説明

改良地盤における基礎施工方法

【課題】 大きな転倒モーメントに耐えることが可能な基礎を大きくない施工負担にて施工することができる改良地盤における基礎施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 改良地盤の固化した改良土10に埋設されたアンカー10の突出部12bに、改良土20の天端との間に高さ調整用スペーサ30を介して、鋼製基礎梁40を固定する。アンカー10は、アンカー本体部材11と延長部材12とからなり、浅層混合処理地盤の転圧前の改良土20にアンカー本体部材11を埋め込み、改良土20を転圧し固化させた後に、アンカー本体部材11の一部を露出させ、該露出させたアンカー本体部材11に延長部材12を接続して、該延長部材12の上端部がアンカー10の突出部12bとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤における基礎施工方法、特に、浅層混合処理地盤及び柱状改良地盤に鋼製基礎梁を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市街地の狭小地には、間口が狭く奥行きの長い敷地がしばしば見受けられる。このような敷地に、土地を有効活用する観点から、3階建ての建築物が構築される場合がある。このような建築物を構築する場合、風荷重や地震荷重などの水平力による転倒モーメントが大きくなる。転倒モーメントによる建築物の転倒の危険性を回避するため、転倒モーメントによる引き抜き荷重を負担することができる(引き抜き耐力に優れた)杭を打設するなどの措置が必要となることがある。例えば、特許文献1には、地盤に形成したスラグ層に既製杭を施工することが開示されている。
【0003】
地盤が軟弱な場合、建築物の鉛直荷重を杭にて支持する必要がある。この場合には、引き抜き荷重を負担することができる杭を打設することにより、コストを含めた施工負担が少なく合理的に転倒モーメントによる転倒の危険性を回避することができる。
【特許文献1】特開2003−221825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地盤が比較的安定な場合、あるいは地盤の表層のみが軟弱な場合、浅層混合処理工法などによる改良地盤によって建築物の鉛直荷重を支持することができる。このような場合にまで、引き抜き荷重を負担させるために杭を打設することは、コストを含めた施工負担が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、大きな転倒モーメントに耐えることが可能な基礎を大きくない施工負担にて施工することができる改良地盤における基礎施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の改良地盤における基礎施工方法は、改良地盤の固化した改良土に埋設されたアンカーの突出部に、前記改良土の天端との間に高さ調整用スペーサを介して、鋼製基礎梁を固定することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の改良地盤における基礎施工方法は、請求項1に記載の改良地盤における基礎施工方法において、前記アンカーは、アンカー本体部材と延長部材とからなり、浅層混合処理地盤の転圧前の改良土に前記アンカー本体部材を埋め込み、前記改良土を転圧し固化させた後に、前記アンカー本体部材の一部を露出させ、該露出させたアンカー本体部材に前記延長部材を接続することにより、前記アンカーを前記浅層混合処理地盤の固化した改良土に埋設し、前記延長部材の上端部が当該アンカーの突出部となることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の改良地盤における基礎施工方法は、請求項1に記載の改良地盤における基礎施工方法において、柱状改良地盤の固化前の改良土に前記アンカーの上端部を突出させて埋設し、前記改良土を固化させることにより、前記アンカーを前記柱状改良地盤の固化した改良土に埋設し、前記アンカーの上端部が当該アンカーの突出部となることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の改良地盤における基礎施工方法は、請求項1から3の何れか1項に記載の改良地盤における基礎施工方法において、前記アンカーは、拡幅部を有した棒状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の改良地盤における基礎施工方法によれば、改良地盤の固化した改良土に埋設されたアンカーの突出部に、改良土の天端との間に高さ調整用スペーサを介して、鋼製基礎梁を固定する。そのため、アンカーのアンカー効果による引き抜き耐力によって、鋼製基礎梁を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性を向上させることができる。また、改良地盤の改良土にアンカーを埋設することにより施工が行われるので、杭を打設する場合に比べて、コストを含めた施工負担が少なくなる。また、改良土の天端との間に高さ調整用スペーサを介して鋼製基礎梁を固定するので、鋼製基礎梁の水平出しや高さ調整を容易に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の改良地盤における基礎施工方法によれば、浅層混合処理地盤の転圧前の改良土にアンカー本体部材を埋め込むので、アンカー本体部材を容易に埋設することができるとともに、アンカー本体部材が改良土の天端から突出せず転圧の邪魔にならないので、容易に転圧を行うことができ、施工負担を少なくすることが可能となる。また、アンカー本体部材と密着して改良土が固化するため、アンカーのアンカー効果を大きくすることができ、鋼製基礎梁を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性をさらに向上させることができる。また、アンカーはアンカー本体部材と延長部材とからなるため、所望のアンカー効果に応じた適切なアンカー本体部材と、施工に用いる鋼製基礎梁に応じた適切な延長部材とを接続させたアンカーを用いることができるので、部材種類を削減して施工管理を容易化することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の改良地盤における基礎施工方法によれば、柱状改良地盤の改良土の固化前にアンカーの上端部を突出させて埋設するので、アンカーを容易に埋設することができるとともに、アンカーの突出した上端部がそのまま鋼製基礎梁を固定させる突出部となるため、施工負担を少なくすることが可能となる。また、アンカーと密着して改良土が固化するため、アンカーのアンカー効果を大きくすることができ、鋼製基礎梁を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性をさらに向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の改良地盤における基礎施工方法によれば、固化した改良土に埋設されたアンカーは拡幅部を有した棒状である。このようなアンカーを引き抜く場合、拡幅部の上方の改良土はコーン状に破断してアンカーとともに引き抜かれる。そのため、アンカーの引き抜き耐力が、アンカーと改良土との間に発生する付着力(粘着力及び摩擦力)だけではなく、改良土のせん断力を含めたものとなるので、鋼製基礎梁を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る改良地盤における基礎施工方法は、改良地盤の固化した改良土に埋設されたアンカーの突出部に、改良土の天端との間に高さ調整用スペーサを介して、鋼製基礎梁を固定するものである。
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態に係る改良地盤における基礎施工方法について図面に基づき説明する。本改良地盤における基礎施工方法は、浅層混合処理地盤における基礎施工方法であり、図1(a)から図1(c)に示すように、アンカー10はアンカー本体部材11と延長部材12とが接続されたものである。
【0016】
本改良地盤における基礎施工方法は、浅層混合処理地盤の転圧前の改良土20にアンカー本体部材11を埋設する工程と、改良土20を転圧した後に養生して固化させる工程と、改良土20が固化した後にアンカー本体部材11の接続部11aを露出させ、該露出させたアンカー本体部材11に延長部材12を接続する工程と、延長部材12の上端部に改良土20の天端との間に高さ調整用スペーサ30を介して鋼製基礎梁40を固定する工程と、からなっている。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、セメント系固化材(以下、単に「固化材」という。)を用いた浅層改良工法において、混合攪拌を行って形成した改良土20に転圧前にアンカー本体部材11を埋設する工程を行う。アンカー本体部材11は、所定の間隔を隔てて鉛直に埋設する。
【0018】
具体的には、改良対象となる軟弱な地盤の改良範囲に所定配合量の固化材を散布し、表層部の地盤、すなわち地表面から浅い所定深さまでの地盤を掘削しながら、掘削された土砂と固化材とを混合攪拌し、改良土20を形成する。
【0019】
そして、改良土20の天端から作業員がスコップ等でアンカー本体部材11を埋設するための穴21を掘る。アンカー本体部材11は、鉛直方向に凹凸する側面を備えた棒状の部材であり、その上端に延長部材12との接続部11aを、その下端に拡幅部11bをそれぞれ備えている。このようなアンカー本体部材11として、例えば、全長に渡って横ふし(横リブ)が鉄筋軸に沿ってねじ山のように螺旋状に配置されたねじふし鉄筋の下端に、当該ねじふし専用の長ナットを拡幅部11bとして組み付けたものを好適に用いることができる。例えば、アンカー本体部材11として、ねじふし鉄筋の一種であるねじふしPC(プレスコンクリート)鋼棒(JIS G 3109に規定。)の下端に長ナットを組み付けたものを用いる。作業員は、片手でアンカー本体部材11を、拡幅部11bを下方にして鉛直に穴21の中に保持しながら、他方の手でスコップ等を用いアンカー本体部材11の周りを原位置土(掘り起こした改良土)によって埋め戻す。このとき、アンカー本体部材11の接続部11aに図示しない布などを巻き付け覆っておき埋め戻した改良土20と直に接しないようにする。また、アンカー本体部材11の上端は、改良土20の天端から突出して次工程における転圧の際に邪魔にならないように、改良土20の天端から所定深さに位置するように埋める。さらに、図示しないが、アンカー本体部材11の上端にワイヤロープ等の紐状部材を固定しておき、穴21を埋め戻した後に改良土20の天端から紐状部材の一部を露出させておくことが好ましい。これにより、転圧の際に紐状部材が邪魔になることなく転圧を良好に行うことができるとともに、改良土20の中に埋設されたアンカー本体部材11の所在を容易に判別することができる。
【0020】
次に、アンカー本体部材11を埋設した改良土20を転圧した後に養生させて固化させる工程を行う。具体的には、アンカー本体部材11を埋設した改良土20に対して、バックホウ等の重機、振動ハンドローラ、タンピングランマーなどの締固め機を用いて転圧を行い、均一に締固める。そして、所定期間そのまま改良土20を養生させて固化させる。これにより、地耐力の向上した改良地盤が形成される。
【0021】
次に、図1(b)に示すように、アンカー本体部材11の上端の接続部11aを露出させて、アンカー本体部材11を延長部材12と接続する工程を行う。
【0022】
具体的には、まず、作業員がスコップ等を用いて改良土20を掘り起こし、アンカー本体部材11の上端の接続部11aを露出させる穴22を掘る。このとき、改良土20に埋もれたアンカー本体部材11の上端が改良土20の天端から所定深さとなるように穴22を掘る。これにより、所定長さのアンカー本体部材11が改良土20に埋もれた状態となる。なお、接続部11aが前記図示しない布等に覆われて改良土20に埋設されているので、接続部11aへの改良土20の固着が防止されるため、接続部11a付近の穴22が掘り易く、接続部11aの状態を良好に保つことができる。また、改良土20の天端からアンカー本体部材11に固定した紐状部材を突出させた場合には、この紐状部材を目印にアンカー本体部材11の埋設位置を容易に判別することができ、適切な位置に確実に穴22を掘ることができる。
【0023】
そして、アンカー本体部材11と延長部材12とが鉛直に直線状に(長手方向同軸上に)位置するように接続部材(継手)13を介して剛に接続する。延長部材12は、棒状の部材であり、その下端にアンカー本体部材11との接続部12aを、その上端に鋼製基礎梁40との固定部12bをそれぞれ備えている。延長部材12は、例えば、アンカー本体部材11と長さのみが異なるねじふしPC鋼棒である。接続部材13は、アンカー本体部材11と延長部材12とを接続する部材である。接続部材13は、例えば、アンカー本体部材11の接続部11a及び延長部材12の接続部12aとに共通に付されたねじふし用の長ナットである。このような接続部材13を用いることによって、延長部材12からアンカー本体部材11に鉛直方向の荷重をスムーズに伝達することが可能となる。
【0024】
次に、図1(c)に示すように、延長部材12の上端の固定部12bに改良土20の天端との間に高さ調整用スペーサ30を介して鋼製基礎梁40を固定する工程を行う。
【0025】
具体的には、まず、延長部材12の上端の固定部12bに鋼製基礎梁40の底壁41に貫設された孔42を挿通して、鋼製基礎梁40の底壁41を改良土20の天端に載置する。ここで、鋼製基礎梁40はH型鋼からなる基礎梁である。そして、図2に示すように、改良土20の天端と鋼製基礎梁40の底壁41との間に高さ調整用スペーサ30を介して、鋼製基礎梁40が水平になるようにする。ここで、高さ調整用スペーサ30は、穴22を十分に覆うことが可能な平板状のものである。この高さ調整用スペーサ30は、細長いU字状の溝が設けられており、側方から改良土20の天端と鋼製基礎梁40の底壁41との間に押し入れることが可能となっている。高さ調整用スペーサ30は、その厚みの異なった適切な高さ調整用スペーサ30を選択することによって高さを調整するものであっても、その枚数を適切なものとすることによって高さを調整するものであってもよい。さらに、高さ調整用スペーサ30によって、鋼製基礎梁40が基準高さに位置するようにしてもよい。また、高さ調整用スペーサ30として、1つの延長部材12に対してのみ側方から押し入れられるものがあってもよい。このような高さ調整用スペーサ30を用いることによって、鋼製基礎梁40の水平出しを行うことができる。そして、固定部材50によって、鋼製基礎梁40を固定する。固定部材50は、例えば、延長部材12の固定部12bに付されたねじふし用のナットである。
【0026】
このように、浅層混合処理地盤の固化した改良土20に埋設されたアンカー10の突出部(延長部材12の固定部12b)に鋼製基礎梁40を固定するので、アンカー10のアンカー効果による引き抜き耐力によって、鋼製基礎梁40を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性を向上させることができる。アンカー10の本数や埋設間隔は、鋼製基礎梁40に構築される建築物に想定される風荷重や地震荷重などの水平力による転倒モーメント等に基づく引き抜き耐力が十分に得られるように適宜定めればよい。また、風荷重や地震荷重などの水平力は、基礎底面の摩擦力や基礎の根入れにより負担されるが、アンカー10はこの水平力も有効に負担することができる。また、浅層混合処理地盤の改良土20にアンカー10を埋設することにより施工が行われるので、従来の杭を打設する場合に比べて、コストを含めた施工負担が少なくなる。また、改良土20の天端との間に高さ調整用スペーサ30を介して鋼製基礎梁40を固定するので、鋼製基礎梁40の水平出しや高さ調整を容易に行うことができる。また、浅層混合処理地盤の転圧前の改良土20にアンカー本体部材11を埋め込むので、アンカー本体部材11を容易に埋設することができるとともに、アンカー本体部材11が改良土20の天端から突出せず転圧の邪魔にならないので、容易に転圧を行うことができ、施工負担を少なくすることが可能となる。
【0027】
また、アンカー本体部材11は拡幅部11bを有した棒状である。このようなアンカー本体部材11を引き抜く場合、拡幅部11bの上方の改良土20はコーン状に破断してアンカー本体部材11とともに引き抜かれる。そのため、アンカー10のアンカー効果が改良土20の短期せん断強度によるものとなるので、鋼製基礎梁40を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性が大きく向上する。
【0028】
改良土20の短期引き抜き耐力は、簡易に求めることができる。例えば、改良土20の短期引き抜き耐力は、改良土20の破壊面面積と短期せん断強度の積として求めることができる。ここで、改良土20の短期せん断強度は、改良土20の一軸圧縮試験機等で求めたせん断強度に所定の係数を乗することによって算出することができる。また、改良土20に埋設したアンカー10に対して所定の引き抜き荷重による引き抜き試験を行うことにより、アンカー10の引き抜き耐力を確認することができる。例えば、50kNの引き抜き荷重にアンカー10が耐えた場合には、アンカー10の短期引き抜き耐力が33.3kN(50×(2/3)kN)以上であることを確認することができる。
【0029】
以下、本発明の第2の実施形態に係る改良地盤における基礎施工方法について図面に基づき説明する。本改良地盤における基礎施工方法は、柱状改良地盤における基礎施工方法であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、アンカー60は単独の部材からなっている。
【0030】
本改良地盤における基礎施工方法は、柱状改良地盤の固化前の改良土70にアンカー60の一部を突出させて埋設する工程と、改良土70を養生して固化させる工程と、改良土70が固化した後にアンカー60の突出させた部分に改良土70の天端との間に高さ調整用スペーサ80を介して鋼製基礎梁90を固定する工程と、からなっている。
【0031】
まず、図3(a)に示すように、セメント系固化材(以下、単に「固化材」という。)を用いた柱状改良工法において、混合攪拌を行って形成した円柱状の改良土70にアンカー60を埋設する工程を行う。アンカー60は、所定の間隔を隔てて鉛直に埋設する。
【0032】
具体的には、液状の固化材を地中に攪拌翼の回転と共に注入し、所定深さまで地盤を円柱状に掘削しながら、掘削された土砂と固化材とを混合攪拌し、円柱状の改良土70を形成する。円柱状の改良土70は、その径が600mm程度の大径のものから150乃至200mm程度の小径のものであっても、その長さが3m以上の深いものから0.5乃至3m未満の浅いものであってもよい。また、円柱状の改良土70を形成する間隔は、その上に構築する建築物の鉛直荷重を支持することができるように、当該建築物や鋼製基礎梁90に応じて適宜定めればよい。
【0033】
そして、改良土70の天端から作業員がアンカー60を差し込み埋設する。改良土70は原位置土を固化材とが混合されて軟かい状態であるため、上方からアンカー60を差し込むことにより、アンカー60を改良土70に容易に埋設することができる。アンカー60は、鉛直方向に凹凸する側面を備えた棒状の部材であり、その上端に鋼製基礎梁90との固定部60aを、その下端に拡幅部60bをそれぞれ備えている。このようなアンカー60として、例えば、全長に渡って横ふしが鉄筋軸に沿ってねじ山のように螺旋状に配置されたねじふし鉄筋の下端に、当該ねじふし専用の長ナットを拡幅部60bとして組み付けたものを好適に用いることができる。例えば、アンカー60として、ねじふし鉄筋の一種であるねじふしPC鋼棒の下端に長ナットを組み付けたものを用いる。このとき、アンカー60の固定部60aが、改良土70の天端から突出するように鉛直に埋める。
【0034】
次に、アンカー60を埋設した円柱状の改良土70を所定期間養生させて固化させる工程を行う。
【0035】
次に、図3(b)に示すように、アンカー60の上端部に改良土70の天端との間に高さ調整用スペーサ80を介して鋼製基礎梁90を固定する工程を行う。
【0036】
具体的には、まず、アンカー60の上端部に鋼製基礎梁90の底壁91に貫設された孔92を挿通して、鋼製基礎梁90の底壁91を改良土70の天端に載置する。ここで、鋼製基礎梁90はH型鋼からなる基礎梁である。そして、図4に示すように、改良土70の天端と鋼製基礎梁90の底壁91との間に高さ調整用スペーサ80を介して、鋼製基礎梁90が水平になるようにする。ここで、高さ調整用スペーサ80は、平板状のものであり、細長いU字状の溝が設けられて、側方から改良土70の天端と鋼製基礎梁90の底壁91との間に押し入れることが可能となっている。この高さ調整用スペーサ80は、その厚みの異なった適切な高さ調整用スペーサ80を選択することによって高さを調整するものであっても、その枚数を適切なものとすることによって高さを調整するものであってもよい。さらに、高さ調整用スペーサ80によって、鋼製基礎梁90が基準高さに位置するようにしてもよい。また、高さ調整用スペーサ80として、1つの延長部材12に対してのみ側方から押し入れられるものがあってもよい。このような高さ調整用スペーサ80を用いることによって、鋼製基礎梁90の水平出しを行うことができる。そして、固定部材100によって、鋼製基礎梁90を固定する。固定部材100は、例えば、アンカー60の固定部60aに付されたねじふし用のナットである。
【0037】
このように、柱状改良地盤の固化した改良土70に埋設されたアンカー60の突出部(固定部60b)に鋼製基礎梁90を固定するので、アンカー60のアンカー効果によって、鋼製基礎梁90を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性を向上させることができる。アンカー60の本数や埋設間隔は、鋼製基礎梁90に構築される建築物に想定される転倒モーメント等に基づく引き抜き耐力が十分に得られるように適宜定めればよい。また、風荷重や地震荷重などの水平力は、基礎底面の摩擦力や基礎の根入れにより負担されるが、アンカー60はこの水平力も有効に負担することができる。また、柱状改良地盤の改良土70にアンカー60を埋設することにより施工が行われるので、従来の杭を打設する場合に比べて、コストを含めた施工負担が少なくなる。また、改良土70の天端との間に高さ調整用スペーサ80を介して鋼製基礎梁90を固定するので、鋼製基礎梁90の水平出しや高さ調整を容易に行うことができる。また、柱状改良地盤の改良土70の固化前にアンカー60の一部を突出させて埋設するので、アンカー60の突出した部分がそのまま鋼製基礎梁90を固定させる固定部60aとなるため、施工負担を少なくすることが可能となる。
【0038】
また、アンカー60は拡幅部60bを有した棒状である。このようなアンカー60を引き抜く場合、拡幅部60bの上方の改良土70はコーン状に破断してアンカー60とともに引き抜かれる。そのため、アンカー60のアンカー効果が改良土70の短期せん断強度によるものとなるので、鋼製基礎梁90を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久性が大きく向上する。
【0039】
なお、アンカー本体部材11やアンカー60が拡幅部11b,60bを備えないものであっても、アンカー本体部材11やアンカー60と密着して改良土20,70が固化するため、アンカー本体部材11やアンカー60と改良土20,70との間に発生する付着力(粘着力及び摩擦力)によってアンカー10,60のアンカー効果が大きく、鋼製基礎梁40,90を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久力が向上する。また、アンカー本体部材11やアンカー60は、鉛直方向に凹凸する側面を備えるので、さらにアンカー10,60のアンカー効果が大きくなり、鋼製基礎梁40,90を基礎とする建築物の転倒モーメントに対する耐久力が向上する。アンカー本体部材11やアンカー60は、鉛直方向に凹凸する側面がその側面全体に渡るものであっても、その側面の一部のみを占めるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浅層混合処理地盤における基礎施工方法を概念的に説明する縦断面図であり、(a)はアンカー本体部材11を埋設した状態を、(b)は延長部材12を接続した状態を、(c)は鋼製基礎梁40を固定した状態をそれぞれ示す。
【図2】浅層混合処理地盤にアンカー10を用いて鋼製基礎梁40を固定した基礎構造を概念的に説明する縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る柱状改良地盤における基礎施工方法を概念的に説明する縦断面図であり、(a)はアンカー60を埋設した状態を、(b)は鋼製基礎梁90を固定した状態をそれぞれ示す。
【図4】柱状改良地盤にアンカー60を用いて鋼製基礎梁90を固定した基礎構造を概念的に説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10、60 アンカー
11 アンカー本体部材
11b、60b 拡幅部
12 延長部材
12b、60a 固定部(突出部)
20、70 改良土
30、80 高さ調整用スペーサ
40、90 鋼製基礎梁
50、100 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良地盤の固化した改良土に埋設されたアンカーの突出部に、前記改良土の天端との間に高さ調整用スペーサを介して、鋼製基礎梁を固定することを特徴とする改良地盤における基礎施工方法。
【請求項2】
前記アンカーは、アンカー本体部材と延長部材とからなり、
浅層混合処理地盤の転圧前の改良土に前記アンカー本体部材を埋め込み、前記改良土を転圧し固化させた後に、前記アンカー本体部材の一部を露出させ、該露出させたアンカー本体部材に前記延長部材を接続することにより、
前記アンカーを前記浅層混合処理地盤の固化した改良土に埋設し、前記延長部材の上端部が当該アンカーの突出部となることを特徴とする請求項1に記載の改良地盤における基礎施工方法。
【請求項3】
柱状改良地盤の固化前の改良土に前記アンカーの上端部を突出させて埋設し、前記改良土を固化させることにより、
前記アンカーを前記柱状改良地盤の固化した改良土に埋設し、前記アンカーの上端部が当該アンカーの突出部となることを特徴とする請求項1に記載の改良地盤における基礎施工方法。
【請求項4】
前記アンカーは、拡幅部を有した棒状であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の改良地盤における基礎施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−177525(P2007−177525A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377700(P2005−377700)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】