説明

放射性薬剤の供給システム、方法及びプログラム

【課題】 PET検査用放射性医薬品を安定かつ確実に供給し得るシステムを提供する。
【解決手段】 PET検査用放射性医薬品の計画生産を行い、計画生産量を仮想在庫情報としてサーバ1にて管理する。サーバ1は診療サイト10aから注文を受け、製品を配送するために最も適した製造拠点5aを選択すると共に、仮想在庫情報と注文情報との照合を行い、出荷の可否を判断する。受注が可能であると判断された場合は、製造拠点5aに出荷の指示を行い、診療サイト10aへ製品を配送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性医薬品を安定かつ確実に病院等の診療サイトへ供給するための供給システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(以下、「PET」という)及び単一光子放射断層撮影(以下、「SPECT」という)に代表される核医学検査は、癌をはじめとする種々の疾患の診断に有効である。これらの方法は、特定の放射性同位元素でラベルされた薬剤(以下、「放射性医薬品」という)を投与し、該薬剤の投与により直接的または間接的に放出されたγ線を検出する方法である。核医学検査は、疾患に対する特異度や感度が高いという優れた性質を有しているばかりでなく、病変部の機能に関する情報を得ることができるという、他の検査方法にはない特徴を有している。
例えば、PET検査に用いられる放射性医薬品の一つである、2−[18F]フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(以下、「18F-FDG」とする)は、糖代謝の盛んな部位に集積する性質があるため、糖代謝が盛んな腫瘍を特異的に検出することが可能となる。
【0003】
上記の核医学検査のうち、PETは、得られる画像の画質が高いため、従来広く臨床において用いられていたSPECTと比較して、より診断性能の高い画像を提供することができる。そのため、PET検査は、SPECT検査に次ぐ新たな診断モダリティとして期待されており、PET検査用の放射性医薬品の開発が多くの研究施設等により行われている。例えば、種々のレセプターマッピング剤や、血流診断製剤が合成され、臨床応用に向けて研究が行われている。
【0004】
しかし、PET検査に用いられている放射性核種は極めて短半減期であるため、その有効期限が短いという性質を有している。例えば、PET検査に用いられる代表的な核種である18Fの半減期は110分であり、製造後極めて早期に放射能が消失し、その放射性医薬品としての寿命を終えてしまうこととなる。従って、そのような放射性医薬品を病院等の診療サイトへ供給するには厳しい時間的制約があり、PET検査に用いる放射性医薬品の臨床応用においては、該放射性医薬品を効率良く病院等の診療サイトへ供給する必要がある。
【0005】
特許文献1には、PET検査用の放射性医薬品の供給に際し、使用日時、使用場所、使用量、対象核種の少なくとも4つの情報を添えた注文を受け、核種の半減期などの情報とあわせて時間スケジュールを作成することを特徴とする供給方法が開示されている。この方法は、注文を受けてから製造計画を作成する方法であるので、放射性医薬品の使用日時や診療サイトまでの所要時間を勘案して該医薬品の製造及び供給を行うことができ、該医薬品の製造から該医薬品を用いた検診までの時間を短く設定することができる。しかし、この方法では、注文を受けるごとに製造計画を作成して製造及び供給を行う必要があるため、複数の注文を受けた場合には処理が煩雑になり、薬剤製造の効率が低下することが考えられる。また、場合によっては、注文に対応できない場合も考えられる。
【0006】
このような問題を克服すべく、特許文献2には、薬剤製造サイト及び診療サイトよりなる放射線検診システムにおいて、放射線検診スケジュールを生成するシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2001−172204号公報
【特許文献2】特開2003−185749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した通り、放射性医薬品はその診断薬としての寿命が短いため、その診療サイトへの供給には厳しい時間的制約がある。特許文献1に開示されたような、受注生産による供給方法によれば、使用時刻から逆算して製造計画を作成することができるため、製造から供給までの時間を短く設定することが可能である。しかし、上述したように、この方法では複数の注文が同時にされた場合に処理が煩雑になり、このために注文に対応できない場合も想定される。
【0008】
特許文献2に開示されている検診スケジュール生成システムを併用することにより、上記のような煩雑さをいくらか解消することが可能である。しかし、このシステムは基本的に受注生産であり、スケジュールは各注文を受けた後に作成されるため、工業的生産スケールにてPET検査に用いる放射性医薬品を製造及び供給する場合においては、コスト負担が増大する可能性もある。
【0009】
一方、PET検査のニーズは日本全国に存在している。該薬剤の製造拠点を増やすことにより、全ての診療サイトに該薬剤を配送することも原則的には可能であるが、製造拠点の増設はコスト的な負担が甚大であるので、製造拠点を無制限に増やすことは不可能である。従って、このような広範囲の病院に対して大量の放射性医薬品を供給する場合には、限られた製造拠点から、放射性医薬品を安定かつ確実に供給し得る供給システムを用いる必要がある。
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、PET検査用放射性医薬品を安定かつ確実に供給し得るシステム、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者等は鋭意検討を重ねた結果、PET検査用放射性医薬品の計画生産を行い、以下に示すシステムを用いることによって上記問題点が克服され、PET検査用放射性医薬品を安定かつ確実に供給し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、複数の箇所に存在している放射性薬剤の製造サイトに設けられた製造サイト端末と、前記放射性薬剤の供給を受ける診療サイトに設けられた診療サイト端末と、前記製造サイト端末及び診療サイト端末と通信手段を介して結合されたサーバ装置を構成要素として含む放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置であって、前記サーバ装置は、診療サイトの位置、出荷を担当する製造サイト、前記製造サイトからの輸送手段に関する情報を含む顧客情報と、各製造サイトにおける製品名、製品の検定日時、製造予定数からなる仮想在庫情報を在庫量として記憶する記憶手段と、前記診療サイト端末から、使用製品名、製品の検定日時、使用本数を含む注文情報を受信し、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する出荷可否判断手段と、前記出荷可否判断手段において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示を送信する出荷指示手段と、を備えることを特徴とする放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置である。
【0012】
また、上記放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置は、好ましくは、前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、前記出荷可否判断手段は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から代替の製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する。
【0013】
また、上記放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置は、好ましくは、前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、前記出荷可否判断手段は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトと前記代替の製造サイトの両方を抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する。
【0014】
また、上記放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置は、好ましくは、前記製造サイトから前記診療サイトへ前記放射性薬剤を輸送する運送会社に設けられ、通信手段を介して前記サーバ装置と結合された運送会社端末と、通信手段を介して前記サーバ装置と結合され前記サーバ装置と情報の送受信を行う情報端末と、をさらに備える場合において、前記顧客情報の輸送手段に関する情報は前記輸送を担当する運送会社の情報であり、前記出荷指示手段は、前記出荷可否判断手段において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に識別番号を生成し、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示及び前記識別番号を送信するとともに前記運送会社端末に輸送の指示及び前記識別番号を送信し、前記サーバ装置は、前記運送会社端末に送信した識別番号と前記製造サイト端末に送信した識別番号とを前記情報端末から受信し、これらが一致した場合に前記情報端末へ出荷の許可通知を送信する出荷許可手段をさらに備える。
【0015】
また、本発明は、複数の箇所に存在している放射性薬剤の製造サイトに設けられた製造サイト端末と、前記放射性薬剤の供給を受ける診療サイトに設けられた診療サイト端末と、前記製造サイト端末及び診療サイト端末と通信手段を介して結合されたサーバ装置を構成要素として含む放射性薬剤の供給システムにおいて、前記診療サイトの位置、出荷を担当する製造サイト、前記製造サイトからの輸送手段に関する情報を含む顧客情報を記憶する第1の過程と、前記製造サイト端末から送信された各製造サイトにおける製品名、製品の検定日時、製造予定数からなる仮想在庫情報を在庫量として記憶する第2の過程と、前記診療サイト端末から送信された使用製品名、製品の検定日時、使用本数を含む注文情報を受信し、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する第3の過程と、前記第3の過程において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示を送信する第4の過程と、を有する放射性薬剤の供給方法である。
【0016】
上記放射性薬剤の供給方法は、好ましくは、前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、前記第3の過程において前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から代替の製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する。
【0017】
上記放射性薬剤の供給方法は、好ましくは、前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、前記第3の過程において前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトと前記代替の製造サイトの両方を抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する。
【0018】
また、本発明は、複数の箇所に存在している放射性薬剤の製造サイトに設けられた製造サイト端末と、前記放射性薬剤の供給を受ける診療サイトに設けられた診療サイト端末と、前記製造サイト端末及び診療サイト端末と通信手段を介して結合されたサーバ装置を構成要素として含む放射性薬剤の供給システムにおいて、前記サーバ装置用のコンピュータに、前記診療サイトの位置、出荷を担当する製造サイト、前記製造サイトからの輸送手段に関する情報を含む顧客情報を記憶する第1の処理と、前記製造サイト端末から送信された各製造サイトにおける製品名、製品の検定日時、製造予定数からなる仮想在庫情報を在庫量として記憶する第2の処理と、前記診療サイト端末から送信された使用製品名、製品の検定日時、使用本数を含む注文情報を受信し、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する第3の処理と、前記第3の処理において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示を送信する第4の処理と、を実行させるためのプログラムである。
【0019】
上記プログラムは、好ましくは、前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、前記第3の処理は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から代替の製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する。
【0020】
上記プログラムは、好ましくは、前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、前記第3の処理は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトと前記代替の製造サイトの両方を抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来は限られた地域のみにしか供給することができなかったPET検査用放射性医薬品を、より広い範囲の診療サイトに、安定かつ確実に供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明に係るPET検査用放射性医薬品の供給システムの具体例を説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては、同一の符号を付すこととする。また、本発明は、下記の内容に限定されるものではない。
【0023】
本発明は、PET検査用放射性医薬品の製造及び出荷を行う製造サイト及びPET検査を行う診療サイトが広範囲に複数存在している場合において、PET検査用放射性医薬品の物流を一元管理することにより、PET検査用放射性医薬品を安定かつ確実に供給するシステムを提供するものである。すなわち、本システムの実施に当たっては、図2に例示すように、広範囲に複数の製造サイトを有し、かつ広範囲に複数の診療サイトが存在していることが前提となる。図2の5a、5b、5cは製造サイトを表し、10aから10nは診療サイトを表し、300a、300b、300cは、それぞれ製造サイト5a、5b、5cにおける製品出荷のテリトリー、すなわち、各製造サイトが製品出荷を担当する診療サイトを含む範囲を表す。なお、製造サイト、診療サイトの数は、図2に示す数に限定されない。
【0024】
ここで、製造サイトとは、PET検査用放射性医薬品を製造・出荷する施設をいい、典型的にはサイクロトロンおよびPET検査用放射性医薬品の製造装置を有したPET検査用放射性医薬品の製造工場をいう。診療サイトとは、PET検査用放射性医薬品を用いて診療等を行う施設のことをいい、例えば、病院、診療所および検査施設等をいう。
【0025】
図2に示す各製造サイト及び各診療サイトは、それぞれ電気通信回線に接続可能なコンピュータ端末を有しており、図3に示すように、各サイトに設けられた端末は、中央のサーバ1と電気通信回線を通じて結合され、放射性医薬品の物流はこのサーバ1によって一元管理される。すなわち、各製造サイト及び診療サイトは、電気通信回線を通じて顧客情報及び計画生産量の登録を行うことができ、注文情報および出荷情報の送受信をサーバ1経由で互いに行うことができる。
【0026】
本発明に係る供給システムの一例の全体構成を図1に示す。図1に示す供給システムは、診療サイト10aに設けられた診療サイト端末128a、製造サイト5aに設けられた製造サイト端末120a、製造サイト5bに設けられた製造サイト端末120b、運送会社15aに設けられた運送会社端末126a、運送会社15bに設けられた運送会社端末126bが、通信手段により管理センタ60に設けられたサーバ1に結合されている。各端末とサーバ1を結合する通信手段は、典型的にはインターネット等の電気通信回線を用いることができる。また、運送会社15aは、製造サイト5aの製品出荷のテリトリー300a(図2)における輸送を担当し、運送会社15bは、製造サイト5bの製品出荷のテリトリー300bにおける輸送を担当する。図2にも示す通り、図1の診療サイト10aは製造サイト5aの製品出荷のテリトリー300aに含まれる。なお、図1においては、図2の製造サイト5c、診療サイト10bから10nは省略している。
【0027】
診療サイト10aは診療サイト端末128aを利用して顧客情報の登録、注文情報の送信及び出荷情報の受信を行う。
製造サイト5aには、薬剤製造部門20aと薬剤梱包出荷部門25aがある。薬剤製造部門20aは、製造サイト端末120aと通信手段110aを介して結合された端末122a、薬剤の製造に用いられるサイクロトロン30a、薬剤の自動合成装置35aを備えている。
薬剤梱包出荷部門25aは、製造サイト端末120aと通信手段110aを介して結合された端末124aを備えている。製造サイト端末120aは、薬剤製造部門20aに設けられた端末122a及び薬剤梱包出荷部門25aに設けられた端末124aに対して、製造予定量に応じた製造の指示や、注文に応じた出荷の指示を送信する。
製造サイト5bは、製造サイト5aと同様に構成されている。
運送会社15aの運送会社端末126a及び運送会社15bの運送会社端末126bは、サーバ1から輸送の指示を受信する。また、本システムは、図示しない情報端末を有する。情報端末は、好ましくはドライバーが携帯した形態で用いられるが、薬剤梱包出荷部門に備え付けられたものであっても良い。この情報端末は、伝票等にバーコードとしてプリントアウトされた情報を読み込むバーコード読取機を有し、読み込んだ情報を、例えばPHS、携帯電話等の通信手段を介してサーバ1へ送信し、サーバ1から出荷許可通知又は納品確認通知を受信する。
【0028】
サーバ1は、図4に示すように診療サイト登録手段200、計画生産量登録手段210、注文受付手段220、出荷可否判断手段230、出荷指示手段240、出荷許可手段250、納品確認手段260、記憶手段270により構成されている。
【0029】
記憶手段270は、診療サイトに関する情報である顧客情報271、各製造サイトにおける計画生産量からなる仮想在庫情報272、各診療サイト端末から送信された注文情報273を記憶する。
顧客情報271は、図5に示すように、診療サイト、その診療サイトの位置である所在地、その診療サイトまで最も所要時間が短い製造サイトである担当拠点、その担当拠点から診療サイトまでの所要時間、その担当拠点から診療サイトまでの輸送を担当する担当運送会社、担当拠点の在庫量が少なく注文通りの出荷が可能でない場合の代替の担当拠点、その担当拠点から診療サイトまでの所要時間、その代替の担当拠点から診療サイトまでの輸送を担当する代替の担当運送会社から構成される。なお、担当拠点及び代替の担当拠点は、放射性医薬品の有効期限が極めて短いことから、例えば診療サイトまでの所要時間が3時間以内である製造サイトを予め選択する。
仮想在庫情報272は、図6に示すように、製造サイト、製品名、包装単位、検定日時、製造予定数から構成される。
なお、検定日時とは、製品に表示された放射能、すなわち規格に規定された放射能を有すべき日時と定義されている。例えば、製品に表示された放射能が185MBq(メガベクレル)であり、検定日時が6月4日午後1時の製品は、6月4日午後1時において放射能の規格値である185MBqを満たすように、製造時における放射能量の調整が行われる。放射性医薬品の有効期限は、この検定日時を起算点として設定されており、例えば検定日時より6時間のように規定される。
注文情報273は、図7に示すように、注文情報を送信した診療サイト、注文する製品の情報、すなわち、製品名、包装単位、検定日時、本数、出荷及び納品における処理で用いられる情報、すなわち、依頼書番号、出荷許可情報、納品確認情報から構成される。
【0030】
図4に戻り、診療サイト登録手段200は、サーバ1等において顧客情報をあらかじめ記憶手段270に顧客情報271として登録しておく。
計画生産量登録手段210は、通信手段50a、50b(図1)を介して製造サイト端末120a、製造サイト端末120bから入力された計画生産量を受け付け、記憶手段270に仮想在庫情報272として記憶させる。
注文受付手段220は、通信手段55(図1)を介して診療サイト端末128aから入力された注文を受け付け、記憶手段270に注文情報273として記憶させる。
出荷可否判断手段230は、記憶手段270に記憶された顧客情報271、仮想在庫情報272、注文情報273に基づき、出荷を担当する担当拠点及び担当運送会社を決定する。
出荷指示手段240は、出荷可否判断手段230が決定した担当拠点の製造サイト端末に対して出荷の指示を送信するとともに、決定した担当運送会社の運送会社端末に対して輸送の指示を送信する。
出荷許可手段250は、情報端末から、製造サイト端末に送信された依頼書番号と運送会社に送信された依頼書番号を受信するとこれらの照合を行い、一致することを確認して情報端末へ出荷許可通知を送信する。
納品確認手段260は、情報端末から、運送会社に送信された依頼書番号と診療サイト端末に送信された依頼書番号を受信するとこれらの照合を行い、一致することを確認して情報端末へ納品確認通知を送信する。
【0031】
次に、図8を参照して、放射性医薬品の製造から使用までの流れを説明する。放射性医薬品は複雑な工程を経て製造され、製造後極めて短時間に寿命を終えてしまうため、図8に例示するようなスケジュールにそって製造、配送、使用が行われる。図8はスケジュールの一例であり、製造サイトでは通常1日に複数の検定日時、すなわち図8に示すスケジュールの他に複数の検定日時を設定し、これに合わせてスケジュールを組んで放射性医薬品の製造を行うので、各診療サイトはそのいずれかの検定日時に合わせて診療を行うようにして必要な数量の薬剤を注文する。各診療サイトからの注文は、図1に示す供給システムにおいて各診療サイト端末から、通常は検定日時の前日までに行われる。製造サイトでは計画生産量に基づいて放射性医薬品の製造を行うため、遅くても図8の「18F製造」の製造中には注文を締め切る。なお、注文数量が計画生産量を超えた場合であっても、計画生産量に従って製造を行い、製造量の調整は行わない。
【0032】
各製造サイトでは、生産計画に従って製剤の製造を行う(図8の「18F製造」)。ここで生産計画は、統計を取り、前年同月の最大値及び受注傾向、例えば、月毎の受注量の推移を勘案して決定される。各製造サイトでは、有効成分の合成に先立ち、サイクロトロン30にて放射性核種の製造が行われる。例えば、放射性核種として[18F]を製造する場合は、18O濃縮水(例えば18O濃度99.7%以上に18Oが濃縮された水)にプロトン照射を行うことにより、[18F]フッ化物イオンを含有した18O濃縮水として、該核種を得ることができる。このとき、該放射性核種の製造は、生成量Xoが以下の[数1]を満たすように行う。
【0033】
【数1】

ここで、X1は製品が製造完了時に満たすべき放射能量、nは製品の製造本数、Sは製剤の製造時における放射性核種の収率、T0は放射性核種の製造完了から製剤の製造開始までの時間、T1は製品製造の所要時間である。また、λは核の崩壊定数であり、核の半減期をThとすると、λ=ln 2 / Th(λは2の自然対数をThで割った値)で表される。
【0034】
放射性核種の製造後、該核種を原料とし、自動合成装置35にて注射剤の製造が行われる(図8の「製剤合成」)。例えば、製品が18F-FDGである場合は、自動合成装置35にて、[18F]フッ化物イオン含有18O濃縮水から[18F]フッ化物イオンを取り出す工程、取り出した[18F]フッ化物イオンをアミノポリエーテル等の相間移動触媒とともに蒸散乾固させる工程、蒸散乾固させた[18F]フッ化物イオンにアセトニトリルに溶解させたTATMを加え、約80℃に加熱しながら求核置換反応させてTAFDGを得る工程、TAFDGにつき、塩酸を加えて脱保護を行い、18F-FDGを得る工程、得られた18F-FDGを生理食塩液に溶解させ製剤を調整する工程、を順次実行する。製剤を調製後、製品の規格を満たすよう、該製剤を容器に分注し(図8の「充填」)、製品として出荷に供する。なお、図8の「充填」は通常、バイアル充填を意味する。
【0035】
なお、上述したように、放射性医薬品においては、検定日時にラベルに表示された放射能量を満たすように、製造時において放射能量の調整が行われる。例えば、製品に表示された放射能がX、薬剤の製造完了から検定日時までの時間をTとすると、製造時に満たすべき製品の放射能量X1は、以下の[数2]によって求められる。
【0036】
【数2】

ここで、λは核の崩壊定数であり、核の半減期をThとすると、λ=ln 2 / Th(λは2の自然対数をThで割った値)で表される。
【0037】
上記のように、規格を満たすように容器に充填された製品は、出荷先ごとに梱包され(図8の「梱包」)、運送会社によって製造サイトから診療サイトまで出荷・配送される(図8の「出荷・配送」)。運送会社が診療サイトへ向けて出発する時刻は次のように決定する。例えば、図5に示すように製造サイト5a(図1)から診療サイト10aまでの所要時間が30分であるとき、12時までに製品を届けるには、11時30分までに製造サイト5aを出発する。一方、製造サイト5aの在庫量が少なく、製造サイト5bから製品を届ける場合は、製造サイト5bから診療サイト10aまでの所要時間が2時間であるとき、10時までに製造サイト5bを出発する。
運送会社によって製品が病院へ搬入されると、製品の検定日時に合わせて診療が行われ、数時間後の有効期限まで使用される。
【0038】
次に、上記で図8を参照して説明した放射性医薬品の製造から使用までの流れの中で、図1に示す供給システムを用いて行われる処理は、各診療サイト端末からの顧客情報の登録、各製造サイト端末からの計画生産量の登録、各診療サイト端末からの注文とこれに伴う各製造サイト端末への出荷の指示及び各運送会社端末への輸送の指示及び情報端末に対する出荷許可である。以下、図9を参照してこれらの処理を順に説明する。
【0039】
図9に示す処理が開始される前に、まず、この供給システムを利用するために必要となる各診療サイトに関する情報が顧客情報として登録される。登録の仕方は、例えば、前述した顧客情報として登録される項目である、診療サイト、所在地、担当拠点、担当拠点からの所要時間、担当運送会社、代替の担当拠点、代替の担当拠点からの所要時間、代替の担当運送会社のうち、診療サイト及び所在地を診療サイト端末128a(図1)から通信手段55を介してサーバ1に登録し、その他の項目を管理センタ60のオペレータがサーバ1において登録する形態、あるいは、診療サイト及び所在地を含む申込書等を診療サイトから受け取って、管理センタ60のオペレータがサーバ1において全ての情報項目を登録する形態がある。
例えば、サーバ1において、項目“診療サイト”に診療サイト10a、項目“所在地”に診療サイト10aの所在地、項目“担当拠点”に診療サイト10aまで最も所要時間が短い製造サイト5a、項目“所要時間”に製造サイト5aから診療サイト10aまでの所要時間である30分、項目“担当運送会社”に診療サイト10aを製品出荷のテリトリー300aに含み、診療サイト10aへPET検査用放射性医薬品を配送するために最適な運送会社である運送会社15a、項目“代替の担当拠点”に診療サイト10aまで製造サイト5aの次に所要時間が短い製造サイト5b、項目“代替の担当拠点からの所要時間”に製造サイト5bから診療サイト10aまでの所要時間である2時間、項目“代替の担当運送会社”に診療サイト10aを製品出荷のテリトリー300bに含まないが代替の担当拠点である製造サイト5bからの輸送を担当する運送会社15bを入力し、診療サイト登録手段200により記憶手段270に顧客情報271として図5に示す情報を記憶する。
【0040】
次に、各製造サイトは、各製造サイトにおける計画生産量に関する情報として、PET検査用放射性医薬品の品名、各医薬品の製造サイト毎および検定日時毎における製造量を登録する。すなわち、製造サイト端末120a、製造サイト端末120bからそれぞれ通信手段50a、50bを介して管理センタ60のサーバ1における計画生産量登録手段200により各製造サイトにおける生産計画に関する情報を登録する。なお、生産計画は過去の出荷に関する統計情報等を用いて作成される。
【0041】
図10は、各製造サイト端末における、製造予定数の入力画面の一例を示す。この画面上で、401に製造サイト名を、402に製品名を、403に包装単位を、404に検定日時を、405に製造予定数をそれぞれ入力し、送信ボタン406をクリックすることにより、データがサーバ1に送信され、計画生産量登録手段210により各製造サイトの計画生産量が記憶手段270に仮想在庫情報272として記憶される。この計画生産量に関する情報は、本システムにおいて仮想在庫として取り扱われる。各製造サイトにおける計画生産量を仮想在庫として取り扱うことにより、診療サイトからの注文に対する出荷の可否の判断が容易となり、診療サイトからの受注をスムーズに行うことが可能になる。
【0042】
この入力画面において、製造サイト端末120aから、項目“製造サイト”に製造サイト5a、項目“製品名”にABCチュウ シリンシ゛、項目“包装単位”に185 MBq、項目“検定日時”に2004年9月30日13時00分、項目“製造予定数”に100本と入力してサーバ1へ送信し(図9のステップS1)、サーバ1の計画生産量登録手段210により記憶手段270に仮想在庫情報272として記憶させ(図9のステップS2)、製造サイト端末120bから、項目“製造サイト”に製造サイト5b、項目“製品名”にABCチュウ シリンシ゛、項目“包装単位”に185 MBq、項目“検定日時”に2004年9月30日13時00分、項目“製造予定数”に200本と入力してサーバ1へ送信し(図9のステップS3)、サーバ1の計画生産量登録手段210により記憶手段270に仮想在庫情報272として記憶させると(図9のステップS4)、サーバ1の記憶手段270の仮想在庫情報272に図6に示す情報が記憶される。以上のように各製造サイト端末より、仮想在庫情報がサーバ1に登録される。
図11に、製造予定数の管理画面の一例を示す。この管理画面を介して、記憶手段270の仮想在庫情報272に登録された計画生産量を一見して把握することが可能となる。
【0043】
次に、各診療サイト端末からの注文とこれに伴う各製造サイト端末への出荷の指示及び各運送会社端末への輸送の指示、各運送会社のドライバーが携帯する情報端末に対する出荷許可及び納品確認の処理について説明する。
サーバ1の注文受付手段220は、通信手段100を介して各診療サイトより注文を受け付ける。この注文には、少なくとも(1)PET検査用放射性医薬品の品名・規格、(2)検定日時、(3)使用量に関する情報を含むようにする。ここで、PET検査用放射性医薬品の品名・規格に関する情報としては、例えば、品名として18F-FDG、規格として185MBqバイアル等の情報を記載する。また、使用量としては、注射剤の使用本数等を記載する。検定日時については、該PET検査用放射性医薬品の使用日時が、その医薬品の有効期限内となるような検定日時を、診療サイト側で選択する。
【0044】
図12は、診療サイト端末128aにおける、入力の待ち受け画面の一例を示す図である。この画面上にて、501に診療サイト名を、502に顧客名を、503に注文する製品の検定日時を入力し、次へと表示されたボタン504をクリックすることにより、製品選択画面が表示される(図13)。この画面上にて、注文しようとする製品名をチェックし、次へと表示されたボタン602をクリックすることにより、包装単位選択画面が表示される(図14)。この画面上にて、注文する包装単位(例えば、ラベルに表示された放射能量の値)につき、注文本数を入力し、次へと表示されたボタン702をクリックし、次いで表示される確認画面(図15)にて、注文内容が正しいか否かを確認する。注文内容に間違いが無い場合、送信ボタン801をクリックすることによって、注文内容が電気通信回線を通じてサーバ1に送信される(図9のステップS5)。送信されたデータは、サーバ1の注文受付手段220により記憶手段270に注文情報273として記憶される。
【0045】
上記のように診療サイト端末128aから注文情報が送信されると、サーバ1の出荷可否判断手段230は、記憶手段270に記憶されている顧客情報271から、診療サイト10aの担当拠点を読み出す。図5に示すように診療サイト10aの担当拠点は製造サイト5aが登録されているので、担当拠点は製造サイト5aが抽出される。そして、出荷可否判断手段230において記憶手段270に記憶されている仮想在庫情報272と注文情報273の照合を行い、受注の可否を判断する(図9のステップS6)。具体的には、製品名、包装単位、検定日時が一致する担当拠点5aの在庫量と注文数量との比較を行い、注文数量が在庫量以下の場合は、受注可能であるとして注文を受け付ける。そして、注文数量、すなわち出荷予定数量を仮想在庫量から引き去り、現仮想庫量として記憶手段270に仮想在庫情報272として再登録し、その後の受注において、在庫量として参照する数値とする。
【0046】
上記において注文を受け付けた場合は、サーバ1の出荷指示手段240は通信手段105aを介して担当拠点5aの製造サイト端末120aに対して図16(図中バーコードは図示せず)に示す貨物原票を送信することにより出荷を指示し(図9のステップS7)、担当運送会社15aの運送会社端末126aに対して図17(図中バーコードは図示せず)に示す引渡し表を送信することにより輸送を指示し、注文元の診療サイト10aの診療サイト端末128aには通信手段150を介して発注伝票を送信することにより出荷日時、製品名、本数の連絡を行う(図9のステップS8)。このように、電気通信回線を介して出荷の指示および出荷日時の連絡を行うことにより、受注から出荷の指示までを短時間に行うことが可能となる。なお、上記の貨物原票、引渡し表、発注伝票には、出荷指示手段240においてユニークに生成された識別番号である依頼書番号が記載されている。また、貨物原票、引渡し表、発注伝票には、この依頼書番号がバーコード読取機で読み込むことのできるバーコードも含まれるものとする。この依頼書番号は記憶手段270の注文情報273にも記録される(図7)。
【0047】
出荷の指示を受けた担当拠点5aは、製造計画に従って製造されたPET検査用放射性医薬品の中から、注文に応じた製品を取り出し、出荷に向けて梱包作業を行う。このとき、宛先伝票(兼納品書)を作成してプリントアウトし、梱包した製品に貼付する。この宛先伝票には、サーバ1から通知された依頼書番号がバーコード読取機で読み込むことができるように印刷されている。
一方、輸送の指示を受けた担当運送会社15aのドライバーは端末126aから引渡し表をプリントアウトし、前述の情報端末を携帯して、所定の時間までに担当拠点5aに行き製品の集荷を行う。運送会社15aのドライバーは、引渡し表に記載された依頼書番号と製品に貼付された宛先伝票(兼納品書)に記載された依頼書番号とを情報端末のバーコード読取機を用いて読み込ませ、通信手段を介してサーバ1へ送信する。サーバ1の出荷許可手段250はこれらの照合を行い、一致することを確認すると情報端末へ出荷許可通知を送信する。また、診療サイト端末128aに出荷完了連絡を送信し(ステップS9)、記憶手段270の注文情報273の出荷許可情報に「通知済み」と記録するとともに通知日付を付加して記録する。複数の診療サイトへの出荷を一度に担当している場合は、上記と同様の手続で引渡し表に記載された依頼書番号と製品に貼付された宛先伝票(兼納品書)に記載された依頼書番号とを照合し、集荷を行う。その後、担当運送会社15aのドライバーは集荷した製品を注文元の診療サイト10aへ向けて配送する。
【0048】
担当運送会社15aのドライバーは診療サイトにおいて、製品に貼付された宛先伝票(兼納品書)に記載された依頼書番号と、診療サイト端末128aに送信されプリントアウトされた発注伝票に記載された依頼書番号とをドライバーが携帯する情報端末のバーコード読取機を用いて読み込ませ、通信手段を介してサーバ1へ送信する。サーバ1の出荷確認手段260はこれらの照合を行い、一致することを確認すると情報端末へ納品確認通知を送信する。また、記憶手段270の注文情報273の納品確認情報に「通知済み」と記録するとともに通知日付を付加して記録する。製品の引渡しが完了すると、該診療サイトへの配送は終了する。
【0049】
上記は診療サイト10aの注文数量がサーバ1に登録した担当拠点である製造サイト5aの在庫量を下回っていたので、製造サイト5aから診療サイト10aへ注文通りの出荷が可能であった。このような場合と異なり、診療サイト10aの注文数量が製造サイト5aの在庫量を上回り、製造サイト5aから診療サイト10aへ注文通りの出荷が可能でない場合の処理を以下で説明する。
【0050】
図9のステップS5において、診療サイト端末128aから、項目“製品名”にABCチュウ シリンシ゛、項目“包装単位”に185 MBq、項目“検定日時”に2004年9月30日13時00分、項目“本数”に150本と入力してサーバ1に送信し、記憶手段270に注文情報273として記憶されたとする。
出荷可否判断手段230は、記憶手段270に記憶されている顧客情報271から診療サイト10aの担当拠点を読み出す。診療サイト10aの担当拠点は製造サイト5aが登録されているので、担当拠点は製造サイト5aが抽出される。そして、出荷可否判断手段230において記憶手段270に記憶されている仮想在庫情報272のうち製造サイト5aの在庫量と注文情報273の照合を行い、受注の可否を判断する(図9のステップS6)。このとき、製造サイト5aの製造予定数は図6に示す通り100本であり、診療サイト10aからの注文数量である150本に満たない。
【0051】
サーバ1の出荷可否判断手段230は、製造サイト5aは注文通りの出荷が不可能であると判断し、製造量の増加等の手段をとることなく、記憶手段270の顧客情報271に登録された代替の担当拠点5bへの切替を行う(ステップS10)。注文に応じた製造量の調整ではなく、代替担当拠点への切り替えという手段をとることにより、PET検査用放射性医薬品を広範囲の診療サイトに安定して供給することが可能となる。そして、出荷可否判断手段230は記憶手段270に記憶されている仮想在庫情報272のうち製造サイト5bの在庫量と注文情報273の照合を行い、受注の可否を判断する(ステップS11)。このとき、製造サイト5bの製造予定数は図6に示すとおり200本で、診療サイト10aからの注文通りの出荷が可能であるのでこの注文を受け付ける。そして、注文数量、すなわち出荷予定数量を在庫量から引き去り、現在庫量として記憶手段250に再登録し、その後の受注に在庫量として参照する数値となる。
【0052】
次に、サーバ1の出荷指示手段240は通信手段105を介して担当拠点5bの製造サイト端末120bに対して図16(図中バーコードは図示せず)と同様な貨物原票を送信することにより出荷を指示し(図9のステップS12)、担当運送会社15bの運送会社端末126bに対して図17(図中バーコードは図示せず)と同様な引渡し表を送信することにより輸送を指示し、注文元の診療サイト端末128aには通信手段150を介して発注伝票を送信することにより出荷日時、製品名、本数の連絡を行う(ステップS13)。上記の貨物原票、引渡し表、発注伝票には、出荷指示手段240においてユニークに生成された識別番号である依頼書番号が記載されている。この依頼書番号は記憶手段270の注文情報273にも記録される。以下、担当運送会社15bのドライバーが携帯する情報端末への出荷許可通知の送信及び納品確認通知の送信は前述と同様である。
【0053】
図9のステップS11において、代替の担当拠点5bにおける在庫量との照合においても、注文を受け付けることが不可能であると判断された場合は、その旨の連絡を通信手段150を介して注文元の診療サイト端末128aに送信し、他の検定日時への切り替えの希望の有無を確認する。検定日時を指定して切り替えを希望する返信があったときは注文情報273の検定日時の切り替えを行い(ステップS14)、その出荷日時を診療サイト端末128aへ送信する(ステップS15)。
【0054】
なお、上記では、出荷可否判断手段230において、担当拠点である製造サイト5aが注文通りの出荷が不可能であると判断すると、代替の担当拠点5bへの切替を行ったが、担当拠点である製造サイト5aの在庫量100本が診療サイト10aの注文数量である150本に満たない50本についてのみ代替の担当拠点である製造サイト5bへの切替を行ってもよい。すなわち、サーバ1の出荷指示手段240から、製造サイト5aに100本、製造サイト5bに50本の出荷の指示を通知してもよい。この場合、輸送の指示の送信は、製造サイト5aの担当運送会社である運送会社15a及び代替の担当運送会社15bそれぞれに通知してもよいし、どちらか一方に製造サイト5a及び製造サイト5bの両方から診療サイト10aへの輸送を指示してもよい。
【0055】
なお、図5に示す顧客情報271においては代替の担当拠点を1つだけ登録したが、代替の担当拠点を複数登録し、担当拠点及び1つ目の代替の担当拠点が注文を受け付けることが不可能である場合に、順次、その他の代替の担当拠点に切り替えてもよいし、担当拠点及び1つ目の代替の担当拠点の在庫量が注文数量に満たない数量について、その他の代替の担当拠点に切り替えてもよい。
【0056】
なお、上述のサーバ1における動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0057】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ROMの他に、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のシステムやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0058】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、放射性医薬品を安定かつ確実に病院等の診療サイトへ供給するための供給システムに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態による供給システムの構成を示す図である。
【図2】各製造サイトの配送テリトリーの概念を示す図である。
【図3】各製造サイト、各診療サイト、サーバの関係を示す概念図である。
【図4】サーバ1の構成を示すブロック図である。
【図5】記憶手段270に記憶される顧客情報271の一例を示す図である。
【図6】記憶手段270に記憶される仮想在庫情報272の一例を示す図である。
【図7】記憶手段270に記憶される注文情報273の一例を示す図である。
【図8】放射性薬剤の製造から使用までのタイムスケジュールを示す図である。
【図9】供給システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】製造サイト端末における製造予定数の入力画面の一例を示す図である。
【図11】製造予定数の管理画面の一例を示す図である。
【図12】診療サイト端末における発注メニュー画面の一例を示す図である。
【図13】診療サイト端末における製品選択画面の一例を示す図である。
【図14】診療サイト端末における包装単位選択画面の一例を示す図である。
【図15】診療サイト端末における注文内容確認画面の一例を示す図である。
【図16】製造サイト端末に送信される貨物原票の一例を示す図である。
【図17】運送会社端末に送信される引渡し表の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…サーバ
5a、5b、5c…製造サイト
15a、15b…運送会社
10a〜10n…診療サイト
20a、20b…薬剤製造部門
25a、25b…薬剤梱包出荷部門
30a、30b…サイクロトロン
35a、35b…薬剤の自動合成装置
50a、50b、55、100、105a、105b、110a、110b、130a、130b、150…通信手段
60…管理センタ
120a、120b…製造サイト端末
122a、122b…端末
124a、124b…端末
126a、126b…運送会社端末
128a…診療サイト端末
200…診療サイト登録手段
210…計画生産量登録手段
220…注文受付手段
230…出荷可否判断手段
240…出荷指示手段
250…出荷許可手段
260…納品確認手段
270…記憶手段
271…顧客情報
272…仮想在庫情報
273…注文情報


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の箇所に存在している放射性薬剤の製造サイトに設けられた製造サイト端末と、前記放射性薬剤の供給を受ける診療サイトに設けられた診療サイト端末と、前記製造サイト端末及び診療サイト端末と通信手段を介して結合されたサーバ装置を構成要素として含む放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置であって、
前記サーバ装置は、
診療サイトの位置、出荷を担当する製造サイト、前記製造サイトからの輸送手段に関する情報を含む顧客情報と、各製造サイトにおける製品名、製品の検定日時、製造予定数からなる仮想在庫情報を在庫量として記憶する記憶手段と、
前記診療サイト端末から、使用製品名、製品の検定日時、使用本数を含む注文情報を受信し、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する出荷可否判断手段と、
前記出荷可否判断手段において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示を送信する出荷指示手段と、
を備えることを特徴とする放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置。
【請求項2】
前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、
前記出荷可否判断手段は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から代替の製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置。
【請求項3】
前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、
前記出荷可否判断手段は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトと前記代替の製造サイトの両方を抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置。
【請求項4】
前記放射性薬剤の供給システムにおいて、
前記製造サイトから前記診療サイトへ前記放射性薬剤を輸送する運送会社に設けられ、通信手段を介して前記サーバ装置と結合された運送会社端末と、
通信手段を介して前記サーバ装置と結合され前記サーバ装置と情報の送受信を行う情報端末と、
をさらに備える場合において、
前記顧客情報の輸送手段に関する情報は前記輸送を担当する運送会社の情報であり、
前記出荷指示手段は、前記出荷可否判断手段において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に識別番号を生成し、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示及び前記識別番号を送信するとともに前記運送会社端末に輸送の指示及び前記識別番号を送信し、
前記サーバ装置は、前記運送会社端末に送信した識別番号と前記製造サイト端末に送信した識別番号とを前記情報端末から受信し、これらが一致した場合に前記情報端末へ出荷の許可通知を送信する出荷許可手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の放射性薬剤の供給システム用のサーバ装置。
【請求項5】
複数の箇所に存在している放射性薬剤の製造サイトに設けられた製造サイト端末と、前記放射性薬剤の供給を受ける診療サイトに設けられた診療サイト端末と、前記製造サイト端末及び診療サイト端末と通信手段を介して結合されたサーバ装置を構成要素として含む放射性薬剤の供給システムにおいて、
前記診療サイトの位置、出荷を担当する製造サイト、前記製造サイトからの輸送手段に関する情報を含む顧客情報を記憶する第1の過程と、
前記製造サイト端末から送信された各製造サイトにおける製品名、製品の検定日時、製造予定数からなる仮想在庫情報を在庫量として記憶する第2の過程と、
前記診療サイト端末から送信された使用製品名、製品の検定日時、使用本数を含む注文情報を受信し、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する第3の過程と、
前記第3の過程において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示を送信する第4の過程と、
を有する放射性薬剤の供給方法。
【請求項6】
前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、
前記第3の過程において前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から代替の製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項5に記載の放射性薬剤の供給方法。
【請求項7】
前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、
前記第3の過程において前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトと前記代替の製造サイトの両方を抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項5に記載の放射性薬剤の供給方法。
【請求項8】
複数の箇所に存在している放射性薬剤の製造サイトに設けられた製造サイト端末と、前記放射性薬剤の供給を受ける診療サイトに設けられた診療サイト端末と、前記製造サイト端末及び診療サイト端末と通信手段を介して結合されたサーバ装置を構成要素として含む放射性薬剤の供給システムにおいて、
前記サーバ装置用のコンピュータに、
前記診療サイトの位置、出荷を担当する製造サイト、前記製造サイトからの輸送手段に関する情報を含む顧客情報を記憶する第1の処理と、
前記製造サイト端末から送信された各製造サイトにおける製品名、製品の検定日時、製造予定数からなる仮想在庫情報を在庫量として記憶する第2の処理と、
前記診療サイト端末から送信された使用製品名、製品の検定日時、使用本数を含む注文情報を受信し、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する第3の処理と、
前記第3の処理において注文通りの出荷が可能であると判断した場合に、前記抽出された製造サイトの製造サイト端末に出荷の指示を送信する第4の処理と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、
前記第3の処理は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から代替の製造サイトを抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記顧客情報は、代替の製造サイト、前記代替の製造サイトからの輸送手段に関する情報をさらに含み、
前記第3の処理は、前記出荷を担当する製造サイトにより注文通りの出荷が可能でないと判断した場合に、前記顧客情報から出荷を担当する製造サイトと前記代替の製造サイトの両方を抽出し、前記仮想在庫情報のうち前記抽出された製造サイトの在庫量との照合を行って、注文通りの出荷が可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項8に記載のプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−185161(P2006−185161A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377814(P2004−377814)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】