説明

放射線検出器、放射線画像撮影装置及びプログラム

【課題】より的確に放射線の照射量を検出することができる。
【解決手段】放射線が照射されることにより光を発生する発光層13と、発光層13に積層され、発光層13で発生した光を受光することにより電荷が発生するセンサ部および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を含んだ画素が複数個形成された基板22と、発光層13の基板22が積層された側と反対側、または基板22の発光層13が積層された側と反対側に積層され、各々重ならないように配置された各々互いに異なる波長帯域の光を通過させる複数のフィルタ25と、複数のフィルタ25の発光層13が積層された側とは反対側またはフィルタ25の基板22が積層された側と反対側に積層された導光板26と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する放射線検出器、当該放射線検出器を備えた放射線画像撮影装置、及び当該放射線画像撮影装置により実行されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置が実用化されている。なお、この放射線画像撮影装置に用いられる放射線検出器には、放射線を変換する方式として、放射線をシンチレータで光に変換した後にフォトダイオード等の半導体層で電荷に変換する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等があり、各方式でも半導体層に使用可能な材料が種々存在する。
【0003】
ところで、この種の放射線画像撮影装置では、当該放射線画像撮影装置自身によって放射線の照射開始や照射量等を検出することができれば、放射線画像撮影装置および放射線源等を統括的に制御する撮影制御装置(所謂コンソール)と放射線源との接続を行う必要がなくなるため、システム構成を簡略化したり、撮影制御装置による制御を簡略化したりするうえで好ましい。
【0004】
なお、放射線画像撮影装置自身で放射線の照射開始を検出し、当該照射開始が検出されたタイミングで放射線検出器による動作モードを撮影モードに移行する処理を本明細書では「同期制御処理」という。また、放射線画像撮影装置自身で放射線の照射量を検出し、当該照射量が撮影条件等に基づいて予め定められた量に達したタイミングで放射線発生装置による放射線の照射を停止させる処理を本明細書では「照射制御処理」という。
【0005】
この種の放射線の照射状態を検出することのできる放射線画像撮影装置に関する技術として、特許文献1には、画素を構成する放射線検出素子が2次元マトリクス状に複数配列され放射線を検出する矩形状のセンサパネル部と、前記放射線検出素子に蓄積された電荷を読み出して電気信号に変換する検出部と、前記センサパネル部及び前記検出部を内蔵し、少なくとも1面が放射線を透過可能とされた筐体と、前記センサパネル部よりも放射線入射側に配置され、入射する放射線の一部を光に変換する蛍光体層と、この蛍光体層により発生した光を所定方向にガイドする光ガイド部材と、を有する矩形状の変換層と、前記矩形状の変換層の少なくとも一辺側に配置され、前記蛍光体層で発生し前記光ガイド部材によりガイドされた光を検知する光検知部と、前記光検知部による検知結果に基づいて前記センサパネル部に対する放射線の照射が開始されたか否かを判断し、この判断結果に基づき前記検出部の駆動状態を切り替え制御する制御部と、を備えた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−99794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、撮影対象領域の全域について1枚の導光板(光ガイド部材)により導光された光を検出しているため、撮影対象部位が比較的小さく、撮影対象領域における放射線が撮影対象部位を透過しない領域(以下、「素抜け領域」という。)の撮影対象領域の全域に対する割合が比較的高い場合において前述した照射制御処理を実行する場合には、放射線の照射量を比較的多く検出してしまう結果、露光不足となってしまう場合がある、という問題点があった。なお、この場合、放射線の曝射を伴う再撮影を行う必要があり、結果的に被検者の被曝量が増加してしまう。
【0008】
一方、前述した同期制御処理を実行する場合、被検者による放射線の被曝量をできるだけ少なくするためには放射線の照射開始を可及的速やかに検出する必要がある。これに対し、前述した照射制御処理を実行する場合には、放射線の照射量を検出する際に、導光板により導光された光を受光する受光素子が飽和検出量に達しないことが極めて重要である。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、より的確に放射線の照射状態を検出することができる放射線検出器、放射線画像撮影装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る放射線検出器は、請求項1に記載したように、放射線が照射されることにより光を発生する発光層と、前記発光層に積層され、前記発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生するセンサ部および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を含んだ画素が複数個形成された基板と、前記発光層の前記基板が積層された側と反対側、または前記基板の前記発光層が積層された側と反対側に積層され、各々重ならないように配置された各々互いに異なる波長帯域の光を通過させる複数のフィルタと、前記複数のフィルタの前記発光層が積層された側とは反対側または前記フィルタの前記基板が積層された側と反対側に積層された導光板と、を備えている。
【0011】
請求項1に記載の放射線検出器によれば、放射線が照射されることにより光を発生する発光層に、前記発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生するセンサ部および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を含む画素が複数個形成された基板が積層される。
【0012】
ここで、本発明では、前記発光層の前記基板が積層された側と反対側、または前記基板の前記発光層が積層された側と反対側に、各々重ならないように配置された各々互いに異なる波長帯域の光を通過させる複数のフィルタと、前記複数のフィルタの前記発光層が積層された側とは反対側または前記フィルタの前記基板が積層された側と反対側に積層された導光板が積層される。
【0013】
このように、請求項1に記載の放射線検出器によれば、発光層によって発生された光を複数のフィルタにより領域毎に波長帯域毎に分離した上で導光板が導光するので、分離領域毎に導光される光の光量を、導光板を1枚で構成とした場合に比較して少なくすることができる結果、より的確に放射線の照射状態を検出することができる。
【0014】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項2に記載したように、前記複数のフィルタは、前記発光層により発光される光のピーク波長を含む波長帯域の光を通過させる第1フィルタと、前記発光層により発光される光の前記波長帯域以外の波長帯域の光を通過させる第2フィルタとを含んで構成されているようにしても良い。これにより、領域毎に適した波長帯域の光を発生させることで、より的確に放射線の照射状態を検出することができる、という効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項3に記載したように、前記第1フィルタは、放射線検出領域における周縁部近傍に設けられ、前記第2フィルタは、前記放射線検出領域における中央部近傍に設けられているようにしても良い。これにより、中央部における放射線の照射量及び周縁部における放射線の照射量を各々別個に検出できる、という効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項4に記載したように、前記複数のフィルタが前記発光層に積層されている場合、前記発光層と前記複数のフィルタとの間に介在され、光の一部分を通過させ、かつ前記一部分以外の光を反射する反射層をさらに備えるようにしても良い。これにより、発光層により発光した光の一部分を利用して同期制御処理および照射制御処理を的確に行うことができる、という効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項5に記載したように、前記反射層は、予め定められた波長帯域の光を通過させ、かつ前記予め定められた波長帯域以外の光を反射するようにしても良い。これにより、必要な波長帯域の光のみ導光することができる、という効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項6に記載したように、前記複数のフィルタと前記発光層との間に介在され、放射線が照射されることにより光を発生する第2の発光層をさらに備えるようにしても良い。これにより、本来設けられている発光層のみでは導光される光の光量が不足する場合でも当該光の光量を補うことができる、という効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項7に記載したように、前記導光板は、積層された側とは反対側の面が傾斜面とされているようにしても良い。これにより、導光板の一方の面を傾斜させることにより導光機能を向上させる、という効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項8に記載したように、傾斜面を備え、当該傾斜面側が前記導光板の前記傾斜面に積層され、当該導光板に積層された状態で当該導光板と組み合わされて前記導光板と共に板状となる補強板をさらに備えるようにしても良い。これにより、補強板により外圧に対する強度を維持させることができる、という効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項9に記載したように、前記導光板の前記複数のフィルタが積層された側とは反対側に光反射部材をさらに備えるようにしても良い。これにより、導光板に入射する光を反射部材により効率的に集光することができる、という効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項10に記載したように、前記導光板は、放射線の入射側とは反対側に積層されているようにしても良い。これにより、請求項1の構成の場合と同様に、より的確に放射線の照射状態の検出することができる、という効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る放射線検出器において、請求項11に記載したように、前記導光板により導光された光を前記波長帯域の各々別に受光する複数の受光部をさらに備えるようにしても良い。これにより、放射線検出器に備えられた受光部により光を受光することができる、という効果を奏する。
【0024】
一方、上記目的を達成するために、請求項12に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1から請求項10の何れか1項記載の放射線検出器と、前記放射線検出器の前記導光板により導光された光を前記波長帯域の各々別に受光する複数の受光部と、前記放射線検出器の前記基板により得られた電荷に基づいて放射線画像の撮影を行う撮影手段と、前記複数の受光部の受光結果に基づいて前記撮影手段による撮影動作を制御する制御手段と、を備えている。
【0025】
従って、請求項12に記載の放射線画像撮影装置によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、より的確に放射線の照射状態の検出することができる、という効果を奏する。
【0026】
また、請求項13に記載の放射線画像撮影装置は、請求項11記載の放射線検出器と、前記放射線検出器の前記基板により得られた電荷に基づいて放射線画像の撮影を行う撮影手段と、前記放射線検出器の前記複数の受光部の受光結果に基づいて前記撮影手段による撮影動作を制御する制御手段と、を備えている。
【0027】
従って、請求項13に記載の放射線画像撮影装置によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、より的確に放射線の照射状態の検出することができる、という効果を奏する。
【0028】
また、本発明に係る放射線画像撮影装置において、請求項14に記載したように、前記放射線検出器の前記複数のフィルタが、前記発光層により発光される光のピーク波長を含む波長帯域の光を通過させる第1フィルタと、前記発光層により発光される光の残りの波長帯域の光を通過させる第2フィルタとを含んで構成されている場合、前記制御手段は、前記第1フィルタを通過して前記導光板により導光された光を、放射線の照射開始を検出するために用い、前記第2フィルタを通過して前記導光板により導光された光を、放射線の照射量を検出するために用いるようにしても良い。これにより、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、より的確に放射線の照射状態の検出することができる、という効果を奏する。
【0029】
一方、上記目的を達成するために、請求項15に記載のプログラムは、請求項2または請求項3に記載の放射線検出器を備えた放射線画像撮影装置によって実行されるプログラムであって、コンピュータを、前記放射線検出器の前記第1フィルタを通過して前記導光板により導光された光に基づいて放射線の照射開始を検出すると共に、前記放射線検出器の前記第2フィルタを通過して前記導光板により導光された光に基づいて放射線の照射量を検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて前記放射線画像撮影装置による撮影動作を制御する制御手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0030】
従って、請求項13に記載のプログラムによれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、より的確に放射線の照射状態の検出することができる、という効果を奏する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、より的確に放射線の照射状態を検出することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る放射線画像撮影装置である電子カセッテの外観を示す切り欠き斜視図である。
【図2】実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の3画素部分の構成を示す断面模式図である。
【図3】実施形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示す構成図である。
【図4】第1実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の側断面の構成を模式的に示した断面模式図である。
【図5】(A)及び(B)は、第1実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器を上方から見た図であり、第1のカラーフィルタ及び第2のカラーフィルタのそれぞれの配置領域の一例を示す図である。
【図6】ヨウ化セシウムの分光スペクトルの一例を示すグラフである。
【図7】第1実施形態に係る電子カセッテのCPUにより実行される撮影制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の側断面の構成を模式的に示した断面模式図である。
【図9】GOSの発光スペクトルの一例を示すグラフである。
【図10】第3実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器を示す断面模式図である。
【図11】(A)は、第1実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の別例を示す断面模式図であり、(B)は、第3実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の他の例を示す断面模式図である。
【図12】(A)乃至(I)は、本実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器において、第1のカラーフィルタ及び第2のカラーフィルタのそれぞれの配置領域の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る放射線画像撮影装置について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0034】
図1は、第1実施形態に係る放射線画像撮影装置である電子カセッテ1の外観を示す切り欠き斜視図である。
【0035】
図1に示すように、電子カセッテ1は筐体2を備えている。この筐体2は、電子カセッテ1の軽量化を図るために、例えば、カーボンファイバー(炭素繊維)、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ(セルロースミクロフィブリル)、または複合材料等で構成されている。筐体2の内部には、放射線検出器3及び鉛板4が放射線Xの照射方向に沿ってこの順に順次積層されて配置されている。また、筐体2の内部の一端側には、放射線Xの照射方向において放射線検出器3と重ならない位置に、カセッテ制御部や電源部を収容するケース5が配置されている。
【0036】
図2は、第1実施形態に係る電子カセッテ1に設けられた放射線検出器3の3画素部分の構成を示す断面模式図である。
【0037】
図2に示すように、放射線検出器3は、絶縁性の基板10の上に、信号出力部11、センサ部12、及びシンチレータ(蛍光体膜)13が順次積層されており、各画素は、信号出力部11、センサ部12により構成され、基板10上に複数配列されている。シンチレータ13は、センサ部12の上部(基板10と対面しない側)に透明絶縁膜14を介して形成されていて、X線等の放射線Xを光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。放射線検出器3において、このシンチレータ13により入射した放射線Xが光に変換される。
【0038】
なお、シンチレータ13が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器3によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0039】
シンチレータ13に用いられる蛍光体としては、具体的には、放射線XとしてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜700nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0040】
センサ部12は、上部電極15a、下部電極15b、及び当該上下の電極間に配置された光電変換膜16を有する。光電変換膜16は、シンチレータ13が発光する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0041】
上部電極15aは、シンチレータ13により生じた光を光電変換膜16に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ13の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;TransparentConducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極15aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極15aは、全画素で共通の一枚構成としてもよく、画素毎に分割してもよい。
【0042】
光電変換膜16は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ13により発光した光を吸収するとともに、吸収した光に応じた電荷を発生させる。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜16であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ13による発光以外の電磁波が光電変換膜16に吸収されることがほとんどなく、放射線Xが光電変換膜16で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0043】
光電変換膜16を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ13により発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ13の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ13の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ13により発光した光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ13の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0044】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ13の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜16で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0045】
放射線検出器3における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極15a,15bと、当該電極15a,15b間に挟まれた有機光電変換膜16を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ね、もしくは混合により形成することができる。
【0046】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0047】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
この有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料、及び光電変換膜16の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。なお、光電変換膜16は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0048】
光電変換膜16の厚みは、シンチレータ13からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜16の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜16に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0049】
なお、図2に示す放射線検出器3では、光電変換膜16は、全画素に渡って共有される一枚構成であるが、画素毎に分割されていてもよい。また、光電変換膜16は、有機光電変換材料を含まなくても良い。
【0050】
下部電極15bは、画素毎に分割された薄膜で構成されている。下部電極15bは、透明または不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。また、下部電極15bの厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0051】
センサ部12では、上部電極15aと下部電極15bとの間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜16で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極15aに移動させ、他方を下部電極15bに移動させることができる。本実施形態の放射線検出器3では、上部電極15aに配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極15aに印加される。また、バイアス電圧は、光電変換膜16で発生した電子が上部電極15aに移動し、正孔が下部電極15bに移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であってもよい。
【0052】
各画素を構成するセンサ部12は、少なくとも下部電極15b、光電変換膜16、及び上部電極15aを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜17及び正孔ブロッキング膜18の少なくとも一方を設けることが好ましいが、両方を設けることが特に好ましい。
【0053】
電子ブロッキング膜17は、下部電極15bと光電変換膜16との間に設けることができ、下部電極15bと上部電極15a間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極15bから光電変換膜16に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0054】
電子ブロッキング膜17には、電子供与性有機材料を用いることができる。電子ブロッキング膜17に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜16の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜16の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0055】
電子ブロッキング膜17の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部12の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0056】
正孔ブロッキング膜18は、光電変換膜16と上部電極15aとの間に設けることができ、下部電極15bと上部電極15a間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極15aから光電変換膜16に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0057】
正孔ブロッキング膜18には、電子受容性有機材料を用いることができる。正孔ブロッキング膜18の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部12の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。正孔ブロッキング膜18に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜16の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0058】
なお、光電変換膜16で発生した電荷のうち、正孔が上部電極15aに移動し、電子が下部電極15bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜17と正孔ブロッキング膜18との位置を逆に配置すればよい。
【0059】
また、基板10において、各画素の下部電極15bに対面する側の面には上述した信号出力部11が形成されている。信号出力部11は、下部電極15bに対応して、下部電極15bに移動した電荷を蓄積するコンデンサ19と、コンデンサ19に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタという場合がある。)20が形成されている。コンデンサ19及び薄膜トランジスタ20の形成された領域は、平面視において下部電極15bと重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素における信号出力部11とセンサ部12とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器3(画素)の平面積を最小にするために、コンデンサ19及び薄膜トランジスタ20の形成された領域が下部電極15bによって完全に覆われていることが望ましい。
【0060】
コンデンサ19は、基板10と下部電極15bとの間に設けられた絶縁膜21を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極15bと電気的に接続されている。これにより、下部電極15bで捕集された電荷をコンデンサ19に移動させることができる。
【0061】
薄膜トランジスタ20は、図示しないゲート電極、ゲート絶縁膜、及び活性層(チャネル層)が積層され、さらに、活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を開けて形成されている。また、基板10には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0062】
このように、基板10、絶縁膜21、下部電極15b、(電子ブロッキング膜17、)光電変換膜16、(正孔ブロッキング膜18、)上部電極15a、及び透明絶縁膜14が順次積層されることにより、TFT基板であるセンサ基板22が形成されている。
【0063】
また、シンチレータ13の上面(センサ基板22が積層される面と反対側の面)には、半透過層23、ガラス保護層24、フィルタ層25、導光板26が順次積層されている。
【0064】
本実施形態に係る半透過層23は、入射する光の一部分を透過させ、入射する光の当該一部分以外の光を反射する。半透過層23は、特定の波長の光を選択的に透過させることができるダイクロイックフィルタで構成されている。この際、例えば、屈折し難い長波長成分の光を選択的に透過させるようにすると良い。なぜなら、長波長成分の光は半透過層23で反射してセンサ部12で受光した場合に画像ボケにつながり易いからである。また、半透過層23は、ハーフミラーにより形成されていても良く、あるいは、アルミ(Al)、銀(Ag)等の反射材料で多数の穴が形成されるかまたは部分的に穴が空くように形成されていても良く、これらの構成により光の一部分を透過させ当該一部分以外の光を反射するように構成されていても良く、さらには拡散板で形成されていても良い。放射線検出器3に当該半透過層23が設けられることにより、シンチレータ13で発光した光の一部を導光板26に入射させることができる。
【0065】
ガラス保護層24は、例えば樹脂フィルムである。本実施形態では、半透過層23とバリアフィルム層25との間にガラス保護層24が設けられているが、これに限定されず、ガラス保護層24を設けずに、半透過層23をバリアフィルム層25に直接貼り付ける構成にしても良い。
【0066】
シンチレータ13により発光した光の一部が半透過層23を透過し、ガラス保護層24に入射する。ガラス保護層24に入射した光は、ガラス保護層24を通過し、フィルタ層25によりフィルタリングされた上で導光板26に入射する。そして、導光板26に入力した光は、導光板26の内部を導かれて後述する光検知部39によって検知される。
【0067】
図3は、第1実施形態に係る電子カセッテ1の電気系の要部構成を示す構成図である。
【0068】
図3に示すように、電子カセッテ1に内蔵された放射線検出器3は、隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ30が配置され、他辺側に信号処理部30Aが配置されている。センサ基板22の個々のゲート配線31はゲート線ドライバ30に接続され、センサ基板22の個々のデータ配線32は信号処理部30Aに接続されている。
【0069】
センサ基板22の各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ30からゲート配線31を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ20によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線32を伝送されて信号処理部30Aに入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0070】
図示は省略するが、信号処理部30Aは、個々のデータ配線32毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路およびサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線32を伝送された電気信号は増幅回路で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0071】
信号処理部30Aには画像メモリ33が接続されており、信号処理部30AのA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ33に順次記憶される。画像メモリ33は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ33に記憶される。
【0072】
画像メモリ33はカセッテ制御部34と接続されている。カセッテ制御部34はマイクロコンピュータを含んで構成され、CPU(中央処理装置)35と、記録媒体としてのROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ36と、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部37とを備えており、電子カセッテ1全体の動作を総括的に制御する。
【0073】
さらに、カセッテ制御部34には無線通信部38接続されている。無線通信部38は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部34は、無線通信部38を介して、コンソールなどの外部装置と無線通信が可能とされており、外部装置との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0074】
そして、カセッテ制御部34には光検知部39が接続されている。光検知部39は、例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC、CdSセル等で構成される光センサである。なお、光検知部39の構成はここに例示したものに限定されない。光検知部39は、その検出結果を図示しないA/D変換器によりデジタルデータに変換し、カセッテ制御部34に出力する。光検知部39は、放射線検出器3の内部に設けられていても、放射線検出器3とは別個に電子カセッテ1の内部に設けられていても良い。
【0075】
ところで、電子カセッテ1は、放射線検出器3に対する放射線Xが曝射が開始されたときに当該曝射開始を検知して放射線画像の撮影を開始する等、放射線画像の撮影を制御する同期制御処理を行う。また、電子カセッテ1は、放射線検出器3に対する放射線Xの照射量を検出して累積照射量に基づいて放射線画像の撮影を終了させる等、放射線画像の撮影を制御するAEC(Automatic Exposure Control)制御処理(上述した照射制御処理)を行う。
【0076】
本実施形態に係る電子カセッテ1は、放射線検出器3に放射線Xが照射されたときにシンチレータ13にて発光した光の一部を導光板26により導光し、当該光の光量を検出することで、放射線Xの曝射開始を検出して同期制御処理を行ったり放射線Xの照射量を検出してAEC制御処理を行ったりする。この際、電子カセッテ1は、光が入射する領域毎に透過させる光の波長帯域を異ならせ、導光板26の内部で導光される光を波長帯域毎に検知することで、光を入射した領域毎に分けて検知し、検知された光の光量が放射線Xの照射量に対応することを利用して、当該光の光量に基づいて同期制御処理またはAEC制御処理を行う。
【0077】
ここで、本実施形態に係る電子カセッテ1において、上述したAEC制御処理や同期制御処理を行うための構成についてさらに詳細に説明する。
【0078】
図4は、第1実施形態に係る電子カセッテ1の放射線検出器3の側断面の構成を模式的に示した断面模式図である。
【0079】
図4に示すように、放射線検出器3は、ガラス基板であるセンサ基板22及び導光板26を備えていて、複数の柱状結晶13aが格子状に配列されてなるシンチレータ13が当該センサ基板22及び導光板26の間に挟まれることで構成されている。
【0080】
また、シンチレータ13の上面(センサ基板22が積層される面の反対側の面)には半透過層23が設けられ、更にシンチレータ13と導光板26との間には、半透過層23を介してガラス保護層24が設けられている。
【0081】
導光板26の下面(ガラス保護層24と対面する側)には、フィルタ層25が設けられている。フィルタ層25は、互いに異なる予め定められた波長帯域の光を透過させる複数種類のカラーフィルタがそれぞれ配置されることで構成されている。本実施形態では、フィルタ層25は、第1の波長帯域(本実施形態では、赤色に対応する波長帯域)の光を通過させる第1のカラーフィルタ25a、第2の波長帯域(本実施形態では、緑色に対応する波長帯域)の光を通過させる第2のカラーフィルタ25bが、光の入射方向において各々重ならないように配置されて構成されている。
【0082】
導光板26とセンサ基板22との間には、シンチレータ13の周囲全体を囲むように封止部材40が設けられる。封止部材40は、例えば樹脂等で形成されており、シンチレータ13が圧迫されて破損しないように導光板26とセンサ基板22との間に常に一定のスペースが形成されるように導光板26とセンサ基板22とを固定するとともに、導光板26とセンサ基板22との間(すなわちシンチレータ13等)に水分等が入り込むことを防止するものである。
【0083】
導光板26は、シンチレータ13にて発光した光を所定方向にガイドする光ガイド部材としての機能を有しており、放射線Xが曝射されると、シンチレータ13に入射した放射線Xが光に変換され、変換された光のうちの一部が、半透過層23に入射し、入射した光の更に一部が、半透過層23を通過してガラス保護層24を介してフィルタ層25に入射する。
【0084】
フィルタ層25のうちの第1のカラーフィルタ25aに入射した光は、第1の波長帯域の光のみがカラーフィルタ25aを通過し、導光板26に入射する。一方、フィルタ層25のうちの第2のカラーフィルタ25bに入射した光は、第2の波長帯域の光のみがカラーフィルタ25bを通過し、導光板26に入射する。 導光板26に入射した光は、光検知部39によって検知される。光検知部39は、第1の波長帯域の光を検知する光センサと、第2の波長帯域の光を検知する光センサとを有していて、第1のカラーフィルタ25aを通過した第1の波長帯域の光、並びに第2のカラーフィルタ25bを通過した第2の波長帯域の光を、各々の光センサで各々別個に検知して電気信号に変換して、カセッテ制御部34に対して出力する。
【0085】
なお、放射線検出器3を製造する際には、以下のパターン1、2として示す方法等を適用することができる。
(パターン1)
センサ基板22上に直接蒸着によりシンチレータ13を形成し、ガラス保護層24に半透過層23を塗布または貼付により形成し、導光板26上にフィルタ層25を貼り付ける。そして、シンチレータ13のセンサ基板22とは反対側にガラス保護層24を半透過層23が間に介するように貼り合わせるとともに、ガラス保護層24に導光板26をフィルタ層35が間に介するように貼り合わせる。
【0086】
(パターン2)
センサ基板22上に直接蒸着によりシンチレータ13を形成し、ガラス保護層24に半透過層23を塗布または貼付により形成し、導光板26上にフィルタ層25を貼り付ける。そして、シンチレータ13のセンサ基板22とは反対側にガラス保護層24を半透過層23が間に介するように重ねるとともに、ガラス保護層24に導光板26をフィルタ層35が間に介するように重ね、相互に押し当てた状態で放射線検出器3全体をパウチ加工(ラミネート加工)する。
【0087】
ところで、一般的な電子カセッテにおいて、撮影対象領域の全域について1枚の導光板により導光された光を検出する場合、撮影対象部位が比較的小さく、撮影対象領域における放射線が撮影対象部位を透過しない素抜け領域の撮影対象領域の全域に対する割合が比較的高い場合においてAEC制御処理を実行する場合には、放射線の照射量を比較的多く検出してしまう結果、露光不足となってしまう、という問題点があった。なお、この場合、放射線の曝射を伴う再撮影を行う必要があり、結果的に被検者の被曝量が増加してしまう。
【0088】
一方、同期制御処理を実行する場合、被検者による放射線の被曝量をできるだけ少なくするためには放射線の照射開始を可及的速やかに検出する必要がある。これに対し、照射制御処理を実行する場合には、放射線の照射量を検出する際に、導光板により導光された光を受光する受光素子が飽和検出量に達しないことが極めて重要である
【0089】
そこで、本実施形態に係る電子カセッテ1は、導光板26で導光される光を、導光板26に入射した領域毎に同期制御処理とAEC制御処理とに適切に使い分けて制御する。本実施形態に係る電子カセッテ1では、照射量が過剰に見積もられることのない領域をAEC制御処理に使用される領域A、放射線Xの曝射開始を即座に検出することができる領域を同期制御処理に使用するための領域Bとして、AEC制御処理に使用される領域Aにカラーフィルタ25aが配置され、同期制御処理に使用するための領域Aにカラーフィルタ25bが配置されている。
【0090】
図5(A)及び(B)は、第1実施形態に係る電子カセッテ1の放射線検出器3を上方から見た図であり、第1のカラーフィルタ25a及び第2のカラーフィルタ25bのそれぞれの配置領域の一例を示す図である。
【0091】
図5(A)に示すように、電子カセッテ1は、放射線検出器3の中央側には被検体が存在している可能性が高いことを考慮し、中央側にAEC制御処理に使用される領域Aを設定し、当該領域Aに第1のカラーフィルタ25aを配置し、第1のカラーフィルタ25aを通過した光を用いてAEC制御処理を行う。また電子カセッテ1は、放射線検出器3における外枠側には被検体が存在していない可能性が高いことを考慮して、外周側を同期制御処理に使用される領域Bを設定し、当該領域Bに第2のカラーフィルタ25bを配置し、第2のカラーフィルタ25bを通過した光を用いて同期制御処理を行う。
【0092】
また、導光板26の外周側面のうちの、光検知部39が設けられていない領域には、光を反射する反射層41が設けられている。反射層41は、例えばアルミ(Al)、銀(Ag)等の反射材料で形成されている。この反射層41により、導光板26で導光される光が光検知部39で検知されずに外部に漏れてしまうことが防止され、導光された光を有効に利用することができる。
【0093】
さらに、導光板26の上面(フィルタ層25が積層される側と反対側の面)には、光を反射する反射層が設けられている。当該反射層は、例えばアルミ(Al)、銀(Ag)等の反射材料で形成されている。この反射層41によっても同様に、導光板26で導光される光が光検知部39で検知されずに外部に漏れてしまうことが防止され、導光された光を有効に利用することができる。この際、当該反射層における領域Aに対応する領域では反射率を低くし、領域Bに対応する領域では反射率を領域Aに対応する領域よりも高くすることで、同期制御処理に使用する光の光量を多くすることができる。
【0094】
図6は、ヨウ化セシウムの分光スペクトルの一例を示すグラフである。図6に示すように、ヨウ化セシウムの分光スペクトルでは、550nmの波長と600nmの波長との間にピークが存在する。検出感度が重要となる同期制御処理に、このピークを含む波長の光が使用されることが望ましい。そこで、本実施形態に係る電子カセッテ1では、ピークを含む約400nm乃至600nmの波長帯域を第1の波長帯域として当該波長帯域の光を同期制御処理に使用し、約600nm乃至700nmの波長の光を第2の波長帯域として当該波長帯域の光をAEC制御処理に使用する。
【0095】
なお、第1のカラーフィルタ25a及び第2のカラーフィルタ25bのそれぞれの配置領域は、図5(A)に示す配置に限定されず、図5(B)に示すように、中央側にAEC制御処理に使用するための領域Aを配置し、4つの角側にそれぞれ同期制御処理に使用するため領域Bを設定しても良い。
【0096】
また、本実施形態に係る電子カセッテ1の光検知部39において、検出可能な波長帯域がそれぞれ異なる複数の光センサを用いて、第1の波長帯域の光及び第2の波長帯域の光をそれぞれ別個に検知する例について説明したが、これに限定されず、同種類の光センサを複数(例えば、2つ)用い、各々の光センサにおいて光が入力する部分に第1のカラーフィルタ25a並びに第2のカラーフィルタ25bの何れ一方かを設けることで、第1のカラーフィルタ25aが設けられた光センサで第1の波長帯域の光を検知し、第2のカラーフィルタ25bが設けられた光センサで第2の波長帯域の光を検知するようにしても良い。
【0097】
さらに、本実施形態に係る電子カセッテ1において、導光板26及びセンサ基板22をガラスで形成する例について説明したが、これに限定されず、導光板26及びセンサ基板22の双方が樹脂で形成されていても良い。ガラス基板とガラス基板、あるいは樹脂基板と樹脂基板のように、同様の材質からなる基板でシンチレータ13を挟み込むことにより、放射線検出器3の外圧に対する強度を向上させることができる。
【0098】
その上、本実施形態に係る電子カセッテ1の光検知部39において、検出可能な波長帯域がそれぞれ異なる複数の光センサを用いて、第1の波長帯域の光及び第2の波長帯域の光を各々別個に検知する例について説明したが、これに限定されず、同種類の光センサを複数(例えば、2つ)用いて、各々の光センサの検知感度を異ならせても良い。具体的には、同期制御処理に使用される光センサとして検知感度が高い光センサを用い、AEC制御処理に使用される光センサとして検知感度が低い光センサを用いると良い。
【0099】
次に、本実施形態に係る電子カセッテ1が、放射線検出器3に放射線Xの曝射が開始された際にカラーフィルタ25aを透過した第1の波長帯域の光により当該放射線Xの照射開始を検知することにより同期制御処理を行い、放射線画像の撮影を行っている最中にカラーフィルタ25bを透過した第2の波長帯域の光により放射線Xの撮影完了を検知することによりAEC制御処理を行う際の流れについて説明する。
【0100】
図7は、本実施形態に係る電子カセッテ1のCPU35により実行される撮影制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは記録媒体である記憶部37の所定領域に予め記憶されている。
【0101】
図示しないコンソールは、ユーザ操作に基づいて撮影実行指示の情報を電子カセッテ1に対して送信する。そして、撮影実行指示の情報を受信することに基づいて、電子カセッテ1は撮影動作を開始する。
【0102】
電子カセッテ1が撮影実行指示の情報を無線通信部35を介して受信すると、ステップS103において、CPU35は、同期制御用の放射線Xの照射量を示す情報を取得する。すなわち、CPU35は、光検知部39から領域Bを通過した光の光量を示す情報を取得し、当該光の光量から放射線Xの照射量を導出する。
【0103】
次のステップ105において、CPU35は、上記ステップS103において取得した放射線Xの照射量が第1閾値以上であるか否かを判定する。この第1閾値は、放射線Xの曝射が開始されたことを認識ための照射量の下限値を示していて、当該下限値を示す情報が予め設定されて記憶部37の所定領域に記憶されている。
【0104】
ステップS105において放射線Xの照射量が第1閾値以上となったと判定された場合、CPU35は、放射線画像の撮影を開始するように電子カセッテ1を制御する。この際、放射線検出器3の各画素におけるコンデンサ19に蓄積された電荷を放電させた後に、当該コンデンサ19への電荷の蓄積を再び開始することにより、放射線画像の撮影動作を開始する。
【0105】
撮影を開始すると、次のステップS109において、CPU35は、AEC制御用の放射線Xの照射量を取得する。すなわち、CPU35は、光検知部39から領域Aを通過した光の光量を示す情報を取得し、当該光の光量から放射線Xの照射量を導出する。
【0106】
ステップS111において、CPU35は、上記ステップS109において取得した放射線Xの照射量が第2閾値以上であるか否かを判定する。この第2閾値は、放射線画像の撮影が完了したことを認識するための照射量の下限値を示していて、当該下限値を示す情報が予め設定されて記憶部37の所定領域に記憶されている。
【0107】
ステップS111において照射量が第2閾値以上でないと判定された場合は、ステップS113において、CPU35は、上記ステップS109において取得した放射線Xの照射量を累積して、ステップS109に移行する。ステップS113にてCPU35が放射線Xの照射量を累積することにより、放射線Xの累積照射量を導出することができる。
【0108】
ステップS111にて照射量(累積照射量)が第2閾値以上であると判定された場合は、ステップS115において、CPU35は、上記ステップ107の処理によって開始した放射線画像の撮影を停止するように電子カセッテ1を制御する。
【0109】
そして、次のステップS117にて、CPU35は、曝射停止指示の情報をコンソールに無線通信部35を介して送信する。
【0110】
撮影動作が開始されてから停止するまでの間、CPU35は、ゲート線ドライバ30を制御してゲート線ドライバ30から1ラインずつ順に各ゲート配線31にオン信号を出力させ、各ゲート配線31に接続された各薄膜トランジスタ20を1ラインずつ順にオンさせる。
【0111】
放射線検出器3は、各ゲート配線31に接続された各薄膜トランジスタ20を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各コンデンサ19に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線32に流れ出す。各データ配線32に流れ出した電気信号は信号処理部30Aでデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ33に記憶される。
【0112】
このようにして電子カセッテ1において、導光板26にて導光された光のうち前記第1の波長帯域の光が検知され、検知された光により放射線Xの照射開始が判断される。また、電子カセッテ1において、導光板26にて導光された光のうち前記第2の波長帯域の光が検知され、検知された光により放射線Xの照射終了が判断される。これにより、放射線Xの照射量の検出精度を向上させることが可能となり、適切に同期制御、AEC制御を行うことも可能となる。
【0113】
〔第2実施形態〕
【0114】
以下、第2実施形態に係る電子カセッテ1Aについて添付図面を用いて詳細に説明する。第2実施形態に係る電子カセッテ1Aは、第1実施形態に係る電子カセッテ1における放射線検出器3において、ガラス保護層24とフィルタ層25との間にシンチレータ層42を設けられたものであり、シンチレータ層42に入射した放射線Xを光に変換し、当該光を検知することでAEC制御処理及び同期制御処理を行う。なお、第1実施形態と同一の構成に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0115】
図8は、第2実施形態に係る電子カセッテ1Aの放射線検出器3Aの側断面の構成を模式的に示した断面模式図である。図8に示すように、第2実施形態に係る電子カセッテ1Aは、放射線検出器3Aにおいて、上述したように、ガラス保護層24とフィルタ層25との間に、シンチレータ層42が設けられている。
【0116】
シンチレータ層42は、放射線検出器3に入射する放射線Xの一部を光に変換する、例えばGOS(希土類蛍光体)等の塗布方式で形成されている。シンチレータ層42は、導光板26の上にフィルタ層25を介していわゆる塗布方式により形成されている。なお、シンチレータ42層の形成方法はこれに限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング等の物理的方法による被膜形成法(PVD)や、電気めっき、乾式めっき、化学蒸発法(CVD)等の手法を用いることが可能である。
【0117】
なお、シンチレータ層42は、放射線検出器3に放射線Xが曝射された際に放射線Xの曝射開始を検出できる程度に光を検知できる必要があるが、一方で、シンチレータ13による放射線画像形成に影響する程度まで放射線Xを減少させない必要もある。よって、シンチレータ層42の厚みは、具体的には、シンチレータ13に入射する放射線Xの3%から5%を光に変換する厚みであることが好ましい。
【0118】
また、導光板26に対してシンチレータ層42が設けられる範囲、大きさは特に限定されないが、センサ部22の検出可能範囲のほぼ全範囲に対応して設けられていることが好ましい。このような範囲に設けることにより、放射線Xの曝射範囲がどのように設定されていても確実に放射線Xを検知することができる。
【0119】
図9は、GOSの発光スペクトルの一例を示すグラフである。図9に示すように、GOSのスペクトル分布では、波長545nm付近に鋭いピークが存在する。よって、シンチレータ層42がGOSで形成されている場合には、GOSのスペクトル分布では、波長545nmの光が多く発生して、第2の波長帯域の光として検知部39にて効率的に検知されるため、同期制御処理に使用するのに好適である。
【0120】
なお、第2実施形態に係る電子カセッテ1Aが、放射線検出器3に放射線Xが曝射された際に放射線画像の撮影を開始し、放射線画像の撮影が完了した際に放射線Xの曝射の停止を促す撮影制御処理を行う際には、第1実施形態と同様に、図7に示す流れで行われる。
【0121】
〔第3実施形態〕
【0122】
以下、第3実施形態に係る電子カセッテ1Bについて添付図面を用いて詳細に説明する。第3実施形態に係る電子カセッテ1Bの放射線検出器3Bは、第1実施形態に係る電子カセッテ1の放射線検出器3において、板状の導光板26の代わりに、一面が傾斜していて全体として楔形に形成された導光板26Aが設けられたものである。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0123】
図10は、第3実施形態に係る電子カセッテ1Bの放射線検出器3Bを示す断面模式図である。図10に示すように、第3実施形態に係る電子カセッテ1Bは、放射線検出器3Bにおいて、上述したように、導光板26Aが一面が傾斜していることにより楔形に形成されている。また、導光板26Aの上面(フィルタ層25が積層される面と反対側の面)に、同様に一面が傾斜していることにより楔形に形成された補強板43が積層されている。この際、導光板26A及び補強板43が相互に傾斜している面が対面するように積層された状態で、補強板43の上面(導光板26Aが積層される面と反対側の面)と導光板26Aの下面(補強板43が積層される面と反対側の面)が平行になり全体として板状となるように積層される。
【0124】
楔形の各々の導光板26Aにおける拡がった側面には光検知部39が設けられていて、導光板26Aに入射した光が導光板26A内において当該拡がった側面の方向に導光され、光検知部39により検知される。
【0125】
補強板43は、ガラスまたは強化ガラスで形成されたガラス基板であっても、樹脂及びバリアフィルムで形成された樹脂基板であっても良い。しかしながら、センサ基板22がガラス基板であった場合、補強板43もガラス基板であることが好ましく、センサ基板22が樹脂基板であれば、補強板43も樹脂基板であることが好ましく、補強板43及びセンサ基板22の熱膨張率が略同じになるような組み合わせが好ましい。
【0126】
なお、電子カセッテ1Bにおいて筐体2が遮光機能を有し外部から内部に自然光が入射することはないが、筐体2の継ぎ目等から万が一自然光が漏れて入射してしまう場合を考慮し、補強板43に当該自然光を遮断するように光吸収性(色付き)を持たせても良い。これは、特に電子カセッテ1がISS方式の場合に有効である。ISS(Irradiation Side Sampling)方式とは、シンチレータの放射線照射面側にTFT基板が配置されている方式である。
【0127】
また、導光板26Aと補強板43との間に、シンチレータ層42で発光した光を反射する反射層44が設けられている。反射層44は、例えばアルミ(Al)、銀(Ag)等の反射材料で形成されている。あるいは、反射層44は、表面を荒らすことによって反射性能を高めるように形成されても良い。
【0128】
なお、反射層44において、第1のカラーフィルタ25aが設けられた位置に対する中心側と、第2のカラーフィルタ25bが設けられた位置に対応する周縁側とで反射率が異なるように形成されていても良い。この場合には、同期制御処理に使用される周縁側において反射率が高くなり、AEC制御処理に使用される中心側で反射率が低くなるように形成されると良い。
【0129】
楔形の導光板26Aは導光機能が高いので、検知されずに捨てられてしまう光を少なくできるので好ましい。楔形の導光板26Aは、衝撃性や荷重性に不安があるが、楔形に形成された補強板43で補うことにより、耐衝撃性、耐荷重性が確保されている。楔形のガラス基板が複数枚(本実施形態では、2枚)で重なり合っていることにより導光性能を高めるとともに、強度を維持することが可能となっている。
【0130】
なお、第3実施形態に係る電子カセッテ1Bが、放射線検出器3に放射線Xが曝射された際に放射線画像の撮影を開始し、放射線画像の撮影が完了した際に放射線Xの曝射の停止を促す撮影制御処理を行う際の流れは、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、図7に示す流れで行われる。
【0131】
また、第3実施形態に係る電子カセッテ1Bにおいても、第2実施形態と同様に、ガラス保護層24とフィルタ層25との間に、シンチレータ層42が設けられていても良い。シンチレータ層42をGOSにより形成することにより、同期制御の際の光検知感度を向上させることができる。
【0132】
また、第1実施形態乃至第3実施形態において、放射線としてX線を用いる場合について説明したが、これに限定されず、γ線やその他の放射線であっても良い。
【0133】
また、第1実施形態乃至第3実施形態において、フィルタ層25が第1のカラーフィルタ25a及び第2のカラーフィルタ25bを備えていて、検知部39が第1の波長帯域の光を検出する光センサ及び第2の波長帯域の光を検出する光センサの2つが備えられている例について説明したが、これに限定されず、3種類以上のカラーフィルタが備えられていても良く、また、光センサが3つ以上備えられていても良い。
【0134】
また、第1実施形態乃至第3実施形態において、導光板26、26Aが、シンチレータ13のセンサ基板22が積層される面の反対側の面に設けられる例について説明したが、これに限定されない。
【0135】
図11(A)は、第1実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の別例の側断面の構成を模式的に示した断面模式図であり、図11(B)は、第3実施形態に係る電子カセッテの放射線検出器の別例の側断面の構成を模式的に示した断面模式図である。
【0136】
図11(A)に示すように、導光板26が、シンチレータ13のセンサ基板22が積層される側の面に設けられても良い。この場合には、センサ基板22が光を透過する素材で形成されるとともに、センサ基板22の下面(シンチレータ13が積層される面と反対側の面)にフィルタ層25が設けられ、さらにフィルタ層25の下面(センサ基板22が積層される面と反対側の面)に導光板26が積層される。これにより、導光板26に放射線Xが直に照射されるのを回避し、導光板26の劣化を防止することができる。また、この際、センサ基板22及びフィルタ層25の間に発光層42を積層することにより、第2実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0137】
同様に、図11(B)に示すように、導光板26Aが、シンチレータ13のセンサ基板22が積層される側の面に設けられても良い。この場合には、センサ基板22が光を透過する素材で形成されるとともに、センサ基板22の下面(シンチレータ13が積層される面と反対側の面)にフィルタ層25が設けられ、さらにフィルタ層25の下面(センサ基板22が積層される面と反対側の面)に導光板26A、補強板43が積層される。これにより、導光板26に放射線Xが直に照射されるのを回避し、導光板26の劣化を防止することができる。
【0138】
なお、図11(A)及び(B)に示すように、導光板26、26Aがセンサ基板22の下面側(シンチレータ13が積層される面と反対側の面の側)に積層される場合には、半透過層23が設けられず、シンチレータ13の上面(センサ基板22が積層される面とは反対側の面)にガラス保護層24とが積層される。
【0139】
図12(A)乃至(I)は、上記第1実施形態乃至第3実施形態に係る電子カセッテ1、1A、1Bの放射線検出器3、3A、3Bにおいて、第1のカラーフィルタ25a及び第2のカラーフィルタ25bのそれぞれの配置領域の別の例を示す平面図である。なお、図12において、第1のカラーフィルタ25aの配置領域を黒抜きで、第2のカラーフィルタ25bの配置領域を白抜きで示している。
【0140】
図12(A)に示すように、放射線検出器3、3A、3Bの中央部に被検体が存在することがわかっている場合には、中央部において円形状または矩形状にまたは図5(A)に示すような矩形状に第1のカラーフィルタ25aを配置し、その外周部に第2のカラーフィルタ25bを配置すると良い。
【0141】
また、図12(B)に示すように、被験者の肺と腸を撮影する場合には、肺に相当する位置及び腸に相当する位置に第1のカラーフィルタ25aを配置し、それらの外周部に第2のカラーフィルタ25bを配置すると良い。
【0142】
また、図12(C)に示すように、放射線検出器3、3A、3Bの中央部に被検体が存在する可能性が高い場合には、中央部に第1のカラーフィルタ25aを多く配置し、その外周部に第1のカラーフィルタ25a及び第2のカラーフィルタ25bの双方を配置すると良い。
【0143】
また、図12(D)に示すように、図12(C)の場合において、中央部に第1のカラーフィルタ25aを多く配置し、その外周部に第2のカラーフィルタ25bを多く配置すると良い。
【0144】
また、図12(E)に示すように、マンモグラフィ撮影を行う場合には、乳房に相当する位置に第1のカラーフィルタ25aを配置し、その外周部に第2のカラーフィルタ25bを配置すると良い。
【0145】
また、図12(F)に示すように、放射線検出器3、3A、3Bにおいて被検体が存在する位置がわからない場合には、放射線検出器3、3A、3Bにおける2本の対角線上に第1のカラーフィルタ25aを配置し、その外周部に第2のカラーフィルタ25bを配置すると良い。
【0146】
また、図12(G)に示すように、図12(F)の場合において、一方の対角線上のみに第1のカラーフィルタ25aを配置しても良い。この場合、第2のカラーフィルタ25bの配置領域、すなわち同期制御処理に使用される領域が広くなり、同期制御処理に使用される光の検出感度を向上させることができる。
【0147】
また、図12(H)に示すように、放射線検出器3、3A、3Bにおいて被検体が存在する位置がわからない場合には、放射線検出器3、3A、3Bにおける各辺の2本の中央線上に第1のカラーフィルタ25aを配置し、その外周部に第2のカラーフィルタ25bを配置すると良い。
【0148】
また、図12(I)に示すように、放射線検出器3、3A、3Bにおいて被検体が存在する位置がわからない場合には、放射線検出器3、3A、3Bにおける2本の対角線上に第1のカラーフィルタ25aを配置し、その外周部に第2のカラーフィルタ25bを配置すると良い。
【0149】
なお、放射線XとしてX線を曝射した場合、肺野はX線の透過量が多いので、肺野に対応する領域を同期制御処理に利用しても良い。
【符号の説明】
【0150】
1、1A、1B…電子カセッテ,2…筐体,3、3A、3B…放射線検出器,4…鉛板,5…ケース,11…信号出力部,12…センサ部,13…シンチレータ,14…透明絶縁膜,15a…上部電極,15b…下部電極,16…光電変換膜,17…電子ブロッキング膜,18…正孔ブロッキング膜,19…コンデンサ,20…薄膜トランジスタ,21…絶縁膜,22…センサ基板,23…半透過膜,24…ガラス保護層,25…フィルタ層,25a…第1のカラーフィルタ,25b…第2のカラーフィルタ,26…導光板,30…ゲート線ドライバ,30A…信号処理部,31…ゲート配線,32…データ配線,33…画像メモリ,34…カセッテ制御部,35…CPU,36…メモリ,37…記憶部,38…無線通信部,39…光検知部,40…封止部材,41…反射層,42…シンチレータ層,43…補強板,44…反射層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が照射されることにより光を発生する発光層と、
前記発光層に積層され、前記発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生するセンサ部および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を含んだ画素が複数個形成された基板と、
前記発光層の前記基板が積層された側と反対側、または前記基板の前記発光層が積層された側と反対側に積層され、各々重ならないように配置された各々互いに異なる波長帯域の光を通過させる複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの前記発光層が積層された側とは反対側または前記フィルタの前記基板が積層された側と反対側に積層された導光板と、
を備えた放射線検出器。
【請求項2】
前記複数のフィルタは、前記発光層により発光される光のピーク波長を含む波長帯域の光を通過させる第1フィルタと、前記発光層により発光される光の前記波長帯域以外の波長帯域の光を通過させる第2フィルタとを含んで構成されている
請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記第1フィルタは、放射線検出領域における周縁部近傍に設けられ、
前記第2フィルタは、前記放射線検出領域における中央部近傍に設けられている
請求項2記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記複数のフィルタが前記発光層に積層されている場合、前記発光層と前記複数のフィルタとの間に介在され、光の一部分を通過させ、かつ前記一部分以外の光を反射する反射層をさらに備えた
請求項1記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記反射層は、予め定められた波長帯域の光を通過させ、かつ前記予め定められた波長帯域以外の光を反射する
請求項4記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記複数のフィルタと前記発光層との間に介在され、放射線が照射されることにより光を発生する第2の発光層
をさらに備えた請求項1から請求項5の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記導光板は、積層された側とは反対側の面が傾斜面とされている
請求項1から請求項6の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項8】
傾斜面を備え、当該傾斜面側が前記導光板の前記傾斜面に積層され、当該導光板に積層された状態で当該導光板と組み合わされて前記導光板と共に板状となる補強板
をさらに備えた請求項7記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記導光板の前記複数のフィルタが積層された側とは反対側に光反射部材をさらに備えた
請求項1から請求項8の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記導光板は、放射線の入射側とは反対側に積層されている
請求項1から請求項8の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記導光板により導光された光を前記波長帯域の各々別に受光する複数の受光部
をさらに備えた請求項1から請求項10の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項12】
請求項1から請求項10の何れか1項記載の放射線検出器と、
前記放射線検出器の前記導光板により導光された光を前記波長帯域の各々別に受光する複数の受光部と、
前記放射線検出器の前記基板により得られた電荷に基づいて放射線画像の撮影を行う撮影手段と、
前記複数の受光部の受光結果に基づいて前記撮影手段による撮影動作を制御する制御手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項13】
請求項11記載の放射線検出器と、
前記放射線検出器の前記基板により得られた電荷に基づいて放射線画像の撮影を行う撮影手段と、
前記放射線検出器の前記複数の受光部の受光結果に基づいて前記撮影手段による撮影動作を制御する制御手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記放射線検出器の前記複数のフィルタが、前記発光層により発光される光のピーク波長を含む波長帯域の光を通過させる第1フィルタと、前記発光層により発光される光の残りの波長帯域の光を通過させる第2フィルタとを含んで構成されている場合、前記制御手段は、前記第1フィルタを通過して前記導光板により導光された光を、放射線の照射開始を検出するために用い、前記第2フィルタを通過して前記導光板により導光された光を、放射線の照射量を検出するために用いる
請求項12または請求項13記載の放射線画像撮影装置。
【請求項15】
請求項2または請求項3に記載の放射線検出器を備えた放射線画像撮影装置によって実行されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記放射線検出器の前記第1フィルタを通過して前記導光板により導光された光に基づいて放射線の照射開始を検出すると共に、前記放射線検出器の前記第2フィルタを通過して前記導光板により導光された光に基づいて放射線の照射量を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて前記放射線画像撮影装置による撮影動作を制御する制御手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−72722(P2013−72722A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211353(P2011−211353)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】