説明

改質反応装置および燃料電池発電装置

【課題】供給する水蒸気量を低く維持した上で、炭素の析出を抑えた改質反応装置および燃料電池発電装置を提供すること。
【解決手段】第1の面21aと第1の面21aと表裏の関係にある第2の面21bとを有し、改質反応を加速する触媒20で形成された触媒層21と、第1の面21aに沿って水蒸気Sを流す水蒸気流路24と、第2の面21bに沿って所定の方向に炭化水素系原燃料Rを流す原燃料流路26とを備える、炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sとの改質反応により水素を含有するガスFを製造する改質反応装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素系原燃料から水素を含む燃料ガスを製造するための改質反応装置および燃料電池発電装置に関し、特に炭素の析出を抑えた改質反応装置および燃料電池発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型発電システムとして開発が進められている燃料電池の多くは水素を燃料として発電するが、水素は炭化水素系原燃料に水蒸気を供給しつつ触媒下での改質反応により製造するのが一般的である。改質反応は高温で進行する一方、吸熱反応であり、バーナー等で加熱しながら行われるが、温度分布を生じやすい。すなわち、炭化水素系原燃料と水蒸気との混合物が触媒層中を流れながら改質反応が進むと、炭化水素系原燃料と水蒸気濃度の高い上流側で反応が進み、上流側の温度が低下しやすい。改質反応の反応温度が低下すると、炭素を析出しないための炭素量に対する水蒸気量の比がより大きな値となる。すなわち炭素を析出しないためには、より多量の水蒸気が必要になる。そのため、低温になることで炭素が析出しやすくなる。一方、炭素の析出を抑えるために水蒸気を大量に供給することは、それだけ余計に水を水蒸気化するエネルギを消費することになり、エネルギ効率の低下を招き好ましくない。炭素が析出すると、炭素が触媒表面を覆って改質反応効率の低下をもたらすとともに、触媒中を流れるガスの圧力損失が増大する一因ともなり、好ましくない。そこで、ニッケル系と貴金属系の2種類の触媒を用い、その充填方法を工夫して温度分布を低減する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−309702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、2種類の触媒を用いて、炭化水素系原燃料の入口付近と改質された燃料ガスの出口付近に炭素析出を起こし難い貴金属系の触媒を、その間にニッケル系の触媒を充填するのは、2種類の触媒を用いるために装置として複雑になり、定期的にメンテナンスの必要な触媒の交換を難しくしてしまう。そこで、本発明は、供給する水蒸気量を低く維持した上で、炭素の析出を抑えた改質反応装置および燃料電池発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応により水素を含有するガスを製造する改質反応装置は、例えば図1(a)に示すように、第1の面21aと第1の面21aと表裏の関係にある第2の面21bとを有し、改質反応を加速する触媒20で形成された触媒層21と;第1の面21aに沿って水蒸気Sを流す水蒸気流路24と;第2の面21bに沿って所定の方向に炭化水素系原燃料Rを流す原燃料流路26とを備える。
【0005】
このように構成すると、触媒層の第1の面に沿う水蒸気流路に水蒸気が流れ、第2の面に沿う原燃料流路に炭化水素系原燃料が流れるので、触媒層に原燃料流路から炭化水素系原燃料が入り込み、水蒸気流路から水蒸気が入り込む。そのため、改質反応が行われる触媒層全体にわたって水蒸気量が不足することなく、炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。よって、炭素の析出が抑えられる。また、炭素の析出を抑えるために必要最小限の水蒸気を水蒸気流路から供給するようにできるため、余分な水蒸気を供給することもない。なお、炭化水素系原燃料は、改質反応に必要とされる量より少ない水蒸気との混合物であってもよい。
【0006】
前記目的を達成するため、請求項2に記載の発明に係る炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応により水素を含有するガスを製造する改質反応装置は、例えば図2に示すように、改質反応を加速する触媒20で形成され、炭化水素系原燃料Rが所定の方向に流れ、炭化水素系原燃料Rが流れる所定の方向と平行な面23aを有し、平行な面23aから水蒸気Sが導入される触媒層23と;平行な面23aに沿って水蒸気Sを流す水蒸気流路24とを備える。
【0007】
このように構成すると、触媒層中を炭化水素系原燃料が流れ、炭化水素系原燃料が流れる方向と平行な面に沿う水蒸気流路に水蒸気が流れるので、触媒層に直接水蒸気流路から水蒸気が入り込む。そのため、濃度の高い炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。よって、炭素の析出が抑えられる。また、炭素の析出を抑えるために余分な水蒸気を供給する必要もない。
【0008】
また、請求項3に記載の発明に係る改質反応装置では、例えば図1(a)に示すように、請求項1または請求項2に記載の改質反応装置10において、触媒層21と水蒸気流路24とを隔離し、水蒸気Sの流れる貫通孔40が形成された区画壁30を備えてもよい。
このように構成すると、区画壁に形成された貫通孔を流れて水蒸気が触媒層に入り込むので、貫通孔の形成を変更することにより触媒層に入り込む水蒸気の流量を容易に調整することができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明に係る改質反応装置では、例えば図3に示すように、請求項3に記載の改質反応装置100において、炭化水素系原燃料Rが流れる所定の方向の上流側では下流側より開孔率が大きく形成されてもよい。
このように構成すると、改質反応が進みやすい上流側により多くの水蒸気が供給されるので、より確実に炭素の析出を抑えることができる。なお、開孔率とは、区画壁の一面における貫通孔面積の全面積に対する比をいう。
【0010】
また、請求項5に記載の発明に係る改質反応装置では、例えば図1(c)に示すように、請求項1または請求項2に記載の改質反応装置14において、触媒層22が、孔が形成される多孔体で形成され;水蒸気Sが、多孔体の孔中に導入されてもよい。
このように構成すると、触媒層が多孔体で形成され、水蒸気が孔中に導入されるので、孔中にて炭化水素系原燃料と水蒸気とが接触することになり、改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。また、多孔体が自立する場合には、触媒層を画定するための区画壁が不要となるので、構成が簡単になる。
【0011】
また、請求項6に記載の発明に係る改質反応装置では、例えば図3に示すように、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の改質反応装置100において、水蒸気流路58が環状断面を有し;触媒層21が環状断面の内側に配置されてもよい。
このように構成すると、水蒸気流路が環状断面を有し、触媒層が環状断面の内側に配置されるので、コンパクトな改質反応装置となる。
【0012】
また、請求項7に記載の発明に係る改質反応装置では、例えば図4に示すように、請求項1に記載の改質反応装置102において、原燃料流路74が環状断面を有し;触媒層21が環状断面の内側に配置されてもよい。
このように構成すると、原燃料流路が環状断面を有し、触媒層が環状断面の内側に配置されるので、コンパクトな改質反応装置となる。
【0013】
前記目的を達成するため、請求項8に記載の発明に係る燃料電池発電装置は、例えば図7(a)に示すように、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の改質反応装置14と;改質反応した水素を含有するガスFを導入し、発電を行う燃料電池セル92とを備える。
【0014】
このように構成すると、濃度の高い炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。よって、炭素の析出が抑えられる改質反応装置を備え、炭素の析出を抑えるために余分な水蒸気を供給する必要のない燃料電池発電装置となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る改質反応装置によれば、第1の面と第1の面と表裏の関係にある第2の面とを有し改質反応を加速する触媒で形成された触媒層と、第1の面に沿って水蒸気を流す水蒸気流路と、第2の面に沿って所定の方向に炭化水素系原燃料を流す原燃料流路とを備えるので、触媒層の第1の面に沿う水蒸気流路に水蒸気が流れ、第2の面に沿う原燃料流路に炭化水素系原燃料が流れ、予め混合された炭化水素系原燃料と水蒸気との混合物が流れるのではなく、触媒層に原燃料流路から炭化水素系原燃料が入り込み、水蒸気流路から水蒸気が入り込む。そのため、濃度の高い炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。よって、炭素の析出が抑えられ、また、炭素の析出を抑えるために余分な水蒸気を供給する必要もない改質反応装置が提供される。
【0016】
また、本発明に係る改質反応装置によれば、改質反応を加速する触媒で形成され、炭化水素系原燃料が所定の方向に流れ、炭化水素系原燃料が流れる所定の方向と平行な面を有し、平行な面から水蒸気が導入される触媒層と、平行な面に沿って水蒸気を流す水蒸気流路とを備えるので、触媒層中を炭化水素系原燃料が流れ、平行な面に沿う水蒸気流路に水蒸気が流れ、予め混合された炭化水素系原燃料と水蒸気との混合物が流れるのではなく、触媒層に水蒸気流路から水蒸気が入り込む。そのため、濃度の高い炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。よって、炭素の析出が抑えられ、また、炭素の析出を抑えるために余分な水蒸気を供給する必要もない改質反応装置が提供される。
【0017】
また、本発明に係る燃料電池発電装置によれば、上記の改質反応装置と、改質反応した水素を含有するガスを導入し発電を行う燃料電池セルとを備えるので、濃度の高い炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。よって、炭素の析出が抑えられる改質反応装置を備え、炭素の析出を抑えるために余分な水蒸気を供給する必要のない燃料電池発電装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号あるいは類似符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、改質反応装置10、12、14の主要部を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態としての改質反応装置10、12、14を模式的に説明する断面図で、(a)は貫通孔40を有する区画壁30とメッシュ36とにより触媒層21が画定される改質反応装置10を、(b)は貫通孔40を有する区画壁30と貫通孔42を有する区画壁32とにより触媒層21が画定される改質反応装置12を、(c)は多孔体により形成された触媒層22を備える改質反応装置14とを示す。図1(a)に示す改質反応装置10は、触媒20から形成された触媒層21と、触媒層21の第1の面21a側に配置され、複数の貫通孔40が形成された壁である区画壁30と、触媒層21の第1の面21aと表裏の関係にある第2の面21b側に配置されるメッシュ36を備える。すなわち、触媒層21は、区画壁30とメッシュ36とにより画定される。触媒層21の第1の面21a側には、水蒸気Sが流れる水蒸気流路24が形成される。触媒層21と水蒸気流路24とは区画壁30で隔離される。触媒層21の第2の面21b側には、炭化水素系原燃料Rが流れる原燃料流路26が形成される。触媒層21と原燃料流路26とは、メッシュ36で隔離される。
【0020】
触媒層21を形成する触媒20は、典型的には、アルミナAlにルテニウムRuやニッケルNiを担持した粒径1〜20mm程度で、多くの場合は2〜5mm程度のほぼ球形の粒子である。白金Pt等の他の改質反応を加速する貴金属を担持した触媒でもよく、また、担体は、セラミックス等、アルミナAl以外でもよい。さらに、担体を多孔体として、単位体積あたりの表面積を増大させ、触媒としての効果を高めてもよい。触媒20の形状は球形に限られず、大きさも用途に応じて変更される。なお、触媒層21中には触媒20とは別の粒子が混入してもよく、例えば不活性な粒子を混入して改質反応速度を調整してもよい。
【0021】
区画壁30は、触媒層21と水蒸気流路24とを隔離し、触媒層21を区画する。区画壁30には、複数の貫通孔40が形成されており、水蒸気流路24を流れる水蒸気Sを触媒層21内へ導入する。区画壁30としては、パンチングメタルやハニカム構造のような多孔板で形成する。あるいは、金属メッシュで形成しても、多孔質のセラミックスで形成してもよい。区画壁30は、触媒層21と水蒸気流路24とを隔離し、水蒸気流路24の水蒸気Sが流れる貫通孔40が形成され、高温の改質反応温度に対する耐熱性を有する素材で形成されればよい。区画壁30の開孔率は特に限定されないが、20〜50%程度とすると改質反応をするのに過剰な水蒸気Sを供給することなく、かつ、水蒸気Sが不足して炭素を析出することもなく、好適である。なお、パンチングメタルやハニカム構造のような多孔板や多孔質のセラミックスで区画壁30を形成すると、開孔率を調整しやすいので好適である。また、パンチングメタルであれば区画壁30を薄く形成することができる。ハニカム構造の多孔板とすると、高強度の区画壁30を形成することができる。セラミックスであれば、耐熱性が高く、また、軽量の区画壁30を形成することができる。
【0022】
メッシュ36は、触媒層21と原燃料流路26とを隔離し、触媒層21を区画する。メッシュ36は、原燃料流路26を流れる炭化水素系原燃料Rを触媒層21に導入し易いことが好ましい。メッシュ36は、金属メッシュでも他の素材のメッシュでもよく、例えばステンレス鋼のように高温の改質反応温度に対する耐熱性を有する素材で形成されればよい。なお、図1(a)に示すように、触媒層21を鉛直下方に、原燃料流路26をその上方に配置する場合には、メッシュ36を備えずに、重力によって触媒20を触媒層21に安定させて、触媒層21を区画することもできる。
【0023】
原燃料流路26には、炭化水素系原燃料Rが図中の矢印方向(図1(a)の左から右)に流れる。ここで、炭化水素系原燃料Rとは、炭化水素だけからなるガス、あるいは、炭化水素と炭化水素以外からなるガスの総称であり、水分を含んでもよい。炭化水素系原燃料Rとしては、メタンを含む、バイオマスなどの消化ガスや都市ガス、LPGやナフサ、灯油などの液体状炭化水素を気化させたガスなどが例示される。炭化水素は、改質触媒20の下で、水蒸気と改質反応をすることにより、水素を生ずる。例えば、炭化水素としてメタンCHを用いると、CH+2HO→CO+4Hとなる。あるいは、CH+HO→CO+3Hとなる。
【0024】
水蒸気流路24には、水蒸気Sが流れる。典型的には、図示するように水蒸気Sは炭化水素系原燃料Rと同方向に流れるが、流れる方向は、水素系原燃料Rが流れる方向と異なっていてもよい。水蒸気Sの温度は、例えば200〜1000℃であり、圧力は水素系原燃料Rの圧力より高くする。水蒸気Sの圧力を水素系原燃料Rの圧力より高くすることにより、触媒層21で改質反応の結果生じた水素等のガスは、水蒸気流路24に流れず、原燃料流路26に流れる。
【0025】
続いて、改質反応装置10の作用について説明する。原燃料流路26を流れる炭化水素系原燃料Rの少なくとも一部がメッシュ36を通り抜け、触媒層21に入り込む。また、水蒸気流路24を流れる水蒸気Sの少なくとも一部も、区画壁30の貫通孔40を流れ、触媒層21に入り込む。そこで、触媒層21中で、炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sとが接触する。炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sとが触媒20の下で接触し、前述の改質反応を行うことにより水素を生ずる。すなわち、炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sとが改質反応により水素を含有するガスとしての燃料ガスFとなる。なお、改質反応は、典型的には600〜1000℃程度の高温で行われるので、触媒層21は不図示の加熱器により改質反応に適する温度に加熱される。なお、水蒸気Sは、水蒸気流路24から貫通孔40を通って導入されたものに限られず、炭化水素系原燃料Rに予め混合されていてもよい。特にバイオマス由来の炭化水素系原燃料Rでは、通常メタン等の炭化水素と水蒸気とを含有しており、炭化水素系原燃料Rには水蒸気が含まれる。
【0026】
ここで、水蒸気流路24の圧力が原燃料流路26の圧力より高いので、生成した燃料ガスFは触媒層21からメッシュ36を通り抜け、原燃料流路26に流れる。そこで、原燃料流路26の上流側(図1(a)の左側)では炭化水素系原燃料Rが流れるが、下流側(図1(a)の右側)では燃料ガスFが流れる。この流れの方向が、炭化水素系原燃料Rが流れる所定の方向である。なお、改質反応装置10では、炭化水素系原燃料Rが必ずしも総て燃料ガスFに改質される必要はない。この点については、図8の説明において後述する。
【0027】
改質反応装置10では、触媒層21の第1の面21a側から水蒸気流路24に沿った広い範囲で水蒸気Sが入り込み、第2の面21b側から原燃料流路26に沿った広い範囲で炭化水素系原燃料Rが入り込むので、触媒層21中の広い範囲でほぼ均等に炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sによる改質反応が行われる。すなわち、局所的に改質反応が進むことによる温度低下部分が形成されない。そのため、改質反応温度の低下による、炭素を析出しないための炭素量に対する水蒸気量の比(スチームカーボン比S/C)が大きくなることがなく、すなわち必要とされる水蒸気量が増えることなく、炭素の析出が抑えられる。なお、スチームカーボン比S/Cは、2〜5程度とするのがよい。また、触媒層21の広い範囲で改質反応が行われ、改質反応が行われる広い範囲に水蒸気Sが水蒸気流路24から直接に供給されるので、水蒸気Sの供給量を必要最小限まで低減することができる。さらに、局所的な温度の低下が防止される、すなわち不均一な温度分布が防止されるので、触媒20等に生ずる熱応力が抑えられ、触媒20の圧壊等を防ぐことができる。
【0028】
次に、図1(b)に示す改質反応装置12では、改質反応装置10のメッシュ36の代わりに、触媒層21の第2の面21b側に貫通孔42が形成された区画壁32を備え、区画壁32で触媒層21と原燃料流路26とを隔離する。区画壁32は、触媒層21と水蒸気流路24とを隔離する区画壁30と同様の構造でよい。しかし、触媒層21中により確実に炭化水素系原燃料Rを導入するために、開孔率を高くすることが好ましい。触媒層21を区画壁32で区画することにより、改質反応装置12は、強度的に優れた改質反応装置12となる。
【0029】
次に、図1(c)に示す改質反応装置14では、触媒層22が、粒状の触媒により形成されるのではなく、一体としての多孔体の触媒により形成される。例えば、アクリル等の造孔剤とアルミナAlとの混合体を焼結すると、アクリルが溶融して流出することにより、多孔体の担体が形成される。その多孔体の担体にルテニウムRuやニッケルNi等の触媒作用を有する金属を含浸させることによって、一体としての多孔体の触媒層22を形成する。あるいは、触媒作用を有する金属と、耐熱性の高いセラミックスを焼結させた、サーメットと称される多孔体としてもよい。その他、触媒作用を有する金属を含有するパンチングメタルやハニカム構造体としてもよい。
【0030】
触媒層22が多孔体で形成されると、触媒層22の第1の面22a側から水蒸気流路24に沿った広い範囲で水蒸気Sが入り込み、第2の面22b側から原燃料流路26に沿った広い範囲で炭化水素系原燃料Rが入り込むので、触媒層22中の広い範囲で炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sによる改質反応が行われる。すなわち、上流側でも、局所的に改質反応が進むことによる温度低下部分が形成されない。そのため、改質反応温度の低下による、炭素を析出しないためのスチームカーボン比S/Cが大きくなることがなく、すなわち必要とされる水蒸気量が増えることなく、炭素の析出が抑えられる。また、触媒層22の広い範囲で改質反応が行われ、改質反応が行われる広い範囲に水蒸気Sが水蒸気流路24から直接に供給されるので、水蒸気Sの供給量を必要最小限まで低減することができる。さらに、局所的な温度の低下が防止される、すなわち不均一な温度分布が防止されるので、触媒22等に生ずる熱応力が抑えられ、触媒22の損壊等を防ぐことができる。
【0031】
触媒層22を一体としての多孔体で形成すると、区画壁30(図1(a)参照)やメッシュ36(図1(a)参照)、区画壁32(図1(b)参照)がなくても触媒層22が画定される。すなわち、区画壁やメッシュが不要となるので、改質反応装置14の構成が簡単になり、製造が容易となる。なお、一体としての多孔体の触媒層22が自立するほどに剛性が高くない場合には、区画壁やメッシュを備えてもよい。
【0032】
次に、図2を参照して、改質反応装置16の主要部について説明する。図2は、本発明の第2の実施の形態としての改質反応装置16を模式的に説明する断面図である。改質反応装置16は、触媒20から形成された触媒層23と、触媒層23の面23a側に配置され、複数の貫通孔40が形成された壁である区画壁30と、触媒層23の面23aと表裏の関係にある面23b側に配置される区画壁34を備える。すなわち、触媒層21は、区画壁30と区画壁34とにより画定される。触媒層23の第1の面23a側には、水蒸気Sが流れる水蒸気流路24が形成される。触媒層23と水蒸気流路24とは区画壁30で隔離される。
【0033】
改質反応装置16では、炭化水素系原燃料Rは、触媒層23中を流れる。炭化水素系原燃料Rは、触媒層23の面23aおよび面23bに画定された流路を矢印方向(図2の左から右)へ流れる。この流れる方向が、所定の方向となる。すなわち、面23aは、炭化水素系原燃料Rが触媒層23中を流れる所定の方向と平行な面となる。ここで、「所定の方向と平行な面」とは、数学的に厳密な意味での平行でなくてもよく、断面において炭化水素系原燃料Rが流れる所定の方向に実質的に沿った面であればよく、図2の断面方向(紙面の方向)に湾曲した面を含む。
【0034】
面23a側から、区画壁30の貫通孔40を流れて、水蒸気流路24から水蒸気Sが触媒層23中に入り込む。この場合も、水蒸気流路24の圧力を触媒層23中の圧力より高く設定することにより、水蒸気Sが水蒸気流路24から触媒層23中に入り込む。触媒層23中に入り込んだ水蒸気Sは、触媒層23中を流れる炭化水素系原燃料Rと接触し、改質反応を行い、水素を含有する燃料ガスFを生ずる。生じた燃料ガスFは、触媒層23中を炭化水素系原燃料Rと同じ所定の方向に流れる。
【0035】
改質反応装置16では、触媒層23の面23a側から水蒸気流路24に沿った広い範囲で水蒸気Sが入り込み、触媒層23中を流れる炭化水素系原燃料Rと接触するので、触媒層23中の広い範囲でほぼ均等に炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sによる改質反応が行われる。すなわち、局所的に改質反応が進むことによる温度低下部分が形成されない。そのため、改質反応温度の低下による、炭素を析出しないためのスチームカーボン比S/Cが大きくなることがなく、すなわち必要とされる水蒸気量が増えることなく、炭素の析出が抑えられる。また、触媒層23の広い範囲で改質反応が行われ、改質反応が行われる広い範囲に水蒸気Sが水蒸気流路24から直接に供給されるので、水蒸気Sの供給量を必要最小限まで低減することができる。さらに、局所的な温度の低下が防止される、すなわち不均一な温度分布が防止されるので、触媒20等に生ずる熱応力が抑えられ、触媒20の圧壊等を防ぐことができる。加えて、炭化水素系原燃料Rが触媒層23中を流れているので、触媒との接触頻度が高まり、未反応のまま排出される炭化水素系原燃料Rの少ない燃料ガスFが得られる。
【0036】
次に、図3を参照して、改質反応装置100について説明する。図3は、本発明の第3の実施の形態としての改質反応装置100の断面図である。改質反応装置100は、円筒形のシェル50と、シェル50の端部を封じる一対のフランジ52、54と、これまで模式的に主要部としての改質反応装置として説明した触媒構成10とを備える。触媒構成10は、シェル50内に配置され、シェル50の内面との間に間隙を有して、外面に区画壁30が、その内側に触媒層21とメッシュ36が配された円筒形に形成される。よって、シェル50と触媒構成10との間に、円筒形の、すなわち断面が環状の、本実施の形態では円環状の外側空間58が形成される。触媒層21は環状断面の外側空間58の内側に配置される。また、円筒形の触媒構成10の内側には内側空間56が形成される。ここで、改質反応装置100は触媒構成10を備えるものとして説明するが、触媒構成としては他の改質反応装置として説明した触媒構成12、14、16であってもよい。
【0037】
シェル50の一端の近傍には、水蒸気ノズル60が形成され、不図示の水蒸気供給管と連接される。水蒸気ノズル60からシェル50内の外側空間58に水蒸気Sが導入される。水蒸気ノズル60が形成された側の端部を封じる入口側フランジ52には原燃料ノズル62が形成され、不図示の原燃料供給管と連接される。原燃料ノズル62は、触媒構成10の内側の内側空間56と連接し、原燃料ノズル62から内側空間56に炭化水素系原燃料Rが導入される。水蒸気ノズル60が形成された側の端部と反対側の端部を封じる出口側フランジ54には燃料ガスノズル64が形成され、不図示の燃料ガス管と連接される。燃料ガスノズル64は、触媒構成10の内側の内側空間56と連接し、シェル50内の内側空間56から改質反応により生成された燃料ガスFを燃料ガス管に導出する。
【0038】
改質反応装置100では、内側空間56が原燃料流路26(図1参照)に相当し、外側空間58が水蒸気流路24(図1参照)に相当する。このように、触媒構成10を円筒形に形成し、その外側空間58に水蒸気Sを、内側空間56に炭化水素系原燃料Rを流すことにより、コンパクトな改質反応装置100となる。また、改質反応装置100は、シェル50と、一対のフランジ52、54と、円筒形に形成した触媒構成10とで構成されるので、製造が容易で、かつ、触媒20の交換等のメンテナンスも容易である。
【0039】
図3に示す区画壁30では、炭化水素系原燃料Rの流れる上流側(図3の下側)には、等サイズの貫通孔40が下流側より多く形成されている。すなわち、上流側の方が下流側より開孔率が大きい。触媒構成10では、基本的に、触媒層21の第1の面21a側から水蒸気流路58に沿った広い範囲で水蒸気Sが入り込み、第2の面21b側から原燃料流路56に沿った広い範囲で炭化水素系原燃料Rが入り込むので、触媒層21中の広い範囲でほぼ均等に炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sによる改質反応が行われ、局所的に改質反応が進むことによる温度低下部分が形成されない。しかし、原燃料流路56を流れる炭化水素系原燃料Rには、下流になるにつれ、徐々に改質反応により生成された燃料ガスFが多く含まれるようになる。そのため、同じ量の炭化水素系原燃料Rあるいは炭化水素系原燃料Rと燃料ガスFとの混合ガスが触媒層21中に入り込んでも、下流側になるにつれ、触媒層21中での改質反応が活発でなくなることがある。そのため、上流側に比べて下流側では改質反応に要求される水蒸気Sの量が減少するので、下流側の区画壁30に形成される貫通孔40は上流側に形成される貫通孔40より少ない。すなわち、炭化水素系原燃料Rの流れる上流側には下流側より多くの貫通孔40が形成されることにより、上流側で水蒸気Sが不足して炭素が析出することを抑えつつ、水蒸気Sの供給量を低く維持することができる。なお、開孔率を大きく形成するには、等サイズの貫通孔40を多数形成しても、同数の大きなサイズの貫通孔40を形成しても、多数の大きなサイズの貫通孔40を形成してもよい。
【0040】
図4に示す改質反応装置102のように、水蒸気流路76と原燃料流路74との配置を逆にしてもよい。図4は、本発明の第3の実施の形態の変形としての改質反応装置102の断面図である。改質反応装置102は、ヘッド71を備えたシェル70と、シェル70内に配置された触媒構造10とを備える。触媒構造10は、釣鐘形に形成され、円筒形の胴部と、水蒸気Sが流れる下流側の一端でシェル70のヘッド71と相似形状に形成された皿型部とを有し、一端が閉じている。触媒構造10は、胴部および皿型部の内側に貫通孔40が形成された区画壁30が、その外側に触媒層21、更に外側にメッシュ36が配置される。
【0041】
触媒構造10の胴部と皿型部に囲まれて内側空間76が、触媒構造10とシェル70との間に外側空間74が形成される。シェル70のヘッド71には、燃料ガスノズル72が形成され、不図示の燃料ガス管と連通し、改質反応により生成された燃料ガスFを導出する。なお、改質反応装置102の図示しない端部は、改質反応装置100の上流側端部と同様に構成される。ただし、シェル70に形成され外側空間74と連通するノズルからは炭化水素系原燃料Rが、入口側フランジに形成され内側空間76と連通するノズルからは水蒸気Sが導入される。よって、外側空間74が原燃料流路26(図1参照)に相当し、内側空間76が水蒸気流路24(図1参照)に相当する。このように、触媒構造10の胴部において、円筒形の、すなわち断面が環状の、本実施の形態では円環状の原燃料流路74の内側に、円筒形に形成した触媒構成10を配置し、その内側の水蒸気流路76に水蒸気Sを流すことにより、コンパクトな改質反応装置102となる。特に、触媒構成10が端部に皿型部を有することで、より触媒層21の体積を増やし、触媒20を多く収容することが可能となり、更にコンパクト化が図れる。
【0042】
図5には、本発明の第3の実施の形態の別の変形としての改質反応装置104の断面図を示す。前述のように、改質反応は600〜1000℃で行われ、かつ、吸熱反応であるので、外部(改質反応系外)から熱を供給するのが一般的である。そこで、改質反応装置104では、加熱部としての内側空間59に加熱器としてのバーナー80を備え、バーナー80の火炎からの熱で加熱して、触媒層23における炭化水素系原燃料Rと水蒸気Sとの改質反応を適切な温度に保つ。触媒層23での温度むらを少なくするために、バーナー80は内側空間59の円形断面の中央に配置されるのが好ましい。炭化水素系原燃料Rあるいは改質反応により生成された燃料ガスFがバーナー80の熱で燃焼することがないように、図2で示す触媒層23を用いている。すなわち、内側空間59は触媒層23と区画壁34により隔離され、炭化水素系原燃料Rあるいは燃料ガスFは内側空間59に入り込むことはない。また、原燃料ノズル66は、入口側フランジ53の中心あるいは内側空間59に対応する位置から外れ、触媒層23と連接する位置に配置され、また、燃料ガスノズル68も出口側フランジ55の中心あるいは内側空間59に対応する位置から外れ、触媒層23と連接する位置に配置される。そして、出口側フランジ55の中心あるいは内側空間59に連接する位置には、バーナー80の燃焼ガスWを排気するための排気ノズル69が配置される。
【0043】
また、図3に示す改質反応装置100にバーナー80を備える場合には、炭化水素系原燃料Rあるいは燃料ガスFがバーナー80の火炎と接して燃焼することがないように、バーナー80を囲み、炭化水素系原燃料Rあるいは燃料ガスFから隔離する。例えば、内側空間56を炭化水素系原燃料Rおよび燃料ガスFが流れる原燃料流路とバーナー80を収容する加熱部とに区画する隔壁を設置する。その場合に、隔壁を内側空間56と同心に形成すると、より均等に触媒層21を加熱することになるので、好適である。そこで、入口側フランジ52の中心あるいは加熱部と連接する位置にはバーナー80が、中心を外れて原燃料流路と連接する位置に原燃料ノズル62が配置され、出口側フランジ54の中心あるいは加熱部と連接する位置には排気ノズルが、中心を外れて原燃料流路と連接する位置に燃料ガスノズル64が配置されることになる。また、図4に示す改質反応装置102にバーナー80を備える場合には、内側空間76には、水蒸気Sが流れており、バーナー80の火炎に接しても燃焼しないので、内側空間76にバーナー80を備えてもよい。なお、改質反応の反応熱を供給するのは、バーナー80の火炎に限られず、改質反応装置104をシェル50の外面から加熱する装置等を含め、他の周知な加熱器でもよい。あるいは、炭化水素系原燃料Rや水蒸気Sを改質反応に適した温度まで加熱した上で、改質反応装置104に供給してもよい。あるいは、改質反応装置104内で発熱反応を行わせてもよく、これらのいかなる加熱手段を用いてもよい。改質反応装置104のように、環状断面の水蒸気流路58の内側に触媒層23を形成し、触媒層23を環状断面に形成し、触媒層23の内側に改質反応熱を供給するための加熱部59を配置することにより、コンパクトな改質反応装置104となる。特に加熱部59にバーナー80を備えることにより、改質反応に必要な熱を十分に供給することができる。
【0044】
次に、図6を参照して、炭素が析出してしまっても、析出した炭素を取り除くことができる構成が付属された改質反応装置100について説明する。図6は、析出した炭素を取り除くための酸化剤供給装置が付属した改質反応装置100を説明する断面図である。図3を参照して説明した改質反応装置100の水蒸気ノズル60には、水蒸気供給配管86が直接連接せず、短管82が接続し、短管82の他端には切替弁84が配設される。切替弁84は、三方弁であり、短管82と、水蒸気供給配管86と、酸化剤供給装置としての酸化剤供給管88が接続する。酸化剤供給管88には、コンプレッサ、空気ボンベ等の酸化剤Oの供給源(不図示)が接続する。切替弁84は、短管82と水蒸気供給配管86とを連通する位置と、短管82と酸化剤供給管88とを連通する位置とを切り替える。
【0045】
切替弁84が短管82と水蒸気供給配管86とを連通する位置にあるときには、水蒸気Sが水蒸気供給配管86、切替弁84、短管82を通って水蒸気ノズル60から外側空間58に供給され、前述の通りに、炭化水素系原燃料Rと改質反応が行われる。
【0046】
切替弁84が短管82と酸化剤供給管88とを連通する位置にあるときには、酸化剤Oが酸化剤供給管88、切替弁84、短管82を通って水蒸気ノズル60から外側空間58に供給される。酸化剤Oは、典型的には高温空気であり、あるいは、他の酸化作用を有するガスである。外側空間58に酸化剤Oを供給するのは、改質反応装置100の運転を停止しているときで、炭化水素系原燃料Rは改質反応装置100に供給されない。すなわち、外側空間58を酸化剤Oが流れるだけである。そこで、酸化剤Oは、区画壁30の貫通孔40を流れて触媒層21に達する。触媒層21の触媒20の表面に付着している、析出した炭素は、酸化剤Oにより酸化され、二酸化炭素COとなる。気体である二酸化炭素COは、酸化剤Oに随伴し、触媒層21からメッシュ36を通過して、内側空間56を通って燃料ガスノズル64から排出される。このように、酸化剤Oで炭素を酸化することにより、容易に析出した炭素を取り除くことができ、触媒20の有効面積の減少、すなわち、改質反応効率の低下、触媒層21を流れる流体の圧力損失の増大等の炭素の析出による弊害を取り除くことができる。
【0047】
なお、二酸化炭素COが燃料ガスノズル64から排出されるので、二酸化炭素COが後段の装置の運転に悪影響を与える恐れがある場合には、燃料ガスノズル64に接続する配管に切替弁(不図示)を配設して、二酸化炭素COが後段の装置に流れないようにするのがよい。
【0048】
析出した炭素を取り除くことができる構成として、酸化剤供給装置としての酸化剤供給管88が接続するものとして説明したが、酸化剤供給装置の代わりに還元剤供給装置を備えてもよい。典型的には、還元剤Dとして水素を供給し、上記と同様の操作により、炭素を還元してメタンガスCHに変換し(メタネーションともいう)、燃料ガスノズル64から排出する。改質反応装置100で生成した水素の一部を用いてメタネーションにより析出した炭素を取り除くことができるので、還元剤Dの入手が容易であり、また、メタンガスCHが排出されるので、排出ガスの再利用が可能であるという利点がある。なお、酸化剤供給装置では、空気を酸化剤Oとして利用できるので、酸化剤Oの入手はさらに容易である。
【0049】
続いて、図7を参照して、本発明の第4の実施の形態としての燃料電池発電装置110および電解セル装置112について説明する。図7は、本発明の第4の実施の形態としての燃料電池発電装置110および電解セル装置112の主要部を説明する断面図で、(a)は燃料電池発電装置110を、(b)は電解セル装置112を示す。図7(a)に示す燃料電池発電装置110は、円筒形のシェル90に、これまで模式的に主要部としての改質反応装置14として説明した触媒構成すなわち触媒層22とを備える。触媒層22も円筒形に形成され、その内側に間隔を開けて、円筒形に形成され、電極を具備した電解質膜92を備える。すなわち、図7には、円筒形の一部の断面のみを示している。シェル90、触媒層22、電解質膜92の間にはそれぞれ、外側空間96、中間空間97が形成され、電解質膜92の内側には内側空間98が形成される。ここで、電解質膜92としては、固体酸化物電解質膜として知られているイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などが好適に用いられるが、他の周知の電解質膜を用いてもよい。
【0050】
外側空間96には水蒸気Sが導入され、中間空間97には炭化水素系原燃料Rが導入されて、触媒層22と組み合わせて、改質反応装置が構成される。よって、改質反応が進むにつれ、中間空間97に水素を含む燃料ガスFが流れることになる。すなわち、燃料電池発電装置110で炭化水素系原燃料Rが流れる方向において、最上流側では炭化水素系原燃料Rが流れるが、その下流側では燃料ガスFが徐々に増加して流れる。
【0051】
内側空間98には、酸化剤ガスとしての空気Aが導入される。そこで、中間空間97に流れる燃料ガスFと空気Aとが電解質膜92を挟んで流れることになり、燃料電池セルが構成される。燃料電池セルとは、電解質膜92の内側空間98側をカソード電極、中間空間97側をアノード電極として、アノード電極で燃料ガスF中の水素が電解質膜92を経由して供給される酸素イオンにより酸化され水分となり、カソード電極で空気A中の酸素から酸素イオンと電気が生成される反応器である。そこで、中間空間97からは、最終的にアノードオフガスBとして水分を含むガスが、内側空間98からは、最終的にカソードオフガスCとして酸素の減少したガスが排出される。燃料電池セルで発電した電気は、外部に取出され、利用される。
【0052】
燃料電池発電装置110のように、改質反応装置を構成するための触媒層22と、燃料電池セルを構成するための電解質膜92とを、同一のシェル90内で、同心の円筒形として配置することにより、配管系を備えることなく、コンパクトな構造で、炭化水素系原燃料Rから燃料電池セルにて発電を行うことができる。また、図1(c)にて説明した改質反応装置14としての触媒層22を備えるので、改質反応温度の低下による、炭素を析出しないためのスチームカーボン比S/Cが大きくなることがなく、すなわち必要とされる水蒸気量が増えることなく、炭素の析出が抑えられる。また、触媒層22の広い範囲で改質反応が行われ、改質反応が行われる広い範囲に水蒸気Sが直接に供給され、水蒸気Sの供給量を必要最小限まで低減することができる。さらに、局所的な温度の低下が防止される、すなわち不均一な温度分布が防止されるので、触媒22等に生ずる熱応力が抑えられ、触媒22の損壊等を防ぐことができる。なお、触媒層22と電解質膜92の配置を入れ替えて、外側空間96に空気Aを、内側空間98に水蒸気Sを導入してもよいことは明らかである。
【0053】
図7(b)に示す電解セル装置112は、基本的に燃料電池発電装置110と同様の構造をしている。電解セル装置112に用いられる電解質膜94は、燃料電池発電装置110に用いられる電解質膜94と同じものでよい。ただし、電解セル装置112では、内側空間98に空気Aではなく、水蒸気Sを導入する。そこで、中間空間に流れる燃料ガスFと水蒸気Sが電解質膜94を挟んで流れ、電解セルが構成される。電解セルとは、電解質膜94の内側空間98側をカソード電極、中間空間97側をアノード電極として、アノード電極で燃料ガスF中の水素が電解質膜94を経由して供給される酸素イオンにより酸化され水分となり、カソード電極で水蒸気S中の水から酸素イオンと水素が生成される反応器である。すなわち、カソードオフガスC’は、水素に富むガスとなり、この水素が外部に取出され、利用される。電解セル装置112を用いることにより、高純度の水素を簡略化した構造で取り出すことができる。
【0054】
電解セル装置112のように、改質反応装置構成するための触媒層22と、電解セルを構成するための電解質膜94とを、同一のシェル90内で、同心の円筒形として配置することにより、配管系を備えることなく、コンパクトな構造で、炭化水素系原燃料Rから水素に富んだガスC’を生成することができる。また、図1(c)にて説明した改質反応装置14としての触媒層22を備えるので、改質反応温度の低下による、炭素を析出しないためのスチームカーボン比S/Cが大きくなることがなく、すなわち必要とされる水蒸気量が増えることなく、炭素の析出が抑えられる。また、触媒層22の広い範囲で改質反応が行われ、改質反応が行われる広い範囲に水蒸気Sが直接に供給され、水蒸気Sの供給量を必要最小限まで低減することができる。さらに、局所的な温度の低下が防止される、すなわち不均一な温度分布が防止されるので、触媒22等に生ずる熱応力が抑えられ、触媒22の損壊等を防ぐことができる。なお、触媒層22と電解質膜94の配置を入れ替えもよいことは明らかである。また、燃料電池発電装置110あるいは電解セル装置112において、触媒層22の代わりに、改質反応装置としての触媒構成10、12、16を用いてもよい。
【0055】
次に図8を参照して、本発明の第5の実施の形態としての燃料電池発電装置150を説明する。図8は、これまで説明した本発明の実施の形態である改質反応装置を備える燃料電池発電装置150のブロック図である。燃料電池発電装置150は、炭化水素系原燃料R1からイオウ分を取り除く脱硫器120と、脱硫した炭化水素系原燃料R2と水蒸気Sとから水素を含有する燃料ガスF1を生成する改質反応装置106と、燃料ガスF1中の一酸化炭素と水とのシフト反応により二酸化炭素と水素を生成するシフト反応器126と、シフト反応後の燃料ガスF2中に残留する一酸化炭素を酸化して二酸化炭素に変えるCO燃焼器128と、残留する一酸化炭素を酸化した燃料ガスF3をアノード電極132に、酸化剤としての空気Aをカソード電極136に導入し、電解質膜134を介して発電する燃料電池セル130とを備える。ここで、改質反応装置106は、例えば図1(a)に示す改質反応装置100のように触媒層20と水蒸気流路24と原燃料流路26とを備えて改質反応を行わせる改質反応器本体122と、改質反応器本体122に改質反応熱を供給する加熱器124とを有する。また、燃料電池発電装置150は、脱硫器120に炭化水素系原燃料R1を供給する配管、脱硫器120から改質反応器本体122に炭化水素系原燃料R2を供給する配管、改質反応器本体122からシフト反応器126に燃料ガスF1を供給する配管、シフト反応器126からCO燃焼器128に燃料ガスF2を供給する配管、CO燃焼器128からアノード電極132に燃料ガスF3を供給する配管、カソード電極136に空気Aを供給する配管、加熱器124に炭化水素系原燃料R1を供給する配管、空気Aを供給する配管、アノードオフガスBを供給する配管、改質反応器本体122に水蒸気Sを供給する配管を備える。
【0056】
燃料電池発電装置150では、炭化水素系原燃料R1に含有されるイオウ分を脱硫器120で取り除く。後段で、特に電解質膜134において、イオウ分が材料劣化等を引き起こす恐れがあるためである。改質反応器本体122では、脱硫された炭化水素系原燃料R2と水蒸気Sとの改質反応により、水素を含有する燃料ガスF1を生成する。ここで、炭化水素系原燃料R2が総て水素と二酸化炭素とに改質反応されず、燃料ガスF1に一酸化炭素や炭化水素が残留している。一般に固体高分子形燃料電池では、燃料ガスF3中に一酸化炭素が残留すると、アノード極のプラチナ触媒が被毒し、発電効率の低下が起こるという問題があるので、一酸化炭素は後段のシフト反応器126およびCO燃焼器128で処理される必要がある。しかし、高温で作動する固体酸化物形燃料電池では、残留した一酸化炭素および炭化水素を直接アノード電極上で還元すること(内部改質と呼ばれる)ができるため、総ての炭化水素や一酸化炭素を水素と二酸化炭素まで転換する必要がなく、燃料ガスF1を燃料ガスF3として直接アノード電極132へ供給してもよい。このため、改質装置106と固体酸化物形燃料電池150の組み合わせでは、シフト反応器126およびCO燃焼器128を除いた構成が可能であり、図7に示す燃料電池発電装置110のような簡潔な構造で十分効率的に働く。
【0057】
燃料電池セル130のアノード電極132に導入された燃料ガスF3は、カソード電極136に導入される空気Aと協働して、発電する。アノード電極132では、燃料ガスF3中の水素が総て発電に利用されることはなく、一部の水素がアノードオフガスBとして排出される。また、燃料ガスF3には、改質されずに残量した炭化水素も含まれる。そこで、アノードオフガスBを加熱器124に導入して燃焼し、改質反応熱の熱源として有効利用し、エネルギ効率を高めている。
【0058】
燃料電池発電装置150では、図6に示したように、改質反応器本体122に析出した炭素を取り除くための酸化剤供給装置が付属してもよい。すなわち、改質反応器本体122の触媒(不図示)に炭素が析出し、改質効率が低下し、あるいは、改質反応器本体122を流れるガスR2・F1の圧力損失が増加した場合に、改質反応器本体122の運転停止中に、水蒸気Sに代わり酸化剤Oを供給し、析出した炭素を二酸化炭素ガスとして除去する。あるいは、酸化剤供給装置に代わり還元剤供給装置を付属し、改質反応器本体122の運転停止中に、水蒸気Sに代わり還元剤Dを供給し、析出した炭素をメタンガスとして除去してもよい。
【0059】
燃料電池発電装置150では、改質反応器本体122の触媒層(不図示)において、濃度の高い炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応が局所的に進むことによる温度低下部分が形成されない。したがって、炭素の析出が抑えられ、また、炭素の析出を抑えるために余分な水蒸気を供給する必要がない。さらに、触媒層で局所的な温度の低下が防止される、すなわち不均一な温度分布が防止されるので、触媒等に生ずる熱応力が抑えられ、触媒の損壊等を防ぐことができる。
【0060】
なおこれまでは、カソード電極136に空気Aが導入され、燃料電池セル130で発電されるものとして説明したが、燃料電池発電装置150は、カソード電極136に水蒸気Sが導入され、燃料電池セル130が電解セル130として機能し、水素に富むカソードオフガスC’を導出する、電解セル装置150として利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての改質反応装置を模式的に説明する断面図で、(a)は貫通孔を有する区画壁とメッシュとにより触媒層が画定される改質反応装置を、(b)は貫通孔を有する区画壁と貫通孔を有する区画壁とにより触媒層が画定される改質反応装置を、(c)は多孔体により形成された触媒層を備える改質反応装置とを示す。
【図2】本発明の第2の実施の形態としての改質反応装置を模式的に説明する断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態としての改質反応装置の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の変形としての改質反応装置の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の別の変形としての改質反応装置の断面図である。
【図6】析出した炭素を取り除くための酸化剤供給装置が付属した改質反応装置を説明する断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態としての燃料電池発電装置および電解セル装置の主要部を説明する断面図で、(a)は燃料電池発電装置を、(b)は電解セルを示す。
【図8】本発明の第5の実施の形態としての、改質反応装置を備える燃料電池発電装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
10、12、14、16 改質反応装置(触媒構成)
20 触媒
21 触媒層
21a、22a 第1の面
21b、22b 第2の面
22、23 触媒層
23a 所定の方向と平行な面
23b 面
24 水蒸気流路
26 原燃料流路
30、32、34 区画壁
36 メッシュ
40、42 貫通孔
50 シェル
52、53 入口側フランジ
54、55 出口側フランジ
56 内側空間(原燃料流路)
58 外側空間(水蒸気流路)
59 内側空間(加熱部)
60 水蒸気ノズル
62、66 原燃料ノズル
64、68 燃料ガスノズル
69 排気ノズル
64 燃料ガスノズル
70 シェル
71 ヘッド
72 燃料ガスノズル
74 外側空間(原燃料流路)
76 内側空間(水蒸気流路)
80 バーナー(加熱器)
82、86、88 配管
84 切替弁
90 シェル
92、94 電解質膜
96 外側空間(水蒸気流路)
97 中間空間
98 内側空間
100、102、104、106 改質反応装置
110 燃料電池発電装置
112 電解セル装置
120 脱硫器
122 改質反応器本体
124 加熱器
126 シフト反応器
128 CO燃焼器
130 燃料電池セル(電解セル)
132 アノード電極
134 電解質膜
136 カソード電極
150 燃料電池発電装置(電解セル装置)
A 空気
B アノードオフガス
C カソードオフガス
C’ カソードオフガス(水素に富むガス)
D 還元剤
F、F1、F2、F3 水素を含有するガス(燃料ガス)
O 酸化剤
R、R1、R2 炭化水素系原燃料
S 水蒸気
W 燃焼ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応により、水素を含有するガスを製造する改質反応装置であって;
第1の面と前記第1の面と表裏の関係にある第2の面とを有し、前記改質反応を加速する触媒で形成された触媒層と;
前記第1の面に沿って前記水蒸気を流す水蒸気流路と;
前記第2の面に沿って所定の方向に前記炭化水素系原燃料を流す原燃料流路とを備える;
改質反応装置。
【請求項2】
炭化水素系原燃料と水蒸気との改質反応により、水素を含有するガスを製造する改質反応装置であって;
前記改質反応を加速する触媒で形成され、前記炭化水素系原燃料が所定の方向に流れ、前記炭化水素系原燃料が流れる所定の方向と平行な面を有し、該平行な面から前記水蒸気が導入される触媒層と;
前記平行な面に沿って前記水蒸気を流す水蒸気流路とを備える;
改質反応装置。
【請求項3】
前記触媒層と前記水蒸気流路とを隔離し、前記水蒸気の流れる貫通孔が形成された区画壁を備える;
請求項1または請求項2に記載の改質反応装置。
【請求項4】
前記貫通孔が、前記炭化水素系原燃料が流れる所定の方向の上流側では下流側より開孔率が大きく形成される;
請求項3に記載の改質反応装置。
【請求項5】
前記触媒層が、孔が形成される多孔体で形成され;
前記水蒸気が、前記多孔体の孔中に導入される;
請求項1または請求項2に記載の改質反応装置。
【請求項6】
前記水蒸気流路が環状断面を有し;
前記触媒層が前記環状断面の内側に配置される;
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の改質反応装置。
【請求項7】
前記原燃料流路が環状断面を有し;
前記触媒層が前記環状断面の内側に配置される;
請求項1に記載の改質反応装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の改質反応装置と;
前記改質反応した水素を含有するガスを導入し、発電を行う燃料電池セルとを備える;
燃料電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−239377(P2008−239377A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79903(P2007−79903)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】