説明

放射線断層画像取得装置

【課題】円弧状に移動しながら複数のX線照射をおこない、より品質の良い行い乳房の断層画像を得るトモシンセシス撮影装置を提供する。
【解決手段】乳房の放射線画像を検出する放射線画像検出器と、放射線画像検出に対向して設けられ、円弧状に移動しながら複数の照射方向から放射線を照射する放射線照射部と、乳房の被写体の厚さを検出する検出手段と、照射方向θと被写体の厚さbに応じて、放射線画像検出器241に入射する放射線量が一定になるように照射方向θから照射する放射線量の制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影により断層画像を取得する放射線断層画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、X線撮影装置(CR:computed radiography)においても、患部をより詳しく観察するために、X線管を移動させて異なる角度から被写体にX線を照射して撮影を行い、得た画像を加算して所望の断層面を強調した画像を得ることができるトモシンセシス撮影(Tomosynthesis)が提案されている。
トモシンセシス撮影では、X線管をフラットパネルなどの検出器と平行に移動させたり、円や楕円の弧を描くように移動させて、異なる照射角から一定の被写体にX線量で照射して撮影した複数の放射線画像を取得して、これらの放射線画像を再構成して断層画像を作成する。断層画像は、複数の放射線画像を平行移動したり画像の大きさを調整して加算することにより取得することができる(例えば、特許文献1、特許文献2など)。
【0003】
また、トモシンセシスを行うために被写体に複数回を照射するときに、単純X線撮影と同じ線量を毎回照射すると被曝量が大きくなるため、1回当たりに照射する線量は照射回数が増えるほど低い線量の放射線を照射するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−305031公報
【特許文献2】特開2004−188200公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異なる照射角から撮影を行うと放射線が被写体を透過する距離が違ってくるため、一定の線量で撮影を行なっても撮影される画像の濃度が変わってくる。また、トモシンセシス撮影では複数回撮影を行うため、1回当たりに照射する線量は少なくするため、各放射線画像上に距離による影響が大きく表れ、放射線画像を加算して得られる断層画像上にもその影響が現れることになる。
【0006】
そこで、本願発明では、トモシンセシス撮影において、より品質のよい断層画像が得られるような放射線画像を取得する放射線断層画像取得装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の乳房画像撮影装置は、乳房の放射線画像を検出する放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器に対向して設けられ、円弧状に移動しながら複数の照射方向から放射線を照射しトモシンセシス撮影をする放射線照射部と、
前記乳房を載せる撮影台と、
前記乳房の厚さを検出する厚さ検出手段と、
前記各照射方向と前記厚さに応じて、前記放射線画像検出器に入射する放射線量が一定になるように前記各照射方向から照射する放射線量を制御する放射線照射量制御手段とを備え、
前記放射線照射量制御手段が、
前記放射線照射部が基準方向において照射した放射線量と、前記基準方向において前記放射線照射部が放射線を照射したときに前記放射線画像検出器により検出された放射線量と、前記基準方向と前記各照射方向とのなす角とに基づいて、前記各照射方向から照射する放射線量を制御するものであることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記乳房画像撮影装置が、前記放射線照射量制御手段が、
前記照射した放射線量と前記放射線画像検出器により検出された放射線量とを用いて前記乳房を放射線が透過するときの透過係数を求めて、該透過係数および前記基準方向と前記各照射方向とのなす角とに基づいて前記各照射方向から照射した放射量を制御するものであってもよい。
【0009】
また、上記乳房画像撮影装置が、前記撮影台の上面の法線方向に対する前記照射方向の傾きが大きくなるに従って、前記法線方向から放射線を照射したときより放射線量が大きくなるように制御するものであってもよい。
【0010】
さらに、上記乳房画像撮影装置が、前記撮影台上に載せた乳房を圧迫する圧迫板および該圧迫板を移動する圧迫板移動手段をさらに備え、
前記厚さ検出手段は、前記圧迫板移動手段で前記圧迫板を移動させて前記乳房を圧迫したときの前記圧迫板の位置に基づいて、前記乳房の厚さを求めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トモシンセシス撮影を行う際に、被写体と放射線の照射方向に応じて、放射線画像検出器に入射する放射線量が一定になるように制御することにより、トモシンセシス撮影した放射線画像から生成した断層画像の品質を向上させることができる。
【0012】
また、基準方向から放射線照射部が照射した放射量と被写体を透過した放射線量から、被写体によって減衰する放射線量に応じて放射線照射部から照射する放射線量を制御することにより、被写体によらず常に適切な線量でトモシンセシス撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】放射線断層画像取得装置の構成図
【図2】乳房画像撮影装置のアームの部分の正面図
【図3】乳房画像撮影装置のアームの部分の回転の様子を表わした正面図
【図4】圧迫板と撮影台内の固体検出器と線量検出器の関係を表わす図
【図5】乳房用画像撮像装置の撮影台内部の概略図
【図6】放射線画像検出器(固体検出器)の概略図
【図7】放射線画像検出器および電流検出手段の接続態様を示した図
【図8】電流検出手段および高電圧電源部の詳細およびこれらと固体検出器の接続態様を示したブロック図
【図9】放射線の減衰と放射線源からの照射方向の関係を説明するための図
【図10】放射線画像検出器に到達した放射線の減衰を表す図
【図11】断層画像生成装置の構成図
【図12】放射線画像から断層画像を再構成する方法を説明するための図
【図13】撮影時の撮影台の傾きと乳房の位置を示す図
【図14】撮影角と撮影間隔の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態では、撮影台に乳房を載せて圧迫板で乳房を圧迫した状態で撮影する乳房画像撮影装置に、トモシンセシスの機能を設けて、圧迫した状態の乳房をトモシンセシス撮影する放射線断層画像取得装置について説明する。
【0015】
図1は、本発明による放射線断層画像取得装置の概略図、図2は放射線断層画像取得装置を構成する乳房画像撮影装置のアーム部分の正面図である。
【0016】
放射線断層画像取得装置1は、被写体の乳房Mを異なる方向から放射線を照射して撮影した複数の放射線画像を取得する乳房画像撮影装置2と、乳房画像撮影装置2で取得した複数の放射線画像を再構成して断層画像を生成する断層画像生成装置3と、乳房画像撮影装置2と断層画像生成装置3を接続するネットワーク4から構成される。
【0017】
乳房画像撮影装置2は、内部に放射線照射部(以下、放射線源という)22を収納する放射線収納部23と、内部にフラットパネルディテクター等の放射線画像検出器241をカセッテなど記録媒体保持部に収容した撮影台24と、放射線収納部23と撮影台24とが対向するように連結するアーム25と、アーム25を軸Cで取り付ける基台26と、放射線源22からの放射線の照射を制御する放射線源制御部27と、断層画像生成装置3にネットワーク4を介して撮影した放射線画像などのデータの送信を行う送信部261とから構成される。
【0018】
基台26には、さらに、オペレータがアーム25の高さや回転量や方向を調整するための操作部28と、操作部28からの入力に従ってアーム25を上下移動および回転移動させるアーム移動手段29が設けられる。
【0019】
アーム25には、放射線収納部23と撮影台24の間に、撮影台24上に上から被写体の乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板210を取り付けるための取付部251と、取付部251をアーム25の縦方向に上下動する圧迫板移動手段252が設けられる。
【0020】
圧迫板210にはアーム25の取付部251に差し込むための差込部211が設けられる。
【0021】
放射線収納部23には、内部に放射線源22が収納され、放射線源移動手段221でアーム移動手段29を制御して、図2に示すようにC軸を中心に放射線収納部23を回転させ、照射線源22を撮影台24の被写体の胸壁Hに向かう辺(通常は、矩形の撮影台24の長辺)に沿った方向に円弧状に放射線源22を移動させる(図3参照)。
【0022】
放射線源22は、円弧状に移動しながらS1、S2、・・・、SNの各照射位置から撮影台24上に載せられた乳房Mに対して異なる照射方向から放射線を照射する。また、乳房Mの撮影を行う際には、撮影台24上に乳房Mを置いて上から圧迫板210で圧迫した状態で撮影を行うため乳房Mの厚さは4cm〜5cm位になる。そこで、乳房Mを観察するのに適した画像を取得するためには、照射線源2が、撮影台24の撮影面の中心付近(具体的には、撮影台24の上面に乳房Mを置いたときに乳房Mの中心となる位置)より2cm程度上がった点Q(以下、照射ポイントという)に向けて各位置から放射線を照射するのか好ましい。
【0023】
撮影台24の内部には、図2に示すように、放射線の照射を受けて乳房Mを透過した線量に応じた放射線画像を記録し、記録した放射線画像を出力するフラットパネルディテクター241と、フラットパネルディテクター241の下に放射線収納部23から照射された放射線が乳房Mを透過した線量を検出する線量検出器242とが配置されている。
【0024】
また、アーム25の回転中心がフラットパネルディテクター241の中心となるようにフラットパネルディテクター241の中心位置に回転の中心となる軸Cを取り付けて、アーム25を基台26に取り付ける(図2参照)。
【0025】
以下、本実施の形態では、放射線画像検出器241がフラットパネルディテクターである場合の撮影台24の構成について、図4から図7を用いて説明する。
【0026】
撮影台24の内部には、図4に示すように、放射線画像検出器241に記録された画像情報の読取時に使用される読取用露光光源部243と、読取用露光光源部243を副走査方向に移動させる読取用露光光源部移動手段244と、読取用露光光源部243による放射線画像検出器241への走査露光時に放射線画像検出器241から流れ出す電流を検出して画像信号を得る電流検出手段245と、放射線画像検出器241に所定の電圧を印加する高電圧電源部246と、撮影開始前に放射線画像検出器241に前露光光を照射する前露光光源部260と、放射線画像検出器241を撮影台24内部において被写体の胸壁Hに近接させる方向および胸壁Hから離間させる方向(上述の副走査方向)に移動させる放射線画像検出器移動手段247と、読取用露光光源部243、電流検出手段245、高電圧電源部246、前露光光源部260、移動手段247および244を制御する制御手段248とが配置される。
【0027】
放射線画像検出器241は、直接変換方式かつ光読出方式の固体検出器であって、画像情報を担持する記録光が照射されることによりこの画像情報を静電潜像として記録し、読取光で走査されることにより静電潜像に応じた電流を発生するものであり、具体的には図6に示すように、ガラス基板416上に形成されており、乳房Mを透過した放射線(以下、記録光という)に対して透過性を有する第一導電層411、記録光の照射を受けることにより電荷を発生して導電性を呈する記録用光導電層412、第一導電層411に帯電される潜像極性電荷に対しては略絶縁体として作用し、かつ、該潜像極性電荷と逆極性の輸送極性電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層413、読取光の照射を受けることにより電荷を発生して導電性を呈する読取用光導電層414、読取光に対して透過性を有する第二導電層415をこの順に積層してなるものである。記録用光導電層412と電荷輸送層413との界面に蓄電部417が形成される。
【0028】
第一導電層411および第二導電層415はそれぞれ電極をなすものであり、第一導電層411の電極は2次元状に平坦な平板電極とされ、第二導電層415の電極は図中斜線で示すように、記録されている画像情報を画像信号として検出するための多数のエレメント(線状電極)415aが画素ピッチでストライプ状に配されたストライプ電極とされている(例えば特開2000−105297記載の静電記録体を参照)。エレメント415aの配列方向が主走査方向、エレメント415aの長手方向が副走査方向に対応する。
【0029】
この固体検出器241のサイズは大きいサイズの乳房Mに対応できるように長辺30cm×短辺24cmのものを用い、長辺方向が主走査方向、短辺方向が副走査方向となるように撮影台24内に収容される。
【0030】
読取用露光光源部243としては、LEDチップが一列に複数並べられて構成されたライン光源と、該光源から出力された光を固体検出器241上で線状に照射させる光学系とからなるものを用いる。なお、光源部243を固体検出器241と必要な距離を保ったままリニアモータからなる移動手段244により、固体検出器241のストライプ電極415a長手方向、即ち副走査方向に走査することにより固体検出器241の全面の露光を行う。なお、読取用露光光源部243および移動手段244により読取光走査手段が構成される。
【0031】
図7は固体検出器241および電流検出手段245の接続態様の詳細を示した図である。図示するように、被検者の胸壁Hに接する辺において、固体検出器241の各エレメント415aがTAB( Tape Automated Bonding )フィルム上に形成されたプリントパターン(不図示)を介してチャージアンプIC233と接続され、さらにチャージアンプIC233がTABフィルム232上に形成されたプリントパターン(不図示)を介してプリント基板231と接続されている。なお、本実施の形態では全てのエレメント215aを1つのチャージアンプIC233に接続するのではなく、全体として数個〜数10個のチャージアンプIC233を設け、順次隣接する数本〜百本程度のエレメント415a毎に各チャージアンプIC233に接続するようにしている。
【0032】
なお、電流検出手段245は、上述の態様に限定されるものではなく、チャージアンプIC233をTABフィルム上に形成せずに、ガラス基板416上に形成する、いわゆるCOG( Chip On Glass )と呼ばれる態様としてもよい。
【0033】
図8は撮影台24内に設けられた電流検出手段245および高電圧電源部710の詳細、並びにこれらと固体検出器241との接続態様を示したブロック図である。
【0034】
高電圧電源部710は、高電圧電源711とバイアス切換手段712とが一体化された回路であり、高電圧電源711は、一旦、静電記録部241へのバイアス印加/短絡など切換えのためバイアス切換手段712を介して静電記録部241に接続されている。なお、この回路は、切換え時に流れる電流の尖頭値を制限して装置の電流が集中する箇所の破壊を防ぐために、充放電過大電流を防止するように設計されている。
【0035】
TABフィルム上に設けられたチャージアンプIC233は、固体検出器241の各エレメント415a毎に接続された多数のチャージアンプ233aおよびサンプルホールド(S/H)233b、各サンプルホールド233bからの信号をマルチプレクスするマルチプレクサ233cを備えている。固体検出器241から流れ出す電流は各チャージアンプ233aにより電圧に変換され、該電圧がサンプルホールド233bにより所定のタイミングでサンプルホールドされ、サンプルホールドされた各エレメント415aに対応する電圧がエレメント415aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ233cから順次出力される(主走査の一部に相当する)。マルチプレクサ233cから順次出力された信号はプリント基板231上に設けられたマルチプレクサ231cに入力され、さらに各エレメント415aに対応する電圧がエレメント415aの配列順に切り替わるようにマルチプレクサ231cから順次出力され主走査が完了する。マルチプレクサ231cから順次出力された信号はA/D変換部231aによりデジタル信号に変換され、デジタル信号がメモリ231bに格納される。
【0036】
前露光光源部260としては、短時間で発光/消光し、残光の非常に小さい光源が必要となるため、本実施の形態においては外部電極型希ガス蛍光ランプを利用する。詳細には前露光光源部260は、図5に示すように、図中紙面奥方向に延びる複数の外部電極型希ガス蛍光ランプ261と、該蛍光ランプ261と固体検出器241との間に挿入された波長選択フィルタ262と、蛍光ランプ261の後方に配され、蛍光ランプ261から出力された光を効率よく固体検出器241側へ反射するための反射板263とを備える。なお、前露光光は固体検出器241の第二導電層415全体に照射すればよく特に集光手段は必要ないが、照度分布は小さい方がよい。なお、光源としては蛍光ランプの代わりに、例えばLEDチップを面的に並べたものを利用するもことできる。
【0037】
移動手段247は、図示しないリニアモータなどにより構成され、固体検出器241を撮影位置と読取位置との間で平行往復移動させる。
【0038】
フラットパネルディテクターは、上述で説明したような固体検出器以外にも、固体検出素子の蓄電部に蓄積された信号電荷を、該蓄電部と接続されたTFTを走査駆動して読み出すTFT読出方式を用いることができる(例えば、特開2004-80749公報、特開2004-73256公報などを参照)。
【0039】
線量検出器(線量検出手段)242は、フラットパネルディテクター241の下部に設置され、放射線照射部が照射した放射線がフラットパネルディテクター241に入射する入射量を検出する。線量検出器242として、例えば放射線の線量を計測するセンサーとして半導体検出器が配列されたAECセンサーが用いられる。あるいは、フラットパネルディテクター241に照射された放射線の線量から検出するようにしてもよい。以下、本実施の形態では、線量検出器242をAECセンサーとして説明する。
【0040】
放射線源制御手段27は、乳房の厚さを検出する厚さ検出手段271と、放射線源22の管電圧や管電流などを制御してする放射線照射量制御手段272とを備える。
【0041】
厚さ検出手段271は、圧迫板移動手段252で圧迫板210を移動させて乳房Mを圧迫したときの位置から乳房の厚さを求める。あるいは、操作パネルなどからオペレータが計測した乳房Mの厚さを入力したものを厚さ検出手段271で受取って用いてもよい。
放射線照射量制御手段272は、放射線源22の管電圧や管電流などを制御して照射される放射線量を制御するが、放射線源22の照射方向と被写体の厚さとに応じて、フラットパネルディテクター241に入射する放射線量が一定になるように放射線量を制御する。
【0042】
そこで、まず、放射線源22を基準位置に移動させて基準方向から照射を行い、AECセンサー242で検出した放射線量から、放射線源22から照射された放射線が被写体を透過することにより減衰する基準減衰量を求める。
【0043】
放射線源22は、円弧状に移動しながらS1、S2、・・・、SNの各照射位置から撮影台24上に載せられた乳房Mに対して異なる照射方向から放射線を照射するが、放射線源22が被写体に放射線を照射する方向が撮影台24の上面(あるいは、フラットパネルディテクター241の検出面)の法線方向より大きく傾きほど、放射線が被写体を透過する距離が大きくなり放射線の減衰量は大きくなる。そこで、放射線源22が被写体に放射線を照射する方向が撮影台24の上面の法線方向より大きく傾きほど、照射する放射線量を大きくする。
【0044】
ここで、放射線の減衰と放射線源からの照射方向の関係について検討する。
【0045】
まず、放射線源22を撮影台24の上面と平行に移動させながら撮影する場合について検討する。図9に示すように、放射線源22から圧迫板210までの距離をa、乳房Mの厚さをb、撮影台24の上面からフラットパネルディテクター241までの距離をc、フラットパネルディテクター241からAECセンサー242までの距離をdとし、放射線源22が照射した放射線量をD0とする。
【0046】
このとき、射線源22が放撮影台24の上面の法線方向よりθ傾いた方向から放射線を照射すると、圧迫板210の上面に到達する放射線D1は下式(1)のようになる。
D1=α×D0/a(θ) (1)
ここで、a(θ)=a/cosθ
α : 距離減衰係数
【0047】
さらに、放射線D1が圧迫板210を透過して乳房Mの表面に到達する放射線D2は下式(2)のようになる。
D2=β(θ)×D1 (2)
ここで、β(θ) : 圧迫板の透過率
【0048】
放射線D2が乳房Mを透過して撮影台24の上面に到達する放射線D3は下式(3)のようになる。
【数1】

【0049】
放射線D3が撮影台24を透過してフラットパネルディテクター241の上面に到達した放射線D4は下式(4)のようになる。
【数2】

【0050】
放射線D4がフラットパネルディテクター241を透過してAECセンサー242に到達した放射線D5は下式(5)のようになる。
【数3】

【0051】
図3に示すように、放射線源22を照射ポイントQを中心にした円弧上を移動させる場合に、AECセンサー242に到達する放射線D5’は、放射線源22とフラットパネルディテクター241との距離L’を用いて以下のように修正される。図9に示すように、照射ポイントQを中心にした円弧上を移動する放射線源22から照射ポイントQまでの距離をRとすると、放射線源22とAECセンサー242との距離L’は下式(6)のように表される。
L’=L(θ)+R(1−1/cosθ) (6)
【0052】
したがって、放射線源22は照射ポイントQを中心にした円弧上を移動させる場合にAECセンサー242に到達する放射線D5’は下式(7)のようになる。
【数4】

【0053】
上述のα、β(θ)、γ(θ)、ω(θ)は、それぞれ装置によって決まる既知の値である。また、D0は放射線源22が照射した放射線量であり、D5’はAECセンサー242で検出された放射線量である。そこで、放射線源22が基準位置にあるときに基準方向から照射した放射線量D0と、AECセンサー242で検出された放射線量D5’と、α、β(θ)、γ(θ)、ω(θ)の値を式(7)に代入することにより係数λを求めることができる。例えば、撮影台24上の乳房Mの略中心を通り撮影台24の上面の法線方向に伸びた線上の放射線源22の位置を基準位置(つまり、θ=0を基準方向)とすると、式(7)は下式(8)のようになる。
【数5】

【0054】
式(8)に、θ=0のときに放射線源22から照射した放射線量と、AECセンサー242で検出された放射線量と、α、β(0)、γ(0)、ω(0)の値を代入して係数λを求める。
【0055】
放射線照射量制御手段272は、フラットパネルディテクター241の上面に到達した放射線D4が一定になるように、放射線源22から照射する放射線量D0を各照射位置S1、S2、・・・、SNかで調整するのが好ましい。放射線源22は照射ポイントQを中心にした円弧上を移動させる場合には、フラットパネルディテクター241の上面に到達する放射線D4’は、下式(9)のようになる。
【数6】

【0056】
そこで、放射線照射量制御手段272で(9)式のD4’が一定となるように放射線源22から放射線を照射するように管電圧や管電流などを制御する。また、放射線源22を撮影台24の上面と平行に移動させる場合には、(4)式のD4が一定となるように放射線源22の管電圧や管電流などを制御する。
【0057】
(9)式は、θが大きく傾いてb(θ)が大きくなるほど(つまり、放射線が前記被写体を透過する距離が大きくなるほど)、図10に示すように、フラットパネルディテクター241の上面に到達する放射線量は減衰する。従って、θが大きく傾いて放射線が乳房Mを透過する距離が大きくなるほど、放射線源22から照射する放射線量を大きくする。
【0058】
図11は本実施の形態の断層画像生成装置3の概略図である。
【0059】
断層画像生成装置3は、乳房画像撮影装置2で撮影した放射線画像Iを受信する受信手段31と、放射線画像Iを記憶する放射線画像記憶手段32と、複数の放射線画像Iから断層画像Tを再構成する断層画像再構成手段34と、断層画像Tを表示する表示部35とを備える。
【0060】
放射線画像記憶手段32は、ハードディスクなどの大容量記憶装置である。放射線画像記憶手段32には、乳房画像撮影装置2で放射線源22を各照射位置S1、S2、S3、・・・、Snに移動させながら撮影した放射線画像Iが複数記憶される。
【0061】
断層画像再構成手段34は、S1、S2、S3、・・・、Snの照射位置で撮影された複数の放射線画像Iから断層画像を生成する。図12に示すように、放射線源をS1、S2、S3、・・・、Snの各位置に移動しながら異なる照射方向から乳房Mに放射線を照射すると、それぞれ放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inが得られるものとする。そこで、例えば、放射線源の位置S1から、異なる深さに存在する対象物(O1、O 2)を投影すると、放射線画像I1上にはP11、P12の位置に投影され、放射線源の位置S2から、対象物(O1、O2)を投影すると、放射線画像I2上にはP21、P22の位置に投影される。このように、放射線源22を移動させながら異なる照射位置S1、S2、S3、・・・、Snから照射を行なうと、各放射線源22の位置に対応して対象物O1は、P11、P21、P31、・・・、Pn1の位置に投影され、対象物O2は、P12、P22、P31、・・・、Pn2の位置に投影される。
【0062】
対象物O1の存在する断面を強調したい場合には、放射線画像I2を(P21−P11)分移動させ、放射線画像I3を(P31−P11)分移動させ、・・・、放射線画像Inを(Pn1−P11)分移動させた放射線画像を加算することにより、対象物O1の深さにある断面上の構造物を強調した断層画像が生成される。また、対象物O2の存在する断面を強調したい場合には、放射線画像I2は(P22−P12)分移動させ、放射線画像I3を(P32−P12)分移動させ、・・・、放射線画像Inを(Pn2−P12)分移動させて加算する。このようにして、スライス位置に応じて各放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inを位置合わせして加算することにより、各深さの検出面に平行な断層画像を再構成する。
【0063】
また、放射線源22が各位置S1、S2、S3、・・・、Snから放射線を照射する照射方向に応じて、各深さに存在する対象物が放射線画像I上に投影される位置が異なる。そこで、断層画像再構成手段34では、照射方向に応じた放射線画像I1、I2、・・・、Inの移動量を算出して、断層画像の再構成を行う。
【0064】
ここで、本実施の形態の断層画像取得装置を用いて、被写体の乳房を撮影して断層画像を生成する流れについて具体的に説明する。
【0065】
まず、乳房Mの撮影を行うために、被写体が乳房画像撮像装置2の横に立つと、オペレータは、操作パネルなどの操作部28から被写体の身長に応じたアームの高さと、乳房Mの大きさや形状に応じたアームの回転角を入力し、入力された高さと回転角に応じてアーム移動手段29でアーム25の高さと角度を調整する。MLO撮影の場合は、撮影台24が被写体の胸筋に平行になるように、撮影台24を水平方向から45°〜80°の範囲で傾ける(図13参照)。通常は、60°程度傾けて撮影する。CC撮影の場合には、撮影台24を水平方向に保ち、高さを調整する。
【0066】
また、照射方向がθ=0°のときに放射線源22から照射した放射線が乳房Mの中心部分を通るように乳房Mを撮影台24の撮影面上に置く。つまり、図13に示すように、乳房Mの中心部分を通り、撮影台24内の放射線検出器241の検出面から法線方向に伸びたところに放射線源22が位置するように乳房Mが置かれる。
【0067】
乳房Mは立体的で厚みがあるため、そのまま撮影をすると乳腺や脂肪、血管などが障害になり腫瘍が写しだされないことがあるため、マンモグラフィの検査をする際には、圧迫板210で乳房Mをはさんで薄く均等に引き伸ばして、少ない放射線で小さなしこりの影まではっきり写しだすようにする。そこで、撮影台24が撮影に最適な高さと傾きに調整されると、乳房Mを圧迫板210で圧迫する。
【0068】
オペレータは乳房Mの圧迫状態を確認しながら、操作パネルやフットスイッチなどの操作部28を用いて徐々に乳房Mを加圧するような指示を入力すると、入力に従って圧迫板移動手段252でアーム25の縦方向に徐々に圧迫板210を押し下げて行く。例えば、圧迫力はフットスイッチを1回押すごとに1kg単位で加圧されるようにして、乳房Mが撮影に適した厚さになるようにフットスイッチを押していく。あるいは、圧迫板が下がって乳房Mに触れると徐々に加圧されるようにしてもよい。
【0069】
圧迫が完了すると、放射線収納部23の放射線源22から放射線を照射して乳房Mの撮影を開始する。
【0070】
標準的な乳房Mでは、例えば、図14に示すように、照射の範囲を乳房Mの中心から法線方向に伸びた線を挟んで±15°の範囲とし、3°間隔で放射線画像を11枚撮影する。各位置で照射する線量は、通常撮影のマンモグラフィを撮影するときの線量と、トモシンセシス撮影のトータルの線量が一致するように1回あたりのおおよその線量D0を決める。
【0071】
まず、照射方向がθ=0°の位置で放射線源22から線量D0で照射を行い、AECセンサー241で検出された放射量D5と放射線源22から照射した線量D0とを用いて、式(8)から係数λを求める。
【0072】
放射線源移動手段221で放射線源22を各照射位置S1、S2、・・・、Snに順番に移動させるが、放射線照射量制御手段272は、フラットパネルディテクター241の上面に到達する放射線量(D4’)が一定となるように、各照射位置S1、S2、・・・、Snで放射線源22から照射する放射線を制御する。このようにして各照射位置から乳房Mの照射ポイントQに向けて放射線を照射して放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inを取得する。
【0073】
取得された放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inを、送信部261からを断層画像生成装置3に送信する。さらに、各放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inを撮影した照射位置S1、S2、・・・、SNなどの撮影条件も断層画像生成装置3に送信する。
【0074】
断層画像生成装置3は、受信手段31で乳房画像撮像装置2から送信された放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inを放射線画像記憶手段32に記憶する。
【0075】
再構成手段34は、撮影条件記憶手段33に記憶されている各放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inを撮影した照射位置S1、S2、・・・、Snに応じて、各深さにおける断層位置の断層画像を放射線画像記憶手段32に放射線画像I1、I2、I3、・・・、Inから再構成する。表示部35は、再構成された断層画像を表示する。
【0076】
以上詳細に説明したように、各照射位置でフラットパネルディテクターなどの画像検出器に到達する放射線量が一定になるようにして撮影された画像の濃度を一定にすることで、断層画像の精度を向上させることが可能になる。
【0077】
上述の実施の形態では、放射線源が円弧状に移動させながらトモシンセシス撮影を行う場合について説明を行ったが、撮影台の上面と平行に放射線源を移動させるようにしてもよい。撮影台の上面と平行に放射線源を移動させるようにする場合には、フラットパネルディテクターに到達する放射線量は(4)式であらわされ、D4の値が一定となるように放射線源から照射する量を制御する。
【0078】
上述の実施の形態では、乳房を撮影する場合について説明したが、被写体の他の部位を撮影するものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 放射線断層画像取得装置
2 乳房画像撮影装置
3 断層画像生成装置
4 ネットワーク
22 放射線照射部
23 放射線収納部
24 撮影台
25 アーム
26 基台
27 放射線源制御部
28 操作部
29 アーム移動手段
31 受信手段
32 放射線画像記憶手段
33 撮影条件記憶手段
34 再構成手段
35 表示部
210 圧迫板
241 放射線画像検出器
251 取付部
252 圧迫板移動手段
210 圧迫板
211 差込部
221 放射線源移動手段
261 送信部
271 厚さ検出手段
272 放射線照射量制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房の放射線画像を検出する放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器に対向して設けられ、円弧状に移動しながら複数の照射方向から放射線を照射しトモシンセシス撮影をする放射線照射部と、
前記乳房を載せる撮影台と、
前記乳房の厚さを検出する厚さ検出手段と、
前記各照射方向と前記厚さに応じて、前記放射線画像検出器に入射する放射線量が一定になるように前記各照射方向から照射する放射線量を制御する放射線照射量制御手段とを備え、
前記放射線照射量制御手段が、
前記放射線照射部が基準方向において照射した放射線量と、前記基準方向において前記放射線照射部が放射線を照射したときに前記放射線画像検出器により検出された放射線量と、前記基準方向と前記各照射方向とのなす角とに基づいて、前記各照射方向から照射する放射線量を制御するものであることを特徴とする乳房画像撮影装置。
【請求項2】
前記放射線照射量制御手段が、
前記照射した放射線量と前記放射線画像検出器により検出された放射線量とを用いて前記乳房を放射線が透過するときの透過係数を求めて、該透過係数および前記基準方向と前記各照射方向とのなす角とに基づいて前記各照射方向から照射した放射量を制御するものであることを特徴とする請求項1記載の乳房画像撮影装置。
【請求項3】
前記放射線照射量制御手段が、
前記撮影台の上面の法線方向に対する前記照射方向の傾きが大きくなるに従って、前記法線方向から放射線を照射したときより放射線量が大きくなるように制御するものであることを特徴とする請求項1または2記載の乳房画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影台上に載せた乳房を圧迫する圧迫板および該圧迫板を移動する圧迫板移動手段をさらに備え、
前記厚さ検出手段は、前記圧迫板移動手段で前記圧迫板を移動させて前記乳房を圧迫したときの前記圧迫板の位置に基づいて、前記乳房の厚さを求めることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の乳房画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−196492(P2012−196492A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132579(P2012−132579)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【分割の表示】特願2007−99382(P2007−99382)の分割
【原出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】