説明

放射線撮影装置

【課題】装置構成を単純なものとしつつ、鮮明な静止画を取得できる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るX線撮影装置1は、FPD4から出力される第1検出データDWを基に動画の画像フレームを形成する画像フレーム形成部12と、第2検出データDSを基に静止画を形成する静止画形成部11とを備え、X線管3は、高出力のパルスと、低出力のパルスとを出力し、画像フレーム形成部12は、低出力のパルスにて形成された第1検出データDWを基に画像フレームを形成し、静止画形成部11は、高出力のパルスDSにて形成された第2検出データを基に静止画を形成する。この様な構成となっているので、本発明の構成によれば、鮮明な静止画を提供しつつ、被検体のX線被曝が極力抑制されたX線撮影装置1が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線を照射して被検体の放射線透視像を取得する放射線撮影装置に関し、特に、動画を取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に放射線を照射し、被検体を透過した透過放射線をイメージングする放射線撮影装置は、種々の診断に用いられる。この様な放射線撮影装置の中には、放射線パルスを照射することで画像フレームを形成し、時系列的に連続した画像フレームを順次表示することで動画を形成できるものがある。このような放射線撮影装置は、例えば、嚥下検査などに使用される。
【0003】
従来の放射線撮影装置の構成について説明する。図5に示すように、従来の放射線撮影装置50は、放射線源53から放射された放射線ビームを被検体Mに照射し、被検体Mを透過した透過放射線を、例えば、イメージインテンシファイアで構成される放射線検出器54で検出する。この放射線検出器54の出力する可視光線は、ミラーなどの分配手段55で動画用検出器56と静止画用検出器57とに分配される。カメラヘッドなどから構成される動画用検出器56は、放射線検出器54から次々と送出される可視光線を基に画像フレームを形成し、時系列的に連続した画像フレームを次々と制御部59に送出する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、検査中、オペレータが静止画の取得を依頼すると、分配手段55は、1画像フレーム分に相当する放射線検出器54の出力をカメラヘッドなどから構成される静止用検出器57に送出する。静止用検出器57は、これを受けて静止画を形成し、制御部59に送出する。
【0005】
そして、上述の一連の操作で形成された動画、または静止画が表示部58に表示され、かつ、静止画は、静止画記憶部60に記憶される。
【0006】
この様に、従来の放射線撮影装置50では、動画用検出器56と、静止用検出器57とが協働する構成となっている。2つの検出器が必要な理由として、動画と静止画では、検出器に求められる性能が異なることが挙げられる。例えば、動画用検出器56は、画像フレームレートを向上させるので、読み出しの速さが求められる。その代り、光の検出の感度が犠牲となっている。
【0007】
一方、静止用検出器57は光の検出の感度が求められる。その代り、読み出しの速さが犠牲となる。この様に、静止画と動画とを両立するような検出器の開発は難しいので、従来の放射線撮影装置においては、動画用検出器56と、静止用検出器57とを備えた構成となっているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−258046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この様な構成を有する従来例には、以下のような問題点がある。
従来の構成によれば、静止画用検出器を備えているとはいえ、これから出力される静止画のコントラストは、さほど鮮明なものとはならない。動画用の放射線ビームを基に静止画が形成されるからである。動画用の放射線撮影には、被検体の被曝量を抑えつつ画像フレームレートを増加させるために、放射線の線量は低く抑えられる。したがって、動画の放射線撮影に用いられる放射線ビームは、静止画を形成するにしては、線量が不足している。静止画用検出器の検出感度は、動画用検出器のそれと比べて、高いものとなっているが、だからといって、放射線の線量の不足を補うほどではない。また、従来の構成によれば、放射線撮影装置が複雑なものになるという問題点がある。従来の放射線撮影装置においては、動画用検出器と、静止画用検出器とを備えているからである。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置構成を単純なものとしつつ、鮮明な静止画を取得できる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線パルスを照射する放射線源と、放射線パルスを検出する放射線検出手段と、放射線源を制御する放射線源制御手段と、放射線検出手段から出力される検出データを基に動画の画像フレームを形成する画像フレーム形成手段と、検出データを基に静止画を形成する静止画形成手段とを備え、放射線源制御手段は、放射線源に高出力のパルスと、それよりも低出力のパルスとを出力させるように制御し、画像フレーム形成手段は、低出力のパルスにて形成された検出データを基に画像フレームを形成し、静止画形成手段は、高出力のパルスにて形成された検出データを基に静止画を形成することを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明における放射線源は、高出力のパルスと、低出力のパルスを使い分ける。すなわち、動画の画像フレームは、低出力のパルスで形成される。動画を形成するには、ある程度高いフレームレートが必要となるので、被検体の放射線被曝を抑制するには、放射線源から照射される放射線は、低線量であることが望ましい。一方、静止画は、検査後における診断用であるので、高コントラストで鮮明であることが必要となる。したがって、静止画について言えば、放射線源から照射される放射線源は、より高線量であることが望ましい。本発明の構成によれば、放射線源に高出力のパルスと、低出力(低線量)のパルスとを出力させ、静止画は、高出力のパルスにて形成される。したがって、静止画は、十分な線量の放射線源でもって形成されるので、鮮明なものとなっている。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線撮影装置において、請求項1に記載の放射線撮影装置において、静止画の輝度分布を調整する静止画輝度調整手段と、画像フレームと静止画輝度調整手段によって調整された静止画とを結合して動画を形成する結合手段とを更に備えることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]上記構成によれば、高出力のパルスにて形成された第2検出データは、静止画を形成するのに利用されるのみならず、画像フレームにも加工される。つまり、第1検出データと第2検出データの両方が動画の形成に利用される。つまり、放射線源から高出力のパルスが照射により、低出力のパルスの照射が妨げられたとしても、これに起因して動画のフレームレートが低下することがない。したがって、本発明によれば、診断に好適な動画を形成することができる。
【0015】
なお、本明細書は、次のような放射線撮影装置に関する発明も開示している。
【0016】
(1)請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、前記画像フレームと、前記静止画とを重ね合わせて単一の重合画像を形成する画像処理手段を更に備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【0017】
[作用・効果](1)で開示した発明によれば、検査の種別に合わせて診断に好適な静止画が取得できる。すなわち、上記構成によれば、画像フレームと、静止画とを単一の重合画像に重ね合わせる。上記構成によれば、たとえば画像フレームと静止画とに対して画像の経時的な平滑化を行うことで、より一層診断に好適な静止画を取得することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射線パルスにおける放射線出力を切り替えながら静止画用の撮影と動画用の撮影とを行う。したがって、複数個の放射線検出手段を設ける必要がない。また、静止画は、高出力のパルスで形成される。これにより、形成される静止画は、高コントラストで鮮明となる。一方、動画の画像フレームを取得するときには、被検体の放射線被曝が抑制されるように、放射線源から照射される放射線源は、低線量となっている。したがって、本発明によれば、動画と静止画とを取得する放射線撮影装置において、鮮明な静止画を提供しつつ、被検体の放射線被曝を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る放射線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1に係る放射線撮影装置の放射線源制御に関するタイミングチャート図である。
【図4】本発明の1変形例に係る放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図5】従来の放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る放射線撮影装置の実施例について図面を参照しながら説明する。なお、実施例においては、X線を用いたX線撮影装置について説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。図1は、実施例1に係る放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線撮影装置1には、被検体Mを載置する椅子2と、その椅子2に隣接してパルス状のX線ビームを照射するX線管3と、被検体を透過したX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)4とが設けられている。また、実施例1の構成は、X線管3の管電圧、管電流、やX線ビームのパルス幅を制御するX線管制御部6と、これにクロック信号を送出するコンダクタ7とを備えている。そして、X線撮影装置1は、FPD4から出力された検出データを静止画に変換する静止画形成部11と、FPD4から出力された検出データを画像フレームに変換して、動画を形成する画像フレーム形成部12と、画像フレームを結合して動画を形成する結合部13と、静止画に輝度調整を施して、これを結合部13に送出する静止画輝度調整部14と、静止画に対して種々の画像処理を行う画像処理部15とを備えている。なお、X線管は、本発明の放射線源に相当し、FPDは、本発明の放射線検出手段に相当する。また、X線管制御部は、本発明の放射線源制御手段に相当し、静止画形成部は、本発明の静止画形成手段に相当する。さらに、画像フレーム形成部は、本発明の動画フレーム形成手段に相当し、結合部は、本発明の結合手段に相当する。そして、静止画輝度調整部は、本発明の静止画輝度調整手段に相当する。
【0022】
また、X線撮影装置1は、X線管制御部6におけるX線管3の制御様式を示す制御様式データが格納される制御様式記憶部21と、オペレータの指示を受け付ける操作部22と、静止画を記憶する静止画記憶部23と、静止画、または動画が表示される表示部24とを備えている。
【0023】
さらにまた、X線撮影装置1は、X線管制御部6,コンダクタ7を統括的に制御する主制御部25を備えている。この主制御部25は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、X線管制御部6,コンダクタ7,静止画形成部11,画像フレーム形成部12,結合部13,静止画輝度調整部14,および画像処理部15とを実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。
【0024】
次に、実施例1に係るX線撮影装置1の動作について説明する。図2は、実施例1に係る放射線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。X線撮影装置1における診断は、図2に示すように、X線管3の制御様式を取得する制御様式取得ステップS1と、被検体Mを椅子2に載置する被検体載置ステップS2と、X線パルスを被検体Mに向けて照射するX線曝射ステップS3と、被検体Mの透視像が写りこんだ静止画、動画を取得する静止画、動画取得ステップS4と、静止画を記憶する静止画記憶ステップS5とを備えている。以降、これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0025】
<制御様式取得ステップS1>
まず始めに、オペレータは、これから行う検査(例えば、嚥下検査)に最も好適なX線管3の制御様式を選択する。このとき、オペレータは、操作部22におけるメニューのうちからX線管3の制御様式に応じた選択ボタンを指定することで、制御様式の指定が行われる。指定された制御様式を示す制御様式データは、制御様式記憶部21に予め格納されており、この制御様式データがX線管制御部6,およびコンダクタ7に送出される。
【0026】
この制御様式データは、例えば、X線パルスの周波数、X線管3の管電圧、管電流が連関したプリセット設定データである。実施例1の構成は、X線管の制御に特徴がある。すなわち、実施例1におけるX線管3の制御は、高出力のパルスと低出力のパルスとを使い分ける構成となっている。具体的には、X線管3は、所定の間隔でX線パルスを被検体に向けて照射するが、例えば、低出力のパルスを連続して3回照射した後、高出力のパルスを1回照射することを繰返す。したがって、上述の制御様式データには、高出力のパルスと低出力のパルスとのそれぞれについて管電圧、管電流が設定されており、さらに制御様式データには、低出力のパルスを連続して3回照射した後、高出力のパルスを1回照射するというような、パルスの使い分け方法を示した使い分けパターンも設定されている。
【0027】
<被検体載置ステップS2>
そして、被検体Mを椅子2に座らせることで、本検査の関心部位である被検体の咽頭とその周辺部がX線管3とFPD4とによって挟まれる位置に誘導される。
【0028】
<X線曝射ステップS3>
次に、オペレータが、X線曝射の開始を指示すると、X線管3からX線パルスが次々と被検体Mに向けて照射される。ちなみに、このX線パルスは、例えば、33.3ms毎に照射される。このX線パルスの照射について更に詳しく説明する。図3は、実施例1に係る放射線撮影装置の放射線源制御に関するタイミングチャート図である。図3に示すように、X線管制御部6は、コンダクタ7から送出される二種類の制御信号C1,C2の制御に基づいてX線管3からX線パルスを照射させる。まず、第1制御信号C1は、X線パルスを照射するタイミングを意味している。つまり、X線管3は、この第1制御信号C1の指示に基づいて、高出力のパルス、または低出力のパルスのいずれかを照射することになる。そして、第2制御信号C2は、X線パルスの種別を示している。すなわち、X線管3は、この第2制御信号C2の指示に基づいて、高出力のパルス、または低出力のパルスのいずれかを選択することになる。
【0029】
こうして、X線管3は、制御信号C1,C2が指示した通り、低出力のパルスを連続して3回照射した後、高出力のパルスを1回照射することを繰返す。このときの低出力におけるパルスの幅wpは、例えば8msであり、高出力におけるパルスの幅spは、例えば16msとなっている。そして、低出力のパルスを照射したときのX線管3の管電力は、高出力のパルスを照射したときのそれよりも、低く抑えられている。これらのことからすると、高出力のパルスにおいては、低出力のパルスよりも高線量のX線が被検体Mに照射されることになる。
【0030】
X線管3から照射されたX線パルスは、被検体Mを透過してFPD4に到達する。FPD4は、このX線パルスを受光するたびに、FPD4におけるX線強度分布を示す検出データを出力する。このとき、コンダクタ7は、制御信号C1,C2をFPD4に対しても送出しているので(図1参照)、FPD4が出力した検出データが、いずれの出力のパルスに由来するものなのか弁別できるようになっている。
【0031】
<静止画、動画取得ステップS4>
静止画、動画取得ステップS4において、上述の検出データは、動画、または静止画に変換される。この様子を詳細に説明する(図1参照)。まず、低出力のパルスに由来する検出データを第1検出データDWとする。この第1検出データDWは、画像フレーム形成部12に送出され、画素値で構成される画像フレームに変換される。このとき形成された画像フレームを便宜上、第1画像フレームと呼ぶ。さらに、結合部13においては、時系列的に隣接する第1画像フレームの各々を結合することにより、動画が形成される。実施例1においては、X線管3は、3回連続して低出力のパルスをFPD4に向けて照射するので、3つの時系列的に隣接する第1検出データDWを基に、3枚の第1画像フレームで構成される動画が形成される。
【0032】
一方、高出力のパルスに由来する検出データを第2検出データDSとする。この第2検出データDSは、静止画形成部11に送出され、画素値で構成される静止画に変換される。この第2検出データDSに写りこんでいる被検体Mの透視像は、第1検出データDWと比べて、高いコントラストを有している。したがって、静止画形成部11で形成される静止画は、診断に好適なものとなっている。
【0033】
また、第2検出データDSから形成された静止画は、静止画輝度調整部14にも送出される。ここで静止画は、輝度調整が施されることによって動画を構成する画像フレームに変換されるのである。このとき形成される画像フレームを便宜上、第2画像フレームと呼ぶ。具体的には、静止画輝度調整部14は、静止画のゲイン調整を行う。静止画は、高出力のパルスに由来するので、動画を形成する画像フレームと比べて、高露光となっている。したがって、静止画の輝度分布は、上述の第1画像フレームのそれとは、異なったものとなる。そこで、静止画輝度調整部14は、この輝度分布の差異を均質化する。すなわち、静止画輝度調整部14は、静止画の有する輝度分布が、第1画像フレームが有する輝度分布と同一となるように静止画のゲインを調整して第2画像フレームを形成する。このゲインの調整は、予め、上述の制御様式記憶部21に記憶された制御様式データに付属したゲイン調整の様式(強度)を参照して実行される。
【0034】
結合部13においては、第1検出データDWを基に、3枚の画像フレームで構成される動画が形成されている。結合部13では、この3枚の第1画像フレームに続けて第2画像フレームを結合して、4枚の画像フレームから構成される動画の形成する。なお、FPD4は、第2検出データDSを静止画形成部11に送出した後、3回連続して第1検出データDWを画像フレーム形成部12に送出する。このとき形成される3枚の画像フレームは、順次、上述の4枚の画像フレームから構成される動画に結合される。こうして、結合部13において形成される動画は、第1画像フレームと、第2画像フレームとが時系列に結合されて形成される。この動画は、順次、表示部24に表示される。
【0035】
<静止画記憶ステップS5>
次に、静止画の画像処理について説明する。実施例1の構成によれば、静止画形成部11で形成された静止画を静止画記憶部23に順次記憶する。高出力のパルスは、1.33sごとに被検体Mに照射されることからすれば、1.33s分だけ経時的に離間した静止画が静止画形成部11から静止画記憶部23に送出されることになる。
【0036】
実施例1の構成によれば、静止画に種々の画像処理を施した上で、これを静止画記憶部23で記憶させることもできる。すなわち、画像処理部15では、オペレータの指示次第で、第1画像フレームを用いて静止画に対して画像処理を行う。たとえば、合計4枚の第1画像フレームと静止画とに対して画像の経時的な平滑化を行うテンポラルフィルタを用いて重ね合わせて単一の重合画像を形成することもできる。また、第1画像フレーム、および静止画の各々に所定のリカーシブ係数を乗じた後、これを順次重ね合わせて単一の重合画像を形成することもできる。
【0037】
こうして、オペレータは、表示部24で表示された動画を視認しながら、嚥下検査を被検体に対して行う。具体的には、造影剤を含んだ検査食を被検体Mに嚥下させる。検査中、表示部24には、動画が写し出されているが、同時に、第2検出データDSを基に合成された静止画が静止画記憶部23に蓄積される。嚥下検査は、1分〜2分程度であるので、検査期間中に取得される静止画は、45枚〜68枚となる。この静止画は、嚥下検査終了後に静止画記憶部23から読み出されて、表示部24で表示されることができる。こうして、実施例1に係るX線撮影装置を用いた検査は終了となる。
【0038】
以上のように、実施例1の構成によれば、X線パルスにおけるX線の出力を切り替えることで静止画用の撮影と動画用の撮影とを行う。したがって、複数個のFPD4を設ける必要がない。また、静止画は、高出力のパルスで形成される。静止画は、高コントラストで鮮明となるように、X線管から照射されるX線は、高線量となっている。しかも、動画の画像フレームを取得するときには、被検体MのX線被曝が抑制されるように、X線管3から照射されるX線は、低線量となっている。したがって、実施例1の構成によれば、鮮明な静止画を提供しつつ、被検体のX線被曝が極力抑制されたX線撮影装置が提供できる。
【0039】
また、実施例1の構成によれば、オペレータによる静止画撮影の依頼を受けることなく、検査期間中において静止画が連続的に取得され続ける。つまり、検査期間中に亘って被検体が検査食を嚥下する様子が静止画として保存されている。したがって、オペレータは、検査終了後でも、連写された静止画を検討して診断を行うことができる。
【0040】
さらに、実施例1の構成は、X線管3の制御様式を記憶する制御様式記憶部21を備えている。記憶される制御様式データは、例えば、X線パルスの周波数、X線管3の出力別の管電圧や管電流のデータを備えている。また、制御様式データは、高出力のパルスと低出力のパルスとの使い分けパターンに関するデータを有している。そして、制御様式データは、静止画輝度調整部14で行われるゲイン調整の様式(強度)についてのデータをも含んでいる。この様に、オペレータが単一の制御様式データを選択するだけで、X線の照射から、画像処理までの一連の動作が自動的に行われる。したがって、実施例1の構成によれば、オペレータの操作負担を軽減したX線撮影装置を提供することができる。
【0041】
本発明は、上記構成に限られることなく、下記のように変形実施することができる。
【0042】
(1)上述の実施例の構成は静止画のゲイン調整を行う静止画輝度調整部14を有していたが、この代わりに、オートウィンドウ処理部16を有していてもよい。図4は、本変形例の構成を説明する機能ブロック図である。このオートウィンドウ処理部16には、第1検出信号DWに由来する画像フレームF,および第2検出信号DSに由来する静止画Sが画像フレーム形成部12,静止画形成部11の各々から入力される。オートウィンドウ処理部16では、まず、画像F,Sを構成する画素値のヒストグラムを形成し、このヒストグラムを複数の画像の間で比較して、標準的なヒストグラムを算出する。そして、画像F,Sの各々について、そのヒストグラムが標準的なヒストグラムと一致するように、画像F,Sを構成する画素値の変換を行う。したがって、オートウィンドウ処理部16を通過した画像フレームF,および静止画Sは、同様の輝度分布を有している。結合部13では、画像フレームF,および静止画Sを結合して動画を形成し、画像処理部15では、画像フレームF,および静止画Sを重ね合わせて単一の静止画を形成させることができる。この様な構成とすれば、ゲイン調整の様式(強度)を予め制御様式記憶部21に記憶させておく必要がないので、構成が単純なX線撮影装置が提供できる。
【符号の説明】
【0043】
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
6 X線管制御部(放射線源制御部)
11 静止画形成部(静止画形成手段)
12 画像フレーム形成部(動画フレーム形成手段)
13 結合部(結合手段)
14 静止画輝度調整部(静止画輝度調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線パルスを照射する放射線源と、
前記放射線パルスを検出する放射線検出手段と、
前記放射線源を制御する放射線源制御手段と、
前記放射線検出手段から出力される検出データを基に動画の画像フレームを形成する画像フレーム形成手段と、
前記検出データを基に静止画を形成する静止画形成手段とを備え、
前記放射線源制御手段は、前記放射線源に高出力のパルスと、それよりも低出力のパルスとを出力させるように制御し、
前記画像フレーム形成手段は、前記低出力のパルスにて形成された検出データを基に前記画像フレームを形成し、
前記静止画形成手段は、前記高出力のパルスにて形成された検出データを基に静止画を形成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記静止画の輝度分布を調整する静止画輝度調整手段と、
前記画像フレームと前記静止画輝度調整手段によって調整された前記静止画とを結合して動画を形成する結合手段とを更に備えることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate