により硬化可能な透明なクリアコート組成物、及び
(B)顔料着色されたコート組成物
を含む、二層被覆を製造するための二層被覆システムにおいて、
前記顔料着色されたコート組成物が少なくとも1つの水溶性又は水分散性のブロックトイソシアネートを含有することを特徴とする、前記二層被覆システム。
【請求項2】
顔料着色されたコート組成物の少なくとも1つのイソシアネートが、脂肪族イソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の二層被覆システム。
【請求項3】
少なくとも1つのイソシアネートが、ポリマー性イソシアネート、好ましくはポリエチレンオキシド基又はオリゴエチレンオキシド基を有するHDI若しくはIPDIポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二層被覆システム。
【請求項4】
顔料着色されたコート組成物の少なくとも1つのイソシアネート割合が、顔料着色されたコート組成物の固体割合に対して15〜35質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項5】
少なくとも1つのイソシアネートが、≦150℃の温度で、好ましくは≦130℃の温度で脱ブロック化可能な非結晶性ブロックトイソシアネートであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の二層被覆システムにおいて、
顔料着色されたコート組成物が、
(I)1つ又は複数の溶剤及び/又は水、
(II)1つ又は複数の結合剤、好ましくは1つ又は複数のポリウレタン樹脂及び/又はアクリレート樹脂、
(III)場合により少なくとも1つの架橋剤、
(IV)1つ又は複数の顔料、並びに
(V)場合により1つ又は複数の通常の助剤及び添加剤
を含有する1つ若しくは複数の溶剤含有性又は水性の顔料着色された被覆剤を含むことを特徴とする、前記二層被覆システム。
【請求項7】
前記システムが、顔料着色された水性コート組成物と、透明な非水性クリアコート組成物とから成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項8】
透明なクリアコート組成物中の前記ヒドロキシ官能性結合剤が、オリゴヒドロキシ官能性又はポリヒドロキシ官能性結合剤である、好適にはヒドロキシ数が50〜150であり、少なくとも1つのラジカル反応基を有し、好適にはラジカル反応基について官能性が4.0〜11.0mol/kgのオリゴヒドロキシ官能性又はポリヒドロキシ官能性結合剤であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項9】
ヒドロキシ官能性結合剤の質量平均分子量が、300〜2000g/molであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項10】
透明なクリアコート組成物中のヒドロキシ官能性結合剤の割合が、透明なクリアコート組成物の固体割合に対して1.5〜10質量%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項11】
透明なクリアコート組成物が、1つ若しくは複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は1つ若しくは複数のポリウレタン(メタ)アクリレートを含有する少なくとも1つのラジカル架橋性成分(KK)を含む、非水性コート組成物であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の二層被覆システム。
【請求項12】
請求項11に記載の二層被覆システムにおいて、
ラジカル架橋性成分(KK)が、
(i)1つ若しくは複数のオリゴウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は1つ若しくは複数のポリウレタン(メタ)アクリレート、及び
(ii)1分子当たり、平均で1つより多いエチレン性不飽和二重結合を含有し、
(iii)1,000〜10,000g/molの数平均分子量、
(iv)反応性成分(KK)1,000g当たり、1.0〜5.0mol二重結合の二重結合含分、
(v)1分子当たり平均で>1の分枝点、
(vi)成分(KK)の質量に対してその都度、5〜50質量%の環状構成要素、及び
(vii)鎖中に少なくとも6個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪族構成要素を有し、さらに
(viii)カルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基を、好適にはカルバメート基、及び/又はビウレット基、及び/又はアロファネート基、及び/又は尿素基、及び/又はアミド基の含分が反応性成分(KK)1000g当たり平均で0超〜2.0molであり、特に好ましくは同1000g当たり0.1〜1.1molであり、そして極めて特に好ましくは反応性成分(KK)1000g当たり0.2〜0.7molの含分で含む、
ことを特徴とする、前記二層被覆システム。
【請求項13】
被覆された材料、とりわけシート、成形部材、被覆、接着剤、及び封止剤を製造するための、好適には多層塗装、とりわけ自動車生産塗装及び自動車修理塗装におけるトップコート塗装を製造するための、及び/又は多層被覆シートを製造するための、請求項1から12までのいずれか1項に記載の二層被覆システムの使用。
【請求項14】
自動車生産塗装又は自動車修理塗装で請求項1から12までのいずれか1項に記載の二層被覆システムで被覆された基材の製造方法において、
基材をまず顔料着色されたコート組成物で、そしてそれから透明なクリアコート組成物で被覆する、好適にはウェットオンウェット法で被覆することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の二層被覆システムで被覆されたシートの製造方法において、
シートをまず顔料着色されたコート組成物で被覆し、そしてそれから透明なクリアコート組成物で被覆するか、又はシートをまず透明なクリアコート組成物で被覆し、そしてそれから顔料着色されたコート組成物で被覆する、好適にはそれぞれ、ウェットオンウェット法で被覆することを特徴とする、前記製造方法。

【公表番号】特表2011−529784(P2011−529784A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521473(P2011−521473)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005646
【国際公開番号】WO2010/015386
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】