説明

改良されたノロウイルスRNA検出方法

【課題】ノロウイルスRNAの広範囲な遺伝子型に対して高感度に検出する方法の提供。
【解決手段】ノロウイルスのそれぞれの遺伝子型のRNAの相同あるいは相補的な核酸配列に対して、ハイブリダイゼーション効率の高い第一のプライマーおよび第二のプライマー(該プライマーのいずれか一方はその5’末端にプロモーター配列が付加されている)からなるプライマーセット少なくとも二種用い、逆転写酵素により、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成し、該2本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメラーゼによりRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記逆転写酵素によるDNA合成の鋳型となって前記2本鎖DNAを生成する工程からなるRNA増幅工程において増幅されたRNA転写産物量をインターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブにて測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便、迅速にノロウイルスを測定する方法に関する。本発明は、臨床検査、公衆衛生、食品検査、食中毒検査の分野に有用である。
【背景技術】
【0002】
ノロウイルスはヒトカリシウイルス科に属するウイルスで、約7000塩基の1本鎖RNAをゲノムにもつ。ノロウイルスは、小型球形ウイルス(Small Round Structured Virus、SRSV)とも呼ばれている。
【0003】
我が国で届け出されている食中毒の約20%はウイルスが原因と推定されている。これらのウイルス性食中毒例の約80%以上からノロウイルスが検出される。おもな感染源は食品で、しばしば生カキが問題となっている。また、乳幼児の(散発性の)急性胃腸炎からもノロウイルスが検出され、ヒトからヒトへの感染例も報告されている。以上から、ノロウイルスの検査は、公衆衛生上および食品の品質管理上大きな課題となっており、遺伝子増幅法を用いた、高感度かつ迅速でしかもあらゆる遺伝子型の検出が可能もしくは検出率の高い検査法の開発が望まれている。従来、ノロウイルスの検出は、電子顕微鏡による観察が基本であった。この方法では、あらゆる遺伝子型の検出か可能であるが、検出するには10個/mL以上のウイルス量が必要と感度が低いため、検体は患者糞便に限られている。また、ウイルスを観察できても同定することはできなかった。
【0004】
また、ヒトカリシウイルスのウイルス様中空粒子を用いた特異抗体検出ELISAの試薬も開発されている(特許文献1)。しかし、検出感度は電子顕微鏡と同程度で決して高感度とはいえない。
【0005】
ノロウイルスを高感度に測定する手段としてノロウイルスRNAをRT−PCRで増幅する方法があげられる(特許文献2)が、該方法の場合、一般的には逆転写(RT)工程およびPCR工程の二段階の工程が必要である。このことは、操作を煩雑にして再現性を悪化させる要因となるだけでなく、二次汚染の危険性をも増加させることにもなる。また、前記RT工程およびPCR工程を合わせると通例2時間以上の時間を要し、多数検体処理や検査コストの低減には不向きであった。
【0006】
標的RNAの定量法としては、RT工程に引き続いて実施されるPCR工程をインターカレーター性蛍光色素存在下で実施して蛍光増加を測定するReal−time RT−PCR法が汎用されている(非特許文献1)が、該方法ではプライマーダイマーなどの非特異増幅産物も検出してしまうという問題もあった。さらに、PCRは急激に反応温度を昇降させる必要があり、自動化の際の反応装置の省力化や低コスト化のための障壁となっていた。
【0007】
一方、一定温度でRNAのみを増幅する方法としては、NASBA法(特許文献3および4)、およびTMA法(特許文献5)などが報告されている。該RNA増幅方法は、標的となるRNAに対してプロモーター配列を含むプライマー、逆転写酵素および必要に応じてリボヌクレアーゼH(RNase H)により、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成し、RNAポリメラーゼによって標的となるRNAの特定塩基配列を含むRNAを合成し、該RNAが引き続きプロモーター配列を含む2本鎖DNA合成の鋳型となる連鎖反応を行なうものである。そして、RNA増幅後、電気泳動または検出可能な標識を結合させた核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション法などにより増幅されたRNAを検出する。
【0008】
以上のように前記RNA増幅方法は一定温度、一段階でRNAのみを増幅することから簡便なRNA測定に適しているが、ハイブリダイゼーション法などによる検出は煩雑な操作を必要とし、再現性良く定量できないという課題がある。
【0009】
簡便にRNAを増幅および測定する方法としては、Ishiguroら(特許文献6および非特許文献2)の方法があげられる。該方法は、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブで、かつ標的核酸と相補的2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分が前記相補的2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブの存在下、前記RNA増幅方法を実施し、蛍光特性の変化を測定するもので、簡便、一定温度、一段階かつ密閉容器内でRNA増幅および測定を同時に実施することが可能である。
【0010】
前記の各核酸増幅方法は、いずれもセンスプライマー(第一のプライマー)およびアンチセンスプライマー(第二のプライマー)からなるプライマーセットにより標的RNAを増幅する方法であり、該プライマーセットを構成するプライマー配列の組み合わせが前記核酸増幅の効率および特異性に重要な意義を持つことは周知である。しかし、ノロウイルスはきわめて多様な遺伝子型を有するため、全ての遺伝子型を一様かつ高効率に増幅するプライマーセットの構築はきわめて困難であった。
【0011】
【特許文献1】WO2000/079280号公報
【特許文献2】特許3752102号公報
【特許文献3】特許2650159号公報
【特許文献4】特許3152927号公報
【特許文献5】特許3241717号公報
【特許文献6】特開2000−14400号公報
【特許文献7】特開2005−245434号公報
【特許文献8】特開平8−211050号公報
【特許文献9】特開2001−13147号公報
【非特許文献1】Kageyama T. et al.,Journal of Clinical Microbiology,41,1548−1557(2003)
【非特許文献2】Ishiguro T. et al.,Analytical Biochemistry,314,77−86(2003)
【非特許文献3】感染症発生動向調査週報、6(11)、14−19(2004)
【非特許文献4】Ishiguro T. et al.,Nucleic Acids Research,24,4992−4997(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ノロウイルスは遺伝子配列の違いによりジェノグループI(GI)とジェノグループII(GII)の2種の遺伝子群に大別される。さらに各遺伝子群についても、現時点でGIは14の遺伝子型に、GIIは17の遺伝子型に区別される(非特許文献3参照)。GIに属する遺伝子型間、およびGIIに属する遺伝子型間の塩基配列の相同性は約70%である。また、GIとGIIの塩基配列の相同性は40〜50%である。
【0013】
前記遺伝子増幅法を用いたノロウイルス検出試薬で高い検出率をあげるためには、プライマー結合領域として、各種遺伝子型間で塩基配列が高度に保存された20塩基以上の領域が、少なくとも2箇所は必要である。しかしながら、GenBank上のノロウイルスの配列として、以下の6配列(Chiba(No.AB042808)、Norwalk(No.M87661)、Southampton(No.L07418)、Camberwell(No.AF145896)、Hawaii(No.U07611)、HuCV(No.AY032605))の相同性を調べただけでも、遺伝子型間で塩基配列が同じである20塩基以上の領域は存在しない。
【0014】
このような背景のもと、本発明者らは、既に、GI、あるいはGIIの幅広い遺伝子型で高い検出率を有する検出方法を提供している(特開2005−245434号公報、特許文献7)。しかし、該方法をもってしてもノロウイルスの全ての遺伝子型に対する高感度かつ一様な検出が達成されたとはいえず、より広範囲の遺伝子型をより高感度に検出するノロウイルスRNAの検出方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、ノロウイルスRNAの広範囲な遺伝子型に対して高感度に簡便、迅速に測定することが可能となった。
【0016】
請求項1に記載の発明は試料中のノロウイルスRNAを検出する方法であって、
(1)ノロウイルスRNA内の特定核酸配列を鋳型とし、いずれか一方の5'末端にプロモーター配列を付加した第一のプライマー及び第二のプライマー、さらに、RNA依存性DNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH(RNase H)、およびDNA依存性DNAポリメラーゼにより、プロモーター配列と該プロモーター配列下流に前記特定塩基配列を含む2本鎖DNAを生成する工程、
(2)該2本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメラーゼにより、前記特定塩基配列よりなるRNA転写産物を生成する工程、
(3)該RNA転写産物が引き続き前記2本鎖DNA合成の鋳型となることで、連鎖的に該RNA転写産物を増幅する工程、
(4)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなり、前記第一のプライマーが、配列番号1から4に記載の配列に対してそれぞれ十分に相同な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、前記第二のプライマーが、配列番号5から9に記載の配列に対してそれぞれ十分に相補的な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は請求項1に係り、前記ノロウイルスRNAの検出方法において、第一のプライマーが配列番号1の部分配列である配列番号10、配列番号2の部分配列である配列番号11、および配列番号3の部分配列である配列番号12に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、第二のプライマーが配列番号5の相補鎖である配列番号13、配列番号7の相補鎖である配列番号14、配列番号8の相補鎖である配列番号15、および配列番号9の相補鎖である配列番号16に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は請求項1に係り、前記ノロウイルスRNAの検出方法において、第一のプライマーが配列番号1から4に記載の配列に対して相同な配列の連続する14ヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は請求項1から3に係り、前記ノロウイルスRNAの検出方法において、ノロウイルスRNA中の特定核酸配列を鋳型とし、前記特定塩基配列中の第一プライマーとの相同領域の5'末端部位と重複して該部位から5'方向に隣接する領域に相補的な切断用オリゴヌクレオチドとRNase Hにより前記特定塩基配列の5'末端部位で前記RNAを切断する工程を、5'末端にプロモーター配列を付加した前記第一のプライマー、前記第二のプライマー、さらにRNA依存性DNAポリメラーゼ、RNase H、およびDNA依存性DNAポリメラーゼにより、プロモーター配列と該プロモーター配列下流に前記特定塩基配列を含む2本鎖DNAを生成する工程の前に行なうことを特徴とし、前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号17から21に対してそれぞれ十分に相補的な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は請求項1から4に係り、前記ノロウイルスRNAを検出する工程において、前記RNA転写産物量を測定する工程(4)が、標的RNAと相補的2本鎖を形成するとシグナル特性が変化するように設計された核酸プローブ共存下で該シグナル変化を測定することによってなされ、前記核酸プローブが配列番号22に対して十分に相補的な配列からなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明中の特定塩基配列とは、ノロウイルスRNA上で、第一のプライマーと相同領域の5’末端から第二のプライマーと相補領域の3’末端までの塩基配列に相同なRNAまたはDNAの塩基配列を示す。すなわち、本発明では前記特定塩基配列に由来するRNA転写産物が増幅されることになる。本発明中の第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位とは、特定塩基配列内で該相同領域の5’末端を含む部分配列からなり、該部位は切断用オリゴヌクレオチドとの相補領域と第一のプライマーとの相同領域が重複する部位である。本発明中のプロモーターとは、RNAポリメラーゼが結合して転写を開始する部位で種々のRNAポリメラーゼに特異的なプロモーター配列が既知であり、本発明の使用において特に限定するものではないが、分子生物学的実験等で汎用されているT7プロモーター、SP6プロモーター、T3プロモーターなどが好適である。
【0023】
本発明中の十分に相補的な配列とは、最適化された核酸増幅反応条件(塩濃度、オリゴヌクレオチド濃度、反応温度等)において特定塩基配列に対して特異的かつ高効率にハイブリダイゼーション可能な配列をいう。また、本発明中の十分に相同的な配列とは、最適化された核酸増幅反応条件(塩濃度、オリゴヌクレオチド濃度、反応温度等)において特定塩基配列の完全相補配列に対して特異的かつ高効率にハイブリダイゼーション可能な配列をいう。したがって、本発明でいう十分に相補的あるいは十分に相同な配列は、ハイブリダイゼーションの特異性および効率に影響を与えない範囲内であれば長さなどを任意に設定することが可能である。
【0024】
前述したように、現時点でノロウイルス GI RNAには14種の、ノロウイルス GII RNAには17種の遺伝子型がそれぞれ存在し、さらに、塩基配列が高度に保存された領域は十分に長くない。そのため、一種類の第一のプライマーおよび第二のプライマーからなるプライマーの組み合わせによりすべての遺伝子型を高感度に検出することは困難であった。そこで、本発明では、より広範囲の遺伝子型を高感度に検出するために、複数の遺伝子型に対して十分に相同または相補的な配列を有する二種以上の第一のプライマーおよび第二のプライマーからなるプライマーの組み合わせを用いた検出方法を構築した。
【0025】
すなわち、本発明においてノロウイルスRNA検出のための第一のプライマーは配列番号1から4に記載の配列に対してそれぞれ十分に相同な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、かつ第二のプライマーが配列番号5から9に記載の配列に対してそれぞれ十分に相補的な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなる配列を有する。
【0026】
より好ましくは第一のプライマーが配列番号10から12に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、かつ第二のプライマーが配列番号13から16に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなる配列を有する。
【0027】
本発明の一態様として、第一のプライマーが配列番号31、32および33に記載の配列のオリゴヌクレオチドからなり、かつ第二のプライマーが配列番号34および35に記載の配列のオリゴヌクレオチドからなる配列を有する。
【0028】
本発明において、ノロウイルスRNAはcDNA合成の鋳型となる前に該RNA内の特定核酸配列の前記5’末端部位で切断される。特定核酸配列の5’末端部位で切断されることで、cDNA合成後に、cDNAにハイブリダイズした第一プライマーのプロモーター配列に相補的なDNA鎖を、前記cDNAの3’末端を伸長することにより効率的に合成することができ、結果として機能的な2本鎖DNAプロモーター構造を形成する。このような切断方法として、ノロウイルスRNA内の特定塩基配列の5’末端部位(該特定塩基配列内で5’末端を含む部分配列)に重複して5’方向に隣接する領域に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、切断用オリゴヌクレオチドとする)を添加することによって形成されたRNA−DNAハイブリッドのRNA部分をリボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素等により切断する方法があげられる。該切断用オリゴヌクレオチドの3’末端にある水酸基は伸長反応を防止するために適当な修飾を施されたもの、例えばアミノ化等されているものを使用することが好ましい。
【0029】
高効率に前記5’末端部位を切断するためには切断用オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率を上げる必要がある。しかし、ノロウイルスRNAには多様な遺伝子型が存在するため、1種類の切断用オリゴヌクレオチドで種々の遺伝子型に対して高効率にハイブリダイゼーションさせることは困難である。
【0030】
そこで、本発明では、切断用オリゴヌクレオチドとして、配列番号17から21に記載の配列に対してそれぞれ十分に相補的な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種の切断用オリゴヌクレオチドからなる混合物、より好ましくは配列番号17の相補鎖の部分配列である配列番号23、配列番号18の相補鎖の部分配列である配列番号24、配列番号19の相補鎖の部分配列である配列番号25、および配列番号20の相補鎖の部分配列である配列番号26に記載の配列に対してそれぞれ相同な配列の少なくとも連続した24オリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種の切断用オリゴヌクレオチドからなる混合物を使用することにより、ノロウイルスRNAのより広範囲な遺伝子型に対して切断用オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率を向上させ、結果として、より広範囲な遺伝子型に対する高感度化が可能となった。
【0031】
本発明中の標的RNAとは、RNA転写産物上の特定塩基配列のうち、前記プライマーとの相同あるいは相補領域以外の配列を示し、インターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブとの相補的結合が可能な配列を有する。よって、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブは、本発明中の特定塩基配列の一部と相補的な配列となる。そのため、たとえば本発明の一態様として、インターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブとして配列番号26に対して十分に相補的な配列を有する核酸プローブが利用できる。
【0032】
本発明のひとつの態様として、切断用オリゴヌクレオチドは、配列番号17から21に対してそれぞれ十分に相補的な配列を含む配列を有し、かつノロウイルスRNA(該当する遺伝子型)に対し十分に相補的である。また、第一のプライマーは、その5’末端にプロモーター配列を有しており、配列番号1から4に記載の配列に対してそれぞれ十分に相同な配列を含むオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、かつノロウイルスRNA(該当する遺伝子型)の完全相補配列に対して十分に相補的なオリゴヌクレオチドである。また、第二のプライマーが、配列番号5から9に記載の配列に対してそれぞれ十分に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチド配列を有し、かつノロウイルスRNA(該当する遺伝子型)に対して十分に相補的な配列であり、インターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブは配列番号22に対して十分に相補的な配列を含む配列を有し、かつ標的核酸に対して、十分に相補的であることが好ましい。
【0033】
より好ましくは本発明の前記切断用オリゴヌクレオチドとして配列番号28から30に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチド配列、前記第一のプライマーが配列番号10から12に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチド配列、前記第二のプライマーが配列番号13から16に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチド配列を有し、前記インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブは配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド配列を有することが好ましい。
【0034】
本発明のノロウイルスRNAの検出方法において、各酵素(1本鎖RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素(逆転写酵素)、RNase H活性を有する酵素、1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、およびRNAポリメラーゼ活性を有する酵素)が必要となる。各酵素は、いくつかの活性を合わせ持つ酵素を使用してもよいし、それぞれの活性を持つ複数の酵素を使用してもよい。また、たとえば、1本鎖RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性、RNase H活性、および1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を合わせ持つ逆転写酵素に、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素を添加するだけでなく、必要に応じてRNase H活性を有する酵素をさらに添加して補足すること等も可能である。前記逆転写酵素は、分子生物学的実験等で汎用されているAMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、HIV逆転写酵素、あるいはこれらの誘導体などが好適であり、AMV逆転写酵素とその誘導体が最も好ましい。また、前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素としては、分子生物学的実験等で汎用されているバクテリオファージ由来のT7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、およびこれらの誘導体が使用可能である。
【0035】
本発明の一態様では、試料中のノロウイルスRNAに前記切断用オリゴヌクレオチドを添加し、前記逆転写酵素のRNase H活性により前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する。切断された前記RNAを鋳型として前記第一のプライマーおよび第二のプライマーの存在下で前記逆転写酵素による逆転写反応を実施すると、第二のプライマーがノロウイルスRNA内の特定塩基配列に結合し、前記逆転写酵素のRNA依存性DNAポリメラーゼ活性によりcDNA合成が行われる。得られたRNA−DNAハイブリッドは前記逆転写酵素のRNase H活性によってRNA部分が分解され、解離することによって第一のプライマーが前記cDNAに結合する。引き続いて、前記逆転写酵素のDNA依存性DNAポリメラーゼ活性により特定塩基配列由来で5’末端にプロモーター配列を有する2本鎖DNAが生成される。該2本鎖DNAは、プロモーター配列下流に特定塩基配列を含み、前記RNAポリメラーゼにより特定塩基配列に由来するRNA転写産物を生産する。該RNA転写産物は、前記第一および第二のプライマーによる前記2本鎖DNA合成のための鋳型となって、一連の反応が連鎖的に進行し、前記RNA転写産物が増幅されていく。
【0036】
このような連鎖反応を進行させるために、前記各酵素に必須な既知の要素として、少なくとも、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸を含むことはいうまでもない。また、反応効率を調節するための添加剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジチオスレイトール(DTT)、ウシ血清アルブミン(BSA)、糖などを添加することも可能である。
【0037】
たとえば、AMV逆転写酵素およびT7 RNAポリメラーゼを用いる場合は35から65℃の範囲で反応温度を設定することが好ましく、40から44℃の範囲で設定することが特に好ましい。前記RNA増幅工程は一定温度で進行し、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼが活性を示す任意の温度に反応温度を設定することが可能である。
【0038】
増幅されたRNA転写産物量は、既知の核酸測定法により測定することが可能である。このような測定法としては、電気泳動や液体クロマトグラフィーを用いた方法、検出可能な標識で標識された核酸プローブによるハイブリダイゼーション法などが利用できる。しかし、これらは操作が多工程であり、また増幅産物を系外に取り出して分析するため二次汚染の原因となる増幅産物の環境への飛散の危険性が大きい。これらの課題を克服するためには標的核酸と相補結合することによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブを用いることが好ましい。さらに好適な方法として、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブで、かつ標的核酸と相補的2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分が前記相補的2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブの存在下、前記核酸増幅工程を実施し、蛍光特性の変化を測定する方法があげられる(特許文献6および非特許文献2参照)。
【0039】
前記インターカレーター性蛍光色素としては特に限定されないが汎用されているオキサゾールイエロー、チアゾールオレンジ、エチジウムブロマイド、およびこれらの誘導体などが利用できる。前記蛍光特性の変化としては蛍光強度の変化があげられる。たとえばオキサゾールイエローの場合、2本鎖DNAにインターカレートすることによって510nmの蛍光(励起波長490nm)が顕著に増加することが既知である。前記インターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブは、前記RNA転写産物上の標的RNAに対して十分に相補的なオリゴヌクレオチドで、末端あるいはリン酸ジエステル部あるいは塩基部分に適当なリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素が結合され、さらに、3’末端の水酸基からの伸長を防止する目的で該3’末端の水酸基が適当な修飾をなされている構造を有する(特許文献8および非特許文献4参照)。
【0040】
オリゴヌクレオチドへのインターカレーター性蛍光色素の標識は、既知の方法でオリゴヌクレオチドに官能基を導入し、インターカレーター性蛍光色素を結合させることが可能である(特許文献9および非特許文献4参照)。また、前記官能基の導入方法としては、汎用されているLabel−ON Reagents(Clontech社製)等を用いることも可能である。
【0041】
本発明の一態様として、試料に少なくとも、5’末端にT7プロモーター配列を有する第一のプライマー(配列番号10に記載の配列の5’末端にT7プロモーター配列(配列番号58)を付加した配列、配列番号11に記載の配列の5’末端にT7プロモーター配列(配列番号58)を付加した配列、および配列番号12に記載の配列の5’末端にT7プロモーター配列(配列番号58)を付加した配列)、第二のプライマー(配列番号15および配列番号16に示す配列)、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(配列番号27に示す配列)、切断用オリゴヌクレオチド(それぞれ配列番号28、29および30に示す配列)、AMV逆転写酵素、T7RNAポリメラーゼ、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む増幅試薬を添加し、反応温度35から65℃(好ましくは40から44℃)の一定温度で反応させると同時に反応液の蛍光強度を経時的に測定する方法を提供する。
【0042】
別の一態様として、試料に、少なくとも、5’末端にT7プロモーター配列(配列番号58)を有する第一のプライマー(配列番号31、32および33に示す配列)、第二のプライマー(配列番号34および配列番号35に示す配列)、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(配列番号27に示す配列)、切断用オリゴヌクレオチド(それぞれ配列番号36、37および38に示す配列)、AMV逆転写酵素、T7RNAポリメラーゼ、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む増幅試薬を添加し、反応温度35から65℃(好ましくは40から44℃)の一定温度で反応させると同時に反応液の蛍光強度を経時的に測定する方法を提供する。
【0043】
前記態様においては、蛍光強度を経時的に測定することから有意な蛍光増加が認められた任意の時間で測定を終了することが可能であり、核酸増幅および測定をあわせて通例1時間以内で終了することが可能である。
【0044】
また、前記測定試薬に含まれる全ての試料を単一の容器に封入可能な点は特筆すべきである。即ち、一定量の試料を単一容器に分注するという操作さえ実施すれば、その後は自動的にノロウイルスRNAを増幅し検出することができる。この容器は、例えば蛍光色素が発する信号を外部から測定可能なように、少なくともその一部分が透明な材料で構成されてさえいれば良く、試料を分注した後に密閉することが可能なものはコンタミネーションを防止する上で特に好ましい。
【0045】
前記態様のRNA増幅・測定方法は、一段階、一定温度で実施可能であるため、RT−PCRに比べて簡便で自動化に適した方法であるといえる。本発明によりノロウイルスRNAの広範囲な遺伝子型に対して高特異性、高感度、迅速、簡便、一定温度かつ一段階の測定が可能となった。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
本願実施例で使用したノロウイルスRNA(以降、標準RNAと表記)は(1)から(2)に示す方法で調製した。
(1)GenBankに登録されているノロウイルスcDNA塩基配列のうち、表1に示す遺伝子型、及び塩基配列領域の2本鎖DNAを調製した(なお、当該DNAの5’末端側にはSP6プロモーターを付加している)。
(2)(1)で調製したDNAを鋳型として、SP6 RNAポリメラーゼを用いてインビトロ転写を実施し、引き続きDNase I処理により前記2本鎖DNAを完全消化した後、RNAを精製して調製した。該RNAは260nmにおける吸光度を測定して定量した。
【0047】
【表1】

なお、標準RNAの全長は533塩基(該RNAの5’末端にはSP6プロモーターに由来する8塩基が付加されている)と、ノロウイルスRNAの全長(約7000塩基)の一部ではあるが、本発明の測定対象であるノロウイルスRNAの測定には十分適用可能である。また、今回標準RNAを調製した遺伝子型はノロウイルス GI RNAの遺伝子型全14種のうちの8種と一部ではあるが、
(A)GI/1、GI/6、およびGI/8との間、
(B)GI/4、GI/5、およびGI/9との間
(C)GI/3、GI/10、GI/11、GI/12、GI/13、およびGI/14との間
はそれぞれ相同性が高い(非特許文献3)ことから、今回調製した遺伝子型の標準RNAを全て検出できれば、ノロウイルス GI RNAの全ての遺伝子型を検出可能であることが予想される。
実施例2
インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製した。非特許文献4に記載の方法で、配列番号27に記載の配列の5’末端から12番目のCと13番目のAの間、配列番号57に記載の配列の5’末端から12番目のCと13番目のAの間のリン酸ジエステル部分にリンカーを介してオキサゾールイエローを結合させたオキサゾールイエロー標識核酸プローブを調製した(図1)。
実施例3
本願発明の方法において、表2に示す組み合わせの第一のプライマー、第二のプライマー、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(以降、INAFプローブと表記)、切断用オリゴヌクレオチドを用いて、(1)から(4)に示す方法で、標準RNAの測定を行なった。なお、表2の組み合わせのうち、組み合わせAに記載の第一のプライマー、第二のプライマーおよび切断用オリゴヌクレオチドは特開2005−245434(特許文献7)の実施例2に開示した配列と同一である。また、配列番号10、31、40、43および45はそれぞれ配列番号1の部分配列、配列番号11、32、41および46はそれぞれ配列番号2の部分配列、配列番号12、33および47のそれぞれは配列番号3の部分配列、配列番号42および44のそれぞれは配列番号4の部分配列、配列番号34は配列番号5の相補鎖の部分配列、配列番号48は配列番号6の相補鎖の配列、配列番号35は配列番号7の相補鎖の部分配列、配列番号15は配列番号8の相補鎖の配列、配列番号16は配列番号9の相補鎖の配列、配列番号28、36、51および54はそれぞれ配列番号17の相補鎖の部分配列、配列番号29、52および55はそれぞれ配列番号18の相補鎖の部分配列、配列番号37は配列番号19の相補鎖の部分配列、配列番号30、38および56はそれぞれ配列番号20の相補鎖の部分配列、配列番号53は配列番号21の相補鎖の部分配列、配列番号27および57のそれぞれは配列番号22の相補鎖の部分配列である。
【0048】
【表2】

(1)前記各標準RNAをRNA希釈液(10mM Tris−HCl (pH8.0)、1mM EDTA、0.25U/μL リボヌクレアーゼインヒビター、5.0mM DTT)を用いて10コピー/5μLとなるよう希釈し、これをRNA試料として用いた。
(2)以下の組成の反応液20μLを0.5mL容量PCRチューブ(Gene Amp Thin−Walled Reaction Tubes、アプライドバイオシステムズ製)に分注し、これに前記RNA試料5μLを添加した。
【0049】
反応液の組成:酵素液添加後(30μL中)の最終濃度または量
60mM Tris−HCl (pH8.6)
18mM 塩化マグネシウム
100mM 塩化カリウム
1mM DTT
各0.25mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各3mM ATP、CTP、UTP、GTP
3.6mM ITP
0.75μM 第一のプライマー:該プライマーは、各配列番号記載の塩基配列の5’末端にT7プロモーター配列(配列番号58)が付加されている
1μM 第二のプライマー
20nM インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(INAFプローブ):該プローブは実施例2において調製したもの
0.16μM 切断用オリゴヌクレオチド:該オリゴヌクレオチドの3’末端の水酸基はアミノ基で修飾されている
6U リボヌクレアーゼインヒビター(タカラバイオ製)
13% DMSO
(3)上記の反応液を、43℃で5分間保温後、以下の組成で、予め43℃で2分間保温した酵素液5μLを添加した。
【0050】
酵素液の組成:反応時(30μL中)の最終濃度または量
2% ソルビトール
6.4U AMV逆転写酵素 (ライフサイエンス製)
142U T7 RNAポリメラーゼ (インビトロジェン製)
3.6μg 牛血清アルブミン
(4)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、43℃で反応させると同時に反応溶液の蛍光強度(励起波長470nm、蛍光波長520nm)を経時的に60分間測定した。
【0051】
酵素添加時を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度値で割った値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表3に示した。なお、表3においてN.D.とは酵素を添加して60分後の蛍光強度比が1.2未満(陰性判定)であった試料を意味する。
【0052】
【表3】

ノロウイルス GI RNAの主要な遺伝子型であるGI/1(Norwalk)の標準RNAに対して迅速に検出したオリゴヌクレオチドの組み合わせは、組み合わせA、B、G、IおよびLであった。一方、ノロウイルス GI RNAの広範囲な遺伝子型の標準RNAに対して迅速に検出したオリゴヌクレオチドの組み合わせは、組み合わせQ、R、TおよびUであり、特に、組み合わせTが最も好ましい組み合わせであった。
【0053】
また、第一のプライマー、第二のプライマー、および切断用オリゴヌクレオチドがそれぞれ一種類であるオリゴヌクレオチドの組み合わせ(組み合わせAからD)を使用したときよりも、第一のプライマー、第二のプライマー、および切断用オリゴヌクレオチドがそれぞれ二種以上であるオリゴヌクレオチドの組み合わせ(組み合わせEからL)を使用したときの方が、より広範囲の遺伝子型の標準RNAに対して検出していた。このことから、ノロウイルスの広範囲な遺伝子型に対して高感度に検出するためには該プライマー類をそれぞれ二種以上使用したほうが好ましいことがわかる。
【0054】
さらに、組み合わせQ、R、TおよびUとの比較で、第一のプライマーの長さが20オリゴヌクレオチドのとき(組み合わせQおよびR)と、14オリゴヌクレオチドのとき(組み合わせTおよびU)とで、各遺伝子型の標準RNAの検出には殆ど差がみられなかったことから、第一プライマーの長さは14ヌクレオチドあれば十分であることがわかる。
【0055】
以上から、本発明に記載の第一のプライマー、第二のプライマー、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ、切断用オリゴヌクレオチドを用いたRNA増幅・測定法により、ノロウイルス GI RNAの広範囲な遺伝子型に対して高感度に検出可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例2で調製したインターカレーター性蛍光色素標識核酸プローブの構造。B1、B2、B3、B4は塩基を示す。Ishiguroら(非特許文献4)の方法に従いリン酸ジエステル部分にリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素(オキサゾールイエロー)を結合させたプローブ。なお、3’末端の水酸基からの伸長反応を防止するために3’末端の水酸基はグリコール酸修飾がなされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のノロウイルスRNAを検出する方法であって、
(1)ノロウイルスRNA内の特定核酸配列を鋳型とし、いずれか一方の5’末端にプロモーター配列を付加した第一のプライマー及び第二のプライマー、さらに、RNA依存性DNAポリメラーゼ、リボヌクレアーゼH(RNase H)、およびDNA依存性DNAポリメラーゼにより、プロモーター配列と該プロモーター配列下流に前記特定塩基配列を含む2本鎖DNAを生成する工程、
(2)該2本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメラーゼにより、前記特定塩基配列よりなるRNA転写産物を生成する工程、
(3)該RNA転写産物が引き続き前記2本鎖DNA合成の鋳型となることで、連鎖的に該RNA転写産物を増幅する工程、
(4)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなり、前記第一のプライマーが、配列番号1から4に記載の配列に対してそれぞれ十分に相同な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、前記第二のプライマーが、配列番号5から9に記載の配列に対してそれぞれ十分に相補的な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とするノロウイルスRNAの検出方法。
【請求項2】
前記ノロウイルスRNAの検出方法において、第一のプライマーが配列番号1の部分配列である配列番号10、配列番号2の部分配列である配列番号11、および配列番号3の部分配列である配列番号12に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなり、第二のプライマーが配列番号5の相補鎖である配列番号13、配列番号7の相補鎖である配列番号14、配列番号8の相補鎖である配列番号15、および配列番号9の相補鎖である配列番号16に記載のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記ノロウイルスRNAの検出方法において、第一のプライマーが配列番号1から4に記載の配列に対して相同な配列の連続する14ヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
【請求項4】
前記ノロウイルスRNAの検出方法において、ノロウイルスRNA中の特定核酸配列を鋳型とし、前記特定塩基配列中の第一プライマーとの相同領域の5’末端部位と重複して該部位から5’方向に隣接する領域に相補的な切断用オリゴヌクレオチドとRNase Hにより前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する工程を、5’末端にプロモーター配列を付加した前記第一のプライマー、前記第二のプライマー、さらにRNA依存性DNAポリメラーゼ、RNase H、およびDNA依存性DNAポリメラーゼにより、プロモーター配列と該プロモーター配列下流に前記特定塩基配列を含む2本鎖DNAを生成する工程の前に行なうことを特徴とし、前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号17から21に記載の配列に対してそれぞれ十分に相補的な配列のオリゴヌクレオチドから選ばれた少なくとも二種のオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項1から3に記載の検出方法。
【請求項5】
前記ノロウイルスRNAを検出する工程において、前記RNA転写産物量を測定する工程(4)が、標的RNAと相補的2本鎖を形成するとシグナル特性が変化するように設計された核酸プローブ共存下で該シグナル変化を測定することによってなされ、前記核酸プローブが配列番号22に対して十分に相補的な配列からなることを特徴とする、請求項1から4に記載の検出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−63(P2009−63A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164921(P2007−164921)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】