説明

改良された冷媒圧縮機

【課題】モータの冷却
【解決手段】冷媒流14を圧縮する2つの圧縮機インペラ24,26の一方の第1の圧縮機インペラ24は、ハウジング32内に配設され、冷媒は第1の圧縮機インペラ24により圧縮されハウジング32の内側に設けられた冷媒通路44から流れ出す。さらにハウジング30の内側からモータステータ部36に設けられたステータ通路58へと流れモータを冷却する。さらに、ハウジング通路62を通り、第2の圧縮機インペラ26に吸い込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関し、特に、圧縮機内の流体流に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、ベーパ(蒸気)サイクル冷却システムなど種々の用途において用いられている。典型的なベーパサイクル冷却システムにおいて、循環冷媒は、4つの構成要素、つまり、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を通って流れる。気相状態の冷媒は、圧縮機において圧縮および加熱され、次いで、凝縮器においてヒートシンクにより液体へと凝縮される。次いで、液相状態の冷媒は、膨張弁を通流する際に圧力が急激に低下する。急激な膨張により冷媒の少なくとも一部が蒸発すると、冷媒の温度が低下する。冷媒の液体部分は、次いで、蒸発器において蒸発して、例えば、蒸発器を通流する空気などの流体から熱が吸収される。圧縮機の動力は、通常、電気モータにより供給される。
【0003】
電気モータにより駆動される圧縮機は、通常、圧縮機ハウジングアッセンブリ内における回転シャフトを中心に回転するように配設された1つまたは複数の圧縮機インペラを備える。冷媒は、インペラを連続的に通って流れ、これにより、冷媒の圧力および温度が増加する。多くの圧縮機では、インペラは、ロータの動的条件を向上させるように圧縮機の対向する両端部に配設される。インペラ間に冷媒を運ぶために、1つまたは複数の導管がハウジングアッセンブリの外部に配設され、1つまたは複数のポートに接続される。冷媒は、第1のインペラを通り、次いで、1つまたは複数のポートを通ってハウジングから流出し、1つまたは複数の導管の第1の端部へと流れる。次いで、冷媒は、第2のインペラ近傍のポートからハウジング内へと再び流入して、第2のインペラを通って流れる。あるシステムでは、1つまたは複数の導管に沿って流れる間、冷媒は、第1のインペラによる圧縮から生じる熱を除去するように熱交換器を通って流れる。さらに、第1および第2のインペラ間に位置するモータステータ部は、電力から機械力への変換が非効率なために熱を受けやすくなる。ステータを冷却するために、ステータ部の外部に沿って冷却ジャケットが付与される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部の導管に対する接続およびポーティングによって、システムに付加的な構成要素が付加され、重量が増加してしまう。さらに、接続部は、圧縮機および冷却システムの性能および効率に悪影響を及ぼす漏洩の原因となる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、冷却システムの圧縮機は、ハウジングと、圧縮機を通流する冷媒流を圧縮する圧縮機インペラと、を備える。ハウジングの外側面の内側に配設された少なくとも1つの冷媒通路は、少なくとも1つの圧縮機インペラのうち第1の圧縮機インペラから延びる。
【0006】
本発明の他の態様によると、冷却システムは、凝縮器と、凝縮器と流体連通する膨張弁と、膨張弁と流体連通する蒸発器と、を備える。さらに、システムは、凝縮器および蒸発器と流体連通する圧縮機を備える。圧縮機は、ハウジングと、ハウジング内に配設され、圧縮機を通流する冷媒流を圧縮する少なくとも1つの圧縮機インペラと、を備える。少なくとも1つの冷媒通路は、ハウジングの外側面の内側に配設され、少なくとも1つの圧縮機インペラのうち第1の圧縮機インペラから延びる。
【0007】
本発明のさらに別の態様によると、圧縮機を通して冷媒を流す方法には、圧縮機ハウジングに配設された少なくとも1つの圧縮機インペラのうち第1の圧縮機インペラを通して冷媒流を流すことと、第1の圧縮機インペラから延びる少なくとも1つの冷媒通路を通して冷媒流を流すことと、が含まれる。少なくとも1つの冷媒通路は、圧縮機ハウジングの外側面の内側に配設される。
【0008】
上記および他の利点および特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施例におけるベーパサイクル冷却システムの概略図。
【図2】一実施例における圧縮機の断面図。
【図3】一実施例における圧縮機のステータの斜視図。
【図4】他の実施例における圧縮機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための形態および図面を参照しながら、本発明の実施例、利点および特徴を説明する。
【0011】
図1は、一実施例におけるベーパ(蒸気)サイクル冷却システム10を概略的に示している。該システム10は、圧縮機12を備え、圧縮機により、気相状態の循環する冷媒流14が圧縮および加熱される。冷媒流14は、凝縮器16に送られて、液相状態に凝縮される。冷媒流14は、膨張弁18によって急速に減圧されて温度が減少する。冷却された冷媒流14は、次いで、蒸発器20に送られて蒸発し、例えばファン22からの空気など蒸発器20に亘って流れる流体から熱を吸収する。
【0012】
図2は、一実施例における圧縮機12を示す。圧縮機12は、軸方向に沿ってシャフト28に接続された2つの圧縮機インペラ、つまり、第1の圧縮機インペラ24および第2の圧縮機インペラ26を備える。一実施例では、第1の圧縮機インペラ24および第2の圧縮機インペラ26の少なくとも一方は、遠心ロータである。図2の実施例では、第1の圧縮機インペラ24および第2の圧縮機インペラ26は、ロータの動的特性を向上させるように、実質的に対向するシャフト28の両端部に配設される。例えば、他の構成として、第1および第2のインペラ24,26を互いに隣接させてシャフト28に配設してもよい。さらに、図2では2つの圧縮機インペラを図示したが、これは例示的なものに過ぎず、例えば、1個、3個、4個あるいはそれ以上の圧縮機インペラを利用してもよい。圧縮機インペラ24,26は、ハウジングセット30内に配設される。該ハウジングセット30は、一実施例では、第1のハウジング部32および第2のハウジング部34を備える。一実施例では、第1の圧縮機インペラ24は、第1のハウジング部32に配設され、第2の圧縮機インペラ26は、第2のハウジング部34内に配設される。第1の圧縮機インペラ24と第2の圧縮機インペラ26との間において、少なくとも1つのモータステータ部36がハウジング30に配設される。
【0013】
第1のハウジング部32は、蒸発器20から冷媒流14を受ける少なくとも1つの入口ポート38を有する。第1の圧縮機インペラ24の回転によって、冷媒流14は第1の圧縮機インペラ24に向かって流れる。第1の圧縮機インペラ24によって冷媒流14は加速し、第1の圧縮機インペラ24と第1のハウジング部材42との間における第1のロータチャネル40を通流する。第1のロータチャネル40は、冷媒流14の圧力を増加させるように、長さに沿って徐々に細くなっている。一実施例では、冷媒流14は、第1のハウジング部32の内側面46と外側面48との間に配設された少なくとも1つの第1のハウジング通路44に向かって実質的に半径方向外側に流れる。少なくとも1つの第1のハウジング通路44は、第1のロータチャネル40からモータステータ部36へと第1のハウジング部32に亘って延びている。冷媒流14は、第1のハウジング通路44を通ってモータステータ部36へと流れる。
【0014】
次に図3を参照すると、モータステータ部36は、モータステータ部36の第1のモータステータ端部52から第2のモータステータ端部54まで延びる複数のモータステータ部材50を備える。隣接するモータステータ部材50間に少なくとも1つのステータスロット56が配設される。モータステータ部36の外側面60とハウジング30の内側面46との間でかつ少なくとも1つのステータスロット56間に複数のステータ通路58が配設される。複数のステータ通路58は、少なくとも1つの第1のハウジング通路44に接続されるように構成され配設され、これにより、冷媒流14は、少なくとも1つの第1のハウジング通路44から複数のステータ通路58を通り、第1のモータステータ端部52から第2のモータステータ端部54へと第2のハウジング部34に向かって流れる。複数のステータ通路58を通流する冷媒流14の流れによってモータステータ部36が冷却される。そのため、一実施例において、例えば、冷却ジャケットなどによりモータステータ部36を付加的に冷却する必要はなくなる。
【0015】
さらに図2を参照すると、第2のハウジング部34は、少なくとも1つの第2のハウジング通路62を有する。少なくとも1つの第2のハウジング通路62は、第2のハウジング部34の内側面46と外側面48との間で第2のハウジング部34内に配設され、複数のステータ通路58から第2のハウジング通路62へと冷媒流14を導くように構成される。冷媒流14は、少なくとも1つの第2のハウジング通路62を通って第2の圧縮機インペラ26へと流れる。冷媒流14は、第2の圧縮機インペラ26によって加速し、第2の圧縮機インペラ26と第2のハウジング部材66との間における第2のロータチャネル64を通って流れる。第2のロータチャネル64は、冷媒流14の圧力を増加させるように、長さに沿って徐々に細くなっている。一実施例では、冷媒流14は、第2の圧縮機インペラ26を通った後、圧縮機12から流出して凝縮器16へと流れる。しかし、圧縮機12が付加的な圧縮機インペラを備える他の実施例では、冷媒流14は、実質的に上記の方法と同様の方法で、付加的な圧縮機インペラを通って流れることを理解されたい。図2に示すように、一実施例では、第2のハウジング通路62により、冷媒流14は、第1の圧縮機インペラ24に最も近い第2の圧縮機インペラ26の第1の側68において第2の圧縮機インペラ26に流れ込む。例えば、図4に示す他の実施例では、第2の圧縮機インペラ26は、第1の側68が第1の圧縮機インペラ24から最も離れた位置に位置するように配設される。この実施例では、第2のハウジング通路62は、冷媒流14が第1の圧縮機インペラ24から最も離れた第1の側68を始端とする第2の圧縮機インペラ26を通って流れるように構成され配設される。
【0016】
圧縮機インペラから圧縮機インペラへと圧縮機12の内部を通して冷媒流14を流すことによって、圧縮機12から冷媒流14が漏出する原因となり得るコネクタや外部のハードウエアを排除することができる。さらに、構成部品を排除することにより圧縮機12の重量を減少させることができる。モータステータ部36を冷却する直接的な手段が付与され、モータステータ部36からの熱により液相状態の冷媒が冷媒流14から除去される。これにより、圧縮機12を通流する全ての流れが気相状態となる。全体的に気相状態であることにより、任意の連続する圧縮機ロータおよび流体膜軸受(一実施例において回転部品を支持するように用いられる)の運転効率が向上する。
【0017】
いくつかの実施例に限定して本発明を説明してきたが、本発明は例示的なものであり、これらの実施例に限定されない。本発明は、明細書に開示していない種々の変更、修正、代替を含むように本発明の範囲から逸脱することなく修正され得る。本発明は限定的なものではなく、したがって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システム(10)の圧縮機(12)であって、
ハウジング(30)と、
ハウジング(30)内に配設され、圧縮機(12)を通流する冷媒流(14)を圧縮する少なくとも1つの圧縮機インペラ(24,26)と、
ハウジング(30)の外側面(48)の内側に配設された少なくとも1つの冷媒通路(44,62)と、
を備え、
冷媒通路(44,62)は、少なくとも1つの圧縮機インペラ(24,26)のうち第1の圧縮機インペラ(24)から延びることを特徴とする圧縮機(12)。
【請求項2】
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)は、第1の圧縮機インペラ(24)から第2の圧縮機インペラ(26)へと延びることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機(12)。
【請求項3】
ハウジング(30)内に少なくとも1つのモータステータ部(36)が配設されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機(12)。
【請求項4】
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)は、モータステータ部(36)の外側面(60)およびハウジング(30)の内側面(46)によって画定される少なくとも1つのステータ通路(58)を通って延びることを特徴とする請求項3に記載の圧縮機(12)。
【請求項5】
少なくとも1つの冷媒通路により、モータステータ部(36)が冷却されることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機(12)。
【請求項6】
少なくとも1つのモータステータ部(36)は、第1の圧縮機インペラ(24)と第2の圧縮機インペラ(26)との間に配設されることを特徴とする請求項3に記載の圧縮機(12)。
【請求項7】
少なくとも1つの冷媒通路の少なくとも一部は、ハウジング(30)の外側面(48)とハウジング(30)の内側面(46)との間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機(12)。
【請求項8】
少なくとも1つの圧縮機インペラ(24,26)は遠心ロータであることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機(12)。
【請求項9】
凝縮器(16)と、
凝縮器(16)と流体連通する膨張弁(18)と、
膨張弁(18)と流体連通する蒸発器(20)と、
凝縮器(16)および蒸発器(20)と流体連通する圧縮機(12)と、
を備え、
前記圧縮機(12)は、
ハウジング(30)と、
ハウジング(30)内に配設され、圧縮機(12)を通流する冷媒流(14)を圧縮する少なくとも1つの圧縮機インペラ(24,26)と、
ハウジング(30)の外側面(48)の内側に配設された少なくとも1つの冷媒通路(44,62)と、
を備え、
冷媒通路(44,62)は、第1の圧縮機インペラ(24)から延びることを特徴とする冷却システム(10)。
【請求項10】
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)は、第1の圧縮機インペラ(24)から第2の圧縮機インペラ(26)へと延びることを特徴とする請求項9に記載の冷却システム(10)。
【請求項11】
ハウジング(30)内に少なくとも1つのモータステータ部(36)が配設される
ことを特徴とする請求項9に記載の冷却システム(10)。
【請求項12】
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)は、モータステータ部(36)の外側面(60)およびハウジング(30)の内側面(46)によって画定される少なくとも1つのステータ通路(58)を通って延びることを特徴とする請求項11に記載の冷却システム(10)。
【請求項13】
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)により、モータステータ部(36)が冷却されることを特徴とする請求項12に記載の冷却システム(10)。
【請求項14】
少なくとも1つのモータステータ部(36)は、第1の圧縮機インペラ(24)と第2の圧縮機インペラ(26)との間に配設されることを特徴とする請求項11に記載の冷却システム(10)。
【請求項15】
少なくとも1つの冷媒通路の少なくとも一部は、ハウジング(30)の外側面(48)とハウジング(30)の内側面(46)との間に配設されることを特徴とする請求項9に記載の冷却システム(10)。
【請求項16】
少なくとも1つの圧縮機インペラ(24,26)は遠心ロータであることを特徴とする請求項9に記載の冷却システム(10)。
【請求項17】
圧縮機(12)を通して冷媒を流す方法であって、
圧縮機ハウジング(30)に配設された少なくとも1つの圧縮機インペラ(24,26)を通して冷媒流(14)を流すことと、
第1の圧縮機インペラ(24)から延びる少なくとも1つの冷媒通路(44,62)を通して冷媒流(14)を流すことと、
を含み、
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)は、圧縮機ハウジング(30)の外側面(48)の内側に配設されることを特徴とする方法。
【請求項18】
少なくとも1つの冷媒通路(44,62)から第2の圧縮機インペラ(26)を通して冷媒流(14)を流すことを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
圧縮機ハウジング(30)内に配設されたモータステータ部(36)の外側面(60)および圧縮機ハウジング(30)の内側面(46)によって画定される少なくとも1つのステータ通路(58)を通して冷媒流(14)を流すことを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのステータ通路(58)を通流する冷媒流(14)によりモータステータ部(36)を冷却することを含む請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−265900(P2010−265900A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−113797(P2010−113797)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】