説明

放射線撮影装置

【課題】放射線検出器に含まれる一時的に動作の不良性を示す検出素子(不定素子)の挙動が不安定な状態にあっても、診断に好適な放射線透視画像を取得することができる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るX線撮影装置1は、放射線透視画像に写りこんだ動作不良素子を削除するのに用いられるマップを2つ用意している。これらのうちの1つを選択して画像に写りこむ動作不良素子を除去する。いずれのマップを使用するかは、選択部16が選択する。選択部16は、X線を検出することができない放射線検出素子の経時的な減少を知り、増減変化が所定の水準にまで低下したとき、第1マップに代えて第2マップを選択する。これにより、画像に写りこんだ動作不良検出素子は、的確に除去され、FPD4の安定性に係らず、常に診断に好適な放射線透視画像を取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に放射線を照射し、被検体を透過した放射線を基に、放射線透視画像を生成する放射線撮影装置に係り、特に、放射線を検出する放射線検出器の欠損画素を補正することができる放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、被検体の透視像を取得する放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置における従来の構成について説明する。従来の放射線撮影装置は、被検体を載置する天板と、天板の上部に設けられた放射線源と、天板の下部に設けられた放射線検出手段(FPD)とを備えている。
【0003】
FPDには、放射線検出素子が2次元的に配列されており、放射線検出素子の各々が放射線を検出することでFPDに透視像が写りこむ。この透視像は、画素値が2次元的に配列された画像データに変換され、モニタ等に出力される。
【0004】
ところが、FPDに備えられた放射線検出素子の全てが全うに機能するとは限らない。すなわち、FPDに設けられた放射線検出素子には、放射線を検出できない故障したものも含まれている。この様な動作不良素子は、放射線の照射を感受することができない。動作不良素子は、画像データ上に輝点や暗点として現れ、放射線透視画像の視認性を悪化させる。
【0005】
この様な不都合があるので、従来の構成においては、FPDにおける動作不良素子の配置をマップに登録しておき、画像データにおいて動作不良素子が写りこんだ画素を特定し、その画素値を変更することで上述の輝点や暗点を除去する構成が採用される。この様な放射線撮影装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−110981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来構成の放射線撮影装置には次のような問題点がある。
すなわち、上述のような構成によれば、放射線撮影装置の電源投入直後などに見られる一時的に動作の不良性を示す検出素子が不安定な状態にある場合、十分に視認に好適な放射線透視画像を提供できないという問題点がある。FPDにおける動作不良素子の中には、動作が正常になったり不良になったりを繰返す、いわば一時的に動作の不良性を示す検出素子(不定素子)が存在する。電源の投入直後において、不定素子の多くは動作不良のように振舞っているが、電源投入から時間が経過するにつれ、不定素子は次第に正常動作をするようになる。
【0008】
従来構成の放射線撮影装置においては、動的に動作不良素子をFPDから抽出する機能を有するものがある。すなわち、この様な放射線撮影装置は、画像に動作不良素子が写りこむ位置を表したマップを基に、画像に表れた輝点、暗点を除去する構成となっている。しかし、上述のような不定素子における特性の変化は、比較的急激なものであり、従来の機能では、これに追いついて、動作不良素子の配置を経時的に予測することは不可能に近い。動作不良素子の配置を特定するには、不定素子の振る舞いが安定した状態の下、複数の画像データを参照する必要がある。さもないと、動作不良素子を誤認定して過剰な画像処理が行われ、画像がボケてしまう。また、動作不良素子を認定し損ねて、放射線透視画像に輝点、暗点が残存してしまう。
【0009】
また、複数のマップを用意し、検出器の変化に伴って切替を行う構成を採用しようとしても、マップの切り替えをどの時点で行ってよいのか判断ができないので、結局、画像に表れた輝点、暗点を十分に除去することができない。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線検出器に含まれる一時的に動作の不良性を示す検出素子(不定素子)の挙動が不安定な状態にあっても、診断に好適な放射線透視画像を取得することができる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る発明は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出するとともに複数の放射線検出素子を有する放射線検出手段と、放射線検出手段に対して検出データの読み出しを実行する読み出し実行手段と、検出データを基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、放射線検出手段が有する放射線検出素子のうち、放射線を検出することができない放射線検出素子を一時的不良素子とし、一時的不良素子のうち、時間をおくと放射線を検出する能力が回復するものを回復素子とし、これ以外の放射線を検出する能力が回復しないものを恒常的不良素子としたとき、一時的不良素子の放射線検出手段における位置を示す第1マップを記憶する第1マップ記憶手段と、恒常的不良素子の放射線検出手段における位置を示す第2マップを記憶する第2マップ記憶手段と、マップを用いて画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子に由来する画素を補完する画像処理手段と、第1マップ、および第2マップのうちのいずれを画像処理手段に使用させるかを選択する選択手段とを備え、(A)選択手段は、第1マップを選択し、(B)読み出し実行手段は、間歇的に放射線検出手段からデータの読み出しを行って、その度に画像生成手段に監視用参照画像を生成させ、(D)選択手段は、監視用参照画像の各々に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子の減少を逐次監視し、(E1)選択手段は、減少が回復素子の放射線検出能の回復が完了した時点を示す所定の水準まで低下した時、第1マップに代えて第2マップを選択することを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明によれば、放射線検出手段の状態に係らず、動作が不良な素子が除去されて診断に好適な画像の取得が可能な放射線撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、第1マップ記憶手段と第2マップ記憶手段とを備え、2つのマップのうちのいずれかを選択して画像に写りこむ動作不良素子を除去する構成となっている。したがって、放射線検出手段の状態に合わせて、動作不良素子の除去に適したマップを選んで使用することができる。
【0013】
しかも、本発明によれば、いずれのマップを使用するかを選択手段が選択する。具体的には、選択手段は、まず第1マップを選択する。これが、放射線検出手段が初期状態のときに適したマップである。続いて、選択手段は、放射線検出手段を監視し、適当なタイミングで動作不良素子の除去処理に使用するマップを第2マップに変更する。第2マップは、例えば、放射線検出手段の状態の変化が収まって安定状態となっているときに適したマップである。
【0014】
選択手段によるマップの切り替えは、次のようにして行われる。すなわち、間歇的に監視用参照画像が取得される。監視用参照画像を比較すると、放射線を検出することができない放射線検出素子の経時的な減少を知ることができる。選択手段は、増減変化が所定の水準にまで低下したとき、第1マップに代えて第2マップを選択する。本発明は、マップの変更を監視用参照画像を基に行う構成となっているので、画像に写りこんだ動作不良検出素子は、的確に除去され、放射線検出手段の安定性に係らず、常に診断に好適な放射線透視画像を取得することができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射線撮影装置において、回復素子は、放射線撮影装置の電源投入時には放射線を検出することができないことを特徴とするものである。
【0016】
上述の構成によれば、回復素子は、放射線撮影装置の電源投入時には放射線を検出することができない。放射線撮影装置の電源投入時には、放射線検出素子の動作が不安定なので、放射線を検出することができない放射線検出素子の数が多い。このような初期的な不良に見舞われた放射線検出素子の一部が放射線検出能を回復するのである。本発明は、電源投入時において放射線を検出することができない放射線検出素子の数が最も多く、時間が経過するにつれて、その数が次第に減少していく放射線撮影装置に適応することができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の放射線撮影装置において、画像生成手段が生成する参照画像を積算する積算手段を更に備え、第2マップは、減少が所定の水準まで低下した時点において取得された複数の第2マップ作成用参照画像を積算することにより得られるものであることを特徴とするものである
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、第2マップの具体的な生成の様子を示している。すなわち、第2マップは、複数の第2マップ作成用参照画像を積算することで生成される。第2マップ作成用参照画像は、放射線を検出することができない放射線検出素子(動作不良素子)を写し込んでいるが、動作不良素子の位置を忠実に特定したものではない。すなわち、第2マップ作成用参照画像に表れたムラは、動作不良素子の存在以外の様々な要因が絡み合って出現したものである。第2マップ作成用参照画像を積算すれば、多種に及ぶ不確定的な要因を除去して、動作不良素子の位置が際立って示されるのである。この様にして、上述の構成によれば、動作不良素子の写りこみが確実にキャンセルされた画像を取得することができる。
【0019】
また、請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、放射線検出手段は、放射線を電荷に変換する変換手段と、電荷を蓄積する蓄積手段とを備え、第1マップは、蓄積手段に電荷を蓄積させる時間である蓄積時間を第2マップ作成用参照画像を取得するときよりも長いものとした状態で、複数の第1マップ作成用参照画像を取得し、これらを積算することにより得られるものであることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、第1マップの具体的な生成の様子を示している。第1マップにおいても、複数枚の第1マップ作成用参照画像を積算して、動作が不良と振舞っている検出素子の位置が際立って示された第1マップが生成される。さらに、第1マップ作成用参照画像は、第2マップ作成用参照画像を取得するときよりも蓄積時間を長いものとした状態で取得される。これにより、放射線検出手段が初期的状態にあるときの検出素子の動作不良性が再現され、放射線検出手段が初期的状態にある場合に適した第1マップを生成することができる。
【0021】
また、請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、第1マップは、被検体の検査の終了後に取得されることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]上述のように構成することで、検査開始前に第1マップを確実に取得することができる。放射線撮影装置の電源投入時に第1マップが既に準備されていることが望ましい。本発明によれば、例えば、被検体の検査が終了した後に第1マップを取得し、次の日、放射線撮影装置の電源投入時に前日の第1マップを使用することができる。
【0023】
また、請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、監視用参照画像は、放射線検出手段に放射線像が写りこんでいない状態で取得されることを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]この様に構成することで、放射線検出手段に放射線を当てずして、監視用参照画像を監視できる。被検体が放射線検出手段と、放射線源との間にセットされた状態で放射線が照射されると、放射線検出手段には被検体の透視像が写りこむ。ところで、監視用参照画像は、動作が不良と振舞っている検出素子の挙動を写し込んでいる必要があり、これ以外の余計な像が写りこんでいると選択手段が行う監視の邪魔となる。ということは、被検体がセットされた状態では、監視用参照画像の取得できないことになってしまう。しかし、上述の構成のように、参照画像は、放射線検出手段に放射線像が写りこんでいない状態で取得されれば、被検体がセットされた状態でも、監視用参照画像の監視が可能となる。こうして、被検体がセットされた状態で、マップの交換を行うことができる。
【0025】
また、請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、放射線源に対して放射線の照射を許可する照射許可手段を備え、(C)放射線の照射が許可され、放射線源から放射線の照射がなされたとき、読み出し実行手段は、放射線検出手段に写りこんだ放射線像の読み出しを実行して画像生成手段に放射線透視画像を生成させ、放射線像の読み出しに競合する監視用参照画像に係る読み出しを行わないことを特徴とするものである。
【0026】
[作用・効果]上述の構成によれば、監視用参照画像の取得を行いながら放射線透視画像を取得することができる。すなわち、放射線が放射線検出手段に向けて照射されたとき、これに写りこんだ放射線像が読み出されて、被検体が写りこんだ放射線透視画像が取得される。この間に監視用参照画像に係る読み出しが行われることがない。つまり、放射線透視画像の取得と監視用参照画像の取得とが競合する場合、放射線透視画像の取得が優先される。これにより、術者が指示したタイミングで確実に放射線透視画像を取得することができるので、操作性に優れた放射線撮影装置が提供できる。
【0027】
また、請求項8に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、(D1)選択手段は、監視用参照画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子が集合している塊である素子塊のうち、監視用参照画像に表れた最大の素子塊の縮小を逐次監視することを特徴とするものである。
【0028】
また、請求項9に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、(D2)選択手段は、監視用参照画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子が集合している塊である素子塊のうち、監視用参照画像に表れた複数の素子塊の縮小を逐次監視することを特徴とするものである。
【0029】
また、請求項10に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、(D3)選択手段は、監視用参照画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子が集合している塊である素子塊のうち、監視用参照画像に表れる大きさが大きい順に複数の素子塊を選択し、選択された素子塊の大きさの平均値の減少を逐次監視することを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]上述の構成は、選択手段が行う監視用参照画像の監視をより容易に行うことのできる具体的な構成を表したものである。すなわち、選択手段は、監視用参照画像に写りこんだ素子塊をターゲット領域と認識し、これの変化を観察する。そして、選択手段は、ターゲット領域の大きさの変化が所定の水準まで低下したとき、マップの切替を行うのである。つまり、選択手段は、監視用参照画像の全域について監視を行う必要はなく、監視用参照画像の限られた領域について監視すれば十分である。この様に構成することで、選択手段における演算負荷が軽減されることになり、より機械的構成が簡単な放射線撮影装置が提供できる。
【0031】
選択手段の素子塊の観察は、様々な態様が考えられる。例えば、選択手段が監視用参照画像に写りこんだ素子塊のうちの最大のものの大きさの変化を監視する構成としてもよいし、複数の素子塊の縮小を監視する構成としてもよい。または、選択手段が監視用参照画像に写りこんだ素子塊のうちの監視用参照画像に表れる大きさが大きい順に複数の素子塊を選択し、選択された素子塊の大きさの平均値の減少を監視してもよい。
【0032】
また、請求項11に係る発明は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出するとともに複数の放射線検出素子を有する放射線検出手段と、検出データを基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、放射線検出手段が有する放射線検出素子のうち、放射線を検出することができない放射線検出素子を一時的不良素子とし、一時的不良素子のうち、時間をおくと放射線を検出する能力が回復するものを回復素子とし、これ以外の放射線を検出する能力が回復しないものを恒常的不良素子としたとき、一時的不良素子の放射線検出手段における位置を示す第1マップを記憶する第1マップ記憶手段と、恒常的不良素子の放射線検出手段における位置を示す第2マップを記憶する第2マップ記憶手段と、マップを用いて画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子に由来する画素を補完する画像処理手段と、第1マップ、および第2マップのうちのいずれを画像処理手段に使用させるかを選択する選択手段とを備え、(A)選択手段は、第1マップを選択し、(E2)選択手段は、第1マップの選択から、回復素子の放射線検出能の回復が完了するまでの時間を示す所定の待機時間が経過した時点で第2マップを選択することを特徴とするものである。
【0033】
[作用・効果]本発明によれば、上述の選択手段の構成をより簡便なものとしている。具体的には、選択手段は、まず第1マップを選択する。これが、放射線検出手段が初期状態のときに適したマップである。その後、選択手段は、所定の待機時間が経過した時点で第2マップを選択する。第2マップは、例えば、放射線検出手段の状態の変化が収まって安定状態となっているときに適したマップである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、放射線検出手段の状態に係らず、放射線を検出することができない放射線検出素子(動作不良素子)が除去されて診断に好適な画像の取得が可能な放射線撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線透視画像に写りこんだ動作不良素子を削除するのに用いられるマップを少なくとも2つ用意している。2つのマップとは、放射線検出手段が初期状態のときに適した第1マップと、放射線検出手段の状態の変化が収まって安定状態となっているときに適した第2マップである。これらのうちの1つを選択して画像に写りこむ動作不良素子を除去する。いずれのマップを使用するかは、選択手段が選択する。選択手段は、動作が不良と振舞っている放射線検出素子の経時的な増減を知り、増減変化が所定の水準にまで低下したとき、第1マップに代えて第2マップを選択する。本発明は、マップの変更を監視用参照画像を参照して行う構成となっているので、画像に写りこんだ動作不良検出素子は、的確に除去され、放射線検出手段の安定性に係らず、常に診断に好適な放射線透視画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るFPDの構成を説明する断面図である。
【図3】実施例1に係るFPDの構成を説明する平面図である。
【図4】実施例1にX線撮影装置の電源を投入することで開始される一連の動作の説明に係るフローチャートである。
【図5】実施例1に係る第1マップを説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る監視用参照画像を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る第2マップを説明する模式図である。
【図8】実施例1に係るFPDの読み出しを説明するタイミングチャートである。
【実施例1】
【0036】
以下、本発明に係る放射線撮影装置の実施例について説明する。実施例1におけるX線は本発明の放射線の一例である。
【0037】
<全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。図1は、実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線撮影装置1には、被検体Mを載置する天板2と、その天板2の上部に設けられ、パルス状のX線ビームを照射するX線管3と、天板2の下部に設けられ、被検体Mを透過したX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)4と、FPD4に入射する散乱X線を除去するX線グリッド5とが設けられている。また、実施例1の構成は、X線管3の管電圧、管電流やX線ビームの照射時間を制御するX線管制御部6を備えている。そのうえ、実施例1の構成は、FPD4に対して検出信号の読み出しを制御する読み出し制御部8が備えられている。また、実施例1の構成は、FPD4から出力された検出信号を受信し、被検体の透視像が写りこんだX線透視画像を生成する画像生成部11と、X線透視画像を受信して、明るさの処理等を行って、X線透視画像をより視認に好適なものとする画像編集部12とを備えている。この画像編集部12は、後述のX線透視画像に写りこんだ動作不良画素を補完により消去する画像処理をも実行する。この画像処理は、第1マップM1,または第2マップM2のいずれかを参照して行われる。なお、X線管3,FPD4,X線管制御部6の各々は、本発明の放射線源、放射線検出手段、照射許可手段に相当する。読み出し制御部は、本発明の読み出し実行手段に相当し、画像生成部は、本発明の画像生成手段に相当し、画像編集部は、本発明の画像処理手段に相当する。
【0038】
また、X線撮影装置1は、第1マップM1を記憶する第1マップ記憶部17と、第2マップM2を記憶する第2マップ記憶部18を備える他、両マップM1,M2の生成に関する積算部15と、両マップM1,M2のいずれを画像編集部12に送出するかを選択する選択部16を備えている。また、X線撮影装置1は、オペレータの指示を受け付ける操作卓23と、X線透視画像、または動画が表示される表示部24とを備えている。選択部は、本発明の選択手段に相当する。第1マップ記憶部は、本発明の第1マップ記憶手段に相当し、第2マップ記憶部は、本発明の第2マップ記憶手段に相当する。積算部は、本発明の積算手段に相当する。
【0039】
さらにまた、X線撮影装置1は、X線管制御部6,読み出し制御部8,画像生成部11,画像編集部12,積算部15,および選択部16を統括的に制御する主制御部22を備えている。この主制御部22は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。
【0040】
次に、実施例1に係るFPD4の構成について説明する。FPD4は、図2に示すような構成となっている。なお、アモルファス・セレン層53は、本発明の変換手段に相当する。そして、コンデンサ55は、本発明の蓄積手段に相当する。
【0041】
FPD4は、図2に示すように、表面電極層52と、アモルファス・セレン層53と、支持層54と、コンデンサ55を有している。そして、表面電極層52,アモルファス・セレン層53,支持層54は、この順に積層されている。そして、表面電極層52は、バイアス電圧供給端子52aと電気的に接続されている。また、支持層54には、収集電極54aが埋め込まれている。FPD4において、この収集電極54aは、複数個設けられており、収集電極54aは、各層52,53,54の広がる平面に沿って二次元的に配列されている。
【0042】
収集電極54aは、アモルファス・セレン層53に接触しているとともに、コンデンサ55に電気的に接続されている。このコンデンサ55は、二次元的に配列されている。このコンデンサ55の1つと、これに積層されたアモルファス・セレン層53,および表面電極層52とが協働して単一のX線検出素子を形成する。つまり、FPD4には、コンデンサ55の配列に倣ってX線検出素子が2次元的に配列されているものと捉えることもできる。
【0043】
図3に示すように、実施例1に係るFPD4の検出データの読み出しは、コンデンサ配列の列Cごとに行われる。具体的には、コンデンサ毎にトランジスタが設けられ、トランジスタ行列が生成されるとともに、トランジスタ行列の各列毎に、ゲートドライブが設けられている。このゲートドライブの1つをONとすると、このゲートドライブに対応するトランジスタ行列のうちの一列に属するトランジスタが一斉にONされ、一列に配列されたコンデンサにおいて、蓄積された電荷が一斉に読み出される。以降、FPD4の有するゲートドライブの全てを逐次ONしていくのである。この様にして、コンデンサの各列において検出信号の読み出しが行われ、FPD4の全域についての信号の読み出しが完了する。
【0044】
<X線撮影装置の動作>
次に、この様な構成となっているX線撮影装置の動作について説明する。一般的な撮影を実行する場合は、撮影の前に予めX線撮影装置の電源を投入しておき、FPD4が十分に安定させておく。X線撮影装置の電源投入直後は、FPD4は動作が不安定な状態となっており、X線撮影に適さないからである。
【0045】
ところが、医療機関において、急患が発生するなどして、電源がOFFとなっているX線撮影装置を立ち上げて、直ちにX線撮影を行わなければならない場合もある。実施例1の構成によれば、電源投入時につきFPD4が不安定な状態にあっても診断に好適な放射線画像を取得できるという利点がある。この点を強調する目的で、以下の説明では、この様な場合の動作を説明する。図4は、X線撮影装置1の電源を投入することで開始される一連の動作の説明に係るフローチャートであり、下記の動作説明の全体的な示すものである。
【0046】
動作を順に説明する。まず、直ちにX線撮影を行う必要が生じたものとする。まず、X線撮影装置1の電源が投入されるとともに、被検体Mが天板2にセットされる(ステップS1)。すると、選択部16は、第1マップ記憶部17に記憶されている第1マップM1を読み出して、これを画像編集部12に送出する(ステップ2)。第1マップM1には、電源投入直後でFPD4が不安定な状態におけるX線を検出することができない検出素子(以下、簡単のため初期的不良素子と呼ぶ)がFPD4のどこに位置するかを記憶する2次元データで、具体的には、図5のような構成となっている。図5に示すL1は、FPD4において、初期的不良素子が集合して塊となっている素子の塊である。初期的不良素子は、電源投入直後においては、X線を検出することができない。しかし、素子塊L1の中心から外れた初期的不良素子は、FPD4が安定するにつれ、正常に動作するようになる。初期的不良素子は、本発明の一時的不良素子に相当する。初期的不良素子のうち、FDP4の安定に伴って、正常に動作することができるようになる検出素子は、本発明の回復素子に相当する。また、初期的不良素子のうち、FPD4の安定に係らずX線を検出することができない検出素子は、本発明の恒常的不良素子に相当する。
【0047】
この様な現象が発生する理由を説明する。素子塊L1の中心部分には、故障するなどして、もはや完全に正常動作ができなくなった、いわば恒常的不良素子が存在している。恒常的不良素子子の近傍の素子は、本来は正常に動作するはずである。しかし、電源投入時などのようなFPD4が不安定な状態にあると、恒常的不良素子の近傍の素子は、恒常的不良素子の影響を受け、正常な動作が妨げられ、動作不良のように振舞ってしまうのである。とはいえ、やがてそれもFPD4が安定するにつれ、近傍の素子は正常な動作ができるようになる。したがって、電源投入から時間が経過するにつれ、素子塊は小さくなっていく。
【0048】
電源投入直後に放射線撮影を行ったとする。このときに取得される放射線透視画像には、大きな素子塊L1が写りこんでいる。画像編集部12は、これを放射線透視画像から除去するべく、第1マップM1を参照して素子塊L1の形状、大きさ、位置を認識する。そして、画像編集部12は、放射線透視画像における素子塊L1が写りこんでいる画素の塊(以下、欠落画素塊と呼ぶ)の近傍の画素の画素値を参照して、欠落画素塊の画素値を変更する。この変更の具体例としては、欠落画素塊の近傍の領域に位置する画素値を平均して、平均値を欠落画素塊の画素値に充てて補完するのである。欠落画素塊の位置によって、参照される画素領域を変更するようにしてもよい。
【0049】
次に、読み出し間隔は、所定のサンプリング周波数に基づいて、FPD4にデータの読み出しを指示する(ステップS3)。このときの読み出しは、FPD4にX線が照射されていない状態で行われ、取り出されたデータを元に監視用参照画像Rが生成される。したがって、監視用参照画像Rには、被検体Mの透視像を含めて何も写りこんでいないはずである。しかし、詳しく観察すると、監視用参照画像Rには、ある程度のムラが写りこんでいる。このムラは、放射線検出素子の動作の不良性を知る上での指標なる。なお、この様な読み出しをダーク読み出しと呼び、読み出されたデータをダークデータと呼ぶ。また、監視用参照画像Rの生成は、画像生成部11が行う。
【0050】
図6に示すように、監視用参照画像Rには、領域La,Lbのようなムラが現れている。このムラは、図5の素子塊L1にほぼ対応した形状をしてるものの、全く同一ではなく、素子塊L1の形状と若干異なっている。また、図6における領域Lbのように素子塊L1と関係のない部分がムラとなって現れることもある。つまり、監視用参照画像Rにおけるムラは、複数の要因が絡み合って現れるのであり、放射線検出素子の動作の不良性をそのまま忠実に表すわけでない。したがって、図5と図6とを比較すれば明らかなように、監視用参照画像Rを第1マップM1の代わりに画像編集部12に送出するわけにはいかない。
【0051】
このようなFPD4に対するダークデータの読み出しの指示は、間歇的に行われ、その度に監視用参照画像Rが生成される。この監視用参照画像Rの各々は、選択部16に送出される。選択部16は、監視用参照画像Rに表れるムラの塊のうち最大のものをターゲット領域と認識し、監視用参照画像Rにおいて、ターゲット領域がどのように変遷するかを監視する。ターゲット領域は、FPD4の安定化に伴い、次第に小さくなっていく。FPD4における不良素子の影響を受け、動作が不良のように振舞っていた放射線検出素子(回復素子)が正常に動作するようになるからである。
【0052】
また、選択部16の素子塊の観察は、上述以外にも、例えば、監視用参照画像Rに表れる複数の素子塊をターゲット領域として選択し、これらの縮小を監視する構成としてもよい。この様に構成すれば、選択部16は、X線を検出することができない放射線検出素子をより正確にモニタすることができる。また例えば、選択部16が監視用参照画像Rに写りこんだ素子塊のうちの監視用参照画像Rに表れる大きさが大きい順に複数の素子塊をターゲット領域として選択し、選択された素子塊の大きさの平均値の減少を監視してもよい。
【0053】
なお、選択部16は、複数の素子塊の大きさの認定したり、素子塊を大きさ順に順番付けたり、素子塊の大きさの平均値を演算したりと、素子塊の監視に係る動作の一切を実行する。
【0054】
FPD4が安定すると、ターゲット領域は、これ以上小さくならなくなる。選択部16は、ターゲット領域の大きさの変化が所定の範囲内に収まったときに、FPD4が安定したものと認識して(ステップS4)、この状態にふさわしい第2マップM2を第2マップ記憶部18から読み出し、これを画像編集部12に送出する(ステップS5)。画像編集部12は、第1マップM1を破棄し、第2マップM2を用いて欠落画素塊を埋め合わせる画像処理を行う。第2マップM2には、FPD4が安定な状態における、恒常的不良素子がFPD4のどこに位置するかを記憶する2次元データとなっている。つまり、第2マップM2は、図7のように、小さな素子塊L2がマッピングされた2次元データである。
【0055】
<X線照射の割り込み>
以上のような動作と平行して、X線撮影装置1は、操作卓23を通じ、X線透視画像の撮影の指示を受け付ける。X線透視撮影は、X線管3からX線を照射されて行われる。一方、ダーク読み出しは、X線を照射されない状態で行われる。したがって、上述のダーク読み出しが絶えることなく行われると、X線管3からX線を照射する機会を見出すことができず、X線透視撮影の実行ができない。そこでX線撮影装置1においては、ダーク読み出しと、X線撮影とが競合する場合、X線撮影を優先する構成となっている。すなわち、読み出し制御部8は、X線透視画像の撮影が指示された時点で、次回のダーク読み出しを中止する。X線管3からX線が照射され、FPD4には、被検体Mの透視像が写りこむ。読み出し制御部8は、これをFPD4から取り出す目的で、FPD4に対して検出データの読み出しを指示する。画像生成部11は、出力された検出データを組み立てて、X線透視画像を生成する。これは、画像編集部12において画像処理が施された後、表示部24に表示される。その後、X線撮影装置1は、ダーク読み出しを再開し、次回のX線透視撮影に備える。
【0056】
<第1マップM1,第2マップM2の取得方法>
次に、各マップの取得方法について説明する。第2マップM2は、X線撮影装置1が、アイドル状態のときに取得されるもので、FPD4が安定しているときに生成される。すなわち、X線撮影装置1は、ダーク読み出しを幾度か行って、複数の第2マップ作成用参照画像R2を取得する。第2マップ作成用参照画像R2を実際に生成するのは、画像生成部11である。積算部15は、この第2マップ作成用参照画像R2を積算して第2マップM2を生成する。
【0057】
第1マップM1の生成方法は、第2マップM2のそれとは異なっている。図8は、実施例1に係るFPDの読み出しを説明するタイミングチャートである。図8(a)に示すように、第2マップM2においては、コンデンサ55(図3参照)が電荷を蓄積する時間である蓄積時間T2を経過した後、読み出し時間T3の間にデータを読み出す。一方、第1マップM1を取得する場合、図8(b)に示すように、蓄積時間T1は、第2マップM2における蓄積時間よりも長いものとなっている。この様にすることで、電源投入直後におけるFPD4が不安定な状態を再現することができる。したがって、第1マップM1は、電源投入の直後の使用に適している。このような状態で、ダーク読み出しが幾度か行おこなわれ、複数の第1マップ作成用参照画像R1を取得される。第1マップ作成用参照画像R1を実際に生成するのは、画像生成部11である。積算部15は、これらを積算して第1マップM1を生成する。
【0058】
なお、第1マップM1,および第2マップM2は、X線撮影装置1の電源を投入する前に準備しておく必要がある。そこで、X線撮影装置1は、前回稼働していたときに各マップM1,M2を生成しておく。ある日、X線撮影装置1を用いた被検体の検査が終了し、術者が操作卓23を通じてX線撮影装置1の電源を落とす指示を行う。すると、X線撮影装置1は、各マップM1,M2を生成してから電源が落ちる構成となっている。こうして、X線撮影装置1は、電源が落ちる前にあらかじめ各マップM1,M2を用意し、次の電源投入の直後から放射線撮影ができるような構成となっているのである。
【0059】
以上のように、実施例1の構成によれば、FPD4の状態に係らず、動作不良素子が除去されて診断に好適な画像の取得が可能なX線撮影装置1が提供できる。すなわち、実施例1の構成に係るX線撮影装置1は、第1マップ記憶部17と第2マップ記憶部18とを備え、2つのマップのうちのいずれかを選択して画像に写りこむ動作不良素子を除去する構成となっている。したがって、FPD4の状態に合わせて、動作不良素子の除去に適したマップを選んで使用することができる。
【0060】
しかも、実施例1の構成によれば、いずれのマップを使用するかを選択部16が選択する。具体的には、選択部16は、まず第1マップM1を選択する。これが、FPD4が初期状態のときに適したマップである。続いて、選択部16は、監視用参照マップRを通じてFPD4を監視し、適当なタイミングで動作不良素子の除去処理に使用するマップを第2マップM2に変更する。第2マップM2は、例えば、FPD4の状態の変化が収まって安定状態となっているときに適したマップである。
【0061】
選択部16によるマップの切り替えは、次のようにして行われる。すなわち、間歇的に監視用参照画像Rが取得される。監視用参照画像Rを比較すると、X線を検出することができない放射線検出素子の経時的な減少を知ることができる。選択部16は、減少が所定の水準にまで低下したとき、第1マップM1に代えて第2マップM2を選択する。実施例1の構成は、マップの変更を監視用参照画像Rを基に行う構成となっているので、画像に写りこんだ動作不良検出素子は、的確に除去され、FPD4の安定性に係らず、常に診断に好適な放射線透視画像を取得することができる。
【0062】
第2マップM2の具体的な生成の様子は、以下のようなものである。すなわち、第2マップM2は、複数の第2マップ作成用参照画像R2を積算することで生成される。第2マップ作成用参照画像R2は、動作不良素子を写し込んでいるが、動作不良素子の位置を忠実に特定したものではない。すなわち、第2マップ作成用参照画像R2にムラが出現するとき、動作不良素子の存在以外の様々な要因が絡み合っている。第2マップ作成用参照画像R2を積算すれば、多種に及ぶ不確定的な要因を除去して、動作不良素子の位置が際立って示されるのである。
【0063】
第1マップM1の具体的な生成の様子は、以下のようなものである。第1マップM1においても、複数枚の第1マップ作成用参照画像R1を積算して、X線を検出することができない検出素子の位置が際立って示された第1マップM1が生成される。さらに、第1マップ作成用参照画像R1は、蓄積時間を第2マップ作成用参照画像R2を取得するときよりも長いものとした状態で取得される。これにより、FPD4が初期的状態にあるときの検出素子の動作不良性が再現され、FPD4が初期的状態にある場合に適した第1マップM1を生成することができる。
【0064】
また、実施例1の構成は、FPD4に放射線を当てずして、監視用参照画像Rを生成できる。被検体がFPD4と、X線管3との間にセットされた状態で放射線が照射されると、FPD4には被検体の透視像が写りこむ。ところで、監視用参照画像Rは、X線を検出することができない検出素子の挙動を写し込んでいる必要があり、これ以外の余計な像が写りこんでいると選択部16が行う監視の邪魔となる。ということは、被検体がセットされた状態では、監視用参照画像Rの取得できないことになってしまう。しかし、上述の構成のように、監視用参照画像Rは、FPD4に放射線像が写りこんでいない状態で取得されれば、被検体がセットされた状態でも、監視用参照画像Rの監視が可能となる。こうして、被検体がセットされた状態で、マップの交換を行うことができる。
【0065】
また、実施例1の構成は、監視用参照画像Rの取得を行いながら放射線透視画像を取得することができる。すなわち、放射線がFPD4に向けて照射されたとき、これに写りこんだ放射線像が読み出されて、被検体Mが写りこんだ放射線透視画像が取得される。この間に監視用参照画像Rに係る読み出しが行われることがない。つまり、放射線透視画像の取得と監視用参照画像Rの取得とが競合する場合、放射線透視画像の取得が優先される。これにより、術者が指示したタイミングで確実に放射線透視画像を取得することができるので、操作性に優れたX線撮影装置1が提供できる。
【0066】
また、実施例1の構成は、選択部16が行う監視用参照画像Rの監視をより容易に行うことのできる構成となっている。すなわち、選択部16は、監視用参照画像Rに写りこんだ素子塊のうち最大のものをターゲット領域と認識し、これの変化を観察する。そして、選択部16は、ターゲット領域の大きさの変化が所定の水準まで低下したとき、マップの切替を行うのである。つまり、選択部16は、監視用参照画像Rの全域について監視を行う必要はなく、監視用参照画像Rの限られた領域について監視すれば十分である。この様に構成することで、選択部16における演算負荷が軽減されることになり、より機械的構成が簡単なX線撮影装置1が提供できる。
【実施例2】
【0067】
次に、実施例2の構成について説明する。実施例2は、実施例1の構成とほぼ同一である。しかし、上述のステップS2を終えた選択部16の動作が実施例1とは異なっている。ステップS2を終えた選択部16は、正常に動作することができるようになる検出素子(回復素子)の放射線検出能の回復が完了するまでの時間を示す所定の待機時間の間待機し、この時間が経過した後、第2マップM2を選択してこれを画像編集部12に送出する。この様にすれば、素子塊の監視を行わなくとも、選択部16は、好適なタイミングで、マップの切替を指示することができる。
【0068】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0069】
(1)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0070】
(2)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【符号の説明】
【0071】
R 監視用参照画像
R1 第1マップ作成用参照画像
R2 第2マップ作成用参照画像
1 X線撮影装置(放射線撮影装置)
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
6 X線管制御部(照射許可手段)
8 読み出し制御部(読み出し実行手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
12 画像編集部(画像処理手段)
15 積算部(積算手段)
16 選択部(選択手段)
17 第1マップ記憶部(第1マップ記憶手段)
18 第2マップ記憶部(第2マップ記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、放射線を検出するとともに複数の放射線検出素子を有する放射線検出手段と、前記放射線検出手段に対して検出データの読み出しを実行する読み出し実行手段と、前記検出データを基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、
前記放射線検出手段が有する放射線検出素子のうち、放射線を検出することができない放射線検出素子を一時的不良素子とし、
前記一時的不良素子のうち、時間をおくと放射線を検出する能力が回復するものを回復素子とし、これ以外の放射線を検出する能力が回復しないものを恒常的不良素子としたとき、
前記一時的不良素子の前記放射線検出手段における位置を示す第1マップを記憶する第1マップ記憶手段と、
前記恒常的不良素子の前記放射線検出手段における位置を示す第2マップを記憶する第2マップ記憶手段と、
前記マップを用いて前記画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子に由来する画素を補完する画像処理手段と、
前記第1マップ、および前記第2マップのうちのいずれを前記画像処理手段に使用させるかを選択する選択手段とを備え、
(A)前記選択手段は、前記第1マップを選択し、
(B)前記読み出し実行手段は、間歇的に前記放射線検出手段からデータの読み出しを行って、その度に前記画像生成手段に監視用参照画像を生成させ、
(D)前記選択手段は、前記監視用参照画像の各々に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子の減少を逐次監視し、
(E1)前記選択手段は、前記減少が前記回復素子の放射線検出能の回復が完了した時点を示す所定の水準まで低下した時、前記第1マップに代えて前記第2マップを選択することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記回復素子は、放射線撮影装置の電源投入時には放射線を検出することができないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記画像生成手段が生成する参照画像を積算する積算手段を更に備え、
前記第2マップは、前記減少が所定の水準まで低下した時点において取得された複数の第2マップ作成用参照画像を積算することにより得られるものであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線検出手段は、
前記放射線を電荷に変換する変換手段と、
前記電荷を蓄積する蓄積手段とを備え、
前記第1マップは、前記蓄積手段に電荷を蓄積させる時間である蓄積時間を第2マップ作成用参照画像を取得するときよりも長いものとした状態で、複数の第1マップ作成用参照画像を取得し、これらを積算することにより得られるものであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記第1マップは、被検体の検査の終了後に取得されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記監視用参照画像は、前記放射線検出手段に放射線像が写りこんでいない状態で取得されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源に対して放射線の照射を許可する照射許可手段を備え、
(C)放射線の照射が許可され、前記放射線源から放射線の照射がなされたとき、前記読み出し実行手段は、前記放射線検出手段に写りこんだ放射線像の読み出しを実行して前記画像生成手段に放射線透視画像を生成させ、放射線像の読み出しに競合する前記監視用参照画像に係る読み出しを行わないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
(D1)前記選択手段は、前記監視用参照画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子が集合している塊である素子塊のうち、前記監視用参照画像に表れた最大の素子塊の縮小を逐次監視することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
(D2)前記選択手段は、前記監視用参照画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子が集合している塊である素子塊のうち、前記監視用参照画像に表れた複数の素子塊の縮小を逐次監視することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
(D3)前記選択手段は、前記監視用参照画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子が集合している塊である素子塊のうち、前記監視用参照画像に表れる大きさが大きい順に複数の素子塊を選択し、選択された素子塊の大きさの平均値の減少を逐次監視することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
放射線を照射する放射線源と、放射線を検出するとともに複数の放射線検出素子を有する放射線検出手段と、前記検出データを基に画像を生成する画像生成手段とを備えた放射線撮影装置において、
前記放射線検出手段が有する放射線検出素子のうち、放射線を検出することができない放射線検出素子を一時的不良素子とし、
前記一時的不良素子のうち、時間をおくと放射線を検出する能力が回復するものを回復素子とし、これ以外の放射線を検出する能力が回復しないものを恒常的不良素子としたとき、
前記一時的不良素子の前記放射線検出手段における位置を示す第1マップを記憶する第1マップ記憶手段と、
前記恒常的不良素子の前記放射線検出手段における位置を示す第2マップを記憶する第2マップ記憶手段と、
前記マップを用いて前記画像に写りこんだ放射線を検出することができない放射線検出素子に由来する画素を補完する画像処理手段と、
前記第1マップ、および前記第2マップのうちのいずれを前記画像処理手段に使用させるかを選択する選択手段とを備え、
(A)前記選択手段は、前記第1マップを選択し、
(E2)前記選択手段は、前記第1マップの選択から、前記回復素子の放射線検出能の回復が完了するまでの時間を示す所定の待機時間が経過した時点で前記第2マップを選択することを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−246714(P2010−246714A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98885(P2009−98885)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】