説明

放射線情報提供支援システム

【課題】放射線量が通常よりもいくらか高い状況下で生活、作業する住民や事業者に対してより安心感を与えるための情報を提供する。
【解決手段】監視対象地域の各所に固定設置された固定放射線量測定手段と、監視対象地域の気象情報を送出する気象情報送出手段と、ホストコンピュータと、パソコンとがIP通信網で接続され、ホストコンピュータにおいて、固定放射線量測定手段からの放射線情報と、気象情報送出手段からの気象情報と、当該監視対象地域を細分化した細分化地域の地形情報とを用いて監視対象地域の放射線量の分布情報を求め、パソコン画面に放射線量に関する情報を表示する放射線情報提供支援システムにおいて、監視対象地域の住民が個人線量計を携帯して時刻、位置、放射線量の情報を入手し、IP通信網を介してホストコンピュータに送り、ホストコンピュータにおける監視対象地域の放射線量の分布情報算出に反映し利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力発電所やその周辺地域において原子力発電所の作業者、あるいは地域の住民等に対する放射線情報の提供を支援するシステムに係り、特に安心感を与えることのできる放射線情報提供支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線情報を提供するシステムとしては、電力会社や県が放射線を測定するモニタリングポストを複数地点に設置し測定結果を定期的にウェブ(web)上で公開する情報提供支援システムがある。
【0003】
これに対し、地図上の面的な広がりの中で放射性物質の分布を計測するものとして特許文献1が知られている。これは、施設周辺の所定の地域の緊急時環境放射線モニタリングを行う技術を利用するものであり、地図上に関連付けられた放射線量情報と放射性物質取扱い施設における事故情報と気象情報等を入力する。これらの情報から、放射性物質の拡散および拡散された放射性物質による地域毎の土壌汚染状態を地域毎に予測する。この場合に、放射線量情報の取得には、地図上に関連付けられた位置検出装置と放射線量測定装置および無線交信手段を備えた携帯端末を用いる。この特許文献1の技術によれば、地図上における局部的で詳細な線量情報の把握と共に、放射性物質の分布を容易に知ることができるとされている。
【0004】
特許文献1の携帯端末を使用する方式では、携帯端末の分布によっては測定地点が偏るおそれがある。このため特許文献2では、移動して放射線を測定する。具体的には、モニタリングカーを使用し、そのルートを設定し表示するナビゲーション部と、地図と測定結果を合成して表示する表示部を備えることで放射線監視や防災活動への情報が提供できるとしている。
【0005】
また特許文献3では、監視情報提供だけでなく事故事象を同定することで監視、予測道精度を向上させ、予測に基づく避難計画立案や防災訓練システムを提供できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−326521号公報
【特許文献2】特開2010−266304号公報
【特許文献3】特許第3759044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術では、放射線量を計測収集し、気象データ、地図情報、地形情報を勘案して放射性物質の拡散状態を予測し、地域ごとの放射線分布や土壌分布を計算して、計算結果を表示及び広域に通知する。その目的は、原子力施設の異常時に住民などの健康被害を最小限にするため警告すること、あるいは避難時の経路計画に利用することである。
【0008】
このため、原子力施設事故収束後に、この地域で生活する住民や、事故処理の作業者や、あるいは外部からの訪問者(以下、これらを総称して住民等という)の個々人に、安心感を与えるような情報提供方法にはなっているとは言い難い。
【0009】
例えば、計測地点や地域をメッシュ上に分割した地域の放射線量の情報は得られるが、原子力施設の周辺で生活する住民等に対して、地域を移動した合計の放射線量は提供されないなどである。より具体的には、地域全体の放射線量、あるいはメッシュ状の細分地域の放射線量が示されたとしても、そこで生活し活動する個々人が自身の身で考えたときにどれほどの影響を受けた(受けていない)のかを、個々人に提示されたわけではない。従って、個々人に提示できれば、より高い安心を与えることができると考えられるが、そのような仕組みにはなっていない。
【0010】
本発明は放射線量が通常よりもいくらか高い状況下で生活、作業する住民等に対して、より高い安心感を与えることができる放射線情報提供支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明においては、監視対象地域の各所に固定設置された固定放射線量測定手段と、当該監視対象地域の気象情報を送出する気象情報送出手段と、ホストコンピュータと、パソコンとがIP通信網で接続され、ホストコンピュータにおいて、固定放射線量測定手段からの放射線情報と、気象情報送出手段からの気象情報と、当該監視対象地域を細分化した細分化地域の地形情報とを用いて当該監視対象地域の放射線量の分布情報を求め、パソコン画面に放射線量に関する情報を表示する放射線情報提供支援システムにおいて、当該監視対象地域の住民が個人線量計を携帯して時刻、位置、放射線量の情報を入手し、IP通信網を介してホストコンピュータに送り、ホストコンピュータにおける当該監視対象地域の放射線量の分布情報算出に反映し利用する。
【0012】
また、パソコン画面に表示される放射線量に関する情報として、個人に特定された放射線量情報と、事業者のための放射線量情報と、一般的な放射線量の情報を含む。
【0013】
また、個人線量計を携帯する住民に対して、当該住民の放射線量の情報をパソコン画面に表示する。
【0014】
また、パソコン画面上に当該監視対象地域の地図を表示し、利用者が地図上の移動経路と滞在時間を指定することに応じて、当該移動経路での利用者の放射線量を計算し、表示する。
【0015】
また、パソコン画面上に当該監視対象地域の地図を表示し、利用者が地図上の耕作地を指定することに応じて、当該耕作地での耕作に関する放射線の情報を表示する。
【0016】
また、当該耕作地での耕作に関する放射線の情報として、当該耕作地の放射線量、当該耕作地からの作物出荷に関する情報、指定作物の作付可能時期の情報を含む。
【0017】
また、パソコン画面上に前記個人線量計の情報から個人線量計毎の放射線量等量の度数分布を求めその結果を表示する機能と度数分布を求める個人線量計の範囲を地域、年齢などで限定する機能とを設けた。
【0018】
また、パソコン画面上で、利用者が、未成年者が活動する施設を選択したことに対応し、選択された施設の建屋内外の放射線量の情報を表示する。
【0019】
また、パソコン画面上には、現在時刻での未成年者の施設内位置を推定可能な情報を含めて表示する。
【0020】
また、利用者が前記指定した耕作地において今後生産することが可能な作物を選択し、放射線量当量の予測値から作物の作付け開始時期を推定する。
【0021】
また、パソコン画面上で、利用者が浄水場を選択したことに応じて、浄水場の取水口付近の水の放射線量率を気象データ及び線量分布データとから推定し表示する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の放射線情報提供支援システムの構成を示す図。
【図2】個人線量計と、パソコンに表示する提供情報画面の例を示す図。
【図3】移動、訪問した場所を指定して、放射線量を表示する画面の一例を示す図。
【図4】本発明システムを農業従事者に展開して利用するときの画面例を示す図。
【図5】保護者が子供の放射線量をモニタするために利用するときの画面例を示す図。
【図6】農業従事者が作物の出荷可否を確認するときの画面例を示す図。
【図7】農業従事者が当該土地の作物の作付開始時期を確認するときの画面例を示す図。
【図8】飲料水に関する情報を提供する場合の画面例を示す図。
【図9】放射線を放出している事業者の敷地を監視対象地域としたときの図。
【図10】被爆放射線量を最小にする移動経路を確認するときの画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の放射線情報提供支援システムについて図を用いて説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明の放射線情報提供支援システムの構成を示している。図1において、左下の市街地が監視対象地域Zであるとする。監視対象地域Z内には、幾つかの種類の放射線量測定手段が設けられている。例えば、特定箇所に設置された固定のモニタリングポスト310、監視対象地域Z内を適宜移動する住民等が所持する個人線量計300などである。なお、個人線量計300は、車両などに搭載する形でもよい。
【0025】
モニタリングポスト310の計測値は、放射線データ収集装置503を経由してIP通信網900に送信され、また個人線量計300の計測値は、個人線量計読み取り装置305、パソコン200を経由してIP通信網900に送信される。またIP通信網900には、気象庁データ504も接続されており、これらの情報は監視収集サーバ502を経由してホストコンピュータ501に送られる。
【0026】
本発明の係る全体構成のシステムによれば、各種の計測情報を記録し、気象庁データ504を収集記録して、予測、表示処理をするのがホストコンピュータ501である。これはIP通信網900により通信するための監視収集サーバ502と接続されている。
【0027】
放射線量を計測するモニタリングポスト310の計測情報は、有線や無線通信により放射線量データ収集装置503に伝送されIP通信網900を介してホストコンピュータ501に蓄積される。
【0028】
本発明では、住民等が所持する個人線量計のデータもシステムに取り込まれて利用される点で、特許文献2などと相違する。放射線量と位置及び時刻を記録蓄積する個人線量計300は、複数の住民が携帯し、ある場合には車で移動する。個人線量計300で記録された情報は、個人線量計読取装置305を介して個人や本発明の放射線情報提供支援システムを管理する団体が管理するパソコン200に取り込み、通信網900を介して501に収集、蓄積される。
【0029】
パソコン201には放射線情報提供支援システムのクライアント側プログラムが予めインストールされており、その起動後のメニュー画面が201である。画面201は、例えば個人支援メニュー10、事業支援メニュー20、放射線量情報メニュー30の3つの機能に区分されている。これらに表示する情報を作成するについては、ホストコンピュータに収集され、解析された結果情報が反映されて画面構成され、表示されている。それぞれの表示メニューを指定した場合の操作、表示法、表示内容に関しては後ほど個々の事例で説明する。
【0030】
本発明の放射線情報提供支援システムでは、係る構成を通じて情報収集、解析が行われる。かつ個々人は、個人宅や市役所や役場などに設置されたパソコン200を用い、自分の線量計300を個人線量計読取装置305に入力することで、システム側への情報提供が実行される。また、パソコン200の画面201に表示された個々人の情報をチェックすることで自分の放射線量の正しい情報が得られる。この自分の放射線量の情報には、当然のことながらホストコンピュータ501での解析結果が反映されている。また、この放射線量の情報には、個々人の行動パターンの結果が反映されている。
【0031】
図1に示すホストコンピュータ501の処理内容について、各機能ブロックの内容ごとに以下説明する。ホストコンピュータ501は、インターフェース部114を介して監視収集サーバと接続されており、この中には、5つの記憶部(データベース)と、2つの処理部を備える。
【0032】
まず記憶部のうち、線量データ記憶部101は、モニタリングポスト310や個人線量計300からの情報を記録する。地形データ記憶部102は、監視対象地域Z内の地形をメッシュ状に細分化した地形情報として記憶している。気象データ記憶部103には、気象庁データ504が記憶されている。これらの線量、地形、気象のデータは、GPSあるいは時刻の情報を含む形で互いに関連付けて記憶されている。
【0033】
上記の3つの記憶部に保持されるデータ(線量、地形、気象)は、生情報(線量、気象のような計測情報)、あるいは初期設定情報(地形のように最初に設定される情報)であり、次の段階ではこれらの情報を加工して出力する。
【0034】
まず、線量分布作成部112では、監視対象地域Zをメッシュで分割した領域単位での線量分布を作成する。例えば、線量を計測したモニタリングポスト310の設置位置は固定であることから、複数のモニタリングポスト310間の計測値差を用いて、この間のメッシュ分割領域単位での線量を、例えば線形計算により求める。また、この時に風向きなどの気象情報が勘案される。
【0035】
例えば、特許文献2などではこのようにして地図上での線量分布を求めるが、本発明ではさらにそのメッシュ分割領域に個人線量計300の情報がある場合には、有力な補正情報となりえる。あるメッシュ領域について、線形計算や気象情報を勘案して求めた値が、直近時点で計測した個人線量計情報と相違する場合に、個人線量計情報の重みを高くして計算することで、より高精度な分布が得られる。
【0036】
線量分布作成部112では、例えば以上の手順により線量分布を作成し、線量分布データ記憶部104に分布データを必要に応じて記録する。線量分布作成部112は、常時駆動して監視対象地域Z全体の演算を実行するものとすることもできるし、外部要求により実行演算を行うものであってもよい。例えば、個人がパソコン200を操作して自己の情報の開示を要求したときに、その人に特有の情報を生成し、表示画面201に表示してやることもできる。
【0037】
この線量分布作成部112の動作は、現時点あるいは過去の線量分布状態を求めている。これに対し、将来の線量分布状態を求めるのが、線量分布予測部113である。線量分布予測部113では、データ記憶部101,102,103及び104のデータを用いて、放射性物質の量を推定し、将来の風向きなどの予想情報から拡散計算を行うことで空間部分の予測を行うものである。
【0038】
線量分布予測部113では、このようにして情報収集し、記録し、部分計算して予測を行うが、住民が携帯する個人線量計300の情報を参照することで本システムに多数の放射線情報を収集することができる。このために実測値の空間分解能が向上し、気象データを利用した放射性物質の拡散予測に基づく放射線量率予測精度が向上する。
【0039】
特に、個人線量計300には測定値ばかりでなく、位置や時間の情報を記録しており、定期的に記録したこれらの情報が、放射線情報提供支援システムに入力されることに意義がある。図1の実施例では、個人線量計300を個人が携帯して生活活動を行い、適宜の時期にパソコンに入力することで情報収集している。この場合に、個人はパソコン操作を行うことにはなるが、自分の正しい情報が得られることで個人が得られるメリットは大きいと考えられ、結果的に多くの情報が得られるというめぐりあわせを形成している。
【0040】
なお、個人線量計に携帯電話機能を付加して放射線情報を収集することも可能であり、より迅速に測定、情報収集できるメリットがある。但し多数の個人線量計が存在し、測定情報を無線通信にて通信させる場合、通信料金が増大する問題や無線装置間の伝播干渉の障害を発生する恐れがあるので工夫を要する。
【0041】
次に図2を用いて、個人線量系300と、パソコン200でシステム利用者に表示する提供情報画面の例について説明する。図2において、個人線量計300は、放射線量率を計測する線量測定部301で測定した線量率を記憶部303に記録する。また同時に、測定時刻と位置をGPS302から入手して記録する。従って、時刻、位置、線量率が一組のデータとなり周期的に記録される。例えばその周期は10分とする。
【0042】
個人線量計300の携帯者は、市役所や役場ばかりでなく、例えば自宅にパソコン200を保有して本放射線情報提供支援システムにIP通信網900を介してアクセス可能とする。携帯者が1日に1回、あるいは不定期に本放射線情報提供支援システムにアクセスして、個人線量計読取装置305を介して放射線情報提供支援システムに情報を登録する。個人線量計300には時刻情報が含まれているため、放射線情報提供支援システムに登録する頻度、時間帯は携帯者が決めることが可能であるため携帯者が時間を気にする必要はない。
【0043】
図2の提供情報画面202は、個人線量計300の携帯者の放射線量ごとの頻度分布のグラフである。個人線量計300を多くの住民が携帯しているときに、放射線量毎の人員のグラフと共に、使用している携帯者の線量を同時に示すことで、他の人との比較をすることができる。このように他の人の数値と比較することで当人の線量の大小関係を相対的に見ることが可能となり安心感を与えることが可能となる。
【0044】
逆に高い場合には、位置及び時刻が記録されているためどのような行動が被爆量増加に繋がるのかを個人的に分析することが可能となる。また、頻度分の対象となる地域を県単位、市町村単位、地区単位と選択することでより身近な情報として利用者はとらえることが可能である。図2の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、個人支援メニュー10内の線量履歴/予測を選択するときに与えられる。
【0045】
図1、図2においては、システムの全体構成と個人線量計を携帯する住民等がパソコンに対してデータを提供し、また個人線量計を携帯する住民が得た個人線量の情報を入手することについて説明した。しかるに、本発明のシステム利用者は、個人線量計を携帯しない住民等、あるいはこの監視対象地域Zを訪問した訪問者に対しても公開され、安心を与えることができる。
【0046】
図3は、移動、訪問した場所をシステム利用者が指定して、その計算結果である放射線量を表示する画面の一例を示している。ここでは、利用者はこの監視対象地域Zには居住しておらず、所用でこの監視対象地域Zを訪問し、あるいはこれから訪問するに際して不安を覚えている。
【0047】
この利用者は、自分のパソコンでシステムを呼び出し、訪問した地域をまず指定すると、画面上に図3のような地図が表示される。その地図上で移動開始点Aをまず指定し、移動経路を地図上で、B,Cのようにドラックすることで移動経路を指定する。このとき、一定場所に滞在する場合があるため、必要に応じて滞在時間も入力する。
【0048】
移動経路を設定したあと、計算を開始する指令を与えると、パソコンから放射線情報提供支援システムのホストコンピュータ501に経路情報が送られる。放射線情報提供支援システム501にて蓄積された放射線及び分布データから各経路での放射線量を積算した結果をパソコン側に通信し、その結果を画面上に表示(あなたの訪問した場所での放射線量:○○μSv)する。なお、経路入力時には訪問日時が入力されるのがよい。
【0049】
このように地図情報と連携して入力でき、簡単な操作で放射線の結果を得ることができる。このため、地域住民のみならず、訪問者の不安も払拭することが期待でき、いわゆる風評被害の低減にも貢献すると考えられる。図3の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、個人支援メニュー10内の交通情報を選択するときに与えられる。
【0050】
この場合には、放射線情報提供支援システムにアクセスする利用者が、希望する地域の地図を選択し、選択した地図上に移動経路、滞在時間、移動する日時を入力しその経路上での放射線量等量を計算しその結果を表示する。このため、個人線量計を携帯せずにその地域を訪問、行動した場合の放射線量を知ることができ、その地域で行動する場合の安心感が向上する。これは住民や作業者だけでなく、その地域の訪問を予定している場合にも当然のことながら利用することが可能なため旅行者等の訪問者にも安心を与える情報となる。
【0051】
次に本発明システムを農業従事者に展開して利用することについて説明する。図4は農業を想定した本発明システムの利用例を示している。ここでは、図1で説明したホストコンピュータ501内の線量分布予測装置113において、空間線量率データ及び表面線量率データ401を算出し、その結果データ401を、IP通信網900を介して、パソコン200に送り、パソコンに画面203として表示する。
【0052】
農業従事者は、図1のパソコン画面201において、事業支援メニュー20内の農業支援を選択し、パソコン画面203を表示させる。このためには、自己の農作業場所を示す地域名(県、市町村、地区)、耕作地(所在地、面積など)、日時(年月日、時分)、作業時間などを入力する。画面には、当該地域の所定時刻での放射線量率(○○μSv/h)とともに、当該農業従事者の耕作地を含む地形図上に、自分の所有する土地とその周辺部の放射線量が等高線図で表示される。
【0053】
農業従事者は、パソコン画面203の表示結果を見ながら、この耕作地での作業時間を変更入力すれば、予想放射線量が再計算されて表示される。農業従事者に対して、耕作地を中心とした表示を行うことにより、農業従事者に対する情報提供と安心感を与えることができる。
【0054】
次に本発明システムを、保護者が就学児童(子供)を監視することに展開して利用することについて説明する。図5は保護者が子供の放射線量をモニタするための利用画面例である。この場合、子供は学校SCにおり、学校屋上に設置された監視カメラ801で屋外のグラウンドGを写し、この映像情報をIP通信網900に送信している。自宅の保護者はパソコン200に子供の通う学校などの施設名の情報を入力して、必要な情報を入手する。
【0055】
この場合の画面表示例204では、現在時刻のグラウンドGの画像2041と、放射線量率(○○μSv/h)が表示される。また画面表示例205では、カレンダー2051、授業時間割2052を合わせて表示し選択できるようにすることで、自分の子供が屋外か屋内にいるのかの目安を得ることを可能にしている。ここでは、屋外授業時と、屋内授業時の放射線量率(○○μSv/h)が表示されることで、単にその学校所在地の放射線量を表示するのに対して、より詳細な情報を提供することが可能である。図5の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、個人支援メニュー10内の見守り支援を選択するときに与えられる。
【0056】
この場合は、放射線情報提供支援システムにアクセスする利用者が学校あるいは保育園などの未成年者が活動する施設を選択し、選択した施設の授業などの時間割と共に施設建物内及び施設建物外の校庭などの放射線量等量率を知ることができる。このため、保護者は容易に場所を選定し授業の時間割等で家族が屋外か屋内にいることを知ることができる。降雨や風向きなどにより放射線量が増加する場合もあり、このときにも簡単な手順で放射線量を入手可能なため安心感を得ることができる。
【0057】
図6は、農業従事者の作業支援の情報を提供する場合の利用画面例である。ここでは、耕作地を入力し指定した耕作地における図4の画面203において、さらに作物の出荷可否情報として表示する。図6の画面206では、収穫される農作物の放射線量等量を推定し、出荷の可否を判定して表示する。農業従事者は出荷の可否を簡単な手順で知ることができる。なお、農産物の出荷の可否は定期的なサンプリング調査によって政府や地方自治体が決定するものであるが、このような簡易な手法で推定し表示することで農業従事者は出荷時期の目安を得ることが可能である。
【0058】
この表示に使用するデータとして、ホストコンピュータ501からは、表面線量率データ、水中放射線濃度データ、実効線量係数データを得る。なお、実効線量係数データとは、体内に摂取された放射性物質から、組織や臓器の受ける線量を算出するときに使用され、摂取した放射性物質の量と被ばく線量の関係を表す係数を意味している。図6の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、事業支援メニュー20内の農業支援を選択するときに与えられる。
【0059】
図7は、農業従事者の作業支援の情報を提供する場合の利用画面例であり、当該土地における作物の作付開始時期を表示する。画面207の表示例では、横軸に将来の時刻、縦軸に当該土地の放射線量率を表示する。放射線量は時間経過とともに減少するので、例えばホウレンソウの場合の作付可能上限を表示することで、それ以降なら作付開始可能になることを情報提供することができる。
【0060】
ここでは、パソコンで作付する耕作地において今後生産計画する作物(ホウレンソウ)を選択し、放射線量当量の予測値から前期作物の作付け開始時期を推定する手段により、全作物の作付け開始時期を簡単な操作で得ることができる。この表示に使用するデータとして、ホストコンピュータ501からは、表面線量率データ、水中放射線濃度データ、実効線量係数データを得る。図7の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、事業支援メニュー20内の農業支援を選択するときに与えられる。
【0061】
図8は、住民の関心の高い飲料水に関する情報を提供する場合の利用画面例である。利用者がパソコンで浄水場を選択し、システムでは河川の流量等の情報を収集し、浄水場の取水口付近の水の放射線量率を気象データ及び線量分布データとから推定する。これによれば、推定結果を表示することが可能であり、水道水の安全性に関する情報を簡単な手順により得ることができる。画面208には、時間経過、日時経過ごとの放射線量率(○○μSv/h)が表示される。図8の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、放射線情報メニュー30内の水質を選択するときに与えられる。
【0062】
上述した実施例は、住民等に対する情報提供を例にとり説明したが、経路情報などは運送会社などでも利用可能なシステムである。図9,10は原子力発電施設で作業するための本発明のシステム構成、移動経路計画支援用の画面を示している。
【0063】
図9のシステム構成は、既に説明した図1のシステム構成と同じなので説明は省略するが、要するに図1では監視対象地域Zが市街地であったものを、図9では放射線を放出している事業者の敷地を監視対象地域Zとしたものである。ここでは、敷地内の作業員や車両やロボットが個人線量計を携帯している。なお、320は建屋内放射線モニタであり、これが敷地内のモニタリングポストに相当する。
【0064】
図10は、立体地図を画面上に表示し、移動開始点と終点を指定して、被爆放射線量を最小にする経路を計算して画面209に表示するものである。最適経路を推定するには、その作業の日時などの条件が変化するため重要であり、時間も制約条件として入力できるようにしている。このようにすることで、作業工程立案が容易となる。なお、この図で、601は原子炉建屋、602はタービン建屋、603は管理建屋であり、管理建屋から当日の作業場所である原子炉建屋近傍に移動するときに最も放射線量が少ない経路を支持してくれる。図9の情報は、例えば図1のパソコン画面201において、事業支援メニュー20内の建築/撤去支援を選択するときに与えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、事故後の地域住民に対して、各種の形で個人に即した正確な放射線情報を与えることができ、かつ個人的にはパソコンで情報入手ができるために広く利用することが期待できる。
【符号の説明】
【0066】
101:線量データ記憶部
102:地形データ記憶部
103:気象データ記憶部
104:線量分布データ記憶部
105:線量予測データ記憶部
111:線量分布表示部
112:線量分布作成部
113:線量分布予測部
114:インターフェース部
201〜208:表示画面
300:個人線量計
301:線量測定部
302:GPS
303:記憶部
304:インターフェース部
305:個人線量計読取装置
310:モニタリングポスト
320:建屋内放射線モニタ
401:転送データ
501:ホストコンピュータ
502:監視収集サーバ
503:放射線量データ収集装置
504:気象庁データ
601:原子炉建屋
602:タービン建屋
603:管理建屋
700:サーベイメータ
801:監視カメラ
900:IP通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象地域の各所に固定設置された固定放射線量測定手段と、当該監視対象地域の気象情報を送出する気象情報送出手段と、ホストコンピュータと、パソコンとがIP通信網で接続され、前記ホストコンピュータにおいて、固定放射線量測定手段からの放射線情報と、前記気象情報送出手段からの気象情報と、当該監視対象地域を細分化した細分化地域の地形情報とを用いて当該監視対象地域の放射線量の分布情報を求め、前記パソコン画面に放射線量に関する情報を表示する放射線情報提供支援システムにおいて、
当該監視対象地域の住民が個人線量計を携帯して時刻、位置、放射線量の情報を入手し、前記IP通信網を介してホストコンピュータに送り、ホストコンピュータにおける当該監視対象地域の放射線量の分布情報算出に反映し利用することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面に表示される放射線量に関する情報として、個人に特定された放射線量情報と、事業者のための放射線量情報と、一般的な放射線量の情報を含むことを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記個人線量計を携帯する住民に対して、当該住民の放射線量の情報を前記パソコン画面に表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面上に当該監視対象地域の地図を表示し、利用者が地図上の移動経路と滞在時間を指定することに応じて、当該移動経路での利用者の放射線量を計算し、表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面上に当該監視対象地域の地図を表示し、利用者が地図上の耕作地を指定することに応じて、当該耕作地での耕作に関する放射線の情報を表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記当該耕作地での耕作に関する放射線の情報として、当該耕作地の放射線量、当該耕作地からの作物出荷に関する情報、指定作物の作付可能時期の情報を含むことを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面上に前記個人線量計の情報から個人線量計毎の放射線量等量の度数分布を求めその結果を表示する機能と度数分布を求める個人線量計の範囲を地域、年齢などで限定する機能とを設けたことを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面上で、利用者が、未成年者が活動する施設を選択したことに対応し、選択された施設の建屋内外の放射線量の情報を表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面上には、現在時刻での未成年者の施設内位置を推定可能な情報を含めて表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項10】
請求項5に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
利用者が前記指定した耕作地において今後生産することが可能な作物を選択し、放射線量当量の予測値から前記作物の作付け開始時期を推定し、表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。
【請求項11】
請求項1に記載の放射線情報提供支援システムにおいて、
前記パソコン画面上で、利用者が浄水場を選択したことに応じて、前記浄水場の取水口付近の水の放射線量率を気象データ及び線量分布データとから推定し、推定結果を表示することを特徴とする放射線情報提供支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−233697(P2012−233697A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100271(P2011−100271)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】