説明

放射線不透過性ポリマー生体適合材料

【課題】 チロシン由来の主たるポリマー鎖を通して分解する放射線不透過性ポリマーを提供すること。
【解決手段】芳香族ジヒドロキシモノマーをヨウ素化および/または臭素化した誘導体を製造、重合して、放射線不透過性ポリマーを形成する。同モノマーは他のジヒドロキシモノマーと共重合してもよい。ヨウ素化および臭素化した芳香族ジヒドロキシポリマーは、他のポリマー生体適合材料に対する放射線不透過な生体適合性の非毒性添加剤として使用可能である。本発明のポリマーから製造した放射線不透過な医療インプラントおよび移植用薬物送達装置についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の実施権
米国政府は本発明に関して支払済の実施権を有すると共に、国立衛生研究所により授与された認可番号GM−39455およびGM−49849の条件に必要とされるような妥当な条件下で特許権者が他人に対して実施許可を与えなければならないという、制限された状況の下での権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は1997年11月7日に出願された米国仮特許出願第60/064,905号の優先権の恩恵を主張する。この米国仮特許出願の開示は、本発明に文献援用する。
【0003】
発明の属する技術分野
本発明は、放射線不透過な生分解性ポリカーボネート、ポリアリレート、およびポリ(酸化アルキレン)を備えたそれらのブロック共重合体に関する。特に、本発明は、ジヒドロキシモノマー(単量体)のホモポリマー(単独重合体)およびコポリマー(共重合体)がその構造の一部にヨウ素化または臭素化した芳香族環を有するがゆえに放射線不透過性となった、ポリカーボネート、ポリアリレート、およびそれらのポリ(酸化アルキレン)ブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ジフェノールは、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリアリレート、ポリウレタン等に対するモノマーの出発物質である。共同所有の米国特許第5,099,060号および5,198,507号は、ポリカーボネートおよびポリイミノカーボネートの重合に有用な、アミノ酸から誘導したジフェノール化合物について開示している。得られたポリマーは一般に分解性ポリマーとして有効であると共に、特に医用の組織適合性の生体腐食性材料としても有効である。これらのポリマーが最終用途に適しているのは、ポリマーを、天然のアミノ酸であるL−チロシンより誘導したジフェノールから重合させたためである。米国特許第5,099,060号および5,198,507号の開示は、本明細書に援用する。このような以前から知られているポリマーは、構造インプラントとして最良に使用される丈夫な水溶性の物質である。
【0005】
同じモノマーのL−チロシン誘導ジフェノールは、共同所有の米国特許第5,216,115号に記載されているようにポリアリレートの合成に使用されたり、共同所有の米国特許第5,658,995号に開示されているように上述のポリカーボネートおよびポリアリレートを備えたポリ(酸化アルキレン)コポリマーの合成に使用されたりもする。米国特許第5,216,115号および米国特許第5,658,995号の開示も、本明細書に援用する。
【0006】
共同所有の国際出願番号第WO98/36013号は、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリアリレート等の重合の際の出発物質としてやはり有用な、α−、β−およびヒドロキシ酸およびL−チロシンの誘導体から製造されたジヒドロキシモノマーについて開示している。これらのモノマーからのポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリイミノカーボネートの製造方法についても開示している。国際出願番号第WO98/36013号の開示も、本明細書に援用する。
【0007】
分解性合成ポリマーは、整形外科の骨固定装置、薬物送達システム、心血管インプラン
ト、および組織の再生/エンジニアリングのための足場等の広範な用途における医療インプラントして現在評価されている。インプラントとして使用した場合、このようなポリマーは、侵襲的な方法を伴わずには追跡できない。放射線不透過性ポリマーは、通常のX線画像化により追跡可能であるという特有な利点を提供する。様々な利用段階を通じたこのようなインプラントの運命を、侵襲的な外科手術をせずに追跡できる。
【0008】
デヴィ(Davy)等、J. Dentist. 、10(3) 、254-64ページ (1982) は、放射線不透過性のポリ(メチルメタクリレート)の臭素化誘導体について開示している。義歯のベースとして好適に使用するための必要な熱動力特性を得るには、臭素化されていない類似体を共重合させる必要があった。臭素化誘導体が小さな範囲の特定割合の濃度で存在する場合のみ、材料は許容可能な熱動力特性を示す。また、許容可能な特性を示す材料が、ポリマー構造に臭素を加えた後でも依然として生分解性を有するという開示は存在しない。本願に開示されているポリマーとは対照的に、臭素化したポリ(メチルメタクリレート)は分解しない。しかしながら、臭素原子は脂肪族エステルの側鎖に位置するため、側鎖のエステル分裂が起こるとポリマーは放射線不透過性を失う。
【0009】
ホラク(Horak )等、 Biomater.、8 、142-5 ページ (1987) は、放射線不透過性X線画像化のマーカー化合物として有効なポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)のトリヨード安息香酸エステルについて開示している。ヨウ素含量は、ポリマーのコントラスト、体積、機械的特性、および疎水性に影響を及ぼすと報告された。ヨウ素含量を最適化することにより、放射線のコントラストおよび膨張能力を含めた特性の適切なバランスが得られた。この材料は主鎖を通して分解するのではなく、エステル側鎖にヨウ素原子が位置するために、この材料もまた、側鎖のエステル分裂が起こると放射線不透過性を失う。
【0010】
キャバッソ(Cabasso )等、J. AppI. Polym. Sci.、38、1653-66 (1989)は、ポリ(メチルメタクリレート)とウラン塩である硝酸ウラニルとの、放射線不透過性で混和可能なポリマー配位錯体の製造方法について開示している。ポリマーは主鎖を通して分解するのではなく、硝酸ウラニル錯体の生体適合性については報告されていない。またインビボにおける同錯体の長期安定性は未だ確立されていない。
【0011】
キャバッソ(Cabasso )等、J. Appl. Polym. Sci.、41、3025-42 (1990)は、臭化ビスマスおよび六水化物ウラニルと、ポリマーとの放射線不透過性配位錯体の製造方法について開示している。ポリマーは、グリセロール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ペンタエリスリトール、およびジペンタエリスリトール等のポリオール由来の1,3−ジオキサラン部分を含むアクリル化ホスホリルエステルから製造される。ホスホリルの群は、ビスマス塩およびウラン塩に強く配位する部位を与えると共に、硬質組織に対する接着特性を与えるように選択された。予備的な生体適合性のデータによれば十分な成績が示されたが、ポリマーは主鎖を通して分解されず、錯体のインビボにおける錯体の長期安定性は報告されていない。
【0012】
ジャヤクリシュナン(Jayakrishnan)等、J. Appl. Polvm. Sci.44 、743-8 (1992)は
、トリヨードフェニルメタクリレートの放射線不透過性ポリマーおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートのヨータラム酸エステルの放射線不透過性ポリマーについて開示している。モノマーの側鎖にかさばったヨウ素原子が存在するために、有効な分子量のポリマーは得られなかった。架橋剤の存在下で、ヨウ素化モノマーを25%までの割合で組み込むようにして、ヨウ素化していない類似体とのコポリマーを得ることが可能であった。予備的な生体適合性のデータによれば、トリヨードフェニルメタクリレートが存在すると血液の溶血が起こることが示された。さらに、これらの材料も、主鎖を通して分解するのではなく、側鎖にヨウ素原子が位置するために、側鎖のエステル分裂が起こった場合に、放射線不透過性を失うであろう。
【0013】
クラフト(Kraft )等、Biomater. 、18 31-36 (1997) は、放射線不透過性ヨウ素含有ポリ(メチルメタクリレート)の製造方法について開示している。そのモノマーは、2−ヒドロキシメチルメタクリレートのオルト−およびパラ−ヨード安息香酸エステル2,3,5−トリヨード安息香酸エステル、ならびにメチルメタクリル酸のパラ−ヨードフェニルエステルであった。モノマーは1種以上の非ヨウ素化類似体および少量の架橋剤と共重合され、様々なヨウ素含量を有するポリマーヒドロゲルを生成した。皮下組織はヒドロゲルに対して十分に耐性があり、ヨウ素の存在によってヒドロゲルの膨張能力が激しく変化されることはないことが報告された。インプラントはすべて繊維性のカプセルに包んだが、組織の壊死、膿瘍の形成、または急性の炎症は認められなかった。しかしながら、これらの材料も、主鎖を通して分解するのではなく、エステル側鎖にヨウ素原子が位置するために、側鎖のエステル分裂が起こった場合に、放射線不透過性を失う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現時点では、上述のチロシン由来のポリマーのような、ポリマー主鎖を通して分解する放射線ポリマーを与えるのに利用可能な方法は存在しない。医療インプラントを目的とした利用のためには、放射線不透過性は重要な特性である。上述のチロシン由来のような、主たるポリマー鎖を通して分解する放射線不透過性ポリマーに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような要求は、本発明によって満たされる。ジヒドロキシモノマーの芳香族環のヨウ素化または臭素化により、生じたポリマーが放射線不透過性を有するようになることが、本発明において見出された。重要なのは、生じたポリマーが、良好な機械的特性およびエンジニアリング特性を示すと同時に、インビボで移植した後に比較的毒性のない産物へと分解するということである。
【0016】
一般に、核種がX線を吸収する能力は原子番号に直接関係し、以下の関係により近似される。
m=kl34+0.2
式中、mは吸収率、lは入射X線の波長、ZはX線を吸収する核種の原子番号、kは比例定数である。ヨウ素原子および臭素原子は、質量が大きいため、X線を散乱させると共に放射線不透過性を与える。このことは非常に重要であり、これにより臨床医は、放射線不透過性ポリマーより製造された任意の移植後の装置を、簡単なX線画像化により透視できるようになる。
【0017】
このように、ジヒドロキシモノマーをヨウ素化および/または臭素化した誘導体を製造および重合して、放射線不透過性ポリカーボネートおよびポリアリレートを形成することが可能である。それらのモノマーは、ポリ(酸化アルキレン)および別のジヒドロキシモノマーと共重合することも可能である。さらにヨウ素化および臭素化ジヒドロキシモノマーは、別のポリマー生体適合材料に対する放射性不透過な生体適合性の非毒性添加剤として使用することができる。
【0018】
したがって、本発明の1態様によれば、化学式Iの構造を有する、ポリマー生体適合材料用のジフェノール放射線不透過性非毒性添加剤が与えられる。
【0019】
【化1】


化学式Iは、1以上の臭素またはヨウ素原子で置換された化合物であり、X1およびX2の各々は独立してヨウ素原子または臭素原子、Y1およびY2の各々が独立して0乃至2(Y1およびY2の一方が0の場合、他方は1または2である)であり、R9は18個以
下の炭素原子を有する基である。好ましくはR9はその構造の一部としてカルボン酸基ま
たはカルボン酸エステル基を含み、同エステルは、R9の残りの部分以外の18個以下の
炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキルおよびアルキルアリル基と、ジフェノールと共有結合するR9の炭素の中にはやはり含まれない生物活性および薬剤活性のある化合
物のエステル誘導体と、から選択される。R9はヨウ素、臭素、窒素、および酸素などの
非炭素原子を含んでいてもよい。
【0020】
特に、R9は、天然のアミノ酸であるチロシン、桂皮酸、または3−(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロピオン酸の誘導体に関連する構造を有しうる。この場合、R9は化学式II
に示した特定の構造をとる。
【0021】
【化2】


0 は(−CH=CH−)、(−CHJ1−CHJ2−)、および(−CH2−)dから選択され、R4 は(−CH=CH−)、(−CHJ1−CHJ2−)、および(−CH2−)aから選択され、aおよびdは独立して0乃至8(0および8を含む)、J1およびJ2は独立してBrまたはIである。ZはH、遊離カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドである。Zは好ましくは、化学式IVの構造を有する垂下した基である。
【0022】
【化3】


式中、Lは水素と、18個以下の炭素原子を含有する直鎖および分岐鎖のアルキルおよびアルキルアリルと、ジフェノール化合物と共有結合する生物活性および薬剤活性のある化合物の誘導体とから選択される。
Zは化学式IVaの構造を有する垂下した基でもあり得る。
【0023】
【化4】


式中、Mは−OH、−NH−NH2、−O−R10−NH2、−O−R10−OH、−NH−R10−NH2、−NH−R10−OH、
【0024】
【化5】


、C末端の保護基、アミド結合により垂下した官能基に共有結合した生物活性または薬剤活性な化合物の誘導体から選択され、誘導体にしていない生物活性または薬剤活性な化合物において、第1級アミンまたは第2級アミンが誘導体のアミドの位置に存在する。
Zは化学式IVbの構造を有する垂下した基でもあり得る。
【0025】
【化6】


式中、MはR3により垂下した官能基と共有結合した生物活性および薬剤活性な化合物の
誘導体であり、R3は、誘導体にしていない生物活性および薬剤活性な化合物中に、アル
デヒドまたはケトンがR3によって垂下した官能基と結合される位置に存在する場合には
−NH−NH−と、誘導体にしていない生物活性および薬剤活性な化合物中に、カルボン酸がR3によって垂下した官能基と結合される位置に存在する場合には−NH−NH−、
−NH−R10−NH−、−O−R10−NH−、−O−R10−O−と、誘導体にしていない生物活性および薬剤活性な化合物中に、第1級または第2級アミンもしくは第1級ヒドロキシルがR3によって垂下した官能基と結合される位置に存在する場合には
【0026】
【化7】


とから選択される。
10は2乃至6個の炭素原子を含むアルキル基、芳香族基、α−、β−、γ−、ω−アミノ酸およびペプチド配列から選択される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、化学式IIIの構造を有する、ポリマー生体適合材料用の放射性不透過な生分解性の非毒性ジヒドロキシ添加剤が与えられる。
【0028】
【化8】


化学式IIIは、1以上の臭素またはヨウ素原子で置換されると共にアミド結合によりα−、β−、または γ−ヒドロキシ酸もしくはそれらの誘導物と結合されたチロシンの誘導体に関連する構造を有するジヒドロキシ化合物を示する。X2は各々独立してヨウ素
または臭素原子、Y2は1または2、R5およびR6は各々独立してH、臭素、ヨウ素ならびに18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基から選択される。R0
は(−CH2−)d、−CH=CH−または(−CHJ1−CHJ2−)であり、R15は(−CH2−)m、−CH=CH−、または(−CHJ1−CHJ2−)であり、J1およびJ2は独立してBrまたは I 、dおよびmは独立して0乃至8(0および8を含む)である。Zは化学式IIに関して上述したのと同様である。
【0029】
本発明の別の態様によれば、化学式IaおよびIIIaにより定義されたモノマー反復ユニットを有する放射線不透過性生体適合性ポリマーが与えられる。
【0030】
【化9】

【0031】
【化10】


化学式Iaは、X1、X2、Y1、Y2、およびR9が化学式Iに関して上述したのと同じ
である場合、ジフェノールユニットを示す。化学式IIIaは、X2、Y2、R0、R5
6、R15、およびZが化学式IIIに関して上述したのと同じである場合、芳香族ジヒ
ドロキシユニットを示す。
【0032】
本発明のコポリマーは化学式IbまたはIIIbに定義された第2のジヒドロキシユニットを有する。
【0033】
【化11】

【0034】
【化12】


化学式Ibのジフェノールサブユニットにおいて、R12は、好ましくは垂下した遊離カルボン酸基もしくはそのエステルまたはアミドで置換された、18個以下の炭素原子を有するアルキル、アリルまたはアルキルアリル基であり、同エステルまたはアミドは、R12の残りの部分以外の18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキルおよびアルキルアリルエステルと、ポリマーと共有結合するR12の炭素の中にはやはり含まれない生物活性および薬剤活性のある化合物のエステル誘導体と、から選択される。R12は窒素、および酸素などの非炭素原子を含んでいてもよい。特に、R12は、天然のアミノ酸であるチロシン、桂皮酸、または3’(4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸の誘導体に関連する構造を有しうる。
【0035】
チロシン、3’(4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、および桂皮酸の誘導体に関して、R12は、R0 が−CH=CH−または(−CH2−)dであり、R4 が−CH=CH−または(−CH2−)aであり、aおよびdは独立して0乃至8(0および8を含む)である、化学式IIに示した特定の構造をとる。Zは化学式IIに関して上述したのと同じである。
【0036】
化学式IIIbのジヒドロキシサブユニットにおいて、R16およびR17は各々独立してHまたは18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基、R18は−CH=CH−または(−CH2−)d、d およびeは各々独立して0乃至8(0および8を含む)である。Zはやはり化学式IIに関して上述したのと同じである。
【0037】
本発明のいくつかのポリマーは化学式VIIで定義されるようなポリ(酸化アルキレン)のブロックも含みうる。式VIIにおいて、R7は独立して4以下の炭素原子を含むア
ルキレン基であり、kは約5乃至約3000の間である。
【0038】
−(O−R7k−O− (VII)

「A」と称される結合は、
【0039】
【化13】


で定義される。式中、R8は18個以下の炭素原子を含む、飽和および不飽和で置換およ
び非置換のアルキル、アリルおよびアルキルアリル基より選択される。したがって、本発明のポリマーは化学式VIIIおよびIVIIIaの構造を有する。
【0040】
【化14】

【0041】
【化15】


いずれの化学式でも、fおよびgは種々のサブユニットのモル比である。fおよびgの範囲は0乃至0.99であり得る。いずれの化学式の表示も概略的なものであり、表示されたポリマーの構造は、本質的には、異なるサブユニットがポリマー骨格中に任意のランダム配列で生じるランダムなコポリマーであるということを理解すべきである。化学式VIIIおよびVIIIaは、Aが
【0042】
【化16】


である場合、ポリカーボネートの一般的な化学的記載を提供する。化学式VIIIおよびVIIIaは、Aが、
【0043】
【化17】


である場合、ポリアリレートの一般的な化学的記載を提供する。さらに、いくつかの制限的な場合を識別可能である。例えば、g=0である場合、ポリマーは、ヨウ素または臭素で置換されたモノマー反復ユニットのみを有する。gが0よりも大きいが1よりも小さい任意の分数である場合、臭素またはヨウ素で置換されたモノマー反復ユニットと、臭素およびヨウ素を含まないモノマー反復ユニットとを特定の比率で含有するコポリマーが得られる。
【0044】
f=0である場合、ポリマーはポリ(酸化アルキレン)ブロックを含有しないであろう。ポリ(酸化アルキレン)ブロックがポリマー骨格に見出される頻度はfの価が増加するにつれて増大する。
【0045】
本発明の放射線不透過性の臭素およびヨウ素置換されたジヒドロキシ化合物は、放射線不透過性ポリマー生体適合材料と混和可能な生体適合性生分解添加剤の要求を満たすと共に、ポリマー材料の放射線不透過性を高める。それゆえ、本発明は、生体適合性生分解ポリマー基質と物理的に混合されるか、同ポリマー基質に埋設されるか、または同ポリマー
基質に分散された、本発明の放射線不透過性の臭素およびヨウ素置換ジヒドロキシ化合物をも含む。好ましくは、ジヒドロキシ化合物は基質ポリマーのモノマー反復ユニットの類似体である。
【0046】
本発明の臭素およびヨウ素含有ポリマーは放射線不透過処理可能な生体適合性生分解ポリマーの要求をも満たす。このポリマーの放射線不透過性はポリマー主鎖の分解以外のことには影響されない。それゆえ本発明は、本発明の放射線不透過性ポリマーを含有する移植可能な医療装置をも含む。本発明の放射線不透過性ポリマーは、構造的な固体ポリマーと水溶性物質とが共に使用される分野で応用される。
【0047】
本発明のポリマーは良好な薄膜形成の性質を有するように製造可能である。ポリ(酸化アルキレン)部分を有する本発明のポリマーについて観察される重要な現象は、ポリマーゲルまたは水溶性溶媒に溶解させたポリマー溶液の外観が温度依存的に転移することである。温度が上昇するにつれて、ポリマーゲルの外観は折り畳まれた状態へと転移し、他方、ポリマー溶液は一定温度かまたは一定の温度範囲内で沈殿する。ポリ(酸化アルキレン)部分を有する本発明のポリマー、特に加熱して約30℃乃至40℃での相転移を受ける同ポリマーは、薬剤放出に対する生体適合材料としておよび臨床上のインプラント材料として利用可能である。特定の用途には、接着および組織の再構成を防止する薄膜およびシートが含まれる。
【0048】
それゆえ、本発明の別の実施形態において、ポリカーボネートとポリアリレートとの放射線不透過性のポリ(酸化アルキレン)ブロックコポリマーをシート状またはコーティング状に形成して、アリー(Urry)等、Mat. Res. Soc. Svmp. Proc. 292、253-64 (1993) に記載されているような手術による接着を防止する障壁として、露出された損傷組織に使用することが可能である。本発明の放射線不透過性ポリマーシートを配置した後に、侵襲的な手術を伴わずにX線画像化を行い得る。これは特に内視鏡手術に関して有効である。それゆえ、本発明の別の態様は、本発明のポリカーボネートとポリアリレートとの放射線不透過性ポリ(酸化アルキレン)ブロックコポリマーのシートまたはコーティングを障壁として損傷した組織間に挿入することによって、同損傷した組織間の接着の形成を防止する方法を提供する。
【0049】
ポリ(酸化アルキレン)部分は本発明のポリマーの表面接着性を減小させる。化学式VIIIおよびVIIIaにおけるfの価が増加するにつれて、表面の接着性は減小する。したがって、本発明のポリ(酸化アルキレン)部分を有するポリマーコーティングは細胞の接着に抵抗性でありかつ血液と接触する表面に対する有効な非血液凝固性コーティングであるように製造可能である。この用途でも別の医療上の用途においても、このようなポリマーは細菌の接着にも抵抗性を示す。本発明はそれゆえ、fが0より大きい化学式VIIIおよびVIIIaのポリマーで表面が被覆された血液接触装置と医療インプラントとを含む。同表面は好ましくはポリマー表面である。本発明の方法は、患者の体内に、ポリ(酸化アルキレン)部分を含む本発明の上述のポリマーにより表面が被覆された血液接触装置または医療インプラントを移植する工程を含む。
【0050】
本発明のポリマーから形成された血液接触装置または移植可能な医療装置も同様に、本発明の範囲内に含まれる。このようなポリマーはポリ(酸化アルキレン)部分を含んでも含まなくてもよい。
【0051】
本発明は、X線画像化によってその位置を追跡可能な、X線コントラスト剤または薬物送達システムとして有効な本発明の放射線不透過性ポリマーから成るミクロスフェアをも含む。本発明の意味で、「X線画像化」という言葉は、X線撮影法、写真術、およびコンピューターによる X線体軸断層撮影走査法(CATスキャン)等の広く実施されている方
法を含めた、X線を使用する任意の画像化技術を本質的に含むものとして定義される。本発明の薬物送達システムの製造方法は、薬物送達のための放射線不透過性ミクロスフェアを製造するためにも使用することができる。
【0052】
本発明の別の実施形態において、ポリマーはガトウスカ(Gutowska)等、J. Biomater.
Res. 、29、811-21(1995)、ホフマン(Hoffman )、J. Controlled Release 、 6、297-305 (1987)に記載されているような部位特異的なまたは全身への薬物送達を有効にするための一定量の生物活性または薬剤活性のある化合物と組み合わされる。生物または薬剤活性な化合物は、あたかも放射線不透過性ポリマーではないかのようにポリマー基質中に物理的に混合されるか、埋設されるか、または分散される。これにより、放射線不透過性充填材料の必要性がなくなり、それによって基質ポリマーの薬剤装填能力が増加する。
【0053】
本発明の別の態様は、患者の体内へ治療上有効な量の生物活性または薬剤活性な化合物と本発明の放射線不透過性ポリマーとを組み合わせて含む移植可能な薬物送達装置を移植することによる、部位特異的なまたは全身への薬物送達方法を提供する。上述したように、生物活性または薬剤活性な化合物の誘導体は共有結合によりポリマー骨格に取り付けることが可能であり、これによって、加水分解により生物活性または薬剤活性な化合物をポリマー骨格から徐放させることが可能となる。
【0054】
化学式VIIIおよびVIIIaのポリマーのfの値を変化させることによって、本発明のポリマーの疎水性/親水性の比を少なくして、ポリマーコーティングの細胞の行動を変化させる能力を調節可能である。ポリ(酸化アルキレン)のレベルが増加すると細胞の付着、移動、および増殖が阻止され、垂下した遊離カルボン酸基の量が増加すると、細胞の付着、移動、および増殖が促進される。従って、本発明のさらに別の態様によれば、生きた細胞、組織、または生きた細胞を含有する生物の体液を本発明のポリマーと接触させることによる、細胞の付着、移動、および増殖の調節方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ウサギの大体の一部に移植された本発明の放射線不透過ポリマーピンのX線画像。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明のさらに完全な理解および他の多くの意図された効果が、本発明の原理および本発明の原理を実施するために現時点において考えられるベストモードとを開示した、以下の好ましい実施形態の詳細な説明および特許請求の範囲を参照すれば、容易に達成される。
【0057】
発明を実施するためのベストモード
本発明は、放射線不透過性がポリマー骨格中の芳香族環のうちの一部または全部を臭素およびヨウ素で置換したために得られたものである、放射線不透過性のポリカーボネートおよびポリアリレートと、それらのポリ(酸化アルキレン)ブロックコポリマーとを提供する。臭素およびヨウ素置換ポリマーは、ジヒドロキシモノマーの合成に先だってモノマー前駆化合物を臭素化またはヨウ素化することにより製造される。続いてジヒドロキシモノマーは、それ単独か、もしくは臭素またはヨウ素で置換されていないジヒドロキシ化合物と組み合わせて、既に確立された方法により重合される。
【0058】
特に、臭素およびヨウ素置換ジヒドロキシ化合物には、R9が上述の化学式I
に関して記載したのと同じである、化学式Iの構造を有するジフェノールが含まれる。ジフェノールは好ましくは化学式IIの構造を有する。中でも好ましいジフェノールは、R9が化学式IIの構造を有し、その化学式IIにおいてR4が−CH2−または−CHJ1
CHJ2−であり、R0が−CH2−または−CH2−CH2−の化合物である。最も好まし
くは、R4が−CHJ1−CHJ2−であり、R0が−CH2−である。この最も好ましい化
合物は、デスアミノチロシル−チロシンとして知られている臭素およびヨウ素置換されたチロシンジペプチド類似体と、そのアルキルおよびアルキルアリルエステルである。この好ましい群において、ジフェノールはN末端アミノ基が除去された、チロシル−チロシンジペプチドの誘導体とみなされ得る。
【0059】
臭素またはヨウ素置換されていないジフェノール化合物は化学式Icの構造を有する。
【0060】
【化18】


式中、R1 2は化学式Ibに関して上述したのと同じである。R12は好ましくは化学式I
Iに示される構造を有し、化学式IIにおいて、R0 は−CH=CH−または(−CH2
−)dであり、R4 は−CH=CH−、または(−CH2−)aであり、aおよびdは独立
して0乃至8である。
【0061】
9またはR12がその構造の一部としてカルボン酸エステル基を有するジフェノールモ
ノマーの製造方法が、共同所有されている米国特許第5,587,507号および5,670,602号に開示されている。これら両特許は本明細書に援用する。好ましいデスアミノチロシルチロシンエステルは、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、およびベンジルエステルである。本発明の意味で、デスアミノチロシルチロシンエチルエステルはDTE、デスアミノチロシルチロシンベンジルエステルはDTBn、などと称される。本発明の意味で、エステルではないデスアミノチロシルチロシンの遊離カルボン酸はDTと称される。
【0062】
コモノマーと遊離カルボン酸基を交差反応することなく、垂下した遊離カルボン酸基を備えた対応ジフェノールから、遊離カルボン酸基を有するポリカーボネート、ポリアリレート、それらのポリ(酸化アルキレン)コポリマーを重合することは不可能である。従って、DTBn等のベンジルエステルジフェノールモノマーのホモポリマーまたはコポリマーである、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびそれらのポリ(酸化アルキレン)コポリマーは、同時係属すると共に共同所有されている1998年4月7日に出願された米国特許出願番号第09/056,050号に開示のパラジウム触媒水素化分解法によるベンジル基の選択的除去により、対応の遊離カルボン酸ホモポリマーおよびコポリマーに変換され得る。同出願は本明細書に援用する。触媒作用による水素化分解は、ポリマー骨格の能力ではより厳しい加水分解法の使用が防止されるため、必要とされる。
【0063】
臭素およびヨウ素置換ジヒドロキシ化合物には、化学式IIIの構造を有する脂肪族−芳香族環のジヒドロキシ化合物も含まれる。化学式IIIにおいて、R0、R5、R6、R15、X2、Y2およびZは化学式IIIに関して上述したのと同じである。中でも好ましい脂肪族−芳香族環のジヒドロキシ化合物は、R15が(−CH2−)mであり、mが0であり、Y2が1であり、R5およびR6が好ましくは独立して水素およびメチルから選択される化学式IIIの化合物である。Zは好ましくは、Lが水素もしくはエチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、またはベンジル基である化学式IVの構造を有する。Lはより好ましくは水素もしくはエチルまたはベンジル基である。R5およびR6が水素、R15が(−CH2
−)mであり、m=0の場合、ジヒドロキシ化合物はグリコール酸に由来する。R15が同
じで、R5が水素、R6がメチルの場合、ジヒドロキシ化合物は乳酸に由来する。グリコール酸または乳酸に由来するジヒドロキシ化合物は特に好ましい。
【0064】
臭素またはヨウ素で置換されていない脂肪族−芳香族環ジヒドロキシ化合物は化学式IIIcの構造を有する。
【0065】
【化19】


式中、R16、R17、R18、R19およびZは式IIIbに関して上述したのと同じである。好ましくは、R18は(−CH2−)d、dは0であり、R16およびR17は独立して水素およびメチルから選択される。より好ましくはR16およびR17の一方が水素であり、他方がメチルである。好ましいZの種は式IIIに関して上述したのと同じである。
【0066】
本発明の臭素およびヨウ素置換ジヒドロキシモノマーは、化学式IおよびIIIに示したモノマー化合物を製造するための過度な実験が不要な、当業者には容易に利用可能なよく知られているヨウ素化および臭素化技術によって製造される。本発明のジヒドロキシモノマーを製造可能な置換フェノールは、オルト配向のハロゲン化を受ける。このため、メタ−ヨウ素化および臭素化ジヒドロキシモノマーは容易に製造されず、三ヨウ素化−および三臭素化−フェニル化合物については記載しなかった。仮にこれらの有効な合成方法が発見されたとするならば、このような化合物は本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0067】
ヨウ素および臭素置換ジフェノールモノマーは、例えば、一方または両方のフェノール環がヨウ素または臭素で置換された2つのフェノール化合物を共に結合させることにより製造可能である。より詳しくは、上記に援用した米国特許第5,587,507号および5,670,602号に記載の方法によって、一方または両方が臭素またはヨウ素で置換されたデスアミノチロシンとチロシンアルキルエステルとを用いて、デスアミノチロシルチロシンエステルを製造可能である。特に好ましい実施形態において、デスアミノチロシンをフェノール環のオルト位で一ヨウ素化したのちチロシンアルキルエステルと結合し、ヨウ素置換ジフェノールモノマーを得る。
【0068】
本発明のヨウ素および臭素置換脂肪族−芳香族ジヒドロキシモノマーは、ヒドロキシ酸およびジフェノールの一方または両方がヨウ素または臭素で置換された、α−、β−、またはγ−ヒドロキシ酸とフェノール化合物とを結合させることにより製造される。例えば、先に援用した国際出願公開番号第98/36013号に記載の方法により、チロシンアルキルエステルを、フェノール環のオルト位で一ヨウ素化した後にα−、β−、またはγ−ヒドロキシ酸と結合し、ヨウ素置換脂肪族−芳香族ジヒドロキシモノマーを得る。
【0069】
垂下した遊離カルボン酸基を有する、ポリカーボネート、ポリアリレート、それらのポリ(酸化アルキレン)ブロックコポリマーも、コモノマーと交差反応するために、垂下した遊離カルボン酸基を有する脂肪族−芳香族ジヒドロキシモノマーから重合できない。ZのLが水素でない化学式IIIおよびIIIcの脂肪族−芳香族ジヒドロキシモノマーの製造方法が、共同所有されている国際特許出願公開第98/36013号に開示されており、この出願の開示は本明細書に援用する。ZのLは好ましくは、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチルまたはベンジル基である。ポリカーボネート、ポリアリレートおよび垂下した遊離カルボン酸基を有するそれらのポリ(酸化アルキレン)コポリマーは、先に参照した米国特許出願番号第09/056,050号に記載のように製造された、ベンジルエステルを備えた対応ポリマーをパラジウム触媒による水素化分解から製造することも可能
である。触媒による水素化分解はこの仮特許出願に記載のように行うことが可能である。

【0070】
ポリアリレートおよびポリカーボネートは、単独で、またはポリ(酸化アルキレン)ブロックコポリマー中の部分として、各ジヒドロキシモノマーサブユニットがヨウ素または臭素原子を有するホモポリマーであり得る。本発明のポリマーはまた、ヨウ素および臭素を有さないジヒドロキシモノマーを有する、同じポリマーユニットのコポリマーをも含む。ポリマー内で臭素およびヨウ素原子を有するモノマーサブユニットと臭素およびヨウ素を有さないモノマーサブユニットとのモル比を変えることも可能である。
【0071】
従って、本発明のポリマーは1以上のヨウ素または臭素原子を有する反復ユニットのホモポリマーを含む。このようなホモポリマーはfおよびgが共に0である化学式VIIIおよびVIIIaの構造を有する。
【0072】
従って、本発明のポリマーは臭素およびヨウ素を有さないモノマー反復ユニットを有するコポリマーも含む。このようなコポリマーはfが0であり、gが0よりも大きいが1よりも小さい数である化学式VIIIおよびVIIIaの構造を有する。本発明のコポリマーにおいて、gは好ましくは約0.25乃至約0.75の間である。
【0073】
化学式VIIIの好ましいホモポリマーおよびコポリマーにおいて、R9は化
学式IIの構造を有し、R12は化学式Vの構造を有する。それらの好ましい種類は、化学式IIおよび化学式Vに関して上述したのと同じである。
【0074】
化学式VIIIおよびVIIIaのAが、
【0075】
【化20】


である場合、本発明のポリマーはポリカーボネートである。fが0の場合、本発明のヨウ素および臭素置換ポリカーボネートホモポリマーおよびコポリマーは米国特許第5,099,060号に記載の方法および1997年6月27日に出願された米国特許出願番号第08/884,108号に方法により製造可能である。これらの両方の開示も本明細書に援用する。記載された方法は本質的に、ジヒドロキシモノマーをポリカーボネートに重合する従来の方法である。適当な工程、関連する触媒および溶媒は当該技術分野において公知で、シュネル(Schnell )、Chemistry and Physics of Polycarbonates, (Interscie nce、New York 1964)に教示されており、この教示は本明細書に援用する。
【0076】
f=0である本発明のポリカーボネートホモポリマーおよびコポリマーは、更に補正を行うことなくポリスチレンスタンダードに対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、約20,000乃至約400,000ダルトン、好ましくは約100,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0077】
化学式VIIIおよびVIIIaのAが、
【化21】


である場合、本発明のポリマーはポリアリレートである。ヨウ素および臭素置換した本発明のポリアリレートホモポリマーおよびコポリマーは、米国特許第5,216,115号に記載の方法によって製造可能である。この特許において、ジヒドロキシモノマーを、カルボジイミド媒介直接ポリエステル化において、触媒として4−(ジメチルアミノ)ピリジウム−p−トルエンスルフォネート(DPTS)を用いて、脂肪族または芳香族のジカルボン酸と反応させて、脂肪族または芳香族の ポリアリレートを形成する。この特許の開示は本明細書に援用する。R8は交差反応する官能基と置換すべきでないことに留意す
る。
【0078】
本発明のポリアリレート材料を重合可能なジカルボン酸は、化学式Xの構造を有する。
【化22】


式中、脂肪族ポリアリレートに関して、R8は18個以下の炭素原子を含有する
飽和および不飽和の置換および非置換のアルキル基から選択され、炭素原子数は好ましくは4乃至12である。芳香族ポリアリレートに関して、R8は18個以
下の炭素原子を含有するアリルおよびアルキルアリル基から選択されるが、炭素原子数は好ましくは8乃至14である。ここでもまた、R8は交差反応する官能
基と置換すべきでない。
【0079】
8は、さらにより好ましくは、ポリアリレート出発物質を重合可能なジカル
ボン酸が、重要な天然の代謝産物であるかまたは非常に生体適合性の高い化合物であるように、選択される。それゆえ、好ましい脂肪族ジカルボン酸には、クレブス回路としてよく知られている細胞の呼吸経路の中間生成物であるジカルボン酸が含まれる。これらのジカルボン酸には、α−ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、およびオキザロ酢酸が含まれる。他の好ましい生体適合性脂肪族ジカルボン酸には、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、およびアゼライン酸が含まれる。好ましい芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、およびビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン等のビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンがある。別の言い方をすれば、R8はより好ましくは、−CH2−C(=O)−、−CH2−CH2−C(=O)−、−CH=CH−および(−CH2−)z、zが0乃至8(0および8を含む)、から選択された一部分である。
【0080】
本発明のヨウ素および臭素置換ポリアリレートホモポリマーおよびコポリマーは、更に補正を行うことなくポリスチレンスタンダードに対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、約20,000乃至約400,000ダルトン、好ましくは約100,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0081】
本発明のヨウ素および臭素置換ポリカーボネートおよびポリアリレートには、fが0よりも大きいが1よりも小さい化学式VIIIまたはVIIIaの構造を有するポリ(酸化アルキレン)を備えたランダムブロックコポリマーも含まれる。この様々な種類および好
ましい実施形態は化学式VIIIおよびVIIIaに関して上述したのと同じであるが、但し、fが0ではなく、gに対する値が1よりも小さく、gが0より大きくても大きくなくてもよい所が異なっている。
【0082】
ブロックコポリマー中の酸化アルキレンのモル分数fは、約0.01乃至約0.99の範囲内にある。好ましいブロックコポリマーについて、R7はエチレン
、kは約20乃至約200の間、ブロックコポリマー中の酸化アルキレンのモル分数fは約0.05乃至約0.75の範囲にある。R7はポリマー中の2以上の
異なるアルキレン基を表してもよい。
【0083】
本発明のブロックコポリマーは、米国特許第5,658,995号に記載の方法により製造可能であり、この特許の開示は、本明細書に援用する。ブロックコポリマーは約20,000乃至約400,000ダルトン、好ましくは約100,000ダルトンの重量平均分子量を有する。ブロックコポリマーの数平均分子量は好ましくは、約50,000ダルトンを超える。分子量の決定は、更に補正を行うことなくPEGスタンダードに対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される。
【0084】
垂下したカルボン酸アミドまたはエステル基を有する本発明のホモポリマーおよびコポリマーに関して、同アミドまたは同エステル基は電子対を共有する生物活性または薬剤活性な化合物のアミドまたはエステル誘導体であり得る。共有結合は、誘導体にしていない生物活性または薬剤活性な化合物において、第一級アミンまたは第二級アミンが誘導体のアミド結合の位置に存在する場合は、アミド結合によるものである。共有結合は、誘導体にしていない生物活性かまたは薬剤活性な化合物において、第一級ヒドロキシが誘導体のエステル結合の位置に存在する場合の、エステル結合によるものである。生物活性または薬剤活性な化合物はケトン、アルデヒド、またはカルボン酸基において化学式IIIaの連結部分R3のような、コポリマーまたはジフェノールとアミド結合またはエステル結合
によって共有結合された連結部分により、誘導体にされてもよい。
【0085】
遊離のカルボン酸基につながれたポリマーに種々の薬剤およびリガンドを付着させる詳細な化学的方法が、文献に記載されている。例えば、米国特許第5,219,564号、同第5,660,822号、;ネイサン(Nathan)等、Bio. Cong. Chem.、4 、54-62 (1993) およびネイサン(Nathan)、Macromolecules、25、44-76 (1992)を参照されたい。両雑誌における2つの特許の開示は、本明細書に援用する。これらの刊行物は、垂下する遊離カルボン酸基を有するポリマーが反応性官能基を有する部分と反応させる方法や、同部分を活性な官能基を有するように誘導してポリマー共役体を形成する方法について開示している。
【0086】
反応の順序は逆転可能である。同部分をまず初めに、垂下した遊離カルボン酸基を有するモノマーに付着させてから、それを重合して、垂下した遊離カルボン酸基の100%が付着部分を有するポリマーを形成することが可能である。
【0087】
垂下した遊離カルボン酸基を有するポリマーをまず初めに重合してから生物活性または薬剤活性な化合物もしくはその誘導体と反応させて、ポリマー共役体を形成した場合、垂下した遊離カルボン酸基の必ずしも全部が共有結合で付着された生物活性または薬剤活性な化合物を有するとは限らない。一般に、共役体は、生物活性または薬剤活性な化合物が約25%以上の垂下した遊離カルボン酸基に付着するように形成される。
【0088】
本発明に関して使用するのに適した生物活性または薬剤活性な化合物の例には、アシクロビル、セファラディン、マルファレン、プロカイン、エフェドリン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、プラムバジン、アトロピン、キニーネ、ジゴキシン、キニジン、生物活
性ペプチド、クロリンe6、セファラディン、セファロチン、プロリンおよびシス−ヒド
ロキシ−L−プロリン等のプロリン類似体、メルファラン、ペニシリンV、アスピリン、ニコチン酸、ケモデオキシコール酸、クロラムブチル等が含まれる。本発明の意味の生物活性な化合物は、細胞付着の媒介物質および生物活性リガンド等を含むものとして追加して定義される。生物活性化合物は当業者によく理解されている方法により、ポリカーボネートまたはポリアリレートコポリマーと共有結合される。薬物送達化合物もまた、生物活性かまたは薬剤活性な化合物を物理的に混合し、本発明のポリマーと共に送達されるように、形成可能である。いずれにせよ、本発明のポリマーは、X線コントラストを与える充填材料を使用しなくてもX線画像化により薬物送達を監視可能にする手段を提供する。
【0089】
本発明の意味で、Z中のアルキルエステルおよびアミド基は、二重結合を有する分子(例えば、アクリル酸誘導体)のような、垂下したカルボン酸基にポリマーの強度を増加させる架橋を形成するために付着可能な、架橋部分を含むものとしても定義される。
【0090】
上述のように、本発明のポリマーは選択的された反復サブユニットの位置でヨウ素または臭素により置換されている。 本発明の意味で、ホモポリマー(化学式VIIIまたはVIIIa、x=0) は各サブユニットにヨウ素または臭素を含むものとして定義される。これらのホモポリマーはポリ酸化アルキレンブロックを含んでもよいポリカーボネートまたはポリアリレートであり得る。このホモポリマーは多くの薬剤活性および生物活性を有し得る新規の放射線不透過性ポリマーとして最良に記載される。同様に、本発明の意味で、コポリマー(化学式VIIIまたはVIIIa、0<x<1)はジフェノールサブユニットのいくつかにヨウ素または臭素を含むものとして定義される。これらのコポリマーはやはり同様にポリ酸化アルキレンブロックを含んでもよいポリカーボネートまたはポリアリレートであり得る。
【0091】
本明細書に記載した発明は本発明のポリマーを含む種々の薬剤投与形式をも含む。その薬剤投与形式には、従来から認められている、例えば錠剤、カプセル、経口液および経口溶液、ドロップ、腸管外溶液および腸管外懸濁液、乳剤、経口粉末、吸入液または吸入粉末、エーロゾル、局所溶液、懸濁液、乳剤、クリーム、ローション、軟膏、経皮液等が含まれる。
【0092】
薬剤投与形式には、1以上の薬剤学的に許容可能な担体が含まれ得る。この担体材料は使用用量および使用濃度おいてレシピエントに無毒であり、希釈剤、安定化剤、潤滑剤、懸濁剤、カプセル封入剤、浸透増強剤、溶媒、皮膚軟化薬、濃縮剤、分散剤、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩および他の有機酸塩等の緩衝液、アスコルビン酸等の抗酸化剤、防腐剤、ポリアルギニン等の低分子量(10残基より小さい)ペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質、ポリ(ビニルピロリドン)等の他の疎水性ポリマー、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン等のアミノ酸、セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリン等の、単糖類、二糖類、および他の炭水化物、EDTA等のキレート試薬、マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール、ナトリウム等の対イオン、およびトゥイーン、プルロニクス、またはPEG等の非イオン性界面活性剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0093】
本発明の薬剤ポリマー組成物は、その組成物がポリマーと薬剤との共役体の形をしているかポリマーと薬剤とが物理的に混合された形をしているかに関わらず、局所的な薬物送達が望まれる用途に適していると同時に、全身への薬物送達が望まれる状況にも適している。ポリマーと薬剤との共役体も、それらの物理的混合物も、必要な場合に、本質的に従来の当業者によく知られている方法によって、患者の体内に移植可能である。
【0094】
生物活性または薬剤活性な化合物が共役された形で活性な場合には、加水分解に安定な
共役体が利用される。生物活性または薬剤活性な化合物が共役された形では不活性な場合には、加水分解可能な共役体が利用される。ポリ(酸化アルキレン)の特性は、ポリマーおよびその共役体の特性に影響を与える。
【0095】
本発明のポリマーとプロリンおよびシス−ヒドロキシ−L−プロリンを初めとするプロリン類似体との共役体は、米国特許第5,660,822号に開示された治療方法に使用可能である。この特許の開示は、本明細書に援用する。
【0096】
薬剤とポリマーとの物理的混合物は、当業者によく知られている従来の方法を用いて調製可能である。この薬物送達の実施形態について、ポリマーは垂下した遊離カルボン酸基を有しなくてもよい。
【0097】
ポリマー−薬剤共役体に組み込まれる薬剤成分や、本発明の物理的混合物を、生理学的に許容可能な担体、賦形安定化剤等に加えてもよいし、本発明において製造したポリマー調剤を補助する徐放性の調剤に加えてもよい。水溶液に分散させるための先に挙げた担体および希釈剤はポリマー−薬剤共役体および物理的混合物と共に使用するのにも適している。
【0098】
本発明のポリマー−薬剤の組合せを用いた治療が必要な対象には、最良の効果を与える薬剤量が投与される。治療が必要な対象とは、一般にホ乳類である。投与量および投与方法は投与する対象によって変化させる。投与量および投与方法は、治療するホ乳類の種類、性別、体重、食事、同時に行っている薬物療法、全体的な臨床条件、使用する特定の化合物、これらの化合物を使用する特定の使用方法、およびおよび医療の分野における当業者に認識されている他の要因等の要因によって左右される。本発明のポリマー−薬剤の組合せは、薬剤活性を保存すると共にポリマーの完全さを維持するために適切な条件下で貯蔵されるよう製造可能である。また、本発明のポリマー−薬剤の組合せは、室温または冷蔵温度で貯蔵するのに一般に適する。
【0099】
エーロゾルの調剤は、鼻または口から吸入する目的に適しており、粉末形式でも溶液形式であってもよく、圧縮ガス、一般には圧縮空気と組み合わせてもよい。さらに、エーロゾルは局所的に使用可能である。一般に、局所的調剤は、一日一回、一日に3乃至4回まで、影響を及ぼす部位に適切な用量を適用できるように調製される。
【0100】
選択する特定の化合物によっては、経皮的な送達が選択可能である。経皮的な送達は、比較的安定して薬物を送達するので、状況次第では好ましい方法である。経皮的送達には一般に、アルコールの賦形剤を用いたり、界面活性剤等の浸透増強剤や他の成分を任意に用いたりして、化合物を溶液に溶解して使用することが含まれる。基質および貯蔵器の種類の経皮的送達システムは、適当な経皮的システムの例である。経皮的送達は、投薬の形式によっては全身の量の薬剤を患者に送達するという点が、従来の局所的処置とは異なっている。
【0101】
本発明のポリマー−薬剤の調剤は、小さな単層の小胞、大きな単層の小胞、および多層の小胞等のリポソーム送達システムの形式で投与することも可能である。リポソームは、本明細書に記載した任意の適切な投与経路において使用可能である。例えば、リポソームは経口的に、腸管外に、経皮的に、または吸入により投与可能であるように調製され得る。このようにして、疾病部位への選択的な薬物送達により、薬物毒性を低減させることが可能である。例えば、薬物がリポソームカプセルにより包まれて、静脈注射された場合、使用されたリポソームは血管の細胞によって吸収されて、局所的に高濃度の薬物が血管壁の内部に経時的に放出され、薬物の作用が改善される。リポソームカプセルに包まれた薬物は、好ましくは腸管外、特に静脈に注射される。
【0102】
リポソームは薬物放出のための特定の部位に向けることが可能である。これは治療上有効な用量の薬物を活性部位に提供するためにしばしば必要とされる過剰な用量を不要にするため、結果として高濃度に伴う毒性や副作用を未然に防ぐことが可能となる。
【0103】
本発明のポリマーに組み込まれる薬物は、望ましくは、送達用薬剤が上述の薬物としての同じ適性基準を満たす限り、薬物の所望の薬物標的部位への全身性の送達を容易にする送達用薬剤をさらに組み込んでもよい。送達される活性薬物には、抗体、抗体断片、成長因子、ホルモンまたは薬物分子が結合する他の標的部分等がこの様に組み込まれてもよい。本発明のポリマー−薬物の組合せは、弁、ステント、管材、プロテーゼ等の成形加工した粒子に形成されてもよい。
【0104】
治療上有効な投薬量は、インビトロかまたはインビボの方法により決定可能である。本発明の特定の化合物の各々に関して、必要な最適用量を決定するために個々の決定がなされる。治療上の有効用量の範囲は、当然投与経路、治療する目的、および患者の健康状態に当然影響を受ける。様々な適当な投与経路について、吸収効率は薬理学においてよく知られている方法により各薬物に関して個別に決定されなければならない。従って、治療専門家は、最良の治療効果を得るべく必要に応じて、投薬の力価を決定すると共に投与経路を変更する必要があるかもしれない。有効用量レベル、つまり、所望の結果を得るために必要な用量レベルの決定は、当業者の想到する範囲内にある。一般に、化合物の適用は低い用量レベルから開始され、用量レベルは所望の効果が得られるまで増加されていく。本発明の調剤からの薬物放出の割合も、治療すべき治療上の状態に応じて、有効なプロファイルを決定するために当該技術分野における通常の技能の範囲内で変更される。
【0105】
一般的な用量は約0.001mg/k/g乃至約1,000mg/k/gの範囲内であり、好ましくは約0.01mg/k/g乃至約100mg/k/g、より好ましくは約0.10mg/k/g乃至約20mg/k/gである。効果的には、本発明の化合物は一日数回投与されるが、他の投与プログラムも有効である。
【0106】
本発明の方法を実施する際、ポリマー−薬物の組合せは単独で使用してもよいし、他の治療用または診断用薬剤と組み合わせて使用してもよい。本発明の化合物は、通常、人を初めとする霊長類、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、およびマウス等のホ乳類にインビボで使用することもできるし、インビトロで使用することもできる。
【0107】
本発明のポリマーは、固体物質と溶媒に溶ける物質との両方が共に使用される分野にも応用される。このような応用には、本発明のポリマーを使用して血管グラフトおよびステント、骨プレート、縫合糸、移植可能なセンサ、組織再生のための足場、および既知の期間内で無害に分解する他の治療用薬剤粒子等の成形された物質を形成することを含めた、組織エンジニアリングの応用および医療インプラントの応用におけるポリマーの足場が含まれる。成形粒子は、押し出し成形、圧縮成形、射出成形、溶剤成形、回転成形等の従来の方法より形成可能である。
【0108】
本発明のポリマーは水にも有機溶媒にも可溶である。従って、ポリマーは溶媒成形法により加工可能であり、良好な薄膜形成物である。垂下した遊離カルボン酸基を有する本発明のポリマーを用いて、先に参照した国際特許出願公開第98/36013号に開示されているように、細胞に相互作用を及ぼすことが可能である。ポリ酸化アルキレンブロックを組み込むと、ポリマー表面の接着性が減小する。fが5モルパーセントよりも大きい化学式VIIIまたはVIIIaのポリマーは細胞の付着に対して抵抗性があり、血液と接触する表面における非血液凝固性コーティングとして有効であり得る。これらのポリマーは細菌の付着にも抵抗性があり得る。したがってポリマーは従来のめっきコーティング法
またはスプレーコーティング法により、医療装置表面における血塊の形成または細菌の付着を防止する、医療装置の表面のコーティングとして形成可能である。
【0109】
ポリ(酸化アルキレン)を備えたポリマーの薄膜形成特性は、細胞付着に対する抵抗性と有効に組み合わされて、手術による接着を防止する障壁として使用される薄膜を提供する。本発明のポリマーのコーティングは、手術による接着防止用の障壁を提供するために、損傷した組織にも適用され得る。
【0110】
本発明のポリマーは構造的な固体物質と水溶性物質との両方が共に使用される分野に応用される。このような応用には、本発明のポリカーボネートおよびポリアリレートを使用して血管グラフトおよびステント、骨プレート、縫合糸、移植可能なセンサ、手術による接着防止のための障壁、移植可能な薬物送達装置、組織再生のための足場、および既知の期間内で無害に分解する他の治療用薬剤粒子等の成形された物質を形成することを含めた、組織エンジニアリングの応用および医療インプラントの応用におけるポリマーの足場が含まれる。
【0111】
産業上の利用性
医療インプラントおよび薬物送達に応用するため、本発明のポリマーから成形物質を製造可能である。同物質は放射線不透過性であり、X線コントラストを提供する充填材料を用いなくても、X線画像化を利用して監視することが可能である。
【0112】
以下に述べる、発明を制限するわけではない実施例は、本発明の特定の態様を示す。すべての部分および割合は、特記しない限りモルパーセントによるものであり、すべての温度は摂氏の℃である。溶媒はすべてHPLC等級のものとした。他のすべての試薬は分析用等級であり、受け取った状態で使用した。
【0113】
以下の実施例は3−(3−ヨード−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸−チロシンエチルエステル(DITE)の製造方法および同物質の様々なポリマー
構造への結合方法を示す。DITEの構造の中にはヨウ素が存在するため、以下
の実施例に示した物質は放射線不透過性である。
【0114】
実施例1:DITEの合成 DITE、つまり3−(3−ヨード−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
−チロシンエチルエステルは2つのフェノール環のうちの1つの3位の位置に1つのヨウ素原子を有するビスフェノールである。この2つの機能を有する分子は以下の実施例に示すように重合可能である。実施例は、ヨウ素原子を芳香族環である(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸に導入するために使用される方法と、このヨウ素化した誘導体をチロシンエチルエステルと結合してDITEを得
る方法とについて説明する。
【0115】
溶液(a)の調製:250mLの三角フラスコに100mLの蒸留水、24gのヨウ化カリウム、および25gのヨウ素を加えた。その混合物を、すべての固体が溶解するまで一晩撹拌した。
【0116】
溶液(b)の調製:16.6g(0.1モル)のDATを3カ所に首部のあるモートン型丸底フラスコに配置し、オーバーヘッド型撹拌装置および125mL添加漏斗を装着した。140mLの40%トリメチルアミン水溶液を加え、その混合物を、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0117】
溶液(a)を添加漏斗の中に配置し、勢いよく撹拌させながら一滴ずつ溶液(b)に加
えた。溶液(a)を一滴ずつ加えると、反応混合物は褐色を呈した。溶液(a)の添加速度は、次の一滴を加える前に色がすべて消えるような速度とした。最後の添加が終わった後、1時間撹拌を続け、50mLのチオ硫酸ナトリウム0.1Mを反応容器に加えた。同じ溶液を用いて添加漏斗を洗浄した。
【0118】
37%HClを、溶液がリトマスでわずかに酸性になると共に固体が形成されるまで、勢いよく混合させながら一滴ずつ加えた。回転蒸発により体積が半分になるまで混合物を濃縮し、エーテルで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムに通じて乾燥させ、獣炭を用いて脱色した。次にスラリーをシリカゲルの薄層に通して濾過し、蒸発により乾燥状態にした。白色固体をトルエン中で2回再結晶し、濾液から回収し、窒素流下で乾燥させてから、高い真空下で乾燥させた。
【0119】
特性決定:DSC分析より、融点の範囲が109−111℃であることが示された。生成物の1H−NMR(DMSO)より、以下のピーク(ppm)が示された:2.5(t
、2H)、2.7(t、2H)、6.8(d、2H)、7.06(d、2H)、10.08(s、1H)、12.05(s、1H)。逆相HPLCより、3.8%DAT(出発物質)、1.4%二ヨウ素化生成物の存在が示された。
【0120】
工程2:3−(3−ヨード−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸−チロシンエチルエステル(DITE)の製造
オーバーヘッド型撹拌装置を装着した、250mlの3カ所に首部のある丸底フラスコに、17.0g(0.0582モル)のDiAT、12.25g(0.0585モル)のチロシンエチルエステル、および25mLのNMPを加えた。透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。フラスコを氷水浴で冷却し、11.84g(0.0619モル)のEDCl HClを一部分に加えてから、15mLのNMPを加えた。2.5時間後に冷却用の浴容器を除去し、室温で一晩反応させ続けた。71mLの酢酸エチルを加えて、更に15分間撹拌した。粗生成物を500mLの分離漏斗に移し、75mLの食塩水で1回抽出し、次に、3%NaHCO3/14%NaClの2つのアリコート(75mLおよび3
5mL)で抽出した後、0.4M HCl/14%NaClの35mLアリコートで抽出し、最後に食塩水で抽出した。有機相を硫酸マグネシウムに通じて乾燥させ、活性炭で処理し、濾過して濃いシロップに濃縮した。これは数時間後、固体の塊に晶析した。生成物を機械的撹拌装置を用いて塩化メチレン中で粉砕し、それを濾過により回収し、窒素流下、それから高真空下にて乾燥させた。
【0121】
特性決定:DSC分析より、融点の範囲が110−113℃であることが示された。生成物の1H−NMR(DMSO)より、以下のピーク(ppm)が示された:1.1(t
、3H)、2.35(t、2H)、2.65(m、2H)、2.85(m、2H)、4.05(q、2H)、4.35(m、1H)、6.65/6.75/6.95(m、6H)、7.5(s、1H)、8.25(d、1H)、9.25(s、1H)、10.05(s、1H)。逆相HPLCより、2.2%DTE(非ヨウ素化モノマー)の存在が示され、二ヨウ素化物は見出されなかった。
【0122】
実施例2:溶液重合によるポリ(DITEカーボネート)
この物質は、実施例1で得られたDITEとホスゲンとを反応させることによって得ら
れるポリカーボネートである。
ITEのホスゲンとの重合
機械的撹拌装置と添加漏斗とを装着した、250mlの3カ所に首部のある丸底フラスコを、窒素で15分間清掃した。7.62g(15.8モル)のDITEを加えてから3
9mLの塩化メチレンおよび4.79mLの蒸留ピリジンを加えた。透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌し、次に、氷水浴で冷却した。9.8mLの20%ホスゲン溶液(ト
ルエンに溶解)を添加漏斗に配置し、添加全体が1.5時間で完了するように一定速度で反応フラスコに加えた。混合物をさらに1時間撹拌してから、200mLTHFに希釈した。溶液を濾過漏斗に通して過剰量のエーテル中に滴下させることにより、ポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーをエーテルで洗浄し、蒸発皿に移し、窒素流下で一晩乾燥させた。これを再びTHFに溶解させ、高速ブレンダーを用いて、水/氷混合物中にて再び沈殿させた。次に生成物を窒素流下で乾燥した後、真空にして40℃で乾燥させた。
【0123】
特性決定:生成物の組成は元素分析により確認した。%C=50.60(理論値49.52)、%H=4.21(理論値3.96)、%N=2.65(理論値2.75)、%I=24.01(理論値24.92%)。多分散度が1.8で104Kという分子量は、ポリスチレン標準に対するTHFにおけるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。DSC分析より、Tgは103.8℃であることが示された。生成物の1H−N
MR(DMSO−D6)より、以下のピーク(ppm)が示された:1.1(t、2H)
、2.4(広幅、2H)、2.75(広幅、2H)、3.0(広幅、2H)、4.05(q、2H)、4.45(m、1H)、7.3(m、6H)、7.8(s、1H)、8.4(d、1H)。
【0124】
実施例3:溶液重合によるポリ(DITE−5%PEG1Kカーボネート)
本実施例において、実施例2に記載したのと同様な溶液重合法によりホスゲンと反応させることにより、5モル%のPEG1000をDITEと共重合した。
得られた物質はランダムなポリカーボネートである。
【0125】
ITEとPEG1000との共重合
添加漏斗とオーバーヘッド型撹拌装置とを装着した、100mLの3カ所に首部のある丸底フラスコを、窒素で30分間清掃した。フラスコに5g(10.33ミリモル)のDITEと、0.545g(0.55ミリモル)のPEG1000とを入れてから、23m
Lの塩化メチレンおよび3.3mLのピリジンを加え、無色透明の溶液が得られるまで混合物を撹拌した。フラスコを次に氷水浴で冷却した。6.4mLの20%ホスゲン溶液(トルエンに溶解)を90分間にわたって添加漏斗から滴下した。混合物を90mLのTHEで希釈し、さらに1時間撹拌した。生成物を800mLのエチルエーテル中に沈殿させて単離し、窒素流下で乾燥した後、続いて高い真空下で乾燥させた。
【0126】
特性決定:多分散度が1.8で75,500という分子量は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。移動相としてはTHFを用いた。DSC分析より、Tgは70℃であることが示された。生成物の1H−NMR(CD
Cl3)より、以下のピーク(ppm)が示された:1.2(t、3H)、2.45(広
幅、2H)、 2.8(広幅、2H)、2.03(広幅、2H)、3.65(s、4.5PEGプロトン)、4.15(q、2H)、4.85(m、1H)、6.05(広幅、1H)、7.05/7.15(m、6H)、7.2(s、1H) 。7.05/7.15および7.2におけるピークはポリマーの芳香族の系列にヨウ素原子が存在することを示す。広幅な帯の非結合13CNMR(CDCl3)によれば全ての期待ピーク、特に、ヨウ素を
有する芳香族の炭素原子のピーク(90ppm)が示された。
【0127】
実施例4:溶液重合によるポリ(DITEアジピン酸塩)
この物質は、ヨウ素を含有するジフェノールであるDITEと、脂肪族二酸であるアジ
ピン酸塩との互い違いのコポリマーである。それらのモノマーはエステル結合によって結合されて、ポリアリレート骨格を形成する。本実施例は、カップリング剤ジイソプロピルカーボジイミド(DIPC)で促進した縮合反応によるこのコポリマーの製造方法について説明する。
【0128】
ITEとアジピン酸との共重合
オーバーヘッド型撹拌装置とを装着した、100mLの3カ所に首部のある丸底フラスコを、窒素で1時間清掃した。次にフラスコに4.349g(9.0ミリモル)のDI
E、1.315g(9.0ミリモル)のアジピン酸、1.06のジメチルアミノピリジウム p−トルエンスルフェネート(2.5ミリモル)および68mLの塩化メチレンを加えた。混合物を5分間撹拌してから、4.2mL(27ミリモル)のDIPCを一部分に加えた。混合物を一晩室温で撹拌し、反応粗生成物を濾過して、ポリマーを高速ブレンダー内で600mLの冷イソプロパノール中で沈殿させて、濾過により単離した。ポリマーを高速ブレンダー内で600mLの冷イソプロパノールおよび600mLの水/氷混合物で洗浄した。生成物を窒素流下で一晩乾燥させてから、室温にて高い真空下へ移動させた。
【0129】
特性決定:多分散度が1.9で67,100という分子量は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。移動相としてはTHFを用いた。DSC分析より、Tgは66.5℃であることが示された。1H−NMR(DMSO
−D6)より、以下のピーク(ppm)が示された:1.1(t、3H)、1.75(広
幅、4H)、2.4(広幅、2H)、2.7(広幅、6H)、2.95(広幅、2H)、4.05(q、2H)、4.45(m、1H)、7.05/7.15(m、6H)、7.7(s、1H)、8.4(d、1H)。
【0130】
実施例6:放射線不透過性ロッドの製作および移植
ヨウ素を含有する放射線不透過性ポリマーを非放射線不透過性物質と混合して、X線により検出可能な移植可能装置を製作することができる。本実施例は、ポリ(DTEカーボネート)とポリ(DiTEカーボネート)とを3種類の異なる比率で混ぜた混合物を調製する方法と、それらをロッド状に製作する方法と、それらをモデル動物に移植する方法とについて説明する。
【0131】
放射線不透過性ポリマー混合物の調製方法
ポリ(DTEカーボネート)(分子量103K)対ポリ(DiTEカーボネート)(分子量106K)の比が異なる3つの混合物を調製した。その重量比は、90/10、75/25、50/50とした。いずれの場合も、ポリマーは塩化メチレンに共に溶解させ、混合物はエーテル中で沈殿させた。
【0132】
放射線不透過性ロッドの製作および移植方法
長さ10mm、直径2mmの均質なロッドを、1800℃での融解押し出し成形により得た。ロッドをウサギの長骨に移植し、装置の放射線不透過性を確かめるために移植部位のX線写真を撮影した。ポリ(DiTEカーボネート)の含有量が増加するにつれて、放射線不透過性は増大した。
【0133】
以上述べた実施例は、実質的に任意の芳香族環を有するポリマーの環をBrおよびIによって置換することによって得られ得る放射線不透過性について示している。これらの実施例および好ましい実施形態に関する上述の説明は、例証的なものと考慮されるべきであり、特許請求の範囲によって定義される本発明を制限するものではない。容易に理解されることではあるが、上述した特徴に関する多くの変形および組合せが、特許請求の範囲に述べた本発明から逸脱することなく利用可能である。このような変形は本発明の精神および範囲から逸脱したものとみなされるべきではなく、このようなすべての変更は特許請求の範囲内に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造
【化1】


を有し、X1およびX2は独立してIまたはBr、Y1およびY2は独立して0、1または2(Y1およびY2の一方が0の場合、他方は1または2である)、R7は独立して4以
下の炭素原子を有するアルキレン基、R12は独立して18個以下の炭素原子を有するアルキル、アリルまたはアルキルアリル基であり、9は独立して18個以下の炭素原子を有
する基であり、R9が構造
【化2】


を有し、R0は−CH=CH−、−CHJ1−CHJ2−、および(−CH2−)m
から成る群より選択され、R4\~は−CH=CH−、−CHJ1−CHJ2−、および(−
CH2−)aから成る群より選択され、aおよびmは独立して0乃至8(0および8を含む)、J1およびJ2は独立してBrまたはIであり、Zは水素、遊離カルボン酸基、ならびに同カルボン酸基のエステルおよびアミドから成る群より選択され、前記エステルおよびアミドは、18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキルおよびアルキルアリル基と、生物活性および薬剤活性な化合物の誘導体とから成る群より選択され、
Aは、
【化3】


であり、R8は、18個以下の炭素原子を有する、飽和および不飽和の置換および非置換
の、アルキル、アリルおよびアルキルアリル基から成る群より選択され、kは約5乃至約3,000、fおよびgは独立して0乃至0.99(0および0.99を含む)であることを特徴とする放射線不透過性ポリマー。
【請求項2】
fおよびgがいずれも0であることを特徴とする請求項に記載のポリマー。
【請求項3】
gが0よりも大きく、R12
【化4】


から成る群より選択される構造を有し、R0は−CH=CH−または(−CH2−)m、R4\~は−CH=CH−または(−CH2−)a、aおよびmは独立して0乃至8(0および8を含む)、Zは水素、遊離カルボン酸基、ならびに同カルボン酸基のエステルおよびアミドから成る群より選択され、前記エステルおよびアミドは、18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキルおよびアルキルアリル基と、生物活性および薬剤活性な化合物の誘導体とから成る群より選択されることを特徴とする請求項に記載のポリマー。
【請求項4】
9が構造
【化5】


を有し、R12が構造
【化6】


を有し、aおよびcが2、bおよびdが1であることを特徴とする請求項に記載のポリマー。
【請求項5】
9およびR12の各Zがカルボン酸のエステルであり、各エステル基
が、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、およびベンジル基から成る群より選択されることを特徴とする請求項に記載のポリマー。
【請求項6】
構造
【化7】


を有し、式中、
(a)R5およびR6は独立してH、Br、I、および18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基から成る群より選択され、R16およびR17は独立してHおよび18個以下の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基から成る群より選択され
、gが0の場合、R15が−CJ1−CJ2−でないか、Zがカルボン酸アミドでない限り、R1およびR2は独立してBrまたはIであり、
(b)R15は(−CH2−)c、−CH=CH−、および−CHJ1−CHJ2−から成る群より選択され、J1およびJ2は独立してBrまたはI、cは0乃至8(0および8を含む)であり、
(c)X2はBrまたはI、Y2は1または2であり、
(d)ZはH、遊離カルボン酸基もしくは同カルボン酸基のエステルまたはアミドから成る群より選択され、
(e)各R7は独立して4以下の炭素原子を有するアルキレン基、kは約5乃至約3,
000であり、
(f)Aは、
【化8】


であり、R8は、18個以下の炭素原子を有する、飽和および不飽和の置換および非置換
の、アルキル、アリルおよびアルキルアリル基から成る群より選択され、
(g)各R0
が独立して−CH=CH−または(−CH2−)d、dは0乃至8(0および8を含む)であり、
(h)fおよびgは独立して0から1未満までの範囲内にある
ことを特徴とする放射線不透過性ポリマー。
【請求項7】
fが0よりも大きいことを特徴とする請求項1または5に記載のポリマー。
【請求項8】
各R7基がエチレンであることを特徴とする請求項に記載のポリマー。
【請求項9】
fが約0.05乃至約0.95であることを特徴とする請求項に記載のポリマー。

【図1】
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【公開番号】特開2009−203483(P2009−203483A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144133(P2009−144133)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【分割の表示】特願2000−520405(P2000−520405)の分割
【原出願日】平成10年11月6日(1998.11.6)
【出願人】(500209516)ルトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ (6)
【氏名又は名称原語表記】RUTGERS,THE STATE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】