説明

改良されたフィールド装置校正

フィールド装置のための校正器(100、200、300、350、500)が提供される。一つの態様で、校正器(100、200)は、少なくとも二つのプロセス通信プロトコルにしたがって通信する能力を有し、通信を作動させる前に、取り付けられたプロセス接続を試験する。もう一つの態様で、校正器(500)は、全デジタルプロセス通信プロトコルを使用してフィールド装置と通信しながらも少なくとも一つの本質安全要件への適合を容易にするための隔離回路を含む。もう一つの態様で、フィールド装置の装置記述にアクセスして校正タスクを生成することを含む、フィールド装置を校正する方法(600)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
工業的状況では、工業及び化学プロセスのインベントリなどをモニタリングし、制御するために制御システムが使用される。通常、制御システムは、工業プロセス中の主要な場所に分散し、制御ループによって制御室中の制御回路に結合されたフィールド装置を使用してそのような機能を実行する。「フィールド装置」とは、工業プロセスの計測、制御及びモニタリングで使用されるすべての装置を含む、分散制御又はプロセスモニタリングシステムにおける機能を実行する任意の装置をいう。
【0002】
フィールド装置は、多様な目的のためにプロセス制御・計測工業によって使用されている。通常、そのような装置は、比較的荒れた環境の中、屋外に設置することができ、気候的極限の温度、湿度、振動、機械的衝撃などに耐えることができるよう、フィールド硬化エンクロージャを有する。これらの装置はまた、通常、比較的低い電力で作動することができる。たとえば、現在、作動電力のすべてを公知の4−20mAループから受けるフィールド装置が利用可能である。
【0003】
一部のフィールド装置はトランスデューサを含む。トランスデューサとは、物理的入力に基づいて出力信号を生成する装置又は入力信号に基づいて物理的出力を生成する装置をいうものと理解される。通常、トランスデューサは、入力を、異なる形態を有する出力に変形する。トランスデューサのタイプとしては、種々の分析機器、圧力センサ、サーミスタ、熱電対、ひずみゲージ、流量トランスミッタ、ポジショナ、アクチュエータ、ソレノイド、インジケータランプなどがある。
【0004】
アナログフィールド装置は、2線式プロセス制御電流ループによって制御室に接続され、各装置が一般に1本の2線式制御ループによって制御室に接続されていた。一般に、2本のワイヤの間の電圧差は約12〜45ボルトの範囲に維持される。一部のアナログフィールド装置は、電流ループ中を流れる電流を、感知されたプロセス変量に比例する電流に変調することにより、信号を制御室に送信する。他のアナログフィールド装置は、制御室によって設定され、ループ中を流れる電流信号の大きさに基づいて動作を実行することができる。
【0005】
追加的又は代替的に、プロセス制御ループは、フィールド装置との通信に使用されるデジタル信号を運ぶことができる。デジタル通信は、接続されている装置に関してアナログ通信よりもずっと多くの詳細を提供する。そのうえ、デジタルフィールド装置はまた、そのようなフィールド装置ごとに別個の配線を要しない。デジタル式に通信するフィールド装置は、制御室及び/又は他のフィールド装置に応答し、それらと選択的に通信することができる。さらに、そのような装置は、さらなる信号、たとえば診断及び/又はアラームを提供することもできる。
【0006】
公知のプロセス通信法は、単に、4〜20mAアナログ通信ループ、ハイブリッドプロトコル、たとえばHART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)規格又は全デジタルプロトコル、たとえばFOUNDATION(商標)フィールドバス規格を使用することを含む。
【0007】
時間とともに、プロセス装置内にある又はプロセス装置に接続された物理的要素は変化及び/又は老化する。これらの変化は、温度又は極限的圧力、腐食などのような外力へのフィールド装置の露出によるものということができる。したがって、ときにはフィールド装置を校正することが必要である。これは、多くの場合、校正器を使用して達成される。校正器は、メンテナンス技術者をして、既知の物理的入力(たとえば圧力、温度など)を適用したのち、フィールド装置がその既知の物理的入力に応答して出力する値を記録することを含む一連のステップを踏ませる。一部の公知の校正器は、アセットマネジメントシステムから「ルート」のダウンロードを受けることができる。このルートは、校正されるべきフィールド装置及び装置ごとに実施されるべきステップをリストする。ルートの最後で、フィールド装置に関して校正器によって取得された校正データのすべてをアップロードしてアセットマネジメントシステムに戻すことができる。このプロセスの使用が、各フィールド装置に関連するすべての校正活動の完全で正確なドキュメント生成を保証する。校正に関するデータを取得し、そのようなデータをその後のアセットマネジメントシステムへのアップロードに備えて一時的に記憶する校正器は、ドキュメント生成校正器として公知である。
【発明の概要】
【0008】
フィールド装置のための校正器が提供される。一つの態様で、校正器は、少なくとも二つのプロセス通信プロトコルにしたがって通信する能力を有し、通信を作動させる前に、取り付けられたプロセス接続を試験する。もう一つの態様で、校正器は、全デジタルプロセス通信プロトコルを使用してフィールド装置と通信しながらも少なくとも一つの本質安全要件への適合を容易にするための隔離回路を含む。もう一つの態様では、フィールド装置の装置記述(デバイスディスクリプション)にアクセスして校正タスクを生成することを含む、フィールド装置を校正する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施態様の校正器の図である。
【図2】本発明のもう一つの実施態様の校正器の概略図である。
【図3】本発明の実施態様の校正システムの概略図である。
【図4】本発明のもう一つの実施態様の校正システムの概略図である。
【図5】本発明のもう一つの実施態様の校正器の概略図である。
【図6】本発明の実施態様にしたがってフィールド装置を校正する方法の流れ図である。
【図7】本発明の実施態様にしたがってフィールド装置を校正するもう一つの方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施態様の校正器100の概略図である。校正器100は、いずれも制御装置124に結合されている全デジタルループ通信モジュール120及び二次ループ通信モジュール118を含む。二次通信モジュール118は、校正器100がモジュール120によって提供されるプロセス通信プロトコルとは異なるプロセス通信プロトコルにしたがって通信することを可能にする通信モジュールであることができる。たとえば、モジュール120がFOUNDATION(商標)フィールドバスプロセス通信プロトコルに準ずる通信を提供するならば、モジュール118は、異なるプロトコル、たとえばHART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)プロトコル又は他の適切なプロトコルに準じる通信を提供することができる。プロセス制御・計測工業で使用される公知の全デジタル通信プロトコルの例は、FOUNDATION(商標)フィールドバス、Profibus-PA、FOUNDATIONフィールドバス(商標)高速イーサネット(HSE)及びIEC/ISASP50互換フィールドバスを含む。一般に、通信チップは、全デジタルプロセス通信プロトコルのタイプごとに公知である。本発明の実施態様にしたがって、校正器100は、異なるプロセス通信プロトコルにしたがって通信するための二つ以上の別個のループ通信モジュールを備える。さらには、二次ループ通信モジュール118は、従来技術の校正器の機能を提供するためのプロトコルに準じる通信を含むことができる。さらには、校正器100は、異なるプロセス通信タイプのフィールド装置を校正するために使用することができるため、所与の校正ルートがフィールド装置100のメモリ128にダウンロードされるとき、そのような校正ルートは、フィールド装置タグごとに、そのフィールド装置に適したプロセス通信タイプの指示を明示的に含むものと考えられる。したがって、フィールド装置ランを製造する技術者は、どのフィールド装置がどのプロトコルで通信するのかを覚えておく必要はなく、校正器100が、校正されるフィールド装置の装置タグに依存してその通信タイプを自動的に変更することができる。追加的又は代替的に、校正器は、プロセス通信タイプの指示を技術者に提供することができ、すると、その技術者は、適宜、その指示に応じる又はその指示を無視することができる。
【0011】
制御装置124は、好ましくは、マイクロプロセッサ又はプログラムされたタスクを実行するためのプログラム命令を実行することができる他の形態の回路である。制御装置124はユーザインタフェース126及び計測回路122に結合されている。さらには、制御装置124はまた、メモリ128に結合されて、校正器100が校正情報を記憶又は他のやり方でドキュメント化することを可能にする。
【0012】
本発明の一つの実施態様にしたがって、校正器100は、それが結合されているプロセス通信ループのループタイプ又はそれが結合されているフィールド装置の通信タイプを試験して、予想される通信タイプが、校正器100が接続されている装置又はループと合致することを保証する。したがって、フィールドメンテナンス技術者が、不注意に校正器100を間違ったフィールド装置に結合したとしても、適合しないプロセス通信を使用する誤ったデータ通信は検出及び/又は防止されることができる。
【0013】
検出回路130は制御装置124及びプロセスループ接続132に結合されている。検出回路130は、プロセスループの端子間の電圧又はフィールド装置接続132中を流れる電流を感知するための適切な回路を含む。
【0014】
装置がどのタイプの有線プロセス通信プロトコルに結合されているのかを決定する方法は公知である。具体的には、米国特許第7,027,952B2号は、マルチプロトコル手持ち型フィールドメンテナンスツールのためのデータ送信方法を教示している。したがって、検出回路130は、プロセス通信端子間の小さな振幅の短期間電流を吸い込むことができる回路を含むことができる。検出回路はさらに、DC電圧、通信信号振幅を計測するための回路を含むことができ、適切な信号コンディショニング回路を含むことができる。接続132によって制御装置124が非ゼロ電圧を計測するならば、制御装置124はまず、電圧の大きさを測定する。HART(登録商標)プロセス制御ループでは約12〜50ボルトDCの電圧が生じて計測されるが、FOUNDATION(商標)フィールドバスループ接続では約9〜92ボルトD/Cの電圧が生じて計測される。ひとたびDC電圧が認められると、極性を計測して、接続132の端子が正しい極性で結合されているかどうかを決定する。極性が誤りであるならば、ユーザインタフェース126を介して適切な指示が発される。ただし、HART(登録商標)接続の場合、極性は関係ない。
【0015】
先に示したように、HART(登録商標)及びフィールドバスプロセス通信ループの両方で使用される作動DC電圧の間には重複がある。したがって、DC電圧を使用するだけで、校正器100が接続されているプロセス通信端子のタイプを確実に示すことはできない。接続132のためのループタイプを決定するために、検出回路130は接続のDCインピーダンスを計測する。回路130は、好ましくは、短期間、たとえば5ミリ秒間、1ミリアンペアの電流を吸い込むことによってDCインピーダンスを計測する。この外乱が、有線接続そのもののDCインピーダンスに比例する電圧パルスを生成する。HART(登録商標)及びFOUNDATION(商標)フィールドバスプロセス接続の間には示差的なインピーダンス範囲がある。追加的又は代替的に、異なる有線プロセス通信プロトコルが使用される実施態様では、ループプロトコルタイプを計測し、明確にするための様々な技術が考えられる。検出された通信プロトコルタイプが、そのループ通信モジュールが設計されている有線プロセス通信のタイプに合致するならば、動作は正常に始まる。しかし、合致しないならば、適切な指示が発される。
【0016】
図1は、少なくとも一つの全デジタルループ通信モジュール120及びさらなる通信モジュール118を有する校正器100を示すが、適切な数の通信モジュールを使用することができると考えられる。好ましくは、所与のフィールド装置の予想される通信タイプ及び/又はプロセス通信信号の試験に基づいて一つの通信モジュールが制御装置124によって選択される。
【0017】
図2は、本発明の実施態様の校正器の概略図である。図2に示された様々な要素は、図1に示されたものと同じであることができ、同種の構成部品には同じ番号が付されている。校正器100(図1に関して説明)と校正器200(図2に関して説明)との主な違いは、校正器200が計測回路を含まないということである。その代わり、校正器200は、内蔵された校正ソース220を含む。制御装置124が校正ソース220に直結され、校正ルーチンの一部として、プログラム命令又は信号を介して、ソース220をして取り付けられたフィールド装置に対して適切な校正出力を生成させる。校正出力の例は、熱電対のような温度センサを模倣又は他のやり方でシミュレーションするために特定のミリボルト出力を提供すること、RTDのような抵抗ベースのセンサ又はひずみゲージベースの圧力センサを模倣又は他のやり方でシミュレーションするために特定の抵抗出力を提供する又は他のやり方で結合すること、及び/又は圧力センサを試験するための特定の圧力出力又は他の適切な出力を提供することを含むことができる。確かに、ソース220によって提供される出力の多様性が大きければ大きいほど物理的装置は大きくなり、それが、フィールド技術者によって運ばれるに違いない装備全体の重量を増す。
【0018】
図3は、本発明のもう一つの実施態様の校正システム300の概略図である。校正システム300は校正器302及び汎用校正ソース304を含む。システム300は、フィールド装置12と校正器302のループ通信モジュール308又はモジュール314との間の接続306により、例示的なフィールド装置12に動作可能に結合されている。図3に示すように、校正器302は、好ましくは、多数の異なるタイプのプロセス通信ループ又は様々なタイプのプロセス通信プロトコルにしたがって通信するフィールド装置に結合し、それらを介して通信するために、複数のループ通信モジュールを含む。校正器302はユーザインタフェース310を含み、このユーザインタフェースは、好ましくは、表示及び入力機構、たとえばキーパッドを含む。校正器302はさらに、ループ通信モジュール314及び308に結合された制御装置312を含む。さらには、制御装置312はまた、近距離ワイヤレス入出力モジュール316及びメモリ328に結合されている。メモリ328は、制御装置312が一つ以上の校正の間に得られた情報を維持又は他のやり方でドキュメント化することを可能にする。この情報は、その後、適切なアセットマネジメントシステム、たとえば米テキサス州AustinのFisher-Rosemount Systems社から市販されているAMS(商標)Suite: Intelligent Device Managerにアップロードすることができる。適切なワイヤレス近距離入出力モジュールとしては、たとえば光学又は無線周波数通信を使用して通信するものがある。無線周波数通信の適切な例は、公知のBluetooth無線周波数通信及びIEEE 802.11b又はIEEE 802.11gに準じるWi-Fi(wireless fidelity)通信を含む。確かに、今後開発されるかもしれない他の比較的近距離の無線周波数通信を近距離入出力モジュール216に使用することもできる。
【0019】
汎用校正ソース304は、校正器302の近距離入出力モジュール316と相互作用するように構成されたワイヤレス近距離入出力モジュール330を含む。さらには、ソース304は、近距離入出力モジュール330を介して制御装置312と通信するように構成された制御装置332を含む。好ましくは、制御装置332はマイクロプロセッサである。制御装置332はまた、制御装置332からの命令に基づいて一つ以上の既知の物理的信号を発するように構成された出力制御モジュール334に結合されている。出力制御モジュール334は、電気出力、たとえば既知の抵抗又は既知の電圧を作動させるための一つ以上のマルチプレクサ及び/又は適切なスイッチを含むことができる。さらには、出力制御モジュール334は、一つ以上の既知の物理的信号、たとえば圧力を発生させるように構成されることもできる。ソース304は、ライン336に沿って出力を提供する出力制御モジュール334を示すが、現実には、校正のために様々な出力をフィールド装置に電気的、流動的又は他のやり方で結合するために、多数の端子及び/又はポートをソース304に設けることができる。システム300は、全デジタル通信ベースのフィールド装置及びハイブリッド通信フィールド装置の両方を含むフィールド装置との通信を、校正器302内のそれぞれの通信モジュールを使用して実施することができるという点で、フィールド装置を校正する際に幅広い融通性を提供する。さらには、校正器302からソース304によって受信される命令に基づいて、適切な既知の物理的出力をソース304によって提供することができる。このようにして、システム300を使用してHART(登録商標)ベースのプロセス圧力トランスミッタの校正を校正することができ、その後、校正されるべき次のフィールド装置はFOUNDATION(商標)フィールドバスベースのプロセス圧力トランスミッタであることができる。様々な通信モジュールを使用することによって通信の適合が容易に受け入れられる一方、ソース304は、校正器302から受信される命令にしたがって適切な既知の物理的入力を様々なフィールド装置に提供する。
【0020】
図4は、本発明のもう一つの実施態様の校正システム350の概略図である。校正システム350は、図3を参照して説明したものと同一であってもよい校正器302を含む。しかし、システム350は、ソース304を使用する代わりに、一つ以上の校正計測モジュール352を使用する。計測モジュール352は、一つ以上の適切なアナログ・デジタル変換器を含むことができる計測回路354を含む。さらには、計測回路354そのものが定期的に既知の物理的に入力に対して校正されて、特定の可変性ソースの正確な指示を提供するために装置352に依存することができるようにしている。計測モジュール352はまた、好ましくは、ワイヤレス近距離入出力モジュール334に結合されたマイクロプロセッサであってもよい制御装置332を含む。モジュール352の使用は、本質的に可変性のソースで校正を提供することを可能にするが、可変性の物理的入力は、モジュール352によって正確に変換される又は他のやり方で計測され、そのような計測がワイヤレス近距離入出力モジュール334及び316の間の通信を介して校正器302に送られる。このようにして、一つ以上の計測モジュール352を様々な可変性物理的入力とともに使用して、フィールド装置12の校正を提供することができる。システム350を使用するフィールド装置12の校正は、フィールドメンテナンス技術者に対して特定の物理的入力を適用するよう命令する(たとえば「中間範囲圧を適用せよ」)校正器302の形態をとる。すると、技術者は、可変性ソース356を作動させて、比較的中間範囲の圧力をフィールド装置12及びモジュール352の計測回路354に提供する。回路354は、それ自体の圧力センサ及びアナログ・デジタル変換器を使用して圧力を感知し、可変性圧力計測の正確な校正された示度を制御装置332に提供する。すると、制御装置332は、計測された圧力をワイヤレス近距離入出力モジュール334を介して校正器302に通信する。校正器302は、適用された圧力の示度をモジュール352から受け、また、フィールド装置12に問い合わせして、可変性ソースに関するそれ自体の計測値をループ通信モジュール308を介して提供する。二つの値が十分に合致するかどうかに依存して、フィールド装置メンテナンス技術者に対して特定の調節を行うよう命令することにより、又はプロセス通信ループを介してフィールド装置12とデジタル式に通信することにより、フィールド装置12に変更を加えることができる。いずれにしても、校正の結果は、好ましくは、メモリ328に記憶されて、校正器302がドキュメント化校正器として機能することを可能にする。多様な異なる物理的入力のために多様なモジュール352を使用することができると考えられる。たとえば、一つのモジュール352は、抵抗を感知するように構成されることができるが、別のモジュール352は、電圧を感知するように構成されることができる。さらに別のモジュール352は、圧力を感知するように構成されることができるなどである。
【0021】
本発明のもう一つの実施態様にしたがって、校正器は、本質安全要件に適合し、少なくとも一つの全デジタルプロセス通信プロトコルにしたがって通信するように構成されている。具体的には、校正器は、たとえば1988年10月にFactory Mutual Researchによって公布されたAPPROVAL STANDARD INTRINSICALLY SAFE APPARATUS AND ASSOCIATED APPARATUS FOR USE IN CLASS I, II AND III, DIVISION 1 HAZARDOUS (CLASSIFIED) LOCATION, CLASS NUMBER 3610に適合する回路及び設計制約を使用する。他の規格としてCSA及びCENELECがある。この規格への適合は、校正器が非常に揮発性又は爆発性の環境に存在するとき、その環境にとっての発火源を生成する可能性が低いことを保証するのに役立つ。図5は、本発明の実施態様の全デジタル校正器の概略図である。校正器500は、校正器200(図2を参照して説明)とでいくつかの類似点を有し、同種の構成部品には同じ番号が付されている。校正器500は、1個のループ通信モジュールを含むように示されている。しかし、様々な他のプロセス通信プロトコルにしたがって通信するためのさらなるモジュールを使用することもできる。校正器500は、ループ通信回路120とプロセス接続132との間に設けられた隔離回路502を含む。隔離回路502は、プロセス通信ループに通過することができるエネルギーの量を制限するという点で、公知の本質安全バリヤと同様に機能する。このような電流制限回路の例は、多すぎるエネルギーがプロセス通信ループに流れ込むことを阻止するための適切な配設にあるダイオード、抵抗器及び/又はキャパシタの使用を含む。隔離回路502の使用は、先に述べたような一つ以上の本質安全要件との適合を促進するのに役立つ。さらには、校正器500は、少なくとも一つの本質安全要件との適合を容易にする回路基板部品及び/又はトレース間隔要件を有することができる。さらには、校正器500は、少なくとも一つの本質安全要件との適合をさらに容易にするための電力管理回路及び/又はアルゴリズムを含むことができる。したがって、校正器500は、デジタル的にのみ通信するフィールド装置を校正することができる本質安全校正器である。校正器500の一つの典型的な例は、本質安全性のFOUNDATION(商標)フィールドバス校正器である。さらには、図5は、校正器500内に配置された一つ以上の校正ソース130を有する校正器500を示す。しかし、本発明の実施態様は、校正器500に対して外部にあることができる一つ以上の適切な校正ソースに動作可能に結合された校正器500で実施することもできるということが明示的に考えられる。
【0022】
図6は、本発明の実施態様にしたがって装置記述に基づいて汎用校正を実施する方法の流れ図である。方法600は、ブロック602で始まり、そこで校正器をフィールド装置に結合する。そのような結合は、上記のようなマルチプロトコル校正器の使用及び接続されるプロセス通信ループのループタイプを安全に決定するための技術の使用を含むことができる。しかし、ブロック602は、単に任意の校正器を任意のフィールド装置に結合することを含むことができる。次に、ブロック604で、フィールド装置に関連する装置記述にアクセスする。装置記述は、フィールド装置中のパラメータをコンピュータ読み取り可能なフォーマットで記述するために使用されるソフトウェア技術である。この装置記述(DD)は、校正器上で実行されるソフトウェアアプリケーションがフィールド装置からデータを検索し、使用するために必要な情報のすべてを含む。装置記述に関するさらなる情報は、Fisher-Rosemount Systems社を譲受人とする米国特許第5,796,602号で見いだすことができる。
【0023】
装置記述は、特定のタイプのフィールド装置に関して利用可能な情報のすべてを指定する、通信プロトコル又は特定の装置記述言語(DDL)にしたがって書かれたファイルである。スマートデバイスのための装置記述は通常、五つのカテゴリーの情報、すなわち、データのタイプを含む、装置に関連するパラメータ及び/又は性質の識別、それらのパラメータ及び/又は性質の定義づけ(たとえば、これらのパラメータ及び/又は性質が変数、アレイ又はレコード及びそれぞれに対応するユニットであるのか)、フィールド装置との間でメッセージを送受信する方法に関する情報を含む、フィールド装置との通信に必要なコマンド、ユーザインタフェースデータ、たとえばパラメータ又は性質関連データを論理的にグルーピングする既定のメニュー及び表示、情報を命令の形態でユーザに提供する及び/又はメッセージをフィールド装置に送って、たとえばスマート装置に対して校正又は他のルーチンを実施するメソッドを含む、フィールド装置に関連してホスト装置によって実行されるメソッド又はプログラムならびにユーティリティ情報を指定する。
【0024】
フィールド装置のための装置記述(DD)ソースファイル(人間読み取り可能なフォーマットで書かれている)を開発するためには、開発者は、先に識別した情報のカテゴリーによって定義されるように、その装置に関連する通信プロトコルのDDLを使用して、装置のコア又は本質的特性を記述し、フィールド装置の各機能及び特徴に関するグループ固有及び売り手固有の定義を提供する。その後、たとえばトークナイザを使用して、開発されたDDソースファイルを二進フォーマットにコンパイルして、機械読み取り可能なファイル又はDDオブジェクトファイルを生成することができる。装置記述オブジェクトファイルは通常、装置製造者又は第三者開発者によってユーザに提供されて、ホストシステム、たとえばフィールド装置管理システム中に記憶される。装置記述言語及び装置記述は当該技術分野で一般に公知であるが、DDL、特にフィールドバスDDLの特定の機能及びフォーマットに関連するさらなる情報は、「InterOperable System Project Fieldbus Specification Device Description Language」と題するInterOperableシステムプロジェクトファンデーションマニュアル(1993)に見いだすことができる。HART DDLに関する同様な文書がHART Communication Foundationによって提供されている。
【0025】
より最近には、電子装置記述言語(EDDL)が開発され、今やIEC規格61804−3として標準化されている。この新規なEDDLは1990に対して完全に後方互換性である。2000万を超える互換機のための装置記述がフィールドに設置されており、容易にアクセスすることができる。
【0026】
ブロック604で、該当する装置記述を、ブロック606に示すように、たとえばフィールド技術者がフィールドに入る前に校正器にプレロードすることもできるし、ひとたび校正器がフィールド装置に結合されたのちに得ることもできる。この状況がブロック608に示されている。これに関して、校正器は、装置記述を、取り付けられたフィールド装置から直接得ることもできるし、タグ又は他の適切な情報、たとえば無線周波数識別(RFID)タグを介してフィールド装置を識別したのち、インタネット又は別の適切なネットワークを介するワイヤレス通信によってデータベースにアクセスして該当する装置記述を得ることもできる。ブロック610に示すように、装置記述は、装置記述言語(DDL)から事前に形成されたものであることもできるし、ブロック612に示すように、比較的新しい電子装置記述言語であることもできる。ひとたび装置記述がアクセスされると、ブロック614が実行され、そこで、装置記述に基づいて少なくとも一つの校正タスクが校正器によって生成される。したがって、装置記述が、フィールド装置が0〜1000PSIの範囲を有するプロセス流体圧力トランスミッタであることを示すならば、校正器によって生成される適切な校正タスクは、0圧力での試験、500PSI圧力での試験及び1000PSI圧力での試験を含むかもしれない。さらには、ブロック614は、フィールド技術者がユーザインタフェース126(図1に示す)を介してさらなる校正タスクを指定することを含むことができる。ブロック616で、フィールド装置の校正が始まる。ブロック616で、既知の入力をフィールド装置に対して生成する。次いで、制御はブロック618に移動し、そこで、校正器が、既知の入力に関連したフィールド装置の出力を読む。次に、ブロック620で、既知の入力のフィールド装置の計測値が許容可能な公差範囲内であるかどうかを決定する。このステップは、校正器内に常駐するプログラムによって自動的に実施されることもできるし、フィールド技術者によって無効化される又は他のやり方で手作業で設定されることもできる。フィールド装置の計測値が公差範囲内にないならば、制御はブロック622に移動し、そこで、フィールド装置は技術者によって調節される。ブロック622ののち、制御は、フィールド装置の計測値が公差範囲内であった場合に移動するところであるブロック624に移動する。ブロック624で、フィールド装置のためのすべての校正タスクが完了したかどうかを決定する。完了したならば、制御はライン626に沿って移動し、方法600は終了する。しかし、すべての校正タスクが完了したわけではないならば、制御はライン628に沿ってブロック630に移動し、次のタスクに移動し、ブロック616に戻ってフィールド装置への次の既知の入力を生成する。
【0027】
図7は、本発明の実施態様にしたがってフィールド装置を校正する方法の流れ図である。方法700はブロック702で始まり、そこで、校正器を、校正が望まれるフィールド装置に通信的に結合する。次に、ブロック704で、既知の物理的入力をフィールド装置に適用する。既知の入力を適用することは、既知の物理的信号のソースをフィールド装置に結合すること又は比較的可変性の物理的入力を生成し、校正された正確な計測モジュールで、変数の大きさを計測又は他のやり方で変換することを含むことができる。次に、ブロック706で、ブロック706で示すように、本質的に安全なやり方でデジタル式に通信する校正器を使用して、既知の入力に対応する値を校正対象のフィールド装置から読む。ブロック708で、ブロック708で示すように、フィールド装置が既知の物理的入力を正確に変換した程度に基づいて、フィールド装置を選択的に調節する。フィールド装置を選択的に調節することは、一つ以上の調節を実行するようフィールドメンテナンス技術者に命令すること又はフィールド装置とデジタル式に通信してソフトウェアによる調節を生成することを含むことができる。最後に、ブロック710で、フィールド装置の校正に関する情報を記憶する。そのような情報の例は、As Found/As Leftデータ、フィールド装置のタグ番号、校正が実施された日時及び/又は校正を実施したフィールドメンテナンス技術者の身元を含む。確かに、校正に関連する他の形態のデータを記憶することもできる。
【0028】
校正実行が完了すると、フィールドメンテナンス技術者は通常、プロセス施設の制御室に戻り、校正データを校正器からアセットマネジメントシステムにアップロードする。このようにして、フィールドメンテナンス技術者は、異なるフィールド装置に対する膨大な校正を容易に実施し、そのような校正情報をアセットマネジメントシステム中に容易に維持することができる。
【0029】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を説明したが、当業者は、本発明の本質及び範囲を逸することなく、形態及び詳細における変更を加えることができることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド装置への既知の入力を生成するための校正ソース、
プロセス通信ループに動作可能に結合可能な第一のループ通信モジュールであって、完全にデジタル式に通信するように構成されている第一のループ通信モジュール、
プロセス通信ループに動作可能に結合された第二のループ通信モジュール、
プロセス通信ループに動作可能に結合可能な検出回路、及び
第一及び第二のループ通信モジュールならびに検出回路に結合された制御装置であって、校正の前に検出回路を使用してプロセス通信のタイプを試験し、検出されたプロセス通信のタイプに適合するループ通信モジュールを使用してフィールド装置と通信し、フィールド装置を校正するように構成されている制御装置
を含むフィールド装置校正器。
【請求項2】
校正ソースが校正器内に配置されている、請求項1記載のフィールド装置校正器。
【請求項3】
校正ソースが、フィールド装置への比較的未知の入力を計測し、入力の校正追跡可能な表現を提供する、校正器内の計測回路を含む、請求項1記載のフィールド装置校正器。
【請求項4】
本質安全性である、請求項1記載のフィールド装置校正器。
【請求項5】
デジタル式にのみ通信するフィールド装置を校正するための校正器であって、
フィールド装置への既知の入力を生成するための校正ソース、
フィールド装置に動作可能に結合可能な隔離回路、
フィールド装置と通信するように構成されている、隔離回路に結合されたループ通信モジュール、及び
フィールド装置と通信し、フィールド装置を校正するように構成されている、ループ通信モジュールに結合された制御装置
を含む校正器。
【請求項6】
本質安全性である、請求項5記載の校正器。
【請求項7】
フィールド装置を校正するためのシステムであって、
第一の全デジタルプロセス工業規格通信プロトコルにしたがって通信するように構成された第一のループ通信モジュール、
第一のループ通信モジュールに動作可能に結合された制御装置、
制御装置に結合され、少なくとも一つの校正に関する情報を記憶するように構成されたメモリ、及び
近距離ワイヤレス入出力通信回路
を含む校正器、ならびに
校正器の近距離入出力通信回路と通信するように構成された近距離ワイヤレス入出力通信回路、
近距離入出力通信回路に結合された制御装置、及び
制御装置に結合され、制御装置からの命令に基づいてフィールドへの物理的出力信号を生成するように構成された出力制御モジュール
を含む第一の汎用ソース
を含むシステム。
【請求項8】
第二の汎用ソースをさらに含む、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
フィールド装置を校正する方法であって、
校正器をフィールド装置に結合すること、
フィールド装置の装置記述にアクセスすること、
フィールド装置の装置記述に基づいて少なくとも一つの校正タスクを生成すること、
フィールド装置への既知の入力を生成することによって少なくとも一つの校正タスクを実行すること、
フィールド装置と通信して、既知の入力に対応するフィールド装置の計測値を決定すること、及び
フィールド装置の計測値が入力の既知の値に十分に近いかどうかを決定すること
を含む方法。
【請求項10】
校正器をフィールド装置に結合する前に装置記述を校正器にロードする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
装置記述がEDDL記述である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
フィールド装置との通信が完全にデジタル式に実施される、請求項9記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−507141(P2010−507141A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532435(P2009−532435)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/021844
【国際公開番号】WO2008/048501
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.Bluetooth
【出願人】(506266023)フィッシャー−ローズマウント・システムズ・インコーポレーテッド (37)
【氏名又は名称原語表記】Fisher−Rosemount Systems, Inc.
【Fターム(参考)】