説明

改善された耐ワニス固着性の潤滑油組成物

一実施形態では、有利な固着制御の潤滑油が開示される。この潤滑油は、グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストックと、潤滑油の少なくとも0.1および2.0重量パーセントを占めるマンニッヒ塩基分散剤と、ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンを含む解乳化剤であって、潤滑油の少なくとも0.002〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤とを含み、ここで、潤滑油は、504時間120℃ Dry TOSTスラッジ試験を用いて60未満の固着制御値を有する。第2実施形態では、固着制御の方法が開示される。第3実施形態では、固着制御およびエマルジョン特性を改善するための油の調合方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
潤滑油組成物の調合技術は、政府およびユーザー環境基準の増加並びにユーザー性能要件の増加の結果としてより複雑になってきている。潤滑油は典型的には、流体耐久性、固着制御、耐摩耗保護、濾過性、水許容範囲、錆/腐食防止、および粘度などの特徴に基づき市場に出される。
【0002】
固着またはワニスは、ガスタービン潤滑などの、多くの油圧および敏感な潤滑用途における深刻化する問題である。ワニス形成は通常、潤滑油劣化をもたらす複雑な一連の事象の結果である。油劣化の2つの共通の原因がある。一原因は、固着、ワニス、スラッジと言われる、酸および不溶性粒子状物質を含む分解生成物の形成をもたらす高温での酸化である。第二の原因は、同伴気泡が高圧下につぶされるときに起こる圧力誘起ディーゼリングまたはマイクロ−ディーゼリングなどの、熱分解である。
【0003】
固着ワニスは、修正無水ASTM D943 TOST試験である、504時間120℃ DRY−TOSTスラッジ試験を用いて測定される。このDRY−TOST試験方法は、タービン油のスラッジまたはワニス形成傾向を短時間で評価するために三菱重工業によって開発された。このDry−TOSTは、下表に示される修正条件でASTM D943試験に従う。504時間試験期間後に、試験管を室温で一晩にわたって放置し、次に固着量を測定する。スラッジまたはワニス量は、100gの油が1μmのMilliporeフィルターを通して濾過されるフィルター残渣の量に等しい。100mg/kg(ppm)未満のスラッジ量が受け入れられる結果である。下表は、この試験についての項目および試験条件をリストする。
【0004】
【表1】

【0005】
APIグループIIおよびIIIベースストック油並びにGTLが典型的にはAPIグループI基油より良好であることはよく知られている。グループIIおよびIIIベースストックは、通常の溶剤精製ベースストックと比較して水素処理または水素化分解したベースストックの酸化安定性並びに改善された粘度および温度特性のためにより良好である。その結果として、多くの潤滑油は、APIグループIIおよびIIIベースストックで調合されている。これらの非極性の高飽和APIグループIIおよびIIIベースストックの公知の欠陥は、いったん形成された潤滑油分解副生物を溶液に可溶化するかまたは懸濁させるそれらのより低い能力である。この理由から、APIグループII/IIIベースの潤滑油は、いったん油分解が始まったら固着形成をより受けやすい。
【0006】
タービン発電機用途における多数の不具合は、ワニスおよびスラッジ形成と関係してきた。スラッジおよびワニスは、油での分解反応、油の汚染または両方のどれかの結果として形成される不溶性物質である。説明には典型的には、とりわけ、基油の性質、添加剤の不安定性または分解、バルク油酸化、静電放電、および低導電率が含まれる。
【0007】
最近、多くの注目が、タービン系におけるスラッジおよびワニス形成への目立った一因としての流体帯電および静電放電の潜在的な役割に向けられてきた。静電放電は、局在化した熱分解の一形態である。帯電発生は、内部分子摩擦および流体と機械表面との間の電位の結果として流体系に起こる。
【0008】
油内の静電荷の大きさは多くの要因に依存し、機械そのものの接地は、電荷伝搬の軽減に向かってほとんど影響を及ぼさない。これは、油が非導電性であり、帯電した流体ゾーンを接地表面から効果的に自己絶縁するからである。いったん電荷が、リザーバーおよびフィルターハウジングなどの、作業流体ゾーンに蓄積すると、その後の静電放電は、局在化した熱−酸化油分解を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,080,301号明細書
【特許文献2】米国特許第6,090,989号明細書
【特許文献3】米国特許第6、165,949号明細書
【特許文献4】米国特許第5,275,749号明細書
【特許文献5】米国特許第4,234,435号明細書
【特許文献6】米国特許第4,652,416号明細書
【特許文献7】米国特許第3,576,923号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】The Encyclopedia of Chemical Technology、第2版、Kirk and Othmer、第7巻、27−39ページ、Interscience Publishers、Division of John Wiley and Sons、1965年
【非特許文献2】Kirk Othmer’s「Encyclopedia of Chemical Technology」、第2版、第7巻、22−37ページ、Interscience Publishers、New York(1965年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
APIグループII、グループIII、およびGTLベースストックを有利な固着調合特性を提供する調合物に使用する調合を見いだすことが必要とされている。従って、本発明は当該必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、有利な固着制御の潤滑油が開示される。この潤滑油は、グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストックと、潤滑油の少なくとも0.1重量パーセントおよび2.0重量パーセント未満を占めるマンニッヒ塩基分散剤と、ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンを含む解乳化剤であって、潤滑油の少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤とを含み、この潤滑油は504時間120℃ DRY TOSTスラッジ試験を用いて60未満の固着制御値を有する。
【0013】
第2実施形態では、固着制御の改善方法が開示される。この方法は、グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストックと、潤滑油の少なくとも0.1重量パーセントおよび2.0重量パーセント未満を占めるマンニッヒ塩基分散剤と、ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンを含む解乳化剤であって、潤滑油の少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤とを含む潤滑油であって、504時間120℃ DRY TOSTスラッジ試験を用いて60未満の固着制御値を有する、潤滑油を得る工程と、この潤滑油で潤滑化する工程とを含む。
【0014】
第3実施形態では、固着制御およびエマルジョン特性を改善するための潤滑油の調合方法が開示される。この方法は、グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストックと、潤滑油の少なくとも0.1重量パーセントおよび2.0重量パーセント未満を占めるマンニッヒ塩基分散剤と、ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンを含む解乳化剤であって、潤滑油の少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤とを入手する工程と、504時間120℃ DRY TOSTスラッジ試験を用いて60未満の固着制御値を手にするためにベースストック、解乳化剤および分散剤をブレンドする工程とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、その好ましい実施形態に関連して説明される。しかしながら、以下の説明が本発明の特定の実施形態または特定の使用に特有である限り、これは例示的であるにすぎないことを意図され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。逆に、それは、添付の特許請求の範囲によって定義されるような、本発明の精神および範囲内に含められる全ての代替案、修正、および等価物を包含することを意図される。
【0016】
一実施形態では、我々は、APIグループIIかIIIかGTLベースストックか酸化防止剤および他の添加剤とのそれらの組み合わせかのどれかを含む潤滑油組成物が、特有のマンニッヒ塩基分散剤/解乳化剤組み合わせと調合されたときに、良好な解乳化性を維持しながら固着制御の予期しない改善をもたらすことを発見した。意外にも、全ての分散剤がこの用途でこの清浄度利益を提供するわけでなかった。
【0017】
分散剤は固着制御を改善することが知られているが、それらは性質が極性であり、乳化性である傾向があり、不十分な水分離を提供する。本潤滑油組成物の一実施形態における追加の利益は、最終製品がまたASTM D−1401で良好な解乳化を示すことである。この方法は、羽根車を使って1500rpmで5分間40mlの油と40mlの水とを一緒に混合する工程を含む迅速試験である。混合物は放置され、水、油および任意のエマルジョン相が分離するための時間が記録される。この試験は、40℃で90cStより下の粘度については54℃(130°F)で行われ、一般に受け入れられる結果は、3mlのエマルジョンが残るまでに最大時間30分である。
【0018】
マンニッヒ塩基分散剤についての受け入れられる処理範囲は少なくとも0.1重量パーセント〜2.0重量パーセント未満である。好ましい処理範囲は少なくとも0.2重量パーセント〜0.5重量パーセント未満、最も好ましい処理範囲は0.2重量パーセント〜0.4重量パーセント未満である。
【0019】
好ましい実施形態では、我々は、BASF製のPluronic L 121界面活性剤がポリオールエステルと同じ濃度で有効であることを発見した。最も好ましい実施形態では、解乳化剤にはまた、プロピレンオキシドブロックコポリマーが含まれる。解乳化剤中のポリオールエステルおよびエチレンオキシドの好ましい濃度は少なくとも0.001重量%〜0.1重量%以下である。最も好ましくは、この濃度は少なくとも0.6重量%〜0.05重量%未満であるべきである。この実施形態では、より高いエチレンオキシド含有率またはより高いMWは解乳化性にとってあまり有効ではない傾向がある。Pluronic L 121中のエチレンオキシド含有率は10重量%であり、平均分子量は4400である。好ましい実施形態では、25重量%エチレンオキシドまたはポリオールエステルおよび5000の分子量が、解乳化剤添加剤中のエチレンオキシドまたはポリオールエステルを受け入れることができる上限であろう。
【0020】
解乳化剤についての受け入れられる処理範囲は少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満である。好ましい処理範囲は少なくとも0.01重量パーセント〜0.1重量パーセント未満、最も好ましい処理範囲は0.01重量パーセント〜0.05重量パーセント未満である。
【0021】
本調合物は、504時間120℃ DRY TOSTスラッジ試験を用いて優れたワニス固着性を実証する。好ましくは調合物は、60未満の値、より好ましくは50未満の値、最も好ましくは25未満の値であるべきである。
【0022】
別の実施形態では、我々は、特許請求される本発明が優れた導電率(「EC」)を提供することを発見した。用いられる試験は32°FでのD−4308であった。液体炭化水素のサンプルは、直列で蓄電池電圧源および高感度dc電流計に接続されているきれいな導電率セルへ導入される。オームの法則を用いて観察されるピーク電流読みdc電圧およびセル定数から自動的に計算される、導電率は、メーター操作の手動モードか自動モードかのどちらかでデジタル値として現れる。低い導電率は、機械がシャットダウンされているかアイドリング中であるときに蓄積された静電荷をもたらし得る。より高い導電率を有すると、精密濾過を備えた、そして高い流量で動作するガスタービンにおいてワニス固着形成の根本的な一原因に関係があるとされてきた静電放電の現象を防ぐことができる。好ましくは導電率は、少なくとも50pS/m、より好ましくは少なくとも60pS/m、最も好ましくは100pS/m超であるべきである。
【0023】
別の実施形態では、調合物は、少量のカルシウムおよび亜鉛を有するべきである。好ましい実施形態は、5PPM未満の亜鉛および5PPM未満のカルシウムである。より好ましい実施形態は、5PPM未満の亜鉛、5PPM未満のカルシウムおよび50PPM未満のリンである。更により好ましい実施形態は、1PPM未満の亜鉛、1PPM未満のカルシウムおよび5PPM未満のリンである。
【0024】
当該技術分野での熟練調合者は、本明細書の開示の助けを借りて、追加の添加剤を調合物に添加することの利益を理解するであろう。好ましくは、調合物は、摩耗防止添加剤、金属不動態化剤、解乳化剤、流動点降下剤、錆止め剤、消泡剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含むであろう。ベースストックおよび添加剤に関する追加の情報は、以下に提供される。好ましくは、スルホン酸カルシウムなどの、カルシウム含有添加剤は、典型的な調合物に使用される一般に使用される無灰錆止め剤とカルボン酸カルシウム石鹸を形成する潜在的な反応のために使用されないだろう。
【0025】
ベースストック:
グループI、II、III、IVおよびVは、潤滑油基油のための指針を作り出すために米国石油協会(American Petroleum Institute)によって開発され、定義される基油ストックの広いカテゴリー(API刊行物1509;www.API.org)である。グループIベースストックは一般に、約80〜120の粘度指数を有し、約0.03%超の硫黄および/または約90%未満の飽和物を含有する。グループIIベースストックは一般に、約80〜120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄および約90%以上の飽和物を含有する。グループIIIストックは一般に、約120より大きい粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄および約90%超の飽和物を含有する。グループIVには、ポリアルファオレフィン(PAO)が含まれる。グループVベースストックには、グループI〜IVに含まれないベースストックが含まれる。表2は、これらの5つのグループのそれぞれの特性をまとめる。
【0026】
【表2】

【0027】
好ましい実施形態では、ベースストックは、合成油の少なくとも1つのベースストックを含み、最も好ましくはAPIグループIVポリアルファオレフィンの少なくとも1つのベースストックを含む。本出願の目的のための合成油は、天然鉱油ではない全ての油を含むものとする。天然鉱油は多くの場合APIグループI油と言われる。
【0028】
ガス・トゥー・リキッド(GTL)ベースストックはまた、完成潤滑油を調合するために使用されるベースストックの一部または全てとして本発明の成分と共に優先的に使用することができる。我々は、より少ない量の代わりの流体と比較してグループII、グループIIIおよび/またはGTLベースストックを主として含む潤滑システムに本発明の成分が添加されるときに有利な改善を発見した。
【0029】
GTL材料は、ガス状炭素含有化合物、水素含有化合物、および/または、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン、およびブチンなどの原材料としての構成要素から1つ以上の合成、化合、変換、転位、および/または分解/破壊プロセスによって誘導される材料である。GTLベースストックおよび基油は、それら自体より簡単なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原材料としての構成要素から誘導される、炭化水素、例えばワックス質合成炭化水素から一般に誘導される潤滑粘度のGTL材料である。GTLベースストックには、例えば、蒸留または熱拡散によってなどGTL材料から分離/分別され、その後低下した/低い流動点の潤滑油を製造するために周知の接触または溶剤脱ロウプロセスにかけられた潤滑油沸点範囲で沸騰する油;例えば、水素異性化若しくはイソ脱ロウされた(isodewaxed)合成炭化水素を含む、ワックス異性化体;水素異性化若しくはイソ脱ロウされたフィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch)(「F−T」)材料(即ち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックスおよび可能な類似のオキシジェネート);好ましくは水素異性化若しくはイソ脱ロウされたF−T炭化水素または水素異性化若しくはイソ脱ロウされたF−Tワックス、水素異性化若しくはイソ脱ロウされた合成ワックス、またはそれらの混合物が含まれる。
【0030】
GTL材料に由来するGTLベースストック、特に、水素異性化/イソ脱ロウされたF−T材料由来ベースストック、および他の水素異性化/イソ脱ロウされたワックス由来ベースストックは、100℃で約4mm/秒の動粘度および約130以上の粘度指数を有する、F−Tワックスのイソ脱ロウによって誘導されるGTLベースストックで例示されるように、約2mm/秒〜約50mm/秒、好ましくは約3mm/秒〜約50mm/秒、より好ましくは約3.5mm/秒〜約30mm/秒の100℃での動粘度を有するとして典型的には特徴づけられる。用語GTL基油/ベースストックおよび/またはワックス異性化体基油/ベースストックは、本明細書で用いるところではおよび特許請求の範囲では、製造プロセスで回収されるようなGTLベースストック/基油またはワックス異性化体ベースストック/基油の個々の画分、並びに前記の列挙された範囲内の粘度を示す二峰性ブレンドを製造するための1つまたは2つ以上の低粘度GTLベースストック/基油画分および/またはワックス異性化体ベースストック/基油画分と1つ、2つ以上の高粘度GTLベースストック/基油画分および/またはワックス異性化体ベースストック/基油画分との混合物を包含するとして理解されるべきである。本明細書での動粘度への言及は、ASTM方法D445によって行われる測定に関する。
【0031】
本発明のベースストック成分として使用することができる、GTL材料に由来するGTLベースストックおよび基油、特に水素異性化/イソ脱ロウされたF−T材料由来ベースストック、並びにワックス水素異性化体/イソ脱ロウ体(isodewaxate)などの、他の水素異性化/イソ脱ロウされたワックス由来ベースストックは、約−5℃以下、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−15℃以下、更により好ましくは約−20℃以下の流動点を有するとして典型的には更に特徴づけられ、幾つかの条件下では、約−30℃〜約−40℃以下の有用な流動点で、約−25℃以下の有利な流動点を有してもよい。必要ならば、別個の脱ロウ工程が所望の流動点を達成するために行われてもよい。本明細書での流動点への言及は、ASTM D97および類似の自動化バージョンによって行われる測定に関する。
【0032】
GTL材料に由来するGTLベースストック、特に水素異性化/イソ脱ロウされたF−T材料由来ベースストック、および本発明に使用することができるベースストック成分である他の水素異性化/イソ脱ロウされたワックス由来ベースストックはまた、80以上、好ましくは100以上、より好ましくは120以上の粘度指数を有するとして典型的には特徴づけられる。更に、ある種の特定の場合には、これらのベースストックの粘度指数は、好ましくは130以上、より好ましくは135以上、更により好ましくは140以上であってもよい。例えば、GTL材料、好ましくはF−T材料、特にF−Tワックスに由来するGTLベースストックは一般に、130以上の粘度指数を有する。本明細書での粘度指数への言及は、ASTM方法D2270に関する。
【0033】
加えて、GTLベースストックは典型的には、90%超の飽和物の高度にパラフィン系のものであり、非環状イソパラフィンと組み合わせてモノシクロパラフィンとマルチシクロパラフィンとの混合物を含有してもよい。かかる組み合わせ中のナフテン系(即ち、シクロパラフィン)含有率の比は、使用された触媒および温度と共に変わる。更に、GTLベースストックおよび基油は典型的には、非常に低い硫黄および窒素含有率を有し、一般に約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満のこれら元素のそれぞれを含有する。F−T材料、特にF−Tワックスの水素異性化/イソ脱ロウによって得られたGTLベースストックおよび基油の硫黄および窒素含有率は本質的にゼロである。
【0034】
好ましい実施形態では、GTLベースストックは、主として非環状イソパラフィンと少量のシクロパラフィンとからなるパラフィン系材料を含む。これらのGTLベースストックは典型的には、60重量%超の非環状イソパラフィン、好ましくは80重量%超の非環状イソパラフィン、より好ましくは85重量%超の非環状イソパラフィン、最も好ましくは90重量%超の非環状イソパラフィンからなるパラフィン系材料を含む。
【0035】
GTLベースストック、水素異性化若しくはイソ脱ロウされたF−T材料由来ベースストック、およびワックス異性化体/イソ脱ロウ体などの、ワックス由来の水素異性化/イソ脱ロウされたベースストックの有用な組成物は、例えば特許文献1、特許文献2および特許文献3に列挙されている。
【0036】
添加剤:
添加剤が潤滑油の様々な特性を改変するために選択されてもよい。ギアオイルについては、添加剤は、以下の特性、耐摩耗保護、錆防止、マイクロピッティング防止、摩擦低減、および濾過性の向上を提供すべきである。当業者は、ギアオイル用途向けの有利な特性を含む有利な特性を達成するために選択することができる様々な添加剤を認めるであろう。
【0037】
様々な実施形態で、当該技術分野で機能性流体添加剤として周知の添加剤がまた、必要ならば、比較的少量で;頻繁には、約0.001%未満から約10〜20%以上まで、本発明の機能性流体組成物に組み入れられ得ることは理解されるであろう。一実施形態では、少なくとも1種の油添加剤が、酸化防止剤、安定剤、摩耗防止添加剤、分散剤、清浄剤、消泡添加剤、粘度指数向上剤、銅不動態化剤、金属不活性化剤、錆止め剤、腐食防止剤、流動点降下剤、解乳化剤、摩耗防止剤、極圧添加剤および摩擦改良剤からなる群から添加される。下にリストされる添加剤は、非限定的な例であり、特許請求の範囲を限定することを意図されるものではない。
【0038】
分散剤は、約500〜約5000のMn値および約1〜約5のMw/Mn比を有するアルケニルまたはアルキル基Rを含有するべきである。好ましいMn間隔は、濾過性を向上させる試剤の化学的性質に依存する。無水マレイン酸または他の酸材料または酸形成材料との反応に好適なポリオレフィン系ポリマーには、過半量のC2〜C5モノオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンおよびペンテンを含有するポリマーが含まれる。非常に好適なポリオレフィン系ポリマーはポリイソブテンである。反応物質として好ましい無水コハク酸はPIBSA、即ち、ポリイソブテニル無水コハク酸である。
【0039】
分散剤が無水コハク酸とポリアミンとの反応生成物を含むスクシンイミドを含有する場合、反応物質として働く無水コハク酸のアルケニルまたはアルキル置換基は好ましくは、約1200〜約2500のMn値を有する重合したイソブテンからなる。より有利には、反応物質として働く無水コハク酸のアルケニルまたはアルキル置換基は、約2100〜約2400のMn値を有する重合したイソブテンにある。濾過性を向上させる試剤が無水コハク酸と脂肪族多価アルコールとの反応生成物を含むコハク酸のエステルを含有する場合、反応物質として働く無水コハク酸のアルケニルまたはアルキル置換基は有利には、500〜1500のMn値を有する重合したイソブテンからなる。好ましくは、850〜1200のMn値を有する重合したイソブテンが使用される。
【0040】
アミドの好適な使用には、摩耗防止剤、極圧添加剤、摩擦改良剤または分散剤が含まれる。本発明の組成物に利用されるアミドは、モノ−若しくはポリカルボン酸またはそれらの反応性誘導体のアミドであってもよい。アミドは、約6〜約90個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基で特徴づけられてもよく;それぞれは独立して、両方とも水素であることはないという条件で、水素またはヒドロカルビル、アミノヒドロカルビル、ヒドロキシヒドロカルビル若しくは複素環置換ヒドロカルビル基であり;それぞれは、独立して、約10個以下の炭素原子を含有するヒドロカルビレン基であり;Alkは約10個以下の炭素原子を含有するアルキレン基である。
【0041】
アミドは、ヒドロカルビル基が6〜約30または38個の炭素原子を含有する、そしてより多くの場合12〜約24個の炭素原子を含有する脂肪酸に由来するヒドロカルビル基であろう、モノカルボン酸から誘導することができる。
【0042】
アミドはジ−またはトリカルボン酸から誘導され、ポリカルボン酸の種類に依存して6〜約90個以上の炭素原子を含有するであろう。例えば、アミドがダイマー酸から誘導されるとき、約18〜約44個以上の炭素原子を含有し、トリマー酸から誘導されるアミドは一般に、平均約44〜約90個の炭素原子を含有するであろう。それぞれは独立して、水素または約10個以下の炭素原子を含有するヒドロカルビル、アミノヒドロカルビル、ヒドロキシヒドロカルビル若しくは複素環置換炭化水素基である。それは独立して、複素環置換基がピロール、ピロリン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ピペコリンなどに由来する複素環置換ヒドロカルビル基であってもよい。具体的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、2−エチルピリジン、1−エチルピロリジン、1−エチルピペリジンなどが挙げられる。
【0043】
アルキル基は、1〜約10個の炭素原子を含有するアルキレン基であることができる。かかるアルキレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。ヒドロカルビレン基、特に約10個以下の炭素原子を含有するアルキレン基もである。かかるヒドロカルビレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。アミドは少なくとも1個のモルホリニル基を含有する。一実施形態では、モルホリン構造は、ヒドロカルビレン基に結合している2個のヒドロキシ基の縮合の結果として形成される。典型的には、アミドは、カルボン酸またはその反応性誘導体を、少なくとも1個の>NH基を含有するアミンと反応させることによって製造される。
【0044】
脂肪族モノアミンには、脂肪族基が飽和若しくは不飽和および直鎖若しくは分岐鎖であってもよいモノ脂肪族およびジ脂肪族置換アミンが含まれる。かかるアミンには、例えば、モノ−およびジ−アルキル置換アミン、モノ−およびジアルケニル置換アミンなどが含まれる。かかるモノアミンの具体的な例には、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソブチルアミン、ココアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。脂環式置換脂肪族アミンの例は、2−(シクロヘキシル)−エチルアミンである。複素環置換脂肪族アミンの例には、2−(2−アミノエチル)−ピロール、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロール、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロリジンおよび4−(2−アミノエチル)モルホリン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、2−(2−アミノエチル)ピリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−(2−アミノプロピル)インドール、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノンなどが挙げられる。
【0045】
脂環式モノアミンは、環構造中の炭素原子によってアミノ窒素に直接結合した1個の脂環式置換基があるそれらのモノアミンである。脂環式モノアミンの例には、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキセニルアミン、シクロペンテニルアミン、N−エチル−シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。脂肪族置換、芳香族置換、および複素環置換脂環式モノアミンの例にはプロピル置換シクロヘキシルアミン、フェニル置換シクロペンチルアミン、およびピラニル置換シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0046】
芳香族アミンには、芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接結合しているそれらのモノアミンが含まれる。芳香環は通常、単核芳香環(即ち、ベンゼンから誘導されるもの)であろうが、縮合芳香環、特にナフタレンから誘導されるものを含むことができる。芳香族モノアミンの例には、アニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、ナフチルアミン、N−(n−ブチル)アニリンなどが挙げられる。脂肪族置換、脂環式置換、および複素環置換芳香族モノアミンの例は、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、フェナチアジン、およびチエニル置換アニリンである。
【0047】
ポリアミンは、それらの構造内の追加のアミノ窒素の存在を除いては、上記のモノアミンと類似の脂肪族、脂環式および芳香族ポリアミンである。追加のアミノ窒素は、第一級、第二級または第三級アミノ窒素であることができる。かかるポリアミンの例には、N−アミノ−プロピル−シクロヘキシルアミン、N,N’−ジ−n−ブチル−パラフェニレンジアミン、ビス−(パラ−アミノフェニル)メタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0048】
考えられるヒドロキシ置換アミンは、カルボニル炭素原子以外の炭素原子に直接結合したヒドロキシ置換基を有するものである;即ち、それらは、アルコールとして機能することができるヒドロキシ基を有する。かかるヒドロキシ置換アミンの例には、エタノールアミン、ジ−(3−ヒドロキシプロピル)アミン、3−ヒドロキシブチルアミン、4−ヒドロキシブチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−(2−ヒドロキシアミン、N−(ヒドロキシプロピル)−プロピルアミン、N−(2−メチル)−シクロヘキシルアミン、3−ヒドロキシシクロペンチルパラヒドロキシアニリン、N−ヒドロキシエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0049】
一実施形態では、本発明に有用なアミンは、水素、または約10個以下の炭素原子を含有するヒドロカルビル、アミノヒドロカルビル、ヒドロキシヒドロカルビル若しくは複素環置換ヒドロカルビル基を含むアルキレンポリアミンであり、Alkは、約10個以下の炭素原子を含有するアルキレン基であり、2〜約10個である。好ましくは、Alkはエチレンまたはプロピレンである。通常、aは2〜約7の平均値を有するであろう。かかるアルキレンポリアミンの例には、メチレンポリアミン、エチレンポリアミン、ブチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ペンチレンポリアミン、ヘキシレンポリアミン、ヘプチレンポリアミンなどが挙げられる。
【0050】
アルキレンポリアミンには、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ジ(トリメチレン)トリアミンなどが含まれる。上に例示されるアルキレンアミンの2種以上を縮合させることによって得られるような高級同族体は、前記ポリアミンの任意の2種以上の混合物がそうであるように有用である。
【0051】
上述のものなどの、エチレンポリアミンは、コストおよび有効性上の理由で特に有用である。かかるポリアミンは、有用なポリアミンの開示について参照により本明細書によって援用される、非特許文献1に見出し「ジアミンおよび高級アミン(Diamines and Higher Amines)」の下に詳細に記載されている。かかる化合物は最も便利には、塩化アルキレンとアンモニアとの反応によってか、またはエチレンイミンとアンモニアなどの開環試薬との反応によって製造される。これらの反応は、ピペラジンなどの環状縮合生成物を含む、アルキレンポリアミンの幾分複雑な混合物の生成をもたらす。
【0052】
他の有用な種類のポリアミン混合物は、上記のポリアミン混合物のストリッピングによって生じるものである。この場合には、より低い分子量のポリアミンおよび揮発性汚染物質はアルキレンポリアミン混合物から除去されて多くの場合「ポリアミン塔底液」と称されるものを残留物として残す。一般に、アルキレンポリアミン塔底液は、2重量%未満、通常1重量%未満の約200℃より下で沸騰する材料を有するとして特徴づけることができる。容易に入手可能であり、かつ、非常に有用であることが分かっている、エチレンポリアミン塔底液の場合、塔底液は、約2重量%未満の合計ジエチレントリアミン(DETA)またはトリエチレンテトラミン(TETA)を含有する。Dow Chemical Company(Freeport,Texas)から入手されるかかるエチレンポリアミン塔底液の典型的なサンプルは、「E−100」と呼ばれる。かかるサンプルのガスクロマトグラフィー分析は、それが(重量で)約0.93%の「軽留分」(ほとんど多分DETA)、0.72%のTETA、21.74%のテトラエチレンペンタミンおよび76.61%のペンタエチレンヘキサミンおよび重質物を含有することを示した。これらのアルキレンポリアミン塔底液は、ピペラジンおよびジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの高級類似体などの環状縮合生成物を含む。
【0053】
分散剤は、高分子量フェノールと、アルキレンポリアミンとホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの縮合反応生成物であるMannich塩基、更に有機ヒドロキシ化合物および/またはアミンと反応させられるオレフィンポリマーとコハク酸アシル化剤(酸、酸無水物、エステルまたはハロゲン化物)との反応生成物であるコハク酸ベースの分散剤から選択される。
【0054】
高分子量アミドおよびヒドロカルビルアシル化剤と多価脂肪族アルコール(グリセロール、ペンタエリスリトールまたはソルビトールなどの)との反応生成物などのエステル。
【0055】
分散されるべき粒子と会合する極性官能基に結合した油溶性の高分子量主鎖を通常含有する無灰(金属を含まない)ポリマー材料が典型的には分散剤として使用される。ホウ酸化された環状カーボネート、エンドキャップされた、ポリアルキレン無水マレイン酸などを含む、酢酸亜鉛キャップされた、また任意処理された分散剤;約0.1から10%〜20%以下または以上の範囲である処理比率での、上記の幾つかの混合物。一般に使用される炭化水素主鎖材料は、オレフィンポリマーおよびコポリマー、即ち、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、スチレンであり;その分子量が300〜5000以下の範囲である、ポリマーの主鎖中へ組み入れられた更なる官能基があってもなくてもよい。アミン、アルコール、アミドまたはエステルなどの極性材料がブリッジによって主鎖に結合している。
【0056】
酸化防止剤には、2,6−ジ−第三ブチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾールおよび2,6−ジ−第三ブチル−4−(2−オクチル−3−プロパン酸)フェノールなどの立体障害のあるアルキルフェノール;N,N−ジ(アルキルフェニル)アミン;並びにアルキル化フェニレンジアミンが含まれる。
【0057】
酸化防止剤成分は、好適には潤滑油組成物の0.01〜5重量%、好ましくは0.4〜0.8重量%の量で存在する、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤であってもよい。或いはまた、または加えて、成分b)は、単独でかまたは混合物で使用される、モノ−オクチルフェニルアルファナフチルアミンまたはp,p−ジオクチルジフェニルアミンなどの芳香族アミン酸化防止剤を含んでもよい。アミン酸化防止剤成分は好適には、潤滑油組成物の0.01〜5重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%の範囲で存在する。
【0058】
アミン型酸化防止剤には、例えば、モノオクチルジフェニルアミンおよびモノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン;4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミンおよび4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミンおよびテトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン;並びにアルファ−ナフチルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、ブチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、オクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミンおよびノニルフェニル−アルファ−ナフチルアミンなどのナフチルアミンが含まれる。これらのうちで、ジアルキルジフェニルアミンが好ましい。硫黄含有酸化防止剤およびアミン型酸化防止剤は、組成物の総重量に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.03〜3重量%の量で基油に添加される。
【0059】
酸化防止剤、窒素、リンを含有する有機化合物および幾つかのアルキルフェノールがまた用いられる。2つの一般タイプの酸化防止剤は、開始剤、ペルオキシラジカル、およびヒドロペルオキシドと反応して不活性化合物を形成するもの、並びにこれらの物質を分解して反応性がより少ない化合物を形成するものである。例は、ヒンダード(アルキル化)フェノール、例えば2,6−ジ(第三ブチル)−4−メチルフェノール[2,6−ジ(第三ブチル)−p−クレゾール、DBPC]、および芳香族アミン、例えばN−フェニル−アルファ−ナフタルアミンである。これらは、好ましい混合物の1:10〜10:1であるアミン/フェノール系の比で、延長使用を意図されるタービン、循環、および油圧油に使用される。
【0060】
フェノール−ベースの酸化防止剤の例には、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン(商品名「Antage DBH」で川口化学工業株式会社によって製造される)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール並びに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルキルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノールおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール;3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトオクチルアセテート;n−オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「Yonox SS」で吉富製薬株式会社によって製造される)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよび2’−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのアルキル−3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,6−ジ−t−ブチル−アルファ−ジメチルアミノ−p−クレゾール;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名「Antage W−400」で川口化学工業株式会社によって製造される)および2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名「Antage W−500」で川口化学工業株式会社によって製造される)などの2,2’−メチレンビス(4−アルキル−6−t−ブチルフェノール)化合物;4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)(商品名「Antage W−300」で川口化学工業株式会社によって製造される)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(商品名「Ionox 220AH」でLaporte Performance Chemicalsによって製造される)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−(ジ−p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox L109」でCiba Speciality Chemicals Co.によって製造される)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](商品名「Tominox 917」で吉富製薬株式会社によって製造される)、2,2’−チオ[ジエチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「Irganox L115」でCiba Speciality Chemicals Co.によって製造される)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名「Sumilizer GA80」で住友化学株式会社によって製造される)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名「Yoshinox 930」で吉富製薬株式会社によって製造される)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名「Irganox 330」でCiba Speciality Chemicals Co.によって製造される)、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−メチル−4−(2”,4”−ジ−t−ブチル−3”−ヒドロキシフェニル)メチル−6−t−ブチルフェノールおよび2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノールなどのビスフェノール類;並びにp−t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物およびp−t−ブチルフェノールとアセトアルデヒドとの縮合物などのフェノール/アルデヒド縮合物が挙げられる。
【0061】
粘度指数向上剤および/または流動点降下剤には、高分子アルキルメタクリレートおよびエチレン−プロピレンコポリマーなどのオレフィンコポリマーまたはスチレン−ブタジエンコポリマーまたはPIBなどのポリアルキレンが含まれる。粘度指数向上剤(VI向上剤)は、それらが低温でよりも高温で油の相対粘度を上げる高分子量ポリマーポリマーである。最も一般的なVI向上剤は、メタクリレートポリマーおよびコポリマー、アクリレートポリマー、オレフィンポリマーおよびコポリマー、並びにスチレン−ブタジエンコポリマーである。
【0062】
粘度指数向上剤の他の例には、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、アルファ−オレフィンポリマー、アルファ−オレフィンコポリマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマー)、ポリアルキルスチレン、フェノール縮合物、ナフタレン縮合物、スチレンブタジエンコポリマーなどが挙げられる。これらのうちで、10,000〜300,000の数平均分子量を有するポリメタクリレート、および1,000〜30,000の数平均分子量を有するアルファ−オレフィンポリマーまたはアルファ−オレフィンコポリマー、特に1,000〜10,000の数平均分子量を有するエチレン−アルファ−オレフィンコポリマーが好ましい。
【0063】
使用することができる粘度指数向上剤には、例えば、ポリメタクリレートおよびエチレン/プロピレンコポリマー、スチレン/ジエンコポリマーのようなオレフィンコポリマーなどの他の非分散型粘度指数向上剤、および窒素含有モノマーがかかる材料に共重合された分散性型粘度指数向上剤が含まれる。これらの材料は、好都合には基油の100重量部当たり0.05〜20重量部の範囲内の量で、個別または混合物の形態で添加し、使用することができる。
【0064】
流動点降下剤(PPD)には、ポリメタクリレートが含まれる。アルキル芳香族ポリマーおよびポリメタクリレートなどの一般に使用される添加剤は、この目的のために有用であり;典型的には処理比率は0.001%〜1.0%の範囲である。
【0065】
錆止め添加剤には、(短鎖)アルケニルコハク酸、それらの部分エステルおよびそれらの窒素含有誘導体が含まれる。錆止め剤には、例えば、8〜30個の炭素原子を有するモノカルボン酸、アルキルまたはアルケニルスクシネートまたはそれらの部分エステル、12〜30個の炭素原子を有するヒドロキシ脂肪酸およびそれらの誘導体、8〜24個の炭素原子を有するサルコシンおよびそれらの誘導体、アミノ酸およびそれらの誘導体、ナフテン酸およびその誘導体、ラノリン脂肪酸、メルカプト脂肪酸およびパラフィンオキシドが含まれる。
【0066】
特に好ましい錆止め剤は下に示される。モノカルボン酸(C8〜C30)の例は、カプリル酸、ペラルゴン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、ドコサン酸、エルカ酸、エイコセン酸、牛脂脂肪酸、大豆脂肪酸、ココナツ油脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、トール油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ラウリルサルコシン酸、ミリスチルサルコシン酸、パルミチルサルコシン酸、ステアリルサルコシン酸、オレイルサルコシン酸、アルキル化(C8〜C20)フェノキシ酢酸、ラノリン脂肪酸である。
【0067】
多塩基カルボン酸の例:CAS No.27859−58−1に示されるアルケニル(C10〜C100)コハク酸およびそれらのエステル誘導体、ダイマー酸、N−アシル−N−アルキルオキシアルキルアスパラギン酸エステル(特許文献4)。
【0068】
錆止め添加剤としてまたはアミドなどを与えるための上記カルボキシレートとの反応生成物として機能するアルキルアミンの例は、ラウリルアミン、ココナツ−アミン、n−トリデシルアミン、ミリスチルアミン、n−ペンタデシルアミン、パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂−アミン、水素化牛脂−アミンおよび大豆−アミンなどの第一級アミンで表される。第二級アミンの例には、ジラウリルアミン、ジ−ココナツ−アミン、ジ−n−トリデシルアミン、ジミリスチルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジパルミチルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジステアリルアミン、ジ−n−ノナデシルアミン、ジ−n−エイコシルアミン、ジ−n−ヘンエイコシルアミン、ジ−n−ドコシルアミン、ジ−n−トリコシルアミン、ジ−n−ペンタコシルアミン、ジオレイルアミン、ジ−牛脂−アミン、ジ−水素化牛脂−アミンおよびジ−大豆−アミンが挙げられる。
【0069】
前述のN−アルキルポリアルキレンジアミンの例には、ラウリルエチレンジアミン、ココナツエチレンジアミン、n−トリデシルエチレンジアミン、ミリスチルエチレンジアミン、n−ペンタデシルエチレンジアミン、パルミチルエチレンジアミン、n−ヘプタデシルエチレンジアミン、ステアリルエチレンジアミン、n−ノナデシルエチレンジアミン、n−エイコシルエチレンジアミン、n−ヘンエイコシルエチレンジアミン、n−ドコシルエチレンジアミン、n−トリコシルエチレンジアミン、n−ペンタコシルエチレンジアミン、オレイルエチレンジアミン、牛脂−エチレンジアミン、水素化牛脂−エチレンジアミンおよび大豆−エチレンジアミンなどのエチレンジアミン;ラウリルプロピレンジアミン、ココナツプロピレンジアミン、n−トリデシルプロピレンジアミン、ミリスチルプロピレンジアミン、n−ペンタデシルプロピレンジアミン、パルミチルプロピレンジアミン、n−ヘプタデシルプロピレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、n−ノナデシルプロピレンジアミン、n−エイコシルプロピレンジアミン、n−ヘンエイコシルプロピレンジアミン、n−ドコシルプロピレンジアミン、n−トリコシルプロピレンジアミン、n−ペンタコシルプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)またはトリエチレンテトラミン(TETA)、オレイルプロピレンジアミン、牛脂−プロピレンジアミン、水素化牛脂−プロピレンジアミンおよび大豆−プロピレンジアミンなどのプロピレンジアミン;ラウリルブチレンジアミン、ココナツブチレンジアミン、n−トリデシルブチレンジアミン、ミリスチルブチレンジアミン、n−ペンタデシルブチレンジアミン、ステアリルブチレンジアミン、n−エイコシルブチレンジアミン、n−ヘンエイコシルブチレンジアミン、n−ドコシルブチレンジアミン、n−トリコシルブチレンジアミン、n−ペンタコシルブチレンジアミン、オレイルブチレンジアミン、牛脂−ブチレンジアミン、水素化牛脂−ブチレンジアミンおよび大豆ブチレンジアミンなどのブチレンジアミン;並びにラウリルペンチレンジアミン、ココナツペンチレンジアミン、ミリスチルペンチレンジアミン、パルミチルペンチレンジアミン、ステアリルペンチレンジアミン、オレイルペンチレンジアミン、牛脂−ペンチレンジアミン、水素化牛脂−ペンチレンジアミンおよび大豆ペンチレンジアミンなどのペンチレンジアミンが挙げられる。
【0070】
解乳化剤には、アルコキシル化フェノールおよびフェノール−ホルムアルデヒド樹脂および金属ジノニルナフタレンスルホネートなどの合成アルキルアリールスルホネートが含まれる。解乳化剤は、約450〜5000以上の範囲の任意の値の予め選択された分子量を有する主たる量の水溶性ポリオキシアルキレングリコールである。本発明の組成物に有用な水溶性ポリオキシアルキレングリコールの特に好ましい系列はまた、ランダムアルコキシル化生成物を形成するためのアルキレンオキシドの混合物でのn−ブタノールのアルコキシル化から製造されるものであってもよい。
【0071】
本発明による機能性流体は、約−20℃未満の流動点を有し、広範囲の摩耗防止添加剤および極圧添加剤との相溶性を示す。本発明による調合物はまた、極性潤滑油ベースストックで処理されるときに当業者によって通常予期される疲労破壊を持たない。
【0072】
本発明に有用なポリオキシアルキレングリコールは、アルコールまたはグリコールエーテルとエチレンオキシド、ブチレンオキシド、またはプロピレンオキシドなどの1種以上のアルキレンオキシドポリマーとを、触媒として水酸化カリウムなどの強塩基を用いながら付加重合でブロックコポリマーを形成する工程にかけることによるヒドロキシル末端基を有するポリアルキレンオキシドの周知の製造方法によって製造されてもよい。かかる方法では、重合は一般に、モノマーに対して0.3〜1.0モル%の水酸化カリウムの触媒濃度下におよび、100℃〜160℃のような、高温で実施される。触媒である水酸化カリウムがそのように得られたポリマー溶液中でアルコキシドの形態で生成ポリアルキレンオキシドの鎖端に大部分結合していることは周知の事実である。
【0073】
本発明の組成物に有用な可溶性ポリオキシアルキレングリコールの特に好ましい系統はまた、ランダムアルコキシル化生成物を形成するためのアルキレンオキシドの混合物でのn−ブタノールのアルコキシル化から製造されるものであってもよい。
【0074】
発泡防止剤には、アルキルがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはイソブチルであると一般に理解されるアルキルメタクリレートのポリマー、特に有用なポリアルキルアクリレートポリマーおよび100cSt〜100,000cStの粘度範囲のジメチルシロキサンポリマーと呼ばれる物質を形成するジメチルシリコーンのポリマーが含まれる。他の添加剤は、様々な炭素含有部分と後反応させられた、最も広く使用される消泡剤であるシリコーンポリマーなどの、消泡剤である。有機ポリマーは、はるかにより高い濃度が必要とされるが消泡剤として時々使用される。
【0075】
金属不活性化化合物/腐食防止剤には、アルキルトリアゾールおよびベンゾトリアゾールが含まれる。本発明に使用されてもよい、セバシン酸以外の、腐食防止剤として有用な二塩基酸の例は、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、3−メチルアジピン酸、3−ニトロフタル酸、1,10−デカンジカルボン酸、およびフマル酸である。腐食防止組み合わせは、直鎖若しくは分岐鎖の飽和若しくは不飽和モノカルボン酸またはそのエステルである。好ましくは、酸は置換C4〜置換C22直鎖の不飽和モノカルボン酸である。この添加剤の好ましい濃度は、合計潤滑油組成物の0.001重量%〜0.35重量%である。しかしながら、他の好適な物質はオレイン酸そのもの;吉草酸およびエルカ酸である。腐食防止組み合わせの成分は、先に定義されたようなトリアゾールである。トリアゾールは、全体組成物の0.005重量%〜0.25重量%の濃度で使用されるべきである。好ましいトリアゾールは、本発明の組成物に含められてもよいトリルトリアゾールであり、金属不活性化剤または金属不動態化剤として有用であるトリアゾール、チアゾールおよびある種のジアミン化合物を含む。例には、トリアゾール、ベンゾトリアゾールおよびアルキル置換誘導体などの置換ベンゾトリアゾールが挙げられる。アルキル置換基は一般に、15個以下の炭素原子、好ましくは8個以下の炭素原子を含有する。トリアゾールは、ハロゲン、ニトロ、アミノ、メルカプトなどの他の置換基を芳香環上に含有してもよい。好適な化合物の例は、ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾールおよびニトロベンゾトリアゾールである。ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールが特に好ましい。35重量%以下であってもよい量で任意選択的に硫化されている直鎖若しくは分岐鎖飽和若しくは不飽和モノカルボン酸;またはかかる酸のエステル;およびトリアゾール若しくはそのアルキル誘導体、または5個以下の炭素原子の短鎖アルキル;nはゼロまたは両端を含む1〜3の整数であり;およびそれらの水素、モルホリノ、アルキル、アミド、アミノ、ヒドロキシまたはアルキル若しくはアリール置換誘導体であり;または1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、5−アニロ−1,2,3,4−チアトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル−メチイソシアニド、メチレン−ビス−ベンゾトリアゾールおよびナフトトリアゾールから選択されるトリアゾール。
【0076】
アルキルは、直鎖若しくは分岐鎖であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルまたはn−エイコシルである。
【0077】
アルケニルは直鎖若しくは分岐鎖であり、例えば2−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、2−ペンテニル、2,4−ヘキサジエニル、10−デセニルまたは2−エイコセニルである。シクロアルキルは、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロデシル、アダマンチルまたはシクロドデシルである。アラルキルは、例えばベンジル、2−フェニルエチル、ベンズヒドリルまたはナフチルメチルである。
【0078】
アリールは、例えばフェニルまたはナフチルである。複素環基は、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたはパーヒドロアゼピン環である。アルキレン部分には、例えばメチレン、エチレン、1:2−または1:3−プロピレン、1:4−ブチレン、1:6−ヘキシレン、1:8−オクチレン、1:10−デシレンおよび1:12−ドデシレンが含まれる。
【0079】
アリーレン部分には、例えばフェニレンおよびナフチレンが含まれる。1−(または4)−(ジメチルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジエチルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−イソプロピルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−n−ブチルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−n−ヘキシルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−イソオクチルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−(2−エチルヘキシル)アミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−n−デシルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−n−ドデシルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−n−オクタデシルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−n−エイコシルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−[ジ−(2’−プロペニル)アミノメチル]トリアゾール、1−(または4)−[ジ−(2’−ブテニル)アミノメチル]トリアゾール、1−(または4)−[ジ−(2’−エイコセニル)アミノメチル]トリアゾール、1−(または4)−(ジ−シクロヘキシルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−ベンジルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−フェニルアミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(4’−モルホリノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(1’−ピロリジノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(1’−ピペリジノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(1’−パーヒドロアゼピノメチル)トリアゾール、1−(または4)−[(2’,2”−ジヒドロキシエチル)アミノメチル]トリアゾール、1−(または4)−(ジブトキシプロピル−アミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジブチルチオプロピル−アミノメチル)トリアゾール、1−(または4)−(ジ−ブチルアミノプロピル−アミノメチル)トリアゾール、1−(または−4)−(1−メタノミン(methanomine))−N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−メチルベンゾトリアゾール、N,N−ビス−(1−または4−トリアゾリルメチル)ラウリルアミン、N,N−ビス−(1−または4−トリアゾリルメチル)オレイルアミン、N,N−ビス−(1−または4−トリアゾリルメチル)エタノールアミンおよびN,N,N’,N’−テトラ(1−または4−トリアゾリルメチル)エチレンジアミン。
【0080】
本発明の潤滑油組成物に使用することができる金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール並びに4−メチルベンゾトリアゾールおよび4−エチルベンゾトリアゾールなどの4−アルキルベンゾトリアゾール;5−メチルベンゾトリアゾール、5−エチルベンゾトリアゾールなどの5−アルキルベンゾトリアゾール;1−ジオクチルアミノメチル−2,3−ベンゾトリアゾールなどの1−アルキルベンゾトリアゾール;1−アルキルトルトリアゾール、例えば、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−トルトリアゾールなどのベンゾトリアゾール誘導体;ベンズイミダゾールおよびベンズイミダゾール誘導体またはそれらのコンセントレートおよび/または混合物が含まれる。
【0081】
摩耗防止剤/極圧添加剤/摩擦低減剤:アリールホスフェートおよびホスファイト、並びに金属または無灰カルバメート。ホスフェートエステルまたは塩は、各ヒドロカルビル基が飽和である、モノヒドロカルビル、ジヒドロカルビルまたはトリヒドロカルビルホスフェートであってもよい。一実施形態では、各ヒドロカルビル基は独立して、約8〜約30個、または約12〜約28個以下、または約14〜約24個以下、または約14〜約18個以下の炭素原子を含有する。一実施形態では、ヒドロカルビル基はアルキル基である。ヒドロカルビル基の例には、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル基およびそれらの混合物が挙げられる。
【0082】
ホスフェートエステルまたは塩は、1つ以上の燐酸または酸無水物を飽和アルコールと反応させることによって製造される燐酸エステルである。燐酸または酸無水物は一般に、五酸化リン、三酸化リン、四酸化リン、亜リン酸、リン酸、ハロゲン化リン、低級リンエステル、または五硫化リンを含む硫化リンなどの、無機リン試薬である。低級燐酸エステルは一般に、各エステル基中に1〜約7個の炭素原子を含有する。アルコールが燐酸エステルまたは塩を製造するために使用される。商業的に入手可能なアルコールおよびアルコール混合物の例には、Alfol 1218(12〜18個の炭素原子を含有する合成の第一級直鎖アルコールの混合物);Alfol 20+アルコール(GLC(気−液クロマトグラフィー)によって測定されるように主にC20アルコールを有するC18〜C28第一級アルコールの混合物);およびAlfol 22+アルコール(主にC22アルコールを含有するC18〜C28第一級アルコール)が挙げられる。Alfolアルコールは、Continental Oil Companyから入手可能である。商業的に入手可能なアルコール混合物の別の例は、Adol 60(約75重量%の直鎖C22第一級アルコール、約15%のC20第一級アルコールおよび約8%のC18およびC24アルコール)である。Adolアルコールは、Ashland Chemicalによって市場に出されている。
【0083】
天然トリグリセリドから誘導される、C8〜C18の鎖長の範囲の一価脂肪アルコールの様々な混合物がProcter & Gamble Companyから入手可能である。これらの混合物は、12、14、16、または18個の炭素原子を含有する様々な量の脂肪アルコールを含有する。例えば、CO−1214は、0.5%のC10アルコール、66.0%のC12アルコール、26.0%のC14アルコールおよび6.5%のC16アルコールを含有する脂肪アルコール混合物である。
【0084】
別のグループの商業的に入手可能な混合物には、Shell Chemical Co.から入手可能な「Neodol」製品が含まれる。例えば、Neodol 23はC12およびC13アルコールの混合物であり;Neodol 25はC12〜C15アルコールの混合物であり;Neodol 45はC14〜C15線状アルコールの混合物である。ホスフェートは、各ヒドロカルビル基中に約14〜約18個の炭素原子を含有する。ホスフェートのヒドロカルビル基は一般に、約14〜約18個以下の炭素原子を有する脂肪アルコールの混合物に由来する。ヒドロカルビルホスフェートはまた、脂肪ビシナルジオールから誘導されてもよい。脂肪ビシナルジオールには、一般商品名Adol 114およびAdol 158でAshland Oilから入手可能なものが含まれる。前者はC11〜C14の直鎖アルファオレフィン画分から誘導され、後者はC15〜C18画分から誘導される。
【0085】
ホスフェート塩は、酸性ホスフェートエステルをアミン化合物または金属塩基と反応させてアミンまたは金属塩を形成することによって製造されてもよい。アミンはモノアミンまたはポリアミンであってもよい。有用なアミンには、特許文献5に開示されているそれらのアミンが含まれる。
【0086】
モノアミンは一般に、1〜約30個、または1〜約12個、または1〜約6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基を含有する。本発明に有用な第一級モノアミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、アリルアミン、ココアミン、ステアリルアミン、およびラウリルアミンが挙げられる。第二級モノアミンの例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルブチルアミン、エチルヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0087】
アミンは、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、オレイルアミンなどを含む脂肪(置換C8〜30)アミンである。また有用な脂肪アミンには、文字名称がココ、オレイル、牛脂、またはステアリル基などの、脂肪基に関係する、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SDなどの、「Armeen」アミン(Akzo Chemicals(Chicago,Ill.)から入手可能な製品)などの商業的に入手可能な脂肪アミンが含まれる。
【0088】
他の有用なアミンには、式、R”(OR’)xNH2(式中、R’は、約2〜約6個の炭素原子を有する二価アルキレン基であり;xは1〜約150、または約1〜約5、または1の数であり;R”は、約5〜約150個の炭素原子のヒドロカルビル基である)で表されるものなどの、第一級エーテルアミンが含まれる。エーテルアミンの例は、Mars Chemical Company(Atlanta,Ga)によって生産され、市場に出される名称SURFAM(登録商標)アミンで入手可能である。好ましいエーテルアミンは、SURFAM P14B(デシルオキシプロピルアミン)、SURFAM P16A(線状C16)、SURFAM P17B(トリデシルオキシプロピルアミン)として特定されるもので例示される。上に記載された、本明細書で以下使用されるSURFAMSの炭素鎖長(即ち、C14など)はおおよそであり、酸素エーテル結合を含む。
【0089】
アミンは第三脂肪族第一級アミンである。一般に、脂肪族基、好ましくはアルキル基は、約4〜約30個、または約6〜約24個、または約8〜約22個の炭素原子を含有する。通常、第三アルキル第一級アミンはモノアミンであり、アルキル基は、1〜約27個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、R6は、1〜約12個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である。かかるアミンは、第三ブチルアミン、第三ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、第三オクチルアミン、第三デシルアミン、第三ドデシルアミン、第三テトラデシルアミン、第三ヘキサデシルアミン、第三オクタデシルアミン、第三テトラコサニルアミン、および第三オクタコサニルアミンで例示される。第三脂肪族アミンの混合物はまた、ホスフェート塩の製造に使用されてもよい。C11〜C14第三アルキル第一級アミンの混合物である「Primene 81R」およびC18〜C22第三アルキル第一級アミンの同様な混合物である「Primene JMT」(両方ともRohm and Haas Companyから入手可能である)が、この種のアミン混合物を例示する。第三脂肪族第一級アミンおよびそれらの製造方法は当業者に公知である。本発明の目的のために有用な第三脂肪族第一級アミンおよびそれらの製造方法は米国特許に記載されている。アミンは複素環ポリアミンである。複素環ポリアミンには、アジリジン、アゼチジン、アゾリジン、テトラ−およびジヒドロピリジン、ピロール、インドール、ピペリジン、イミダゾール、ジ−およびテトラ−ヒドロイミダゾール、ピペラジン、イソインドール、プリン、モルホリン、チオモルホリン、N−アミノアルキルモルホリン、N−アミノアルキルチオモルホリン、N−アミノアルキル−ピペラジン、N,N’−ジアミノアルキルピペラジン、アゼピン、アゾシン、アゾニン、アゼシン並びに上記のそれぞれのテトラ−、ジ−およびパーヒドロ誘導体、並びにこれらの複素環アミンの2種以上の混合物が含まれる。好ましい複素環アミンは、ヘテロ環中にただ1つの窒素、酸素および/または硫黄を含有する飽和の5−および6−員複素環アミン、特にピペリジン、ピペラジン、チオモルホリン、モルホリン、ピロリジンなどである。ピペリジン、アミノアルキル置換ピペリジン、ピペラジン、アミノアルキル置換ピペラジン、モルホリン、アミノアルキル置換モルホリン、ピロリジン、およびアミノアルキル置換ピロリジンが特に好ましい。通常、アミノアルキル置換基は、ヘテロ環の一部を形成する窒素原子上に置換される。かかる複素環アミンの具体的な例には、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノエチルピペラジン、およびN,N’−ジアミノエチルピペラジンが挙げられる。ヒドロキシ複素環ポリアミンもまた有用である。例には、N−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、3−ヒドロキシシクロペンチルアミン、パラヒドロキシアニリン、N−ヒドロキシエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0090】
潤滑組成物はまた、脂肪イミダゾリンまたは脂肪カルボン酸と少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物を含んでもよい。脂肪イミダゾリンは、8〜約30個、または約12〜約24個の炭素原子を含有する脂肪置換基を有する。置換基は、飽和若しくは不飽和の、ヘプタデセニル由来オレイル基、好ましくは飽和であってもよい。一態様では、脂肪イミダゾリンは、脂肪カルボン酸を、上に議論されたものなどの、ポリアルキレンポリアミンと反応させることによって製造されてもよい。脂肪カルボン酸は一般に、約8〜約30個、または約12〜約24個、または約16〜約18個の炭素原子を含有する直鎖および分岐鎖脂肪カルボン酸の混合物である。カルボン酸には、2〜約4個、好ましくは2個のカルボニル基を有するポリカルボン酸若しくはカルボン酸または酸無水物が含まれる。ポリカルボン酸には、コハク酸および酸無水物並びに不飽和モノカルボン酸と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびイタコン酸などの)とのディールス−アルダー(Diels−Alder)反応生成物が含まれる。好ましくは、脂肪カルボン酸は、オクタン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、ドデカン酸、トール油酸などの、約8〜約30個、好ましくは約12〜約24個の炭素原子を有する、脂肪モノカルボン酸、好ましくはステアリン酸である。脂肪カルボン酸は、少なくとも1種のポリアミンと反応させられる。ポリアミンは、脂肪族、脂環式、複素環式または芳香族であってもよい。ポリアミンの例には、アルキレンポリアミンおよび複素環ポリアミンが挙げられる。
【0091】
ヒドロキシアルキル基は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンを意味するとして理解されるべきであり、用語アミンにはまた、ジアミンも含まれる。中和のために使用されるアミンは、使用されるリン酸エステルに依存する。本発明によるEP添加剤は、以下の利点を有する:それは低い濃度で使用されるときに非常に高い有効性を有し、それは塩素を含まない。リン酸エステルの中和のために、後者が採取され、相当するアミンが撹拌しながらゆっくり加えられる。生じる中和熱は冷却によって除去される。本発明によるEP添加剤は、可溶化剤として脂肪物質(例えばトール油脂肪酸、オレイン酸など)を用いてそれぞれのベース液体に組み入れることができる。使用されるベース液体は、ナフテン系またはパラフィン系基油、合成油(例えばポリグリコール、混合ポリグリコール)、ポリオレフィン、カルボン酸エステルなどである。
【0092】
組成物は、少なくとも1種のリン含有極圧添加剤を含む。かかる添加剤の例は、商品名IRGALUBE 349で公知のものなどのアミンホスフェート極圧添加剤である。かかるアミンホスフェートは好適には、潤滑油組成物の0.01〜2重量%、好ましくは0.2〜0.6重量%の量で存在する。
【0093】
35重量%以下であってもよい量で任意選択的に硫化されている少なくとも1種の直鎖および/または分岐鎖飽和若しくは不飽和モノカルボン酸;および/またはかかる酸のエステル。少なくとも1種のトリアゾール若しくはそのアルキル誘導体、またはその5個以下の炭素原子の短鎖アルキルおよび水素、モルホリノ、アルキル、アミド、アミノ、ヒドロキシまたはアルキル若しくはアリール置換誘導体;または1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1−H−ベンゾトリアゾール−l−イル−メチルイソシアニド、メチレンビス−ベンゾトリアゾールおよびナフトトリアゾールから選択されるトリアゾール;並びに調合物の成分を形成する中性有機ホスフェートが、組成物の0.01〜4重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%の量で存在してもよい。上記のアミンホスフェートおよび前述のベンゾ−またはトリルトリアゾールのいずれかを、摩耗防止性能を与えることができる単一成分を形成するために一緒に混合することができる。中性有機ホスフェートはまた、潤滑組成物の通常の成分であり、先に定義されたような式の範囲内に入る任意のかかる中性有機ホスフェートが用いられてもよい。
【0094】
本発明に使用するためのホスフェートには、ホスフェート、アシッドホスフェート、ホスファイトおよびアシッドホスファイトが含まれる。ホスフェートには、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート、トリアリールアルキルホスフェートおよびトリアルケニルホスフェートが含まれる。これらの具体的な例として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、およびトリオレイルホスフェートが言及される。アシッドホスフェートには、例えば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、およびイソステアリルアシッドホスフェートが含まれる。
【0095】
ホスファイトには、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、およびトリオレイルホスファイトが含まれる。
【0096】
アシッドホスファイトには、例えば、ジブチル水素ホスファイト、ジラウリル水素ホスファイト、ジオレイル水素ホスファイト、ジステアリル水素ホスファイト、およびジフェニル水素ホスファイトが含まれる。かかるホスフェートとアミン塩を形成するアミンには、例えば、モノ置換アミン、ジ置換アミンおよびトリ置換アミンが含まれる。モノ置換アミンの例には、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンおよびベンジルアミンが挙げられ;ジ置換アミンのそれらには、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリルモノエタノールアミン、デシルモノエタノールアミン、ヘキシルモノプロパノールアミン、ベンジルモノエタノールアミン、フェニルモノエタノールアミン、およびトリルモノプロパノールアミンが挙げられる。トリ置換アミンの例には、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイルモノエタノールアミン、ジラウリルモノプロパノールアミン、ジオクチルモノエタノールアミン、ジヘキシルモノプロパノールアミン、ジブチルモノプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジプロパノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、オクチルジプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、フェニルジエタノールアミン、トリルジプロパノールアミン、キシリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびトリプロパノールアミンが挙げられる。
【0097】
ホスフェートまたはそれらのアミン塩は、組成物の総重量に対して、0.03〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%の量で基油に添加される。アミンと反応させられるべきカルボン酸には、例えば、脂肪族カルボン酸、ジカルボン酸(二塩基酸)、および芳香族カルボン酸が含まれる。脂肪族カルボン酸は8〜30個の炭素原子を有し、飽和であっても不飽和であっても、線状であっても分岐であってもよい。脂肪族カルボン酸の具体的な例には、ペラルゴン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、トリアコンタン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノレン酸、エルカ酸、およびリノール酸が挙げられる。ジカルボン酸の具体的な例には、オクタデシルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸の一例はサリチル酸である。カルボン酸と反応させられるべきアミンには、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ジプロピレントリアミン、テトラプロピレンペンタミン、およびヘキサブチレンヘプタミンなどのポリアルキレン−ポリアミン;並びにモノエタノールアミンおよびジエタノールアミンなどのアルカノールアミンが含まれる。これらのうちで、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの組み合わせ、およびオレイン酸とジエタノールアミンとの組み合わせが好ましい。カルボン酸とアミンとの反応生成物は、組成物の総重量に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.03〜3重量%の量で基油に添加される。
【0098】
重要な成分はホスファイトである。本明細書で用いるところでは、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者によく知られている、通常の意味で用いられる。具体的には、それは、炭素原子が分子の残りに直接結合した、そして主に炭化水素特質を有する基を意味する。ヒドロカルビル基の例には:炭化水素置換基、即ち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、並びに芳香族−、脂肪族−、および脂環式−置換芳香族置換基、並びに環が分子の別の部分によって完成している(例えば、2つの置換基が一緒に脂環式ラジカルを形成する)環式置換基;置換炭化水素置換基、即ち、本発明との関連で、主に炭化水素置換基を変更しない非炭化水素基、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロを含有する置換基;ヘテロ原子含有置換基、即ち、本発明との関連で、主に炭化水素特質を持ちながら、さもなければ炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外を含有する置換基が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、2個以下、好ましくは1個以下の非炭化水素置換基がヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に存在するだろうし;典型的には、非炭化水素置換基はヒドロカルビル基中に全く存在しないだろう。
【0099】
用語「ヒドロカルビル基」は、本発明との関連で、上の構造でのアルキル基の2つ以上が一緒に環状構造を形成する、環状ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン基を包含することをまた意図される。本発明のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン基は一般に、少なくとも3個の炭素原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基である。好ましくはまたは最適には硫黄、窒素、または酸素を含有して、それらは、4〜24個、或いはまた5〜18個の炭素原子を含有するだろう。別の実施形態ではそれらは約6個、またはぴったり6個の炭素原子を含有する。ヒドロカルビル基は、第三級または好ましくは第一級若しくは第二級基であることができ;一実施形態では、成分はジ(ヒドロカルビル)水素ホスファイトであり、ヒドロカルビル基のそれぞれは第一級アルキル基であり;別の実施形態では、成分はジ(ヒドロカルビル)水素ホスファイトであり、ヒドロカルビル基のそれぞれは第二級アルキル基である。更に別の実施形態では、成分はヒドロカルビレン水素ホスファイトである。
【0100】
直鎖ヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、ステアリル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、オレイル、およびセチルが挙げられる。分岐鎖炭化水素基の例には、イソプロピル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシル、および2,6−ジメチルヘプチルが挙げられる。環状基の例には、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。芳香族ヒドロカルビル基および混合芳香族−脂肪族ヒドロカルビル基の2、3の例には、フェニル、メチルフェニル、トリル、およびナフチルが挙げられる。
【0101】
R基はまた、市販のアルコールに由来するヒドロカルビル基の混合物を含むことができる。幾つかの一価アルコールおよびアルコール混合物の例には、Continental Oil Corporationによって市場に出されている商業的に入手可能な「AlfolTM」アルコールが挙げられる。AlfolTM 810は、例えば、8〜12個の炭素原子を有する直鎖の第一級アルコールから本質的になるアルコールを含有する混合物である。AlfolTM 12は、主にC12脂肪アルコールの混合物であり;AlfolTM 22+は、主にC22アルコールを有するC18〜28第一級アルコールを含むなどである。天然トリグリセリドから誘導される、C8〜C18の鎖長範囲の一価脂肪アルコールの様々な混合物は、Procter & Gamble Companyから入手可能である。「NeodolTM」アルコールは、Shell Chemical Co.から入手可能であり、ここで、例えば、NeodolTM 25は、C12〜C15アルコールの混合物である。
【0102】
本発明の範囲内のホスファイトの幾つかの具体的な例には、亜リン酸、モノ−、ジ−、若しくはトリ−プロピルホスファイト;モノ−、ジ−、若しくはトリ−ブチルホスファイト、ジ−、若しくはトリ−アミルホスファイト;モノ−、ジ−、若しくはトリ−ヘキシルホスファイト;モノ−、ジ−、若しくはトリ−フェニルホスファイト;モノ−、ジ−、若しくはトリ−トリルホスファイト;モノ−、ジ−、若しくはトリ−クレジルホスファイト;ジブチルフェニルホスファイトまたはモノ−、ジ−、若しくはトリ−ホスファイト、アミルジクレジルホスファイトが挙げられる。
【0103】
本発明のリン化合物は周知の反応によって製造される。一ルートは、アルコールまたはフェノールと三塩化リンとの反応かまたはエステル交換反応による。アルコールおよびフェノールは、アルキルまたはアリールリン酸とジアルキルまたはジアリールリン酸との混合物を提供するために五酸化リンと反応させることができる。アルキルホスフェートはまた、相当するホスファイトの酸化によって製造することができる。どの場合にも、反応は穏やかな加熱下に行うことができる。更に、様々なリンエステルは、他のリンエステルを出発原料として使用する反応によって製造することができる。このように、中鎖(C9〜C22)リンエステルは、熱エステル交換または酸−若しくは塩基−触媒エステル交換を用いてジメチルホスファイトと中鎖アルコールの混合物との反応によって製造されてきたし;例えば特許文献6を参照されたい。ほとんどのかかる材料はまた商業的に入手可能であり;例えば、トリフェニルホスファイトはDuraphos TPPTMとしてAlbright and Wilsonから;ジ−n−ブチル水素ホスファイトはDuraphos DBHPTMとしてAlbright and Wilsonから;そしてトリフェニルチオホスフェートはIrgalube TPPTTMとしてCiba Specialty Chemicalsから入手可能である。
【0104】
本発明組成物の他の主成分は、エチレン系不飽和を有する炭化水素である。これは通常、存在するエチレン系不飽和の数に依存して、オレフィンまたはジエン、トリエン、ポリエンなどと記載される。好ましくは、オレフィンはモノ不飽和である、即ち、1分子当たりたった一つのエチレン系二重結合を含有する。オレフィンは、環状または線状オレフィンであることができる。線状オレフィンの場合、それは内部オレフィンかまたはアルファ−オレフィンである。オレフィンはまた、それがまたエチレン系(非芳香族)不飽和を含有するという条件で、芳香族不飽和、即ち、1つ以上の芳香環を含有することができる。
【0105】
オレフィンは通常6〜30個の炭素原子を含有するであろう。6個よりかなり少ない炭素原子を有するオレフィンは、摩耗防止潤滑油として好適な組成物中への調合に通常は好適でない揮発性液体またはガスである傾向がある。好ましくはオレフィンは、6〜18個または6〜12個の炭素原子、或いはまた6〜8個の炭素原子を含有するであろう。
【0106】
好適なオレフィンの中に、アルキル置換シクロペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、アルキル置換シクロヘキセン、ヘプテン、シクロヘプテン、アルキル置換シクロヘプテン、ジイソブチレンを含むオクテン、シクロオクテン、アルキル置換シクロオクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、プロピレン四量体を含むドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、シクロオクタジエン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、スクアレン、ジフェニルアセチレン、およびスチレンがある。非常に好ましいオレフィンはシクロヘキセンおよび1−オクテンである。
【0107】
アルコールの混合物は、異なる第一級アルコールの混合物、異なる第二級アルコール混合物または第一級アルコールと第二級アルコールとの混合物であってもよい。有用な混合物の例には、n−ブタノールおよびn−オクタノール;n−ペンタノールおよび2−エチル−1−ヘキサノール;イソブタノールおよびn−ヘキサノール;イソブタノールおよびイソアミルアルコール;イソプロパノールおよび2−メチル−4−ペンタノール;イソプロパノールおよび第二ブチルアルコール;イソプロパノールおよびイソオクチルアルコールなどが挙げられる。
【0108】
燐酸の有機トリエステルもまた潤滑油に用いられる。典型的なエステルには、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、中性アルキルアリールホスフェート、アルコキシアルキルホスフェート、トリアリールホスファイト、トリアルキルホスファイト、中性アルキルアリールホスファイト、中性ホスホネートエステルおよび中性ホスフィンオキシドエステルが含まれる。一実施形態では、長鎖ジアルキルホスホネートエステルが使用される。より優先的には、ジメチル−、ジエチル−、およびジプロピル−オレイルホスホネートを使用することができる。燐酸の中性酸は、酸(HO−P)よりもむしろトリエステルまたは酸の塩である。
【0109】
任意のC4〜C8アルキルまたは高級ホスフェートエステルが本発明に用いられてもよい。例えば、トリブチルホスフェート(TBP)およびトリイソオクチルホスフェート(TOF)を使用することができる。具体的なトリホスフェートエステルまたはエステルの組み合わせは、調合流体の密度、粘度などを調節するために当業者によって容易に選択することができる。2種以上のトリアルキルホスフェートの混合物よりもむしろジブチルオクチルホスフェートなどの、混合エステルが用いられてもよい。
【0110】
トリアルキルホスフェートは多くの場合、調合物の比重を調節するために有用であるが、特有のトリアルキルホスフェートは低温で液体であることが望ましい。その結果として、C3〜C4アルキルで少なくとも1つの部分アルキル化された基を含有する混合エステル、例えば、4−イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートまたは3−ブチルフェニルジフェニルホスフェートが非常に望ましい。特許文献7に教示されているようにフェノールをブチレンまたはプロピレンで部分アルキル化して混合フェノールを形成し、それを次にオキシ塩化リンと反応させることによって製造されるトリアリールホスフェートが更により望ましい。
【0111】
クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、混合キシリルクレジルホスフェート、混合イソプロピルフェニル/フェニルホスフェート、t−ブチルフェニルフェニルホスフェートなどの、低級アルキルフェニル/フェニルホスフェートのような、任意の混合トリアリールホスフェート(TAP)エステルが使用されてもよい。これらのエステルは、可塑剤、機能性流体、ガソリン添加剤、難燃性添加剤などとして広く使用されている。
【0112】
リン酸エステル、チオリン酸エステル、およびそれらのアミン塩は、潤滑性能を高めるために機能し、極圧添加剤として通常用いられる公知の化合物から選択することができる。そのいずれもがおおよそ3〜30個の炭素原子を含有する、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、またはアラルキル基を有するリン酸エステル、またはそれらのアミン塩が一般に用いられる。
【0113】
リン酸エステルの例には、トリイソプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、およびトリオレイルホスフェートなどの脂肪族リン酸エステル;並びにベンジルフェニルホスフェート、アリルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、およびトリブチルフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステルが挙げられる。好ましくは、リン酸エステルはトリアルキルフェニルホスフェートである。
【0114】
上述のホスフェートのアミン塩もまた使用可能である。リン酸およびチオリン酸の酸性アルキルまたはアリールエステルのアミン塩もまた使用可能である。好ましくは、アミン塩は、トリアルキルフェニルホスフェートのアミン塩またはアルキルホスフェートのアミン塩である。
【0115】
リン酸エステル、およびそのアミン塩からなる群から選択される化合物の1つまたは任意の組み合わせが使用されてもよい。燐酸エステルおよび/またはそのアミン塩は、潤滑性能を高めるために機能し、極圧添加剤として通常用いられる公知の化合物から選択することができる。そのいずれもがおおよそ3〜30個の炭素原子を含有する、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、またはアラルキル基を有する燐酸エステルまたはそのアミン塩が一般に用いられる。
【0116】
亜リン酸エステルの例には、トリイソプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、エチルジブチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリ−2−エチルヘキシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、およびトリオレイルホスファイトなどの脂肪族亜リン酸エステル;並びにベンジルフェニルホスファイト、アリルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、エチルジフェニルホスファイト、トリブチルホスファイト、エチルジブチルホスファイト、クレジルジフェニルホスファイト、ジクレジルフェニルホスファイト、エチルフェニルジフェニルホスファイト、ジエチルフェニルフェニルホスファイト、プロピルフェニルジフェニルホスファイト、ジプロピルフェニルフェニルホスファイト、トリエチルフェニルホスファイト、トリプロピルフェニルホスファイト、ブチルフェニルジフェニルホスファイト、ジブチルフェニルフェニルホスファイト、およびトリブチルフェニルホスファイトなどの芳香族亜リン酸エステルが挙げられる。ジラウリルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジアルキルホスファイト、およびジフェニルホスファイトもまた有利に用いられる。好ましくは、亜リン酸エステルは、ジアルキルホスファイトまたはトリアルキルホスファイトである。
【0117】
ホスフェート塩はポリアミンから誘導されてもよい。ポリアミンには、アルコキシル化ジアミン、脂肪ポリアミンジアミン、アルキレンポリアミン、ヒドロキシ含有ポリアミン、縮合ポリアミンアリールポリアミン、および複素環ポリアミンが含まれる。アルコキシル化ジアミンの商業的に入手可能な例には、上記式においてyが1であるそれらのアミンが挙げられる。これらのアミンの例には、それぞれ、ジアミンの1モル当たり3〜10モルのエチレンオキシドを含有するN−牛脂トリメチレンジアミンのエチレンオキシド縮合生成物であるEthoduomeen T/13およびT/20が挙げられる。
【0118】
別の実施形態では、ポリアミンは脂肪ジアミンである。脂肪ジアミンには、モノ−若しくはジアルキル、対称若しくは非対称エチレンジアミン、プロパンジアミン(1,2、若しくは1,3)、および上記のポリアミン類似体が含まれる。好適な市販の脂肪ポリアミンは、Duomeen C(N−ココ−1,3−ジアミノプロパン)、Duomeen S(N−大豆−1,3−ジアミノプロパン)、Duomeen T(N−牛脂−1,3−ジアミノプロパン)、およびDuomeen O(N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン)である。「Duomeen」は、Armak Chemical Co.(Chicago,Ill.)から商業的に入手可能である。
【0119】
かかるアルキレンポリアミンには、メチレンポリアミン、エチレンポリアミン、ブチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ペンチレンポリアミンなどが含まれる。高級同族体並びにピペラジンおよびN−アミノアルキル置換ピペラジンなどの関連複素環アミンもまた含まれる。かかるポリアミンの具体的な例は、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどである。上記のアルキレンアミンの2種以上を縮合させることによって得られる高級同族体は、上記のポリアミンの2種以上の混合物がそうであるのと同様に有用である。
【0120】
一実施形態では、ポリアミンはエチレンポリアミンである。かかるポリアミンは、非特許文献2に見出しエチレンアミンの下で詳細に記載されている。エチレンポリアミンは多くの場合、環式縮合生成物を含むポリアルキレンポリアミンの複雑な混合物である。
【0121】
他の有用な種類のポリアミン混合物は、上記のポリアミン混合物をストリッピングして、残留物として、多くの場合「ポリアミン塔底液」と称されるものを残すことから生じるものである。一般に、アルキレンポリアミン塔底液は、2重量%未満、通常1重量%未満の約200℃より下で沸騰する材料を有するとして特徴づけることができる。Dow Chemical Company(Freeport,Tex.)から入手されるかかるエチレンポリアミン塔底液の典型的なサンプルは、「E−100」と称される。これらのアルキレンポリアミン塔底液には、ピペラジンおよびジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの高級類似体などの環状縮合生成物が含まれる。これらのアルキレンポリアミン塔底液は、専らアシル化剤と反応させることができるか、またはそれらは他のアミン、ポリアミン、若しくはそれらの混合物と一緒に使用することができる。別の有用なポリアミンは、少なくとも1種のヒドロキシ化合物と少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基を含有する少なくとも1種のポリアミン反応剤との縮合反応物である。ヒドロキシ化合物は好ましくは多価アルコールおよびアミンである。多価アルコールは下に記載される。(カルボン酸エステル分散剤を参照されたい。)一実施形態では、ヒドロキシ化合物は多価アミンである。多価アミンには、2〜約20個、または2〜約4個の炭素原子を有するアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)と反応させられた上記モノアミンのいずれかが含まれる。多価アミンの例には、トリ−(ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、およびN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)が挙げられる。
【0122】
多価アルコールまたはアミンと反応して縮合生成物または縮合アミンを形成するポリアミンは上に記載されている。好ましいポリアミンには、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、および上記「アミン塔底液」などのポリアミンの混合物が含まれる。
【0123】
これらの極圧添加剤は、基油の100重量部当たり、好都合には0.1〜2重量部の範囲内の量で、個別にかまたは混合物の形態で使用することができる。上記は全て、低硫黄、低芳香族、低ヨウ素数、低臭素数、高アナリン点(analine point)のイソパラフィンと併せて様々な共ベースストック、AN、AB、ADPO、ADPS、ADPM、および/または様々な一塩基、二塩基、三塩基エステルを使用して性能強化することができる。
【実施例】
【0124】
本発明調合物の利益を示すために幾つかの試験を行った。表3に示されるように、7つの実施例を行い、実施例A、B、C、D、E、F、およびGと表示する。
【0125】
【表3】

【0126】
ブレンドC、D、およびEは、様々な発明実施形態を示す調合物である。ブレンドA、B、F、およびGは、比較のための典型的な市販のガスタービンエンジン油である。表3に示され得るように、発明実施例C、D、およびEは、比較例A、B、およびFと比較して504時間120℃ Dry TOSTスラッジ試験で秀でた特性を有する。比較例Aはポリオールエステル解乳化剤も、Mannich塩基分散剤も持たない。比較例Bはポリオールエステル解乳化剤を有するがマンニッヒ塩基分散剤を持たない。比較例Fはマンニッヒ塩基分散剤を有するがポリオールエステルを持たない。比較例Gは、十分な固着制御を提供するが不十分なエマルジョン特性を持ったグループIベースストックの欠点を有する典型的なグループI市販ガスタービン油である。
【0127】
【表4】

【0128】
表4は、少量のPluronic L 121を本発明調合物に添加することの利益を示す。実施例Iは、Pluronic L 121を除けば同一である実施例Hと比較してスラッジ試験での予期しない改善を示す。
【0129】
実施例C、D、およびEは全て、有利な固着制御およびエマルジョン特性を有する。これは、グループII若しくはグループIIIベースストックか、それらの組み合わせかのどちらかを有すること、並びにマンニッヒ塩基分散剤、ポリオールエステルおよびポリアルキレン解乳化剤を両方とも有することの、本実施形態での重要性を実証する。
【0130】
実施例はほとんどガスタービンエンジン油調合物についてであるが、当業者は、良好な固着制御およびエマルジョン特性が望まれる全ての状況への適用可能性を認めるであろう。他の好適な使用には、圧縮機油および油圧オイルが含まれるがそれらに限定されない。本出願者らは、特許請求される潤滑油が有益である全ての状況を取り込むつもりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有利な固着ワニス特性を有する潤滑油であって、
a)グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストック;
b)前記潤滑油の少なくとも0.1重量パーセントおよび2.0重量パーセント未満を占めるマンニッヒ塩基分散剤;および
c)ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンアルコールを含む解乳化剤であって、前記潤滑油の少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤
を含み、
d)504時間120℃ Dry TOSTスラッジ試験を用いて60未満の固着制御値を有する
ことを特徴とする潤滑油。
【請求項2】
摩耗防止添加剤、金属不動態化剤、解乳化剤、流動点降下剤、錆止め剤、消泡剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
ガスタービン油であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項4】
前記解乳化剤中のポリオールエステルが、前記解乳化剤の25重量%未満を占め、5000未満の分子量を有し、
前記潤滑油が、54℃で60未満のASTM D−1401エマルジョン特性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項5】
50より大きいASTM D−4308導電率値を有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項6】
5PPM未満のカルシウムおよび5PPM未満の亜鉛を有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項7】
50PPM未満のリンを有することを特徴とする請求項6に記載の潤滑油。
【請求項8】
固着制御を改善する方法であって、
a)有利な固着ワニス特性の潤滑油を得る工程であって、
前記潤滑油は、
グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストック、
前記潤滑油の少なくとも0.1および2.0重量パーセント未満を占めるマンニッヒ塩基分散剤、および
ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンを含む解乳化剤であって、潤滑油の少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤
を含み、
前記潤滑油は、504時間120℃ Dry TOSTスラッジ試験を用いて60未満の固着制御値を有する工程;および
b)前記潤滑油で潤滑化する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
摩耗防止添加剤、金属不動態化剤、解乳化剤、流動点降下剤、錆止め剤、消泡剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の潤滑油。
【請求項10】
ガスタービン油であることを特徴とする請求項8に記載の潤滑油。
【請求項11】
前記解乳化剤中のポリオールエステルが、前記解乳化剤の25重量%未満を占め、5000未満の分子量を有し、
前記潤滑油が、54℃で60未満のASTM D−1401エマルジョン特性を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の潤滑油。
【請求項12】
50より大きいASTM D−4308導電率値を有することを特徴とする請求項8に記載の潤滑油。
【請求項13】
5PPM未満のカルシウムおよび5PPM未満の亜鉛を有することを特徴とする請求項8に記載の潤滑油。
【請求項14】
50PPM未満のリンを有することを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項15】
改善された固着制御および有利なエマルジョン特性を提供するための油のブレンド方法であって、
a)グループII、グループIII、GTLおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される多量のベースストック、
潤滑油の少なくとも0.1重量パーセントおよび2.0重量パーセント未満を占めるマンニッヒ塩基分散剤、および
ポリオールエステルおよびポリオキシアルキレンを含む解乳化剤であって、潤滑油の少なくとも0.002重量パーセント〜2.0重量パーセント未満を占める解乳化剤
を入手する工程;および
b)前記ベースストック、解乳化剤および分散剤を調合して、504時間120℃ Dry TOSTスラッジ試験を用いた固着制御値を60未満とする工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
摩耗防止添加剤、金属不動態化剤、解乳化剤、流動点降下剤、錆止め剤、消泡剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の潤滑油。
【請求項17】
前記解乳化剤中のポリオールエステルが、前記解乳化剤の25重量%未満を占め、5000未満の分子量を有し、
前記潤滑油が、54℃で60未満のASTM D−1401エマルジョン特性を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
プロピレンオキシドブロックコポリマーを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項19】
プロピレンオキシドブロックコポリマーを更に含むことを特徴とする請求項8に記載の潤滑油。
【請求項20】
プロピレンオキシドブロックコポリマーを更に含むことを特徴とする請求項15に記載の潤滑油。

【公表番号】特表2011−516637(P2011−516637A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501849(P2011−501849)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/001983
【国際公開番号】WO2009/145824
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】