説明

改良されたポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体

【課題】透明性や機械特性等の物性が改善されたポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体、並びに樹脂組成物の吸熱ピークを増加させる方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂100重量部に対して 一般式(1)R−(CONHR)n (1) [式中、nは、3又は4の整数を表す。]で表される少なくとも一種のアミド化合物をポリプロピレン樹脂組成物又は該樹脂成形体に0.001〜3重量部含有させ、溶融樹脂を特定の温度で固化及びアニーリング工程を行うことで、透明性や機械特性が改善されたポリプロピレン樹脂組成物又は該樹脂成形体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体の透明性、機械特性を改良させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、成形性、機械特性、電気特性等が優れているために、フィルム成形、シート成形、ブロー成形、射出成形等の素材として、様々な分野に応用されている。しかし、当該樹脂は、一般的には優れた物性を有しているものの、透明性、結晶性、剛性が低いという問題点があった。これらの問題点を改善するために、アミド化合物等を造核剤として活用する技術が提案されている(特許文献1〜4参照)。
これらアミド化合物を含有するポリオレフィン樹脂組成物は、結晶化速度が速く、該組成物を射出成形した場合には成形サイクル時間が短縮されたり、成形体の透明性、機械特性(剛性など)が向上したりする。
【0003】
【特許文献1】特開平6−192496号公報
【特許文献2】特開平7−242610号公報
【特許文献3】特開平7−278374号公報
【特許文献4】特開平8−100088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では末端ユーザーのポリオレフィン系樹脂の成形体の多様化・高機能化などの高度な要望に対して、更なる透明性、機械特性を付与し、物性の改善が行われたポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリプロピレン樹脂に特定のアミド化合物を特定量含有させ、特定の温度で溶融した樹脂組成物を、特定の温度で固化及びアニーリングさせることにより、示差走査熱量測定(以下DSCと表記する)においてポリプロピレン樹脂のα晶由来のピークより低温度側に観測される吸熱ピークを示す組成を含有するポリプロピレン樹脂組成物及び当該樹脂成形体が得られ、これらの透明性が良好であり、且つ機械特性が改善されていることを見出した。かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。

【0006】
即ち、本発明は、以下の項に記載の発明を提供するものである。
【0007】
項1
ポリプロピレン樹脂100重量部に対して
一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド化合物を0.001〜3重量部含有するポリプロピレン樹脂組成物であって、下記式で表されるYが5〜90%であるポリプロピレン樹脂組成物。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%)
ここで、ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【0008】
項2
Yが20〜90%であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【0009】
項3
ポリプロピレン樹脂100重量部に対して
一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド化合物を0.001〜3重量部含有するポリプロピレン樹脂成形体であって、下記式で表されるYが5〜90%であるポリプロピレン樹脂成形体。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%)
ここで、ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【0010】
項4
Yが20〜90%であることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【0011】
項5
ポリプロピレン樹脂、100重量部に対して、
一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド化合物を0.001〜3重量部含有させることにより、ポリプロピレン樹脂組成物又はポリプロピレン樹脂成形体において下記式で表されるYを5〜90%に増加させる方法。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%) 計算式1
ここでYは、組成Xの含有量を表す。ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【0012】
項6
(1)溶融プロピレン樹脂に対して、一般式(1)で表されるアミド化合物を、分散又は溶解させる工程、及び
(2)(i)プロピレン樹脂を、40℃〜150℃の温度で固化させる工程、又は(ii)40℃〜150℃の温度で固化させる工程及びアニーリング工程を行うことにより,ポリプロピレン樹脂組成物又はポリプロピレン樹脂成形体の組成Xの含有量を増加させる請求項5に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂に特定のアミド化合物を特定量含有させることによりDSC測定においてポリプロピレン樹脂のα晶の融点ピークのほかに、その低温側(約15℃低い)に特定の吸熱ピークが観測されるポリプロピレン樹脂組成物又は成形体を得る事ができる。
この特定の吸熱ピークを有するポリプロピレン樹脂組成物又は成形体は、組成X(詳細は後述する)を含有し、組成Xを含有しない通常のポリプロピレンと比べて融点が低く、加熱下において変形に要する力が小さい等の特徴を有し、二次加工性の改善等に非常に有用であり、所望する混合方法、成形加工条件下にて成形することにより、容易に組成Xを含有した成形体を得ることができる。また、当該組成Xを含有するポリプロピレン成形体は、良好な透明性を示し、容器、シート、フィルム等の幅広い分野への応用が可能である。特に、溶融プロピレン樹脂に対して、該アミド化合物を、溶解乃至溶融させる工程を具備し、特定の温度で固化及びアニーリングを行うことにより、当該樹脂組成物及びその成形体のDSC上の組成Xに由来する吸熱ピークの割合を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0015】
<ポリプロピレン樹脂>
本発明に係るポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体であって、具体的には、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンを主体としたプロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー及び前記ポリプロピレン系樹脂と少量の熱可塑性樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1とのブレンドポリマー等が例示される。
【0016】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(テトラエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系やメタロセン触媒も使用できる。
【0017】
結晶性ポリプロピレン系樹脂成分のメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 6758-1981)は、その適用する成形方法により適宜選択され、通常、0.1〜100g/10分程度、好ましくは0.5〜70g/10分程度である。
【0018】
<アミド化合物>
本発明にかかる一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しく は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で示されるアミド化合物は、所定のポリカルボン酸又はその酸無水物と1種若しくは2種以上のモノアミンとを、従来公知の方法に従ってアミド化することにより容易に調製することができる。
【0019】
上記1,2,3−プロパントリカルボン酸アミド化合物として具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリドデシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリオクタデシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリアニリド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸[シクロヘキシルジ(2−メチルシクロヘキシル)トリアミド]、1,2,3−プロパントリカルボン酸[ジシクロヘキシル(2−メチルシクロヘキシル)トリアミド]等の1,2,3−プロパントリカルボン酸アミド等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0020】
上記1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸アミド化合物としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラドデシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラオクタデシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸[ジシクロヘキシルジ(2−メチルシクロヘキシル)テトラアミド]等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0021】
<好ましいアミド化合物>
前記アミド化合物の中でも、一般式(1)におけるRがシクロヘキシル基又は置換基として炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するシクロヘキシル基、特にメチルシクロヘキシル基であるアミド化合物がより好ましい。具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)等が好ましいアミド化合物として例示される。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる
【0022】
本発明に係るアミド化合物の結晶系は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶等の任意の結晶系が使用できる。これらの結晶も公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。
【0023】
本発明に係るアミド化合物は、若干不純物を含むものであってもよい。一般式(1)で表されるアミド化合物の純度が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に好ましくは97重量%以上が推奨される。不純物としては、反応中間体又は未反応体由来のモノアミドジカルボン酸若しくはそのエステル、ジアミドモノカルボン酸若しくはそのエステル、アミド−イミド構造やビスイミド構造等のイミド骨格を有する化合物などが例示される。
【0024】
本発明に係るアミド化合物の粒径は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、溶融ポリプロピレン樹脂に対する溶解速度(溶解時間)の点からできる限り粒径が小さいものが好ましい。具体的には、通常、レーザー回折光散乱法で測定することで得られる最大粒径が200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm、特に好ましくは10μm以下である。
【0025】
該アミド化合物の最大粒径を上記範囲内に製造する方法としては、この分野で公知の慣用装置を用いて微粉砕し、これを分級する方法等が挙げられる。具体的には、流動層式カウンタージェットミル100AFG(商品名、ホソカワミクロン社製)、超音速ジェットミルPJM−200(商品名、日本ニューマチック社製)等を用いて微粉砕並びに分級する方法が例示される。
【0026】
本発明に係るアミド化合物は、5%重量減少温度が280℃以上、好ましくは300℃以上であるアミド化合物が推奨される。当該熱安定性の優れたアミド化合物は、ポリプロピレン樹脂と供に溶融混合する際に熱分解を起こさず、又樹脂の分解を促進しないため好適である。
【0027】
<ポリプロピレン樹脂組成物>
本発明にかかるポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、前述した一般式(1) で表されるアミド化合物を0.001〜10重量部、好ましくは0.001重量部〜3重量部、より好ましくは0.01重量部〜3重量部含有し下記計算式1で表されるYが5〜90であるポリプロピレン樹脂組成物である。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%) (計算式1)
Yは、DSCにおいてポリプロピレン樹脂のα晶の融点ピークの低温側に観測される特定の吸熱ピークの原因となる組成(以降「組成X」と表記する)の含有量を表す。ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
本発明のポリプロピレン樹脂の組成Xの含有量Yは5〜90%であり、20〜90%が好ましい。以下に本発明の樹脂組成物のDSC測定における吸熱ピークについて詳述する。
【0028】
<本発明のポリプロピレン樹脂組成物のDSC吸収ピークについて>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物及び成形体は、DSC測定においてポリプロピレン樹脂のα晶の融点ピークのほかに、その低温側(約15℃低い)に「組成X」由来の吸熱ピークを持つ。
ポリプロピレン樹脂組成物全結晶領域中に占める組成Xの割合を測定する方法としては、具体的には、α晶および組成Xの融解由来の吸熱ピークの立ち上がりと立ち下がりのベースラインを決定し、ピークとベースラインで囲まれた面積比を全結晶の融解エネルギーに対するα晶と組成Xの融解エネルギー比とし、この値を含有量とする。図1にDSCチャートの具体例を示す。
組成Xの生成は前記のとおり樹脂組成物に添加するアミド化合物の種類、量、配合方法、配合条件および成形条件(冷却速度など)によって変動するが、本発明の樹脂組成物は図1にDSCチャートの具体例を示すように明確な吸収ピークをもつものである。
【0029】
<その他の添加剤>
さらに、本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、ポリプロピレン用改質剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0030】
上記ポリプロピレン用改質剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2002年1月)に記載されている各種添加剤が挙げられ、より具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾテトラアゾール系化合物等)、酸化防止剤(フェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イオウ系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加剤の他、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料、加工助剤、他の核剤等の各種添加剤が例示される。その添加量は、本発明の所定の効果に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。
【0031】
<ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法>
上記に詳述した本発明のDSC測定において特定ピークが観測される組成Xを含有したポリプロピレン樹脂組成物は、従来公知のポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂組成物製造に適用される製造方法に加え、溶融混練後に後述する特定の温度条件下固化及びアニール温度する工程を具備することにより得ることができる。
【0032】
具体的には、ポリプロピレン樹脂(粉末状、顆粒状又はペレット状などの形態)に、アミド化合物及び必要に応じてその他の添加剤を配合し、常温で予め混合して、ドライブレンドタイプとし、これを溶融混練することで本発明のペレットタイプの樹脂組成物が得られる。
【0033】
予め混合する際に使用される混合装置としては、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機付混合機、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等、当該分野において常用される混合装置が挙げられる。
また、溶融混練する際に用いられる装置としては、従来公知の一軸或いは二軸スクリュー押出機、タンデム型混練押出機等が挙げられる。溶融混練時の樹脂温度は、通常160〜300℃、好ましくは160〜280℃である。溶融混練の際に、当該アミド化合物を溶融ポリプロピレン樹脂に溶解させておくことが、本発明の効果を発揮しやすく好ましい。
【0034】
尚、アミド化合物と、必要に応じてその他の添加剤をポリプロピレン樹脂に添加する方法としては、例えば
(i)アミド化合物と、必要に応じてその他の添加剤を、それぞれ別々にポリプロピレン樹脂に添加する方法、
(ii)予めアミド化合物と、必要に応じてその他の添加剤を混合してドライブレンドタイプの混合物とし、該混合物をポリプロピレン樹脂に添加する方法、
(iii)アミド化合物と、必要に応じてその他の添加剤、さらに必要に応じてバインダーとして、ワックス、溶剤、シリカ等の造粒助剤等と共に、予め所望の割合でドライブレンドした後、加熱若しくは湿式造粒してワンパック複合添加剤(顆粒状、粒状、ペレット状などの形態)とし、該複合添加剤をポリプロピレン樹脂に添加する方法などが挙げられる。
【0035】
本発明に係る、ポリプロピレン樹脂組成物の、所望の組成Xの含有量を得るための、溶融混練後の固化及びアニール温度は、40℃以上150℃以下であり、好ましくは40℃以上130℃、以下さらに好ましくは40℃以上120℃以下である。
【0036】
<ポリプロピレン樹脂成形体>
本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形する際、従来公知の方法に加え、溶融樹脂組成物を特定の温度条件下で固化及びアニール温度する工程を具備することより得られる。本発明のポリプロピレン樹脂成形体の製造方法(ポリプロピレン樹脂組成物の成形方法)は、同時に当該ポリプロピレン樹脂中の組成Xの含有量増加方法を提供するものである。
本発明に係るポリプロピレン樹脂成形体の組成Xの含有量Yは、下記、計算式1で表され、
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%) 計算式1
5〜90%であり、20〜90%が好ましい。
【0037】
<ポリプロピレン樹脂成形体の製造方法>
本発明の組成Xを含有するポリプロピレン樹脂成形体を得るためには、前述のペレットタイプの樹脂組成物を使用することが推奨されるが、ポリプロピレン樹脂とアミド化合物及びその他の添加剤のドライブレンドした本発明の範囲外であるDSC測定上特定のピークを含まない樹脂組成物も、樹脂成形体製造時の際に溶融樹脂組成物にアミド化合物が溶解乃至溶融する工程を経ることで、DSC測定上特定のピークを含有するポリプロピレン樹脂成形体を得ることができる。このポリプロピレン樹脂成形体は本発明の範囲内である。
【0038】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の成形方法は、ポリプロピレン樹脂の種類や重合度、アミド化合物の種類や配合量、又は所望のポリプロピレン樹脂中の組成X含有量などに応じて適宜選択される。かかる成形方法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押し出し成形、カレンダー成形、射出圧縮成形、射出ブロー成形、押出ブロー成形、射出押出ブロー成形、延伸ブロー成形、多層ブロー成形、押出サーモフォーム成形、回転成形、紡糸成形又はシート・フィルム成形等の既知の成形方法が挙げられる。当該成形体の形態としては、射出成形品、フィルム、シート、ボトル等のあらゆる種類の成形体として得ることができる。
【0039】
本発明に係る、ポリプロピレン樹脂成形体の、所望の組成X含有量Y%を得るために好ましいポリプロピレン樹脂組成物の溶融温度は、160℃以上240℃以下、より好ましくは160℃以上220℃、以下さらに好ましくは160℃以上200℃以下である。
【0040】
本発明に係る、ポリプロピレン樹脂成形体の、所望の組成X含有量Y%を得るための固化及びアニール温度は、40℃以上150℃以下、より好ましくは40℃以上130℃、以下さらに好ましくは40℃以上120℃以下である。
【0041】
本願のポリプロピレン樹脂組成物及び当該樹脂成形体は、従来公知のポリプロピレン樹脂と比べて融点が低く、加熱下において変形に要する力が小さい等の特徴を有し、二次加工性の改善等に非常に有用であり、所望する混合方法、成形加工条件下にて成形することにより、容易に組成Xを含有した色相の良好な成形体を得ることができる。
このポリプロピレン成形体は、容器、シート、フィルム等の幅広い分野への応用が可能である。この特性は、特に二軸延伸フィルムの表面粗面化等に効果的である。得られた表面粗面化フィルムは、ブロッキング防止性、印刷性、接着性等に優れ、包装用フィルム、印刷用紙、トレーシングペーパー、油浸型プラスチックコンデンサー等の分野で非常に有用である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
<融点:示差走査熱量法(DSC)>
示差走査熱量計(機種名「Diamond DSC」、パーキンエルマー社製)を用いて、JIS K 7121に準じて、吸熱ピークを求めた。得られた発熱ピークのピークトップを融点(℃)とした。融点が低い程、二次加工性の改善に有用であることを示す。
【0044】
<ポリプロピレン樹脂組成物及び成形体の組成Xの含有量:示差熱操作計(DSC)測定>
本発明において、「融点ピーク」とは、パーキン−エルマーDSC計測器(登録商標:Perkin−Elmer DSC instrument)(Diamond DSC)を用い、試料10mgをヘリウム雰囲気下で20℃/分で昇温したときえられるピークをいい、そのピークの頂点の温度を「融点ピーク温度」という。組成Xの含有量Y(%)は、下記計算式(1)で表される。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%)
ここでΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【0045】
<透明性(ヘイズ値(%))>
東洋精機製作所製のヘイズメーターを用いて、ASTM D1003に準じて成形体の試験片(肉厚1mm)のヘイズ値を測定した。得られた数値が小さい程、透明性に優れていることを示す。
【0046】
製造例1
攪拌機、温度計、冷却管及びガス導入口を備えた500mlの4ツ口フラスコに1,2,3−プロパントリカルボン酸(以下「PTC」と略記する。)9.7g(0.055モル)とN−メチル−2−ピロリドン100gを秤取り、窒素雰囲気下、室温にて攪拌しながらPTCを完全溶解させた。続いて、シクロヘキシルアミン18g(0.1815モル)、亜リン酸トリフェニル56.3g(0.1815モル)、ピリジン14.4g(0.1815モル)及びN−メチル−2−ピロリドン50gを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で4時間反応を行った。冷却後、反応溶液をイソプロピルアルコール500mlと水500mlの混合溶液中にゆっくり注ぎ込み、約40℃で1時間攪拌後、析出した白色沈殿物を濾別した。更に、得られた白色固体を約40℃のイソプロピルアルコール500mlで2回洗浄した後、100℃、133Paにて6時間乾燥した。
得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き106μmの標準篩い(JIS Z−8801規格)に通して、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド(以下、「PTC−CHA」と略記する。17.3g(収率 75%)を得た。
【0047】
製造例2
攪拌機、温度計、冷却管及びガス導入口を備えた500mlの四ツ口フラスコに1,2,3−プロパントリカルボン酸(以下「PTC」と略記する。)9.7g(0.055モル)とN−メチルピロリドン100gを秤取り、窒素雰囲気下、室温にて攪拌しながらPTCを完全溶解させた。続いて、2−メチルシクロヘキシルアミン(トランス体:シス体=74.3:25.7、GLC面積%)20.5g(0.182モル)、亜リン酸トリフェニル74.7g(0.182モル)、ピリジン14.4g(0.182モル)及びN−メチル−2−ピロリドン50gを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で4時間反応を行った。冷却後、反応溶液をイソプロピルアルコール500mlと水500mlの混合溶液中にゆっくり注ぎ込み、約40℃で1時間攪拌後、析出した白色沈殿物を濾別した。更に、得られた白色固体を約40℃のイソプロピルアルコール500mlで2回洗浄した後、100℃、133Paにて6時間乾燥した。
得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き106μmの標準篩い(JIS Z8801規格)に通して、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)(以下、「PTC−2MeCHA」と略記する)18.8g(収率74%)を得た。
【0048】
製造例3
攪拌機、温度計、冷却管及びガス導入口を備えた500mlの四ツ口フラスコに1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(以下「BTC」と略記する。)12.9g(0.055モル)とN−メチルピロリドン100gを秤取り、窒素雰囲気下、室温にて攪拌しながらBTCを完全溶解させた。続いて、シクロヘキシルアミン24.0g(0.242モル)、亜リン酸トリフェニル74.7g(0.182モル)、ピリジン14.4g(0.182モル)及びN−メチル−2−ピロリドン50gを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で4時間反応を行った。冷却後、反応溶液をイソプロピルアルコール500mlと水500mlの混合溶液中にゆっくり注ぎ込み、約40℃で1時間攪拌後、析出した白色沈殿物を濾別した。更に、得られた白色固体を約40℃のイソプロピルアルコール500mlで2回洗浄した後、100℃、133Paにて6時間乾燥した。
得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き106μmの標準篩い(JIS Z8801規格)に通して、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド(以下、「BTC−CHA」と略記する)20.6g(収率66%)を得た。
【0049】
実施例1
アイソタクチックホモポリプロピレン樹脂(MFR=30g/10分、以下、「h−PP」と略記する。)100重量部に、アミド化合物(A)として製造例1で製造したPTC−CHA0.15重量部を添加し、更にテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「IRGANOX1010」)0.05重量部、ステアリン酸カルシウム(日東化成社製)0.05重量部を添加し、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「IRGAFOS168」)0.05重量部を添加して、ヘンシェルミキサーで1000rpm、5分間ドライブレンドして、ブレンドタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。
次に、直径20mmの一軸押出機を用いて、そのブレンドタイプのポリプロピレン樹脂組成物を樹脂温度250℃で溶融混練して、押し出されたストランドを水冷し、得られたストランドを切断して、本発明のペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化温度120℃にて3分間保持し、室温まで冷却した該樹脂組成物を、DSCにて組成X含有量Yを測定したところ28%だった。
【0050】
実施例2
アミド系化合物(A)としてPTC−2MeCHAを用いた他は、実施例1と同様に行い、本発明のペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化温度120℃にて3分間保持し、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ24%だった。
【0051】
実施例3
アミド系化合物(A)としてBTC−CHA0.03重量部を添加する他は、実施例1と同様に行い、本発明のペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化温度120℃にて3分間保持し、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ23%だった。
【0052】
実施例4
実施例2にて得られたペレットタイプポリプロピレン樹脂組成物を樹脂温度180℃、金型温度40℃の条件下で射出成形し、ポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を調製した。得られた試験片のヘイズ値(1mm)を測定した。その結果を表2に示した。
【0053】
比較例1
アミド化合物を用いない以外は、実施例1と同様の操作を行い、ペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化温度120℃にて3分間保持し、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ組成X由来のピークは観測されなかった。
【0054】
比較例2
アミド化合物を用いない以外は、実施例1と同様の操作を行い、ペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化及びアニール工程を行わず20℃まで冷却を行った以外は実施例1と同様の操作を行い、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ組成X由来のピークは観測されなかった。
【0055】
比較例3
実施例1と同様の操作を行い、ペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化及びアニール工程を行わず20℃まで冷却を行った以外は実施例1と同様の操作を行い、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ組成X由来のピークは観測されなかった。
【0056】
比較例4
実施例2と同様の操作を行い、ペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化及びアニール工程を行わず20℃まで冷却を行った以外は実施例1と同様の操作を行い、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ組成X由来のピークは観測されなかった。
【0057】
比較例5
実施例2と同様の操作を行い、ペレットタイプのポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたペレットを250℃にて融解させた後、固化及びアニール工程を行わず20℃まで冷却を行った以外は実施例1と同様の操作を行い、その後室温まで冷却し、DSCにて組成X含有量を測定したところ組成X由来のピークは観測されなかった。
【0058】
比較例6
比較例1にて得られたペレットタイプポリプロピレン樹脂組成物を樹脂温度180℃、金型温度40℃の条件下で射出成形し、ポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を調製した。得られた試験片のヘイズ値(1mm)を測定した。その結果を表2に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、一般式(1)で表されるアミド化合物をポリプロピレン樹脂組成物に含有させることで、当該樹脂組成物中のDSC測定においてポリプロピレンのα晶由来のピークより低温度側に観測される特定の吸熱ピークを示す組成Xの含有量を増加させ得る。また当該樹脂組成物を成形する際、固化及びアニーリング温度を制御することで樹脂成形体中の所望の含有量を制御することができる。当該樹脂成形体は、融点及び密度の低減化や透明性等組成Xの形態に基づく物性が改善される。本発明の樹脂成形体は、例えば、飲料用容器、果汁用容器、ミネラルウォーター用容器等の食品容器、さらには、シャンプー、リンス、液体石鹸等のトイレタリー溶液用容器、酸性、中性又はアルカリ性の家庭用洗剤等の容器、液体化粧料用容器、アルコール、工業薬品等の容器、輸液ボトル等の医療容器等の各種容器、シートバック、ヘッドレスト、ニーボルスター、グローブボックスドア、計器パネル、バンパーフェイシア、バンパービーム、センターコンソール、吸気マニホールド、スポイラ、サイドモールディング、ピラー、ドアトリム、エアバッグカバー、HVACダクト、スペアタイヤカバー、流体タンク、リアウインドウの棚、共鳴器、トランクボードまたはアームレスト等、自動車両用物品、文具、玩具、雑貨等に好適に用いる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本願発明の樹脂組成物の示差走査熱量測定(DSC)のチャートである。ポリプロピレン樹脂α晶由来の吸熱ピークと、該ピークより低温領域に観測される組成X由来の吸熱ピークの特徴的なDSC曲線が観測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂100重量部に対して
一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド化合物を0.001〜3重量部含有するポリプロピレン樹脂組成物であって、下記式で表されるYが5〜90%であるポリプロピレン樹脂組成物。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%)
ここで、ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【請求項2】
Yが20〜90%であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂100重量部に対して
一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド化合物を0.001〜3重量部含有するポリプロピレン樹脂成形体であって、下記式で表されるYが5〜90%であるポリプロピレン樹脂成形体。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%)
ここで、ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【請求項4】
Yが20〜90%であることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項5】
ポリプロピレン樹脂、100重量部に対して、
一般式(1)
−(CONHR)n (1)
[式中、nは、3又は4の整数を表す。Rは1,2,3−プロパントリカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3又は4個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表される少なくとも一種のアミド化合物を0.001〜3重量部含有させることにより、ポリプロピレン樹脂組成物又はポリプロピレン樹脂成形体において下記式で表されるYを5〜90%に増加させる方法。
Y=ΔH /(ΔHα+ΔH)x100(%) 計算式1
ここでYは、組成Xの含有量を表す。ΔHαは、ポリプロピレンのα晶由来の吸熱量を表し、ΔHは、ポリプロピレンのα晶より低温側に観測される吸熱ピークの熱量を表す。
【請求項6】
(1)溶融プロピレン樹脂に対して、一般式(1)で表されるアミド化合物を、分散又は溶解させる工程、及び
(2)(i)プロピレン樹脂を、40℃〜150℃の温度で固化させる工程、又は(ii)40℃〜150℃の温度で固化させる工程及びアニーリング工程を行うことにより,ポリプロピレン樹脂組成物又はポリプロピレン樹脂成形体の組成Xの含有量を増加させる請求項5に記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−231134(P2007−231134A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54163(P2006−54163)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】