説明

改善された摩耗性能を有する流体組成物

本発明は、摩擦改変剤を含みかつ改善された耐摩耗性能を提供する低硫黄分潤滑組成物を使用することによって、機械式デバイスを潤滑する方法に関する。本発明はさらに、そこで使用される潤滑組成物を提供する。本発明は、産業用流体、油圧流体、タービン油、循環油、もしくはこれらの組み合わせを要する機械式デバイスを潤滑する方法を提供し、上記方法は、(I)上記機械式デバイスに、以下:(a)潤滑粘性の油であって、上記油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;および(b)摩擦改変剤;を含む潤滑組成物を供給し、上記デバイス内で、低摩耗、低摩擦、もしくはこれらの組み合わせを生じる工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、摩擦改変剤を含みかつ改善された耐摩耗性能を供給する潤滑組成物を使用することによって、機械式デバイスを潤滑する方法に関する。本発明は、そこで使用される潤滑組成物をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
油圧システム(hydraulic system)、循環油もしくは別の産業用油に適した潤滑組成物において、金属含有耐摩耗剤(例えば、亜鉛含有耐摩耗剤)を使用することは公知である。しかし、このような因子は、上記油圧システムにおいて沈殿物(例えば、樹脂)、スラッジおよびニス状物質を形成し得る。これら沈殿物は、バルブ固着および反応の鈍い制御を引き起こすことによって、上記油圧システムの性能を損なう。さらに、これらシステムの洗浄は困難である。なぜなら、上記沈殿物は、機械的な剥離なしでは除去するのが困難であるからである。
【0003】
特許文献1は、0.1〜3重量%の金属合成アリールスルホネートおよび0.01〜2重量%の脂肪族コハク酸もしくは酸無水物の、錆を減少もしくは防止する量を有する潤滑組成物を開示する。さらに、置換されたポリイソブチレンコハク酸もしくはポリオールエステルもしくはポリアミンの酸無水物誘導体の使用は、排除される。なぜなら、上記添加剤を含む潤滑組成物は、許容可能な錆防止特性を示さないからである。
【0004】
特許文献2および特許文献3は、分散剤/乳化剤系および耐摩耗/防錆パッケージを含む水中油型特性を有する水性潤滑剤を開示する。
【0005】
特許文献4は、亜鉛分散剤、0.3〜1重量%のノニルジナフタレン合成スルホン酸カルシウム界面活性剤および0.09〜0.85重量%のアルキルフェノール酸カルシウムを含む潤滑組成物を開示する。
【0006】
特許文献5は、金属スルホネート、無灰分アルケニルスクシンイミドおよびホウ酸化ポリオレフィン分散剤を含む潤滑組成物を開示する。
【0007】
特許文献6は、リンチオアルコール、硫黄化フェネート、およびベンゾトリアゾールの金属塩を含む組成物を開示する。
【0008】
特許文献7は、脂肪族カルボン酸もしくはその酸無水物と合わせて、スルホネート、カルボキシレートおよびフェネートのうちの少なくとも1種の金属塩を開示する。
【0009】
低硫黄分潤滑組成物が、許容可能なおよび/もしくは改善された耐摩耗性能を提供すると同時に、同様に、潤滑されているデバイス中の沈殿物形成を低下および/もしくは防止することは望ましい。潤滑組成物が、いかなる他の性能の分野(例えば、上記組成物の解乳化性)にも負の影響を及ぼすことなく、これら改善のうちの1つ以上を提供することもまた、望ましい。本発明は、このような特性を有する低硫黄分潤滑組成物を提供し、同様に、このような組成物を使用してデバイスを潤滑する方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第96/035765号
【特許文献2】米国特許第4,419,251号明細書
【特許文献3】米国特許第4,419,252号明細書
【特許文献4】米国特許第5,262,073号明細書
【特許文献5】米国特許第6,677,281号明細書
【特許文献6】米国特許第4,466,894号明細書
【特許文献7】国際公開第93/03121号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、産業用流体(industrial fluid)、油圧流体(hydraulic fluid)、タービン油、循環油、もしくはこれらの組み合わせを要する機械式デバイスを潤滑する方法を提供し、上記方法は、(I)上記機械式デバイスに、以下:(a)潤滑粘性の油であって、上記油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;および(b)摩擦改変剤;を含む潤滑組成物を供給し、上記デバイス内で、低摩耗、低摩擦、もしくはこれらの組み合わせを生じる工程、を包含する。
【0012】
成分(a)は、グループIIの油、グループIIIの油、GTL油(gas−to−liquid oil)、ポリαオレフィン、もしくはこれらの組み合わせを含み得る。上記潤滑組成物は、分散剤、抗酸化剤、防錆剤、カルボン酸もしくは酸無水物、界面活性剤(detergent)、耐摩耗剤、消泡剤、金属不活性化剤、解乳化剤、界面活性安定化剤(detergent stabilizer)、もしくはこれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0013】
本発明は、上記潤滑組成物がジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート金属をさらに含み、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は分枝状一級ヒドロカルビル基である上記の方法を提供する。
【0014】
本発明は、上記潤滑組成物が、金属非含有のジヒドロカルビル置換ジチオホスフェートをさらに含み、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は分枝状一級ヒドロカルビル基である上記の方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、アフターマーケット処理として本明細書に記載される摩擦改変剤を、上記潤滑粘性の油および/もしくは処方された油圧流体に添加することによって調製される上記潤滑組成物をさらに提供する。
【0016】
本発明はまた、(a)潤滑粘性の油であって、ここで上記油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;(b)摩擦改変剤;(c)分散剤;(d)ジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート金属であって、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は分枝状一級ヒドロカルビル基である、ジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート金属;および(e)必要に応じて、粘性指数改善ポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0017】
本発明はまた、(a)潤滑粘性の油であって、ここで上記油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;(b)摩擦改変剤;(c)金属非含有のジヒドロカルビル置換ジチオホスフェートであって、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は分枝状一級ヒドロカルビル基である、金属非含有のジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート;(d)抗酸化剤;および(e)必要に応じて、粘性指数改善ポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記に規定されるように、潤滑組成物および方法を提供する。本明細書で使用される場合、水に関して用語「実質的に〜を含まない」とは、上記潤滑組成物が多くて夾雑量の水(例えば、上記潤滑組成物のうちの約1重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、もしくはさらには約0.2重量%以下で水が存在する)を含むことを意味する。
【0019】
しかし、産業用流体、油圧流体、タービン油、循環油、もしくはこれらの組み合わせにおける上記潤滑組成物の適用の間に、外部からの水が上記システムに組み込まれ得ることは、注意されるべきである。上記外部からの水は、上記で開示される夾雑量の水には含まれない。
【0020】
一実施形態において、上記潤滑組成物は、実質的に水を含まない、から水は存在しない。一実施形態において、上記潤滑組成物は、水中油型エマルジョンではない。
【0021】
一実施形態において、本発明の方法は、油圧流体の耐摩耗性能(もしくは摩耗性能)を改善するための手段を提供する。別の実施形態において、本発明は、低硫黄分油圧流体の耐摩耗性能を、上記流体の解乳化性に有害に影響を及ぼすことなく改善するための手段を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、分散剤を含む低硫黄分油圧流体の耐摩耗性能を改善するための手段を提供する。これら実施形態のうちのいくつかにおいて、上記分散剤は、金属(例えば、亜鉛)を含み得る。上記実施形態のうちの各々において、上記油圧流体は、グループIIもしくは類似の油に基づき得る。上記の実施形態のうちのいずれかは、亜鉛を含まないか、金属を含まないか、または無灰分(すなわち、夾雑量に関するものより多くの量の金属を含まない)である油圧流体組成物を生じ得る。さらに他の実施形態において、上記の実施形態のうちのいずれかは、粘性改変剤を含まない可能性がある一方で、別のセットの実施形態においては、上記の実施形態のうちのいずれかは、粘性改変剤をさらに含み得る。
【0022】
(潤滑粘性の油)
上記潤滑組成物は、潤滑粘性の油を含む。このような油としては、天然油および合成油、水素化分解、水素化、および水素仕上げ(hydro−finishing)、未精製、精製、および再精製の油から得られる油、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
未精製油は、一般に、さらなる精製処理なし(もしくはほとんどなし)で天然源もしくは合成源から直接得られるものである。
【0024】
精製油は、これらが1つ以上の精製工程においてさらに処理されて、1つ以上の特性が改善されていることを除いて、未精製油に類似している。精製技術は当該分野で公知であり、これらとしては、溶媒抽出、蒸留、酸もしくは塩基による抽出、濾過、パーコレーションなどが挙げられる。
【0025】
再精製油はまた、改善された(reclaimed)油もしくは再処理油として公知であり、精製油を得るために使用されるものと類似のプロセスによって得られ、しばしば、使い果たされた添加剤および油分解生成物の除去に関する技術によって、さらに加工処理される。
【0026】
本発明の潤滑剤を作製するにあたって有用な天然油としては、動物性油、植物性油(例えば、ひまし油、ラード油)、ミネラル潤滑油(例えば、液体鉱油(liquid petroleum oil)およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプもしくはパラフィン−ナフテン混合タイプの溶媒処理もしくは酸処理したミネラル潤滑油、ならびに石炭もしくは頁岩由来の油またはこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
合成潤滑油は有用であり、これらとしては、炭化水素油(例えば、重合オレフィンおよびインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー));ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにその誘導体、アナログ、およびホモログ、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、およびポリマー状テトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、Fischer−Tropsch反応によって生成され得、代表的には、水素異性化された(hydroisomerised)Fischer−Tropsch炭化水素もしくはワックスであり得る。一実施形態において、油は、Fischer−Tropsch GTL合成手順、および他のGTL油によって調製され得る。
【0029】
潤滑粘性の油はまた、米国石油協会(API)基油互換性ガイドラインにおいて特定されるように定義され得る。5つの基油グループは、以下のとおりである:グループI(硫黄含有量>0.03重量%、および/もしくは<90重量% 飽和物、粘性指数 80〜120);グループII(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量% 飽和物、粘性指数 80〜120);グループIII(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量% 飽和物、粘性指数≧120);グループIV(全てポリαオレフィン(PAO));およびグループV(グループIにも、グループIIにも、グループIIIにも、グループIVにも含まれない全ての他のもの)。上記潤滑粘性の油は、API グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVの油もしくはこれらの混合物を含む。しばしば、上記潤滑粘性の油は、API グループI、グループII、グループIII、グループIVの油もしくはこれらの混合物である。あるいは、上記潤滑粘性の油は、しばしば、API グループI、グループII、グループIIIの油もしくはこれらの混合物である。
【0030】
本発明における使用に適した油は、実質的に硫黄を含まず、このことは、3000ppm未満の硫黄、1500ppm未満の硫黄、もしくは1000ppm未満の硫黄を上記油成分が含むことを意味する。他の実施形態において、上記油成分は、500ppm未満の硫黄、300ppm未満の硫黄、もしくは150ppm未満の硫黄を含み得る。いくつかの実施形態において、硫黄含有量に対するこれら制限は、1種以上の添加剤を含み得る潤滑組成物全体に適用され得る。
【0031】
本発明における使用に適した油は、(i)0.03重量%未満の硫黄含有量を有し得るか、(ii)少なくとも90重量% 飽和物を含み得るか、(iii)少なくとも120の粘性指数を有するか、または(iv)これらの組み合わせを有する。いくつかの実施形態において、上記組成物において使用される個々の油は、これら要件のうちのいずれかを満たさない可能性はあるが、上記全ての油成分(これは、2種以上の油の混合物であり得る)は、記載される要件のうちの少なくとも1つを満たさない。いくつかの実施形態において、上記油は、グループII、グループIII、もしくはグループIVの油である。他の実施形態において、本発明の組成物は、グループIの油を含まない。さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、10重量%未満のグループIの油を含む。
【0032】
本発明は、低硫黄分油圧流体の摩耗特性を改善することに焦点が合わせられる。グループIの基油を含む油圧流体は、代表的には、比較的高い硫黄レベルを含み、本発明の使用が必要とされないように、より良好な摩耗特性を本質的に有し得る。対称的に、低硫黄分油圧流体(例えば、グループIIの基油および同様の低硫黄分の油を含むもの)は、より悪い摩耗特性を有する。本発明の組成物は、この課題に対処し、このような流体の摩耗特性を改善する。いくつかの実施形態において、この改善は、上記流体の解乳化性に負に影響を及ぼすことなく達成される。
【0033】
潤滑粘性の油は、天然もしくは合成の潤滑油およびこれらの混合物を含む。天然油としては、動物性油、ミネラル潤滑油、および溶媒もしくは酸で処理したミネラルオイルを含む。合成潤滑油としては、炭化水素油(ポリαオレフィン)、ハロ置換炭化水素油、アルキレンオキシドポリマー、ジカルボン酸およびポリオールのエステル、リン含有酸のエステル、ポリマーテトラヒドロフランおよびシリコンベースの油が挙げられる。好ましくは、上記潤滑粘性の油は、水素処理したミネラルオイルもしくは合成潤滑油(例えば、ポリオレフィン)である。有用な潤滑粘性の油の例としては、XHVIベースストック(例えば、100N 異性化ワックスベースストック(0.01% 硫黄/141 VI)、120N 異性化ワックスベースストック(0.01% 硫黄/149 VI)、170N 異性化ワックスベースストック(0.01% 硫黄/142 VI)、および250N 異性化ワックスベースストック(0.01% 硫黄/146 VI));精製ベースストック(例えば、250N 溶媒精製パラフィン性ミネラルオイル(0.16% 硫黄/89 VI)、200N 溶媒精製ナフテン性ミネラルオイル(0.2% 硫黄/60 VI)、100N 溶媒精製/水素処理パラフィン性ミネラルオイル(0.01% 硫黄/98 VI)、240N 溶媒精製/水素処理パラフィン性ミネラルオイル(0.01% 硫黄/98 VI)、80N 溶媒精製/水素処理パラフィン性ミネラルオイル(0.08% 硫黄/127 VI)、および150N 溶媒精製/水素処理パラフィン性ミネラルオイル(0.17% 硫黄/127 VI))が挙げられる。潤滑粘性の油の説明は、米国特許第4,582,618号(第2欄37行目〜第3欄63行目(両端含む))にある。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物において使用される油は、ChevronTM RLOP、MotivaTM StarおよびPetro CanadaTM グループIIの油、ならびにこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態において、上記油は、0〜50ppmの硫黄含有量および/もしくは最大130までの粘性指数を有する。適切な油は、2種以上の油の混合物(種々の硫黄含有量、粘性指数、および本発明者らの粘性を有する油を含む)であり得る。
【0035】
一実施形態において、上記潤滑粘性の油は、ポリαオレフィン(PAO)である。代表的には、上記ポリαオレフィンは、4〜30個、もしくは4〜20個、もしくは6〜16個の炭素原子を有するモノマーから得られる。有用なPAOの例としては、デセンから得られるものが挙げられる。これらPAOは、100℃において3〜150 cSt、もしくは4〜100 cSt、もしくは4〜8 cStを有し得る。PAOの例としては、4 cStポリオレフィン、6 cStポリオレフィン、40 cStポリオレフィン、および100 cStポリαオレフィンが挙げられる。
【0036】
一実施形態において、上記潤滑組成物は、9未満のヨウ素値を有する潤滑粘性の油を含む。ヨウ素値は、ASTM D−460に従って決定される。一実施形態において、上記油は、8未満、もしくは6未満、もしくは4未満のヨウ素値を有する。
【0037】
一実施形態において、上記潤滑粘性の油は、D445によって測定される場合、100℃において少なくとも3.5 cSt、もしくは少なくとも4.0 cStの動粘性(KV)を有する潤滑組成物を提供するように選択される。一実施形態において、上記潤滑組成物は、少なくともSAE 75WのSAEギア粘性グレードを有する。他の実施形態において、本発明の潤滑組成物は、40℃において30〜60cSt、もしくは40℃において35〜46cSt、もしくは40℃において約46cStのKVを有する。このような実施形態は、50〜200、50〜150、75〜125、もしくは約100の粘性指数(VI)を有し得る。
【0038】
上記潤滑組成物はまた、SAE 75W−80、75W−90、75W−140、80W−90、80W−140、85W−90、もしくは85W−140のようないわゆるマルチグレード等級を有し得る。マルチグレード潤滑剤は、上記潤滑剤グレードを提供するように、上記潤滑粘性の油とともに処方された粘性改善因子を含み得る。有用な粘性改善因子としては、ポリオレフィン(例えば、エチレン−プロピレンコポリマー)、もしくはポリブチレンゴム(水素化ゴム(例えば、スチレンブタジエンもしくはスチレン−イソプレンゴムを含む);もしくはポリアクリレート(ポリメタクリレートを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、上記粘性改善因子は、ポリオレフィンもしくはポリメタクリレートである。市販の粘性改善因子としては、ViscoplexTMファミリーへと組み込まれたRohm & Haasから以前から市販されているAcryloidTM粘性改善因子;Shell Chemicalから市販されているShellvisTMゴム;Chemturaから市販されているTrileneTMポリマー(例えば、TrileneTM CP−40)、ならびにThe Lubrizol Corporationから市販されているLubrizol 3100シリーズおよび8400シリーズのポリマー(例えば、Lubrizol(登録商標)3174)が挙げられる。これら添加剤、ならびに本発明の組成物において使用され得るさらなる添加剤は、以下の節においてより詳細に記載される。他の実施形態において、本発明の潤滑組成物は、40℃において20〜40 cSt、もしくは40℃において25〜35 cSt、もしくは40℃において約32 cStのKVを有する。このような実施形態はまた、200より大きい、300より大きい、400より大きい、もしくは約425の粘性指数(VI)を有し得る。
【0039】
さらに他の実施形態において、本発明の潤滑組成物は、40℃において20〜100 cStのKVおよび80〜450のVI、または40℃において25〜55 100 cStのKVおよび140〜180のVIを有し得る。
【0040】
一実施形態において、上記潤滑粘性の油は、ジカルボン酸の少なくとも1種のエステルを含む。代表的には、上記エステルは、各エステル基において4〜30個、好ましくは、6〜24個、もしくは7〜18個の炭素原子を含む。ここで、および他の箇所で、本明細書および特許請求の範囲において、上記範囲および比率の限定は、組み合わされ得る。ジカルボン酸の例としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸が挙げられる。エステル基の例としては、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルおよびトリデシルエステル基が挙げられる。上記エステル基としては、直鎖状および分枝状のエステル基(例えば、上記エステルアルキル基のイソ配置)が挙げられる。ジカルボン酸の特に有用なエステルは、アゼライン酸ジイソデシルである。いくつかの実施形態において、上記潤滑粘性の油は、エステルを実質的に含まないかもしくはさらにはエステルを含まないか、または上記の特定のエステルのうちのいずれか1種以上を含まない。
【0041】
上記潤滑粘性の油は、60〜99.9重量%、もしくは65〜95重量%、もしくは70〜85重量%の範囲で存在し得る。他の実施形態において、上記潤滑粘性の油は、90〜99.9重量%、95〜99.9重量%、もしくは98〜99.5重量%で存在する。
【0042】
上記潤滑組成物は、濃縮物および/もしくは完全に処方された潤滑剤の形態にあり得る。本発明の潤滑組成物が濃縮物(これは、さらなる油と合わせて、全体としてもしくは部分的に、最終の潤滑剤を形成し得る)の形態にある場合、上記潤滑剤(a)〜(d) 対 上記潤滑粘性の油および/もしくは希釈油の比は、重量で約1:99〜約99:1、もしくは重量で約80:20〜約10:90の範囲を含む。
【0043】
(摩擦改変剤)
本発明の方法および組成物において使用される摩擦改変剤は、摩擦改変剤および/もしくは潤滑性補助剤として一般に公知のものを含み得る。このような添加剤の有用なリストは、米国特許第4,792,410号に含まれる。米国特許第5,110,488号は、摩擦改変剤として有用な脂肪酸に金属塩および具体的には亜鉛塩を開示する。脂肪酸はまた、有用な摩擦改変剤である。本発明に適した摩擦改変剤のリストは、(i)脂肪ホスファイトおよび/もしくはホスホネート;(ii)脂肪酸アミド;(iii)脂肪エポキシド;(iv)ホウ酸化脂肪エポキシド;(v)脂肪アミン;(vi)グリセロールエステル;(vii)ホウ酸化グリセロールエステル;(viii)アルコキシル化脂肪アミン;(ix)ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン;(x)脂肪酸の金属塩;(xi)硫化オレフィン;(xii)脂肪イミダゾリン;(xiii)カルボン酸もしくは等価物およびポルアルキレン−ポリアミンの縮合生成物;(xiv)サリチル酸アルキルの金属塩;(xv)アルキルリン酸のアミン塩;(xvi)脂肪エステル;(xvii)カルボン酸もしくは等価物と、ポリオールとの縮合生成物、ならびにこれらの混合物を含む。
【0044】
摩擦改変剤のこれらタイプの各々の代表は公知であり、市販されている。例えば、(i)一般に、以下の式の化合物を含む:(RO)PHO;(RO)(HO)PHO;およびP(OR)(OR)(OR)。これらの構造において、用語「R」は、従来から、アルキル基といわれるが、水素であり得る。当然のことながら、上記アルキル基は実際にアルケニルであり、従って、用語「アルキル」および「アルキル化」は、本明細書で使用される場合、上記成分内の飽和アルキル基以外を含むことが考えられる。上記成分は、実質的に親油性にするように、十分なヒドロカルビル基を有するはずである。いくつかの実施形態において、上記ヒドロカルビル基は、実質的に非分枝状である。多くの適切なこのような成分は市販されており、米国特許第4,752,416号に記載されるように合成され得る。いくつかの実施形態において、上記成分は、R基の各々において、8〜24個の炭素原子を含む。他の実施形態において、上記成分は、12〜22個の炭素原子を、上記脂肪ラジカルのうちの各々に、もしくは16〜20個の炭素原子を含む脂肪ホスファイトであり得る。一実施形態において、上記脂肪ホスファイトは、オレイル基から形成され得、よって、18個の炭素原子を各脂肪ラジカル中に有する。
【0045】
上記(iv)ホウ酸化脂肪エポキシドは、カナダ国特許第1,188,704号から公知である、これら油溶性ホウ素含有組成物は、80℃〜250℃の温度で、ホウ酸もしくは三酸化ホウ素と、以下の式を有する少なくとも1個の脂肪エポキシドと反応させることによって調製され:
【0046】
【化1】

【0047】
ここでR、R、RおよびRのうちの各々は、水素もしくは脂肪ラジカルであるか、またはこれらのうちのいずれか2個は、これらが結合される上記エポキシ炭素原子と一緒になって、環式ラジカルを形成する。上記脂肪エポキシドは、好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を含む。
【0048】
上記ホウ酸化脂肪エポキシドは、2種の材料の反応を必要とするそれら調製物のための方法によって特徴付けられ得る。試薬Aは、三酸化ホウ素またはホウ酸(メタホウ酸(HBO)、オルトホウ酸(HBO)およびテトラホウ酸(H)が挙げられる)の種々の形態のうちのいずれかであり得る。ホウ酸、および特にオルトホウ酸が好ましい。試薬Bは、上記式を有する少なくとも1つの脂肪エポキシドであり得る。上記式において、上記R基のうちの各々は、最も頻繁には、水素もしくは脂肪族ラジカルであり、少なくとも1個は、少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロカルビルもしくは脂肪族ラジカルである。試薬A 対 試薬Bのモル比は、一般に、1:0.25〜1:4である。1:1〜1:3の比が好ましく、約1:2が特に好ましい比である。上記ホウ酸化脂肪エポキシドは、単に、上記2つの試薬をブレンドし、それらを、80℃〜250℃、好ましくは、100℃〜200℃の温度で、反応が起こる十分な時間にわたって加熱することによって、調製され得る。望ましい場合、上記反応は、実質的に不活性な、通常は液体の有機性希釈剤の存在下でもたらされ得る。上記反応の間に、水は放出され、蒸留によって除去され得る。
【0049】
上記(iii)非ホウ酸化脂肪エポキシド(上記「試薬B」に対応する)はまた、摩擦改変剤として有用である。
【0050】
ホウ酸化アミンは、一般に、米国特許第4,622,158号から公知である。ホウ酸化アミン摩擦改変剤((ix)ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミンを含む)は、ホウ素化合物(上記に記載されるとおり)と、その対応するアミンとの反応によって都合よく調製され得る。上記アミンは、単純な脂肪アミンもしくはヒドロキシ含有三級アミンであり得る。上記ホウ酸化アミンは、上記ホウ素反応物(上記に記載されるとおり)を、アミン反応物に添加し、得られた混合物を、50℃〜300℃、好ましくは、100℃〜250℃もしくは130℃〜180℃で、攪拌しながら加熱することによって、調製され得る。上記反応は、上記反応混合物から副生成物の水の放出が止まる(このことは、上記反応の完了を示す)まで継続される。
【0051】
上記ホウ酸化アミンを調製するにおいて有用なアミンの中には、商標名「ETHOMEEN」によって知られかつAkzo Nobelから販売されている市販のアルコキシル化脂肪アミンがある。これらETHOMEENTM材料の代表的な例は、ETHOMEENTM C/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−ココ−アミン);ETHOMEENTM C/20(ポリオキシエチレン[10]ココアミン);ETHOMEENTM S/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]ソイアミン);ETHOMEENTM T/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−タロウ−アミン);ETHOMEENTM T/15(ポリオキシエチレン−[5]タロウアミン);ETHOMEENTM O/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイル−アミン);ETHOMEENTM 18/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン);およびETHOMEENTM 18/25(ポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミン)である。脂肪アミンおよびエトキシル化脂肪アミンはまた、米国特許第4,741,848号に記載される。ジヒドロキシエチルタロウアミン(ENT−12TMとして市販されている)は、アミンのこれらタイプに含まれる。
【0052】
上記(viii)アルコキシル化脂肪アミン、および(v)脂肪アミン自体(例えば、オレイルアミンおよびジヒドロキシエチルタロウアミン)は、一般に、本発明において摩擦改変剤として有用である。このようなアミンは、市販されている。
【0053】
グリセロールの、ホウ酸化および非ホウ酸化両方の脂肪酸エステルは、摩擦改変剤として使用され得る。上記(vii)グリセロールのホウ酸化脂肪酸エステルは、グリセロールの脂肪酸エステルを、反応水を除去しながらホウ酸でホウ酸化することによって調製される。好ましくは、各炭素が、反応混合物中に存在する1.5〜2.5個のヒドロキシル基と反応するように、十分なホウ酸が存在する。上記反応は、60℃〜135℃の範囲の温度において、任意の適切な有機溶媒(例えば、メタノール、ベンゼン、キシレン、トルエン、もしくは油)の非存在下もしくは存在下で行われ得る。
【0054】
上記(vi)グリセロールの脂肪酸エステル自体は、当該分野で周知の種々の方法によって調整され得る。これらエステルのうちの多く(例えば、グリセロールモノオレエートおよびグリセロールタロウエート)は、商業スケールで製造される。上記有用なエステルは、油溶性であり、好ましくは、C8〜C22脂肪酸もしくはこれらの混合物(例えば、天然生成物中に見いだされ、以下に詳細に記載されるもの)から調製される。グリセロールの脂肪酸モノエステルが好ましいが、モノエステルおよびジエステルの混合物も使用され得る。例えば、市販のグリセロールモノオレエートは、45重量%〜55重量%のモノエステルおよび55重量%〜45重量%のジエステルの混合物を含み得る。
【0055】
脂肪酸は、上記グリセロールエステルを調製するにおいて使用され得る;それらはまた、それらの(x)金属塩、(ii)アミド、および(xii)イミダゾリン(これらのうちのいずれも、摩擦改変剤として使用され得る)を調製するにおいて使用され得る。好ましい脂肪酸は、10〜24個の炭素原子、もしくは12〜18個の炭素原子を含むものである。上記酸は、分枝鎖であってもよいし、直鎖であってもよいし、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。いくつかの実施形態において、上記酸は、直鎖の酸である。他の実施形態において、上記酸は、分枝状である。適切な酸としては、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、およびリノレン酸、ならびに天然生成物であるタロウ、パーム油、オリーブ油、ラッカセイ油、コーン油、ココナツ油および牛脚油に由来する酸が挙げられる。特に好ましい酸は、オレイン酸である。好ましい金属塩としては、亜鉛塩およびカルシウム塩が挙げられる。例は、過塩基化(overbased)カルシウム塩および塩基性オレイン酸−亜鉛塩錯体(例えば、オレイン酸亜鉛)(これは、一般式Znオレイン酸で表され得る)である。好ましいアミドは、アンモニアとの、または一級もしくは二級アミン(例えば、エチルアミンおよび次エタノールアミン)との縮合によって調製されるものである。脂肪イミダゾリンは、酸と、ジアミンもしくはポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン)との環式縮合生成物である。上記イミダゾリンは、一般に、以下の構造によって表され:
【0056】
【化2】

【0057】
ここでRは、アルキル基であり、R’は、水素、またはヒドロカルビル基もしくは置換されたヒドロカルビル基であり、-(CHCHNH)n-基を含む。好ましい実施形態において、上記摩擦改変剤は、C10〜C24脂肪酸と、ポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、および特には、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタアミンとの生成物である。
【0058】
上記カルボン酸およびポルアルキレンアミン(xiii)との縮合生成物は、一般に、イミダゾリンもしくはアミドであり得る。それらは、上記カルボン酸のうちのいずれかおよび本明細書に記載されるポリアミンのうちのいずれかから得られ得る。
【0059】
硫化オレフィン(xi)は、摩擦改変剤として使用される周知の市販の材料である。特に好ましい硫化オレフィンは、米国特許第4,957,651号および同第4,959,168号の詳細な教示に従って調製されるものである。そこで記載されるのは、(1)多価アルコールの少なくとも1種の脂肪酸エステル、(2)少なくとも1種の脂肪酸、(3)少なくとも1種のオレフィン、および(4)1価アルコールの少なくとも1種の脂肪酸エステルからなる群より選択される2種以上の反応物の同時硫化混合物である。反応物(3)(オレフィン成分)は、少なくとも1種のオレフィンを含む。このオレフィンは、好ましくは、脂肪族オレフィンであり、これは、通常、4〜40個の炭素原子、好ましくは、8〜36個の炭素原子を含む。末端オレフィン(Terminal olefin)、もしくはαオレフィンが好ましく、特に、12〜20個の炭素原子を有するものが好ましい。これらオレフィンの混合物は、市販されており、このような混合物は、本発明における使用が企図される。上記反応物のうちの2種以上の同時硫化混合物は、適切な反応物の混合物と、硫黄源とを反応させることによって調製される。上記硫化されるべき混合物は、10〜90重量部の反応物(1)、もしくは0.1〜15重量部の反応物(2);または10〜90重量部の、しばしば15〜60重量部の、より頻繁には、25〜35重量部の反応物(3)、または10〜90重量部の反応物(4)を含み得る。上記混合物は、本発明において、反応物(3)および反応物(1)、(2)および(4)として同定される反応物の群のうちの少なくとも1種の他のメンバーを含む。上記硫化反応は、一般に、高温で攪拌しながら、および必要に応じて、不活性雰囲気中、および不活性溶媒の存在下で行われる。本発明のプロセスにおいて有用な硫化剤はとして、元素状態の硫黄(これは好ましい)、硫化水素、硫黄ハライド+硫化ナトリウム、および硫化水素と、硫黄もしくは二酸化硫黄との混合物が挙げられる。代表的には、しばしば、0.5〜3モルの硫黄が、オレフィン結合1モルあたりに使用される。硫化オレフィンはまた、硫化油(例えば、植物性油、ラード油、オレイン酸およびオレフィン混合物)を含み得る。
【0060】
サリチル酸アルキル(xiv)の金属塩としては、長鎖(例えば、C12〜C16)アルキル置換されたサリチル酸のカルシウム塩および他の塩が挙げられる。
【0061】
アルキルリン酸(xv)のアミン塩としては、リン酸のオレイルおよび他の長鎖のエステルと以下に記載されるアミンとの塩が挙げられる。この点に関して有用なアミンは、商標名PrimeneTMの下で販売される三級脂肪族一級アミンである。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記摩擦改変剤は、脂肪酸もしくは脂肪油、脂肪酸の金属塩、脂肪アミド、硫化脂肪油もしくは脂肪酸、リン酸アルキル、リン酸アルキルアミン塩(alkyl phosphate amine salt);カルボン酸とポリアミンとの縮合生成物、ホウ酸化脂肪エポキシド、脂肪イミダゾリン、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
他の実施形態において、上記摩擦改変剤は、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタアミンとの縮合生成物、イソステアリン酸と1−[トリス(ヒドロキシメチル)]メチルアミンとの縮合生成物、ホウ酸化ポリテトラデシルオキシラン、オレイン酸亜鉛、ヒドロキシルエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリン、リン酸水素ジオレイル、C14−C18アルキルホスフェート、もしくはこれらのアミン塩、硫化植物性油、硫化ラード油、硫化オレイン酸、硫化オレフィン、オレイルアミド、グリセロールモノオレエート、大豆油、またはこれらの混合物であり得る。
【0064】
さらに他の実施形態において、上記摩擦改変剤は、グリセロールモノオレエート、オレイルアミド、イソステアリン酸と2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールとの反応生成物、ソルビタンモノオレエート、9−オクタデセン酸、イソステアリルアミド、イソステアリルモノオレエートもしくはこれらの組み合わせであり得る。
【0065】
摩擦改変剤の量は、上記潤滑組成物のうちの0.01〜2重量%または0.03〜1重量%であり得、いくつかの実施形態では、0.05〜1.5重量%、0.05〜0.5重量%、0.08〜1重量%、もしくは0.075〜0.3重量%である。しかし、いくつかの実施形態において、摩擦改変剤の量は、0.5重量%未満もしくは0.2重量%未満で存在するか、または0.2〜0.5重量%で存在する。他の実施形態において、上記摩擦改変剤は、500ppmより多く、1000ppmより多く、1500ppmより多く、もしくは2000ppmより多く存在するが、これらの実施形態の各々において、その上限は、5000ppm以下、3000ppm以下、もしくは2000ppm以下であり得る。これら範囲は、上記組成物中に存在する個々の摩擦改変剤の量に、または上記組成物に存在する総摩擦改変剤成分(これは、2種以上の摩擦改変剤の混合物を含み得る)の量に適用され得る。
【0066】
多くの摩擦改変剤は、乳化剤としても作用する傾向にある。このことは、しばしば、摩擦改変剤が、しばしば、非極性の脂肪テールおよび極性のヘッド基を有するという事実に起因する。乳化できること(Emulsibility)、もしくはかなり低下した解乳化性は、油圧流体中で望ましくない結果であり、この流体中で、このような組成物が、上記流体が接触した状態であり得るいかなる水からも分離したままでありかつ浮遊(entrain)しないことは望ましい。本発明の摩擦改変剤は、上記油圧流体の耐摩耗性能を改善するために使用され得るが、いくつかの実施形態において、上記流体の解乳化性に負の影響を及ぼすレベルで、上記摩擦改変剤を使用するのを回避するために注意が払われねばならない。
【0067】
本発明の組成物は、さらなる添加剤もしくは添加剤パッケージをさらに含み得る。上記使用され得る添加剤のうちの多くは、以下で詳細に記載され、これら添加剤は、別個にもしくは添加剤パッケージとして添加され得る。添加剤パッケージは、本明細書に記載される添加剤のうちの1種以上を含み得、ある量の希釈油および/もしくは溶媒をも含み得る。添加剤パッケージは、それらが、0.2〜4.0重量%、0.5〜3.0重量%、もしくは0.6〜2.0重量%で存在するように、本発明の組成物に添加され得る。
【0068】
(金属含有分散剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、金属含有分散剤を含み得る。上記分散剤は、0〜5重量%、もしくは0.05〜2.5重量%、もしくは0.1〜1.5重量%の範囲で存在し得る。種々の実施形態において、上記金属含有分散剤は、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、もしくは1.1重量%で存在する。
【0069】
上記金属含有分散剤の金属は、亜鉛、銅、マグネシウム、バリウムもしくはカルシウムを含む。一実施形態において、上記金属は亜鉛である。
【0070】
上記分散剤は、N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドもしくは長鎖アルケニルエステル、その部分エステルもしくは塩を含み得る。
【0071】
N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、約350〜約5000、もしくは約500〜約3000の範囲の上記ポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。
【0072】
上記長鎖アルケニルエステル、その部分エステルもしくは塩は、アルケニル置換されたアシル化剤(例えば、ポリイソブチレンコハク酸)と、ポリオールとを反応させることによって調製され得る。
【0073】
適切なポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、エリスリトール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール(トリメチロールエタン)、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、1,2,4−ヘキサントリオールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
上記スクシンイミドは、ポリアミンから調製され得る。適切なポリアミンとしては、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン)、またはこれらの混合物が挙げられる。ポリアミンの有用な例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N−メチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、およびDow Chemicalsによって商業的に製造されるポリエチレンポリアミンボトム(HPAX(登録商標)アミン)である。
【0075】
一実施形態において、本発明は、ポリイソブチレンスクシンイミド錯体または亜鉛化合物もしくはカチオンとの塩を形成するために、ポリイソブチレンコハク酸無水物、アミンおよび酸価亜鉛に由来する少なくとも1種の分散剤をさらに含む。亜鉛との上記ポリイソブチレンスクシンイミド錯体は、単独で、または他の分散剤と組み合わせて、使用され得る。亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体を調製する方法は、米国特許第3,636,603号により詳細に記載される。
【0076】
本発明の組成物はまた、非金属含有分散剤を含み得る。これら分散剤は、上記金属との塩形成が起こる前に、N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドもしくは長鎖アルケニルエステル、上記のその部分エステルであり得る。上記の分散剤のうちのいずれかのホウ酸化バージョンおよび/もしくは他の誘導体はまた、使用され得る。
【0077】
(金属ジヒドロカルビル置換されたジチオホスフェート)
本発明の組成物は、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートをさらに含み得る。本発明における使用に適した金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、少なくとも1種の分枝状ヒドロカルビル基を含む。上記ヒドロカルビルジチオホスフェートとしては、以下の式によって表されるものが挙げられ:
【0078】
【化3】

【0079】
ここでM’は、金属を含み;RおよびRの両方が、ヒドロカルビル基もしくはその混合物であるが、ただしRおよびRのうちの少なくとも1個は、分枝状一級ヒドロカルビル基、もしくはその混合物である。一実施形態において、RおよびRの両方は、分枝状一級ヒドロカルビル基である。
【0080】
各分枝状ヒドロカルビル基は、約3〜約20個、もしくは約8〜約16個、もしくは約8〜約14個の炭素原子を含み得る。適切な分枝状ヒドロカルビル基の例としては、2−エチルヘキシル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソドデシル、イソペンタデシル、2−メチル−1−ペンチル、イソブチル、2−プロピル−1−デシルもしくはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記分枝状ヒドロカルビル基は、2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシル、もしくはこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0081】
およびRのうちの一方のみが分枝状である場合、上記非分枝状の基は、直鎖状アルキルもしくはアリールであり得る。一実施形態において、RおよびRの両方は、分枝状である。
【0082】
M’は金属であり、nは、M’の利用可能な価数に等しい整数である。M’は、1価、2価もしくは3価であり、一実施形態において、2価であり、別の実施形態において、2価の遷移金属である。一実施形態において、M’は亜鉛である。一実施形態において、M’はカルシウムである。一実施形態において、M’はバリウムである。金属ヒドロカルビルジチオホスフェートの例としては、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(しばしば、ZDDP、ZDPもしくはZDTPといわれる)が挙げられる。
【0083】
上記金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、上記潤滑組成物中、約0.01〜約5重量%、もしくは約0.1〜約2重量%、もしくは約0.2〜約1重量%の範囲で存在し得る。異なる実施形態において、上記金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、約0.3重量%、もしくは約0.5重量%、もしくは約0.7重量%、もしくは約0.9重量%で存在する。
【0084】
本発明の組成物はまた、非金属含有ジヒドロカルビルジチオホスフェートを含み得る。これら添加剤は、上記金属との塩形成が起こる前に、ジヒドロカルビルジチオホスフェートエステルもしくは上記の材料から得られるその部分エステルであり得る。これら添加剤としては、ジチオリン酸エステルが挙げられる。
【0085】
(さらなる添加剤)
上記組成物は、必要に応じて、界面活性剤、抗酸化剤、防錆剤、もしくはこれらの混合物を含む1種以上の添加剤を含み得る。
【0086】
(界面活性剤)。 上記潤滑組成物は、必要に応じて、既知の中性界面活性剤もしくは過塩基化界面活性剤(すなわち、当該分野で公知の従来のプロセスによって調製されるもの)をさらに含む。適切な界面活性剤基質としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リンの酸(phosphorus acid)、モノチオリン酸および/もしくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはサリゲニンが挙げられる。上記界面活性剤は、天然であってもよいし、合成であってもよい。一実施形態において、上記界面活性剤は合成である。
【0087】
一実施形態において、上記界面活性剤は、スルホネート界面活性剤を含む。上記スルホネート界面活性剤はまた、防錆剤特性を有し得る。
【0088】
上記組成物の上記スルホネート界面活性剤は、以下の式によって表される化合物を含み:
(R-A-SOM (I)
ここで各Rは、ヒドロカルビル基であり、一実施形態において、約6〜約40個、もしくは約8〜約35個、もしくは約8〜約30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;Aは、独立して、環式もしくは非環式の二価もしくは多価の炭化水素基であってもよく、代表的には、芳香族であり;Mは、水素、金属イオンの結合価、アンモニウムイオンもしくはこれらの混合物であり;kは、0〜約5の整数(例えば、0、1、2、3、4、5)である。一実施形態において、kは、1、2もしくは3であり、別の実施形態において、1もしくは2であり、別の実施形態において、2である。
【0089】
一実施形態において、kは1であり、Rは、約6〜約40個の炭素原子を有する分枝状アルキル基である。一実施形態において、kは1であり、Rは、約6〜約40個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。
【0090】
適切なR直鎖状アルキル基の例としては、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、エイコシル、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0091】
Mが金属イオンの結合価である場合、上記金属は、1価、2価、3価、もしくはこのような金属の混合物であり得る。1価である場合、上記金属Mは、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、もしくはカリウム)を含み、2価である場合、上記金属Mは、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウム)を含む。一実施形態において、上記金属は、アルカリ土類金属である。一実施形態において、上記金属はカルシウムである。
【0092】
Aが、環式炭化水素基である場合、適切な基としては、フェニレンもしくは縮合環式基(例えば、ナフチレン、インデニレン、インダニレン、ビシクロペンタジエニレンもしくはこれらの混合物)を有するものが挙げられる。一実施形態において、Aは、ナフタレン環を含む。
【0093】
種々の実施形態において、上記界面活性剤は、中性もしくは過塩基性である。一実施形態において、上記界面活性剤は中性である。
【0094】
適切な界面活性剤の例は、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム、ジデシルナフタレンスルホン酸カルシウム、ジドデシルナフタレンスルホネート、ジペンタデシルナフタレンスルホン酸カルシウム、もしくはこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む。一実施形態において、上記界面活性剤は、中性もしくは僅かに過塩基性のジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム、もしくはこれらの混合物を含む。
【0095】
上記界面活性剤は、0〜約3重量%、もしくは約0.001〜約1.5重量%、もしくは約0.01〜約0.75重量%の範囲で上記潤滑組成物中に存在し得る。種々の実施形態において、上記界面活性剤は、上記潤滑組成物のうちの約0.08重量%、もしくは約0.1重量%、もしくは約0.2重量%、もしくは約0.4重量%、もしくは約0.6重量%で存在し得る。
【0096】
(抗酸化剤)。 抗酸化剤化合物は公知であり、これらとしては、アルキル化ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、ジチオカルバミン酸モリブデン、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な抗酸化剤はまた、アルキル化α−フェニルナフチルアミンを含む。抗酸化剤化合物は、単独で、もしくは他の抗酸化剤と組み合わせて、使用され得る。
【0097】
ヒンダードフェノール抗酸化剤は、しばしば、立体障害基として、二級ブチルおよび/もしくは三級ブチル基を含む。上記フェノール基は、しばしば、ヒドロカルビル基および/もしくは第2の芳香族基に連結する架橋基でさらに置換される。適切なヒンダードフェノール抗酸化剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、もしくは2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態において、上記ヒンダードフェノール抗酸化剤は、エステルであり、これらとしては、例えば、Ciba製のIrganoxTM L−135が挙げられ得る。抗酸化剤として使用され得るジチオカルバミン酸モリブデンの適切な例としては、商品名の下で販売される市販の材料(例えば、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.製のVanlube 822TMおよびMolyvanTM A、ならびにAsahi Denka Kogyo K.K製のAdeka Sakura−LubeTM S−100、S−165およびS−600、ならびにこれらの混合物)が挙げられる。
【0098】
適切なアルキル化ジフェニルアミンとしては、ビスノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ビス−オクチル化ジフェニルアミン、ジイソブチル化ジフェニルアミン、ビスデシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミン、ビススチレン化ジフェニルアミン(すなわち、ビスフェネチル化ジフェニルアミン)、スチレン化ジフェニルアミン(すなわち、フェネチル化ジフェニルアミン)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
上記抗酸化剤は、0〜約3重量%、もしくは約0.01〜約1.5重量%、もしくは約0.05〜約0.8重量%の範囲で、上記潤滑組成物中に存在し得る。
【0100】
(防錆剤)。 上記潤滑組成物は、必要に応じて、防錆剤をさらに含む。防錆剤の例としては、ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾチアゾール、2−(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2−アルキルジチオ−5−メルカプトチアジアゾ−ルもしくはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記防錆剤は、ベンゾトリアゾールである。一実施形態において、上記防錆剤は、2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ルである。上記防錆剤は、単独で、もしくは他の防錆剤と組み合わせて、使用され得る。
【0101】
ベンゾトリアゾールは、以下の環、1位、2位、4位、5位、もしくは6位、もしくは7位のうちの少なくとも1つの上にヒドロカルビル置換を含み得る。上記ヒドロカルビル基は、1〜約30個、もしくは1〜約15個、もしくは1〜約7個の炭素原子を含み得る。一実施形態において、上記防錆剤は、トリルトリアゾールである。一実施形態において、4位、もしくは5位もしくは6位もしくは7位で置換されたヒドロカルビルベンゾトリアゾールは、アルデヒドおよび二級アミンでさらに反応させられ得る。
【0102】
アルデヒドおよび二級アミンとさらに反応させられる適切なヒドロカルビルベンゾトリアゾールの例としては、N,N−ビス(ヘプチル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(ノニル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(デシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(ウンデシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス(ドデシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、N,N−ビス−エチルヘキシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミンおよびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記防錆剤は、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミンである。
【0103】
一実施形態において、上記防錆剤は、2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ルである。上記2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ルのアルキル基は、1〜約30個、もしくは約2〜約25個、もしくは4〜約20個、もしくは約6〜約16個の炭素原子を含む。適切な2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ルの例としては、2,5−ビス(tert−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(tert−デシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(tert−ウンデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(tert−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0104】
上記防錆剤は、上記潤滑組成物のうちの約0〜約1.5重量%、もしくは約0.0003〜約1.5重量%、もしくは約0.0005〜約0.5重量%、もしくは約0.001〜約0.1重量%の範囲で存在し得る。
【0105】
(粘性改変剤)。 上記潤滑組成物は、必要に応じて、粘性改変剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよび/もしくはアクリレートを含む。本発明における使用に適した粘性改変剤(しばしば、粘性指数改善因子といわれる)としては、ポリマー材料(スチレン−ブタジエンゴム、オレフィンコポリマー、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(アルキルスチレン)、アルケニルアリール結合体化ジエンコポリマー、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、またはこれらの混合物を含む)が挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記粘性改変剤は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、オレフィンコポリマーもしくはこれらの混合物である。
【0107】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル粘性改変剤は、(a)9〜30個の炭素を上記エステル基に含む(メタ)アクリル酸エステル、(b)7〜12個の炭素を上記エステル基に含む(メタ)アクリル酸エステル(ここで上記エステル基は、2−(C1−4アルキル)置換基を含む)、および必要に応じて、(c)少なくとも1種のモノマー(2〜8個の炭素原子を上記エステル基に含み、上記の(a)および(b)で使用される(メタ)アクリル酸エステルとは異なる(メタ)アクリル酸エステルを含む)、のコポリマーを含む。一実施形態において、上記(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリレートから得られる。
【0108】
粘性改変剤は、オレフィンコポリマーから得られ得る。上記オレフィンコポリマーとしては、2〜4種の異なるオレフィンモノマー、一実施形態において、2〜3種の異なるオレフィンモノマー、およびさらに別の実施形態において、2種の異なるオレフィンモノマーを含む骨格を有するものが挙げられる。上記オレフィンモノマーは、2〜20個、一実施形態において、2〜10個、別の実施形態において、2〜6個、およびさらに別の実施形態において、2〜4個の炭素原子を含む。
【0109】
上記オレフィンコポリマーは、エチレンモノマー、および式HC=CHR(ここでRは、ヒドロカルビル基であり、一実施形態において、1〜18個、1〜10個、1〜6個もしくは1〜3個の炭素原子を含むアルキルラジカルである)を有するαオレフィンから得られる少なくとも1種の他のコモノマーを含む。上記ヒドロカルビル基は、直鎖、分枝鎖もしくはこれらの混合物を有するアルキルラジカルを含む。
【0110】
適切なコモノマーの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、もしくはこれらの混合物が挙げられる。上記コモノマーは、1−ブテン、プロピレンもしくはこれらの混合物であり得る。オレフィンコポリマーの例としては、エチレン−プロピレンおよびエチレン−1−ブテンコポリマーならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0111】
上記粘性改変剤は、上記組成物のうちの0重量%〜30重量%、0.1重量%〜30重量%、1重量%〜25重量%、3重量%〜20重量%もしくは5重量%〜12重量%において油を除いたベースで存在する。一実施形態において、上記粘性改変剤は存在する。一実施形態において、上記粘性改変剤は存在しない。
【0112】
必要に応じて、上記潤滑組成物は、錆止め剤、消泡剤、解乳化剤、流動点降下剤、もしくはこれらの混合物のうちの少なくとも1種をさらに含む。消泡剤、解乳化剤、流動点降下剤の合計組み合わせ量は、上記潤滑組成物のうちの0〜約10重量%、0〜約5重量%、もしくは約0.0001〜約1重量%の範囲であり得る。
【0113】
錆止め剤としては、カルボン酸のアミン塩(例えば、オクタン酸オクチルアミン)、ドデセニルコハク酸もしくは酸無水物または脂肪酸(例えば、オレイン酸)と、ポリアミン(例えば、ポリアルキレンポリアミン(例えば、トリエチレンテトラミン)との縮合生成物、およびアルケニルコハク酸(ここで上記アルケニルラジカルは、約8〜約24個の炭素原子を含む)と、アルコール(例えば、ポリグリコール)との半エステルが挙げられる。錆止め剤はまた、中性ナフタレンスルホネートを含む。上記錆止め剤は、単独で、もしくは他の錆止め剤と組み合わせて、使用され得る。
【0114】
消泡剤(ポリアクリレート(例えば、アクリル酸エチルおよび2−エチルヘキシルアクリレート、および必要に応じて、ビニルアセテートのコポリマー)を含む);解乳化剤(ポリグリコール誘導体、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエーテルおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む);流動点降下剤(マレイン酸無水物−スチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレートもしくはポリアクリルアミドのエステルを含む);はまた、本発明の潤滑組成物において使用され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、亜鉛を実質的に含まなくてもよいし、含まなくてもよいが、他の金属を含み得る。他の実施形態において、上記組成物は、それらが無灰分であり得るように、全ての金属を実質的に含まないか、または含まない。
【0116】
(産業状の利用可能性)
本発明の方法および潤滑組成物は、適切な産業用流体、油圧流体、タービン油、循環油、もしくはこれらの組み合わせであり得る。種々の実施形態において、上記潤滑組成物は、種々の機械式デバイス(産業システム、油圧システムもしくはタービンを含む)に適している。一実施形態において、上記潤滑組成物は、油圧システムに適している。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、油圧ポンプにおいて使用される。一実施形態において、上記ポンプは、油圧ピストンポンプである。一実施形態において、上記ポンプは、ベーンポンプである。別の実施形態において、上記ポンプは、油圧式のピストン・ベーンハイブリッドポンプである。
【0118】
1セットの実施形態において、本発明の油圧流体は、グループIIの油、上記に記載される少なくとも1種の摩擦改変剤(例えば、脂肪酸エステル)、および添加剤パッケージ(亜鉛含有分散剤、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種の対摩耗添加剤、消泡剤、防錆剤、および金属不活性化剤を含む)を含む。このような添加剤パッケージは、上記範囲のうちのいずれか、もしくは0.8〜2重量%で存在し得る。これら実施形態において、上記油圧流体は、亜鉛含有モノグレード処方物である。
【0119】
別のセットの実施形態において、本発明の油圧流体は、グループIIの油、上記に記載される少なくとも1種の摩擦改変剤(例えば、脂肪酸エステル)、および添加剤パッケージ(粘性改変剤、少なくとも1種の抗酸化剤、消泡剤、耐摩耗剤、防錆剤、および金属不活性化剤を含む)を含む。このような添加剤パッケージは、上記範囲のうちのいずれか、もしくは0.4〜1.5重量%で存在し得る。このような実施形態において、上記油圧流体は、無灰分/亜鉛非含有マルチグレード処方物である。
【実施例】
【0120】
以下の実施例は、本発明の例示を提供する。これら実施例は、非網羅的であり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0121】
(ピストンポンプ試験)
(比較実施例1)。 油圧流体組成物を、添加剤パッケージAを、Petro CanadaTM グループIIの油に、1.62重量%のレベルで添加することによって調製する。添加剤パッケージAは、ポリイソブチレンコハク酸無水物から得られる亜鉛含有分散剤、ジアルキルジフェニルアミン抗酸化剤、ヒンダードフェノール抗酸化剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、消泡剤、防錆剤、および金属不活性化剤を含む。Petro CanadaTM グループIIの油は、本質的に硫黄非含有である。
【0122】
(比較実施例2)。 油圧流体組成物を、添加剤パッケージBを、ExxonMobilTM Esso Asia Pacific/Europe グループIの油に、0.85重量%のレベルで添加することによって調製する。添加剤パッケージBは、ポリイソブチレンコハク酸無水物分散剤、アルキルフェノール抗酸化剤、アルキルジチオリン酸亜鉛抗酸化剤、界面活性剤、消泡剤、金属不活性化剤、防錆剤、および解乳化剤を含む。ExxonMobilTM Esso Asia Pacific/Europe グループIの油は、3500〜4000ppmの硫黄含有量を有する。
【0123】
(比較実施例3)。 油圧流体組成物を、上記ExxonMobilTM Esso Asia Pacific/Europe グループIの油が、Petro CanadaTM グループIIの油で置換されていることを除いて、比較実施例2の手順に従って調製する。Petro CanadaTM グループIIの油は、実質的に硫黄を含まない。
【0124】
(実施例1)。 油圧流体組成物を、5000ppmのグリセロールモノオレエートを、MotivaTM Star グループIIの油に添加することによって調製する。他の添加剤は添加しない。MotivaTM Star グループIIの油は、約9ppmの硫黄を含む。
【0125】
(実施例2)。 油圧流体組成物を、1000ppmのグリセロールモノオレエートを、MotivaTM Star グループIIの油に添加することによって調製する。他の添加剤は添加しない。
【0126】
(実施例3)。 油圧流体組成物を、500ppmのグリセロールモノオレエートを、比較実施例1の組成物に添加することによって調製する。
【0127】
(実施例4)。 油圧流体を、1000ppmのグリセロールモノオレエートを比較実施例1の組成物に添加することによって調製する。
【0128】
(実施例5)。 油圧流体を、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタアミンとの縮合生成物1000ppmを比較実施例1の組成物に添加することによって調製する。
【0129】
(実施例6)。 油圧流体を、1000ppmのオレイルアミドを比較実施例1の組成物に添加することによって調製する。
【0130】
上記実施例および添加されていない(non−additized)グループIおよびグループIIの油のベースラインを、Parker Denison手順 A−TP−30533(Parker Denison Hydraulicsによって刊行)に相互に関連することが意図されたピストンポンプスクリーニング試験で試験する。
【0131】
上記試験法は、4000psi、および140℃で24時間において作動させた標準的ピストンポンプを利用する。上記試験したベースラインは、比較実施例3において使用したExxonMobilTM グループIの油(これは、3500〜4000ppmの硫黄含有量を有する)およびPetro CanadaTM グループIIの油(これは、本質的に硫黄を含まない)である。上記試験を行う。上記試験の結果を、以下の表にまとめる。反復が完了した場合、両方の結果を報告する。
【0132】
【表1】

【0133】
1-この試験における合格の結果は、300mg以下の全ピストン重量損失である
2-比較実施例1についての失敗結果における差異は、上記試験が、上記試験後にピストンポンプ表面上の摩耗を測定する場合に以上ではない。失敗試験は、300mg失敗制限を通過すると、しばしば素早く悪化する部分摩耗を引き起こす。
3-実施例3は、比較実施例1と同じ基油および添加剤パッケージを使用する。その結果はなお失敗であるが、実施例3は、比較実施例1を超える摩耗試験結果の改善を示す。
【0134】
上記結果は、グループIベースのおよびグループIIベースの油圧流体の摩耗性能の顕著な差異、ならびにグループIIベースの流体および類似の硫黄含有量を有する流体における改善された摩耗性能の必要性を示す。グループIベースの油圧流体は、比較実施例2によって実証されるように、おそらくそれらの高い硫黄含有量に起因して、顕著により良好な摩耗特性を有する。種々の環境的および調和の制限は、基油硫黄レベルの低下およびより多くのグループIIベースのおよび類似の油圧流体に対する手段を生じるので、耐摩耗性能は、より問題になる。
【0135】
上記結果はまた、摩擦改変剤(例えば、グリセロールモノオレエート)の添加が、油圧流体によって与えられる上記耐摩耗性能を顕著に改善し得る(摩耗を低下させ得る)ことを示す。
【0136】
(解乳化性試験)
(実施例7)。 油圧流体組成物を、添加剤パッケージA(上記の比較実施例1に記載されるとおり)をMotiva Star グループIIの油に1.62重量%のレベルで添加することによって調製される。次いで、上記流体を、3つの部分に分け、各々を、種々のレベルのグリセロールモノオレエートで(1つは、500ppmで、1つは、1000ppmで、および1つは5000ppmで)処理する。
【0137】
(実施例8)。 油圧流体組成物を、添加剤パッケージA(上記の比較実施例1に記載されるとおり)をMotiva Star グループIIの油に1.62重量%のレベルで添加することによって調製する。次いで、上記流体を、3つの部分にわけ、各々を、異なるレベルの、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタアミンとの縮合生成物で(1つは500ppmで、1つは1000ppmで、および1つは5000ppmで)処理する。
【0138】
(実施例9)。 あるセットの油圧流体組成物を、添加剤パッケージAが1.42重量%のレベルで存在し、個々のサンプルが500ppm、1000ppm、および2500ppmにおいて上記摩擦改変剤で処理されることを除いて、実施例8に従って調製する。
【0139】
(実施例10)。 あるセットの油圧流体組成物を、上記摩擦改変剤がヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリン出有ることを除いて、実施例9に従って調製する。
【0140】
(実施例11)。 あるセットの油圧流体組成物を、上記摩擦改変剤が亜リン酸水素ジオレイルであることを除いて、実施例9に従って調製する。
【0141】
(実施例12)。 あるセットの油圧流体組成物を、上記摩擦改変剤がオレイルアミドであることを除いて、実施例9に従って調製する。
【0142】
(実施例13)。 あるセットの油圧流体組成物を、上記摩擦改変剤がC14−C18アルキルホスフェートアミン塩であり、個々のサンプルを500ppm、および1000ppmにおいて上記摩擦改変剤で処理することを除いて、実施例9に従って調製する。
【0143】
(実施例14)。 あるセットの油圧流体を、上記摩擦改変剤がタロウアミン−2−エトキシレートであることを除いて、実施例13に従って調製する。
【0144】
(実施例15)。 あるセットの油圧流体を、添加剤パッケージAの改変バージョン(これは、少量のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み、また、少量のポリイソブチレンコハク酸無水物を含むことを除いて、上記の添加剤パッケージAと同一である)が使用されることを除いて、実施例9に従って調製する。上記サンプルの全ては、40ppmのポリエーテル解乳化剤でトップが処理され、上記使用される摩擦改変剤は、グリセロールモノオレエートである。上記個々のサンプルを、1000ppm、1500ppm、2000ppmおよび3000ppmにおいて上記摩擦改変剤で処理する。
【0145】
(実施例16)。 あるセットの油圧流体を、上記ポリエーテル解乳化剤が、全てのサンプル中に100ppmで存在することを除いて、実施例15に従って調製する。
【0146】
実施例は、それらの解乳化性特性を評価する貯めに試験する。サンプルを、ASTM D1401水分離試験プロトコルに従って試験し、80mLサンプルの試験を、54.4℃で行い、結果を、一連の数字:XX−YY−ZZ(分)として報告した。第1の数字(XX)は、油相の量を表し、第2の数字(YY)は、水相の量を表し、第3の数字(ZZ)は、存在する任意のエマルジョン相の量を表す。これら結果は、上記80mL試験サンプルのmL読み取りである。括弧の中の最後の数字は、読み取りを行った時間(分単位)である。サンプルの読み取りを、混合後に水相および油相の完全な分離が起こり、エマルジョン相が存在しない場合に行う;しかし、任意の量のエマルジョン相がなお15分において存在する場合、その報告された読み取りは、3ml以下のエマルジョン相が存在する場合に行い;30分で3mlより多くのエマルジョン相がなお存在する場合、読み取りを、30分で行い、試験を終了する。上記サンプル処方物および試験結果を、以下の表にまとめる。サンプルIDは、試験される処方物の情報および存在する上記摩擦改変剤(FM)が何であるかを提供する。次いで、列は、上記摩擦改変剤の種々の処理レベルでの結果を示す。いくつかのサンプルは、反復した。反復が完了した場合に、両方の読み取り値、以下の表に報告する。
【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
上記結果は、本発明の組成物が、種々の摩擦改変剤の種々の処理速度で、受容可能な解乳化性特性を有することを示す。本発明の方法および組成物は、改善された摩耗性能を提供すると同時に、受容可能な解乳化性特性を維持する。
【0150】
本明細書において、用語「ヒドロカルビル置換基」もしくは「ヒドロカルビル基」とは、本明細書で使用される場合、その通常の意味で使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、これは、炭素原子および水素原子から主に構成され、その分子の残りに炭素原子を通じて結合される基をいい、主に炭化水素の特徴を有する分子を損なうに不十分な割合で、別の原子もしくは基の存在を排除しない。一般に、わずか2個、好ましくはわずか1個の非炭化水素置換基が、上記ヒドロカルビル基において10個の炭素原子ごとに存在し;代表的には、上記ヒドロカルビル基において非炭化水素置換基は存在しない。用語「ヒドロカルビル置換基」もしくは「ヒドロカルビル基」のより詳細な定義は、米国特許第6,583,092号に記載される。
【0151】
上記に言及される文書の各々は、本明細書に参考として援用される。実施例中、もしくは別の明示されている箇所を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定するこの説明における全ての数量は、語句「約」によって修飾されると理解されるべきである。別段示されなければ、重量%に関する全てのパーセントの値および全てのppm値は、重量 対 重量ベースである。別段示されなければ、本明細書で言及される各化学物質もしくは組成物は、市販のグレードの材料と解釈されるべきであり、この材料は、異性体、副生成物、誘導体および市販のグレードで存在することが通常理解される他のこのような物質を含み得る。しかし、各化学成分の量は、別段示されなければ。市販の材料中に習慣的に存在し得るいかなる溶媒も希釈剤も除いて示される。本明細書で示される上記上限および下限の量、範囲、および比の限定は、独立して組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各々の要素の範囲および量は、他の要素のうちのいずれについての範囲もしくは量とも一緒に使用され得る。本明細書で使用される場合、表現「〜から本質的になる」とは、考慮中の上記組成物の基本的かつ新規な特徴に本質的に影響を及ぼさない物質の包含を許容する。
【0152】
本発明は、その好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、その種々の改変が、本明細書を読めば、当業者に明らかになることは理解されるべきである。従って、本明細書で開示される発明が、添付の特許請求の範囲内にはいるような改変を網羅することが意図されることは、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用流体、油圧流体、タービン油、循環油、もしくはこれらの組み合わせを要する機械式デバイスを潤滑する方法であって、該方法は、
I.該機械式デバイスに、以下:
(a)潤滑粘性の油であって、ここで該油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;および
(b)摩擦改変剤;
を含む潤滑組成物を供給し、該デバイス内で、低摩耗、低摩擦、もしくはこれらの組み合わせを生じる工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
成分(a)は、グループIIの油、グループIIIの油、GTL油、ポリαオレフィン、もしくはこれらの組み合わせを含み、成分(a)は、1000ppm未満の硫黄含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潤滑組成物は、分散剤、抗酸化剤、防錆剤、カルボン酸もしくは酸無水物、またはこれらの組み合わせをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑組成物は、界面活性剤、耐摩耗剤、消泡剤、金属不活性化剤、解乳化剤、界面活性安定化剤、もしくはこれらの組み合わせをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記潤滑組成物は、ジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート金属をさらに含み、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は、分枝状一級ヒドロカルビル基である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記潤滑組成物は、金属非含有のジヒドロカルビル置換ジチオホスフェートをさらに含み、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は、分枝状一級ヒドロカルビル基である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記機械式デバイスは、油圧システムである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
成分(b)は、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪アミン、脂肪酸、脂肪エステル、カルボン酸もしくは等価物と、ポルアルキレン−ポリアミンおよび/もしくはポリオールとの縮合生成物、ホウ酸化脂肪アミン、ホウ酸化脂肪エポキシド、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル、脂肪イミダゾリン、脂肪オキサゾリン、カルボキシレート金属、もしくは2種以上のこれらの組み合わせを含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記潤滑組成物中の摩擦改変剤の量は、0.03〜1重量%であり、ここで前記方法は、水での、該潤滑組成物の改善された解乳化性をさらに生じる、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記潤滑組成物は、アフターマーケット処理として前記摩擦改変剤を前記潤滑粘性の油に添加することによって調製される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
潤滑組成物であって、該潤滑組成物は、
(a)潤滑粘性の油であって、ここで該油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;
(b)摩擦改変剤;
(c)分散剤;
(d)ジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート金属であって、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は、分枝状一級ヒドロカルビル基である、ジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート金属;および
(e)必要に応じて、粘性指数改善ポリマー
を含む、潤滑組成物。
【請求項12】
潤滑組成物であって、該潤滑組成物は、
(a)潤滑粘性の油であって、ここで該油は、実質的に硫黄を含まない、潤滑粘性の油;
(b)摩擦改変剤;
(c)金属非含有のジヒドロカルビル置換ジチオホスフェートであって、ここで少なくとも1個のヒドロカルビル基は、分枝状一級ヒドロカルビル基である、金属非含有のジヒドロカルビル置換ジチオホスフェート;
(d)抗酸化剤;および
(e)必要に応じて、粘性指数改善ポリマー、
を含む、潤滑組成物。
【請求項13】
成分(c)は、金属含有分散剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
成分(e)は、ポリメタクリレートポリマーである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
成分(c)は、金属非含有分散剤を含む、請求項11に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−515833(P2012−515833A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548050(P2011−548050)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/021297
【国際公開番号】WO2010/085434
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】