説明

改良された有効性を有するトリクロサンスキンウォッシュ

【課題】手および皮膚の殺菌する際に、毒性、刺激または他の害なしに、できるだけ短時間でできるだけ広範囲の微生物を殺すことが可能な殺菌剤の提供。
【解決手段】トリクロサンと、界面活性剤と、水とを含むスキンウォッシュ組成物であって、該トリクロサン濃度が0.2〜3.0%であることと、該界面活性 剤濃度が2.4〜10%であることと、ヘキシレングリコールを含む1.0〜30%の非水性溶媒と、0.0〜1.0%のキレート剤と、0.0〜3.0%の増粘剤と、0.0〜5.0%の緩衝剤と、を特徴とする、スキンウォッシュ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、殺菌技術に関する。本発明は特にヘルスケアパーソネルの皮膚からの微生物の除去に関連する適用を見い出し、特にこれに関して述べる。しかし、 本発明はさらに食品調製産業または皮膚の殺菌が推薦される又は望ましい他の分野に従事する人々のハンドウォッシュなどの、医療分野以外の分野にも適用可能であることが理解されるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
細菌およびウイルスの化学的制御が病院および医療環境においてますます重要になりつつある。状況は、多くの細菌が従来の抗菌剤に応答しなくなっているこ とにより悪化している。従って、細菌およびウイルス性生物体の効果的な制御の必要性が、ますます重要性を増している。手および皮膚の殺菌の場合、殺菌剤は、毒性、刺激または他の害なしに、できるだけ短時間でできるだけ広範囲の微生物を殺すことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明によって、以下が提供される:
(項目1)トリクロサンと、界面活性剤と、水とを含むスキンウォッシュ組成物であって、
該トリクロサン濃度が約0.2〜約3.0%であることと、
該界面活性剤濃度が約2〜約20%であることと、
約1.0〜約30%の非水性溶媒と、
約0.0〜約1.0%のキレート剤と、
約0.0〜約3.0%の増粘剤と、
約0.0〜約5.0%の緩衝剤と、
を特徴とする、スキンウォッシュ組成物。
(項目2)項目1に記載のウォッシュ組成物であって、グリコール、アルコール、トリグリセリド、酢酸エチル、アセトン、トリアセチンを含む群のうちの1つ以上を含む非水溶
性溶媒によって特徴付けられる、ウォッシュ組成物。
(項目3)項目1および2のいずれかに記載のウォッシュであって、約5%と約13%の間のヘキシレングリコールおよび約5%イソプロパノールまたはn−プロパノールを含む非水溶性溶媒によってさらに特徴付けられる、ウォッシュ。
(項目4)項目1、2および3のいずれか1項のウォッシュ組成物であって、プロピレン
グリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ジプロピレングリコー ル、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリグリセリド、さらに酢酸エチル、アセトン、及びトリアセチンを含む群のうちの1つ以上を、前記非水溶性溶媒が含む、ウォッシュ組成物。
(項目5)項目1〜4のいずれか1項に記載のウォッシュであって、前記界面活性剤が、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、オクトキシノール、サルコシネート のナトリウム塩またはアンモニウム塩、スルホネート、スルホサクシネート、イセチオネート、スルフェート、アミンオキシド、タウレート、ベタイン、スルタイン、イミダゾリンおよびそれらの誘導体を含む群のうちの1以上を含むことを特徴とする、ウォッシュ。
(項目6)前記界面活性剤が、約2.4〜約10%のイセチオン酸アンモニウムココイルを含むことをさらに特徴とする、項目1から5のいずれかに記載のウォッシュ。
(項目7)前記界面活性剤に対する前記溶媒の割合が、約1:1〜約10:1であることをさらに特徴とする、項目1から6のいずれかに記載のウォッシュ組成物。
(項目8)前記キレート剤が、EDTA酸または塩、クエン酸または塩、グルクロン酸または塩、ピロリン酸塩、およびキレート界面活性剤を含む群のうちの1以上を含むことをさらに特徴とする、項目1から7のいずれかに記載のウォッシュ。
(項目9)前記増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ガールおよびガール誘導体、 アルギン酸およびアルギン酸誘導体、ならびにカルボマーを含む群のうちの1以上を含むことをさらに特徴とする、項目1から8のいずれかに記載のウォッシュ組成物。
(項目10)皮膚を殺菌する方法であって、該方法は、
a)項目1〜9のいずれかに記載された組成物の有効量を、該皮膚に、塗布する工程;
b)該組成物と該皮膚との間の接触を、その表面に存在する実質的に全ての微生物を死滅させるのに十分な時間、維持する工程
により特徴付けられる、方法。
発明の要旨
本発明によると、
約0.2〜約3.0%のトリクロサンと、
約2〜約20%の界面活性剤と、
約1.0〜約30%の、ヘキシレングリコールを含む非水性溶媒と、
約0.0〜約1.0%のキレート剤と、
0.0〜約3.0%の増粘剤と、
0.0〜約5.0%の緩衝剤と、
を含むスキンウォッシュ(洗浄剤)が提供される。
【0004】
本発明の別の局面によると、ウォッシュ組成物の製造方法は、トリクロサンと界面活性剤と非水性溶媒を、トリクロサンが溶解するまで混合し、残りの成分を添加することを含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明の1つの利点は、Gram陰性生物体に対する改良された活性にある。特に、処方物は、最も殺すのが困難なものの1つであるGram陰性生物体である霊菌に対して、他の処方物よりも改良された活性を有する。
【0006】
本発明の別の利点は、Gram陽性生物体に対する改良された活性にある。
【0007】
本発明の他の利点は、低界面活性剤濃度における有効性、典型的にはトリクロサンハンドウォッシュ処方物と関連づけられる皮膚に対する刺激の低減、および主にアルコールを含むハンドウォッシュよりも優れた洗浄効果を含む。
【0008】
本発明のさらに別の利点は、以下の好適な実施形態の詳細な説明を読み且つ理解することにより当業者には明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
好適な実施形態の詳細な説明
トリクロサンは、ハンドおよびスキンウォッシュ処方物中に、約0.2〜約3.0%の量で存在する。好適には、トリクロサンの量は約0.3〜約1.5%である。
【0010】
不運にも、トリクロサンは水に対する溶解性が低く、可溶化するためには概して処方物添加剤を必要とする。トリクロサンを可溶化するために用いられる最も一般的な添加剤は、皮膚に対する刺激を増加させる界面活性剤である。本発明の処方物は、トリクロサンを可溶化するために非水性溶媒およびより低いレベルの界面活性剤を用いることにより、この問題を最小にする。
【0011】
処方物中で用いられる非水性溶媒は、概して、約1.0〜約30%の量で存在する。好適にはこれらの溶媒は、約5.0〜約25.0%の量で存在する。適切 な非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコールおよびジプロピレングリコールなどのグリコール;エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールなどのアルコール;トリグリセリド;エチル アセテート;アセトン;トリアセチン;並びにこれらの組み合わせを含む。特に好適なものは、ヘキシレングリコールとイソプロパノールとの組み合わせ、およびヘキシレングリコールとn−プロパノールとの組み合わせである。
【0012】
従来技術の組成物において、トリクロサンを可溶化するために用いられる界面活性剤は概して、おそらく約5〜30重量%の活性界面活性剤の量で存在する。 本発明の処方物において用いられる界面活性剤は概して、はるかに少ない量、例えば約2.0〜約20.0%、好適には約2.4〜約10%の量で存在する。
【0013】
本発明の処方物中で有用な界面活性剤の典型的な例は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸塩、ポリビニルアル コール、ポロキサマー(poloxamer)、オクトキシノール、サルコシネート(sarcosinate)のナトリウム塩またはアンモニウム塩、スルホサクシネート、スルホン酸塩、イセチオン酸塩、硫酸塩、酸化アミン、タウレート(taurate)、ベタイン、スルタイン(sultaine)、イミダゾ リン、およ
びそれらの誘導体、並びにこれらの組み合わせなどの非イオン性および陰イオン性界面活性剤を含む。好適な界面活性剤は、イセチオン酸アンモニウムココイル(ammoniumcocoylisethionate)である。
【0014】
キレート剤は、0.0〜約1.0%の量で用いられる。量は約0.01から約0.5%であることが特に好適である。本発明の処方物において有用な種類のキ レート剤の典型的な例は、EDTA酸または塩、クエン酸または塩、グルクロン酸または塩、ピロリン酸塩、リン酸塩エステルおよびラウロイルエチレンジアミントリ酢酸などのキレート界面活性剤、並びにこれらの混合物を含む。キレート剤は、Gram陰性細菌に対する処方物の有効性を改良するために役立つ。
【0015】
ポリマー/粘性促進剤または増粘剤は、0.0〜約3.0%の量で存在し、好適には約0.5〜約2.0%の量で存在する。これらの剤の典型的な例は、ヒド ロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、ガールおよびガール誘導体などの天然ゴム、アルギン酸塩、およびアルギン酸塩誘導体、並びにこれらの混合物を含む。
【0016】
緩衝剤は、0.0〜約5.0%の量で存在し、好適には約0.1〜約1.0%の量で存在する。これらの剤は、典型的には、pHを約3.0〜約8.0、好適 には約4.5〜約6.0の範囲に維持するために用いられる酸または塩である。例は、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、グリコール酸/グリコール酸塩、リン酸/リン酸塩、およびこれらのいずれかの混合物を含む。もっとも好適な処方物は、クエン酸/クエン酸塩を含む。
【0017】
最後に、組成物の残りを生成するために水が用いられる。
【0018】
ハンドウォッシュを調製するために、記載した割合で成分を混合する。トリクロサンを完全に可溶化するために、好適には、水を添加する前に、まずトリクロサンを溶媒および/または界面活性剤に混合する。その後、都合のよいときに他の成分を添加する。記載した割合で成分を混合すると、生成した組成物の粘度は約20〜10,000cpsである。好適には、生成した組成物の粘度は、約500〜2500cpsである。
【0019】
上記したように、本発明の処方物は、Gram陰性およびGram陽性生物体に対して改良された活性を有する。Gram陰性生物体に対する活性は、低レベ ルのイソプロパノールまたはn−プロパノールを含有する場合に最も高い。低レベルのイソプロパノールのみではこのレベルの活性を示さないため、このような活性は全く予想外である。Gram陽性生物体に対する活性は、ヘキシレングリコールが溶媒として用いられるときに特に明らかである。従って、イソプロパ ノールとヘキシレングリコールとの組み合わせ、またはn−プロパノールとヘキシレングリコールとの組み合わせが好適である。
【0020】
さらに、上記したように、トリクロサンは水に対する溶解度が低く、可溶化するためには概して処方物添加剤が用いられる。トリクロサンを可溶化するために 用いられる最も一般的な添加剤は、しばしば処方物の刺激性を増大させる界面活性剤である。本発明の処方物は、トリクロサンを可溶化するために、非水性溶媒及びより低レベルの界面活性剤を含む。プロピレングリコールは、局所的生成物用に最も一般的に選択される溶媒である。本発明の処方物において、ヘキシレン グリコールは、プロピレングリコールよりも良好な溶媒として作用する。従って、好適な処方物は、ヘキシレングリコールおよびイソプロパノールを含む。
【0021】
本発明の処方物は、従来の様式で、任意のハンドウォッシュまたは石鹸を適用するように、処理すべき皮膚表面に適用される。好適には、ハンドウォッシュ を、ボトルまたは他のディスペンサから取り出し、汚れを除去して皮膚上に存在する微生物を殺すに十分な時間手に擦り込む。泡の生成を補助するために水を用いる。ハンドウォッシュを除去するためには、水で洗い流す。
【実施例】
【0022】
トリクロサン処方物のサンプルに、皮膚表面に一過性にまたは常に存在するものとして見い出されることが予想される微生物の菌株を播種し、微生物数のログ減少によって処方物の有効性を決定した。
【0023】
以下のトリクロサンハンドウォッシュ処方物を調製した。
【0024】
材料 重量%
水酸化アンモニウム 0.0870
トリクロサン 1.0000
ヘキシレングリコール 10.000
脱イオン化水 69.8130
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.9500
(ブランド:Methocel K15MS)
イセチオン酸アンモニウムココイル 15.0000
(ブランド:Jordapon ACI−30)
ジアンモニウムジメチコンコポリオール 1.5000
スルホサクシネート
(ブランド:Mackanate DC−60A)
サルコシン酸アンモニウムラウロイル(ammonium lauroyl sarcosinate)
1.5000
(ブランド:Hamposyl AL−30)
EDTA酸 0.1500
(ブランド:Hampene Acid)
イセチオン酸アンモニウムココイルおよびサルコシン酸アンモニウムラウロイルは30%溶液であり、ジアンモニウムジメチコンコポリオールスフホサクシネートは60%溶液であったため、ハンドウォッシュ処方物中の界面活性剤総濃度は、5.85重量%であった。
【0025】
種菌の調製
テストした生物体を選択することにより、広スペクトルの標準および臨床単離体を表した。テストした生物体は、Gram陽性生物体である、黄色ブドウ球 菌、表皮ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、および腸球菌、Gram陰性生物体である、大腸菌、肺炎杆菌、緑膿菌および霊菌、並びに酵母であるカンジダアルビカンスを含んだ。
【0026】
カンジダアルビカンスの場合、テストの48時間前に、酵母マルトース(YM)寒天スラントに0.1mLのストック培養を播種し30℃で48時間インキュ ベートした。テストした他の菌株の場合、テストの24時間前に、ブレインハートインフュージョン(BHI)寒天スラントに0.1mLのストック培養を播種し、30℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、テストの日に、培養をインキュベータから取り出した。次いで培養を10mLの殺菌0. 85%生理食塩水溶液中に再懸濁し、約10の生物体を含む懸濁液を生成した。
【0027】
時間的殺菌手順
10mLのトリクロサン処方物のサンプルに、0.1mLの約10の生物体を含有する懸濁液を播種し混合した。
【0028】
予定された間隔で、播種したサンプルの1.0mLを取り出して中和希釈ブランクに入れた。用いた中和剤は、トリクロサン用に熱不活性化胎児ウシ血清を 5%含むLetheenブロスであった。順次希釈を行い、第5の希釈液にプレートした。カウントを、播種したコントロールと比較することにより、処方物の活性による生物体のログ減少を定量化した。
【0029】
トリクロサン含有処方物は、広スペクトルの生物体に対して活性を示すことが判明した。ある範囲の活性が、皮膚上に存在して病院的環境で手を介して伝染す ることが知られているGram陽性生物体に対して見られる最高の速度と程度で観察された。しかし、処方物はさらに、霊菌などの殺すことが困難であるGram陰性生物体に対する有意な活性を示した。
【0030】
好適な実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲により限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリクロサンと、界面活性剤と、水とを含むスキンウォッシュ組成物であって、
該トリクロサン濃度が0.2〜3.0%であることと、
該界面活性剤濃度が2.4〜10%であることと、
ヘキシレングリコールを含む1.0〜30%の非水性溶媒と、
0.0〜1.0%のキレート剤と、
0.0〜3.0%の増粘剤と、
0.0〜5.0%の緩衝剤と、
を特徴とする、スキンウォッシュ組成物。

【公開番号】特開2007−262092(P2007−262092A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181557(P2007−181557)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【分割の表示】特願2005−376730(P2005−376730)の分割
【原出願日】平成9年7月9日(1997.7.9)
【出願人】(502042506)ステリス インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】