説明

放射線撮像方法および放射線撮像システム

【課題】 検出器の劣化のバラツキを抑制する。
【解決手段】 対象物(10)に照射され、対象物を透過した放射線を検出器(30)で検出する撮像動作を行うことにより、対象物に応じた放射線データを得る放射線撮像方法であって、撮像動作を複数回行った後において、検出器内の複数の検出領域(A11〜A14)のそれぞれに到達する放射線量(例えば、合計の放射線量又は、放射線量の平均値)が基準値に向かうように、対象物のうち、各検出領域に到達する放射線が透過する領域(R1〜R3)の厚さを変えながら、複数回の撮像動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対して放射線を照射し、対象物を透過した放射線を検出器で検出する放射線撮像方法および放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
厚さが既知の試料に対してX線を照射し、試料を透過したX線を検出器に到達させることにより、検出器からは、X線の受光量(又は強度)に応じたレベルの信号が出力される。ここで、検出器に到達するX線量は、試料の厚さと対応関係があるため、検出器の出力信号のレベルに基づいて、試料の厚さを特定することができる。また、試料に異物が含まれている場合には、検出器の出力信号のレベルが異なるため、検出器の出力信号に基づいて、異物の検出を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−318943号公報
【特許文献2】特開2000−229076号公報
【特許文献3】特開2005−017028号公報
【特許文献4】特開平01−277709号公報
【特許文献5】特開2004−055325号公報
【特許文献6】特許第2567060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚さの異なる複数の領域を有する試料に対してX線を照射すると、検出器に到達するX線量は、試料の各領域に応じて異なることになる。図11には、X線源100および検出器101の間に、試料102を配置した構成を示しており、試料102は、厚さの異なる複数の領域を有する。図11において、縦軸は、検出器101に到達するX線量を示し、横軸は、検出器101の検出位置を示している。図11に示すように、試料102を配置すると、検出器101に到達するX線量は、検出器101の領域A1〜A4に応じて異なる。
【0005】
領域A1に到達するX線は、試料102のうち、最も厚い部分を透過し、試料102によって最も減衰されるため、領域A1に到達するX線量が最も少なくなる。領域A2に到達するX線は、試料102のうち、2番目に厚い部分を透過するため、領域A2におけるX線量は2番目に少なくなる。
【0006】
領域A3に到達するX線は、試料102のうち、3番目に厚い部分を透過するため、領域A3におけるX線量は3番目に少なくなる。領域A4には、X線源100からのX線が直接、到達するため、領域A4におけるX線量は、最も多くなる。
【0007】
ここで、図11に示す位置に試料102を固定したままで、X線の照射を繰り返すと、検出器101の領域A1〜A4には、X線量(強度)の異なるX線が繰り返して到達することになる。検出器101は、X線の照射を受け続けると、劣化が進行しやすくなるため、領域A1〜A4に応じて、劣化の進行度が異なってしまうことがある。
【0008】
領域A1〜A4における劣化の進行度が互いに異なれば、検出器101の検出性能も領域A1〜A4の間でバラツキが生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1の発明は、対象物に照射され、対象物を透過した放射線を検出器で検出する撮像動作を行うことにより、対象物に応じた放射線データを得る放射線撮像方法であって、撮像動作を複数回行った後において、検出器内の複数の検出領域のそれぞれに到達する放射線量(例えば、合計の放射線量又は、放射線量の平均値)が基準値に向かうように、対象物のうち、各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さを変えながら、複数回の撮像動作を行うことを特徴とする。放射線としては、X線を用いることができる。
【0010】
ここで、対象物が厚さの異なる複数の領域を有している場合において、検出器に対する対象物の向きを変更しながら、複数回の撮像動作を行うことができる。具体的には、放射線の照射方向に延び、放射線の照射領域内に位置する基準軸を中心として、対象物を回転させることにより、検出器に対する対象物の向きを変更することができる。
【0011】
また、各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さが互いに異なる複数の対象物を用いる場合において、複数の対象物のうち、放射線の照射領域内に位置させる対象物を変更しながら、複数回の撮像動作を行うことができる。
【0012】
さらに、対象物が厚さの異なる複数の領域を有している場合において、放射線の照射領域内における対象物の位置を変更しながら、複数回の撮像動作を行うことができる。
【0013】
本願第2の発明である放射線撮像システムは、対象物に放射線を照射する放射線源と、
対象物を透過した放射線を検出して、撮像動作を行う検出器と、対象物を支持する支持部材と、を有する。ここで、撮像動作を複数回行った後において、検出器内の複数の検出領域のそれぞれに到達する放射線量(例えば、合計の放射線量又は、放射線量の平均値)が基準値に向かうように、支持部材は、撮像動作を行うたびに、検出器に対する対象物の配置状態を変更して、対象物のうち、各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さを変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、対象物の厚さを変えることにより、検出器内の各検出領域に到達する放射線量を調節することができる。そして、複数回の撮像動作を行った後において、検出器内の各検出領域に到達する放射線量(例えば、合計の放射線量又は、放射線量の平均値)を基準値に近づけるようにすれば、検出器内の複数の検出領域において、放射線量のバラツキを抑制することができる。これにより、放射線照射による劣化度が、検出器内の複数の検出領域において、ばらつくのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1で用いられる基準片の外観を示す斜視図である。
【図2】実施例1におけるX線撮像システムを示す図である。
【図3】検出器の出力信号と基準片の厚さとの関係を示す図である。
【図4】実施例1におけるX線撮像システムを示す図である。
【図5】実施例1において、基準片をX線源の側から見たときの図である。
【図6】実施例1において、検出器に到達するX線量を示す図である。
【図7】実施例1において、基準片を回転させる機構を説明する概略図である。
【図8】実施例1の変形例において、2種類の基準片を支持するステージを示す図である。
【図9】本発明の実施例2において、検出器におけるX線積算量を均等化させる構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例3において、検出器におけるX線積算量を均等化させる構成を示す図である。
【図11】従来のX線照射による構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1におけるX線撮像システム(放射線撮像システム)について説明する。本実施例のX線撮像システムでは、基準片にX線を照射して、基準片を透過したX線を受光することにより、基準片に対応したX線データを得るようにしている。ここで、基準片に対応したX線データ(放射線データ)を得る動作を、撮像動作という。
【0018】
まず、本実施例のX線撮像システムで用いられる基準片(対象物)について、図1を用いて説明する。図1は、基準片の外観を示す斜視図である。
【0019】
基準片10は、3つのプレート11〜13を積層することによって構成されている。3つのプレート11〜13は、互いに等しい厚さT1を有している。基準片10の領域R1は、厚さT3(T1×3)を有しており、領域R2は、厚さT2(T1×2)を有しており、領域R3は、厚さT1を有している。
【0020】
なお、本実施例では、厚さの等しい3つのプレート11〜13を用いているが、少なくとも2つのプレートにおける厚さが互いに異なっていてもよい。また、本実施例では、3つのプレート11〜13を積層することにより、基準片10を構成しているが、3つの厚さT1〜T3を有する基準片10を一体的に形成することもできる。また、本実施例の基準片10は、3つの厚さT1〜T3を有しているが、これに限るものではなく、複数(2つ又は4つ以上)の厚さを有していればよい。
【0021】
プレート11の上面には、プレート12が積層されており、プレート11,12は、3つの端面(外縁)が揃えられた状態で配置されている。図1の矢印Xで示す方向において、プレート12は、プレート11よりも短くなっている。領域R2は、プレート11,12だけが重なる領域である。
【0022】
プレート12の上面には、プレート13が積層されており、プレート12,13は、3つの端面(外縁)が揃えられた状態で配置されている。図1の矢印Xで示す方向において、プレート13は、プレート12よりも短くなっている。領域R1は、3つのプレート11〜13が互いに重なる領域である。
【0023】
次に、本実施例のX線撮像システムについて、図2を用いて説明する。図2は、X線撮像システムの構成を示す概略図である。
【0024】
基準片10は、X線源(放射線源)20および検出器30の間に配置されており、X線源20は、検出器30に向けてX線を照射する。ここで、基準片10の大部分が、X線の照射範囲内に位置している。また、基準片10に照射されるX線は、基準片10の厚さ方向に対して略平行に進むことが好ましい。
【0025】
検出器30は、X線源20からのX線を受光して、X線量(言い換えれば、X線強度)に応じたレベルの信号を出力する。検出器30は、複数の検出素子31によって構成されており、複数の検出素子31は、一次元方向又は二次元方向において配列することができる。本実施例では、少なくともX方向において、複数の検出素子31を並んで配置する必要がある。
【0026】
X線源20から照射されたX線のうち、一部の成分は、基準片10を透過して検出器30に到達し、他の成分は、基準片10を透過せずに、検出器30に直接到達する。図2において、検出器30の領域(検出領域)A14には、X線源20からのX線が直接到達し、領域A14におけるX線量が最も多くなる。
【0027】
検出器30の領域(検出領域)A11には、基準片10の領域R1を透過したX線が到達する。基準片10のうち、領域R1の厚さが最も厚いため、領域R1を透過するX線は、基準片10によって最も減衰される。このため、領域A11に到達するX線量は最も少なく、検出器30の領域A11からの出力信号のレベルは、最も低くなる。
【0028】
検出器30の領域(検出領域)A12には、基準片10の領域R2を透過したX線が到達する。また、検出器30の領域(検出領域)A13には、基準片10の領域R3を透過したX線が到達する。領域A12に到達するX線量は、領域A11におけるX線量よりも多く、領域A13におけるX線量よりも少ない。また、領域A13におけるX線量は、領域A14におけるX線量よりも少ない。検出器30の出力信号のレベルは、領域A12,A13,A14の順に高くなる。
【0029】
予め厚さT1〜T3を測定した基準片10を用いることにより、基準片10の厚さT1〜T3と、検出器30から出力された信号レベルとの対応関係を得ることができる。すなわち、領域A11における出力信号のレベルは、基準片10の厚さT1に対応し、領域A12における出力信号のレベルは、基準片10の厚さT2に対応し、領域A13における出力信号のレベルは、基準片10の厚さT3に対応している。
【0030】
検出器30の出力信号のレベルと、基準片10の厚さとの関係をプロットすれば、図3に示すように、出力信号のレベルと、基準片10の厚さとの対応関係を示すデータ(対応データ)が得られる。ここで、厚さの異なる領域R1〜R3を有する基準片10を用いることにより、1回のX線撮像動作によって、3つの厚さに対応した出力信号を得ることができる。そして、1つの厚さを有する基準片を用いる場合に比べて、効率良く対応データを取得することができる。
【0031】
対応データを用いれば、検出器30の出力信号に基づいて、対象物の厚さを特定することができる。また、厚さが既知の対象物に対してX線を照射した場合において、検出器30の出力信号のレベルが、対象物の厚さおよび対応データから特定される信号レベルとは異なっているときには、対象物に異物が含まれていることを判別することができる。
【0032】
本実施例のX線撮像システムを用いることにより、例えば、電池を構成する部材に異物が含まれているか否かを判別することができる。電池を構成する部材としては、例えば、電解質層を挟んで配置される電極素子がある。電極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された電極活物質層とで構成されている。電極活物質層は、各電極(正極および負極)の活物質の他に、導電剤やバインダが含まれている。
【0033】
本実施例のX線撮像システムでは、図2に示す撮像動作を行った後に、図4に示す撮像動作を行っている。図4に示す撮像状態では、図2に示す撮像状態に対して、X線源20および検出器30に対する、基準片10の位置および向きを変更している。具体的には、図2に示す基準片10と、図4に示す基準片10は、基準軸RLを基準として回転対称の関係にある。基準軸RLは、X線の照射方向に延び、X線の照射範囲内に位置する仮想軸である。
【0034】
図5には、X線源20の側から基準片10を見たときの図であり、基準軸RLも示している。図5に示すように、基準片10は、基準軸RLを中心として、矢印RDの方向に回転することができる。図5の実線で示す基準片10は、図2に示す状態に対応しており、図5の点線で示す基準片10は、図4に示す状態に対応している。
【0035】
図4に示す撮像状態において、X線源20から照射されたX線のうち、一部の成分は、基準片10を透過して、検出器30の領域A21〜A23に到達する。X線の他の成分は、基準片10を透過せずに、検出器30の領域A24に直接到達する。
【0036】
領域A21には、基準片10の領域R1を透過したX線が到達しており、領域A21に到達するX線量は最も少なくなり、領域A21における出力信号のレベルは最も低くなる。ここで、図4に示す領域A21は、図2に示す領域A14に対応している。領域A24に到達するX線量は最も多くなり、領域A24における出力信号のレベルは最も高くなる。ここで、図4に示す領域A24は、図2に示す領域A11に対応している。
【0037】
領域A22には、基準片10の領域R2を透過したX線が到達しており、領域A23には、基準片10の領域R3を透過したX線が到達している。領域A22に到達するX線量は、領域A21に到達するX線量よりも少なく、領域A23に到達するX線量よりも多い。また、領域A23に到達するX線量は、領域A24に到達するX線量よりも少ない。図4に示す領域A22は、図2に示す領域A13に対応し、図4に示す領域A23は、図2に示す領域A12に対応している。
【0038】
図2に示す撮像動作を行った後に、図4に示す撮像動作を行うと、上述したように、検出器30に到達するX線の強度分布を異ならせることができる。図6には、図2に示す撮像動作において、検出器30に到達するX線量の分布ID1と、図4に示す撮像動作において、検出器30に到達するX線量の分布ID2とを重ねて示している。分布ID3は、分布ID1,ID2を加算して得られた分布である。分布ID4は、分布ID1,ID2の平均値を示す分布である。
【0039】
図6に示すように、分布ID1および分布ID2を加算すると、X線量のバラツキが抑えられた分布ID3が得られる。また、分布ID1および分布ID2の平均値を算出しても、X線量のバラツキが抑えられた分布ID4が得られる。分布ID3や分布ID4におけるX線量は、本発明における基準値となる。
【0040】
図6では、分布ID3が所定の基準値と一致しているが、この基準値に一致させる必要はなく、検出器30に到達するX線量の積算値が基準値に近づくようにすればよい。同様に、図6では、分布ID4が所定の基準値と一致しているが、この基準値に一致させる必要はなく、検出器30に到達するX線量の平均値が基準値に近づくようにすればよい。このように、積算値又は平均値を基準値に近づかせれば、検出器30における劣化のバラツキを抑制することができる。この基準値は、適宜設定される。
【0041】
検出器30に対して、分布ID1のX線および分布ID2のX線を交互に入射させることは、分布ID3のX線を検出器30に入射させることと等しくなる。すなわち、検出器30におけるX線の積算受光量のバラツキを抑制することができる。これにより、検出器30の検出位置に応じて、劣化度が変化してしまうのを抑制することができる。言い換えれば、検出器30内のすべての検出素子31を、略等しい変化率で劣化させることができ、特定の検出素子31が他の検出素子31よりも先に劣化してしまうのを抑制することができる。これにより、検出器30の寿命を向上させることができる。
【0042】
ここで、異物の検出を高精度で行う場合には、検出器30内の劣化のバラツキを抑制することが好ましい。例えば、電極素子の電極活物質層は、金属粒子又は非金属粒子で構成されているため、粒子の分布ムラが発生しやすい。粒子の分布ムラは、検出器30に到達するX線量の分布ムラとして現れ、X線量の分布ムラが発生している状態において、異物の検出を行うためには、検出器30に対して高精度の検出能力が要求される。このため、本実施例のX線撮像方法を用いれば、検出器30の部分的な劣化を抑制することにより、X線量の分布ムラが発生している状態においても、異物に伴うX線量の変化を検出することができる。
【0043】
図2に示す撮像動作および図4に示す撮像動作を行う場合には、図7に示すように、基準片10をステージ(支持部材)40に取り付け、ステージ40を基準軸(回転軸)RLの周りで回転させればよい。これにより、基準片10を図2に示す位置と、図4に示す位置とに移動させることができる。
【0044】
一方、図2に示す撮像動作および図4に示す撮像動作を行う場合には、図8に示す構成を用いることもできる。
【0045】
図8において、ステージ40には、2種類の基準片10A,10Bが取り付けられている。基準片10Aは、図2に示す撮像動作を行うときに用いられる基準片であり、基準片10Bは、図4に示す撮像動作を行うときに用いられる基準片10である。ステージ40をX方向に移動させることにより、基準片10AをX線の照射領域内に位置させたり、基準片10BをX線の照射領域内に位置させたりすることができる。
【0046】
図8に示す構成では、X方向において、ステージ40を直線的に移動させているが、これに限るものではない。例えば、所定軸を中心として回転するステージに、基準片10A,10Bを取り付けておき、ステージを回転させることにより、X線の照射範囲内に基準片10A又は基準片10Bを位置させることができる。
【0047】
なお、本実施例では、X線を用いているが、他の放射線を用いることもできる。この場合であっても、検出器30における劣化のバラツキを抑制することができる。
【0048】
また、本実施例では、2回の撮像動作によって、検出器30に到達するX線の積算量のバラツキを抑制するようにしているが、これに限るものではない。具体的には、3回以上の撮像動作によって、検出器30に到達するX線の積算量のバラツキを抑制することができる。すなわち、撮像動作の回数に応じた数(種類)の基準片10を用意しておき、撮像動作を行う度に基準片10を変更し、複数回の撮像動作を行った後において、検出器30に到達するX線の積算量が略均一になっていればよい。
【0049】
さらに、図2および図4に示す構成では、X線源20から照射されたX線の一部が、検出器30に直接、到達しているが、これに限るものではない。すなわち、X線源20から照射されたX線のすべてが、基準片10を透過した後に、検出器30に到達させることができる。この場合であっても、本実施例と同様の撮像動作を行えばよい。
【実施例2】
【0050】
本発明の実施例2におけるX線撮像システムについて説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施例では、X線の照射範囲内において、基準片10を段階的にスライドさせることにより、検出器30に到達するX線積算量のバラツキを抑制させるようにしている。図9を用いて具体的に説明する。
【0052】
本実施例では、図9に示す2つの基準片10C、10Dをステージに配置し、ステージを矢印Xの方向にスライドさせながら、複数回の撮像動作を行う。基準片10Cは、実施例1で説明した基準片10と同様の構成であり、厚さT1〜T3の領域R1〜R3を有している。基準片10Dは、2つの領域R2,R3を有しており、領域R2は、厚さT2を有し、領域R3は、厚さT3を有する。
【0053】
矢印Xの方向において、基準片10Cを挟む位置には、スペースS1,S2が設けられており、基準片10C,10Dの間には、スペースS2が位置している。基準片10C,10Dは、図9に示す位置関係を保ったまま、一体的に移動することができる。スペースS1,S2は、基準片10C,10Dが存在していない領域であり、X線源20からのX線が検出器30に直接、到達する領域である。
【0054】
1回目の撮像動作においては、スペースS1および基準片10Cを、X線の照射範囲内に位置させる。図9の矢印で示す範囲は、X線の照射範囲を示している。スペースS1を通過したX線は、検出器30の領域A31に到達し、基準片10Cの領域R3を透過したX線は、検出器30の領域A32に到達する。基準片10Cの領域R2を透過したX線は、検出器30の領域A33に到達し、基準片10Cの領域R1を透過したX線は、検出器30の領域A34に到達する。
【0055】
2回目の撮像動作においては、基準片10CおよびスペースS2を、X線の照射範囲内に位置させる。基準片10Cの領域R3を通過したX線は、検出器30の領域A31に到達し、基準片10Cの領域R2を透過したX線は、検出器30の領域A32に到達する。基準片10Cの領域R1を透過したX線は、検出器30の領域A33に到達し、スペースS2を通過したX線は、検出器30の領域A34に到達する。
【0056】
3回目の撮像動作においては、基準片10C,10Dの一部およびスペースS2を、X線の照射範囲内に位置させる。基準片10Cの領域R2を通過したX線は、検出器30の領域A31に到達し、基準片10Cの領域R1を透過したX線は、検出器30の領域A32に到達する。スペースS2を通過したX線は、検出器30の領域A33に到達し、基準片10Dの領域R3を透過したX線は、検出器30の領域A34に到達する。
【0057】
4回目の撮像動作においては、基準片10Cの一部、基準片10DおよびスペースS2を、X線の照射範囲内に位置させる。基準片10Cの領域R1を通過したX線は、検出器30の領域A31に到達し、スペースS2を通過したX線は、検出器30の領域A32に到達する。基準片10Dの領域R3を透過したX線は、検出器30の領域A33に到達し、基準片10Dの領域R2を透過したX線は、検出器30の領域A34に到達する。
【0058】
本実施例では、4回の撮像動作を行った後において、検出器30の各領域A31〜A34に到達するX線の積算量を略等しくすることができる。ここで、検出器30の領域A31に到達するX線の積算量は、スペースS1を通過したX線の量と、基準片10Cの領域R1〜R3を透過したX線の量との合計となる。検出器30における他の領域A32〜A34についても、領域A31におけるX線の積算量と等しくなる。検出器30の領域A31〜34におけるX線積算量のバラツキを抑制することにより、検出器30における劣化のバラツキを抑制することができる。
【0059】
なお、本実施例では、4回の撮像動作によって、X線の積算量を均等化させているが、これに限るものではない。すなわち、基準片10をX方向に段階的にスライドさせつつ、複数回の撮像動作によって、検出器30内の複数の検出領域におけるX線の積算量を均等化させることができればよい。ここで、本実施例では、検出器30が4つの検出領域A31〜A34を有しているが、これに限るものではなく、適宜設定することができる。
【実施例3】
【0060】
本発明の実施例3におけるX線撮像システムについて説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例では、複数種類の基準片を用いて、検出器30に到達するX線積算量を均等化させて、検出器30の劣化のバラツキを抑制するようにしている。本実施例で用いられる基準片について、図10を用いて説明する。
【0061】
1回目の撮像動作においては、基準片10Eを用いる。基準片10Eは、厚さT41の領域R4と、厚さT42の領域R5とを有する。X線源20から照射されたX線のうち、一部の成分は、基準片10Eの領域R4を透過し、残りの成分は、基準片10Eの領域R5を透過する。領域R4を透過したX線は、検出器30の領域A41に到達し、領域R5を透過したX線は、検出器30の領域A42に到達する。
【0062】
2回目の撮像動作においては、基準片10Fを用いる。基準片10Fは、厚さT43の領域R6と、厚さT44の領域R7とを有する。X線源20から照射されたX線のうち、一部の成分は、基準片10Fの領域R6を透過し、残りの成分は、基準片10Fの領域R7を透過する。領域R6を透過したX線は、検出器30の領域A41に到達し、領域R7を透過したX線は、検出器30の領域A42に到達する。
【0063】
3回目の撮像動作においては、基準片10Gを用いる。基準片10Gは、厚さT45の領域R8と、厚さT46の領域R9とを有する。X線源20から照射されたX線のうち、一部の成分は、基準片10Gの領域R8を透過し、残りの成分は、基準片10Gの領域R9を透過する。領域R8を透過したX線は、検出器30の領域A41に到達し、領域R9を透過したX線は、検出器30の領域A42に到達する。
【0064】
基準片10E,10F,10Gについては、以下の関係式(1)を有する。本実施例では、厚さT41〜46は、互いに異なる値に設定している。
T41+T43+T45=T42+T44+T46 ・・・(1)
【0065】
上記式(1)を満たすように、基準片10E,10F,10Gの厚さT41〜T46を設定すると、3回の撮像動作を行った後の検出器30におけるX線積算量のバラツキを抑制することができる。3回の撮像動作を行った後において、検出器30の領域A41に到達するX線の積算量は、基準片10E,10F,10Gにおける厚さ(T41+T43+T45)に依存する。また、3回の撮像動作を行った後において、検出器30の領域A42に到達するX線の積算量は、基準片10E,10F,10Gにおける厚さ(T42+T44+T46)に依存する。
【0066】
上記式(1)を考慮すると、検出器30の領域A41,42におけるX線の積算量を略等しくすることができる。これにより、検出器30における劣化のバラツキを抑制することができる。
【0067】
なお、本実施例では、3回の撮像動作を行った後において、X線の積算量を均等化させているが、これに限るものではない。すなわち、複数回(2回又は4回以上)の撮像動作を行った後において、X線の積算量を均等化させることができる。また、本実施例では、2つの領域A41,A42におけるX線積算量の均等化させるようにしているが、均等化の対象となる領域の数は、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0068】
10:基準片(対象物)
11〜13:プレート
20:X線源(放射線源)
30:検出器
40:ステージ(支持部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に照射され、前記対象物を透過した放射線を検出器で検出する撮像動作を行うことにより、前記対象物に応じた放射線データを得る放射線撮像方法であって、
前記撮像動作を複数回行った後において、前記検出器内の複数の検出領域のそれぞれに到達する放射線量が基準値に向かうように、前記対象物のうち、前記各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さを変えながら、前記複数回の撮像動作を行うことを特徴とする放射線撮像方法。
【請求項2】
前記各検出領域に到達する前記放射線量は、前記撮像動作を複数回行った後の合計の放射線量又は、放射線量の平均値であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像方法。
【請求項3】
前記対象物は、厚さの異なる複数の領域を有しており、
前記検出器に対する前記対象物の向きを変更しながら、前記複数回の撮像動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像方法。
【請求項4】
放射線の照射方向に延び、放射線の照射領域内に位置する基準軸を中心として、前記対象物を回転させることにより、前記検出器に対する前記対象物の向きを変更することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像方法。
【請求項5】
前記対象物は、前記各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さが互いに異なる複数の対象物を含んでおり、
前記複数の対象物のうち、放射線の照射領域内に位置させる前記対象物を変更しながら、前記複数回の撮像動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像方法。
【請求項6】
前記対象物は、厚さの異なる複数の領域を有しており、
放射線の照射領域内における前記対象物の位置を変更しながら、前記複数回の撮像動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像方法。
【請求項7】
前記放射線は、X線であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の放射線撮像方法。
【請求項8】
対象物に放射線を照射する放射線源と、
前記対象物を透過した放射線を検出して、撮像動作を行う検出器と、
前記対象物を支持する支持部材と、を有し、
前記撮像動作を複数回行った後において、前記検出器内の複数の検出領域のそれぞれに到達する放射線量が基準値に向かうように、前記支持部材は、前記撮像動作を行うたびに、前記検出器に対する前記対象物の配置状態を変更して、前記対象物のうち、前記各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さを変えることを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項9】
前記各検出領域に到達する前記放射線量は、前記撮像動作を複数回行った後の合計の放射線量又は、放射線量の平均値であることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像システム。
【請求項10】
前記対象物は、厚さの異なる複数の領域を有しており、
前記支持部材は、放射線の照射方向に延び、放射線の照射領域内に位置する基準軸を中心として、前記対象物を回転させることにより、前記対象物の配置状態を変更することを特徴とする請求項8又は9に記載の放射線撮像システム。
【請求項11】
前記対象物は、前記各検出領域に到達する放射線が透過する領域の厚さが互いに異なる複数の対象物を含んでおり、
前記支持部材は、前記複数の対象物のうち、放射線の照射領域内に位置させる前記対象物を変更することにより、前記対象物の配置状態を変更することを特徴とする請求項8又は9に記載の放射線撮像システム。
【請求項12】
前記対象物は、厚さの異なる複数の領域を有しており、
前記支持部材は、放射線の照射領域内における前記対象物の位置を変化させることにより、前記対象物の配置状態を変更することを特徴とする請求項8又は9に記載の放射線撮像システム。
【請求項13】
前記対象物は、電池を構成する部材であることを特徴とする請求項8から12のいずれか1つに記載の放射線撮像システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−257200(P2011−257200A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130524(P2010−130524)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】