説明

改変EU−1ゼオライトおよび芳香族C8化合物の異性化におけるその使用

【課題】EU−1ゼオライトをベースとする新規な触媒であって、既知の従来技術のゼオライト触媒より活性である一方で、キシレン類の生成について選択的でもあり、異性化されるべき供給材料の転化率だけでなく、キシレン類によって構成される所望の生成物の収率も向上させるものを提供する。
【解決手段】本発明は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する少なくとも1種の改変EU−1ゼオライトと、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、改変ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する、触媒である。前記触媒は、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の化合物を含む芳香族供給材料の異性化方法において用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変ゼオライト骨格を有するEU−1ゼオライトを含む触媒に関する。より正確には、前記EU−1ゼオライトは、四配位アルミニウム原子および六配位アルミニウム原子を正しく測定された重量割合で有する。前記触媒は、有利には、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族留分の異性化方法においてその適用を有する。前記留分は、キシレン類の混合物、または、エチルベンゼンのみ、または、キシレンおよびエチルベンゼンの混合物を含有する供給材料である。この供給材料は、通常、「芳香族C8留分」と呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
芳香族C8留分、例えば、エチルベンゼンの、キシレン類への異性化の触媒は、多くの特許の主題を形成した。このような反応を触媒するために多くのゼオライト触媒が提案された。C8芳香族留分を異性化するために用いられるゼオライトは、ZSM−5を含み、これは、単独でまたはモルデナイト等の他のゼオライトと混合されて用いられる。これらの触媒は、特許文献1〜3に記載された。主にモルデナイトをベースとする他の触媒は、特許文献4〜6記載された。より最近では、構造型EUOを有するゼオライトをベースとする触媒(特許文献7)、並びに構造型MTWを有するゼオライトをベースとする触媒(特許文献8)が提案された。
【特許文献1】米国特許第4467129号明細書
【特許文献2】米国特許第4482773号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0013617号明細書
【特許文献4】米国特許第4723051号明細書
【特許文献5】米国特許第4665258号明細書
【特許文献6】仏国特許発明第2477903号明細書
【特許文献7】欧州特許第0923987号明細書(特開平11−244704号公報)
【特許文献8】国際公開第2005/065380号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのゼオライト触媒の大部分は、キシレン類について有利な選択性を引き出す一方で、芳香族C8留分、特に、エチルベンゼンの転化率があまりに低いため、最適のキシレン収率を提供しない。
【0004】
本発明の目的の一つは、EU−1ゼオライトをベースとする新規な触媒であって、既知の従来技術のゼオライト触媒より活性である一方で、キシレン類の生成について選択的でもあり、異性化されるべき供給材料の転化率だけでなく、キシレン類によって構成される所望の生成物の収率も向上させるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する少なくとも1種の改変EU−1ゼオライトと、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含む触媒であって、前記改変EU−1ゼオライト中に存在する六配位アルミニウム原子の数は、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示すことを特徴とするものである。
【0006】
前記改変EU−1ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の22重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有することが好ましい。
【0007】
前記改変EU−1ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の25重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有することが好ましい。
【0008】
前記改変EU−1ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の30重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有することが好ましい。
【0009】
前記改変EU−1ゼオライトの全体Si/Al原子比は、10〜35であることが好ましい。
【0010】
前記第VIII族金属は、白金であることが好ましい。
【0011】
第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種のさらなる金属を含むことが好ましい。
【0012】
上記本発明の触媒は、好ましくは硫黄を含む。
【0013】
前記マトリクスは、アルミナであることが好ましい。
【0014】
上記本発明の触媒は、押出物の形態であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記の触媒を調製する方法であって、
a1)全体Si/Al原子比が5〜100である、少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b1)前記工程a1)からのゼオライトを水蒸気の存在下に熱処理して、改変EU−1ゼオライトを得る工程と、
c1)マトリクスを用いて前記改変EU−1ゼオライトを成形して、改変ゼオライトを形成する工程と、
d1)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を担持させる工程とを少なくとも包含し、前記工程c1)およびd1)を行う順番は、前記工程b1)の次であれば特定されないものである。
【0016】
水蒸気の存在下での前記熱処理は、200〜470℃の温度で、0.5〜24時間の期間にわたって行われ、水蒸気の容積百分率は、5〜100%であることが好ましい。
【0017】
前記工程c1)は、前記工程d1)に先行することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記の触媒を調製する方法であって、
a2)全体Si/Al原子比が5〜100である少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b2)マトリクスを用いて前記工程a2)からのEU−1ゼオライトを成形して、ゼオライト担体を形成する工程と、
c2)工程b2)において成形されたゼオライト担体を水蒸気の存在下に熱処理する工程と、
d2)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を工程c2)からの改変ゼオライト担体上に担持させる工程と
を少なくとも包含するものである。
【0019】
さらに、本発明は、上記の触媒を調製する方法であって、
a3)全体Si/Al原子比が5〜100である少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b3)マトリクスを用いて前記工程a3)からのEU−1ゼオライトを成形して、ゼオライト担体を形成する工程と、
c3)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を前記工程b3)からのゼオライト担体上に担持させる工程と、
d3)前記工程c3)からの少なくとも前記第VIII族金属を含浸させられたゼオライト担体を水蒸気の存在下に熱処理する工程と
を少なくとも包含するものである。
【0020】
また、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の芳香族化合物を含有する留分を異性化する方法であって、前記芳香族留分を、触媒反応器内に存在する上記の改変ゼオライトを含む少なくとも1種の触媒または上記方法のいずれか1つにより調製された触媒と接触させる工程を包含するものである。
【0021】
この方法は、温度:300〜500℃;水素分圧:0.3〜1.5MPa、全圧:0.45〜1.9MPaおよび毎時の触媒の重量(kg)当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される空間速度:0.25〜30h−1の操作条件下に行われることが好ましい。
【0022】
前記触媒中に存在するEU−1ゼオライトは、水蒸気の存在下での熱処理によって改変され、該処理は、現場でおよび前記触媒を前記芳香族留分と接触させる前に行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する少なくとも1種の改変EU−1ゼオライトと、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、改変ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する、触媒である。前記触媒は、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の化合物を含む芳香族供給材料の異性化方法において用いられる。本発明のEU−1ゼオライトをベースとする新規な触媒は、既知の従来技術のゼオライト触媒より活性である一方で、キシレン類の生成について選択的でもあり、異性化されるべき供給材料の転化率だけでなく、キシレン類によって構成される所望の生成物の収率も向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(本発明の要約および利点)
本発明は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する少なくとも1種の改変EU−1ゼオライトと、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含む触媒であって、前記改変ゼオライト中に存在する六配位アルミニウム原子の数が、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の全数の20重量%超を示すことを特徴とする触媒に関する。
【0025】
前記本発明の触媒は、有利には、1分子当たり8個の炭素原子を含有する少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族留分の異性化方法において用いられる。
【0026】
驚くべきことに、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属と、少なくとも1種のEU−1ゼオライトとを含み、六配位アルミニウム原子の数は、前記改変ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す、ビーズ状または押出物の形態の触媒により、結果として、1分子当たり8個の炭素原子を含有する少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族留分を異性化する方法において前記触媒が用いられた場合に、異性化されるべき芳香族供給材料の転化率に関して向上した触媒性能がもたらされることが発見された。このような触媒は、実質的に、未改変ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20数量%未満を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する未改変EU−1ゼオライトを含む触媒より活性である。さらに、所望の生成物、すなわち、キシレン類についての選択性は、改変EU−1ゼオライトを含む触媒を用いる場合に維持されるので、本発明による触媒の存在下に異性化方法が行われる場合にキシレン類の収率に増加がある。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する少なくとも1種の改変EU−1ゼオライトと、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含む触媒であって、前記改変ゼオライト中に存在する六配位アルミニウム原子の数は、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示すことを特徴とする触媒に関連する。
【0028】
本発明によると、本発明の触媒中の改変EU−1ゼオライトは、前記改変ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超、好ましくは22重量%超、より好ましくは25重量%超、一層より好ましくは30重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子(AlVIと表記される)を有する。本発明の触媒中の前記EU−1ゼオライト中に存在し、かつ、六配位アルミニウムの形態でないアルミニウム原子は、四配位アルミニウム原子(AlIVと表記される)の形態で存在する。前記四配位アルミニウム原子は、ゼオライト骨格中に存在する一方で、六配位アルミニウム原子は、ゼオライト骨格の外側に存在する(格子外アルミニウム(extra-lattice aluminium)。特に、前記六配位アルミニウム原子の少なくともいくつかは、改変EU−1ゼオライトの細孔中に見出される。
【0029】
本発明によると、改変EU−1ゼオライト中に存在する四配位および六配位アルミニウム原子の重量百分率は、固体27Al核磁気共鳴によって測定される。アルミニウムのNMRは、この核の種々の配位状態の特徴付けおよび定量化をする際におけるその使用のために知られる(「Analyse physico-chimiques des catalyseurs industriels(工業触媒の物理化学分析)」,J.Lynch,Technip版(2001),第13章,p.290−291)。改変EU−1ゼオライトのアルミニウムのNMRスペクトルは、2つのシグナルを示し、一方は、四配位アルミニウム原子の共鳴の特徴であり、他方は、六配位アルミニウム原子の共鳴の特徴である。四配位アルミニウムAlIV原子は、+40ppm〜+75ppmの化学置換において共鳴し、六配位アルミニウムAlVI原子は、−15ppm〜+15ppmの範囲の化学置換において共鳴する。2種のアルミニウム種であるAlIVおよびAlVIの重量百分率は、これらの種のそれぞれに対応するシグナルを積算するによって定量される。
【0030】
より正確には、本発明の触媒中に存在する改変EU−1ゼオライトは、27Alに最適化された4mmのプローブにより、アバンス(Avance)型ブルーカー(Brucker)分光計(400MHz)を用いた固体27Al MAS−NMRによって分析された。サンプルの回転速度は、14kHz近傍であった。アルミニウム原子は、5/2のスピンを有する四極核である。「選択的」分析条件下、すなわち、30kHzの低無線周波数電磁場、π/2の低パルス角の下、水飽和サンプルの存在下に、マジックアングルスピニング(magic angle spinning:MAS)NMR(MAS−NMR)と表記される)技術が定量的技術である。各MAS−NMRスペクトルの分解は、種々のアルミニウム種、すなわち、四配位アルミニウム原子AlIVおよび六配位アルミニウム原子AlVIの量への直接的な接近手段を提供する。各スペクトルは、0ppmにアルミニウムシグナルを有する1Mの硝酸アルミニウム溶液に対する化学置換によって特徴付けられる。四配位アルミニウム原子AlIVを特徴付けるシグナルは、+40ppmと+75ppmとの間で積算され、これは領域1に対応し、六配位アルミニウム原子AlVIを特徴付けるシグナルは、−15ppmと+15ppmとの間で積算され、これは、領域2に対応する。六配位アルミニウム原子AlVIの重量百分率は、比:領域2/(領域1+領域2)に等しい。
【0031】
本発明の触媒中に含まれ、アルミニウム原子およびケイ素原子を含有する改変EU−1ゼオライトの全体Si/Al原子比は、5〜100、好ましくは10〜50、より好ましくは10〜35である。本発明によると、前記改変EU−1ゼオライトの前記全体Si/Al原子比は、有利には、前記改変ゼオライトが誘導される合成された際のEU−1ゼオライトの全体Si/Al原子比について±2%を超えては変動せず、非常に有利には、前記改変EU−1の前記全体Si/Al原子比は、合成された際のEU−1ゼオライトのものと比較して未変化を維持する。X線蛍光または原子吸光によって測定される全体Si/Al原子比は、ゼオライト骨格中に存在するアルミニウム原子とゼオライト骨格の外側に存在し得る任意のアルミニウム原子(格子外アルミニウムとも称する)の両方を含む。改変EU−1ゼオライトのゼオライト骨格中に存在する各四配位アルミニウム原子は、4つの酸素原子と結合しており、四面体配置になっている。改変EU−1ゼオライト中ではあるがゼオライト骨格の外側に存在する各六配位アルミニウム原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれ、八面体配置になっている。改変EU−1ゼオライトが誘導される合成された際のEU−1ゼオライトでは、上記のようにアルミニウムのMAS−NMRによって測定される四配位アルミニウム原子の重量百分率は、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは98%超、一層より好ましくは100%である。本発明および本発明の非常に好ましい実施形態によると、改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の全体的な数および改変EU−1ゼオライトが誘導される合成された際のEU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の全体的な数は同一である。
【0032】
本発明の触媒中に存在する改変EU−1ゼオライトは、プロトン型(水素型、H)になっており、非常に有利には、H以外の陽イオンの比率がゼオライト上の陽イオンの総数に対して陽イオンの総数の30%未満、好ましくは20%未満、非常に好ましくは5%未満である。
【0033】
本発明によると、前記触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金から選択される、好ましくは、第VIII族からの貴金属から選択される、より好ましくは、パラジウムおよび白金から選択される、一層より好ましくは白金である少なくとも1種の第VIII族金属を含む。例えばH−O滴定による化学吸着または一酸化炭素の化学吸着によって測定される第VIII族金属(単数種または複数種)の分散は、50〜100%、好ましくは60〜100%、より好ましくは70〜100%である。キャスタン・マイクロプローブ(Castaing microprobe)によって測定されるそのプロファイルから得られ、周縁部に対する粒子コア部における第VIII族金属(単数種または複数種)の粒子の濃度の比として規定される第VIII族金属(単数種または複数種)の巨視的な分配係数は、0.7〜1.3、好ましくは0.8〜1.2である。1近傍のこの比の値は、触媒中の第VIII族金属(単数種または複数種)の分配の均一性の証明である。
【0034】
前記触媒は、有利には、元素周期律表の第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属によって形成される群から選択される、好ましくは、ガリウム、インジウム、スズおよびレニウムから選択される少なくとも1種のさらなる金属を含む。前記さらなる金属は、好ましくは、インジウム、スズおよびレニウムから選択される。
【0035】
前記触媒はまた、有利には、硫黄を含む。
【0036】
より詳細には、本発明の前記触媒は以下を含有する:
・前記改変EU−1ゼオライト:1〜90重量%、好ましくは3〜80重量%、より好ましくは4〜60重量%;
・元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属:0.01〜4重量%、好ましくは0.05〜2重量%;
・場合による、第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種のさらなる金属:0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%;
・場合による、硫黄:その含有量は、第VIII族からの金属(単数種または複数種)原子の数に対する硫黄原子数の比が0.5:1〜2:1であるようにされる;
・少なくとも1種のマトリクス:触媒における100%までの残部を提供する。
【0037】
本発明の触媒の組成の一部を形成するマトリクスは、粘土、マグネシア、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、シリカ−アルミナおよび石炭およびこれらの組成物の少なくとも2種の混合物から選択される。好ましくは、マトリクスはアルミナである。
【0038】
前記触媒は、ビーズ状または押出物の形態、好ましくは、押出物の形態である。
【0039】
本発明はまた、本発明の触媒の調製に関連する。本発明の触媒の調製において必須の工程は、水蒸気の存在下に、成形されてもされなくてもよい、合成された際のまたは有機テンプレートを含まない、EU−1ゼオライトについて熱処理を行うことからなる。水蒸気の存在下の前記熱処理により、結果として、EU−1ゼオライトのゼオライト骨格の改変がもたらされ、これは、前記処理を経て、改変EU−1ゼオライト中の六配位アルミニウム原子の数が、前記改変ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超、好ましくは22重量%超、より好ましくは25重量%超、一層より好ましくは30重量%超を示すようになる。非常に好ましくは、触媒の調製は、EU−1ゼオライトが酸溶液による処理を経る何らの工程も含まない。
【0040】
本発明の触媒の調製の第1の実施形態は、
a1)全体Si/Al原子比が5〜100、好ましくは10〜50、一層より好ましくは10〜35である少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b1)水蒸気の存在下に前記工程a1)からのゼオライトを熱処理して、改変EU−1ゼオライトを得る工程と、
c1)マトリクスを用いて前記改変EU−1ゼオライトを成形して、改変ゼオライト担体を形成する工程と、
d1)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を担持させる工程とを少なくとも包含し、前記工程c1)およびd1)を行う順番は、前記工程b1)の後であれば特定されない、方法からなる。
【0041】
本発明の触媒の調製の第2の実施形態は、
a2)全体Si/Al比が5〜100、好ましくは10〜50、一層より好ましくは10〜35である、少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b2)マトリクスを用いて前記工程a2)から誘導されるEU−1ゼオライトを成形して、ゼオライト担体を形成する工程と、
c2)工程b2)において成形されたゼオライトを水蒸気の存在下に熱処理する工程と、
d2)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を工程c2)からの改変ゼオライト担体上に担持させる工程と
を少なくとも包含する方法からなる。
【0042】
本発明の触媒の調製の第3の実施形態は、
a3)全体Si/Al比が5〜100、好ましくは10〜50、一層より好ましくは10〜35である、少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b3)マトリクスを用いて前記工程a3)から誘導されるEU−1ゼオライトを成形して、ゼオライト担体を形成する工程と、
c3)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を工程b3)からの改変ゼオライト担体上に担持させる工程と、
d3)前記工程c3)からの少なくとも1種の前記第VIII族金属を含浸させられたゼオライト担体を水蒸気の存在下に熱処理する工程と
を少なくとも包含する方法からなる。
【0043】
本発明によると、工程a1)、a2)またはa3)において調製された時の本発明の触媒中への含有のためにまだ改変されていない初期のEU−1ゼオライトは、4.1×5.4Å(1Å=1オングストトーム=10−10m)の細孔径を有するミクロ孔の一次元骨格を有する(「Atlas of Zeolite Framework Types」,Ch. Baerlocher,W. M. Meier and D. H. Olson,第5版,2001)。さらに、N. A. Briscoeらは、総説Zeolites(1988,8,74)における論文において、これらの一次元チャネルは、8.1Åの深さおよび6.8×5.8Åの径を有するサイドポケットを有することを開示した。前記EU−1ゼオライトの物理化学的特徴は、既にEP-B1-0 042 226に記載された。
【0044】
前記工程a1)、a2)またはa3)に従ってEU−1ゼオライトを合成するために、当業者は、最初に、合成された際のEU−1ゼオライトの合成を記載するEP-B1-0 042 226の教示を参照するだろう。
【0045】
より正確には、前記工程a1)、a2)またはa3)に従ってEU−1ゼオライトを調製するために、以下のものが、水性媒体中で混合される:少なくとも1種のケイ素源、少なくとも1種のアルミニウム源、式R−N−(CH−N−R(式中、nは3〜12であり、基R〜Rは、同一でも異なってもよく、1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基であり、前記基R〜Rの5つまでは、場合によっては、水素である)を有する少なくとも1種の窒素含有有機テンプレートQ、および、場合によるゼオライト種。
【0046】
反応混合物は、以下のモル組成を有する:
SiO/Al: 10〜150
OH/SiO: 0.1〜6;
(M+Q)/Al: 0.5〜100;
Q/(M+Q): 0.1〜10;
O/SiO: 1〜100。
【0047】
Qは、上記のカチオンR−N−(CH−N−R、好ましくは、1,6−N,N,N,N’,N’,N’,−ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムであり、Mはアルカリまたはアンモニウムカチオンである。
【0048】
前記反応混合物は、自生圧力下、場合によっては、ガス、例えば窒素が加えられて、85〜250℃の温度で、EU−1ゼオライトの結晶が形成されるまで反応させられる。反応期間は、試薬の組成、加熱および混合の態様、反応温度および攪拌態様に応じて1分から数月までの範囲である。反応の終了時に、固体相はフィルタ上に集められ、洗浄される。この段階で、EU−1ゼオライトは、「合成された際の(as-synthesized)」と称され、その内部結晶細孔内に、カチオンR−N−(CH−N−R、好ましくは1,6−N,N,N,N’,N’,N’,−ヘキサメチルヘキサンメチレンジアンモニウムを少なくとも含有する。本発明により、工程a1)、a2)またはa3)の終了時に得られた前記合成された際のEU−1ゼオライトの全体Si/Al原子比は5〜100、好ましくは10〜50、より好ましくは10〜35である。X線蛍光または原子吸光によって測定される全体Si/Al原子比は、ゼオライト骨格中に存在するアルミニウム原子とゼオライト骨格の外側に存在し得る任意のアルミニウム原子(格子外アルミニウムとも称される)の両方を考慮に入れている。前記工程a1)、a2)またはa3)を用いて調製された合成された際のEU−1ゼオライト中に存在する四配位アルミニウム原子の、本明細書の上記に記載されるMAS−NMRアルミニウム分析によって測定される重量百分率は、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは98%超であり、一層より好ましくは、それは、100%に等しい。
【0049】
本発明の触媒の調製の第1の実施形態によると、前記工程a1)からの合成された際のEU−1ゼオライトは、乾燥空気の流れ中400〜600℃の温度での焼成を経、次いで、それは、工程b1)において水蒸気の存在下での少なくとも1回の熱処理を経る。焼成期間は変動し得、数時間から数日までの範囲である。前記工程a1)からの前記EU−1ゼオライトの前記工程b1)より前の焼成処理は、ゼオライトのミクロ孔中に存在する有機テンプレート、例えば、カチオンR−N−(CH−N−R、好ましくは、1,6−N,N,N,N’,N’,N’,−ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムを除去することを目的とする。より好ましくは、少なくとも1種のNHNO溶液を用いる1回以上のイオン交換工程が、乾燥空気の流れ中の焼成と水蒸気の存在下に行われる熱処理との間に、合成された際のゼオライト中における陽イオン位置中に存在し得るアルカリカチオン、特にナトリウムの少なくとも一部、好ましくは、実質的に全部を除去するために行われる。各交換工程は、好ましくは50〜150℃温度で、有利には2〜10時間の期間にわたって行われる。一般的に、7〜12Nの規定度を有する硝酸アンモニウムNHNO水溶液が用いられる。同様に、前記熱処理工程b1)の終了時に、残留アルカリカチオン、特にナトリウムを除去するために、少なくとも1種のNHNO溶液を用いて1回以上のイオン交換工程を行うことが可能である。
【0050】
前記工程a1)からの、焼成され、好ましくは、NH型であるように交換されたEU−1ゼオライトは、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の工程b1)により水蒸気の存在下での少なくとも1回の熱処理を経る。水蒸気の存在下での熱処理のための操作条件、特に、前記処理の温度および継続期間および水蒸気の容積百分率は、六配位アルミニウム原子の数が改変ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す改変EU−1ゼオライトを得るように調節される。水蒸気の存在下に行われる熱処理は、有利には200〜470℃、好ましくは320〜460℃の温度で行われる。前記熱処理は、一般的には、0.5時間以上、好ましくは0.5〜24時間、非常に好ましくは1〜12時間続く。熱処理の間の水蒸気の容積百分率は、一般的には5〜100%、好ましくは20〜100%、より好ましくは40〜100%である。場合による水蒸気以外の容積部分は空気によって形成される。水蒸気および場合による空気によって形成されるガスの流量は、有利には0.2〜10L/h/g(ゼオライト)である。水蒸気の存在下での熱処理は、所望の特徴、特に、前記ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する改変EU−1ゼオライトを得るのに必要なだけ多数回で行われ得る。前記工程b1)において行われる熱処理の数は、好ましくは4回未満であり、有利には、前記工程b1)による単回の熱処理が行われる。
【0051】
第1の実施形態による触媒の調製は、前記成形工程c1)および元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を担持させる前記工程d1)を行うことによって構成される。前記工程b1)に続く前記工程c1)およびd1)を行う順番は重要ではない。好ましくは、前記工程c1)は、前記工程d1)に先行する。
【0052】
前記改変EU−1ゼオライトを成形するための前記工程c1)を行うために、粘土、マグネシア、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、シリカ−アルミナおよび石炭およびこれら組成物の少なくとも2種の混合物から選択されるマトリクスが用いられる。好ましくは、マトリクスはアルミナである。マトリクスと関連する改変EU−1ゼオライトは、有利にはビーズ状または押出物状に、非常に有利には押出物の形態に成形される。改変EU−1ゼオライト−マトリクスの集合体は、本発明の触媒の改変ゼオライト担体を構成する。
【0053】
より詳細には、前記工程c1)による成形は、改変EU−1ゼオライトを、湿気を有するマトリクスゲル、好ましくはアルミナ中に混合し、次いで、得られたペースト状物をダイに通して、例えば0.4〜4mmの径を有する押出物を成形することからなる。このマトリクスゲルは、一般的には、少なくとも1種の酸およびマトリクス粉体を良好な均一性のペースト状物を得るのに必要な期間にわたって、すなわち、例えば約10分間にわたって混合することによって得られる。成形の次に、一般的には、乾燥、次いで、焼成が行われる。乾燥は、有利には、100〜150℃の温度で、5〜20時間の期間にわたってオーブン中で行われる。焼成は、有利には、250〜600℃の温度で1〜8時間の期間にわたって行われる。
【0054】
改変EU−1ゼオライトを含む触媒を調製する工程d1)は、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属および場合による第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を導入することからなる。
【0055】
本発明の触媒中に存在する前記第VIII族金属は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金から、好ましくは貴金属から、非常に好ましくはパラジウムおよび白金から選択される。より好ましくは、前記第VIII族金属は白金である。前記第VIII族金属を担持させる方法によると、以下の記載に示されるように、前記第VIII族金属、好ましくは、白金は、主に改変ゼオライト上またはマトリクス上に担持させられ得る。
【0056】
場合によっては本発明の触媒中に存在する第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される前記金属は、ガリウム、インジウム、スズおよびレニウムから、好ましくはインジウム、スズおよびレニウムから選択される。
【0057】
改変EU−1ゼオライトを得、かつ、それを成形した後、本発明の触媒は、当業者に知られるあらゆる方法を用いて調製され得る。好ましくは、成形工程c1)の終了時に行われる焼成の後、少なくとも1種の第VIII族金属は、改変ゼオライト担体上、すなわち、主にマトリクス上または主に改変ゼオライト上または改変ゼオライト−マトリクスの集合物上のいずれかに導入される。前記金属は、有利には、乾式含浸技術、過剰含浸(excess impregnation)技術またはイオン交換を用いてゼオライト担体上に担持させられる。複数種の金属が導入される場合、これらは全て同じ方法でまたは異なる技術を用いて導入され得る。
【0058】
1種以上の第VIII族金属を改変ゼオライト担体上に担持させるためにあらゆる第VIII族金属前駆体が適している。特に、第VIII族からの任意の貴金属のために、アンモニア化合物またはクロロ白金酸アンモニウム、ジカルボニル二塩化白金、ヘキサヒドロキシ白金酸、塩化パラジウム、硝酸パラジウム等の化合物を用いることが可能である。白金は、一般的に、ヘキサクロロ白金酸の形態で導入される。第VIII族貴金属は、好ましくは、上記の金属化合物の一つの水溶液または有機溶液を用いる含浸によって導入される。挙げられ得る適切な有機溶媒の例は、パラフィン性、ナフテン性または芳香族性の炭化水素であって、例えば、1分子当たり6〜12個の炭素原子を含有するもの、および1分子当たり1〜12個の炭素原子を含有するハロゲン化有機化合物である。挙げられ得る例は、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエンおよびクロロホルムである。溶媒の混合物も用いられ得る。
【0059】
担持の間に用いられる所定のパラメータ、特に、用いられる第VIII族金属(単数種または複数種)の前駆体の性質が、主にマトリクス上または改変ゼオライト上への前記金属(単数種または複数種)の担持に向かうように制御され得る。第VIII族金属(単数種または複数種)、好ましくは白金および/またはパラジウムを、主にマトリクス上に導入するために、塩酸等の競争剤の存在下にヘキサクロロ白金酸および/またはヘキサクロロパラジウム酸との陰イオン交換を行うことが可能であり、担持の次に、一般的には、例えば350〜550℃の温度での1〜4時間の期間にわたる焼成が行われる。このような前駆体により、第VIII族金属(単数種または複数種)は、主にマトリクス上に担持させられ、前記金属(単数種または複数種)は十分に分散させられ、触媒粒子を通じて良好な巨視的分配を有する。
【0060】
第VIII族金属(単数種または複数種)、好ましくは白金および/またはパラジウムを、前記金属(単数種または複数種)が主に改変ゼオライト上に担持させられるように陽イオン交換によって担持させることを想定することも可能である。それ故に、白金の場合、前駆体は、例えば、以下から選択され得る:
・アンモニア性の化合物、例えば、式Pt(NHを有する白金(II)テトラミン塩、式Pt(NHを有する白金(IV)ヘキサミン塩、式(PtX(NH)Xを有する白金(IV)ハロゲノペンタミン塩、式PtX(NHを有する白金 N−テトラハロゲノジアミン塩等;および
・式H(Pt(acac)X)を有するハロゲン化された化合物
(式中、Xは、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素によって形成される群から選択されるハロゲンであり、Xは、好ましくは塩素であり、「acac」は、アセチルアセトンから誘導されるアセチルアセトナート基(実験式Cを有する)を示す)。このような前駆体により、第VIII族金属(単数種または複数種)は、主にゼオライト上に担持させられ、前記金属(単数種または複数種)は、触媒粒子を通じて良好な巨視的分配で十分に分散させられる。
【0061】
第VIII族金属のゼオライト担体上への乾式含浸により、前記金属は、マトリクス上および改変ゼオライト上の両方に担持させられる。
【0062】
本発明の触媒が第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される少なくとも1種の金属も含有する場合、当業者に知られるこのような金属を担持させるためのあらゆる技術およびこのような金属のためのあらゆる前駆体が適している。
【0063】
第VIII族金属(単数種または複数種)および第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属(単数種または複数種)は、少なくとも1つの単位工程において別々にまたは同時に加えられ得る。第IIIA、IVAおよびVIIB族からの少なくとも1種の金属が別々に加えられる場合、第VIII族金属の後にそれが加えられるべきことが好ましい。
【0064】
第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択されるさらなる金属は、例えば第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属の塩化物、臭化物または硝酸塩等の化合物を介して導入され得る。例として、インジウムの場合、硝酸塩または塩化物が有利には用いられ、レニウムの場合、過レニウム酸が有利には用いられる。第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択されるさらなる金属はまた、前記金属の錯体(特に金属のポリケトン錯体)およびヒドロカルビル金属(例えば、金属のアルキル化物、シクロアルキル物、アリール化物、アルキルアリール化物またはアリールアルキル化物)によって構成される群から選択される少なくとも1種の有機化合物の形態で導入され得る。この後者の場合、金属は、有利には、前記金属の有機金属化合物の有機溶媒溶液を用いて導入される。金属の有機ハロゲン化化合物を用いることも可能である。挙げられ得る金属の有機化合物の特定の例は、スズの場合にはテトラブチルスズ、インジウムの場合にはトリフェニルインジウムである。
【0065】
第VIII族金属の前に第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択されるさらなる金属が導入されるならば、用いられる金属IIIA、IVAおよび/またはVIIBの化合物は、一般的に、金属のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、炭酸塩およびシュウ酸塩によって構成される群から選択される。それ故に、導入は、有利には、水溶液中で行われる。しかしながら、それはまた、金属の有機金属化合物、例えばテトラブチルスズの溶液を用いて導入され得る。この場合、第VIII族からの少なくとも1種の金属を導入する前に、空気中の焼成が行われる。
【0066】
さらに、焼成および/または還元等の中間的な処理が、種々の金属の連続的担持の合間に行われ得る。
【0067】
前記第1の実施形態による触媒の調製は、一般的に、焼成によって終了する。この焼成は、通常、250〜600℃の温度で、0.5〜10時間の期間にわたり行われ、好ましくは、室温から250℃までの、好ましくは40〜200℃の温度での乾燥(例えばオーブン乾燥)によって先行される。前記乾燥工程は、好ましくは、前記焼成を行うために必要な昇温工程の間に行われる。触媒の従前の還元は、現場外(ex situ)で、水素の流れ中、例えば、450〜600℃の温度で、0.5〜4時間の期間にわたって行われ得る。
【0068】
本発明の触媒の調製の第2の実施形態によると、工程a2)において得られた合成された際のEU−1ゼオライトは、次いで、前記工程b2)に従ってマトリクスを用いて成形されて、ゼオライト担体が調製される。合成された際のEU−1ゼオライトは、好ましくは、焼成され、次いで、交換され、その後に、マトリクス、好ましくはアルミナを用いて成形される。しかしながら、工程b2)の成形は、合成された際のEU−1ゼオライトを用いることによって直接的に行われ得、次いで、焼成およびイオン交換は、成形されたゼオライトについて行われる。合成された際のゼオライトは、乾燥空気の流れ中400〜600℃の温度で焼成される。焼成期間は変動し得、数時間から数日までの範囲である。前記工程b2)の前またはこれの後の前記工程a2)からの前記EU−1ゼオライト焼成処理は、ゼオライトのミクロ孔中に存在する有機テンプレート、例えば、カチオンR−N−(CH−N−R、好ましくは1,6−N,N,N,N’,N’,N’,−ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムを除去することを目的とする。乾燥空気の流れ中での焼成後に、合成された際の形態のゼオライトにおける陽イオン位置中に存在し得るアルカリカチオン、特にナトリウムを少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に除去するために、少なくとも1種のNHNO溶液を用いる1回以上のイオン交換工程が行われる。各交換は、好ましくは50〜150℃の温度で、有利には2〜10時間の期間にわたって行われる。一般的に、7〜12Nの規定度を有する硝酸アンモニウムNHNOの水溶液が用いられる。
【0069】
前記工程b2)を行うために用いられるマトリクスは、本発明の触媒の調製のための第1の実施形態の工程c1)を行うために記載されたものから選択される。同様に、前記工程b2)は、本発明の触媒の調製のための第1の実施形態の工程c1)を行うために記載されたのと同一の手順(混合、押出、乾燥、次いで、焼成)を用いて、類似の操作条件下に行われる。有利には、マトリクスと関連するEU−1ゼオライトは、ビーズ状または押出物状、好ましくは押出物状に成形され、本発明の触媒のゼオライト担体を構成する。
【0070】
前記工程b2)の終了時に得られたゼオライト担体は、ゼオライト骨格がまだ改変されていないEU−1ゼオライトを含有する。前記担体は、次いで、前記工程c2)による水蒸気の存在下に行われる少なくとも1回の熱処理を経て、前記ゼオライト担体中のEU−1ゼオライトは、前記ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超、好ましくは22重量%超、より好ましくは25重量%超、一層より好ましくは30重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有するようになる。
【0071】
有利には、ゼオライト担体が経る水蒸気の存在下での熱処理は、200〜470℃、好ましくは320〜460℃の温度で行われる。前記熱処理は、一般的には0.5時間以上、好ましくは0.5〜24時間、非常に好ましくは1〜12時間続く。熱処理の間の水蒸気の容積百分率は、一般的には5〜100%、好ましくは20〜100%、一層より好ましくは40〜100%である。存在し得る水蒸気以外の容積部分は、空気によって形成される。水蒸気および場合による空気によって形成されるガスの流量は、0.2〜10L/h/g(ゼオライト担体)である。水蒸気の存在下での熱処理は、所望の特徴、特に、前記ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する改変EU−1ゼオライトを得るために必要なだけ多数回繰り返され得る。前記工程c2)における熱処理の数は、好ましくは4回未満であり、有利には、前記工程c2)において単回の熱処理が行われる。
【0072】
本発明の触媒の調製の第2の実施形態によると、前記工程c2)の終了時に得られるゼオライト担体に含まれるEU−1ゼオライトは改変させられる。触媒の調製は、前記工程d2)により第VIII族からの少なくとも1種の金属および場合による元素周期律表の第IIIA、IVA、VIIB族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を前記ゼオライト担体上に担持させることによって続けられる。単数種または複数種の第VIII族金属および場合による第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される単数種または複数種の金属は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態において前記工程d1)を行うために上記に記載された金属のリストから選択される。単数種または複数種の第VIII族金属の前駆体は、前記工程d1)を行うために上記に記載された前駆体に類似する。単数種または複数種の前記第VIII族金属は、ゼオライト担体上、すなわち、陽イオン交換によって主として改変ゼオライト上、または陰イオン交換によって主としてマトリクス上、または乾式含浸によって改変ゼオライト−マトリクス集合体上に導入される。これらの技術のいずれかを行うための手順は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の前記工程d1)を行うために上記に記載された手順に類似する。触媒が第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含む場合、これらの金属および第IIIA、IVAおよびVIIB族からの前記金属の前駆体を導入するための技術は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の前記工程d1)を行うために上記に既に記載された技術である。
【0073】
上記に記載された前記第2の実施形態による触媒の調製は、一般的に、焼成することによって終了する。この焼成は、通常は250〜600℃の温度で、0.5〜10時間の期間にわたって行われ、好ましくは、乾燥が先行して行われ、この乾燥は、例えば、オーブン乾燥であり、室温から250℃までの温度、好ましくは40〜200℃で行われる。前記乾燥工程は、好ましくは、前記焼成を行うために必要な昇温の間に行われる。触媒の従前の還元は、現場外で水素の流れの中で、例えば450〜600℃の温度で、0.5〜4時間の期間にわたって行われ得る。
【0074】
本発明の触媒の調製の第3の実施形態によると、工程a3)において得られる合成された際のEU−1ゼオライトは、次いで、工程b3)によりマトリクスを用いて成形されてゼオライト担体が調製される。合成された際のEU−1ゼオライトは、好ましくは、焼成され、次いで、交換され、その後に、マトリクス、好ましくはアルミナを用いて成形される。しかしながら、工程b3)の成形は、合成された際のEU−1ゼオライトを用いて直接的に行われ得、焼成、次いで、イオン交換は、本発明の触媒の調製の第2の実施形態の実施のために記載されたように成形されたゼオライトについて行われる。工程a3)において調製されたEU−1ゼオライトのミクロ孔中に存在する有機テンプレートを除去するために行われる焼成、次いで、イオン交換は、本発明の触媒の調製の前記第1の実施形態を行うために記載された条件に類似する条件下に行われる。用いられるマトリクス、好ましくはアルミナおよび成形を実施するための手順(混合、押出、乾燥および焼成)は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の工程c1)を行うために記載されたものに類似する。マトリクスと関連するEU−1ゼオライトは、有利にはビーズ状または押出物状に、非常に有利には押出物の形態に成形され、触媒のゼオライト担体を構成する。本発明の第3の実施形態による触媒の調製は、少なくとも1種の第VIII族金属および場合による元素周期律表の第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を、前記工程c3)からの前記ゼオライト担体上に担持させることによって続けられる。単数種または複数種の第VIII族金属および場合による第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される単数種または複数種の金属は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の前記工程d1)を行うために上記に記載された金属のリストから選択される。好ましくは、第VIII族金属は白金である。第VIII族からの単数種または複数種の金属の前駆体は、前記工程d1)を行うために上記に記載されたものに類似する。単数種または複数種の前記第VIII族金属は、ゼオライト担体上、すなわち、陽イオン交換によって主としてゼオライト上に、または、陽イオン交換によって主としてマトリクス上に、または、乾式含浸によって主としてゼオライト−マトリクス集合体上に導入される。これらの担持技術のいずれかを行うための手順は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の前記工程d1)を行うために上記に記載された手順に類似する。触媒が第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属から選択される少なくとも1種の金属を含む場合、これらの金属および第IIIA、IVAおよびVIIB族からの前記金属の前駆体を導入するための技術は、本発明の触媒の調製の第1の実施形態の前記工程d1)を行うために上記に既に記載された技術である。得られた触媒は焼成され、この焼成は、通常は、250〜600℃の温度で、0.5〜10時間の期間にわたって、好ましくは、乾燥させられた後に行われる。この乾燥は、例えばオーブン中、室温から250℃までの温度、好ましくは40〜200℃で行われる。前記乾燥工程は、好ましくは、前記焼成工程を行うために必要な昇温の間に行われる。場合によっては、触媒の従前の還元は、現場外で、水素の流れの中、例えば、450〜600℃の温度で、0.5〜4時間の期間にわたって行われ得、前記還元工程は、工程c3)において得られた触媒の焼成の後に行われる。
【0075】
前記工程c3)の終了時に、前記第3の実施形態を用いて調製された触媒は、少なくとも1種のマトリクス、好ましくはアルミナと、第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくは白金と、少なくとも1種のEU−1ゼオライトとを含む。EU−1ゼオライトのゼオライト骨格は、前記工程d3)の間に、前記工程c3)の終了時に得られた触媒を水蒸気の存在下での熱処理に付すことによって、格子外の六配位アルミニウム原子が最終触媒中のEU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示すように改変される。有利には、水蒸気の存在下での熱処理は、200〜470℃、好ましくは320〜460℃の温度で行われる。前記熱処理の継続期間は、一般的に0.5時間以上、好ましくは0.5〜24時間、非常に好ましくは1〜12時間である。熱処理の間の水蒸気の容積百分率は、一般的には5〜100%、好ましくは20〜100%、より好ましくは40〜100%である。存在し得る水蒸気以外の容積部分は、空気によって形成される。水蒸気および場合による空気によって形成されるガスの流量は、0.2〜10L/h/g(固体)である。水蒸気の存在下での熱処理は、所望の特徴、特に、前記ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する改変EU−1ゼオライトを得るために必要なだけ多数回繰り返され得る。工程d3)による熱処理の数は、好ましくは4回未満であり、有利には、前記工程d3)において単回の熱処理工程が行われる。
【0076】
本発明の触媒を調製するために、前記第1の実施形態および第3の実施形態が好適である。非常に好ましくは、本発明の触媒は、前記第3の実施形態を行うことによって生じさせられる。本発明の触媒の調製のための前記第3の実施形態は、熱処理工程d3)が現場(in situ)で行われる場合、すなわち、前記工程c3)の終了時に得られる触媒が、炭化水素供給材料の転換を行う触媒反応器、特に、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の芳香族化合物を含有する芳香族供給材料の異性化を行う反応器に導入される場合に、特に有利である。本発明の触媒中のEU−1ゼオライトは、それ故に、現場で改変される。前記工程d3)が現場で行われる場合、一般的に、前記工程d3)の次に、触媒の乾燥が行われ、この乾燥は、好ましくは100〜300℃の温度で行われ、この乾燥の次に、好ましくは、水素の流れ中での還元が行われ、有利には、この還元の次に、上記に記載された条件下に行われる硫化が行われる。
【0077】
本発明の触媒を調製するために用いられる実施に関係なく、最終触媒の従前の還元は、現場外で水素の流れの中、450〜600℃の温度で、0.5〜4時間の期間にわたって行われ得る。
【0078】
触媒が硫黄を全く含有しない場合、水素中の金属の還元は、供給材料を注入する前に現場で行われる。
【0079】
本発明の触媒が硫黄を含有する場合、硫黄は、触媒上に、触媒反応前に現場でまたは現場外で導入される。この触媒は、成形および焼成がなされ、上記の単数種または複数種の金属を含有するものである。還元後にあらゆる硫化が行われる。現場硫化の場合、触媒がまだ還元されていないならば、還元が行われた後に硫化が行われる。現場外硫化の場合、還元が行われた後に硫化が行われる。硫化は、水素の存在下に、当業者に周知である任意の硫化剤、例えば、二硫化ジメチルまたは硫化水素を用いて行われる。例として、触媒は、水素の存在下に二硫化ジメチルを含有する供給材料により、硫黄/金属の原子比が1.5であるような濃度で処理される。触媒は、次いで、約3時間にわたって400℃で水素の流れ中で維持され、その後に供給材料が注入される。
【0080】
本発明はまた、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の芳香族化合物を含有する留分を異性化する方法であって、前記芳香族留分を、本発明による少なくとも前記触媒と触媒反応器において接触させる工程を包含する方法に関連する。特に、1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の芳香族化合物を含有する前記芳香族留分は、キシレン類の混合物のみ、または、エチルベンゼンのみ、またはキシレン類とエチルベンゼンの混合物のいずれかを含む。本発明の前記異性化方法は、一般的には、以下の操作条件下に行われる:
・温度:300〜500℃、好ましくは320〜450℃、より好ましくは340〜430℃;
・水素分圧:0.3〜1.5MPa、好ましくは0.4〜1.2MPa、より好ましくは0.7〜1.2MPa;
・全圧:0.45〜1.9MPa、好ましくは0.6〜1.5MPa;および
・毎時の触媒の重量(kg)当たり、かつ、時間当たり導入される供給材料の重量(kg)で表される空間速度:0.25〜30h−1、好ましくは1〜10h−1、より好ましくは2〜6h−1
【0081】
本発明の異性化方法によると、前記方法を行うために用いられる触媒は、前記触媒に含まれるEU−1ゼオライトが本発明により既に改変されている時またはそれがまだ改変されていない時のいずれかに触媒反応器に導入され得る。後者の場合、EU−1ゼオライトのゼオライト骨格の改変は、少なくとも1種のマトリクス、好ましくはアルミナと、少なくとも1種の第VIII族金属、好ましくは白金と、少なくとも1種のEU−1ゼオライトであって、多くとも90重量%のアルミニウム原子が四配位アルミニウム原子であるものとを含む触媒が触媒反応器に導入される時に行われる。反応器中に装填された触媒中に存在するEU−1ゼオライトを改変するために行われる、水蒸気の存在下での熱処理は、本発明の触媒を、異性化されるべき芳香族留分と接触させる前に行われる。水蒸気の存在下での熱処理は、それ故に、現場で、場合によっては空気が補給される水蒸気の流れを、触媒反応器中に、そこに存在し、まだ改変されていないEU−1ゼオライトを含む触媒上に通すことによって行われる。触媒中に存在するEU−1ゼオライトは、水蒸気の存在下での熱処理によって改変され、前記処理は、現場で、本発明の触媒を、異性化されるべき芳香族留分と接触させる前に行われる。現場で行われる場合、水蒸気の存在下での前記熱処理は、触媒の調製の第1の実施形態において水蒸気の存在下での熱処理を行うために上記に記載された操作条件と同一の操作条件下に行われ、前記処理が現場外で行われる場合には、触媒の調製のための第2の実施形態または第3の実施形態において水蒸気の存在下での熱処理を行うために上記に記載された操作条件と同一の操作条件下に行われる。現場で行われる水蒸気の存在下での前記熱処理の次に、好ましくは、触媒の乾燥が行われ、この乾燥は、好ましくは100〜300℃の温度で行われ、この乾燥の次には、好ましくは、水素の流れ中の還元が行われ、この還元の次には、場合によっては、硫化が行われる。
【0082】
以下の実施例は、本発明の範囲を決して制限することなく本発明を例示する。
【0083】
四配位アルミニウム原子および六配位アルミニウム原子の特徴付けおよび定量化をすることできるMAS−NMR分析のために、27Alについて最適化された4mmのプローブによるアバンス型ブルカー400MHz分光計が用いられた。分析された各サンプルの回転速度は、14kHz近傍であった。アルミニウム原子は、5/2のスピンを有する四極核である。分析条件は、以下の通りであった:30kHzの無線周波数電磁場、π/2のパルス角および分析されるサンプルの水飽和。各MAS−NMRスペクトルは、アルミニウムのシグナルが0ppmであった硝酸アルミニウムの1M溶液に対する化学置換について換算された。
【0084】
(実施例1(本発明に合致しない):EU−1ゼオライトの調製)
用いられた出発材料は、合成された際のEU−1ゼオライトであって、有機テンプレート、すなわち、1,6−N,N,N,N’,N’,N’,−ヘキサメチルヘキサンメチレンジアンモニウムを含むものであり、これは、15.3の全体Si/Al原子比および30.8のNa/Al原子比(%として)に対応するナトリウムの重量含有量を有していた。このEU−1ゼオライトは、EP-B1-0 042 226の教示に従って合成された。そのようなゼオライトを調製するために、反応混合物は、以下のモル組成を有していた:60SiO:10.6NaO:5.27NaBr:1.5Al:19.5Hexa−Br:2777HO。Hexa−Brは、1,6−N,N,N,N’,N’,N’,−ヘキサメチルヘキサメチレンジアンモニウムであり、臭素は対イオンであった。反応混合物は、攪拌されるオートクレーブ(300rpm)中に5日間にわたって180℃で置かれた。
【0085】
このEU−1ゼオライトは、最初に、550℃で乾燥空気の流れ中、10時間にわたる乾式焼成を経て、有機テンプレートが除去された。次に、得られた固体は、4回のイオン交換を経た。イオン交換は、各交換について10NのNHNO溶液中、約100℃で4時間にわたって行われた。得られた固体は、EU−1(1)と表記され、15.3のSi/Al原子比および0.51%のNa/Al比を有していた。
【0086】
このゼオライトのMAS−NMR分析は、前記EU−1(1)ゼオライト中に存在する四配位アルミニウム原子の重量百分率が算出されることを可能にした:それは、100%であった。六配位アルミニウム原子は、MAS−NMRスペクトル中に認められ得なかった。
【0087】
(実施例2(本発明に合致する):改変EU−1ゼオライトの調製)
実施例1において得られたEU−1(1)ゼオライトが炉内に置かれ、その炉内では、それは、水熱処理を経た:50容積%の水蒸気および50容積%の空気によって構成されるガス流が、450℃で2時間にわたってゼオライト上に流された。ガスの流量は、1L/h/g(ゼオライト)であった。
【0088】
この水熱処理の終了時に、改変EU−1ゼオライトが得られ、これは、EU−1(2)と表記され、水素型であった。前記EU−1(2)ゼオライトは、EU−1(1)ゼオライトの全体Si/Al原子比に等しい全体Si/Al原子比、すなわち15.3を有していた。前記EU−1(2)ゼオライトは、MAS−NMRによって分析された:MAS−NMRスペクトルより、改変EU−1(2)ゼオライト中に存在する23重量%のアルミニウム原子は六配位アルミニウム原子であり、改変EU−1(2)ゼオライト中に存在する77重量%のアルミニウム原子は四配位アルミニウム原子であることが示された。
【0089】
(実施例3(本発明に合致する):改変EU−1ゼオライトの調製)
実施例1において得られたEU−1(1)ゼオライトが炉内に置かれた。この炉内で、それは、水熱処理を経た:50容積%の水蒸気および50容積%の空気によって構成されるガス流れが、350℃で8時間にわたって前記ゼオライト上に流された。水蒸気の流量は、1L/h/g(ゼオライト)であった。
【0090】
この水熱処理の終了時に、改変EU−1ゼオライトが得られ、これは、EU−1(3)と表記され、水素型であった。前記EU−1(3)ゼオライトは、EU−1(1)ゼオライトの全体Si/Al原子比に等しい全体Si/Al原子比、すなわち15.3を有していた。前記EU−1(3)ゼオライトは、MAS−NMRによって分析された:MAS−NMRスペクトルにより、改変EU−1(3)ゼオライト中に存在する46重量%のアルミニウム原子は六配位アルミニウム原子であり、改変EU−1(3)ゼオライト中に存在する54重量%のアルミニウム原子は四配位アルミニウム原子であることが示された。
【0091】
(実施例4(本発明に合致しない):未改変EU−1ゼオライトを含む触媒Aの調製)
実施例1において得られたEU−1(1)ゼオライトが、次いで、アルミナゲルを用いた押出によって成形され、100℃の温度での終夜乾燥および450℃の温度に導かれた乾燥空気中での4時間にわたる焼成の後に、担体S1が得られた。この担体S1は、10重量%のEU−1ゼオライトおよび90重量%のアルミナを含有していた。
【0092】
この担体S1は、競争剤としての塩酸の存在下にヘキサクロロ白金酸との陰イオン交換を経て、触媒の重量に対して0.5重量%の白金が担持させられた。湿気の有る固体は、次いで、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れ中500℃の温度で1時間にわたって焼成された。
【0093】
得られた触媒Aは、10重量%のEU−1ゼオライト、89.5重量%のアルミナおよび0.5重量%の白金を含有していた。
【0094】
(実施例5(本発明に合致する):改変EU−1ゼオライトを含む触媒Bの調製)
実施例2において得られたEU−1(2)ゼオライトが、次いで、アルミナゲルを用いた押出によって成形され、100℃の温度での終夜乾燥および450℃の温度に導かれた乾燥空気中の4時間にわたる焼成後に、担体S2が得られた。この担体S2は、10重量%の改変EU−1ゼオライトおよび90重量%のアルミナを含有していた。
【0095】
この担体S2は、競争剤としての塩酸の存在下にヘキサクロロ白金酸との陰イオン交換を経、触媒の重量に対して0.5重量%の白金が担持させられた。湿気の有る固体は、次いで、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れ中500℃の温度で1時間にわたって焼成された。
【0096】
得られた触媒Bは、10重量%の改変EU−1ゼオライト、89.5重量%のアルミナおよび0.5重量%の白金を含有していた。
【0097】
(実施例6(本発明に合致する):改変EU−1ゼオライトを含む触媒Cの調製)
実施例3において得られたEU−1(3)ゼオライトが、次いで、アルミナゲルを用いた押出によって成形され、100℃の温度での終夜乾燥および450℃の温度に導かれた乾燥空気中での4時間にわたる焼成の後に、担体S3が得られた。この担体S3は、10重量%の改変EU−1ゼオライトおよび90重量%のアルミナを含有していた。
【0098】
この担体S3は、競争剤としての塩酸の存在下にヘキサクロロ白金酸との陰イオン交換を経て、触媒の重量に対して0.5重量%の白金が担持させられた。湿気の有る固体は、次いで、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れ中500℃の温度で1時間にわたって焼成された。
【0099】
得られた触媒Cは、10重量%の改変EU−1ゼオライト、89.5重量%のアルミナおよび0.5重量%の白金を含有していた。
【0100】
(実施例7:エチルベンゼンの異性化についての触媒A、B、およびCの触媒性能の評価)
触媒A、触媒B、および触媒Cと接触させられる、異性化されるべき供給材料は、エチルベンゼンのみによって構成されていた。
【0101】
異性化反応のための操作条件は次の通りであった:
・ 温度:410℃;
・ 全圧:10バール(1バール=0.1MPa);
・ 水素分圧:8バール;
・ 供給材料:エチルベンゼン;
毎時の触媒の重量(kg)当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される空間速度:8.7h−1
【0102】
触媒A、BおよびCの触媒性能は、エチルベンゼンの異性化について連続して評価された。各触媒は、供給材料を注入する前に水素中4時間にわたって480℃で還元された。
【0103】
触媒は、エチルベンゼンの転化率およびキシレン選択性に関して評価された。
【0104】
キシレン類についての選択性は、生じたキシレン類の収率を用いて算出された。キシレン類の収率は、各流出物の分析によって得られた、生じたキシレン類の重量百分率(重量%)から決定された。
【0105】
エチルベンゼンの転化率は、消費したエチルベンゼンの百分率であった。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示される結果により、それぞれ改変EU−1ゼオライトを含み、格子外六配位アルミニウム原子の数が前記改変ゼオライトのそれぞれ中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示す触媒BおよびCは、エチルベンゼンの転化率の点で、未改変EU−1ゼオライトを含む触媒Aを用いて得られた触媒性能よりはるかに良好な触媒性能を引き出したことが示される。本発明の触媒BおよびCは、それ故に、従来技術の触媒Aより大幅に活性である。
【0108】
さらに、本発明による触媒BおよびCは、触媒Aにより得られたキシレン類の選択性に等しいキシレン類の選択性を引き出した:結果として、本発明による触媒BおよびCは、比較の触媒Aにより得られたキシレン類の収率よりはるかに高いキシレン類の収率を引き出した(キシレン類の収率は、エチルベンゼン転化率およびキシレン類の選択性の成果である)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する少なくとも1種の改変EU−1ゼオライトと、少なくとも1種のマトリクスと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含む触媒であって、
前記改変EU−1ゼオライト中に存在する六配位アルミニウム原子の数は、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の20重量%超を示すことを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記改変EU−1ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の22重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記改変EU−1ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の25重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記改変EU−1ゼオライトは、前記改変EU−1ゼオライト中に存在するアルミニウム原子の総数の30重量%超を示す多数の六配位アルミニウム原子を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記改変EU−1ゼオライトの全体Si/Al原子比は、10〜35である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
前記第VIII族金属は、白金である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
第IIIA、IVAおよびVIIB族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種のさらなる金属を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
硫黄を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
前記マトリクスは、アルミナである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
押出物の形態である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の触媒を調製する方法であって、
a1)全体Si/Al原子比が5〜100である、少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b1)前記工程a1)からのゼオライトを水蒸気の存在下に熱処理して、改変EU−1ゼオライトを得る工程と、
c1)マトリクスを用いて前記改変EU−1ゼオライトを成形して、改変ゼオライトを形成する工程と、
d1)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を担持させる工程とを少なくとも包含し、前記工程c1)およびd1)を行う順番は、前記工程b1)の次であれば特定されない、方法。
【請求項12】
水蒸気の存在下での前記熱処理は、200〜470℃の温度で、0.5〜24時間の期間にわたって行われ、水蒸気の容積百分率は、5〜100%である、請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記工程c1)は、前記工程d1)に先行する、請求項11または12に記載の調製方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の触媒を調製する方法であって、
a2)全体Si/Al原子比が5〜100である少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b2)マトリクスを用いて前記工程a2)からのEU−1ゼオライトを成形して、ゼオライト担体を形成する工程と、
c2)工程b2)において成形されたゼオライト担体を水蒸気の存在下に熱処理する工程と、
d2)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を工程c2)からの改変ゼオライト担体上に担持させる工程と
を少なくとも包含する方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の触媒を調製する方法であって、
a3)全体Si/Al原子比が5〜100である少なくとも1種のEU−1ゼオライトを合成する工程と、
b3)マトリクスを用いて前記工程a3)からのEU−1ゼオライトを成形して、ゼオライト担体を形成する工程と、
c3)元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属を前記工程b3)からのゼオライト担体上に担持させる工程と、
d3)前記工程c3)からの少なくとも前記第VIII族金属を含浸させられたゼオライト担体を水蒸気の存在下に熱処理する工程と
を少なくとも包含する方法。
【請求項16】
1分子当たり8個の炭素原子を含む少なくとも1種の芳香族化合物を含有する留分を異性化する方法であって、前記芳香族留分を、触媒反応器内に存在する請求項1〜10のいずれか1つに記載の改変ゼオライトを含む少なくとも1種の触媒または請求項11〜15のいずれか1つにより調製された触媒と接触させる工程を包含する方法。
【請求項17】
温度:300〜500℃;水素分圧:0.3〜1.5MPa、全圧:0.45〜1.9MPaおよび毎時の触媒の重量(kg)当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される空間速度:0.25〜30h−1の操作条件下に行われる、請求項16に記載の異性化方法。
【請求項18】
前記触媒中に存在するEU−1ゼオライトは、水蒸気の存在下での熱処理によって改変され、該処理は、現場でおよび前記触媒を前記芳香族留分と接触させる前に行われる、請求項16または17に記載の異性化方法。

【公開番号】特開2008−279440(P2008−279440A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112062(P2008−112062)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】