説明

改質器付き燃料電池

水素含有材料を改質するための触媒50を含む改質層52と、酸素を含有する空気が流動する空間層60と、改質層52と、空間層60との間に挟まれ、プロトン導電体又は酸素イオン導電体よりなる固体電解質層56と、固体電解質層56の改質セル52に対向する面に形成された第1の電極層54と、固体電解質層56の空間層60に対向する面に形成された第2の電極層58とを有し、第1の電極層54と第2の電極層56から電気エネルギを出力する。安全上の問題が少なく、簡単なシステムとして実現でき、あわせて、発熱の問題も解決することができる改質器付き燃料電池を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池、特に、水素含有材料を改質して水素を生成する改質器と一体となった改質器付き燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題が深刻化するに伴い、石油に代わって新しいエネルギー源として水素が有望視されている。水素はそのままではエネルギーとして使えないので、水素を媒介とする新しいシステムが必要であり、水素を燃料とする燃料電池が注目されている。
【0003】
燃料電池は小型でも40%以上の高い発電効率を有しており、負荷が小さいときでも定格運転時と同様な高効率の運転が可能である優れた特性を有している。燃料電池は炭酸ガスや窒化酸素ガスを発生せず、発電器のような騒音や振動も発生しない。また、燃料電池は温水や水蒸気の形で廃熱回収をすることができる利点もある。
【0004】
燃料電池は、このように高効率で環境にやさしい発電装置、エネルギ供給装置として多岐にわたる利用が期待されている。例えば、集合住宅、オフィスビル、ホテル、病院等での数百kW級の電熱供給システム、乗用車やバス等の交通機関の動力用電源、数kWの家庭用電源、数十Wの電子機器用電源等の用途が考えられ、これらの分野における実用化研究が積極的に進められている。
【0005】
燃料電池は水素を燃料とするが、燃料の水素を安全に安定的に供給することに課題がある。自動車用燃料電池の場合、小型、軽量であること、1回の充填での航続距離が長いこと、充填の手間が簡単であること等の条件があり、これら条件を考慮した様々な水素供給方法が提案されている。例えば、圧縮水素、液体水素として直接水素を供給するようにしたり、水素吸蔵合金やカーボンナノチューブ等の水素吸蔵材から水素を供給するようにしたり、メタノールや炭化水素を改質して水素を供給するようにしている。
【特許文献1】特開2002−211902号公報
【特許文献2】特開2002−246055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭化水素を改質して水素を供給する方法は、石油系燃料から水素燃料への過渡期に、これまでの環境を維持しながら長期間使用することができるために注目されている。
【0007】
しかしながら、自動車用燃料電池の場合、車上において改質処理を行うためには、燃料電池とは別個に改質器を搭載する必要があり、収納場所の問題や、重量の問題、システムとしての複雑さの問題等がある。また、改質反応は高温を伴うため様々な問題が発生するおそれがある。
【0008】
圧縮水素として水素を直接供給する方法は、自動車用燃料電池の場合、上述したような改質器を搭載する必要がないので、システムとして簡単であるという利点を有しており、軽量な高圧水素タンクが開発されて俄に注目されている。
【0009】
しかしながら、自動車に高圧水素タンクを搭載することには、衝突時等のことを考慮すると、安全上の不安要素がある。また、サービスステーションにおいて水素を供給する際にも細心の注意で安全性を確保する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、安全上の問題が少なく、簡単なシステムとして実現でき、あわせて、発熱の問題も解決することができる改質器付き燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、水素含有材料を改質するための触媒材料を含む改質セルと、酸素を含有する空気が流動する空気セルと、前記改質セルと、前記空気セルとの間に挟まれ、プロトン導電体又は酸素イオン導電体よりなる固体電解質層と、前記固体電解質層の前記改質セルに対向する面に形成された第1の電極層と、前記固体電解質層の前記空気セルに対向する面に形成された第2の電極層とを有し、前記第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力することを特徴とする改質器付き燃料電池により達成される。なお、本明細書で空気とは、酸素源となる気体をさし、空気、又は酸素と窒素等の不活性ガスとの混合物である。
【0012】
また、上記目的は、複数の第1の中空区画と複数の第2の中空区画とが互いに隣接するように形成されたプロトン導電体よりなる固体電解質基体と、前記第1の中空区画に水素含有材料を改質するための触媒、特には脱水素化反応の触媒が充填されてなり、前記水素含有材料が導入される改質セルと、前記第2の中空区画よりなり、空気が導入される空気セルと、前記改質セルの内壁に形成された第1の電極層と、前記空気セルの内壁に形成された第2の電極層とを有し、前記第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力することを特徴とする改質器付き燃料電池により達成される。
【0013】
また、上記の改質器付き燃料電池において、前記改質セル内における前記水素含有材料の流動方向と、前記空気セルにおける前記空気の流動方向とが互いに逆方向であるようにしてもよい。
【0014】
また、上記の改質器付き燃料電池において、前記固体電解質基体は、前記第1及び第2の中空区画の一端が位置する第1の端面と、前記第1及び第2の中空区画の他端が位置する第2の端面とを有し、前記固体電解質基体の前記第1の端面側に配設され、前記第1の端面側からの前記第1の中空区画への流体の導入又は排出、及び/又は前記第1の端面側からの前記第2の中空区画への流体の導入又は排出を行うための第1の分配構造体と、前記固体電解質基体の前記第2の端面側に配設され、前記第2の端面側からの前記第1の中空区画からの流体の排出又は導入、及び/又は前記第2の端面側からの前記第2の中空区画からの流体の排出又は導入を行うための第2の分配構造体とを更に有するようにしてもよい。
【0015】
また、上記目的は、複数の第1の中空区画と複数の第2の中空区画と複数の第3の中空区画とが互いに隣接するように形成されたプロトン導電体又は酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体と、前記第1の中空区画に水素含有材料を改質するための触媒、特には脱水素化反応の触媒が充填されてなり、水素含有材料が導入される改質セルと、前記第2の中空区画よりなり、空気が導入される空気セルと、前記第3の中空区画よりなり、前記改質セルにおける前記水素含有材料の改質により生じた水素が導入される水素セルと、前記水素セルの内壁に形成された第1の電極層と、前記空気セルの内壁に形成された第2の電極層とを有し、前記第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力することを特徴とする改質器付き燃料電池により達成される。
【0016】
また、上記の改質器付き燃料電池において、前記固体電解質基体は、前記第1乃至第3の中空区画の一端が位置する第1の端面と、前記第1乃至第3の中空区画の他端が位置する第2の端面とを有し、前記固体電解質基体の前記第1の端面側に配設され、前記第1の端面側からの前記第1の中空区画への流体の導入又は排出、前記第1の端面側からの前記第2の中空区画への流体の導入又は排出、及び/又は前記第1の端面側からの前記第3の中空区画への流体の導入又は排出を行うための第1の分配構造体と、前記固体電解質基体の前記第2の端面側に配設され、前記第2の端面側からの前記第1の中空区画からの流体の排出又は導入、前記第2の端面側からの前記第2の中空区画からの流体の排出又は導入、及び/又は前記第2の端面側からの前記第3の中空区画からの流体の排出又は導入を行うための第2の分配構造体とを更に有するようにしてもよい。
【0017】
また、上記の改質器付き燃料電池において、前記中空区画は、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状、又は円形状の断面を有する中空柱状区画であるようにしてもよい。
【0018】
また、上記の改質器付き燃料電池において、前記改質セル、前記空気セル又は前記水素セルの一部が、反応に寄与しない予備セルであるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明によれば、水素含有材料を改質するための触媒材料を含む改質セルと、酸素を含有する空気が流動する空気セルと、改質セルと、空気セルとの間に挟まれ、プロトン導電体又は酸素イオン導電体よりなる固体電解質層と、固体電解質層の改質セルに対向する面に形成された第1の電極層と、固体電解質層の前記空気セルに対向する面に形成された第2の電極層とを有し、第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力するので、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、燃料電池反応により発生した熱を、有機ハイドライドや炭化水素を含む物質の改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車上改質型の燃料電池車の構成を示す概略図である。
【図2】高圧水素タンク搭載型の燃料電池車の構成を示す概略図である。
【図3】改質器と燃料電池とが一体化された改質器付き燃料電池が搭載された燃料電池車の構成を示す概略図である。
【図4】本発明による改質器付き燃料電池の原理を説明する図である。
【図5】本発明の第1実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図である。
【図9】本発明の第2実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。
【図11】本発明の第3実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。
【図14】本発明の第4実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図である。
【図15】本発明の第4実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図である。
【図16】本発明の第4実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。
【図17】本発明の第5実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
10…燃料系
12…改質系
14…電力・発電系
16…駆動系
18…燃料タンク
20…回収タンク
22…燃料ポンプ
24…改質器
26…分離器
28…熱交換器
30…燃料電池
32…制御器
34…補助電源
36…車輪
38…モータ
40…燃料系
42…高圧水素タンク
44…燃料系
46…電力・発電系
48…改質器付き燃料電池
50…触媒
52…改質層
54…第1の電極層
56…固体電解質層
58…第2の電極層
60…空間層
62…固体電解質基体
64…改質セル
66…空気セル
68…第1の電極層
70…触媒
72…第2の電極層
74…第1のヘッダ
74a…第1スタック
74b…第2スタック
76…第2のヘッダ
76a…第1スタック
76b…第2スタック
78…導入口
80…排出口
82…通気路
84…通気路
86…通気路
88…通気路
90…排出口
92…導入口
94…通気路
96…通気路
98…通気路
100…通気路
102…固体電解質基体
104…改質セル
106…空気セル
108…水素セル
110…第1のヘッダ
112…第2のヘッダ
114…導入口
116…導入口
118…排出口
120…通気路
122…通気路
124…通気路
126…通気路
128…通気路
130…通気路
132…排出口
134…排出口
136…導入口
138…通気路
140…通気路
142…通気路
144…通気路
146…通気路
148…通気路
150…予備セル
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[本発明の技術的背景及び原理]
(本発明の技術的背景)
本発明による改質器付き燃料電池は、以下に述べる技術的背景に基づきなされたものである。
【0023】
従来、燃料電池を搭載した自動車の構造としては、燃料電池において消費される水素の供給方法の違いにより、代表的なタイプとして、図1及び図2に示すタイプが想定されている。
【0024】
図1は、燃料電池とともに、有機ハイドライドを改質して燃料電池に供給する水素を生成する改質器が搭載された燃料電池車の構造を示す概略図である。この場合、燃料電池車の基本的構成は、燃料系10、改質系12、電力・発電系14、及び駆動系16に分けられる。
【0025】
燃料系10には、有機ハイドライドが貯蔵される燃料タンク18と、改質系12における有機ハイドライドの脱水素化により生じた脱水素化物を回収する回収タンク20とが設けられている。また、燃料タンク18に貯蔵された有機ハイドライドを改質系12に供給するための燃料ポンプ22が設けられている。
【0026】
改質系12には、燃料系10から供給される有機ハイドライドを触媒と熱の作用により脱水素化する改質器24と、改質器24において発生した気体を水素ガスと液体の脱水素化物に分離する分離器26とが設けられている。また、改質器24において発生した有機ハイドライドの脱水素化物の熱により、燃料系10から供給される有機ハイドライドを加熱する熱交換器28が設けられている。
【0027】
電力・発電系14には、改質系12から供給される水素を消費し、電力を発生する燃料電池30と、駆動系16の制御等を行う制御器32とが設けられている。また、補助電源34が設けられている。
【0028】
駆動系16には、燃料電池30において発生した電力により車輪36のうちの駆動輪を回転させるモータ38が設けられている。
【0029】
図1に示すような改質器24を搭載した車上改質型の燃料電池車は、改質系12の存在により、システム及びその取り扱いが複雑になってしまい、また、製造コストも上昇してしまう等の難点があった。
【0030】
一方、図2は、燃料電池とともに、燃料電池に供給する水素を貯蔵する高圧水素タンクが搭載された燃料電池車の構造を示す概略図である。この場合、燃料電池車の基本的構成は、燃料系40、電力・発電系14、及び駆動系16に分けられる。
【0031】
燃料系40には、燃料電池30において消費される水素が貯蔵された高圧水素タンク42が設けられている。
【0032】
電力・発電系14及び駆動系16は、図1に示す改質器12が搭載された燃料電池車とほぼ同様の構成となっている。
【0033】
図2に示すように、高圧水素タンク42が搭載された燃料電池車の場合には、高圧水素タンクから燃料電池30に水素を直接供給する構成となっている。すなわち、図1に示す車上改質型の燃料電池車に必要であった改質系12が不要となる。このように、高圧水素タンク42が搭載された燃料電池車は、改質器24が搭載された車上改質型の燃料電池車と比較してシンプルなシステムとなるため、急速に主流になりつつある。
【0034】
しかしながら、前述の通り、自動車に高圧水素タンクを搭載することには、衝突時等のことを考慮すると、安全上の不安要素がある。また、サービスステーションにおいて水素を供給する際にも細心の注意で安全性を確保する必要がある。
【0035】
したがって、車上改質型の燃料電池車において、高圧水素タンク搭載型の燃料電池車と同程度に簡易なシステムを構築することができれば、安全性の面や、既存設備の利用可能性というインフラストラクチャの面等からも、高圧水素タンク搭載型の燃料電池車に優り、車上改質型が主流になりうる方式であるといえる。
【0036】
例えば、車上改質型の燃料電池車において、改質器と燃料電池とを一体化することができれば、燃料電池車の構成要素を大幅に簡略化することができる。
【0037】
図3は、改質器と燃料電池とが一体化された改質器付き燃料電池が搭載された燃料電池車の構成を示す概略図である。この場合、燃料電池車の基本的構成は、燃料系44、電力・発電系46、及び駆動系16に分けられる。
【0038】
燃料系44には、例えば、有機ハイドライドを収容する第1室と、有機ハイドライドを分解した後の脱水素化物を収容する第2室とを有し、前記第1室と前記第2室の体積比が変動自在となる隔壁により前記第1室と前記第2室とが分離されている燃料タンク46を設ける。このような燃料タンク46を用いることにより、有機ハイドライドとその脱水素化物とを効率よく収容することができ、燃料系に高圧水素タンクを用いる場合と同等以上に、燃料系の小型化、省スペース化を図ることができる。また、燃料系に高圧水素タンクを用いる場合と比較して高い安全性を確保することができる。なお、かかる構造を有する燃料タンクについては、本願発明者による特願2003−43154号明細書に詳述されている。
【0039】
さらに、電力・発電系46に、改質器と燃料電池とが一体化された改質器付き燃料電池48を用いることができれば、高い安全性を確保することができるのみならず、シンプルな構造を有し、安価に製造しうる燃料電池車を実現することができる。
【0040】
本発明は、かかる改質器と燃料電池とを一体化した改質器付き燃料電池を実現したものであり、燃料電池車の構成要素の簡略化、熱効率の改善等に寄与しうるものである。
【0041】
(本発明の原理)
以下、本発明による改質器付き燃料電池の原理について図4を用いて説明する。図4は本発明による改質器付き燃料電池の基本構成を示す概略図である。
【0042】
本発明による改質器付き燃料電池は、図4に示すように、脱水素化反応の触媒50を有し、導入される有機ハイドライドが触媒により脱水素化される改質層52と、第1の電極層54と、固体電解質層56と、第2の電極層58と、燃料電池反応の酸素源としての空気が導入される空間層60とがこの順で隣接して形成された基本構造を有している。
【0043】
なお、改質層52に導入する有機ハイドライドとしては、芳香族炭化水素化合物を水素化して得られるものが用いられ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等を単独又は混合した芳香族炭化水素を水素化して得られる物質、好ましくは、炭素数6〜18の飽和脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、イソプロピルメチルシクロヘキサン、アミルシクロヘキサン、4−tert−ブチルシクロヘキサン、(2,2−ジメチルプロピル)シクロヘキサン、ペンタメチルシクロヘキサン、tert−ブチルジメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルシクロヘキサン、ヘキサメチルシクロヘキサン、トリエチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルヘキサン、1−シクロヘキシルペンタンなどのシクロヘキサン類、テトラリン、メチルテトラリン、エチルテトラリン、プロピルテトラリン、イソプロピルテトラリン、ジメチルテトラリン、ジエチルテトラリン、ジプロピルテトラリン、ジイソプロピルテトラリン、メチルエチルテトラリン、メチルプロピルテトラリン、メチルイソプロピルテトラリン、エチルプロピルテトラリン、エチルイソプロピルテトラリン、プロピルイソプロピルテトラリンなどのテトラリン類、デカリン、メチルデカリン、エチルデカリン、プロピルデカリン、イソプロピルデカリン、ジメチルデカリン、ジエチルデカリン、ジプロピルデカリン、ジイソプロピルデカリン、メチルエチルデカリン、メチルプロピルデカリン、メチルイソプロピルデカリン、エチルプロピルデカリン、エチルイソプロピルデカリン、プロピルイソプロピルデカリンなどデカリン類、等の単独または混合物で用いることができる。
【0044】
改質層52に有機ハイドライドが導入されると、触媒50と熱の作用による脱水素化反応により、有機ハイドライドは、水素と、脱水素化物とに分解される。例えば、有機ハイドライドとしてシクロヘキサンを用いた場合、水素と、ベンゼンとに分解される。この有機ハイドライドの脱水素化反応は、吸熱反応である。
【0045】
固体電解質層56としてプロトン導電体よりなるものを用いた場合、有機ハイドライドが分解されて生じた水素は、第1の電極層54において電子を失い、プロトンとして固体電解質層56内を拡散する。
【0046】
ここで、固体電解質層56の材料であるプロトン導電体として、例えばβ−アルミナ系セラミックス、ペロブスカイト型プロトン導電体(SrTiO系、SrCeO系、BeCeYO系、M/LaZrO系、BaZrYO系、SrZrYbO系など)、アルミナ系(Mg/α−Al、Na/β−Alなど)、各種層状酸化物(タングステン酸化物系、ガラス/セラミック系など)を用いることができる。
【0047】
また、固体電解質層56の材料であるプロトン導電体として、超強酸を担持した固体超強酸を用いることができる。例えば、硫酸担持酸化スズ(SO/SnO)、硫酸担持ジルコニア(SO/ZrO)、硫酸担持酸化ハフニウム(SO/HfO)、硫酸担持酸化チタン(SO/TiO)、硫酸担持酸化アルミニウム(SO/Al)、硫酸担持酸化鉄(SO/Fe)、硫酸担持酸化シリコン(SO/SiO)等の硫酸系の固体超強酸や、タングステン酸担持ジルコニア(WO/ZrO)、タングステン酸担持酸化スズ(WO/SnO)、タングステン酸担持酸化チタン(WO/TiO)、タングステン酸担持酸化鉄(WO/Fe)等のタングステン酸系の固体超強酸や、酸化モリブデン担持ジルコニア(MoO/ZrO)、酸化ホウ素担持ジルコニア(B/ZrO)等の固体超強酸を用いることができる。更に、これらの固体超強酸に、Fe、Mn、Ir、Pt、Rh、Ru、Os、Pd等の金属を0〜3%担持させた材料を用いることができる。
【0048】
固体電解質層56内を拡散し、第2の電極層58に達したプロトンは、第2の電極層58において、第1の電極層54から第2の電極層58へと流れる電子と、空間層60に導入される空気中の酸素と反応し、水が生成される。この燃料電池反応では、電気エネルギーに変換されない部分が発熱したり、変換された電気エネルギーが電気抵抗により発熱したりする発熱反応を常に伴う。
【0049】
こうして、第1の電極層54と第2の電極層58との間に電子が流れ、第1の電極層54と第2の電極層58との間に起電力が生じ、第1の電極層54と第2の電極層58から電気エネルギが出力される。
【0050】
また、固体電解質層56として、プロトン導電体よりなるものに代えて、酸素イオン導電体よりなるものを用いることもできる。固体電解質層56の材料である酸素イオン導電体としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia;YSZ)、セリア系酸化物、或いはこれらの複合材料、M/LaGaO系酸化物、Sr(Ce,Yb)O系酸化物、BaCeO系酸化物、ペロブスカイト型酸化物、(Ba,La,Sr)In系酸化物、LaCeMgO系酸化物等を用いることができる。
【0051】
なお、図4に示す構造では、改質層52内が空間層60よりも高濃度であるため、改質層52へ酸素イオンが移動する酸素イオン導電体を用いるよりも空間層60へプロトンが移動するプロトン導電体を用いた方が有利となる。
【0052】
上述のように、本発明による改質器付き燃料電池は、有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる改質層52と、燃料電池反応が行われる層とが固体電解質層56を介して隣接して一体的に設けられていることに主たる特徴の一つがある。
【0053】
このように改質器の機能を燃料電池に一体化することにより、改質器と燃料電池とを別個独立に設けた場合と比較して、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができ、本発明による改質器付き燃料電池を燃料電池車に適用することにより、燃料電池車のシステム構成を簡略化することができる。
【0054】
また、本発明による改質器付き燃料電池は、吸熱反応である有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる改質層52と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる層とが隣接して設けられていることにも主たる特徴の一つがある。
【0055】
吸熱反応である有機ハイドライドの改質反応が行われる改質層52と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる層とが隣接して設けられていることにより、燃料電池反応による発熱を、有機ハイドライドの改質反応の熱源として利用することができる。また、燃料電池として必要とされる発電量と、改質に必要な熱量とは互いに増減が一致する関係にあることから、燃料電池として要求される電気の取り出し量に応じて自動的に熱収支のバランスがとれるという利点もある。こうして、本発明による改質器付き燃料電池は、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0056】
本発明においては、上記の図4に示す層構造を基本構成として、より具体的には、改質層52を構成するセルと、空間層60を構成するセルとを、固体電解質層56を構成する隔壁を介してマトリクス状に配置することにより改質器付き燃料電池を構成する。これにより、隣接するセル間において、水素の供給、電力の発生、及び熱のやりとりを行うことが可能となり、更にコンパクトかつエネルギ効率に優れたシステムを構成することができる。以下、本発明による改質器付き燃料電池について、第1乃至第5実施形態において具体的に詳述する。
【0057】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による改質器付き燃料電池について図5乃至図7を用いて説明する。図5は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図、図6は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図、図7は本実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。
【0058】
まず、本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造について図5を用いて説明する。
【0059】
図5(a)及び図5(b)に示すように、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に、有機ハイドライドが導入され、有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる改質セル64と、燃料電池反応の酸素源としての空気が導入され、燃料電池反応が行われる空気セル66とが形成されている。固体電解質基体62の材料として上述のプロトン導電体を用いることができる。プロトン導電体よりなる固体電解質基体62は、例えば450〜550℃程度の温度でプロトン導電性を示すようになる。なお、改質セル64における有機ハイドライドの改質による水素の発生が、250〜450℃程度で行われることから、本実施形態による改質器付き燃料電池の動作時においては熱バランスが確保されている。
【0060】
改質セル64及び空気セル68は、ともに、固体電解質基体62の上端面から下端面にわたって形成され、断面が四角形状、例えば正方形状の中空柱状区画よりなるものである。
【0061】
改質セル64の内壁には、第1の電極層(水素極)68が形成されている。第1の電極層68は、例えば、金属、導電性セラミックス、導電性有機物、酸化物導電体等よりなるものである。なお、第1の電極層68は、改質セル64の内壁全面に形成してもよいし、内壁の一部に形成してもよい。
【0062】
第1の電極層68が内壁に形成された改質セル64内には、脱水素化反応の触媒70が充填されている。脱水素化反応の触媒70としては、特開2001−198469号公報に記載される触媒、すなわち、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、レニウム、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、及び、銅によって構成される群から選定された少なくとも1以上の金属を、活性炭、ゼオライト、チタニア、カーボンナノチューブ、モレキュラーシーブ、ジルコニア、メソ細孔シリカ多孔質材料、アルミナ、及び、シリカによって構成される群から選定された少なくとも1以上でなる担体に担持した金属担持触媒を用いることができる。なお、触媒70は、改質セル64内を有機ハイドライド等の気体が流動することができるように、例えば粒状の触媒が、その粒子間に間隙ができるように改質セル64内に充填されている。
【0063】
こうして、気体の有機ハイドライドが導入され、有機ハイドライドを水素と脱水素化物に分解する改質反応が行われる改質セル64が構成されている。
【0064】
改質セル64に隣接して形成された空気セル66の内壁には、第2の電極層(酸素極)72が形成されている。第2の電極層72は、改質セル64の内壁に形成された第1の電極層68と同様に、例えば金属、導電性セラミックス、導電性有機物、酸化物導電体等よりなるものである。また、第2の電極層72も、第1の電極層68と同様に、空気セル66内壁全面に形成してもよいし、内壁の一部に形成してもよい。
【0065】
第2の電極層72が内壁に形成された空気セル66内は、中空となっており、空気セル66内に導入される空気、燃料電池反応により生じる水が流動することができるようになっている。
【0066】
こうして、燃料電池反応の酸素源としての空気が導入され、燃料電池反応が行われる空気セル66が構成されている。
【0067】
本実施形態による改質器付き燃料電池では、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に、上記の図5に示す改質セル64と空気セル66との単位構造が複数形成されている。すなわち、図6に示すように、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に、マトリクス状に断面が四角形状の中空柱状区画が複数形成されており、隣接する中空柱状区画のうち一方の中空柱状区画が改質セル64となっており、他方の中空柱状区画が空気セル66となっている。
【0068】
さらに、改質セル64及び空気セル66が形成された円柱状の固体電解質基体62の上方には、図7(a)に示すように、複数の改質セル64のそれぞれを下方から上方に通過した気体を排出し、また、複数の空気セル66のそれぞれに空気を導入するための第1のヘッダ74が設けられている。また、固体電解質基体62の下方には、複数の改質セル64のそれぞれに気体の有機ハイドライドを導入し、また、複数の空気セル66のそれぞれを上方から下方に通過した空気等を排出するための第2のヘッダ76が設けられている。以下、流体の導入及び排出を分配する構造体としての第1及び第2のヘッダ74、76について図7を用いて詳述する。なお、図7(b)は、第1のヘッダの第1スタックのその円盤面に沿った断面図、図7(c)は第1のヘッダの第2スタックのその円盤面に沿った断面図、図7(d)は固体電解質基体の第1及び第2のヘッダの円盤面に沿った断面図、図7(e)は、第2のヘッダの第2スタックのその円盤面に沿った断面図、図7(f)は第2のヘッダの第1スタックのその円盤面に沿った断面図である。
【0069】
第1のヘッダ74は、空気セル66に空気を導入するための導入口78を有する円盤状の第1スタック74aと、改質セル64を通過した気体を排出するための排出口80を有する円盤状の第2スタック74bとが積層されて形成されている。第1のヘッダ74は、その円盤面を固体電解質基体62に形成された柱状の改質セル64及び空気セル66に対してほぼ垂直に、第2スタック74bを固体電解質基体62側にして配設されている。
【0070】
第1のヘッダ74の第1スタック74a及び第2スタック74bには、図7(b)及び図7(c)に示すように、複数の空気セル66のそれぞれに接続する円筒形状の通気路82が複数形成されている。各通気路82は、第1スタック74a及び第2スタック74bの円盤面に対してほぼ垂直に、空気セル66に接続する第2スタック74bの下面から第1スタック74a内部まで形成されている。第1スタック74aには、格子状に複数の通気路84が形成されており、この格子状の通気路84により、各通気路82同士が接続され、さらに、各通気路82が第1スタック74aの導入口78に接続されている。格子状の通気路84は、例えば、第1スタック74aの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0071】
第1のヘッダ74の第2のスタック74bには、複数の改質セル64のそれぞれに接続する円筒形状の通気路86が複数形成されている。各通気路86は、第2スタック74bの円盤面に対してほぼ垂直に、改質セル64に接続する第2スタック74bの下面から第2スタック74b内部まで形成されている。第2スタック74bには、格子状に複数の通気路88が形成されており、この格子状の通気路88により、各通気路86同士が接続され、さらに、各通気路86が第2スタック74bの排出口80に接続されている。格子状の通気路88も、格子状の通気路84と同様に、例えば、第2スタック74bの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0072】
一方、第2のヘッダ76は、空気セル66を通過した気体等を排出するための排出口90を有する円盤状の第1スタック76aと、気体の有機ハイドライドを改質セル64に導入するための導入口92を有する円盤状の第2スタック76bとが積層されて形成されている。第2のヘッダ76は、その円盤面を固体電解質基体62に形成された柱状の改質セル64及び空気セル66に対してほぼ垂直に、第2スタック76bを固体電解質基体62側にして配設されている。
【0073】
第2のヘッダ76の第1スタック76a及び第2スタック76bには、複数の空気セル66のそれぞれに接続する円筒形状の通気路94が複数形成されている。各通気路94は、第1スタック76a及び第2スタック76bの円盤面に対してほぼ垂直に、空気セル66に接続する第2スタック76bの上面から第1スタック76a内部まで形成されている。第1スタック76aには、格子状に複数の通気路96が形成されており、この格子状の通気路96により、各通気路94同士が接続され、さらに、各通気路94と第1スタック76aの排出口90とが接続されている。格子状の通気路96も、格子状の通気路84、88と同様に、例えば、第1スタック76aの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0074】
第2のヘッダ76の第2スタック76bには、複数の改質セル64のそれぞれ接続する円筒形状の通気路98が複数形成されている。各通気路98は、第2スタック76bの円盤面に対してほぼ垂直に、改質セル64に接続する第2スタック76b上面から第2スタック76内部まで形成されている。第2スタック76bには、格子状に複数の通気路100が形成されており、この格子状の通気路100により、各通気路98同士が接続され、さらに、各通気路98と第2スタック76bの導入口92とが接続されている。格子状の通気路100も、格子状の通気路84、88、96と同様に、例えば、第2スタック76bの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0075】
こうして、本実施形態による改質器付き燃料電池が構成されている。
【0076】
本実施形態による改質器付き燃料電池は、有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる複数の改質セル64と、燃料電池反応が行われる複数の空気セル66とがプロトン導電体よりなる固体電解質気体62の隔壁を介してマトリクス状に互いに隣接して一体的に設けられていることに主たる特徴の一つがある。これにより、改質器と燃料電池とを別個独立に設けた場合と比較して、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができる。
【0077】
また、本実施形態による改質器付き燃料電池は、吸熱反応である有機ハイドライドの改質反応が行われる改質セル64と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる空気セル66とが、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62の隔壁を介してマトリクス状に互いに隣接して設けられていることにも主たる特徴の一つがある。このような構造により、空気セル66における燃料電池反応により発生した熱を、隣接する改質セル64における有機ハイドライドの改質反応に要する熱として、効率的に供給することができる。
【0078】
次に、本実施形態による改質器付き燃料電池の動作について図5乃至図7を用いて説明する。
【0079】
まず、固体電解質基体62を、プロトン導電性を示すようになるその動作温度まで加熱する。プロトン導電体よりなる固体電解質基体62の場合、例えば450〜550℃程度に加熱する。
【0080】
次いで、図7(a)に示すように、第2のヘッダ76の導入口92に気体の有機ハイドライドを供給する。導入口92に供給された有機ハイドライドは、第2スタック76bに形成された格子状の通気路100及び第2スタック76bに形成された通気路98を介して、固体電解質基体62にマトリクス状に形成された複数の改質セル64内のそれぞれに導入される。
【0081】
こうして、複数の改質セル64内のそれぞれに、それらの下端から導入された有機ハイドライドは、図5(b)に示すように、改質セル64内を上方に流れていく。
【0082】
一方、有機ハイドライドを改質セル64内に導入するのと同時に、第1ヘッダ74の導入口78に、空気を供給する。導入口78に供給された空気は、第1スタック74aに形成された格子状の通気路84、及び第1スタック74a及び第2スタック74bに形成された通気路82を介して、固体電解質基体62にマトリクス状に形成された複数の空気セル66内のそれぞれに導入される。
【0083】
こうして、複数の改質セル66内のそれぞれに、それらの上端から導入された空気は、図5(b)に示すように、空気セル66内を下方に流れていく。
【0084】
改質セル66内を上方に向かって流れる有機ハイドライドは、改質セル64内に充填されている触媒70により脱水素化され、水素と、脱水素化物とに分解されていく。例えば、有機ハイドライドとしてシクロヘキサンを用いた場合には、水素と、脱水素化物であるベンゼンとに分解される。
【0085】
ここで、本実施形態による改質器付き燃料電池は、上述のように、改質セル64内に下方から上方に有機ハイドライドを流し、空気セル66内に上方から下方に空気を流していることにも主たる特徴の一つがある。すなわち、改質セル64内の有機ハイドライドの流れる方向と、空気セル66内の空気の流れる方向とが互いに逆方向となっていることにも主たる特徴の一つがある。有機ハイドライド及び空気の流れる方向をこのようにすることにより、以下に述べるように、燃料電池反応を効率よく行うことが可能となる。
【0086】
有機ハイドライドは、改質セル64内を進行していくにつれてその脱水素化反応も進行していく。このため、改質セル64内では、水素濃度の勾配が生じており、改質セル64の有機ハイドライドが導入される端部から離間するほど水素濃度が高くなっている。
【0087】
一方、空気中の酸素は、空気セル66内を上方から下方に流れていくについて燃料電池反応により消費されていくことになる。
【0088】
したがって、改質セル64内の有機ハイドライドの流れる方向と、空気セル66内の空気の流れる方向とを互いに逆方向とすることにより、改質セル64における水素濃度のより高い領域と、空気セル66における酸素濃度のより高い領域とが互いに隣接することとなる。これにより、より効率的な燃料電池反応を実現することができる。
【0089】
改質セル64内において発生した水素は、改質セル64内壁に形成された第1の電極層68において、以下に示す反応式のように電子を失ってプロトンとなる。
【0090】
→2H+2e
こうして生じたプロトンは、図5(a)及び図6に示すように、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62の隔壁内を移動して改質セル64に隣接する空気セル66に達する。
【0091】
空気セル66では、空気セル66内壁に形成された第2の電極層72において、以下に示す反応式のように、隔壁を介して空気セル66に達したプロトンと、空気中の酸素と、第1の電極層68から第2の電極層72へと外部回路を介して移動する電子とが反応して水が生成される。
【0092】
(1/2)O+2H+2e→H
以上のようにして、改質セル64において発生した水素と、空気セル66に導入される空気中の酸素とが、第1の電極層68と第2の電極層72との間で電子のやり取りを伴う反応を行うことにより、電力が得られる。
【0093】
ここで、上記の空気セル66における燃料電池反応は発熱反応を伴い、空気セル66において熱が発生する。
【0094】
空気セル66において発生した熱は、図5(a)及び図6に示すように、固体電解質基体62の隔壁を介して、空気セル66に隣接する改質セル64に供給される。このように、本実施形態による改質器付き燃料電池では、吸熱反応である有機ハイドライドの改質反応が行われる改質セル64と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる空気セル66とが隣接して設けられているため、燃料電池反応による発熱を、有機ハイドライドの改質反応の熱源として利用することができる。また、燃料電池として必要とされる発電量と、改質に必要な熱量とは互いに増減が一致するにあることから、燃料電池として要求される電気の取り出し量に応じて自動的に熱収支のバランスがとれるという利点もある。こうして、本実施形態による改質器付き燃料電池は、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0095】
改質セルにおいて、有機ハイドライドの改質により生じた脱水素化物は、改質セル64を上方に流れていき、第1のヘッダ74の第2スタック74bに形成された通気路86及び格子状の通気路88を介して排気口80から排出される。
【0096】
排気口80から排出された脱水素化物は、回収タンク(図示せず)等に回収される。回収された脱水素化物は、水素を付加することにより、燃料の有機ハイドライドとして再利用することができる。なお、上述のように有機ハイドライドの改質により生じた脱水素化物の熱により、改質セル64に導入する有機ハイドライドを加熱する熱交換器を設けてもよい。これにより、さらにエネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0097】
また、空気セル66において、燃料電池反応により生じた水は、空気セル66内を上方から下方に流れる空気とともに、第2のヘッダ76の第2スタック76b及び第1スタック76aに形成された通気路94、及び第1スタック76aに形成された格子状の通気路96を介して排出口90から排出される。
【0098】
以上のようにして、本実施形態による改質器付き燃料電池において発電が行われる。
【0099】
このように、本実施形態によれば、吸熱反応である有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる断面が四角形状の改質セル64と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる断面が四角形状の空気セル66とがプロトン導電体よりなる固体電解質基体62の隔壁を介して互いに隣接してマトリクス状に設けられているので、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、空気セル66における燃料電池反応により発生した熱を、有機ハイドライドの改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、改質セル64及び空気セル66の断面を四角形状としたが、これらのセルの断面は四角形状に限定されるものではなく、三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状や、或いは円形状としてもよい。
【0101】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による改質器付き燃料電池について図8乃至図10を用いて説明する。図8は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図、図9は改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図、図10は本実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。なお、第1実施形態による改質器付き燃料電池と同様の構成については説明を省略し或いは簡略にする。
【0102】
まず、本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造について図8を用いて説明する。この改質器は、LPG、LNG、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素から水素を取り出す形式(いわゆる水蒸気改質)によるものである。
【0103】
図8(a)及び図8(b)に示すように、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102に、炭化水素と空気又は水が導入され、水素発生が行われる改質セル104と、燃料電池反応の酸素源としての空気が導入される空気セル106と、改質セル106において発生した水素が導入される水素セル108とが形成されている。固体電解質基体102の材料としては、上述の酸素イオン導電体を用いることができる。なお、酸素イオン導電体として、いわゆる溶融塩型を用いることもできるが、この場合、電解質が固体でないため、固体の多孔質物質からなるセパレータなどと組み合わせることで、固体電解質基体として用いることとなる。
【0104】
改質セル104、空気セル106、及び水素セル108は、いずれも、固体電解質基体102の上端面から下端面にわたって形成され、断面が三角形状、例えば正三角形状の中空柱状区画よりなるものである。改質セル104、空気セル106、及び水素セル108は、この順に、断面の三角形の辺を対向させながら固体電解質基体102の隔壁を介して配列されている。
【0105】
改質セル104には、第1実施形態による改質器付き燃料電池の場合と同様に、改質用触媒70が充填されている。なお、改質セル104の内壁には、第1実施形態による改質器付き燃料電池の場合と異なり、電極層は形成されていない。
【0106】
水素セル108の内壁には、第1の電極層68が形成されている。第1の電極層68が内壁に形成された水素セル内は、中空となっており、水素セル内に導入される水素、及び燃料電池反応により生じる水が流動することができるようになっている。
【0107】
空気セル106の内壁には、第2の電極層72が形成されている。第2の電極層72が内壁に形成された空気セル106内は、中空となっており、空気セル106内に導入される空気が流動することができるようになっている。
【0108】
本実施形態による改質器付き燃料電池では、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102に、上記の図8に示す改質セル104と、空気セル106と、水素セル108との単位構造が複数形成されている。すなわち、図9に示すように、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102に、マトリクス状に断面が三角形状の中空柱状区画が複数形成されており、連続する3つの中空柱状区画が、それぞれ改質セル104、空気セル106、及び水素セル108となっている。
【0109】
さらに、改質セル104、空気セル106、及び水素セル108が形成された円柱状の固体電解質基体102の上方には、図10(a)に示すように、複数の改質セル104のそれぞれを下方から上方に通過した気体を排出し、また、複数の空気セル106のそれぞれに空気を導入し、さらに、改質セル104内において発生した水素を複数の水素セル108のそれぞれに導入するための第1のヘッダ110が設けられている。また、固体電解質基体102の下方には、複数の改質セル104のそれぞれに気体の炭化水素と空気又は水を導入し、また、複数の空気セル106のそれぞれを上方から下方に通過した空気を排出し、さらに、複数の水素セル108のそれぞれを上方から下方に通過した水素等を排出するための第2のヘッダ112が設けられている。以下、流体の導入及び排出を分配する構造体としての第1及び第2のヘッダ110、112について図10を用いて詳述する。なお、図10(b)は、第1のヘッダの第1スタックのその円盤面に沿った断面図、図10(c)は第1のヘッダの第2スタックのその円盤面に沿った断面図、図10(d)は第1のヘッダの第3スタックのその円盤面に沿った断面図、図10(e)は固体電解質基体の第1及び第2のヘッダの円盤面に沿った断面図、図10(f)は、第2のヘッダの第3スタックのその円盤面に沿った断面図、図10(g)は第2のヘッダの第2スタックのその円盤面に沿った断面図、図10(h)は第2のヘッダの第1スタックのその円盤面に沿った断面図である。
【0110】
第1のヘッダ110は、空気セル106に空気を導入するための導入口114を有する円盤状の第1スタック110aと、改質セル104において発生した水素を水素セル108に導入するための導入口116を有する第2スタック110bと、改質セル104を通過した気体を排出するための排出口118を有する円盤状の第3スタック110cとが順次積層されて形成されている。第1のヘッダ110は、その円盤面を固体電解質基体102に形成された改質セル104、空気セル106、及び水素セル108に対してほぼ垂直に、第3スタック110cを固体電解質基体102側にして配設されている。
【0111】
第1のヘッダの第1乃至第3スタック110a〜110cには、図10(b)乃至図10(d)に示すように、複数の空気セル106のそれぞれに接続する円筒形状の通気路120が複数形成されている。各通気路120は、第1乃至第3スタック110a〜110cの円盤面に対してほぼ垂直に、空気セル106に接続する第3スタック110cの下面から第1スタック110a内部まで形成されている。第1スタック110aには、格子状に複数の通気路122が形成されており、この格子状の通気路122により、各通気路120同士が接続され、さらに、各通気路120が第1スタック110aの導入口114に接続されている。格子状の通気路122は、例えば、第1スタック110aの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0112】
第1のヘッダ110の第2及び第3スタック110b、110cには、複数の水素セル108のそれぞれに接続する円筒形状の通気路124が形成されている。各通気路124は、第2及び第3スタック110b、110cの円盤面に対してほぼ垂直に、水素セル108に接続する第3スタック110cの下面から第2スタック110b内部まで形成されている。第2スタック110bには、格子状に複数の通気路126が形成されており、この格子状の通気路126により、各通気路124同士が接続され、さらに、各通気路124が第2スタックの導入口116に接続されている。格子状の通気路126も、格子状の通気路122と同様に、例えば、第2スタック110bの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0113】
第1のヘッダ110の第3スタック110cには、複数の改質セル104のそれぞれに接続する円筒形状の通気路128が形成されている。各通気路は、第3スタック110cの円盤面に対してほぼ垂直に、改質セル104に接続する第3スタック110cの下面から第3スタック110c内部まで形成されている。第3スタック110cには、格子状に複数の通気路130が形成されており、この格子状の通気路130により、各通気路130同士が接続され、さらに、各通気路130が第3スタック110cの排出口118に接続されている。格子状の通気路130も、格子状の通気路122、126と同様に、例えば、第3スタック110cの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0114】
一方、第2のヘッダ112は、空気セル106を通過した気体を排出するための排出口132を有する円盤状の第1スタック112aと、水素セル108を通過した水素等を排出するための排出口134を有する円盤状の第2スタック112bと、気体の炭化水素と空気又は水を改質セル106に導入するための導入口136を有する円盤状の第3スタック112cとが順次積層されて形成されている。第2のヘッダ112は、その円盤面を固体電解質基体102に形成された柱状の改質セル104、空気セル106、及び水素セル108に対してほぼ垂直に、第3スタック112cを固体電解質基体102側にして配設されている。
【0115】
第2のヘッダ112の第1乃至第3スタック112a〜112cには、複数の空気セルのそれぞれに接続する円筒形状の通気路138が複数形成されている。各通気路138は、第1スタック乃至第3スタック112a〜112cの円盤面に対してほぼ垂直に、空気セル106に接続する第3スタック112cの上面から第1スタック112a内部まで形成されている。第1スタック112aには、格子状に複数の通気路140が形成されており、この格子状の通気路140により、各通気路140同士が接続され、さらに、各通気路140と第1スタック112aの排出口132とが接続されている。格子状の通気路140も、格子状の通気路122、126、130と同様に、例えば、第1スタック112aの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0116】
第2のヘッダ112の第2及び第3スタック112b、112cには、複数の水素セル108のそれぞれに接続する円筒形状の通気路142が複数形成されている。各通気路142は、第2及び第3スタック112b、112cの円盤面に対してほぼ垂直に、水素セル108に接続する第3スタック112c上面から第2スタック112b内部まで形成されている。第2スタック112bには、格子状に複数の通気路144が形成されており、この格子状の通気路144により、各通気路142同士が接続され、さらに、各通気路142と第2スタック112bの排出口134とが接続されている。格子状の通気路142も、格子状の通気路122、126、130、140と同様に、例えば、第2スタック112bの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0117】
第2のヘッダ112の第3スタック112cには、複数の改質セル104のそれぞれに接続する円筒形状の通気路146が形成されている。各通気路146は、第3スタック112cの円盤面に対してほぼ垂直に、改質セル104に接続する第3スタック112c上面から第3スタック112c内部まで形成されている。第3スタック112cには、格子状に複数の通気路148が形成されており、この格子状の通気路148により、各通気路146同士が接続され、さらに、各通気路146と第3スタック112cの導入口136とが接続されている。格子状の通気路148も、格子状の通気路122、126、130、140、144と同様に、例えば、第3スタック112cの円盤面に形成された溝にシール材等により蓋がされてなるものである。
【0118】
こうして、本実施形態による改質器付き燃料電池が構成されている。
【0119】
本実施形態による改質器付き燃料電池においても、吸熱反応である炭化水素の改質反応が行われる改質セル104と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる水素セル108とが酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102の隔壁を介して互いに隣接してマトリクス状に設けられているので、第1実施形態による改質器付き燃料電池と同様に、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、水素セル108における燃料電池反応により発生した熱を、炭化水素の改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0120】
次に、本実施形態による改質器付き燃料電池の動作について図8乃至図10を用いて説明する。
【0121】
まず、固体電解質基体102を、イオン導電性を示すようになるその動作温度まで加熱する。酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102の場合、例えば800〜1000℃程度に加熱する。
【0122】
次いで、図10(a)に示すように、第2のヘッダ112の第3スタック112cの導入口136に炭化水素と空気又は水を供給する。第3スタック112cの導入口136に供給された炭化水素等は、第3スタック112cに形成された格子状の通気路148及び第3スタック112cに形成された通気路146を介して、固体電解質基体102にマトリクス状に形成された複数の改質セル104内のそれぞれに導入される。
【0123】
こうして、複数の改質セル104内のそれぞれに、それらの下端から導入された炭化水素等は、図8(b)に示すように、改質セル104内を上方に流れていく。
【0124】
一方、炭化水素等を改質セル104内に導入するのと同時に、第1ヘッダ110の第1スタック110aの導入口114に、空気を供給する。第1スタック110aの導入口114に供給された空気は、第1スタック110aに形成された格子状の通気路122及び第1乃至第3スタック110a〜110cに形成された通気路120を介して、固体電解質基体102にマトリクス状に形成された複数の空気セル106内のそれぞれに導入される。
【0125】
こうして、複数の空気セル106内のそれぞれに、それらの上端から導入された空気は、図8(b)に示すように、空気セル106内を下方に流れていく。
【0126】
改質セル104内を上方に向かって流れる炭化水素等は、改質セル104内に充填されている触媒70により改質され、水素と、二酸化炭素とに分解されていく。
【0127】
改質セル104内において発生した水素は、炭化水素の改質により生じた二酸化炭素とともに、改質セル104を上方に流れていき、第の1ヘッダ110の第3スタック110cに形成された通気路128及び格子状の通気路130を介して排気口118から排出される。
【0128】
排気口118から排出された水素及び二酸化炭素は、水素と二酸化炭素とを分離する分離器(図示せず)に供給される。分離器により水素と分離された二酸化炭素は、大気中に放出するか、回収タンク(図示せず)等に回収される。一方、分離された水素は、第1ヘッダ110の第2スタック110bの導入口116に供給される。導入口116に供給された水素は、第2スタック110bに格子状に形成された通気路126及び第2及び第3スタック110b、110cに形成された通気路124を介して、固体電解質基体102にマトリクス状に形成された複数の水素セル108内のそれぞれに導入される。
【0129】
こうして、図8(b)に示すように、複数の空気セル106のそれぞれに上方から下方に空気が流れ、複数の水素セル108のそれぞれに上方から下方に水素が流れることとなる。
【0130】
空気セル106内を流れる空気中の酸素は、空気セル106内壁に形成された第2の電極層72において、以下に示す反応式のように、第1の電極層68から第2の電極層72へと外部回路を介して移動する電子を受け取り、酸素イオンとなる。
【0131】
(1/2)O+2e→O2−
こうして生じた酸素イオンは、図8(a)及び図9に示すように、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102の隔壁内を移動して空気セル106に隣接する水素セル108に達する。
【0132】
水素セル108では、水素セル108内壁に形成された第1の電極層68において、以下に示す反応式のように、隔壁を介して水素セル108に達した酸素イオンと、水素セル108内を流れる水素とが反応して電子を失い、水が生成される。
【0133】
2−+H→HO+2e
以上のようにして、空気セル106に導入される空気中の酸素と、改質セル104において発生し、水素セル108に導入される水素とが、空気セル106内壁の第2の電極層72と水素セル108内壁の第1の電極層68との間で電子のやり取りを伴う反応を行うことにより、電力が得られる。
【0134】
なお、改質セル104において発生した水素を、二酸化炭素と分離して水素セル108に導入して上記の燃料電池反応を行っている、言い換えると、酸素イオンを直接改質セル104に移動させて改質セル104において上記の燃料電池反応を行っていないのは次のような理由による。すなわち、改質セル104において上記の燃料電池反応を行ったのでは、この反応のほかに、改質セル104内に存在する炭化水素等と酸素イオンとが反応する、すなわち炭化水素の燃焼反応が起きてしまうため、これを回避するためである。このような燃焼反応は、反応効率の低下のみならず動作不良を招く原因となるものであるが、本実施形態による改質器付き燃料電池では、改質セル104において発生した水素を、二酸化炭素と分離して導入する水素セル104を設けることにより、これらの不都合を回避している。
【0135】
ここで、上記の水素セル108における燃料電池反応による発熱は、改質セル104の熱として用いることでバランスがとれている。
【0136】
水素セル108において発生した熱は、固体電解質基体102の隔壁を介して、改質セル104に供給される。このように、本実施形態による改質器付き燃料電池でも、吸熱反応である炭化水素の改質反応が行われる改質セル106と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる水素セル108とが同じ固体電解質基体102に設けられているため、第1実施形態による改質器付き燃料電池と同様に、燃料電池反応による発熱を、炭化水素の改質反応の熱源として利用することができる。こうして、本実施形態による改質器付き燃料電池は、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0137】
水素セル108において、燃料電池反応により生じた水は、水素セル108内を上方から下方に流れる水素とともに、第2のヘッダ112の第2及び第3スタック112b、112cに形成された通気路142及び第2スタック112bに形成された格子状の通気路144を介して排出口134から排出される。
【0138】
以上のようにして、本実施形態による改質器付き燃料電池において発電が行われる。
【0139】
このように、本実施形態によれば、吸熱反応である炭化水素の改質反応が行われる断面が三角形状の改質セル104と、燃料電池反応による発熱が生じる断面が三角形状の水素セル108とが酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102の隔壁を介して互いに隣接してマトリクス状に形成されているので、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、水素セル108における燃料電池反応により発生した熱を、炭化水素の改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0140】
なお、本実施形態では、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102に改質セル104、空気セル106、及び水素セル108を形成し、固体電解質基体102内を酸素イオンが移動することにより燃料電池反応が行われる場合について説明したが、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に改質セル104、空気セル106、及び水素セル108を形成し、固体電解質基体62をプロトンが移動することにより燃料電池反応が行われるようにしてもよい。
【0141】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による改質器付き燃料電池について図11乃至図13を用いて説明する。図11は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図、図12は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図、図13は本実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。なお、第1及び第2実施形態による改質器付き燃料電池と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0142】
本実施形態による改質器付き燃料電池は、第2実施形態による改質器付き燃料電池において、改質セル104、空気セル106、及び水素セル108の断面形状を三角形状に代えて六角形状とし、また、これらのセルを形成する固体電解質基体をプロトン導電体よりなるものとしたものである。
【0143】
まず、本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造について図11を用いて説明する。
【0144】
図11(a)及び図11(b)に示すように、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に、有機ハイドライドが導入され、有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる改質セル104と、燃料電池反応の酸素源としての空気が導入される空気セル106と、改質セル106において発生した水素が導入される水素セル108とが形成されている。
【0145】
改質セル104、空気セル106、及び水素セル108は、いずれも、固体電解質基体62の上端面から下端面にわたって形成され、断面が六角形状、例えば正六角形状の中空柱状区画よりなるものである。改質セル104、空気セル106、及び水素セル108は、これらのうちの1つのセルの断面形状の六角形の隣接する2辺が、それぞれ他の2つのセルの断面形状の六角形の1辺に対向するように配列されている。
【0146】
改質セル104には、第2実施形態による改質器付き燃料電池の場合と同様に、脱水素化反応の触媒70が充填されている。
【0147】
水素セル108の内壁には、第1の電極層68が形成されている。第1の電極層68が内壁に形成された水素セル内は、中空となっており、水素セル内に導入される水素、燃料電池反応により生じる水が流動することができるようになっている。
【0148】
空気セル106の内壁には、第2の電極層72が形成されている。第2の電極層72が内壁に形成された空気セル106内は、中空となっており、空気セル106内に導入される空気が流動することができるようになっている。
【0149】
本実施形態による改質器付き燃料電池では、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に、上記の図11に示す改質セル104と、空気セル106と、水素セル108との単位構造が複数形成されている。すなわち、図12に示すように、プロトン導電体よりなる固体電解質基体102に、ハニカム状に断面が六角形状の中空柱状区画が複数形成されており、互いに隣接する3つの中空柱状区画が、それぞれ改質セル104、空気セル106、及び水素セル108となっている。
【0150】
さらに、改質セル104、空気セル106、及び水素セル108が形成された円柱状の固体電解質基体102の上方には、図13に示すように、第2実施形態による改質器付き燃料電池とほぼ同様に、複数の改質セル104のそれぞれを下方から上方に通過した気体を排出し、また、複数の空気セル106のそれぞれに空気を導入し、さらに、改質セル104内において発生した水素を水素セル108のそれぞれに導入するための第1のヘッダ110が設けられている。また、固体電解質基体102の下方には、改質セル104のそれぞれに気体の有機ハイドライドを導入し、また、空気セル106内を上方から下方に通過した空気等を排出し、さらに、水素セル108を上方から下方に通過した水素を排出するための第2のヘッダ112が設けられている。
【0151】
本実施形態による改質器付き燃料電池においても、吸熱反応である有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる改質セル104と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる空気セル106とがプロトン導電体よりなる固体電解質基体62の隔壁を介して互いに隣接してマトリクス状に設けられているので、第1実施形態による改質器付き燃料電池と同様に、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、空気セル106における燃料電池反応により発生した熱を、有機ハイドライドの改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0152】
次に、本実施形態による改質器付き燃料電池の動作について図11乃至図13を用いて説明する。
【0153】
まず、固体電解質基体62を、プロトン導電性を示すようになるその動作温度まで加熱する。
【0154】
次いで、図13(a)に示すように、第2のヘッダ112の第3スタック112cの導入口136に有機ハイドライドを供給する。第3スタック112cの導入口136に供給された有機ハイドライドは、第3スタック112cに形成された格子状の通気路148及び第3スタック112cに形成された通気路146を介して、固体電解質基体102にハニカム状に形成された複数の改質セル104内のそれぞれに導入される。
【0155】
こうして、複数の改質セル104内のそれぞれに、それらの下端から導入された有機ハイドライドは、図11(b)に示すように、改質セル104内を上方に流れていく。
【0156】
一方、有機ハイドライドを改質セル104内に導入するのと同時に、第1ヘッダ110の第1スタック110aの導入口114に、空気を供給する。第1スタック110aの導入口114に供給された空気は、第1スタック110aに形成された格子状の通気路122及び第1乃至第3スタック110a〜110cに形成された通気路120を介して、固体電解質基体102にマトリクス状に形成された複数の空気セル106内のそれぞれに導入される。
【0157】
こうして、複数の改質セル内のそれぞれに、それらの上端から導入された空気は、図11(b)に示すように、空気セル106内を下方に流れていく。
【0158】
改質セル104内を上方に向かって流れる有機ハイドライドは、改質セル104内に充填されている触媒70により脱水素化され、水素と、脱水素化物とに分解されていく。
【0159】
改質セル104内において発生した水素は、有機ハイドライドの改質により生じた脱水素化物とともに、改質セル104を上方に流れていき、第の1ヘッダ110の第3スタック110cに形成された通気路128及び格子状の通気路130を介して排気口118から排出される。
【0160】
排気口118から脱水素化物とともに排出された水素は、第2実施形態による改質器付き燃料電池と同様に、脱水素化物と分離されてから、第1ヘッダ110の第2スタック110bの導入口116に供給される。導入口116に供給された水素は、第2スタック110bに格子状に形成された通気路126及び第2及び第3スタック110b、110cに形成された通気路124を介して、固体電解質基体102にハニカム状に形成された複数の水素セル108内のそれぞれに導入される。
【0161】
こうして、図11(b)に示すように、複数の空気セル106のそれぞれに上方から下方に空気が流れ、複数の水素セル108のそれぞれに上方から下方に水素が流れることとなる。
【0162】
水素セル108内を流れる水素は、水素セル108内壁に形成された第1の電極層68において、以下に示す反応式のように電子を失ってプロトンとなる。
【0163】
→2H+2e
こうして生じたプロトンは、図11(a)及び図12に示すように、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62の隔壁内を移動して水素セル108に隣接する空気セル106に達する。
【0164】
空気セル106では、空気セル106内壁に形成された第2の電極層72において、以下に示す反応式のように、隔壁を介して空気セル106に達したプロトンと、空気中の酸素と、第1の電極層68から第2の電極層72へと外部回路を介して移動する電子とが反応して水が生成される。
【0165】
(1/2)O+2H+2e)H
以上のようにして、改質セル104において発生した水素と、空気セル106に導入される空気中の酸素とが、第1の電極層68と第2の電極層72との間で電子のやり取りを伴う反応を行うことにより、電力が得られる。
【0166】
ここで、上記の空気セル106における燃料電池反応は発熱反応を伴い、空気セル106において熱が発生する。
【0167】
空気セル106において発生した熱は、固体電解質基体62の隔壁を介して、改質セル104に供給される。このように、本実施形態による改質器付き燃料電池でも、吸熱反応である有機ハイドライドの改質反応が行われる改質セル106と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる水素セル108とが同じ固体電解質基体102に設けられているため、第1及び第2実施形態による改質器付き燃料電池と同様に、燃料電池反応による発熱を、有機ハイドライドの改質反応の熱源として利用することができる。こうして、本実施形態による改質器付き燃料電池は、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0168】
空気セル106において、燃料電池反応により生じた水は、空気セル106内を上方から下方に流れる空気とともに、第2のヘッダ112の第2及び第3スタック112b、112cに形成された通気路142及び第2スタック112bに形成された格子状の通気路144を介して排出口134から排出される。
【0169】
以上のようにして、本実施形態による改質器付き燃料電池において発電が行われる。
【0170】
このように、本実施形態によれば、吸熱反応である有機ハイドライドの脱水素化反応が行われる断面が六角形状の改質セル104と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる断面が六角形状の空気セル106とがプロトン導電体よりなる固体電解質基体62の隔壁を介して互いに隣接してハニカム状に設けられているので、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、空気セル106における燃料電池反応により発生した熱を、有機ハイドライドの改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0171】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による改質器付き燃料電池について図14乃至図16を用いて説明する。図14は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの単位構造、並びに物質及び熱の移動を示す概略図、図15は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図、図16は本実施形態による改質器付き燃料電池の構造を示す概略図である。なお、第1乃至第3実施形態による改質器付き燃料電池と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0172】
本実施形態による改質器付き燃料電池の基本的構造は、図14乃至図16に示すように、第3実施形態による改質器付き燃料電池とほぼ同様である。本実施形態による改質器付き燃料電池は、プロトン導電体よりなる固体電解質基体62に代えて、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102に改質セル104、空気セル106、及び水素セル108が形成されている点で、第3実施形態による改質器付き燃料電池と異なっている。
【0173】
以下、本実施形態による改質器付き燃料電池の動作について図14乃至図16を用いて説明する。
【0174】
まず、第3実施形態による改質器付き燃料電池の場合と有機ハイドライドに代えて炭化水素と空気又は水を改質する以外は同様にして、固体電解質基体102を、イオン導電性を示すようになるその動作温度まで加熱した後、図14(a)に示すように改質セル104に炭化水素等を流すことにより水素を発生させて水素セル108に水素を流すとともに、空気セル106に空気を流す。
【0175】
空気セル106内を流れる空気中の酸素は、空気セル106内壁に形成された第2の電極層72において、以下に示す反応式のように、第1の電極層68から第2の電極層72へと外部回路を介して移動する電子を受け取り、酸素イオンとなる。
【0176】
(1/2)O+2e→O2−
こうして生じた酸素イオンは、図14(a)及び図15に示すように、酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102の隔壁内を移動して空気セル106に隣接する水素セル108に達する。
【0177】
水素セル108では、水素セル108内壁に形成された第1の電極層68において、以下に示す反応式のように、隔壁を介して水素セル108に達した酸素イオンと、水素セル108内を流れる水素とが反応して電子を失い、水が生成される。
【0178】
2−+H→HO+2e
以上のようにして、空気セル106に導入される空気中の酸素と、改質セル104において発生し、水素セル108に導入される水素とが、空気セル106内壁の第2の電極層72と水素セル108内壁の第1の電極層68との間で電子のやり取りを伴う反応を行うことにより、電力が得られる。
【0179】
ここで、上記の水素セル108における燃料電池反応により、水素セル108において熱が発生する。
【0180】
水素セル108において発生した熱は、固体電解質基体102の隔壁を介して、改質セル104に供給される。このように、本実施形態による改質器付き燃料電池でも、吸熱反応である炭化水素の改質反応が行われる改質セル106と、発熱反応を伴う燃料電池反応が行われる水素セル108とが同じ固体電解質基体102に設けられているため、第1乃至第3実施形態による改質器付き燃料電池と同様に、燃料電池反応による発熱を、炭化水素の改質反応の熱源として利用することができる。こうして、本実施形態による改質器付き燃料電池は、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0181】
水素セル108において、燃料電池反応により生じた水は、水素セル108内を上方から下方に流れる水素とともに、第2のヘッダ112の第2及び第3スタック112b、112cに形成された通気路142及び第2スタック112bに形成された格子状の通気路144を介して排出口134から排出される。
【0182】
以上のようにして、本実施形態による改質器付き燃料電池において発電が行われる。
【0183】
このように、本実施形態によれば、吸熱反応である炭化水素の改質反応が行われる断面が六角形状の改質セル104と、燃料電池反応により発熱する断面が六角形状の水素セル108とが酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体102の隔壁を介して互いに隣接してハニカム状に設けられているので、装置構成を大幅に簡略化及び小型化することができるとともに、水素セル108における燃料電池反応により発生した熱を、炭化水素の改質反応の熱源として利用することができる。これにより、エネルギ効率に優れたシステムを構築することができる。
【0184】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による改質器付き燃料電池について図17を用いて説明する。図17は本実施形態による改質器付き燃料電池におけるセルの配列構造、並びに物質及び熱の移動を示す平面図である。なお、第3実施形態による改質器付き燃料電池と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0185】
本実施形態による改質器付き燃料電池の基本的構造は、第3実施形態による改質器付き燃料電池とほぼ同様である。本実施形態による改質器付き燃料電池は、第3実施形態による改質器付き燃料電池において、改質セル104、空気セル106、及び/又は水素セル108の一部に代えて、有機ハイドライド、水素、及び空気のいずれも導入されず、改質反応及び燃料電池反応のいずれにも寄与しない予備セルが形成されている点に主たる特徴がある。図17では、改質セル104に代えて、予備セル150が形成されている場合を示している。
【0186】
このように、改質セル104、空気セル106、及び/又は水素セル108の一部に代えて予備セル150を形成することにより、改質セル104、空気セル106、水素セル108の数の大小を適宜調整することにより、燃料電池における熱バランス等を調整することができる。
【0187】
なお、本実施形態では、第3実施形態による改質器付き燃料電池において予備セル150を形成する場合について説明したが、その他の実施形態による改質器付き燃料電池においても予備セルを形成してもよい。
【0188】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0189】
例えば、上記実施形態では、改質セル64、104、空気セル66、106、及び水素セル108の断面が、四角形状、三角形状、又は六角形状の場合について説明したが、これらのセルの断面形状は、四角形状、三角形状、又は六角形状のものに限定されるものではない。例えば、五角形、八角形、或いは円形の断面形状であってもよい。
また、改質セル64、104、空気セル66、106、及び水素セル108の断面積に大小を設けてもよい。このように、セルの断面形状及び断面積を適宜設定することにより、有機ハイドライドの改質の効率等の諸条件に応じて、発電効率等の燃料電池の性能を設定することができる。
【0190】
また、上記実施形態では、同一の固体電解質基体62、102に形成する改質セル64、104、空気セル66、106、及び水素セル108の断面形状を同一形状とする場合について説明したが、同一の固体電解質基体62、102に形成するセルの断面形状を異なるものとしてもよい。
【0191】
また、上記実施形態では、固体電解質基体62、102に形成された中空柱状区画を改質セル64、104、空気セル66、106、及び水素セル108として用いる場合について説明したが、これらのセルは、柱状のものに限定されるものではなく、気体等の導入及び排出が可能な中空の区画であればよい。
【0192】
また、上記実施形態では、有機ハイドライドを改質セル64、104に導入して改質反応を行うことにより水素を発生させる場合について説明したが、その他の気体の水素含有材料を改質セル64、104に導入して改質反応を行うことにより水素を発生させてもよい。
【0193】
また、上記実施形態では、気体の有機ハイドライドを改質セル64、104に導入する場合について説明したが、気体に限らず液体の有機ハイドライド等の水素含有材料を改質セル64、104に導入してもよい。
【0194】
また、上記実施形態では、円柱状の固体電解質基体62、102に各セルを形成する場合について説明したが、固体電解質基体62、102は、円柱状のものに限定されるものではない。また、第1のヘッダ74、110、第2のヘッダ76、112の形状も、上記実施形態において説明した円盤状に限定されるものではなく、固体電解質基体62、102の形状等に応じて、適宜設計変更することができる。
【0195】
また、上記実施形態では、第1のヘッダ74、110、及び第2のヘッダ76、112を用いて固体電解質基体62、102に形成された各セルに、有機ハイドライド、空気、水素を導入したが、各セル内に有機ハイドライド等を流す方向は、上記実施形態に示すものに限定されるものではない。例えば、第1実施形態においては、有機ハイドライドと空気の流動方向を互いに逆方向としたが、両者の流動方向を同方向としてもよい。また、第2乃至第3実施形態においては、空気と水素の流動方向を同方向としたが、両者の流動方向を互いに逆方向としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明による改質器付き燃料電池は、安全性の問題が少なく、発熱の問題も解決することができる簡単な燃料電池システムを実現するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有材料を改質するための触媒を含む改質セルと、
酸素を含有する空気が流動する空気セルと、
前記改質セルと、前記空気セルとの間に挟まれ、プロトン導電体又は酸素イオン導電体よりなる固体電解質層と、
前記固体電解質層の前記改質セルに対向する面に形成された第1の電極層と、
前記固体電解質層の前記空気セルに対向する面に形成された第2の電極層とを有し、
前記第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力する
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項2】
複数の第1の中空区画と複数の第2の中空区画とが互いに隣接するように形成されたプロトン導電体よりなる固体電解質基体と、
前記第1の中空区画に水素含有材料を改質するための触媒が充填されてなり、前記水素含有材料が導入される改質セルと、
前記第2の中空区画よりなり、空気が導入される空気セルと、
前記改質セルの内壁に形成された第1の電極層と、
前記空気セルの内壁に形成された第2の電極層とを有し、
前記第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力する
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項3】
請求の範囲第2項記載の改質器付き燃料電池において、
前記改質セル内における前記水素含有材料の流動方向と、前記空気セルにおける前記空気の流動方向とが互いに逆方向である
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項4】
請求の範囲第2項又は第3項記載の改質器付き燃料電池において、
前記固体電解質基体は、前記第1及び第2の中空区画の一端が位置する第1の端面と、前記第1及び第2の中空区画の他端が位置する第2の端面とを有し、
前記固体電解質基体の前記第1の端面側に配設され、前記第1の端面側からの前記第1の中空区画への流体の導入又は排出、及び/又は前記第1の端面側からの前記第2の中空区画への流体の導入又は排出を行うための第1の分配構造体と、
前記固体電解質基体の前記第2の端面側に配設され、前記第2の端面側からの前記第1の中空区画からの流体の排出又は導入、及び/又は前記第2の端面側からの前記第2の中空区画からの流体の排出又は導入を行うための第2の分配構造体とを更に有する
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項5】
複数の第1の中空区画と複数の第2の中空区画と複数の第3の中空区画とが互いに隣接するように形成されたプロトン導電体又は酸素イオン導電体よりなる固体電解質基体と、
前記第1の中空区画に水素含有材料を改質するための触媒が充填されてなり、前記水素含有材料が導入される改質セルと、
前記第2の中空区画よりなり、空気が導入される空気セルと、
前記第3の中空区画よりなり、前記改質セルにおける前記水素含有材料の改質により生じた水素が導入される水素セルと、
前記水素セルの内壁に形成された第1の電極層と、
前記空気セルの内壁に形成された第2の電極層とを有し、
前記第1の電極層と前記第2の電極層から電気エネルギを出力する
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項6】
請求の範囲第5項記載の改質器付き燃料電池において、
前記固体電解質基体は、前記第1乃至第3の中空区画の一端が位置する第1の端面と、前記第1乃至第3の中空区画の他端が位置する第2の端面とを有し、
前記固体電解質基体の前記第1の端面側に配設され、前記第1の端面側からの前記第1の中空区画への流体の導入又は排出、前記第1の端面側からの前記第2の中空区画への流体の導入又は排出、及び/又は前記第1の端面側からの前記第3の中空区画への流体の導入又は排出を行うための第1の分配構造体と、
前記固体電解質基体の前記第2の端面側に配設され、前記第2の端面側からの前記第1の中空区画からの流体の排出又は導入、前記第2の端面側からの前記第2の中空区画からの流体の排出又は導入、及び/又は前記第2の端面側からの前記第3の中空区画からの流体の排出又は導入を行うための第2の分配構造体とを更に有する
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項7】
請求の範囲第2項乃至第6項のいずれか1項に記載の改質器付き燃料電池において、
前記中空区画は、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状、又は円形状の断面を有する中空柱状区画である
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。
【請求項8】
請求の範囲第2項乃至第7項のいずれか1項に記載の改質器付き燃料電池において、
前記改質セル、前記空気セル又は前記水素セルの一部が、反応に寄与しない予備セルである
ことを特徴とする改質器付き燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【国際公開番号】WO2005/001980
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511075(P2005−511075)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009136
【国際出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】