説明

改良されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー及びそれから製造された成形物品

【課題】食品、飲料等の用途で使用でき、従来からの熱成形ラインにおいて容易にリサイクルできる、安価で透明な包装材及び容器を製造できるポリマー組成物を提供する。
【解決手段】a)モノビニリデン芳香族ポリマーマトリックス;b)主としてコア/シェルモルフォロジーをもちそして0.1−1.5ミクロンの体積平均粒子サイズをもつ架橋ゴム粒子として分散しており、ここでゴム粒子の40−90体積%が0.4ミクロンより小さい直径をもちそしてゴム粒子の10−60体積%が0.4と2.5ミクロンの間の直径をもちそしてゴムが15−60wt%のモノビニリデン芳香族モノマーブロックをもつ共役ジエンブロックコポリマーゴムからなる、1.5−8wt%(組成物中の合計ジエン含量基準で)のゴム;及び c)所望により0.1−4wt%の鉱油;からなるゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
変性ゴム又は高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)のようなゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーは多くの用途に適したバランスの良い広範囲の物理的性質を安価で提供することができる。この種のポリマーは、シート材料からの成形及び熱成形を含む種々の方法で製造される、食品及び飲料容器及び包装製品にしばしば用いられている。これらの用途での使用の場合、そのようなポリマーは良好な耐衝撃強度、引っ張り強さ及び透明性を含む特性のバランスが要求される。最近、これらの用途に対する好ましいポリマー樹脂は、一般にはしばしば“K樹脂”と呼ばれるスチレン−ブタジエン(SB)ブロックコポリマーゴムと、通常汎用ポリスチレン又はGPPSと呼ばれる未変性ポリマーマトリックスとのブレンドによって調製される。このブレンド製品は、大部分が共−連続モルフォロジーのポリマーマトリックス中に分散しているゴム成分をもっている。これらのブレンド物は幾つかの熱成形物品において靭性と透明性の十分なバランスを与えるがしかし、特定用途における要求にも依るが、それらのコスト、加工性、リサイクル性、ゲル生成、表面光沢、印刷性及び味/臭いを含む多くの領域において重要且つ重大な欠点をもっていることが見出されてきた。
【0003】
また、ゴム成分が重合プロセスの過程で添加される種々のゴム変性樹脂での熱成形用途に必要とされる靭性、加工性及び透明性のバランスを得るために多くの試みがなされてきた。しばしば塊状重合又は溶液重合と呼ばれているそのようなプロセスにおいては、ゴム成分は溶液中で添加されモノビニリデン芳香族ポリマーとグラフト化する粒子に形成され、プロセスの過程で架橋し、そして種々のタイプの粒子モルフォロジーをもちそしてそこに取り込まれるモノビニリデン芳香族ポリマーの変化量を含む分散粒子として完結する。
【0004】
特許文献1においては、半透明なゴム変性ポリスチレンがスチレンをポリブタジエンと線状ブタジエン−スチレンABブロックコポリマーとを過酸化水素開始剤とメルカプタンの存在下で、高温で重合させて得られ(合計ブタジエン含量は5−50%)、0.02−0.8ミクロンの平均粒子サイズをもつ分散した軟化相(ゴム粒子)を与えそしてノッチ付き耐衝撃強度と半透明性を与えている。
【0005】
特許文献2は、良好な靭性をもつ安価で半透明な包装材料を製造するために使用できる、溶液重合したゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと共役ジエンコポリマーゴムからなるポリマーブレンド物を教示している。これらのブレンド物は、コア/シェルモルフォロジーをもちそして0.1−0.4ミクロンの体積平均粒子サイズをもちそして分散した共役ジエンコポリマーゴムをもった分散粒子からなる。
【0006】
しかしながら、熱成形用途に成功裡に使用するためには靭性、透明性及び加工性の組み合わせが改良された樹脂が常に要求されている。
【0007】
【特許文献1】EP167,707
【特許文献2】USP6,221,471
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、食品、飲料及びその他の用途で使用でき、そして従来からの熱成形ラインにおいて容易にリサイクルできる、安価で透明な包装材及び容器を製造することのできるポリマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、a)モノビニリデン芳香族ポリマーマトリックス;b)主としてコア/シェルモルフォロジーをもちそして0.1−1.5ミクロンの体積平均粒子サイズをもつ架橋ゴム粒子として分散しており、ここでゴム粒子の40−90体積%が0.4ミクロンより小さい直径をもちそしてゴム粒子の10−60体積%が0.4と2.5ミクロンの間の直径をもちそしてゴムが15−60wt%のモノビニリデン芳香族モノマーブロックをもつ共役ジエンブロックコポリマーゴムからなる、1.5−8wt%(組成物中の合計ジエン含量基準で)のゴム;及び c)所望により0.1−4wt%の鉱油;からなるゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物である。
【0010】
他の態様においては、本発明に従った組成物は、2−6wt%のゴム、少なくとも80%がコア/シェルモルフォロジーをもちそして0.2−1ミクロンの体積平均粒子サイズをもつゴム粒子からなる。さらなる態様の本発明に従った組成物においては、ゴム粒子の50−80体積%が0.4ミクロンより小さい直径をもちそしてゴム粒子の20−50体積%が0.4から1.2ミクロンの直径をもち、そしてゴムが共役ジエンブロックコポリマーゴムと2−25wt%の共役ジエンホモポリマーゴムからなるブレンド物である。
【0011】
本発明はまた合計ゴム粒子の少なくとも90%がコア/シェルモルフォロジーをもちそしてゴム粒子の体積平均粒子サイズが0.2−0.6ミクロンであるポリマー組成物を含む。
【0012】
さらに好ましい態様においては、本発明は、本ポリマー組成物から熱成形で製造するのに適した、そして望ましくは4.5mmまでの厚みをもつシートであり、同様に望ましくは0.25mmまでの厚みをもつ本ポリマー組成物から製造されるフィルムである。
【0013】
改良された熱成形物品及び熱成形方法もまた提供される。特定の態様においては、本発明は、a)成型キャビティー上に請求項1記載の樹脂からなる加熱したシートを置き;
【0014】
b)空気圧及び/又は真空で成型キャビティー中に軟化したシート材料を延伸/引き抜きし及び/又は型成形して成形物品の形状を与えそしてシートから物品を切断し;c)成形型から熱成形した物品を取り出し;d)残ったシート材料を追加量の請求項1記載のポリマーと共にシート形態として熱成形プロセスにリサイクルする;
諸工程からなる改良された熱成形方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の新規なポリマー組成物は、安価で、靭性があり、透明性のある、食品、飲料及びその他のマーケット用の包装システム又は容器を製造するための、従来からの熱成形用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
モノビニリデン芳香族ホモポリマー及びコポリマー(集合的に“ポリマー”又は“(コ)ポリマー”と呼ぶ)は特許文献3、4、5、これらはここでは参照として取り込まれている、に記載されているように、モノビニリデン芳香族モノマーを重合することによって製造される。ゴム上へのグラフト重合及びコポリマーゴム成分中への共重合で使用するのに好適なマトリックスポリマー成分中のモノビニリデン芳香族モノマーは好ましくは次式のものである:Ar−C(R’)=CH
【0017】
ここで、R’は水素又はメチル、Arはアルキル、ハロ、又はハロアルキルで置換されていてもいなくてもよい1から3の芳香族環をもつ芳香族環構造であり、ここでアルキル基は1から6の炭素原子を含み、ハロアルキルはハロ置換アルキル基を意味する。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルはアルキル置換フェニル基を意味し、フェニルが最も好ましい。使用できる典型的なビニル芳香族モノマーとしてはスチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエン特にパラビニルトルエンの全ての異性体、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン及びその類似物の全ての異性体、及びこれらの混合物を包含するが、スチレンが最も好ましい。マトリックスポリマー成分中で使用するのに好適なモノビニリデン芳香族モノマーは他の共重合可能なモノマーの一つ以上の30wt%を超えない少量と共重合させてもよい。好ましいモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル及びフマロニトリルのようなニトリルモノマー;メチルメタアクリレート又はn−ブチルアクリレートのような(メタ)アクリレートモノマー;無水マレイン酸及び/又はN−フェニルマレイミドのようなN−アリールマレイミドを包含する。もしコポリマーを使用するなら、好ましいコポリマーは共重合可能なモノマーの重量基準で少なくとも80、好ましくは少なくとも90wt%のモノビニリデン芳香族モノマーを含む。
【0018】
本発明に従った樹脂組成物中のモノビニリデン芳香族ポリマーマトリックス成分は典型的には、加工性や組成物中の機械的性質の要求レベルを満たすために十分高い重量平均分子量(Mw)、典型的には少なくとも100,000、好ましくは少なくとも120,000、より好ましくは少なくとも130,000そして最も好ましくは少なくとも140,000g/モル(g/mol)のMwをもつ。
【0019】
本発明に従った樹脂組成物中のモノビニリデン芳香族ポリマーマ成分は典型的には、十分な加工性を与えるために260,000以下、好ましくは250,000以下、より好ましくは240,000以下そして最も好ましくは230,000g/モル(g/mol)以下のMwをもつ。
【0020】
本発明に従った樹脂組成物中のモノビニリデン芳香族ポリマー成分は典型的には少なくとも30,000、好ましくは少なくとも40,000、より好ましくは少なくとも50,000そして最も好ましくは少なくとも60,000g/モル(g/mol)の数平均分子量Mnをもつ。
【0021】
本発明に従った樹脂組成物中のモノビニリデン芳香族ポリマーマ成分は典型的には、130,000以下、好ましくは120,000以下、より好ましくは110,000以下そして最も好ましくは100,000g/モル(g/mol)以下のMnをもつ。
【0022】
Mw及びMnに対するこれらの値に加えて、Mw/Mnの比は、多分散性又は分子量分布と呼ばれることもある、は望ましくは少なくとも2、好ましくは2.3以上で4以下、好ましくは3以下であるべきである。ここで使用されるとき、モノビニリデン芳香族ポリマーに対する用語Mw及びMnは、較正のためのポリスチレン標準を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決定される重量及び数平均分子量を意味する。
【0023】
本発明のゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー又はコポリマーに使用されるゴムは、共役ジエンコポリマーゴム又はさらにゴム状共役ジエンホモポリマーの少量からなるブレンド物である。両者のゴム中の共役ジエンは典型的には1,3−アルカジエン、好ましくはブタジエン及び/又はイソプレン、最も好ましくはブタジエンである。
【0024】
好適な共役ジエンコポリマーゴムはまた公知でそして重量基準で40−90%の共役ジエン、好ましくはブタジエン又はイソプレンのような1,3−アルカジエンモノマー、及びスチレンを含む上記のモノビニリデン芳香族モノマーのような一つ以上のモノエチレン性不飽和コモノマー、及び/又はアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート及びその類似物を含むエチレン性不飽和の共重合可能なモノマー、10−60wt%を重合した形態及びエラストマーポリマーとして含むコポリマーを包含する。好ましいコポリマーゴムは1,3−アルカジエンモノマーを、少なくとも45wt%、好ましくは少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも55wt%そしてより好ましくは少なくとも60wt%そして85wt%を超えない、好ましくは80wt%を超えない1,3−アルカジエンモノマーを含む。同様に、コポリマーゴム中の共重合したモノエチレン性不飽和コモノマーの量は好ましくは少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%そしてより好ましくは少なくとも20wt%そして50wt%を超えない、より好ましくは45wt%を超えないそしてより好ましくは40wt%を超えない。
【0025】
これらのコポリマーゴムは、好ましくはタイプAB、ABA、テーパードAB及びABAのようなブロックコポリマー、及び分岐又はラジアル(AB)及び(ABA)コポリマーを含むカップリング度の異なるコポリマーであり、ここでAは重合したモノビニリデン芳香族単量体化合物で、Bは重合した共役ジエン、そして“n”は2より大きい全体の数を表す。異なったAとBの並び方をもつその他の樹脂状ブロックコポリマーもまた本発明のコポリマーゴムとして使用可能である。好ましい型はジブロックゴム(AB型)であるが、ABA又はABAとABの混合物もまた使用できる。
【0026】
Aブロックとしては重合したスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−エチルスチレン、3−エチルスチレン、2−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及びビニルナフタレンのような縮合した芳香族及びそれらの混合物であることができる。現在最も好ましいものはスチレンである。ゴム状Bブロックとしてはポリブタジエン、ポリペンタジエン、ランダム又はテーパードモノビニリデン芳香族/共役ジエンコポリマーブロック、ポリイソプレン、ランダム又はテーパードモノビニリデン芳香族−イソプレンコポリマーブロック、又はそれらの混合物であることができる。現在最も好ましいものはブタジエン及び/又はイソプレンである。
【0027】
好ましいコポリマーゴムは、少なくとも100,000、好ましくは少なくとも150,000g/モルのMwをもちそして350,000以下、好ましくは300,000以下、より好ましくは250,000g/モル以下のMwをもつ。これ及び他のゴム成分の重量平均分子量は三角光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される。
【0028】
そのようなブロックコポリマー及びそれらの製造方法は文献公知であり、そして非特許文献1に記載されている。それらはまた非特許文献2に記載されている。
本発明に従った組成物で使用される共役ジエンコポリマーゴムは5−100、好ましくは20−80センチポアズ(“cp”)の範囲の溶液粘度;及び少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%そしてより好ましくは少なくとも30%そして99%以下、好ましくは55%以下そしてより好ましくは50%以下のシス含量をもつ。ブナBL6533Tブランドのゴム及び他の類似のゴムが使用するのに好ましい。ここでのそして他の参照との参照及び比較のために、センチポアズの溶液粘度単位はミリパスカル秒(mPa.s)に等価であり、そしてパスカル秒(Pa.s)は10ポアズ又は1000センチポアズに等しい。
【0029】
共役ジエンホモポリマーゴムもまた本発明に従った組成物で有利に使用することができる。使用に適した共役ジエンホモポリマーゴムは、0℃以下、好ましくは−2.0℃以下の二次転移温度をもつことが一般に知られている。好ましくは、それらは20−250、好ましくは80−200センチポアズ(“cp”)の範囲の溶液粘度;及び少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%そしてより好ましくは少なくとも30%そして99%以下、好ましくは55%以下そしてより好ましくは50%以下のシス含量をもつ。好ましくは、それらは100,000−600,000g/モル、好ましくは150,000−500,000g/モル(三角光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される)の重量平均分子量をもつ。これらのポリマーは線状でも分岐型でもよい。ジエン55ブランドのゴム(商標名ファイヤーストーン)及びその他の類似のゴムを使用するのが好ましい。
【0030】
本発明の最終的ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーのゴム含量は、コポリマーゴム成分からジエン含量のみをカウントし、そしてコポリマーゴムの一部である如何なるモノビニリデン又は他の非−ジエンモノマーを含まずにカウントする。低引っ張り速度変形(5mm/分の変形速度における引っ張り強さのような)における機械的強度と靭性及び引っ張り強度試験における特定の破壊時伸びを得るためには、本発明に従ったゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の合計重量基準で典型的には少なくとも1.5wt%、好ましくは少なくとも2.0wt%、より好ましくは少なくとも2.5wt%そして最も好ましくは少なくとも3wt%のゴム含量をもつ。所望の透明性を得るためには、本発明に従ったゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の合計重量基準で典型的には8wt%以下、好ましくは6wt%以下、より好ましくは4.5wt%以下そして最も好ましくは4wt%以下のゴム含量をもつ。
【0031】
共役ジエンホモポリマーゴムの少量は樹脂の機械的特性及び用途における破壊時伸びレベルへの特徴的な到達に寄与することが見出されてきた。この結果を得るために、もし使用するなら、本発明に従った組成物中のゴム成分の共役ジエンホモポリマーゴム含量は、合計ジエン重量基準で、典型的には少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも4wt%、より好ましくは少なくとも6wt%、そして最も好ましくは少なくとも8wt%である。低平均粒子サイズを得るためにそして透明性の不足を避けるために、もし使用するなら、本発明に従った組成物中のゴム成分の共役ジエンホモポリマーゴム含量は、合計ゴム成分の重量基準で、典型的には25wt%以下、好ましくは20wt%以下、より好ましくは16wt%以下、そして最も好ましくは12wt%以下である。
【0032】
ポリマー組成物のメルトフローレートは良好な押し出し及び熱成形の加工性を与えるために必要である。これは典型的には、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3そして最も好ましくは少なくとも4g/10分そして一般的には15以下、好ましくは13以下、より好ましくは12以下そして最も好ましくは10g/10分以下の、ISO−1133により条件G(200℃で5kg)で測定したメルトフローレートが必要である。
【0033】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー又はコポリマーは、予備溶解させたエラストマーの存在下でモノビニリデン芳香族モノマーを重合させる公知の方法、例えば特許文献6及び7(ここでは参照によって取り込まれている)に記載されている方法によって製造される。特に、本発明のブレンド物に使用される好ましいゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー及びその製造方法は特許文献8(ここでは参照によって取り込まれている)に開示されている。
【0034】
共役ジエンコポリマーゴム又は、もし二つのゴムのブレンド物を使用するなら、両者の出発原料は、好ましくはモノビニリデン芳香族モノマー及び/又は所望により工程希釈剤に溶解させ、樹脂組成物の重合のために適した形状の反応器に供給される。好ましくは、ゴム溶液は、連続した温度制御領域をもつ連続撹拌式層流型反応器に供給される。好ましくは、鉱油及び希釈剤もまた反応器に供給される。好ましい態様においては、連鎖移動剤を第一ゾーン又は第一反応器の第一ゾーン又は第二ゾーンに入る前に反応混合物に添加することができる。
【0035】
熱(熱開始)重合条件が好ましいのではあるが、またパーエステル、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジベンゾイルパーオキシド、及びジラウロイルパーオキシド;パーケタール、例えば、1,1−ビスt−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビスt−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;及びジクミルパーオキサイド、及びパーカーボネートを含むパーオキサイド開始剤を含む公知の開始剤から選ばれる重合開始剤の低レベルを使用することも、また光化学的開始技術を使用することも可能である。これらの開始剤は、使用される特定の開始剤、ポリマーグラフトの所望のレベル及び塊状重合が実施される条件を含む種々の因子に依存する濃度範囲で使用される。もし使用するなら、モノマーの100万重量部当たり、50−300、好ましくは100−200重量部の開始剤が使用される。
【0036】
重合の過程で、ゴムは芳香族ポリマーとグラフトしそして粒子中に分散する。この分散した、グラフトゴム粒子は、グラフトしていないゴムポリマー原料の1重量部当たりで、典型的には少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3重量部のモノビニリデン芳香族ポリマーをもち、そして7以下、好ましくは6以下、そしてより好ましくは5重量部以下のそこでグラフトしそこに取り込まれているモノビニリデン芳香族ポリマーをもつ。
【0037】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーマトリックス中に分散しているゴム粒子の大部分、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%はコア/シェルモルフォロジーをもつ必要がある。ここで使用されるときは、用語コア/シェルモルフォロジーは、ゴム粒子が薄い外側シェルをもちそしてポリマーマトリックスの単一の中心吸蔵部を含むことを意味する。この種の粒子モルフォロジーは通常文献では“単一吸蔵”または“カプセル”モルフォロジーと呼ばれる。反対に、用語“もつれ(entanglement)”又は“多孔質(cellular)”モルフォロジーは、種々のその他の、より複雑な文献公知のそして“もつれている(entangled)”、“多重吸蔵(multiple occlusions)”、“ラビリンス”、“コイル”、“タマネギ肌”又は“集合円(concentric circle)”として記載されている構造をもつゴム粒子モルフォロジーを意味する。ここで使用するとき、コア/シェルゴム粒子%は、透過電子顕微鏡写真(TEM)中の500粒子をカウントしたときのコア/シェルゴム粒子数の%である。
【0038】
本発明に従った組成物中のコア/シェルゴム粒子は、典型的には少なくとも0.01ミクロン、好ましくは少なくとも0.1ミクロンそしてより好ましくは少なくとも0.3ミクロンそして典型的には2.0ミクロン以下、好ましくは1.5ミクロン以下そしてより好ましくは1ミクロン以下、そして最も好ましくは0.6ミクロン以下の体積平均サイズをもつ。この範囲の平均粒子サイズをもつことに加えて、大部分の粒子が小さくそして大きい粒子は限定された量のみである、比較的広い(ブロードな)粒子サイズ分布を得ることが重要であることが見出されてきた。特に、粒子の40−90体積%が0.4ミクロン以下の直径をもつような分布が望ましいことが見出されてきた。これに対応して、粒子の10−60体積%が0.4ミクロンより大きく2.5ミクロンより小さい直径をもち、好ましくは粒子の15−55体積%そしてより好ましくは20−50体積%が0.5ミクロン以上で2.5ミクロン以下の直径をもつような分布が望ましいことが見出されてきた。好ましくは、この比較的大きな粒子成分の場合は、粒子の特定%量が2ミクロンより小さい、より好ましくは1.5ミクロン以下、そしてより好ましくは1.2ミクロン以下の直径をもつ。それが避けられない場合は、本発明に従った組成物は、これらの他の粒子モルフォロジータイプのいくつかをもつ幾分大きな粒子の限定量を含んでいてもよいが、これは最終製品の透明性に有害な影響を与えるであろう。
【0039】
ここで使用されるときは、体積平均粒子サイズはゴム粒子内のモノビニリデン芳香族ポリマーの全ての吸蔵を含むゴム粒子の直径を意味する。平均粒子サイズ及びその他の粒子統計及びパーセンテージはベックマンコールター:LS230光散乱計及びソフトウエアによって測定することができる。この用途でのこの装置の使用は製造元の指針や文献及び非特許文献3で議論されている。好ましくは、この装置とソフトウエアを用いて、ゴム粒子サイズと分布統計値を計算するために使用される光学モデルは以下の通りである:(i)流体屈折率1.43、(ii)サンプルの実屈折率1.57、そして(iii)サンプルの仮想屈折率0.01である。
【0040】
本発明の組成物には、鉱油、その他の可塑剤及びその類似物のようなその他の添加剤を含んでいてもよい。例えば、適切な量の鉱油は最終製品の破壊時の伸びをさらに改良することが見出された。本発明に従ったゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の合計重量基準で、典型的には少なくとも0.4wt%、好ましくは少なくとも0.6wt%、より好ましくは少なくとも0.8wt%そして最も好ましくは少なくとも1.0wt%の鉱油を含む。最終製品の透明性で所望のレベルを得るためには、本発明に従ったゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の合計重量基準で、典型的には3wt%以下、好ましくは2.6wt%以下そして最も好ましくは2.4wt%以下の鉱油含量をもつ。
【0041】
材料は公知の技術によって脱気されそしてペレット化される。この分野の熟練した当業者に公知のように、種々の脱気条件が、ゴムの架橋を調節しそしてこれによって最適な機械的性質を与えるように使用することができる。
【0042】
好ましくは、熱成形用途での使用のためには、本発明の樹脂組成物にとって少なくとも20;好ましくは少なくとも26そしてより好ましくは少なくとも32メガパスカル(MPa)の引っ張り降伏値をもつことが望ましいことが見出された(ASTM D−638)。
【0043】
本発明の樹脂組成物が樹脂組成物中で少なくとも10%;好ましくは少なくとも15%そしてより好ましくは少なくとも20%の破壊時伸び値をもつなら、それもまた熱成形にとって好ましいことである(ASTM D−638)。
【0044】
本発明の樹脂組成物が樹脂組成物中で少なくとも1800;好ましくは少なくとも2,000そしてより好ましくは少なくとも2,200の引っ張り弾性率(テンサイルモジュラス)(MPa)をもつなら、それは熱成形にとって好ましいことが見出された(ASTM D−638)。
【0045】
本発明の樹脂組成物が、熱成形前に、0.5mmの射出成形片において60%以下、好ましくは50%以下そしてより好ましくは40%以下のヘイズ値(%)を与えることは熱成形用途にとって特に好ましい(ASTM D−1003−95)。それから、以下にさらに議論するように、200ミクロンの壁厚をもつ熱成形物品のヘイズ値は好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。より厚い又はより薄い壁厚の場合は、200ミクロン値は、熱成形した物品又はそれらの部分で測定されたヘイズ値及び厚み値から計算されるように、配向したポリマー組成物の不透明値を基準にして計算することができる。
【0046】
本発明の新規な組成物は好ましくは上述のように溶液又は塊状重合プロセスの生成物として直接製造される。代替としては、これらの直接製造された製品は一つ以上の、別々に製造されたモノビニリデン芳香族ポリマー又はコポリマーの追加量とブレンドして、包装又は容器用途に必要と思われるコスト/物性バランスの異なった範囲をもつエンジニアリング材料として使用することができる。代替としては、最終製品は、別々に製造されたモノビニリデン芳香族(コ)ポリマーの或る量と、適切な範囲の最終製品ゴム含量を与えるのに必要なゴム粒子モルフォロジー及び分布を持ったゴム変性したポリマー成分の或る量とをブレンドして製造することができる。本発明に従った組成物を与えるためにブレンドできる又は使用できるその他のモノビニリデン芳香族ポリマー又はコポリマーの例としては、限定はしないが、汎用ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン、モノビニリデン芳香族コポリマー(ポリ(スチレン−アクリロニトリルのような)、スチレン/ジエンブロックコポリマー、スチレン/ジエンランダムコポリマー、ビニル芳香族/オレフィンモノマーインターポリマー(エチレン/スチレンコポリマーのような)を包含する。
【0047】
本発明に従った組成物の最も驚くべきそして有用な効果は、成形後そして特にシートが押し出されそして形状化物品に熱成形されるときに得られる透明性/靭性の組み合わせである。本発明に従った製品はこの点に関しては、成型樹脂片のヘイズとより薄い熱成形物品で得られる透明性の間で期待される公知の関係よりも非常に良好で予想外の結果を与えた。熱成形又は類似で高度のポリマー配向を与える他の方法は、吸蔵を含むゴムに基づくゴム変性樹脂の透明性を改良することは知られているが、本発明に従った樹脂は、他の同様なゴム変性した、溶液又は塊状重合したモノビニリデン芳香族ポリマーの熱成形において期待されるよりも熱成形物品の良好な透明性を与える。類似で高度のポリマー配向を与える他の方法は、押し出しブロー成形及びボトル、容器又はその他の窪みのある物品の射出引き抜きブロー成形及び配向フィルムの二軸引き抜き又は泡ブローを包含する。
【0048】
熟練した当業者に公知の光学則に従えば、透過率は次式のように不透明度(“τ”)及びサンプル厚み(“χ”)の関数として表現できる:
透過率=100I/I=100e−τχ
ヘイズ%=100−透過率%
【0049】
ここで、Iは透過強度そしてIは入射強度そして不透明度(τ)は物質に固有なパラメーターである。
多くの物質の場合、それゆえに、成形部品のヘイズは部品厚みの関数としてのみ変化すべきである。これは高耐衝撃性ポリスチレンに対してはその不均一な性質の故に当てはまらない。熱成形及びその他のプロセスの過程で、せん断がかかる環境下でゴム粒子は配向し、ゴム壁はこの配向の結果として薄くなる。もし材料が十分速く冷却されるなら、粒子は緩和する時間が無くそしてこれはゴムドメインモルフォロジーをこの種の系に対するτ値と同様に変化させるであろう。この挙動の例を実施例の項で示すことにする。
【0050】
本発明の材料は標準的な溶液又は塊状重合した高耐衝撃性ポリスチレンとは異なり、特定化したゴム粒子分布は比較的ブロードでゴム粒子の大部分がコア/シェルモルフォロジーをもっている。これに対して、従来のHIPS樹脂は比較的狭い粒子サイズ分布をもつ傾向がありそして顕著に又は少なくとも多孔質、多吸蔵粒子構造をもつ傾向がある。本発明に従った組成物中のコア−シェル粒子はせん断場(即ち、熱成形又はその他の高延伸プロセスの過程)で引き伸ばされるが破壊しない程度に架橋される。それらの薄い壁(コポリマーゴムの存在から来る高い混ざり合いの結果として)はより薄くなるが必要な機械的及び引っ張り強度特性を与えるために元の状態を維持している。配向したゴムモルフォロジーは、系(多孔質モルフォロジー)内の多吸蔵粒子がもしあっても非常に少ないので、ゴムの非常に薄いリボンの連続分布に非常に近いものとなる。非常に薄いシェル壁は、より厚い壁で生ずるものより良好な光透過度をもちそして熱成形の過程などで延伸されるときこれに寄与しない残余の多孔質又は多吸蔵粒子があるものに比べ良好な光透過度をもつ。
【0051】
熱成形及び他の高配向性加工条件で使用されるとき、本発明に従った組成物は透明性と靭性の優れた組み合わせ、そして、非常に重要なことに、食品及び飲料包装及び容器での典型的な使用に対応する低引っ張り速度条件(0.1mm/分−2000mm/分)下での靭性を提供する。
【0052】
本発明の他の観点においては、それゆえに、改良された熱成形可能なシート又はフィルム、改良された熱成形された物品、押し出しブロー成形物品を与えるための改良された方法、射出引き抜きブロー成形物品を与えるための改良された方法が提供される。本発明のこれらの観点においては、上記の樹脂組成物は、従来技術及び商業的に利用できる樹脂及びそれから得られる物品に比較して、加工性、リサイクル性、靭性、光沢性、透明性、及びその他の性質の驚くべき組み合わせを提供する。別の態様においては、上記の組成物は、例えば、上述の組成物のコア又は中間層及び片側に置かれた別の樹脂の外側層からなる三層をもつ多層シート又はフィルムを製造するために使用できる。
【0053】
本発明に従った樹脂から製造された飲料用コップのような熱成形物品及び日用品のような食品容器は驚くほどに靭性がありそしてそのような熱成形物品によって収納されている物体を目視可能にするほどの透明性がある。単層又は多層の熱成形可能なシートは、限定はしないが、公知の押し出し技術を含む文献公知の技術を使用して製造することができる。単層又は多層の熱成形可能なフィルムは、公知のキャースト、テンターフレーム又はブローフィルム技術を使用して上記の組成物から製造することができる。熱成形用途及び装置のためのシート、半製品又はその他の予備成形した出発原料の厚みは、典型的には0.2−4.5mm、好ましくは0.3−3.75mm、より好ましくは0.4−2.0mm、そして最も好ましくは0.50−1.5mmである。そのようなシートは良好な耐衝撃強度と透明性をもつ物品に熱成形することによってさらに加工することができる。0.2mm以下の厚みもまた達成できそして透明リッドのような薄径材料が必要な用途に使用することができる。
【0054】
本発明に従った樹脂から有利に製造できるフィルムの厚みは、典型的には0.25より小さく、好ましくは0.012−0.2mm、より好ましくは0.018から、より好ましくは0.020から、より好ましくは0.023からそして最も好ましくは0.025から0.15まで、好ましくは0.13まで、より好ましくは0.10まで、より好ましくは0.05まで、より好ましくは0.04まで、より好ましくは0.03までそして最も好ましくは0.025mmまでである。
【0055】
熱成形可能なシートは、公知のフラットダイ/カレンダー式単−又は共押し出しプロセスによって製造することができる。このシートはそれから“インライン”で直接的にそしてシート製造の後の冷却無しで、又はシートが調製され、冷却されそして熱成形機に供給される“オフライン”のいずれかで容器に熱成形される。いずれの場合の熱成形も、“フォームフィルシール”容器ラインを含む適切な標準プラグ及び熱成形機によってなされる。このシート(単層又は多層)はフォームフィルシール及び良好な透明性、障壁及び靭性的性質をもつ他の包装体、ならびに標準熱成形装置によって予備成形した包装体又は容器を製造するために使用できる。
公知の熱成形プロセスは一般的には下記のメイン工程を採用している:
【0056】
1.(コ)ポリマーの熱軟化温度に依るが、125−170℃の範囲の温度(もしシートが既に熱軟化条件にあるインラインプロセスを使用しないなら)にシートを加熱する;
2.シートを成形キャビティー上の成形領域内に置く;
【0057】
3.空気圧及び/又は真空で成型キャビティー中に軟化したシート材料を延伸/引き抜きし及び/又はプラグ成形する。これは連続的に又は一度に二つ以上の組み合わせでなされる。好ましくは、延伸は、片側でプラスの空気圧でプラグとポリマー材料間の接触を最小にするようにして開始する。“プラグ”は、ポリマーシートを成形キャビティー内に押し出しそしてポリマーの磨耗や傷つきを減少させるためにテフロン又はシリカ材料のコーティングをしておくこともできる移動可能な成形部品である。
【0058】
4.プラグを用いた物品の最終形状化は、熱成形した物品の最終形状及び均一な厚みを与えそしてそれをシートから切断するためのプラグ速度、荷重及び形状を使用する。
5.プラグを取り出し、成形型を開き部品を取り出し、型を開き、部品を取り出す。
【0059】
6.取り出した熱成形領域(“スケルトン”と呼ばれる)に対応する孔にある残留シート材料は取り出されそして好ましくはリサイクルされる。
本発明の樹脂シートは典型的には、ポリマーが上述のように配向し、熱成形物品が良好な透明性と靭性を示すような公知の技術を使用して高速で熱成形される。シートの熱成形温度は典型的には170℃以下そして好ましくは125と150℃の間である。熱成形プロセスの引抜き速度は、熱成形サイクル時間(サイクル/分)と公知の時間及びプラグ補助の高さと各サイクルで造られる熱成形物品の高さ又は深さ寸法を使用して測定したとき、一般的には200mm/秒以上、そして好ましくは220と340mm/秒の間である。
【0060】
この方法を使用して製造された熱成形物品は、物品のドローダウンレイシオが少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.4、より好ましくは少なくとも0.6そして最も好ましくは少なくとも0.8そして10以下、好ましくは7以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下のとき、驚くべき透明性と靭性を示す。ここで使用するとき、ドローダウンレイシオは(物品の高さ又は深さ寸法)/(成形キャビティー領域の最大対角線又は直径寸法)の比である。
【0061】
熱成形物品のヘイズ測定に関しては、多くの熱成形物品においてその位置で測定される又は観察されるヘイズの変化を生ずる厚み変動がある。本発明に従って得られる一つの主要な利点としては、上記の組成物が物品に熱成形されるときに観察される一般に低いヘイズ勾配及び低い不透明度勾配である。上記のヘイズ/不透明度/厚みの相関に示されるように、厚み変動がある熱成形物品の位置ではもっと少ないヘイズ差異がある。熱成形物品の厚みに依るが、一旦熱成形が完了すると、厚みが200ミクロン領域で測定したとき、典型的には20%より小さい、好ましくは15%より小さいそして最も好ましくは10%より小さいヘイズ値をもつであろう。ヘイズと透明性の値はハンターラボトリスチミュラスカロリメーター モデルD25P−9を用いて、ASTM法D1003−95に従って、425番のガラス試験標準で決定された。
以下の実施例は本発明を説明するために提供される。実施例は本発明の範囲を限定する意図でなされたものではなくそのように解釈してはならない。
【0062】
〔実施例〕
下記の表1に示されるゴム成分を、指示された樹脂製品を調製するために、以下の表3に示される比でスチレン中に一緒に溶解させた。またこの供給流れには2.5wt%の鉱油(70センチポアズの動粘度)を含む。反応器へのスチレンとゴムの供給速度と供給物中のゴムブレンド物含量は、4%のブタジエンを含む最終ゴム変性ポリスチレン製品を製造することを目標として計算される。
【0063】
【表1】

【0064】
サンプル組成物を、連続につながった三つの撹拌反応器を使用して連続プロセスで製造した。ゴムフィード溶液、鉱油、エチルベンゼン、スチレン及び残りの添加剤は第一反応器に750g/hの速度で供給された。フィード中のゴム濃度とEB濃度は、合計フィードの重量%として表3に示される。ポリマーの最終転化率もまた表に示される。最終製品中のゴム濃度は転化率とフィード中のゴム含量から計算できる。全ての場合で、合計フィードの0.1%の抗酸化剤イルガノックス1076を最終製品中で1200ppmのレベルとなるように添加した。各反応器は、温度を独立に制御する三つのゾーンに分割されている。使用した温度プロフィールは:125、130、135、143、149、153,157、165、170℃であった。第一反応器で使用される撹拌回転数は表3に示され、第二反応器では50rpmそして第三反応器では25rpmであった。表3に示されるような連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン、即ちnDM)を第一反応器、九つの反応ゾーンのうち第二ゾーンに添加した。
【0065】
残余のスチレンとエチルベンゼン希釈剤を揮散させそしてゴムを架橋させるために脱気押し出し機を使用した。押し出し機中の温度プロフィールは:バレルの出発点で240℃;バレルの中間点で240℃;バレルの最終ゾーンで240℃そしてスクリュー温度は220℃であった。
【0066】
表3は原料、反応条件及びこれらのゴムで得られるHIPS材料の物性を示す。表3はまたこれらの樹脂を、ゴム成分と重量平均分子量240,000、条件Gで10.5g/10分のMFRをもつ標準の汎用ポリスチレン即ち“GPPS”(STYRON 678EブランドのPS)を含む二つの比較用ブレンド樹脂と比較して示す。第一の比較樹脂中のゴム成分は、2ミクロンの体積平均ゴム粒子サイズをもつ多孔質粒子形態の低シスポリブタジエンゴム8.5wt%(ブタジエン基準で)を含む標準HIPS(STYRON A−TECH1200)35wt%であった。第二のブレンド樹脂中のゴム成分は、73wt%のスチレンと27wt%のブタジエンを含みそして条件G(200℃、5kg)で15g/10分のMFRをもつSTYROLUX3G35ブランドのSBブロックコポリマーゴム50wt%であった。
【0067】
使用した試験方法は:
MFR−ISO−1133
PS マトリックス分子量分布−PS較正ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
ゴム粒子サイズ−ベックマンコウルター製LS230装置及びソフトウエアを使用する光散乱法
引っ張り降伏(Tensile Yield)−ISO−527−2
引っ張り伸び(Tensile Elongation)−ISO−527−2
引っ張り弾性率(Tensile Modulus)−ISO−527−2
ヘイズ(射出成形片)−0.5mm射出成形片を使用したASTM D−1003−95
ヘイズ(熱成形物品)−熱成形部品から切断された位相幾何学的な欠陥が無くそして約200ミクロン厚みをもつ1インチx1インチの平面片を使用したASTM D−1003−95
光沢(射出成形片)−表2に示された射出成形条件を使用したASTM D−523−89
部品厚みはミツトヨ製アブソリュートディジマチックキャリパーで測定した。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
この表から、本発明に従えば非常に望ましい最終の機械的/光学的特性バランスが得られることがわかる。
上記表3に示されるように、本発明に従った実施例1の樹脂と二つのブレンド樹脂から熱成形部品が製造された。これは、本発明に従ったときの物性の最適化された組み合わせ、特に加工プロセスの結果としての光学的性質の改良を例示している。
【0071】
1.1mmの厚みをもつ押し出しシートは、平面シートダイ及び垂直ロールスタック押し出し機で約210℃の溶融温度で製造された。押し出しシートはそれから、約125gの容量をもつヨーグルト容器に熱成形された。コップは直線壁をもち円錐部分をもたない円筒形状で、64.6mmの壁高さ(又は深さ)と円形開口部で54.6mmの直径で1.2のドローダウンレイシオをもっていた。コップを工業装置と類似でその立ち上げを類証する実験室規模の装置で熱成形した。シングルキャビティー装置をクランプフレーム、アルミ製雌成形キャビティー、垂直置換シンタクチックフォームプラグを装備し、接触加熱(135−145℃)し、そして空気増圧を3−6バールに調節した。1.1mmのシートを手動で供給し、130から225ミクロンのコップ本体壁厚、0.7ミクロンの厚み分布(シート厚み/壁厚み−シート厚み/底部厚みとして計算される)をもつコップを製造した。コップは視覚的に透明で、ヘイズは、厚みが約200ミクロンの壁位置で6%と測定された。
【0072】
本発明に従ったこの樹脂は、下記表に示されるGP及びK−樹脂又は市販のHIPSとの比較ブレンド物よりも非常に良好な熱成形方法及び/又は熱成形物品特性を与え、そしてGPとSBブロックのブレンド物ベースの熱成形樹脂と違って容易にリサイクル可能である。コップの靭性は、コップ上面の底部を10mm/秒の速度で下方に圧縮しそしてコップ底面を3mm下方の距離に圧縮するのに必要な合計荷重を測定することによって評価される。この方法によって測定されたコップは、もし3mm圧縮後、コップ壁が潰れるか破壊するなら、“脆い”とされる。
【0073】
【表4】

【0074】
さらなる本発明に従ったゴム変性モノビニリデン芳香族フィルム樹脂は、一般的には下記に示されるような特定の性質及び組成をもった上述のような方法に従って調製されそして配向フィルムに加工された。
【0075】
【表5】

1.47mmの厚みをもつキャースト押し出しシートが上述の樹脂から3−ロールスタックを装備した平面シートコートハンガーダイを使用して調製された。溶融温度は約210℃に維持された。押し出しシートを引き続き、実験室規模のT.M.ロングフィルムストレッチャー(引っ張り機)を使用して厚みの変化したフィルムに二軸延伸した。引っ張りの前に、押し出しシートを約120℃の温度に3分間加熱した。シートをそれから同時引っ張りモードを使用して0.5インチ/秒の速度で二軸延伸した。フィルムを機械と横断方向の両方でほぼ同じ量延伸した、ここで指示された延伸比(ストレッチレイシオ)は個々の機械と横断方向の延伸比の平均である(延伸寸法/未延伸寸法)。
【0076】
1.47mmのシートの場合、二軸延伸は二方向延伸比2.5Xから5Xで成功裡に達成された。120℃は二軸延伸の最適温度であることが見出されているが、95−125℃の範囲の温度及び延伸比に対する広い操作枠が採用可能である。
【0077】
ヘイズ及び透明性の光学的性質はこれらのフィルムの場合、それぞれASTM試験方法D−1003及びD−1746で測定された。フィルムサンプルは以下の表に示されるデータで明らかなように強調すべき卓越した光学的特性を得た。
【0078】
延伸比 フィルム厚み ヘイズ 透明度
(倍数) (mm) (%) (%)
2.5 0.24 9 47
3 0.16 5.6 60
3.5 0.12 5.1 78
4 0.09 3.4 82
4.5 0.07 2.3 85
5 0.06 2.4 86
【0079】
二軸延伸ゴム変性フィルムの改良された光学的性質は、二軸延伸プロセスの後で起こるゴム相モルフォロジーの変化の結果であると推定される。樹脂製造の過程及びキャースト又は未延伸状態において、架橋した粒子は主としてサブミクロンサイズで、主として光を散乱しそして光学的透明性から引き出されるコア/シェルモルフォロジー小球として存在する。二軸延伸状態において、非常に薄く、引き伸ばされたドメインとして存在するゴム粒子と一緒に、ゴム相は引っ張られそしてより分散しそしてほとんどラメラ状又は糸状モルフォロジーとなる。
【0080】
これらの二軸延伸フィルムはまた究極の引っ張り強さ及び究極の伸びのような機械的性質をASTM D−882を使用して試験した。下記の表のデータによって明らかなように、そのフィルムは、延伸比及びそれ故に二軸延伸量が増加するにつれ改良された引っ張り強さ及び伸びを示している。
【0081】
延伸比 フィルム厚み 究極引っ張り強さ 究極伸び
(倍数) (mm) (MPa) (%)
2.5 0.24 40.3 34
3 0.16 44.5 34
3.5 0.12 41.8 26
4 0.09 44.4 78
4.5 0.07 49.1 91
5 0.06 56.1 83
【0082】
物理的/機械的性質の許容できるバランスを維持しながら、透明性が改良されるこの結果は、他のゴム変性樹脂の同様な二軸延伸で観察される結果とは異なるものである。
【0083】
【特許文献3】USP4,666,987
【特許文献4】USP4,572,819
【特許文献5】USP4,585,825
【特許文献6】USP3,123,655
【特許文献7】USP4,409,369
【特許文献8】USP5,491,195
【非特許文献1】G.Holden,et al;THERMOPLASTIC ERASTOMERS 2ND EDITION;Hanser/Gardner Publications,Inc.,1996,ISBN 1−56990−205−4,pages 48−70
【非特許文献2】H.Hsieh and R.Quirk,ANIONIC POLYMERIZATION:PRINCIPLES AND PRACTICAL APPLICATIONS,M亜rセlDekker Inc.,1996,ISBN 0−8247−9523−7,pages 307−321,and 475−516
【非特許文献3】JOURNAL OF APPLIED SCIENCE,VOL.77(2000),page1165,“A Novel Application of Using a Commercial Faunhofer Diffractometer to Size Particles Dispersed in a Solid Matrics”by Jun Gao and Chi Wu
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の新規なゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物は、靭性があり、透明性のある、食品、飲料及びその他のマーケット用の包装システム又は容器を製造するための従来からの熱成形用途において、安価で、且つリサイクル可能に製造できるため、特に熱成形用途におけるポリマー組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)モノビニリデン芳香族ポリマーマトリックス;
b)主としてコア/シェルモルフォロジーをもちそして0.1−1.5ミクロンの体積平均粒子サイズをもつ架橋ゴム粒子として分散しており、ここでゴム粒子の40−90体積%が0.4ミクロンより小さい直径をもちそしてゴム粒子の10−60体積%が0.4と2.5ミクロンの間の直径をもちそしてゴムが15−60wt%のモノビニリデン芳香族モノマーブロックをもつ共役ジエンブロックコポリマーゴムからなる、1.5−8wt%(組成物中の合計ジエン含量基準で)のゴム;及び
c)所望により0.1−4wt%の鉱油;
からなるゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物。
【請求項2】
2−6wt%のゴムを含有する請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項3】
ゴム粒子の少なくとも70%がコア/シェルモルフォロジーをもちそして0.2−1ミクロンの体積平均粒子サイズをもつ請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項4】
ゴム粒子の50−80体積%が0.4ミクロンより小さい直径をもちそしてゴム粒子の20−50体積%が0.4から1.2ミクロンの直径をもつ請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ゴムが、共役ジエンブロックコポリマーゴムと組成物中のゴム(ブタジエン)の合計重量基準で2−25wt%の共役ジエンホモポリマーゴムからなるブレンド物である請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項6】
モノビニリデン芳香族マトリックスポリマーがポリスチレンである請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項7】
合計ゴム粒子の少なくとも90%がコア/シェルモルフォロジーをもちそしてゴム粒子の体積平均粒子サイズが0.2−0.6ミクロンである請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1記載のポリマー組成物から製造された熱成形に適したシート。
【請求項9】
0.2−4.5mmの厚みをもつ請求項8記載のシート。
【請求項10】
請求項1記載のポリマー組成物から製造されたフィルム。
【請求項11】
0.012−0.20mmの合計厚みをもつ請求項10記載のフィルム。
【請求項12】
請求項1記載のポリマー組成物から製造されたシート又はフィルムから製造された改良された熱成形物品。
【請求項13】
請求項1記載の樹脂から製造されたシート材料を使用する改良された熱成形方法。
【請求項14】
a)成型キャビティー上に請求項1記載の樹脂からなる加熱したシートを置き;
b)空気圧及び/又は真空で成型キャビティー中に軟化したシート材料を延伸/引き抜きし及び/又は型成形して成形物品の形状を与えそしてシートから物品を切断し;c)成形型から熱成形した物品を取り出し;d)残ったシート材料を追加量の請求項1記載のポリマーと共にシート形態として熱成形プロセスにリサイクルする;
諸工程からなる改良された熱成形方法。
【請求項15】
請求項1記載の樹脂から得られた半製品、予備成形品又はシート材料を使用するとともに成形プロセスにおいて高度のポリマー配向がある改良された成形方法。
【請求項16】
請求項1記載のポリマー組成物を使用する改良された押し出しブロー成形方法。
【請求項17】
請求項15記載の改良された射出延伸ブロー成形方法。

【公表番号】特表2008−517093(P2008−517093A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536709(P2007−536709)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/034285
【国際公開番号】WO2006/044114
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502130582)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】