放射線検出装置、放射線撮影装置、放射線撮影システム
【課題】位相イメージングを行う放射線撮影において、イメージングの精度向上を図る。
【解決手段】X線源11と、第1の透過型格子31と、第2の透過型格子32と、第2の透過型格子32を移動させる走査機構と、フラットパネル検出器30と、フラットパネル検出器30で取得される複数の画像に基づき、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算処理部と、を備え、第1の透過型格子31は、第1の方向に複数の第1の格子片31Aを連結してなり、第2の透過型格子32は、第1の方向に複数の第2の格子片32Aを連結してなり、X線源11の焦点を視点としたフラットパネル検出器30への投影において、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影されるフラットパネル検出器30の各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間には、少なくとも一つの画素40が介在している。
【解決手段】X線源11と、第1の透過型格子31と、第2の透過型格子32と、第2の透過型格子32を移動させる走査機構と、フラットパネル検出器30と、フラットパネル検出器30で取得される複数の画像に基づき、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算処理部と、を備え、第1の透過型格子31は、第1の方向に複数の第1の格子片31Aを連結してなり、第2の透過型格子32は、第1の方向に複数の第2の格子片32Aを連結してなり、X線源11の焦点を視点としたフラットパネル検出器30への投影において、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影されるフラットパネル検出器30の各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間には、少なくとも一つの画素40が介在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を透過したX線等の放射線を検出する放射線検出装置、並びにこれを備える放射線撮影装置及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線は、物質を構成する元素の原子番号と、物質の密度及び厚さとに依存して減衰するといった特性を有することから、被写体の内部を透視するためのプローブとして用いられている。X線を用いた撮影は、医療診断や非破壊検査等の分野において広く普及している。
【0003】
一般的なX線撮影システムでは、X線を放射するX線源とX線を検出するX線画像検出器との間に被写体を配置して、被写体の透過像を撮影する。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射された各X線は、X線画像検出器までの経路上に存在する物質の特性(原子番号、密度、厚さ)の差異に応じた量の減衰(吸収)を受けた後、X線画像検出器の各画素に入射する。この結果、被写体のX線吸収像がX線画像検出器により検出され画像化される。X線画像検出器としては、X線増感紙とフイルムとの組み合わせや輝尽性蛍光体のほか、半導体回路を用いたフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)が広く用いられている。
【0004】
しかし、X線吸収能は、原子番号が小さい元素からなる物質ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線吸収像としての十分な画像の濃淡(コントラスト)が得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線の吸収量の差が少ないため、濃淡差が得られにくい。
【0005】
このような問題を背景に、近年、被写体によるX線の強度変化に代えて、被写体によるX線の位相変化(角度変化)に基づいた画像(以下、位相コントラスト画像と称する)を得るX線位相イメージングの研究が盛んに行われている。一般に、X線が物体に入射したとき、X線の強度よりも位相のほうが高い相互作用を示すことが知られている。このため、位相差を利用したX線位相イメージングでは、X線吸収能が低い弱吸収物体であっても高コントラストの画像を得ることができる。このようなX線位相イメージングの一種として、近年、2枚の透過回折格子(位相型格子及び吸収型格子)とX線画像検出器とからなるX線タルボ干渉計を用いたX線撮影システムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
X線タルボ干渉計は、被写体の背後に第1の回折格子(位相型格子あるいは吸収型格子)を配置し、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長で決まる特定距離(タルボ干渉距離)だけ下流に第2の回折格子(吸収型格子)を配置し、その背後にX線画像検出器を配置することにより構成される。上記タルボ干渉距離とは、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ干渉効果によって自己像を形成する距離であり、この自己像は、X線源と第1の回折格子との間に配置された被写体とX線との相互作用(位相変化)により変調を受ける。
【0007】
X線タルボ干渉計では、第1の回折格子の自己像と第2の回折格子との重ね合わせにより生じるモアレ縞を検出し、被写体によるモアレ縞の変化を解析することによって被写体の位相情報を取得する。モアレ縞の解析方法としては、たとえば、縞走査法が知られている。この縞走査法によると、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面にほぼ平行で、かつ第1の回折格子の格子方向(条帯方向)にほぼ垂直な方向に、格子ピッチを等分割した走査ピッチで並進移動させながら複数回の撮影を行い、X線画像検出器で得られる各画素の信号値の変化から、被写体で屈折したX線の角度分布(位相シフトの微分像)を取得し、この角度分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を得ることができる。
【0008】
X線タルボ干渉計を用いたX線撮影システムにおいて、撮影範囲を拡大するには第1及び第2の回折格子も相応に大きなものが必要となる。しかし、第1及び第2の回折格子は、典型的にはμmオーダーの格子ピッチで高アスペクト比に構成される必要があるため、サイズの大きな格子を精度よく製造することは非常に困難である。そこで、第1及び第2の回折格子を、それぞれ複数の格子片で構成し、個々の格子片は比較的小型なものとすることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
なお、タルボ干渉計を用いた画像撮影による位相イメージングは、X線と同様に干渉性の高い可視光(例えば、He−Neレーザー等)を対象に、X線位相イメージングより以前に考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第04/058070号
【特許文献2】特開2007−203061号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】へクター・カナバル(Hector Canabal)、他2名、「インプルーブド・フェーズ−シフティング・メソッド・フォー・オートマティック・プロセッシング・オブ・モアレ・ディフレクトグラムス(Improved phase-shifting method for automatic processing of moire deflectograms)」、アプライド・オプティクス(APPLIED OPTICS)、1998年9月、Vol.37, No.26, p.6227-6233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
第1及び第2の回折格子を、それぞれ複数の格子片で構成した場合に、隣り合う二つの格子片の連結部では正常な縞走査が行えず、連結部を透過したX線が入射するX線画像検出器の画素は、X線の位相情報を正確に得ることができない欠陥領域となる。そのため、特許文献2では、欠陥領域となる画素におけるX線の位相情報は、周辺の画素におけるX線の位相情報に基づいて補完し、更に、そのような欠陥領域の発生を避けるように第1及び第2の回折格子を調整するとしているが、具体的な方策は何ら記載されていない。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、被写体の位相イメージングを行う放射線撮影において、X線照射野の拡大を図りつつ、画質を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の格子と、前記第1の格子を通過した放射線によって形成される第1の格子の放射線像の周期パターンに実質的に一致する周期パターンを有する第2の格子と、前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、を備え、前記第1の格子及び前記第2の格子は、通過する放射線の進行方向と交差する面内において少なくとも第1の方向に配列された複数の格子片をそれぞれ含み、前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする該放射線画像検出器への投影において、前記第1の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第1の画素群、及び前記第1の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第2の画素群、並びに前記第1の画素群及び前記第2の画素群を除く第3の画素群を含み、前記第1の画素群に属する各画素と前記第2の画素群に属する各画素との間には、前記第3の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の格子及び第2の格子をそれぞれ複数の格子片で構成しており、放射線照射野を容易に拡大することができる。そして、隣り合う第1の格子の二つの格子片の連結部が投影される放射線画像検出器の各画素と、隣り合う第2の格子の二つの格子片の連結部が投影される各画素との間に、少なくとも一つの画素を介在させることで、これらの連結部が投影される画素の極近傍に、放射線の位相情報を得ることができる画素を設けることができる。そこで、連結部が投影される各画素における放射線の位相情報を、極近傍にある画素における放射線の位相情報を用いて正確に補完することができ、画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線撮影システムの一例の構成を示す模式図である。
【図2】図1の放射線撮影システムの制御構成を示すブロック図である。
【図3】放射線画像検出器の構成を示す模式図である。
【図4】第1及び第2の格子の構成を示す斜視図である。
【図5】第1及び第2の格子の構成を示す側面図である。
【図6】第1及び第2の格子の重ね合わせによるモアレ縞の周期を変更するための機構を示す模式図である。
【図7】被写体による放射線の屈折を説明するための模式図である。
【図8】縞走査法を説明するための模式図である。
【図9】縞走査に伴う放射線画像検出器の画素の信号を示すグラフである。
【図10】第1及び第2の格子の配置の一例を示す模式図である。
【図11】図10の第1及び第2の格子の配置をより詳細に示す模式図である。
【図12】図10の第1及び第2の格子の配置をより詳細に示す模式図である。
【図13】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図14】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図15】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図16】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図17】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図18】図17の第1及び第2の格子の連結部の放射線画像検出器への投影を示す模式図である。
【図19】本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示すX線撮影システム10は、被写体(患者)Hを立位状態で撮影するX線診断装置であって、被写体HにX線を放射するX線源11と、X線源11に対向配置され、X線源11から被写体Hを透過したX線を検出して画像データを生成する撮影部12と、操作者の操作に基づいてX線源11の曝射動作や撮影部12の撮影動作を制御するとともに、撮影部12により取得された画像データを演算処理して位相コントラスト画像を生成するコンソール13とに大別される。
【0018】
X線源11は、天井から吊り下げられたX線源保持装置14により上下方向(x方向)に移動自在に保持されている。撮影部12は、床上に設置された立位スタンド15により上下方向に移動自在に保持されている。
【0019】
X線源11は、X線源制御部17の制御に基づき、高電圧発生器16から印加される高電圧に応じてX線を発生するX線管18と、X線管18から発せられたX線のうち、被写体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する可動式のコリメータ19aを備えたコリメータユニット19とから構成されている。X線管18は、陽極回転型であり、電子放出源(陰極)としてのフィラメント(図示せず)から電子線を放出して、所定の速度で回転する回転陽極18aに衝突させることによりX線を発生する。この回転陽極18aの電子線の衝突部分がX線焦点18bとなる。
【0020】
X線源保持装置14は、天井に設置された天井レール(図示せず)により水平方向(z方向)に移動自在に構成された台車部14aと、上下方向に連結された複数の支柱部14bとからなる。台車部14aには、支柱部14bを伸縮させて、X線源11の上下方向に関する位置を変更するモータ(図示せず)が設けられている。
【0021】
立位スタンド15は、床に設置された本体15aに、撮影部12を保持する保持部15bが上下方向に移動自在に取り付けられている。保持部15bは、上下方向に離間して配置された2つのプーリ15cの間に掛架された無端ベルト15dに接続され、プーリ15cを回転させるモータ(図示せず)により駆動される。このモータの駆動は、操作者の設定操作に基づき、後述するコンソール13の制御装置20により制御される。
【0022】
また、立位スタンド15には、プーリ15c又は無端ベルト15dの移動量を計測することにより、撮影部12の上下方向に関する位置を検出するポテンショメータ等の位置センサ(図示せず)が設けられている。この位置センサの検出値は、ケーブル等によりX線源保持装置14に供給される。X線源保持装置14は、供給された検出値に基づいて支柱部14bを伸縮させ、撮影部12の上下動に追従するようにX線源11を移動させる。
【0023】
コンソール13には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置20が設けられている。制御装置20には、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置21と、撮影部12により取得された画像データを演算処理してX線画像を生成する演算処理部22と、X線画像を記憶する記憶部23と、X線画像等を表示するモニタ24と、X線撮影システム10の各部と接続されるインターフェース(I/F)25とがバス26を介して接続されている。
【0024】
入力装置21としては、例えば、スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード等を用いることが可能であり、入力装置21の操作により、X線管電圧やX線照射時間等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。モニタ24は、液晶ディスプレイ等からなり、制御装置20の制御により、X線撮影条件等の文字やX線画像を表示する。
【0025】
撮影部12には、半導体回路からなるフラットパネル検出器(FPD)30、被写体HによるX線の位相変化(角度変化)を検出し位相イメージングを行うための第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32が設けられている。FPD30は、検出面がX線源11から照射されるX線の光軸Aに直交するように配置されている。詳しくは後述するが、第1及び第2の透過型格子31,32は、FPD30とX線源11との間に配置されている。また、撮影部12には、第2の透過型格子32を上下方向に並進移動させることにより、第1の透過型格子31に対する第2の透過型格子32の相対位置関係を変化させる走査機構33が設けられている。この走査機構33は、例えば、圧電素子等のアクチュエータにより構成される。
【0026】
図3に示すように、FPD30は、X線を電荷に変換して蓄積する複数の画素40がアクティブマトリクス基板上にxy方向に2次元配列されてなる受像部41と、受像部41からの電荷の読み出しタイミングを制御する走査回路42と、各画素40に蓄積された電荷を読み出し、電荷を画像データに変換して記憶する読み出し回路43と、画像データをコンソール13のI/F25を介して演算処理部22に送信するデータ送信回路44とから構成されている。なお、走査回路42と各画素40とは、行毎に走査線45によって接続されており、読み出し回路43と各画素40とは、列毎に信号線46によって接続されている。
【0027】
各画素40は、アモルファスセレン等の変換層(図示せず)でX線を電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタ(図示せず)に蓄積する直接変換型の素子として構成することができる。各画素40には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線45、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線46に接続される。TFTスイッチが走査回路42からの駆動パルスによってON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線46に読み出される。
【0028】
なお、各画素40は、酸化ガドリニウム(Gd2O3)やヨウ化セシウム(CsI)等からなるシンチレータ(図示せず)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオード(図示せず)で電荷に変換して蓄積する間接変換型のX線検出素子として構成することも可能である。また、X線画像検出器としては、TFTパネルをベースとしたFPDに限られず、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子をベースとした各種のX線画像検出器を用いることも可能である。
【0029】
読み出し回路43は、積分アンプ回路、A/D変換器、補正回路、及び画像メモリ(いずれも図示せず)により構成されている。積分アンプ回路は、各画素40から信号線46を介して出力された電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換して、A/D変換器に入力する。A/D変換器は、入力された画像信号をデジタルの画像データに変換して補正回路に入力する。補正回路は、画像データに対して、オフセット補正、ゲイン補正、及びリニアリティ補正を行い、補正後の画像データを画像メモリに記憶させる。なお、補正回路による補正処理として、X線の露光量や露光分布(いわゆるシェーディング)の補正や、FPD30の制御条件(駆動周波数や読み出し期間)に依存するパターンノイズ(例えば、TFTスイッチのリーク信号)の補正等を含めてもよい。
【0030】
図4及び図5に示すように、第1の透過型格子31は、複数の第1の格子片31Aを連結して構成されており、隣り合う二つの第1の格子片31Aは、例えば接着剤などを用いて互いに連結されている。各第1の格子片31Aは、基板31aと、この基板31aに配置された複数のX線遮蔽部31bとから構成されている。第2の透過型格子32もまた、複数の第2の格子片32Aを連結して構成されており、各第2の格子片32Aは、基板32aと、この基板32aに配置された複数のX線遮蔽部32bとから構成されている。基板31a,32aは、いずれもX線を透過させるガラス等のX線透過性部材により形成されている。
【0031】
X線遮蔽部31b,32bは、いずれもX線の光軸Aに直交する面内において、一方向(図示の例では、y方向)に延伸した線状の部材である。各X線遮蔽部31b,32bの材料としては、X線吸収性に優れるものが好ましく、例えば、金、白金等の金属であることが好ましい。これらのX線遮蔽部31b,32bは、金属メッキ法や蒸着法によって形成することが可能である。
【0032】
X線遮蔽部31bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(図示の例では、x方向)に一定の周期p1で、互いに所定の間隔d1を空けて配列されている。同様に、X線遮蔽部32bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(図示の例では、x方向)に一定の周期p2で、互いに所定の間隔d2を空けて配列されている。このような第1及び第2の透過型格子31,32は、入射X線に位相差を与えるものでなく、強度差を与えるものであるため、透過型格子のなかでも特に吸収型格子ないし振幅型格子と称される。なお、スリット部(上記間隔d1,d2の領域)は空隙でなくてもよく、高分子や軽金属等のX線低吸収材で該空隙を充填してもよい。
【0033】
第1及び第2の透過型格子31,32は、タルボ干渉効果の有無に係らず、スリット部を通過したX線を幾何学的に投影するように構成されている。具体的には、間隔d1,d2を、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分のX線をスリット部で回折させずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。例えば、前述の回転陽極18aとしてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は、約0.4Åである。この場合には、間隔d1,d2を、1〜10μm程度とすれば、スリット部で大部分のX線が回折されずに幾何学的に投影される。
【0034】
X線源11から放射されるX線は、平行ビームではなく、X線焦点18bを発光点としたコーンビームであるため、第1の透過型格子31を通過して射影される投影像(以下、この投影像をG1像と称する)は、X線焦点18bからの距離に比例して拡大される。第2の透過型格子32の格子ピッチp2は、そのスリット部が、第2の透過型格子32の位置におけるG1像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定されている。すなわち、X線焦点18bから第1の透過型格子31までの距離をL1、第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離をL2とした場合に、格子ピッチp2は、次式(1)の関係を満たすように決定される。
【0035】
【数1】
【0036】
第1の透過型格子31を構成する各第1の格子片31A及び第2の透過型格子32を構成する各第2の格子片32Aは、それらの格子ピッチ及び間隔について式(1)を満たしている。そして、第1の格子片31Aのx方向に沿う辺の長さq1と、第2の格子片32Aのx方向に沿う辺の長さq2とは次式(2)を満たし、第1の格子片31Aのy方向に沿う辺の長さr1と、第2の格子片32Aのy方向に沿う辺の長さr2とは次式(3)を満たしている。
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
即ち、第1の格子片31Aと第2の格子片32Aとは、その厚みと間隔を除く幾何的な形状において、第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32のX線焦点18bからの距離の比(L1/(L1+L2))に応じた相似となっている。
【0040】
第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離L2は、タルボ干渉計では、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とで決まるタルボ干渉距離に制約されるが、本X線撮影システム10の撮影部12では、第1の透過型格子31が入射X線を回折させずに投影させる構成であって、第1の透過型格子31のG1像が、第1の透過型格子31の後方のすべての位置で相似的に得られるため、該距離L2を、タルボ干渉距離と無関係に設定することができる。
【0041】
上記のように撮影部12は、タルボ干渉計を構成するものではないが、第1の透過型格子31でX線を回折したと仮定した場合のタルボ干渉距離Zは、第1の透過型格子31の格子ピッチp1、第2の透過型格子32の格子ピッチp2、X線波長(ピーク波長)λ、及び正の整数mを用いて、次式(4)で表される。
【0042】
【数4】
【0043】
式(4)は、X線源11から照射されるX線がコーンビームである場合のタルボ干渉距離を表す式であり、「Atsushi Momose, et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.10, 2008年10月, 8077頁」により知られている。
【0044】
本X線撮影システム10では、撮影部12の薄型化を目的とし、上記距離L2を、m=1の場合の最小のタルボ干渉距離Zより短い値に設定する。すなわち、上記距離L2は、次式(5)を満たす範囲の値に設定される。
【0045】
【数5】
【0046】
なお、X線源11から照射されるX線が実質的に平行光とみなせる場合のタルボ干渉距離Zは次式(6)となり、上記距離L2を、次式(7)を満たす範囲の値に設定する。
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
X線遮蔽部31b,32bは、コントラストの高い周期パターン像を生成するためには、X線を完全に遮蔽(吸収)することが好ましいが、上記したX線吸収性に優れる材料(金、白金等)を用いたとしても、吸収されずに透過するX線が少なからず存在する。このため、X線の遮蔽性を高めるためには、X線遮蔽部31b,32bのそれぞれの厚みh1,h2を、可能な限り厚くすることが好ましい。例えば、X線管18の管電圧が50kVの場合に、照射X線の90%以上を遮蔽することが好ましく、この場合には、厚みh1,h2は、金(Au)換算で30μm以上であることが好ましい。
【0050】
一方、X線遮蔽部31b,32bの厚みh1,h2を厚くし過ぎると、斜めに入射するX線がスリット部を通過しにくくなり、いわゆるケラレが生じて、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向(条帯方向)に直交する方向(x方向)の有効視野が狭くなるといった問題がある。このため、視野確保の観点から、厚みh1,h2の上限を規定する。FPD30の検出面におけるx方向の有効視野の長さVを確保するには、X線焦点18bからFPD30の検出面までの距離をLとすると、厚みh1,h2は、図5に示す幾何学的関係から、次式(8)及び(9)を満たすように設定する必要がある。
【0051】
【数8】
【0052】
【数9】
【0053】
例えば、d1=2.5μm、d2=3.0μmであり、通常の病院での検査を想定して、L=2mとした場合には、x方向の有効視野の長さVとして10cmの長さを確保するには、厚みh1は100μm以下、厚みh2は120μm以下とすればよい。
【0054】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32では、第1の透過型格子31のG1像と第2の透過型格子32との重ね合わせにより、強度変調された像が形成され、FPD30によって撮像される。第2の透過型格子32の位置におけるG1像のパターン周期p1’と、第2の透過型格子32の実質的な格子ピッチp2’(製造後の実質的なピッチ)とは、製造誤差や配置誤差により若干の差異が生じる。このうち、配置誤差とは、第1及び第2の透過型格子31,32が、相対的に傾斜や回転、両者の間隔が変化することによりx方向への実質的なピッチが変化することを意味している。
【0055】
G1像のパターン周期p1’と格子ピッチp2’との微小な差異により、画像コントラストはモアレ縞となる。このモアレ縞の周期Tは、次式(10)で表される。
【0056】
【数10】
【0057】
このモアレ縞をFPD30で検出するには、画素40のx方向に関する配列ピッチPは、少なくとも次式(11)を満たす必要があり、更には、次式(12)を満たすことが好ましい(ここで、nは正の整数である)。
【0058】
【数11】
【0059】
【数12】
【0060】
式(11)は、配列ピッチPがモアレ周期Tの整数倍でないことを意味しており、n≧2の場合であっても原理的にモアレ縞を検出することが可能である。式(12)は、配列ピッチPをモアレ周期Tより小さくすることを意味している。
【0061】
FPD30の画素40の配列ピッチPは、設計的に定められた値(一般的に100μm程度)であり変更することが困難であるため、配列ピッチPとモアレ周期Tとの大小関係を調整するには、第1及び第2の透過型格子31,32の位置調整を行い、G1像のパターン周期p1’と格子ピッチp2’との少なくともいずれか一方を変更することによりモアレ周期Tを変更することが好ましい。
【0062】
図6に、モアレ周期Tを変更する方法を示す。モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aを中心として相対的に回転させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aを中心として相対的に回転させる相対回転機構50を設ける。この相対回転機構50により、第2の透過型格子32を角度θだけ回転させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p2’」→「p2’/cosθ」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する。(FIG.6A)
【0063】
別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させる相対傾斜機構51を設ける。この相対傾斜機構51により、第2の透過型格子32を角度αだけ傾斜させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p2’」→「p2’×cosα」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する。(FIG.6B)
【0064】
更に別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を光軸Aの方向に沿って相対的に移動させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との間の距離L2を変更するように、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aの方向に沿って相対的に移動させる相対移動機構52を設ける。この相対移動機構52により、第2の透過型格子32を光軸Aに移動量δだけ移動させると、第2の透過型格子32の位置に投影される第1の透過型格子31のG1像のパターン周期は、「p1’」→「p1’×(L1+L2+δ)/(L1+L2)」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する。(FIG.6C)
【0065】
本X線撮影システム10において、撮影部12は、上述のようにタルボ干渉計ではなく、距離L2を自由に設定することができるため、相対移動機構52のように距離L2の変更によりモアレ周期Tを変更する機構を、好適に採用することができる。モアレ周期Tを変更するための第1及び第2の透過型格子31,32の上記変更機構(相対回転機構50、相対傾斜機構51、及び相対移動機構52)は、圧電素子等のアクチュエータにより構成することが可能である。
【0066】
X線源11と第1の透過型格子31との間に被写体Hを配置した場合には、FPD30により検出されるモアレ縞は、被写体Hにより変調を受ける。この変調量は、被写体Hによる屈折効果によって偏向したX線の角度に比例する。したがって、FPD30で検出されたモアレ縞を解析することによって、被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。
【0067】
次に、モアレ縞の解析方法について説明する。
【0068】
図7は、被写体Hのx方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つのX線を例示している。符号55は、被写体Hが存在しない場合に直進するX線の経路を示しており、この経路55を進むX線は、第1及び第2の透過型格子31,32を通過してFPD30に入射する。符号56は、被写体Hが存在する場合に、被写体Hにより屈折されて偏向したX線の経路を示している。この経路56を進むX線は、第1の透過型格子31を通過した後、第2の透過型格子32より遮蔽される。
【0069】
被写体Hの位相シフト分布Φ(x)は、被写体Hの屈折率分布をn(x,z)、zをX線の進む方向として、次式(13)で表される。
【0070】
【数13】
【0071】
第1の透過型格子31から第2の透過型格子32の位置に投射されたG1像は、被写体HでのX線の屈折により、その屈折角φに応じた量だけx方向に変位することになる。この変位量Δxは、X線の屈折角φが微小であることに基づいて、近似的に次式(14)で表される。
【0072】
【数14】
【0073】
ここで、屈折角φは、X線波長λと被写体Hの位相シフト分布Φ(x)を用いて、次式(15)で表される。
【0074】
【数15】
【0075】
このように、被写体HでのX線の屈折によるG1像の変位量Δxは、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)に関連している。そして、この変位量Δxは、FPD30の各画素40から出力される信号の位相ズレ量ψ(被写体Hがある場合とない場合とでの各画素40の信号の位相のズレ量)に、次式(16)のように関連している。
【0076】
【数16】
【0077】
したがって、各画素40の信号の位相ズレ量ψを求めることにより、式(16)から屈折角φが求まり、式(15)を用いて位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まるから、これをxについて積分することにより、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)、すなわち被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。本X線撮影システム10では、上記位相ズレ量ψを、下記に示す縞走査法を用いて算出する。
【0078】
縞走査法では、第1及び第2の透過型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向にステップ的に並進移動させながら撮影を行う(すなわち、両者の格子周期の位相を変化させながら撮影を行う)。本X線撮影システム10では、前述の走査機構33により第2の透過型格子32を移動させているが、第1の透過型格子31を移動させてもよい。第2の透過型格子32の移動に伴って、モアレ縞が移動し、並進距離(x方向への移動量)が、第2の透過型格子32の格子周期の1周期(格子ピッチp2)に達すると(すなわち、位相変化が2πに達すると)、モアレ縞は元の位置に戻る。このようなモアレ縞の変化を、格子ピッチp2を整数分の1ずつ第2の透過型格子32を移動させながら、FPD30で縞画像を撮影し、撮影した複数の縞画像から各画素40の信号を取得し、演算処理部22で演算処理することにより、各画素40の信号の位相ズレ量ψを得る。
【0079】
図8は、格子ピッチp2をM(2以上の整数)個に分割した走査ピッチ(p2/M)ずつ第2の透過型格子32を移動させる様子を模式的に示している。走査機構33は、k=0,1,2,・・・,M−1のM個の各走査位置に、第2の透過型格子32を順に並進移動させる。なお、同図では、第2の透過型格子32の初期位置を、被写体Hが存在しない場合における第2の透過型格子32の位置でのG1像の暗部が、X線遮蔽部32bにほぼ一致する位置(k=0)としているが、この初期位置は、k=0,1,2,・・・,M−1のうちいずれの位置としてもよい。
【0080】
まず、k=0の位置では、主として、被写体Hにより屈折されなかったX線が第2の透過型格子32を通過する。次に、k=1,2,・・・と順に第2の透過型格子32を移動させていくと、第2の透過型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されたX線の成分が増加する。特に、k=M/2では、主として、被写体Hにより屈折されたX線のみが第2の透過型格子32を通過する。k=M/2を超えると、逆に、第2の透過型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されたX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が増加する。
【0081】
k=0,1,2,・・・,M−1の各位置で、FPD30により撮影を行うと、各画素40について、M個の信号値が得られる。以下に、このM個の信号値から各画素40の信号の位相ズレ量ψを算出する方法を説明する。第2の透過型格子32の位置kにおける各画素40の信号値をIk(x)と標記すると、Ik(x)は、次式(17)で表される。
【0082】
【数17】
【0083】
ここで、xは、画素40のx方向に関する座標であり、A0は入射X線の強度であり、Anは画素40の信号値のコントラストに対応する値である(ここで、nは正の整数である)。また、φ(x)は、上記屈折角φを画素40の座標xの関数として表したものである。
【0084】
次いで、次式(18)の関係式を用いると、上記屈折角φ(x)は、次式(19)のように表される。
【0085】
【数18】
【0086】
【数19】
【0087】
ここで、arg[ ]は、偏角の抽出を意味しており、各画素40の信号の位相ズレ量ψに対応する。したがって、各画素40で得られたM個の信号値から、式(19)に基づいて各画素40の信号の位相ズレ量ψを算出することにより、屈折角φ(x)が求められる。
【0088】
具体的には、各画素40で得られたM個の信号値は、図9に示すように、第2の透過型格子32の位置kに対して、格子ピッチp2の周期で周期的に変化する。同図中の破線は、被写体Hが存在しない場合の信号値の変化を示しており、同図中の実線は、被写体Hが存在する場合の信号値の変化を示している。この両者の波形の位相差が各画素40の信号の位相ズレ量ψに対応する。
【0089】
そして、屈折角φ(x)は、式(15)で示したように微分位相値に対応する値であるため、屈折角φ(x)をx軸に沿って積分することにより、位相シフト分布Φ(x)が得られる。
【0090】
上記の説明では、画素40のy方向に関するy座標を考慮していないが、各y座標について同様の演算を行うことにより、x方向及びy方向における2次元的な位相シフト分布Φ(x,y)が得られる。
【0091】
以上の演算は、演算処理部22により行われ、演算処理部22は、位相シフト分布Φ(x,y)を位相コントラスト画像として記憶部23に記憶させる。なお、位相シフト分布Φは、屈折角φより求まる位相シフト分布Φの微分量を積分したものであって、屈折角φ及び位相シフト分布Φの微分量もまた被写体によるX線の位相変化に関連している。よって、屈折角φや位相シフト分布Φの微分量を位相コントラスト画像とすることもできる。
【0092】
上記の縞走査、及び位相コントラスト画像の生成処理は、入力装置21から操作者により撮影指示がなされた後、制御装置20の制御に基づいて各部が連係動作し、自動的に行われ、最終的に被写体Hの位相コントラスト画像がモニタ24に表示される。
【0093】
図10は、第1及び第2の透過型格子31,32の配置を模式的に示している。上述のとおり、本X線撮影システム10において、第1の透過型格子31は、複数の第1の格子片31Aを連結して構成され、第2の透過型格子32もまた、複数の第2の格子片32Aを連結して構成されており、第1の格子片31Aと第2の格子片32Aとは、その厚みと間隔を除く幾何的な形状において、第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32のX線源11の焦点からの距離の比に応じた相似となっている。
【0094】
そして、第2の透過型格子32における複数の第2の格子片32Aの配列は、第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの配列と同じとなっている。図示の例において、第1の透過型格子31は、複数の第1の格子片31Aが列状に配列されて構成されており、第2の透過型格子32は、第1の透過型格子31を構成する複数の第1の格子片と同数の第2の格子片32Aが列状に配列されて構成されている。複数の第1の格子片31Aの並び方向、及び複数の第2の格子片32Aの並び方向は、いずれも縞走査における第2の透過型格子32の走査方向であるx方向に略沿っている。なお、複数の第1の格子片31Aの並び方向、及び複数の第2の格子片32Aの並び方向は、必ずしも厳密には一致せず、例えば上記の相対回転機構50(FIG.6A参照)により、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aを中心として相対的に回転させることで、若干ずれる場合もある。
【0095】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11の焦点を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置がx方向、即ち第1の透過型格子31や第2の透過型格子32における複数の格子片の並び方向にずれるように配置されている。それによって、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素(第1の画素群に属する画素)40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素(第2の画素群に属する画素)40との間に、少なくとも一つの画素(第3の画素群に属する画素)40を介在させるようにしている。換言すれば、連結部31cの投影と、連結部32cの投影との間に、FPD30における画素ピッチより大きい隙間を置くようにしている。
【0096】
図11は、第1及び第2の透過型格子31,32の配置を詳細に示す。X線源11の焦点を視点とするFPD30の受像面への投影において、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cの投影と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cの投影との間の隙間gは、次式(20)によって表される。
【0097】
【数20】
【0098】
ここで、LはX線源11とFPD30との距離であり、θ1は連結部31c及び連結部32cのいずれか光軸Aに近い方とX線源11とを結ぶ線分と、X線の光軸Aとのなす角であり、θ2は連結部31cとX線源11とを結ぶ線分と、連結部32cとX線源11とを結ぶ線分とのなす角である。
【0099】
隙間gが、FPD30における画素ピッチDよりも大きければ、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40が介在することになる。よって、連結部31cとX線源11とを結ぶ線分と、連結部32cとX線源11とを結ぶ線分とのなす角θ2が満たすべき条件は、次式(21)となる。
【0100】
【数21】
【0101】
以上は、X線源11を点光源と仮定した場合であるが、X線源11が、複数の第1の格子片31Aや第2の格子片32Aの連結方向に幅wを有している場合には、図12に示すように、連結部31c、32cの投影の縁にボケが生じ、投影が拡大する。図中、x1は、連結部32c側への連結部31cの投影の拡大量を示し、x2は連結部31c側への連結部32cの投影の拡大量を示している。幾何学的に、連結部31cの投影の拡大量x1は次式(22)で、また連結部32cの投影の拡大量x2は、次式(23)で表される。
【0102】
【数22】
【0103】
【数23】
【0104】
ここで、L1はX線源11と第1の透過型格子31との距離であり、L2は第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との距離であり、L3は第2の透過型格子32とFPD30との距離である。
【0105】
よって、連結部31cの投影と、連結部32cの投影との間の隙間g´は、次式(24)で表される。
【0106】
【数24】
【0107】
隙間g´が、FPD30における画素ピッチDよりも大きければ、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40が介在することになる。よって、連結部31cとX線源11とを結ぶ線分と、連結部32cとX線源11とを結ぶ線分とのなす角θ2が満たすべき条件は、次式(25)となる。
【0108】
【数25】
【0109】
以上により、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることができる。
【0110】
連結部31c,32cでは正常な縞走査が行えないため、連結部31c,32cが投影される各画素40については、周辺の画素40の出力信号に基づく補完がなされる。その補完には、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に介在し、連結部31c,32cが投影される各画素40の極近傍にある画素40の出力信号を用いることができる。
【0111】
上述したX線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31を複数の第1の格子片31Aで、また第2の透過型格子32を複数の第2の格子片32Aで、それぞれ構成しており、放射線照射野を容易に拡大することができる。
【0112】
そして、上述したX線撮影システム10によれば、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることで、これらの連結部31c,32cが投影される画素40の極近傍に、X線の位相情報を得ることができる画素40を設けることができる。そこで、連結部31c,32cが投影される各画素40におけるX線の位相情報を、極近傍にある画素40におけるX線の位相情報を用いて正確に補完することができ、画質を維持することができる。
【0113】
また、上述したX線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31で殆どのX線を回折させずに、第2の透過型格子32に幾何学的に投影するため、照射X線には、高い空間的可干渉性は要求されず、X線源11として医療分野で用いられている一般的なX線源を用いることができる。そして、第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離L2を任意の値とすることができ、該距離L2を、タルボ干渉計での最小のタルボ干渉距離より小さく設定することができるため、撮影部12を小型化(薄型化)することができる。また、X線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31からの投影像(G1像)には、照射X線のほぼすべての波長成分が寄与し、モアレ縞のコントラストが向上するため、位相コントラスト画像の検出感度を向上させることができる。
【0114】
なお、上述したX線撮影システム10は、第1の透過型格子31の投影像に対して縞走査を行って屈折角φを演算するものであって、そのため、第1及び第2の透過型格子31,32がいずれも吸収型格子であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述のとおり、タルボ干渉像に対して縞走査を行って屈折角φを演算する場合にも、本発明は有用である。よって、第1の透過型格子31は、吸収型格子に限らず位相型格子であってもよい。
【0115】
また、上述したX線撮影システム10では、第1の透過型格子31の投影像と第2の透過型格子32との重ね合わせによって形成されるモアレ縞を縞走査法によって解析するものとして説明したが、モアレ縞の解析方法は、縞走査法に限られず、例えば「J. Opt. Soc. Am. Vol.72,No.1 (1982) p.156」により知られているフーリエ変換/フーリエ逆変換を用いた方法など、モアレ縞を利用した種々の方法も適用可能である。
【0116】
以下に、フーリエ変換/フーリエ逆変換を用いたモアレ縞の解析方法を説明する。X線遮蔽部31b、32bがy方向に延伸している第1及び第2の透過型格子31、32によって形成されるモアレ縞は次式(26)で表すことがで、式(26)は次式(27)に書き換えることができる。
【0117】
【数26】
【0118】
【数27】
【0119】
式(26)において、a(x,y)はバックグラウンドを表し、b(x,y)はモアレの基本周波数成分の振幅を表し、f0はモアレの基本周波数を表す。また式(27)において、c(x,y)は次式(28)で表される。
【0120】
【数28】
【0121】
従って、モアレ縞からc(x,y)又はc*(x,y)の成分を取り出すことによって屈折角φ(x,y)の情報を得ることができる。ここで、式(27)はフーリエ変換によって次式(29)となる。
【0122】
【数29】
【0123】
式(29)において、I(fx,fy)、A(fx,fy)、C(fx,fy)は、それぞれI(x,y)、a(x,y)、c(x,y)に対する二次元のフーリエ変換である。
【0124】
モアレ縞のスペクトルパターンにおいて、通常は3つのピークが生じ、A(fx,fy)に由来するピークを挟んで、その両脇にC(fx,fy)及びC*(fx,fy)に由来するピークが生じる。このC(fx,fy)又はC*(fx,fy)に由来するピークを含む領域を切り出し、切り出したC(fx,fy)又はC*(fx,fy)に由来するピークを周波数空間の原点に移動させてフーリエ逆変換を行い、得られる複素数情報から屈折角φ(x,y)を得ることができる。
【0125】
更に、上述したX線撮影システム10では、被検体HをX線源11と第1の透過型格子31との間に配置しているが、被検体Hを第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との間に配置した場合にも同様に位相コントラスト画像の生成が可能である。
【0126】
図13は、上述のX線撮影システム10の変形例を示している。図示の例において、第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置がx方向、即ち第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの連結方向に略一致するように配置されている。
【0127】
ただし、第2の透過型格子32における複数の第2の格子片32Aの配列が、第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの配列と異なっている。図示の例では、第1の透過型格子31は、5枚の第1の格子片31Aがx方向に配列されて構成されているのに対して、第2の透過型格子32は、第1の透過型格子31を構成する複数の第1の格子片31Aより少ない4枚の第2の格子片32Aがx方向に配列されて構成されている。
【0128】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11の焦点を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置が略一致するように配置されていても、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることができる。
【0129】
図14は、上述のX線撮影システム10の他の変形例を示している。図示の例において、第2の透過型格子32は、第1の透過型格子31を構成する複数の第1の格子片31Aより少ない4枚の第2の格子片32Aがx方向に配列され、これらの第2の格子片32Aの並びの中央に第3の格子片32Bが介在して構成されている。第3の格子片32Bは、第2の格子片32Aとy方向に沿う辺の長さ及び厚み、並びに格子ピッチ及び間隔は等しく、x方向に沿う辺の長さが第2の格子片32Aとは異なっている。
【0130】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11の焦点を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置が略一致するように配置されていても、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることができる。なお、第1の透過型格子31を、x方向に沿う辺の長さのみ異なる2種の格子片で構成するようにしてもよい。
【0131】
上述のX線撮影システム10の第1及び第2の透過型格子31,32は、いずれもX線遮蔽部31b,32bの周期配列方向が直線状(すなわち、格子面が平面状)となるように構成されているが、X線焦点18bを中心に湾曲する凹曲面状に構成することもできる。
【0132】
図15に示す例は、第1及び第2の透過型格子31,32の格子面を、縞走査における走査方向に沿った断面においてX線焦点18bを中心に湾曲する凹曲面状に構成したものである。第1の透過型格子31において、走査方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結し、第2の透過型格子32においても、同様に、走査方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結して、それらの格子面を上記の凹曲面状としている。このように、第1及び第2の透過型格子31,32を、それぞれ複数の格子片を連結して構成することで、それらの格子面を容易に凹曲面状とすることができる。
【0133】
そして、第1及び第2の透過型格子31,32の格子面を上記の凹曲面状とすることにより、X線焦点18bから照射されるX線は、被写体Hが存在しない場合、すべて格子面に略垂直に入射することになるため、X線遮蔽部31bの厚みh1とX線遮蔽部32bの厚みh2との上限の制約が緩和され、上記式(8)及び(9)を考慮する必要がなくなる。
【0134】
図16に示す例は、第1及び第2の透過型格子31,32の格子面を、縞走査における走査方向と直交する断面においてX線焦点18bを中心に湾曲する凹曲面状に構成したものである。第1の透過型格子31において、走査方向と直交する方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結し、第2の透過型格子32においても、同様に、走査方向と直交する方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結して、それらの格子面を上記の凹曲面状としている。
【0135】
また、上述のX線撮影システム10の第1及び第2の透過型格子31,32は、縞走査における走査方向(x方向)に列状に複数の格子片を連結して構成されているが、図17に示すように、複数の第1の格子片31Aを行列状に配列して第1の透過型格子31を構成し、また、複数の第2の格子片32Aを行列状に配列して第2の透過型格子32を構成することもできる。
【0136】
図示の例では、第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの一方の並び方向は、縞走査における第2の透過型格子32の走査方向であるx方向に略沿っており、他方の並び方向はy方向に略沿っている。また、第2の透過型格子32における複数の第2の格子片32Aの一方の並び方向はx方向に略沿っており、他方の並び方向はy方向に略沿っている。第1の格子片31Aと第2の格子片32Aとは、その厚みと間隔を除く幾何的な形状において、第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32のX線源11からの距離の比に応じた相似となっており、それらの配列は同じ(x方向に並ぶ第1の格子片31A及び第2の格子片32Aの個数が同じで、y方向に並ぶ第1の格子片31A及び第2の格子片32Aの個数もまた同じ)である。
【0137】
そして、X線源11を視点とするFPD30への投影において、第1及び第2の透過型格子31,32は、それらの中心の投影位置がx方向及びy方向にずれるように配置されている。それにより、図18に示すように、x方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cxが投影される各画素(第1の画素群A1に属する画素)40と、同じくx方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cxが投影される各画素(第2の画素群A2に属する画素)40との間に、少なくとも一つの画素(第3の画素群A3に属する画素)40を介在させ、更に、y方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cyが投影される各画素(第4の画素群A4に属する画素)40と、同じくy方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cyが投影される各画素(第5の画素群A5に属する画素)40との間にも、少なくとも一つの画素(第6の画素群A6に属する画素)40を介在させるようにしている。
【0138】
なお、x方向及びy方向の両方向各々について、その方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部が投影される各画素40と、同方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部が投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることが好ましいが、x方向及びy方向のいずれか一方向について、その方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部が投影される各画素40と、同方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部が投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させるものであってもよく、その方向については、両連結部が投影される画素40の極近傍に、X線の位相情報を得ることができる画素40を設けることができる。
【0139】
図19は、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例を示す。
【0140】
図19に示すX線撮影システム100は、X線源101のコリメータユニット102に、マルチスリット103を配設した点が、上述したX線撮影システム10と異なる。その他の構成については、X線撮影システム10と同一であるので説明は省略する。
【0141】
上述したX線撮影システム10では、X線源11からFPD30までの距離を、一般的な病院の撮影室で設定されるような距離(1m〜2m)とした場合に、X線焦点18bの焦点サイズ(一般的に0.1mm〜1mm程度)によるG1像のボケが影響し、位相コントラスト画像の画質の低下をもたらす恐れがある。そこで、X線焦点18bの直後にピンホールを設置して実効的に焦点サイズを小さくすることが考えられるが、実効的な焦点サイズを縮小するためにピンホールの開口面積を小さくすると、X線強度が低下してしまう。本X線撮影システム100においては、この課題を解決するために、X線焦点18bの直後にマルチスリット103を配置する。
【0142】
マルチスリット103は、撮影部12に設けられた第1及び第2の透過型格子31,32と同様な構成の透過型格子(吸収型格子)であり、一方向(y方向)に延伸した複数のX線遮蔽部が、第1及び第2の透過型格子31,32のX線遮蔽部31b,32bと同一方向(x方向)に周期的に配列されている。このマルチスリット103は、X線焦点18bから放射される放射線を部分的に遮蔽することにより、x方向に関する実効的な焦点サイズを縮小して、x方向に多数の点光源(分散光源)を形成することを目的としている。
【0143】
このマルチスリット103の格子ピッチp3は、マルチスリット103から第1の透過型格子31までの距離をL3として、次式(30)を満たすように設定する必要がある。
【0144】
【数30】
【0145】
式(30)は、マルチスリット103により分散形成された各点光源から射出されたX線の第1の透過型格子31による投影像(G1像)が、第2の透過型格子32の位置で一致する(重なり合う)ための幾何学的な条件である。
【0146】
また、実質的にマルチスリット103の位置がX線焦点位置となるため、第2の透過型格子32の格子ピッチp2は、次式(31)の関係を満たすように決定される。
【0147】
【数31】
【0148】
このように、本X線撮影システム100では、マルチスリット103により形成される複数の点光源に基づくG1像が重ね合わせられることにより、X線強度を低下させずに、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。以上説明したマルチスリット103は、前述したいずれのX線撮影システムにおいても適用可能である。
【0149】
上述したX線撮影システム10、100は、本発明を医療診断用の装置に適用したものであるが、本発明は医療診断用途に限られず、工業用等のその他の放射線検出装置に適用することも可能である。
【0150】
以上、説明したように、本明細書には、第1の格子と、前記第1の格子を通過した放射線によって形成される第1の格子の放射線像の周期パターンに実質的に一致する周期パターンを有する第2の格子と、前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、を備え、前記第1の格子及び前記第2の格子は、通過する放射線の進行方向と交差する面内において少なくとも第1の方向に配列された複数の格子片をそれぞれ含み、前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする該放射線画像検出器への投影において、前記第1の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第1の画素群、及び前記第1の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第2の画素群、並びに前記第1の画素群及び前記第2の画素群を除く第3の画素群を含み、前記第1の画素群に属する各画素と前記第2の画素群に属する各画素との間には、前記第3の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置が開示されている。
【0151】
また、本明細書には、放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とが、前記第1の方向に位置ずれしている放射線検出装置が開示されている。
【0152】
また、本明細書には、前記第1の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第1の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0153】
また、本明細書には、前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第1の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第1の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0154】
また、本明細書には、前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片が配列される面が円筒面であり、その中心軸が放射線焦点を通る放射線検出装置が開示されている。
【0155】
また、本明細書には、前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片は、前記第1の方向と交差する第2の方向にも配列されている放射線検出装置が開示されている。
【0156】
また、本明細書には、前記放射線画像検出器が、放射線焦点を視点とする前記放射線画像検出器への投影において、前記第2の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第4の画素群、及び前記第2の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第5の画素群、並びに前記第4の画素群及び前記第5の画素群を除く第6の画素群を含み、前記第4の画素群に属する各画素と前記第5の画素群に属する各画素との間には、前記第6の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置が開示されている。
【0157】
また、本明細書には、放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とは、前記第2の方向に位置ずれしている放射線検出装置が開示されている。
【0158】
また、本明細書には、前記第2の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第2の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0159】
また、本明細書には、前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第2の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第2の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0160】
また、本明細書には、上記の放射線検出装置と、前記放射線検出装置に放射線を照射する放射線源と、を備える放射線撮影装置が開示されている。
【0161】
また、本明細書には、前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方を移動させて、前記第2の格子を前記放射線像に対して互いに位相の異なる複数の相対位置関係に置く走査機構を更に備え、前記放射線画像検出器は、前記各相対位置関係のもとで前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線をそれぞれ検出する放射線撮影装置が開示されている。
【0162】
また、本明細書には、上記の放射線撮影装置と、前記放射線画像検出器で取得された複数の画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算し、この屈折角の分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、を備える放射線撮影システムが開示されている。
【0163】
また、本明細書には、前記演算部は、前記複数の画像間における各画素の信号値の変化に基づいて該画素の信号の位相ズレ量を算出することによって前記屈折角分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【0164】
また、本明細書には、上記の放射線撮影装置と、前記放射線画像検出器で取得された画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角分布を演算し、この屈折角分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、を備える放射線撮影システムが開示されている。
【0165】
また、本明細書には、前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像がモアレを含み、前記演算部は、前記画像の強度分布に対してフーリエ変換を行うことによって空間周波数スペクトル分布を求め、求めた空間周波数スペクトルから前記モアレの基本周波数に対応するスペクトルを分離し、分離された前記スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことによって前記屈折角の分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【符号の説明】
【0166】
10 X線撮影システム(放射線撮影システム)
11 X線源(放射線源)
12 撮影部
13 コンソール
14 X線源保持装置
15 立位スタンド
16 高電圧発生器
17 X線源制御部
18 X線管
19 コリメータユニット
20 制御装置
21 入力装置
22 演算処理部
23 記憶部
24 モニタ
25 I/F
30 フラットパネル検出器(放射線画像検出器)
31 第1の透過型格子
32 第2の透過型格子(強度変調部)
33 走査機構(強度変調部)
40 画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を透過したX線等の放射線を検出する放射線検出装置、並びにこれを備える放射線撮影装置及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線は、物質を構成する元素の原子番号と、物質の密度及び厚さとに依存して減衰するといった特性を有することから、被写体の内部を透視するためのプローブとして用いられている。X線を用いた撮影は、医療診断や非破壊検査等の分野において広く普及している。
【0003】
一般的なX線撮影システムでは、X線を放射するX線源とX線を検出するX線画像検出器との間に被写体を配置して、被写体の透過像を撮影する。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射された各X線は、X線画像検出器までの経路上に存在する物質の特性(原子番号、密度、厚さ)の差異に応じた量の減衰(吸収)を受けた後、X線画像検出器の各画素に入射する。この結果、被写体のX線吸収像がX線画像検出器により検出され画像化される。X線画像検出器としては、X線増感紙とフイルムとの組み合わせや輝尽性蛍光体のほか、半導体回路を用いたフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)が広く用いられている。
【0004】
しかし、X線吸収能は、原子番号が小さい元素からなる物質ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線吸収像としての十分な画像の濃淡(コントラスト)が得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線の吸収量の差が少ないため、濃淡差が得られにくい。
【0005】
このような問題を背景に、近年、被写体によるX線の強度変化に代えて、被写体によるX線の位相変化(角度変化)に基づいた画像(以下、位相コントラスト画像と称する)を得るX線位相イメージングの研究が盛んに行われている。一般に、X線が物体に入射したとき、X線の強度よりも位相のほうが高い相互作用を示すことが知られている。このため、位相差を利用したX線位相イメージングでは、X線吸収能が低い弱吸収物体であっても高コントラストの画像を得ることができる。このようなX線位相イメージングの一種として、近年、2枚の透過回折格子(位相型格子及び吸収型格子)とX線画像検出器とからなるX線タルボ干渉計を用いたX線撮影システムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
X線タルボ干渉計は、被写体の背後に第1の回折格子(位相型格子あるいは吸収型格子)を配置し、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長で決まる特定距離(タルボ干渉距離)だけ下流に第2の回折格子(吸収型格子)を配置し、その背後にX線画像検出器を配置することにより構成される。上記タルボ干渉距離とは、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ干渉効果によって自己像を形成する距離であり、この自己像は、X線源と第1の回折格子との間に配置された被写体とX線との相互作用(位相変化)により変調を受ける。
【0007】
X線タルボ干渉計では、第1の回折格子の自己像と第2の回折格子との重ね合わせにより生じるモアレ縞を検出し、被写体によるモアレ縞の変化を解析することによって被写体の位相情報を取得する。モアレ縞の解析方法としては、たとえば、縞走査法が知られている。この縞走査法によると、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面にほぼ平行で、かつ第1の回折格子の格子方向(条帯方向)にほぼ垂直な方向に、格子ピッチを等分割した走査ピッチで並進移動させながら複数回の撮影を行い、X線画像検出器で得られる各画素の信号値の変化から、被写体で屈折したX線の角度分布(位相シフトの微分像)を取得し、この角度分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を得ることができる。
【0008】
X線タルボ干渉計を用いたX線撮影システムにおいて、撮影範囲を拡大するには第1及び第2の回折格子も相応に大きなものが必要となる。しかし、第1及び第2の回折格子は、典型的にはμmオーダーの格子ピッチで高アスペクト比に構成される必要があるため、サイズの大きな格子を精度よく製造することは非常に困難である。そこで、第1及び第2の回折格子を、それぞれ複数の格子片で構成し、個々の格子片は比較的小型なものとすることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
なお、タルボ干渉計を用いた画像撮影による位相イメージングは、X線と同様に干渉性の高い可視光(例えば、He−Neレーザー等)を対象に、X線位相イメージングより以前に考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第04/058070号
【特許文献2】特開2007−203061号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】へクター・カナバル(Hector Canabal)、他2名、「インプルーブド・フェーズ−シフティング・メソッド・フォー・オートマティック・プロセッシング・オブ・モアレ・ディフレクトグラムス(Improved phase-shifting method for automatic processing of moire deflectograms)」、アプライド・オプティクス(APPLIED OPTICS)、1998年9月、Vol.37, No.26, p.6227-6233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
第1及び第2の回折格子を、それぞれ複数の格子片で構成した場合に、隣り合う二つの格子片の連結部では正常な縞走査が行えず、連結部を透過したX線が入射するX線画像検出器の画素は、X線の位相情報を正確に得ることができない欠陥領域となる。そのため、特許文献2では、欠陥領域となる画素におけるX線の位相情報は、周辺の画素におけるX線の位相情報に基づいて補完し、更に、そのような欠陥領域の発生を避けるように第1及び第2の回折格子を調整するとしているが、具体的な方策は何ら記載されていない。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、被写体の位相イメージングを行う放射線撮影において、X線照射野の拡大を図りつつ、画質を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の格子と、前記第1の格子を通過した放射線によって形成される第1の格子の放射線像の周期パターンに実質的に一致する周期パターンを有する第2の格子と、前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、を備え、前記第1の格子及び前記第2の格子は、通過する放射線の進行方向と交差する面内において少なくとも第1の方向に配列された複数の格子片をそれぞれ含み、前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする該放射線画像検出器への投影において、前記第1の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第1の画素群、及び前記第1の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第2の画素群、並びに前記第1の画素群及び前記第2の画素群を除く第3の画素群を含み、前記第1の画素群に属する各画素と前記第2の画素群に属する各画素との間には、前記第3の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の格子及び第2の格子をそれぞれ複数の格子片で構成しており、放射線照射野を容易に拡大することができる。そして、隣り合う第1の格子の二つの格子片の連結部が投影される放射線画像検出器の各画素と、隣り合う第2の格子の二つの格子片の連結部が投影される各画素との間に、少なくとも一つの画素を介在させることで、これらの連結部が投影される画素の極近傍に、放射線の位相情報を得ることができる画素を設けることができる。そこで、連結部が投影される各画素における放射線の位相情報を、極近傍にある画素における放射線の位相情報を用いて正確に補完することができ、画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線撮影システムの一例の構成を示す模式図である。
【図2】図1の放射線撮影システムの制御構成を示すブロック図である。
【図3】放射線画像検出器の構成を示す模式図である。
【図4】第1及び第2の格子の構成を示す斜視図である。
【図5】第1及び第2の格子の構成を示す側面図である。
【図6】第1及び第2の格子の重ね合わせによるモアレ縞の周期を変更するための機構を示す模式図である。
【図7】被写体による放射線の屈折を説明するための模式図である。
【図8】縞走査法を説明するための模式図である。
【図9】縞走査に伴う放射線画像検出器の画素の信号を示すグラフである。
【図10】第1及び第2の格子の配置の一例を示す模式図である。
【図11】図10の第1及び第2の格子の配置をより詳細に示す模式図である。
【図12】図10の第1及び第2の格子の配置をより詳細に示す模式図である。
【図13】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図14】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図15】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図16】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図17】第1及び第2の格子の構成の他の例を示す模式図である。
【図18】図17の第1及び第2の格子の連結部の放射線画像検出器への投影を示す模式図である。
【図19】本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示すX線撮影システム10は、被写体(患者)Hを立位状態で撮影するX線診断装置であって、被写体HにX線を放射するX線源11と、X線源11に対向配置され、X線源11から被写体Hを透過したX線を検出して画像データを生成する撮影部12と、操作者の操作に基づいてX線源11の曝射動作や撮影部12の撮影動作を制御するとともに、撮影部12により取得された画像データを演算処理して位相コントラスト画像を生成するコンソール13とに大別される。
【0018】
X線源11は、天井から吊り下げられたX線源保持装置14により上下方向(x方向)に移動自在に保持されている。撮影部12は、床上に設置された立位スタンド15により上下方向に移動自在に保持されている。
【0019】
X線源11は、X線源制御部17の制御に基づき、高電圧発生器16から印加される高電圧に応じてX線を発生するX線管18と、X線管18から発せられたX線のうち、被写体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する可動式のコリメータ19aを備えたコリメータユニット19とから構成されている。X線管18は、陽極回転型であり、電子放出源(陰極)としてのフィラメント(図示せず)から電子線を放出して、所定の速度で回転する回転陽極18aに衝突させることによりX線を発生する。この回転陽極18aの電子線の衝突部分がX線焦点18bとなる。
【0020】
X線源保持装置14は、天井に設置された天井レール(図示せず)により水平方向(z方向)に移動自在に構成された台車部14aと、上下方向に連結された複数の支柱部14bとからなる。台車部14aには、支柱部14bを伸縮させて、X線源11の上下方向に関する位置を変更するモータ(図示せず)が設けられている。
【0021】
立位スタンド15は、床に設置された本体15aに、撮影部12を保持する保持部15bが上下方向に移動自在に取り付けられている。保持部15bは、上下方向に離間して配置された2つのプーリ15cの間に掛架された無端ベルト15dに接続され、プーリ15cを回転させるモータ(図示せず)により駆動される。このモータの駆動は、操作者の設定操作に基づき、後述するコンソール13の制御装置20により制御される。
【0022】
また、立位スタンド15には、プーリ15c又は無端ベルト15dの移動量を計測することにより、撮影部12の上下方向に関する位置を検出するポテンショメータ等の位置センサ(図示せず)が設けられている。この位置センサの検出値は、ケーブル等によりX線源保持装置14に供給される。X線源保持装置14は、供給された検出値に基づいて支柱部14bを伸縮させ、撮影部12の上下動に追従するようにX線源11を移動させる。
【0023】
コンソール13には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置20が設けられている。制御装置20には、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置21と、撮影部12により取得された画像データを演算処理してX線画像を生成する演算処理部22と、X線画像を記憶する記憶部23と、X線画像等を表示するモニタ24と、X線撮影システム10の各部と接続されるインターフェース(I/F)25とがバス26を介して接続されている。
【0024】
入力装置21としては、例えば、スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード等を用いることが可能であり、入力装置21の操作により、X線管電圧やX線照射時間等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。モニタ24は、液晶ディスプレイ等からなり、制御装置20の制御により、X線撮影条件等の文字やX線画像を表示する。
【0025】
撮影部12には、半導体回路からなるフラットパネル検出器(FPD)30、被写体HによるX線の位相変化(角度変化)を検出し位相イメージングを行うための第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32が設けられている。FPD30は、検出面がX線源11から照射されるX線の光軸Aに直交するように配置されている。詳しくは後述するが、第1及び第2の透過型格子31,32は、FPD30とX線源11との間に配置されている。また、撮影部12には、第2の透過型格子32を上下方向に並進移動させることにより、第1の透過型格子31に対する第2の透過型格子32の相対位置関係を変化させる走査機構33が設けられている。この走査機構33は、例えば、圧電素子等のアクチュエータにより構成される。
【0026】
図3に示すように、FPD30は、X線を電荷に変換して蓄積する複数の画素40がアクティブマトリクス基板上にxy方向に2次元配列されてなる受像部41と、受像部41からの電荷の読み出しタイミングを制御する走査回路42と、各画素40に蓄積された電荷を読み出し、電荷を画像データに変換して記憶する読み出し回路43と、画像データをコンソール13のI/F25を介して演算処理部22に送信するデータ送信回路44とから構成されている。なお、走査回路42と各画素40とは、行毎に走査線45によって接続されており、読み出し回路43と各画素40とは、列毎に信号線46によって接続されている。
【0027】
各画素40は、アモルファスセレン等の変換層(図示せず)でX線を電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタ(図示せず)に蓄積する直接変換型の素子として構成することができる。各画素40には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線45、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線46に接続される。TFTスイッチが走査回路42からの駆動パルスによってON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線46に読み出される。
【0028】
なお、各画素40は、酸化ガドリニウム(Gd2O3)やヨウ化セシウム(CsI)等からなるシンチレータ(図示せず)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオード(図示せず)で電荷に変換して蓄積する間接変換型のX線検出素子として構成することも可能である。また、X線画像検出器としては、TFTパネルをベースとしたFPDに限られず、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子をベースとした各種のX線画像検出器を用いることも可能である。
【0029】
読み出し回路43は、積分アンプ回路、A/D変換器、補正回路、及び画像メモリ(いずれも図示せず)により構成されている。積分アンプ回路は、各画素40から信号線46を介して出力された電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換して、A/D変換器に入力する。A/D変換器は、入力された画像信号をデジタルの画像データに変換して補正回路に入力する。補正回路は、画像データに対して、オフセット補正、ゲイン補正、及びリニアリティ補正を行い、補正後の画像データを画像メモリに記憶させる。なお、補正回路による補正処理として、X線の露光量や露光分布(いわゆるシェーディング)の補正や、FPD30の制御条件(駆動周波数や読み出し期間)に依存するパターンノイズ(例えば、TFTスイッチのリーク信号)の補正等を含めてもよい。
【0030】
図4及び図5に示すように、第1の透過型格子31は、複数の第1の格子片31Aを連結して構成されており、隣り合う二つの第1の格子片31Aは、例えば接着剤などを用いて互いに連結されている。各第1の格子片31Aは、基板31aと、この基板31aに配置された複数のX線遮蔽部31bとから構成されている。第2の透過型格子32もまた、複数の第2の格子片32Aを連結して構成されており、各第2の格子片32Aは、基板32aと、この基板32aに配置された複数のX線遮蔽部32bとから構成されている。基板31a,32aは、いずれもX線を透過させるガラス等のX線透過性部材により形成されている。
【0031】
X線遮蔽部31b,32bは、いずれもX線の光軸Aに直交する面内において、一方向(図示の例では、y方向)に延伸した線状の部材である。各X線遮蔽部31b,32bの材料としては、X線吸収性に優れるものが好ましく、例えば、金、白金等の金属であることが好ましい。これらのX線遮蔽部31b,32bは、金属メッキ法や蒸着法によって形成することが可能である。
【0032】
X線遮蔽部31bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(図示の例では、x方向)に一定の周期p1で、互いに所定の間隔d1を空けて配列されている。同様に、X線遮蔽部32bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(図示の例では、x方向)に一定の周期p2で、互いに所定の間隔d2を空けて配列されている。このような第1及び第2の透過型格子31,32は、入射X線に位相差を与えるものでなく、強度差を与えるものであるため、透過型格子のなかでも特に吸収型格子ないし振幅型格子と称される。なお、スリット部(上記間隔d1,d2の領域)は空隙でなくてもよく、高分子や軽金属等のX線低吸収材で該空隙を充填してもよい。
【0033】
第1及び第2の透過型格子31,32は、タルボ干渉効果の有無に係らず、スリット部を通過したX線を幾何学的に投影するように構成されている。具体的には、間隔d1,d2を、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分のX線をスリット部で回折させずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。例えば、前述の回転陽極18aとしてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は、約0.4Åである。この場合には、間隔d1,d2を、1〜10μm程度とすれば、スリット部で大部分のX線が回折されずに幾何学的に投影される。
【0034】
X線源11から放射されるX線は、平行ビームではなく、X線焦点18bを発光点としたコーンビームであるため、第1の透過型格子31を通過して射影される投影像(以下、この投影像をG1像と称する)は、X線焦点18bからの距離に比例して拡大される。第2の透過型格子32の格子ピッチp2は、そのスリット部が、第2の透過型格子32の位置におけるG1像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定されている。すなわち、X線焦点18bから第1の透過型格子31までの距離をL1、第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離をL2とした場合に、格子ピッチp2は、次式(1)の関係を満たすように決定される。
【0035】
【数1】
【0036】
第1の透過型格子31を構成する各第1の格子片31A及び第2の透過型格子32を構成する各第2の格子片32Aは、それらの格子ピッチ及び間隔について式(1)を満たしている。そして、第1の格子片31Aのx方向に沿う辺の長さq1と、第2の格子片32Aのx方向に沿う辺の長さq2とは次式(2)を満たし、第1の格子片31Aのy方向に沿う辺の長さr1と、第2の格子片32Aのy方向に沿う辺の長さr2とは次式(3)を満たしている。
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
即ち、第1の格子片31Aと第2の格子片32Aとは、その厚みと間隔を除く幾何的な形状において、第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32のX線焦点18bからの距離の比(L1/(L1+L2))に応じた相似となっている。
【0040】
第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離L2は、タルボ干渉計では、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とで決まるタルボ干渉距離に制約されるが、本X線撮影システム10の撮影部12では、第1の透過型格子31が入射X線を回折させずに投影させる構成であって、第1の透過型格子31のG1像が、第1の透過型格子31の後方のすべての位置で相似的に得られるため、該距離L2を、タルボ干渉距離と無関係に設定することができる。
【0041】
上記のように撮影部12は、タルボ干渉計を構成するものではないが、第1の透過型格子31でX線を回折したと仮定した場合のタルボ干渉距離Zは、第1の透過型格子31の格子ピッチp1、第2の透過型格子32の格子ピッチp2、X線波長(ピーク波長)λ、及び正の整数mを用いて、次式(4)で表される。
【0042】
【数4】
【0043】
式(4)は、X線源11から照射されるX線がコーンビームである場合のタルボ干渉距離を表す式であり、「Atsushi Momose, et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.10, 2008年10月, 8077頁」により知られている。
【0044】
本X線撮影システム10では、撮影部12の薄型化を目的とし、上記距離L2を、m=1の場合の最小のタルボ干渉距離Zより短い値に設定する。すなわち、上記距離L2は、次式(5)を満たす範囲の値に設定される。
【0045】
【数5】
【0046】
なお、X線源11から照射されるX線が実質的に平行光とみなせる場合のタルボ干渉距離Zは次式(6)となり、上記距離L2を、次式(7)を満たす範囲の値に設定する。
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
X線遮蔽部31b,32bは、コントラストの高い周期パターン像を生成するためには、X線を完全に遮蔽(吸収)することが好ましいが、上記したX線吸収性に優れる材料(金、白金等)を用いたとしても、吸収されずに透過するX線が少なからず存在する。このため、X線の遮蔽性を高めるためには、X線遮蔽部31b,32bのそれぞれの厚みh1,h2を、可能な限り厚くすることが好ましい。例えば、X線管18の管電圧が50kVの場合に、照射X線の90%以上を遮蔽することが好ましく、この場合には、厚みh1,h2は、金(Au)換算で30μm以上であることが好ましい。
【0050】
一方、X線遮蔽部31b,32bの厚みh1,h2を厚くし過ぎると、斜めに入射するX線がスリット部を通過しにくくなり、いわゆるケラレが生じて、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向(条帯方向)に直交する方向(x方向)の有効視野が狭くなるといった問題がある。このため、視野確保の観点から、厚みh1,h2の上限を規定する。FPD30の検出面におけるx方向の有効視野の長さVを確保するには、X線焦点18bからFPD30の検出面までの距離をLとすると、厚みh1,h2は、図5に示す幾何学的関係から、次式(8)及び(9)を満たすように設定する必要がある。
【0051】
【数8】
【0052】
【数9】
【0053】
例えば、d1=2.5μm、d2=3.0μmであり、通常の病院での検査を想定して、L=2mとした場合には、x方向の有効視野の長さVとして10cmの長さを確保するには、厚みh1は100μm以下、厚みh2は120μm以下とすればよい。
【0054】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32では、第1の透過型格子31のG1像と第2の透過型格子32との重ね合わせにより、強度変調された像が形成され、FPD30によって撮像される。第2の透過型格子32の位置におけるG1像のパターン周期p1’と、第2の透過型格子32の実質的な格子ピッチp2’(製造後の実質的なピッチ)とは、製造誤差や配置誤差により若干の差異が生じる。このうち、配置誤差とは、第1及び第2の透過型格子31,32が、相対的に傾斜や回転、両者の間隔が変化することによりx方向への実質的なピッチが変化することを意味している。
【0055】
G1像のパターン周期p1’と格子ピッチp2’との微小な差異により、画像コントラストはモアレ縞となる。このモアレ縞の周期Tは、次式(10)で表される。
【0056】
【数10】
【0057】
このモアレ縞をFPD30で検出するには、画素40のx方向に関する配列ピッチPは、少なくとも次式(11)を満たす必要があり、更には、次式(12)を満たすことが好ましい(ここで、nは正の整数である)。
【0058】
【数11】
【0059】
【数12】
【0060】
式(11)は、配列ピッチPがモアレ周期Tの整数倍でないことを意味しており、n≧2の場合であっても原理的にモアレ縞を検出することが可能である。式(12)は、配列ピッチPをモアレ周期Tより小さくすることを意味している。
【0061】
FPD30の画素40の配列ピッチPは、設計的に定められた値(一般的に100μm程度)であり変更することが困難であるため、配列ピッチPとモアレ周期Tとの大小関係を調整するには、第1及び第2の透過型格子31,32の位置調整を行い、G1像のパターン周期p1’と格子ピッチp2’との少なくともいずれか一方を変更することによりモアレ周期Tを変更することが好ましい。
【0062】
図6に、モアレ周期Tを変更する方法を示す。モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aを中心として相対的に回転させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aを中心として相対的に回転させる相対回転機構50を設ける。この相対回転機構50により、第2の透過型格子32を角度θだけ回転させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p2’」→「p2’/cosθ」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する。(FIG.6A)
【0063】
別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させる相対傾斜機構51を設ける。この相対傾斜機構51により、第2の透過型格子32を角度αだけ傾斜させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p2’」→「p2’×cosα」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する。(FIG.6B)
【0064】
更に別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を光軸Aの方向に沿って相対的に移動させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との間の距離L2を変更するように、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aの方向に沿って相対的に移動させる相対移動機構52を設ける。この相対移動機構52により、第2の透過型格子32を光軸Aに移動量δだけ移動させると、第2の透過型格子32の位置に投影される第1の透過型格子31のG1像のパターン周期は、「p1’」→「p1’×(L1+L2+δ)/(L1+L2)」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する。(FIG.6C)
【0065】
本X線撮影システム10において、撮影部12は、上述のようにタルボ干渉計ではなく、距離L2を自由に設定することができるため、相対移動機構52のように距離L2の変更によりモアレ周期Tを変更する機構を、好適に採用することができる。モアレ周期Tを変更するための第1及び第2の透過型格子31,32の上記変更機構(相対回転機構50、相対傾斜機構51、及び相対移動機構52)は、圧電素子等のアクチュエータにより構成することが可能である。
【0066】
X線源11と第1の透過型格子31との間に被写体Hを配置した場合には、FPD30により検出されるモアレ縞は、被写体Hにより変調を受ける。この変調量は、被写体Hによる屈折効果によって偏向したX線の角度に比例する。したがって、FPD30で検出されたモアレ縞を解析することによって、被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。
【0067】
次に、モアレ縞の解析方法について説明する。
【0068】
図7は、被写体Hのx方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つのX線を例示している。符号55は、被写体Hが存在しない場合に直進するX線の経路を示しており、この経路55を進むX線は、第1及び第2の透過型格子31,32を通過してFPD30に入射する。符号56は、被写体Hが存在する場合に、被写体Hにより屈折されて偏向したX線の経路を示している。この経路56を進むX線は、第1の透過型格子31を通過した後、第2の透過型格子32より遮蔽される。
【0069】
被写体Hの位相シフト分布Φ(x)は、被写体Hの屈折率分布をn(x,z)、zをX線の進む方向として、次式(13)で表される。
【0070】
【数13】
【0071】
第1の透過型格子31から第2の透過型格子32の位置に投射されたG1像は、被写体HでのX線の屈折により、その屈折角φに応じた量だけx方向に変位することになる。この変位量Δxは、X線の屈折角φが微小であることに基づいて、近似的に次式(14)で表される。
【0072】
【数14】
【0073】
ここで、屈折角φは、X線波長λと被写体Hの位相シフト分布Φ(x)を用いて、次式(15)で表される。
【0074】
【数15】
【0075】
このように、被写体HでのX線の屈折によるG1像の変位量Δxは、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)に関連している。そして、この変位量Δxは、FPD30の各画素40から出力される信号の位相ズレ量ψ(被写体Hがある場合とない場合とでの各画素40の信号の位相のズレ量)に、次式(16)のように関連している。
【0076】
【数16】
【0077】
したがって、各画素40の信号の位相ズレ量ψを求めることにより、式(16)から屈折角φが求まり、式(15)を用いて位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まるから、これをxについて積分することにより、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)、すなわち被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。本X線撮影システム10では、上記位相ズレ量ψを、下記に示す縞走査法を用いて算出する。
【0078】
縞走査法では、第1及び第2の透過型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向にステップ的に並進移動させながら撮影を行う(すなわち、両者の格子周期の位相を変化させながら撮影を行う)。本X線撮影システム10では、前述の走査機構33により第2の透過型格子32を移動させているが、第1の透過型格子31を移動させてもよい。第2の透過型格子32の移動に伴って、モアレ縞が移動し、並進距離(x方向への移動量)が、第2の透過型格子32の格子周期の1周期(格子ピッチp2)に達すると(すなわち、位相変化が2πに達すると)、モアレ縞は元の位置に戻る。このようなモアレ縞の変化を、格子ピッチp2を整数分の1ずつ第2の透過型格子32を移動させながら、FPD30で縞画像を撮影し、撮影した複数の縞画像から各画素40の信号を取得し、演算処理部22で演算処理することにより、各画素40の信号の位相ズレ量ψを得る。
【0079】
図8は、格子ピッチp2をM(2以上の整数)個に分割した走査ピッチ(p2/M)ずつ第2の透過型格子32を移動させる様子を模式的に示している。走査機構33は、k=0,1,2,・・・,M−1のM個の各走査位置に、第2の透過型格子32を順に並進移動させる。なお、同図では、第2の透過型格子32の初期位置を、被写体Hが存在しない場合における第2の透過型格子32の位置でのG1像の暗部が、X線遮蔽部32bにほぼ一致する位置(k=0)としているが、この初期位置は、k=0,1,2,・・・,M−1のうちいずれの位置としてもよい。
【0080】
まず、k=0の位置では、主として、被写体Hにより屈折されなかったX線が第2の透過型格子32を通過する。次に、k=1,2,・・・と順に第2の透過型格子32を移動させていくと、第2の透過型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されたX線の成分が増加する。特に、k=M/2では、主として、被写体Hにより屈折されたX線のみが第2の透過型格子32を通過する。k=M/2を超えると、逆に、第2の透過型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されたX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が増加する。
【0081】
k=0,1,2,・・・,M−1の各位置で、FPD30により撮影を行うと、各画素40について、M個の信号値が得られる。以下に、このM個の信号値から各画素40の信号の位相ズレ量ψを算出する方法を説明する。第2の透過型格子32の位置kにおける各画素40の信号値をIk(x)と標記すると、Ik(x)は、次式(17)で表される。
【0082】
【数17】
【0083】
ここで、xは、画素40のx方向に関する座標であり、A0は入射X線の強度であり、Anは画素40の信号値のコントラストに対応する値である(ここで、nは正の整数である)。また、φ(x)は、上記屈折角φを画素40の座標xの関数として表したものである。
【0084】
次いで、次式(18)の関係式を用いると、上記屈折角φ(x)は、次式(19)のように表される。
【0085】
【数18】
【0086】
【数19】
【0087】
ここで、arg[ ]は、偏角の抽出を意味しており、各画素40の信号の位相ズレ量ψに対応する。したがって、各画素40で得られたM個の信号値から、式(19)に基づいて各画素40の信号の位相ズレ量ψを算出することにより、屈折角φ(x)が求められる。
【0088】
具体的には、各画素40で得られたM個の信号値は、図9に示すように、第2の透過型格子32の位置kに対して、格子ピッチp2の周期で周期的に変化する。同図中の破線は、被写体Hが存在しない場合の信号値の変化を示しており、同図中の実線は、被写体Hが存在する場合の信号値の変化を示している。この両者の波形の位相差が各画素40の信号の位相ズレ量ψに対応する。
【0089】
そして、屈折角φ(x)は、式(15)で示したように微分位相値に対応する値であるため、屈折角φ(x)をx軸に沿って積分することにより、位相シフト分布Φ(x)が得られる。
【0090】
上記の説明では、画素40のy方向に関するy座標を考慮していないが、各y座標について同様の演算を行うことにより、x方向及びy方向における2次元的な位相シフト分布Φ(x,y)が得られる。
【0091】
以上の演算は、演算処理部22により行われ、演算処理部22は、位相シフト分布Φ(x,y)を位相コントラスト画像として記憶部23に記憶させる。なお、位相シフト分布Φは、屈折角φより求まる位相シフト分布Φの微分量を積分したものであって、屈折角φ及び位相シフト分布Φの微分量もまた被写体によるX線の位相変化に関連している。よって、屈折角φや位相シフト分布Φの微分量を位相コントラスト画像とすることもできる。
【0092】
上記の縞走査、及び位相コントラスト画像の生成処理は、入力装置21から操作者により撮影指示がなされた後、制御装置20の制御に基づいて各部が連係動作し、自動的に行われ、最終的に被写体Hの位相コントラスト画像がモニタ24に表示される。
【0093】
図10は、第1及び第2の透過型格子31,32の配置を模式的に示している。上述のとおり、本X線撮影システム10において、第1の透過型格子31は、複数の第1の格子片31Aを連結して構成され、第2の透過型格子32もまた、複数の第2の格子片32Aを連結して構成されており、第1の格子片31Aと第2の格子片32Aとは、その厚みと間隔を除く幾何的な形状において、第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32のX線源11の焦点からの距離の比に応じた相似となっている。
【0094】
そして、第2の透過型格子32における複数の第2の格子片32Aの配列は、第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの配列と同じとなっている。図示の例において、第1の透過型格子31は、複数の第1の格子片31Aが列状に配列されて構成されており、第2の透過型格子32は、第1の透過型格子31を構成する複数の第1の格子片と同数の第2の格子片32Aが列状に配列されて構成されている。複数の第1の格子片31Aの並び方向、及び複数の第2の格子片32Aの並び方向は、いずれも縞走査における第2の透過型格子32の走査方向であるx方向に略沿っている。なお、複数の第1の格子片31Aの並び方向、及び複数の第2の格子片32Aの並び方向は、必ずしも厳密には一致せず、例えば上記の相対回転機構50(FIG.6A参照)により、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aを中心として相対的に回転させることで、若干ずれる場合もある。
【0095】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11の焦点を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置がx方向、即ち第1の透過型格子31や第2の透過型格子32における複数の格子片の並び方向にずれるように配置されている。それによって、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素(第1の画素群に属する画素)40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素(第2の画素群に属する画素)40との間に、少なくとも一つの画素(第3の画素群に属する画素)40を介在させるようにしている。換言すれば、連結部31cの投影と、連結部32cの投影との間に、FPD30における画素ピッチより大きい隙間を置くようにしている。
【0096】
図11は、第1及び第2の透過型格子31,32の配置を詳細に示す。X線源11の焦点を視点とするFPD30の受像面への投影において、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cの投影と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cの投影との間の隙間gは、次式(20)によって表される。
【0097】
【数20】
【0098】
ここで、LはX線源11とFPD30との距離であり、θ1は連結部31c及び連結部32cのいずれか光軸Aに近い方とX線源11とを結ぶ線分と、X線の光軸Aとのなす角であり、θ2は連結部31cとX線源11とを結ぶ線分と、連結部32cとX線源11とを結ぶ線分とのなす角である。
【0099】
隙間gが、FPD30における画素ピッチDよりも大きければ、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40が介在することになる。よって、連結部31cとX線源11とを結ぶ線分と、連結部32cとX線源11とを結ぶ線分とのなす角θ2が満たすべき条件は、次式(21)となる。
【0100】
【数21】
【0101】
以上は、X線源11を点光源と仮定した場合であるが、X線源11が、複数の第1の格子片31Aや第2の格子片32Aの連結方向に幅wを有している場合には、図12に示すように、連結部31c、32cの投影の縁にボケが生じ、投影が拡大する。図中、x1は、連結部32c側への連結部31cの投影の拡大量を示し、x2は連結部31c側への連結部32cの投影の拡大量を示している。幾何学的に、連結部31cの投影の拡大量x1は次式(22)で、また連結部32cの投影の拡大量x2は、次式(23)で表される。
【0102】
【数22】
【0103】
【数23】
【0104】
ここで、L1はX線源11と第1の透過型格子31との距離であり、L2は第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との距離であり、L3は第2の透過型格子32とFPD30との距離である。
【0105】
よって、連結部31cの投影と、連結部32cの投影との間の隙間g´は、次式(24)で表される。
【0106】
【数24】
【0107】
隙間g´が、FPD30における画素ピッチDよりも大きければ、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40が介在することになる。よって、連結部31cとX線源11とを結ぶ線分と、連結部32cとX線源11とを結ぶ線分とのなす角θ2が満たすべき条件は、次式(25)となる。
【0108】
【数25】
【0109】
以上により、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることができる。
【0110】
連結部31c,32cでは正常な縞走査が行えないため、連結部31c,32cが投影される各画素40については、周辺の画素40の出力信号に基づく補完がなされる。その補完には、連結部31cが投影される各画素40と、連結部32cが投影される各画素40との間に介在し、連結部31c,32cが投影される各画素40の極近傍にある画素40の出力信号を用いることができる。
【0111】
上述したX線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31を複数の第1の格子片31Aで、また第2の透過型格子32を複数の第2の格子片32Aで、それぞれ構成しており、放射線照射野を容易に拡大することができる。
【0112】
そして、上述したX線撮影システム10によれば、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることで、これらの連結部31c,32cが投影される画素40の極近傍に、X線の位相情報を得ることができる画素40を設けることができる。そこで、連結部31c,32cが投影される各画素40におけるX線の位相情報を、極近傍にある画素40におけるX線の位相情報を用いて正確に補完することができ、画質を維持することができる。
【0113】
また、上述したX線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31で殆どのX線を回折させずに、第2の透過型格子32に幾何学的に投影するため、照射X線には、高い空間的可干渉性は要求されず、X線源11として医療分野で用いられている一般的なX線源を用いることができる。そして、第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離L2を任意の値とすることができ、該距離L2を、タルボ干渉計での最小のタルボ干渉距離より小さく設定することができるため、撮影部12を小型化(薄型化)することができる。また、X線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31からの投影像(G1像)には、照射X線のほぼすべての波長成分が寄与し、モアレ縞のコントラストが向上するため、位相コントラスト画像の検出感度を向上させることができる。
【0114】
なお、上述したX線撮影システム10は、第1の透過型格子31の投影像に対して縞走査を行って屈折角φを演算するものであって、そのため、第1及び第2の透過型格子31,32がいずれも吸収型格子であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述のとおり、タルボ干渉像に対して縞走査を行って屈折角φを演算する場合にも、本発明は有用である。よって、第1の透過型格子31は、吸収型格子に限らず位相型格子であってもよい。
【0115】
また、上述したX線撮影システム10では、第1の透過型格子31の投影像と第2の透過型格子32との重ね合わせによって形成されるモアレ縞を縞走査法によって解析するものとして説明したが、モアレ縞の解析方法は、縞走査法に限られず、例えば「J. Opt. Soc. Am. Vol.72,No.1 (1982) p.156」により知られているフーリエ変換/フーリエ逆変換を用いた方法など、モアレ縞を利用した種々の方法も適用可能である。
【0116】
以下に、フーリエ変換/フーリエ逆変換を用いたモアレ縞の解析方法を説明する。X線遮蔽部31b、32bがy方向に延伸している第1及び第2の透過型格子31、32によって形成されるモアレ縞は次式(26)で表すことがで、式(26)は次式(27)に書き換えることができる。
【0117】
【数26】
【0118】
【数27】
【0119】
式(26)において、a(x,y)はバックグラウンドを表し、b(x,y)はモアレの基本周波数成分の振幅を表し、f0はモアレの基本周波数を表す。また式(27)において、c(x,y)は次式(28)で表される。
【0120】
【数28】
【0121】
従って、モアレ縞からc(x,y)又はc*(x,y)の成分を取り出すことによって屈折角φ(x,y)の情報を得ることができる。ここで、式(27)はフーリエ変換によって次式(29)となる。
【0122】
【数29】
【0123】
式(29)において、I(fx,fy)、A(fx,fy)、C(fx,fy)は、それぞれI(x,y)、a(x,y)、c(x,y)に対する二次元のフーリエ変換である。
【0124】
モアレ縞のスペクトルパターンにおいて、通常は3つのピークが生じ、A(fx,fy)に由来するピークを挟んで、その両脇にC(fx,fy)及びC*(fx,fy)に由来するピークが生じる。このC(fx,fy)又はC*(fx,fy)に由来するピークを含む領域を切り出し、切り出したC(fx,fy)又はC*(fx,fy)に由来するピークを周波数空間の原点に移動させてフーリエ逆変換を行い、得られる複素数情報から屈折角φ(x,y)を得ることができる。
【0125】
更に、上述したX線撮影システム10では、被検体HをX線源11と第1の透過型格子31との間に配置しているが、被検体Hを第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との間に配置した場合にも同様に位相コントラスト画像の生成が可能である。
【0126】
図13は、上述のX線撮影システム10の変形例を示している。図示の例において、第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置がx方向、即ち第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの連結方向に略一致するように配置されている。
【0127】
ただし、第2の透過型格子32における複数の第2の格子片32Aの配列が、第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの配列と異なっている。図示の例では、第1の透過型格子31は、5枚の第1の格子片31Aがx方向に配列されて構成されているのに対して、第2の透過型格子32は、第1の透過型格子31を構成する複数の第1の格子片31Aより少ない4枚の第2の格子片32Aがx方向に配列されて構成されている。
【0128】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11の焦点を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置が略一致するように配置されていても、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることができる。
【0129】
図14は、上述のX線撮影システム10の他の変形例を示している。図示の例において、第2の透過型格子32は、第1の透過型格子31を構成する複数の第1の格子片31Aより少ない4枚の第2の格子片32Aがx方向に配列され、これらの第2の格子片32Aの並びの中央に第3の格子片32Bが介在して構成されている。第3の格子片32Bは、第2の格子片32Aとy方向に沿う辺の長さ及び厚み、並びに格子ピッチ及び間隔は等しく、x方向に沿う辺の長さが第2の格子片32Aとは異なっている。
【0130】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32は、X線源11の焦点を視点とするFPD30への投影において、それらの中心O1,O2の投影位置が略一致するように配置されていても、隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cが投影される各画素40と、隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cが投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることができる。なお、第1の透過型格子31を、x方向に沿う辺の長さのみ異なる2種の格子片で構成するようにしてもよい。
【0131】
上述のX線撮影システム10の第1及び第2の透過型格子31,32は、いずれもX線遮蔽部31b,32bの周期配列方向が直線状(すなわち、格子面が平面状)となるように構成されているが、X線焦点18bを中心に湾曲する凹曲面状に構成することもできる。
【0132】
図15に示す例は、第1及び第2の透過型格子31,32の格子面を、縞走査における走査方向に沿った断面においてX線焦点18bを中心に湾曲する凹曲面状に構成したものである。第1の透過型格子31において、走査方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結し、第2の透過型格子32においても、同様に、走査方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結して、それらの格子面を上記の凹曲面状としている。このように、第1及び第2の透過型格子31,32を、それぞれ複数の格子片を連結して構成することで、それらの格子面を容易に凹曲面状とすることができる。
【0133】
そして、第1及び第2の透過型格子31,32の格子面を上記の凹曲面状とすることにより、X線焦点18bから照射されるX線は、被写体Hが存在しない場合、すべて格子面に略垂直に入射することになるため、X線遮蔽部31bの厚みh1とX線遮蔽部32bの厚みh2との上限の制約が緩和され、上記式(8)及び(9)を考慮する必要がなくなる。
【0134】
図16に示す例は、第1及び第2の透過型格子31,32の格子面を、縞走査における走査方向と直交する断面においてX線焦点18bを中心に湾曲する凹曲面状に構成したものである。第1の透過型格子31において、走査方向と直交する方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結し、第2の透過型格子32においても、同様に、走査方向と直交する方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aを互いに所定の角度だけ傾けて連結して、それらの格子面を上記の凹曲面状としている。
【0135】
また、上述のX線撮影システム10の第1及び第2の透過型格子31,32は、縞走査における走査方向(x方向)に列状に複数の格子片を連結して構成されているが、図17に示すように、複数の第1の格子片31Aを行列状に配列して第1の透過型格子31を構成し、また、複数の第2の格子片32Aを行列状に配列して第2の透過型格子32を構成することもできる。
【0136】
図示の例では、第1の透過型格子31における複数の第1の格子片31Aの一方の並び方向は、縞走査における第2の透過型格子32の走査方向であるx方向に略沿っており、他方の並び方向はy方向に略沿っている。また、第2の透過型格子32における複数の第2の格子片32Aの一方の並び方向はx方向に略沿っており、他方の並び方向はy方向に略沿っている。第1の格子片31Aと第2の格子片32Aとは、その厚みと間隔を除く幾何的な形状において、第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32のX線源11からの距離の比に応じた相似となっており、それらの配列は同じ(x方向に並ぶ第1の格子片31A及び第2の格子片32Aの個数が同じで、y方向に並ぶ第1の格子片31A及び第2の格子片32Aの個数もまた同じ)である。
【0137】
そして、X線源11を視点とするFPD30への投影において、第1及び第2の透過型格子31,32は、それらの中心の投影位置がx方向及びy方向にずれるように配置されている。それにより、図18に示すように、x方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cxが投影される各画素(第1の画素群A1に属する画素)40と、同じくx方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cxが投影される各画素(第2の画素群A2に属する画素)40との間に、少なくとも一つの画素(第3の画素群A3に属する画素)40を介在させ、更に、y方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部31cyが投影される各画素(第4の画素群A4に属する画素)40と、同じくy方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部32cyが投影される各画素(第5の画素群A5に属する画素)40との間にも、少なくとも一つの画素(第6の画素群A6に属する画素)40を介在させるようにしている。
【0138】
なお、x方向及びy方向の両方向各々について、その方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部が投影される各画素40と、同方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部が投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させることが好ましいが、x方向及びy方向のいずれか一方向について、その方向に隣り合う二つの第1の格子片31Aの連結部が投影される各画素40と、同方向に隣り合う二つの第2の格子片32Aの連結部が投影される各画素40との間に、少なくとも一つの画素40を介在させるものであってもよく、その方向については、両連結部が投影される画素40の極近傍に、X線の位相情報を得ることができる画素40を設けることができる。
【0139】
図19は、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例を示す。
【0140】
図19に示すX線撮影システム100は、X線源101のコリメータユニット102に、マルチスリット103を配設した点が、上述したX線撮影システム10と異なる。その他の構成については、X線撮影システム10と同一であるので説明は省略する。
【0141】
上述したX線撮影システム10では、X線源11からFPD30までの距離を、一般的な病院の撮影室で設定されるような距離(1m〜2m)とした場合に、X線焦点18bの焦点サイズ(一般的に0.1mm〜1mm程度)によるG1像のボケが影響し、位相コントラスト画像の画質の低下をもたらす恐れがある。そこで、X線焦点18bの直後にピンホールを設置して実効的に焦点サイズを小さくすることが考えられるが、実効的な焦点サイズを縮小するためにピンホールの開口面積を小さくすると、X線強度が低下してしまう。本X線撮影システム100においては、この課題を解決するために、X線焦点18bの直後にマルチスリット103を配置する。
【0142】
マルチスリット103は、撮影部12に設けられた第1及び第2の透過型格子31,32と同様な構成の透過型格子(吸収型格子)であり、一方向(y方向)に延伸した複数のX線遮蔽部が、第1及び第2の透過型格子31,32のX線遮蔽部31b,32bと同一方向(x方向)に周期的に配列されている。このマルチスリット103は、X線焦点18bから放射される放射線を部分的に遮蔽することにより、x方向に関する実効的な焦点サイズを縮小して、x方向に多数の点光源(分散光源)を形成することを目的としている。
【0143】
このマルチスリット103の格子ピッチp3は、マルチスリット103から第1の透過型格子31までの距離をL3として、次式(30)を満たすように設定する必要がある。
【0144】
【数30】
【0145】
式(30)は、マルチスリット103により分散形成された各点光源から射出されたX線の第1の透過型格子31による投影像(G1像)が、第2の透過型格子32の位置で一致する(重なり合う)ための幾何学的な条件である。
【0146】
また、実質的にマルチスリット103の位置がX線焦点位置となるため、第2の透過型格子32の格子ピッチp2は、次式(31)の関係を満たすように決定される。
【0147】
【数31】
【0148】
このように、本X線撮影システム100では、マルチスリット103により形成される複数の点光源に基づくG1像が重ね合わせられることにより、X線強度を低下させずに、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。以上説明したマルチスリット103は、前述したいずれのX線撮影システムにおいても適用可能である。
【0149】
上述したX線撮影システム10、100は、本発明を医療診断用の装置に適用したものであるが、本発明は医療診断用途に限られず、工業用等のその他の放射線検出装置に適用することも可能である。
【0150】
以上、説明したように、本明細書には、第1の格子と、前記第1の格子を通過した放射線によって形成される第1の格子の放射線像の周期パターンに実質的に一致する周期パターンを有する第2の格子と、前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、を備え、前記第1の格子及び前記第2の格子は、通過する放射線の進行方向と交差する面内において少なくとも第1の方向に配列された複数の格子片をそれぞれ含み、前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする該放射線画像検出器への投影において、前記第1の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第1の画素群、及び前記第1の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第2の画素群、並びに前記第1の画素群及び前記第2の画素群を除く第3の画素群を含み、前記第1の画素群に属する各画素と前記第2の画素群に属する各画素との間には、前記第3の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置が開示されている。
【0151】
また、本明細書には、放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とが、前記第1の方向に位置ずれしている放射線検出装置が開示されている。
【0152】
また、本明細書には、前記第1の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第1の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0153】
また、本明細書には、前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第1の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第1の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0154】
また、本明細書には、前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片が配列される面が円筒面であり、その中心軸が放射線焦点を通る放射線検出装置が開示されている。
【0155】
また、本明細書には、前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片は、前記第1の方向と交差する第2の方向にも配列されている放射線検出装置が開示されている。
【0156】
また、本明細書には、前記放射線画像検出器が、放射線焦点を視点とする前記放射線画像検出器への投影において、前記第2の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第4の画素群、及び前記第2の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第5の画素群、並びに前記第4の画素群及び前記第5の画素群を除く第6の画素群を含み、前記第4の画素群に属する各画素と前記第5の画素群に属する各画素との間には、前記第6の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置が開示されている。
【0157】
また、本明細書には、放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とは、前記第2の方向に位置ずれしている放射線検出装置が開示されている。
【0158】
また、本明細書には、前記第2の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第2の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0159】
また、本明細書には、前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第2の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第2の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置が開示されている。
【0160】
また、本明細書には、上記の放射線検出装置と、前記放射線検出装置に放射線を照射する放射線源と、を備える放射線撮影装置が開示されている。
【0161】
また、本明細書には、前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方を移動させて、前記第2の格子を前記放射線像に対して互いに位相の異なる複数の相対位置関係に置く走査機構を更に備え、前記放射線画像検出器は、前記各相対位置関係のもとで前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線をそれぞれ検出する放射線撮影装置が開示されている。
【0162】
また、本明細書には、上記の放射線撮影装置と、前記放射線画像検出器で取得された複数の画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算し、この屈折角の分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、を備える放射線撮影システムが開示されている。
【0163】
また、本明細書には、前記演算部は、前記複数の画像間における各画素の信号値の変化に基づいて該画素の信号の位相ズレ量を算出することによって前記屈折角分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【0164】
また、本明細書には、上記の放射線撮影装置と、前記放射線画像検出器で取得された画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角分布を演算し、この屈折角分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、を備える放射線撮影システムが開示されている。
【0165】
また、本明細書には、前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像がモアレを含み、前記演算部は、前記画像の強度分布に対してフーリエ変換を行うことによって空間周波数スペクトル分布を求め、求めた空間周波数スペクトルから前記モアレの基本周波数に対応するスペクトルを分離し、分離された前記スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことによって前記屈折角の分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【符号の説明】
【0166】
10 X線撮影システム(放射線撮影システム)
11 X線源(放射線源)
12 撮影部
13 コンソール
14 X線源保持装置
15 立位スタンド
16 高電圧発生器
17 X線源制御部
18 X線管
19 コリメータユニット
20 制御装置
21 入力装置
22 演算処理部
23 記憶部
24 モニタ
25 I/F
30 フラットパネル検出器(放射線画像検出器)
31 第1の透過型格子
32 第2の透過型格子(強度変調部)
33 走査機構(強度変調部)
40 画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の格子と、
前記第1の格子を通過した放射線によって形成される第1の格子の放射線像の周期パターンに実質的に一致する周期パターンを有する第2の格子と、
前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、を備え、
前記第1の格子及び前記第2の格子は、通過する放射線の進行方向と交差する面内において少なくとも第1の方向に配列された複数の格子片をそれぞれ含み、
前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする該放射線画像検出器への投影において、前記第1の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第1の画素群、及び前記第1の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第2の画素群、並びに前記第1の画素群及び前記第2の画素群を除く第3の画素群を含み、
前記第1の画素群に属する各画素と前記第2の画素群に属する各画素との間には、前記第3の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とは、前記第1の方向に位置ずれしている放射線検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第1の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第1の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第1の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片が配列される面が円筒面であり、その中心軸が放射線焦点を通る放射線検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片は、前記第1の方向と交差する第2の方向にも配列されている放射線検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線検出装置であって、
前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする前記放射線画像検出器への投影において、前記第2の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第4の画素群、及び前記第2の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第5の画素群、並びに前記第4の画素群及び前記第5の画素群を除く第6の画素群を含み、
前記第4の画素群に属する各画素と前記第5の画素群に属する各画素との間には、前記第6の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線検出装置であって、
放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とは、前記第2の方向に位置ずれしている放射線検出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の放射線検出装置であって、
前記第2の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第2の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置。
【請求項10】
請求項7に記載の放射線検出装置であって、
前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第2の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第2の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置に放射線を照射する放射線源と、
を備える放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項11に記載の放射線撮影装置であって、
前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方を移動させて、前記第2の格子を前記放射線像に対して互いに位相の異なる複数の相対位置関係に置く走査機構を更に備え、
前記放射線画像検出器は、前記各相対位置関係のもとで前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線をそれぞれ検出する放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項12に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線画像検出器で取得された複数の画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角分布を演算し、この屈折角分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線撮影システムであって、
前記演算部は、前記複数の画像間における各画素の信号値の変化に基づいて各画素の信号の位相ズレ量を算出することによって前記屈折角分布を演算する放射線撮影システム。
【請求項15】
請求項11に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線画像検出器で取得された画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角分布を演算し、この屈折角分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項16】
請求項15に記載の放射線撮影システムであって、
前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像がモアレを含み、
前記演算部は、前記画像の強度分布に対してフーリエ変換を行うことによって空間周波数スペクトル分布を求め、求めた空間周波数スペクトルから前記モアレの基本周波数に対応するスペクトルを分離し、分離された前記スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことによって前記屈折角の分布を演算する放射線撮影システム。
【請求項1】
第1の格子と、
前記第1の格子を通過した放射線によって形成される第1の格子の放射線像の周期パターンに実質的に一致する周期パターンを有する第2の格子と、
前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像を検出する放射線画像検出器と、を備え、
前記第1の格子及び前記第2の格子は、通過する放射線の進行方向と交差する面内において少なくとも第1の方向に配列された複数の格子片をそれぞれ含み、
前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする該放射線画像検出器への投影において、前記第1の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第1の画素群、及び前記第1の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第2の画素群、並びに前記第1の画素群及び前記第2の画素群を除く第3の画素群を含み、
前記第1の画素群に属する各画素と前記第2の画素群に属する各画素との間には、前記第3の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とは、前記第1の方向に位置ずれしている放射線検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第1の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第1の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第1の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片が配列される面が円筒面であり、その中心軸が放射線焦点を通る放射線検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線検出装置であって、
前記第1及び第2の格子の各々において、前記複数の格子片は、前記第1の方向と交差する第2の方向にも配列されている放射線検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線検出装置であって、
前記放射線画像検出器は、放射線焦点を視点とする前記放射線画像検出器への投影において、前記第2の方向に隣り合う前記第1の格子の格子片同士の連結部が投影される第4の画素群、及び前記第2の方向に隣り合う前記第2の格子の格子片同士の連結部が投影される第5の画素群、並びに前記第4の画素群及び前記第5の画素群を除く第6の画素群を含み、
前記第4の画素群に属する各画素と前記第5の画素群に属する各画素との間には、前記第6の画素群に属する少なくとも一つの画素が介在する放射線検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線検出装置であって、
放射線焦点を視点とした前記放射線画像検出器への投影において、前記第1の格子の中心の投影と、前記第2の格子の中心の投影とは、前記第2の方向に位置ずれしている放射線検出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の放射線検出装置であって、
前記第2の方向に並ぶ前記第1の格子の前記格子片の個数と、前記第2の方向に並ぶ前記第2の格子の前記格子片の個数とが異なっている放射線検出装置。
【請求項10】
請求項7に記載の放射線検出装置であって、
前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方において、前記第2の方向に並ぶ格子片の列毎に、一部の格子片の前記第2の方向に沿う寸法が、他の格子片と異なっている放射線検出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置に放射線を照射する放射線源と、
を備える放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項11に記載の放射線撮影装置であって、
前記第1の格子及び前記第2の格子の少なくともいずれか一方を移動させて、前記第2の格子を前記放射線像に対して互いに位相の異なる複数の相対位置関係に置く走査機構を更に備え、
前記放射線画像検出器は、前記各相対位置関係のもとで前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線をそれぞれ検出する放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項12に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線画像検出器で取得された複数の画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角分布を演算し、この屈折角分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線撮影システムであって、
前記演算部は、前記複数の画像間における各画素の信号値の変化に基づいて各画素の信号の位相ズレ量を算出することによって前記屈折角分布を演算する放射線撮影システム。
【請求項15】
請求項11に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線画像検出器で取得された画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角分布を演算し、この屈折角分布に基づいて、被写体の位相コントラスト画像を生成する演算部と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項16】
請求項15に記載の放射線撮影システムであって、
前記第2の格子によってマスキングされた前記放射線像がモアレを含み、
前記演算部は、前記画像の強度分布に対してフーリエ変換を行うことによって空間周波数スペクトル分布を求め、求めた空間周波数スペクトルから前記モアレの基本周波数に対応するスペクトルを分離し、分離された前記スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことによって前記屈折角の分布を演算する放射線撮影システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−90945(P2012−90945A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9177(P2011−9177)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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