説明

放冷熱パネル及びその製造方法

【課題】表面放冷熱効率が高く、省エネルギー化に有効な放冷熱パネルであって、安価に簡便かつ迅速に製造することができる放冷熱パネルを提供する。
【解決手段】基材11と、基材11の表面に設けられた溝12と、溝12内に配置された熱媒流通用の放冷熱管13と、基材11の表面に配置された表面材14とを備えてなる放冷熱パネル。溝12内の少なくとも表面材側の空隙部に充填材10が充填されている。表面材14の基材側の面に充填材を付着させておき、この表面材14を基材11表面に当接して加圧することにより充填材10を少なくとも表面材側の空隙部に充填して、この放冷熱パネルを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の室内を冷房又は暖房するために、床、壁、天井等に設置される放冷熱パネル及びその製造方法に関する。詳しくは、床等に設置した際、室内側に効率よく放冷熱し、室外への放冷熱を極力抑えることにより、省エネルギーを実現できる放冷熱パネルと、この放冷熱パネルを効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房は、その快適性とコストパフォーマンスから、住宅の室内を暖房する設備として広く普及している。なかでも、熱源機で加熱した温水を、床下に設置した温水マットなどの放熱パネルとの間で循環させる、温水式床暖房が多く採用されている。最近では、新築住宅への組み込みだけではなく、既築住宅をリフォームする際に、既存の床上に設置することで簡単に床暖房ができるタイプの放熱パネルも提案されている。また、このようなパネルを壁や天井に敷設し、温水の代わりに冷水を流すかたちでの冷房設備も提案されている。
【0003】
放冷熱パネルの一般的な構造としては、図4(a),(b)((a)図は断面図、(b)図は(a)図の溝部の拡大図である。)に示す如く、発泡ポリスチレンや合板などの基材11の表面に溝12が形成され、熱媒としての温水や冷水を流す放冷熱管13がこの溝12内に設けられ、更にこの基材11の表面に表面材14が接着材15で貼り付けられたものがある。放冷熱管13としては、架橋ポリエチレン管などの樹脂管或いは銅管などの金属管が用いられる。基材11表面の表面材14は、放冷熱管13を固定するとともに、放冷熱管13からの放冷熱をパネル内で均質化させる役割を果たす。この表面材14としては、アルミ箔などが使用される。
【0004】
床暖房を例にとると、エネルギー効率の面から、放冷熱パネルは、室内側である上面方向にのみ放熱がなされることが望まれる。しかし、実際には、放冷熱パネルは薄い面状の構造体であるため、パネルの上面のみならず、床下である下面方向にも放熱してしまい、この分が放熱ロスとして、エネルギー効率を落とす原因となる。即ち、放冷熱管13と表面材14とは、放冷熱管13の上部においてその長さ方向に線状に接触するのみであり、放冷熱管13から表面材14への熱伝導経路が狭いために、図4のような従来の放冷熱パネルでは、十分な表面側への放冷熱効率を得ることができない。
【0005】
省エネルギーの観点からは、上面への放熱効率をできるだけ高めることが好ましい。財団法人ベターリビングの優良住宅部品認定基準のうち、「暖・冷房システム/床暖房ユニット BLS HS/B−6−8」においても、床暖房放熱器の床上への放熱量は、基礎基準で60%以上、推奨選択基準で80%以上、と規定されており、重要視されている。
【0006】
従来、放冷熱パネルの表面側への放冷熱効率を改善するために、次のような提案がなされている。
【0007】
例えば、特開平2−8458号公報には、図5に示すように、放冷熱管13と基材11の溝12との隙間に、アルミニウムなど熱伝導率の高い箔を逆Ω字状の断面形状に加工した伝熱箔17を挿入することが提案されている。この放冷熱パネルでは、断面逆Ω字状の伝熱箔17により、放冷熱管13の下側への熱の放散を防止し、上面への放冷熱効率を高める。しかし、この伝熱箔17は、放冷熱管13の直管部にしか適用できず、曲管部への設置は困難であるため、放冷熱パネル全面の放冷熱効率を高めることはできない。また、伝熱箔を断面逆Ω字状という複雑な形状に加工し、基材11の溝12に挿入する工程が必要となるため、組み立て工数・手間が増えるとともに、伝熱箔17の分だけコストも高くなり、結果として放冷熱パネルは高価なものとなってしまう。
【0008】
また、特開2003−287234号公報には、図6に示すように、放冷熱管13の全長に渡って、熱伝導性の高い金属よりなる伝熱箔18によってその外周を被覆したものを基材11の溝12内に設置することが提案されている。この放冷熱パネルは、放冷熱管13の外周を被覆する伝熱箔18によって、放冷熱管13の下側に放散していた熱を表面材14側へと導き、上面への放冷熱効率を高めるものである。この技術は、放冷熱パネルの直管部・曲管部を問わずに適用できる点においては図5に示すものよりも優れているが、図4に示す従来の放冷熱パネルと同様に、伝熱箔18と表面材14との伝熱経路が、放冷熱管13直上の両者の線状の接触部に限られ、この部分がボトルネックとなってしまっているために、十分に熱を上面に導くことができず、その効果には限界がある。また、放冷熱管13に伝熱箔18を巻き付ける工程・手間が増えるとともに、伝熱箔13の分だけコストも高くなり、結果として放冷熱パネルは高価なものとなってしまう。
【特許文献1】特開平2−8458号公報
【特許文献2】特開2003−287234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来の技術は、いずれも、コスト、組み立て時の作業性、製造効率に難がある上に、放冷熱効率向上効果にも限界があり、結果としてその普及を妨げている。
【0010】
本発明は上記従来の問題点を解決し、表面側への放冷熱効率が高く、省エネルギー化に有効な放冷熱パネルであって、安価に簡便かつ迅速に製造することができる放冷熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)の放冷熱パネルは、基材と、該基材の表面に設けられた溝と、該溝内に配置された熱媒流通用の放冷熱管と、該基材表面に配置された表面材とを備えてなる放冷熱パネルにおいて、該溝内の少なくとも表面材側の空隙部に充填材が充填されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の放冷熱パネルは、請求項1において、該充填材の熱伝導率が0.1W/mK以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の放冷熱パネルは、請求項1又は2において、該充填材が、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させたものであることを特徴とする。
【0014】
本発明(請求項4)の放冷熱パネルの製造方法は、基材表面の溝内に放冷熱管を配置した後、該基材表面に表面材を貼り付けることにより請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放冷熱パネルを製造する方法であって、該表面材の基材側の面に前記充填材を付着させておき、この表面材を基材表面に当接して加圧することにより、少なくとも前記表面材側の空隙部に該充填材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放冷熱パネルは、基材に設けられた溝内の少なくとも表面材側の空隙部に充填材が充填されているため、放冷熱管と表面材とが充填材を介して広い面積で接触した、いわばフィン付平板構造となる。これにより、放冷熱管と表面材とが線状に接触していた従来の放冷熱パネルと比較して、放冷熱管から表面材への熱伝導の経路を大幅に拡大することができるため、表面側への放冷熱効率が高められる。このため、室内側にのみ効率よく放冷熱し、反対面側への放冷熱を極力抑えることにより、放冷熱パネルの省エネルギー化を実現することができる。しかも、充填材は、放冷熱管の直管部、曲管部を問わず、すべての部位に設けることができるため、放冷熱パネルの全面に渡って表面側への放冷熱効率を高めることができる。
【0016】
しかも、本発明の放冷熱パネルは、本発明の放冷熱パネルの製造方法により、予め充填材を付着させた表面材を基材表面に当接して加圧することにより、充填材充填のための煩雑な作業を必要とすることなく、容易かつ効率的に、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の放冷熱パネル及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
なお、本発明の放冷熱パネルは、冷房、暖房の両方に適用が可能なものであり、従って、本発明に係る放冷熱管には、熱媒として温水等の加熱媒体又は冷水等の冷却媒体が流通される。また、本発明の放冷熱パネルは床冷暖房に限らず、壁冷暖房、天井冷暖房等、各所の面冷暖房用途に適用される。
【0019】
図1〜3は本発明の放冷熱パネルの実施の形態を示す基材の溝部分の拡大断面図である。本発明の放冷熱パネルは、基材の溝内の少なくとも表面材側の空隙部に充填材が充填されていること以外は従来の放冷熱パネルと同様の構成とされており、その全体構成は図4(a)に示す如く、基材11の表面に設けられた溝12内に熱媒流通用の放冷熱管13が配置され、表面に表面材14が接着材15により貼り合わされた構成とされている。
【0020】
図1の放冷熱パネルは、基材11の溝12内の空隙部全体に充填材10が充填されている。
【0021】
また、図2の放冷熱パネルは、基材11の溝12内の表面材側の空隙部にのみ充填材10が充填されている。
【0022】
図3の放冷熱パネルは、図1の断面円形の放冷熱管に代えて、断面長円形の放冷熱管13Aが設けられたものであり、基材11Aには、この放冷熱管13Aの形状に倣う溝12Aが形成されている。
【0023】
充填材10としては、放冷熱管13,13Aと表面材14との間の熱伝導経路の役割を担うことから、熱伝導率が高い材料であることが望ましく、熱伝導率0.1W/mK以上、中でも0.6W/mK以上、特に1W/mK以上であることが好ましい。充填材10の熱伝導率は高ければ高いほど好ましいが、後述するような工業的に利用可能な充填材において、熱伝導率の上限は通常6W/mK以下程度である。
【0024】
図4に示すように、溝12内の空隙部に充填材が設けられていない場合、空気の熱伝導率0.02W/mKが伝熱の上限である。さらに放冷熱管と空気、空気と表面材の間での熱伝達も大きな熱抵抗となる。よって、本発明に従って、この部分に充填材10を充填することにより、放冷熱管13,13Aと表面材14との間の熱伝導のし易さは、一桁以上改善されることになる。
【0025】
充填材10の材質としては、本発明の趣旨に沿うものであれば、特に制限はないが、コストや組み立て作業の容易さも考慮すると、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、或いはこれらの樹脂を主体とするものが好ましい。これらの樹脂の熱伝導率は0.1〜0.4W/mK程度であるため、充填材として十分な熱伝導の改善効果を得ることができる。これらの樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
また、これらの樹脂に、黒鉛、窒化アルミニウム、炭化珪素等の無機物や銅、アルミニウム等の金属(合金を含む)などの熱伝導率の高い粒子や繊維をフィラーとして混入させることにより、充填材の熱伝導率をさらに一桁高いレベルまで高めることができる。前述の如く、充填材の熱伝導率は高ければ高いほどよく、充填材の熱伝導率はフィラーの含有比率を増すことにより高めることが可能であるが、フィラー比率があまりに高いと、均一にフィラーを分散させることが難しくなり、充填材がもろくなりやすい。このため、充填材中のフィラー含有比率は、所望の熱伝導率と充填材の脆性等のかねあいで適宜設定すればよいが、通常は、下限値として、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは8重量%以上であり、上限値としては、50重量%以下、好ましくは40重量%以下程度である。このようなフィラー含有比率により、充填材の熱伝導率を6W/mK程度まで高めることができるが、通常は4W/mK程度以下の熱伝導率となるようなフィラー含有比率とすることが好ましい。
【0027】
なお、フィラーの大きさは過度に大きいと均一分散が困難となり、過度に小さいと樹脂への配合時の取り扱い性が悪くなるため、粒状のフィラーであれば平均粒径で0.01〜10μm程度、繊維状のフィラーであれば、平均繊維長0.1〜100μmで平均繊維径0.01〜10nm程度のものが好ましい。フィラーの形状は粒状、繊維状の他、フレーク状、その他の異形形状であっても良い。このようなフィラーは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0028】
また、充填材は、このようなフィラーの他、更なる熱伝導率の向上、溝内への充填効率の向上、フィラーの均一分散性の向上、取り扱い性の向上、耐久性の向上、その他の性能向上の目的で、充填材としての本来の特性を損なわない範囲において、増粘剤、顔料、着色材、酸化防止剤、滑剤等を含んでいても良い。
【0029】
本発明において、充填材10は、基材11の溝12内の少なくとも表面材14側の空隙部に充填されていれば良い。従って、必ずしも図1に示す如く、空隙部の全体を埋めるように充填材10を充填する必要はなく、図2に示す如く、溝12内の表面材14側の空隙部、即ち、溝12内の放冷熱管13の上面側のみを被覆するように設けられていてもよい。
【0030】
ただし、図1に示す如く、放冷熱管13の下面側をも被覆するように、溝12内の空隙部全体に充填材10を充填した場合には、放冷熱管13からパネル裏面側へ伝わる熱をパネル表面側に誘導することで、表面への放冷熱効率をより一層高めることができる。
【0031】
図2に示す如く、溝12内の表面材14側の空隙部にのみ充填材10を充填する場合、その充填材量としては、放冷熱管13のパネル厚み方向の高さ(図2のa。円管状の放冷熱管であれば外径に相当する。)に対して、充填材10の充填深さ(図2のb)が1/3以上(即ちb≧1/3×a)、特に1/2以上(即ち、b≧1/2×a)となるように充填することが好ましい。この充填材充填深さが過度に少ないと、本発明による表面側への放冷熱効率の向上効果を十分に得ることができない。特に、放冷熱パネルを厚さ方向に透視した場合の溝12の幅が放冷熱管13の幅と同等であり、溝12の深さが放冷熱管13のパネル厚み方向の高さと同等である場合、溝12内に配置された放冷熱管13と表面材14との間に形成される空隙部の70体積%以上、特に100%が充填材10で埋められていることが好ましい。
【0032】
本発明の放冷熱パネルにおいて、充填材以外の放熱パネルの構成部材としては、従来と同様のものが使用できる。
【0033】
放冷熱管13,13Aに通す加熱媒体としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。一方、冷却媒体としては、通常冷水が用いられる。
【0034】
放冷熱管13,13Aには、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、放冷熱パネルの用途に応じて適宜使用される。
【0035】
放冷熱管の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には図1に示すような円形とされるが、図3に示すように長円形状ないし楕円形状とすることにより、放冷熱管と表面材との接触面積を増すことができ、表面側への放冷熱効率をさらに高めることができる。
【0036】
放冷熱管13,13Aの寸法は、放冷熱パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、放冷熱管の肉厚は通常1.0mm以上、1.5mm以下程度であり、そのパネル厚み方向の高さは通常4mm以上、9mm以下程度である。
【0037】
基材11,11Aの材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、硬質ポリウレタン発泡体、硬質ポリエチレン発泡体、硬質ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、硬質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、硬質ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基材11,11Aを構成するこれらの板状体の厚さは10〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。
【0038】
基材11,11Aの表面の放冷熱管13,13Aを埋設するための溝12,12Aの開口部の幅は、放冷熱管13,13Aの外径(放冷熱管13Aにあっては、そのパネル面方向の幅)と同じ寸法、又はこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝12,12Aは、その延在方向に直交する断面形状がU字形状となるように形成すると、放冷熱管13、13Aを埋設する際に都合が良い。溝12,12Aの深さは、充填材10の充填量によっても異なるが、放冷熱管13,13Aのパネル厚み方向の高さと同等か若干深くすることが好ましい。即ち、図1に示す如く、放冷熱管13の全周を被覆するように充填材10を設ける場合には、放冷熱管13のパネル厚み方向の高さよりも溝12の深さを0.05〜0.3mm程度深くし、また、図2に示す如く、充填材10を放冷熱管13の表面材14側の外周のみを被覆するように設ける場合には、溝12の深さは放冷熱管13のパネル厚み方向の高さと同等とし、放冷熱管13上端部を直接又は接着材15を介して表面材14と接触させることが好ましい。
【0039】
表面材14としては、熱伝導率の高い金属箔を用いることにより、放冷熱パネルの均一放冷熱性を高めることができる。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。金属箔の厚さは、薄すぎると強度が十分でなく、厚すぎると製品が重くなるばかりでなく、コストがかさむので、通常10μm以上50μm以下の範囲で選ぶのが好ましい。
【0040】
また、表面材14は、樹脂シートや、紙などの安価な素材よりなるものであっても良く、金属箔と樹脂シートとを複合化させた積層シートであってもよい。金属箔と樹脂シートとの複合シートの場合、放冷熱管側に熱伝導率の高い金属箔を当接させ、樹脂シートを表面仕上げ層側に配置するのが、仕上げ材の貼り直しや更新性の点で好ましい。樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体等のスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂シートが挙げられる。樹脂シートの厚さは、単層で使用するか、複合化して使用するかによっても異なるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上で、通常500μm以下、好ましくは300μm以下である。
【0041】
表面材14と基材11,11Aとの間の接着材15としては、アクリル系樹脂等の粘着剤を用いても良く、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、ポリアミド樹脂等のホットメルト型の接着剤を用いても良く、また、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の硬化型の接着剤を用いても良い。
【0042】
本発明の放冷熱パネルの製造に当たり、充填材の充填方法としては、その材質、充填量等によって、各種の方法が考えられるが、例えば、放冷熱管を基材の溝内に設置する工程の前後で、熱可塑性樹脂であれば加熱して流動性をもたせた状態で、また、熱硬化性樹脂であれば、硬化前の液体或いは若干の流動性を有する柔軟な未硬化状態で、溝内に注入し、その後、表面材で基材表面を覆う方法であれば、従来技術と比べて、過度にコストや作業の手間をかけずに放冷熱パネルの製造が可能である。
【0043】
また、表面材の裏面(基材当接面側)に充填材を塗布するなどして付着させておき、放冷熱管を溝内に設置した基材に貼り付け、加圧する方法であれば、表面材裏面から放冷熱管と溝との間の隙間に充填材が流入して隙間を埋めるとともに、充填材が表面材と基材との間の接着剤の役割も果たし、コスト・生産効率ともに優れた生産方法となる。
【0044】
通常の場合、放冷熱パネルの表面材の上には更に耐水層や意匠層を有する表面仕上げ材を両面接着テープ等により貼着して使用に供される。
【0045】
なお、本発明の放冷熱パネルの製造方法としては、上記方法に限定されるものではなく、また、本発明の放冷熱パネルは必ずしも製造工場で完成させる必要もない。例えば、各構成部材を独立した状態で施工現場に持ち込み、現場で組み立てながら施工する方法を採ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の放冷熱パネルは、床、壁、天井等、住宅等の建築物の各所の面冷暖房用途に適用され、その高い表面側への放冷熱効率により、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の放冷熱パネルの実施の形態を示す溝部の断面図である。
【図2】本発明の放冷熱パネルの他の実施の形態を示す溝部の断面図である。
【図3】本発明の放冷熱パネルの別の実施の形態を示す溝部の断面図である。
【図4】(a)図は従来の放冷熱パネルを示す断面図であり、(b)図はこの放冷熱パネルの溝部の拡大断面図である。
【図5】従来の放冷熱パネルを示す溝部の断面図である。
【図6】従来の放冷熱パネルを示す溝部の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 充填材
11,11A 基材
12,12A 溝
13,13A 放冷熱管
14 表面材
15 接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面に設けられた溝と、該溝内に配置された熱媒流通用の放冷熱管と、該基材表面に配置された表面材とを備えてなる放冷熱パネルにおいて、
該溝内の少なくとも表面材側の空隙部に充填材が充填されていることを特徴とする放冷熱パネル。
【請求項2】
請求項1において、該充填材の熱伝導率が0.1W/mK以上であることを特徴とする放冷熱パネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、該充填材が、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に金属及び無機物から選ばれるフィラーを混入させたものであることを特徴とする放冷熱パネル。
【請求項4】
基材表面の溝内に放冷熱管を配置した後、該基材表面に表面材を貼り付けることにより請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放冷熱パネルを製造する方法であって、該表面材の基材側の面に前記充填材を付着させておき、この表面材を基材表面に当接して加圧することにより、少なくとも前記表面材側の空隙部に該充填材を充填することを特徴とする放冷熱パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−64223(P2006−64223A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245458(P2004−245458)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】