説明

放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法

【課題】本発明の目的は、患部に対して適正量のX線を照射し、且つ患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るために、ガントリに取り付けられた治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、任意のガントリ走行角度において、常に照射対象患部の位置されるアイソセンタに指向することのできる放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法を提供することである。
【解決手段】本発明の放射線治療装置では、治療用X線発生源が、X線軸を指向制御するジンバル機構を介してガントリに支持される。そして、アイソセンタの同定を行うためにアイソセンタ想定位置にマーカ部材を配置する。水平方向のレーザ光を指標としてマーカ部材の高さ方向の位置が決められ、アイソセンタを含む水平面が決定する。任意のガントリ走行角度において、複数の旋回角度におけるマーカ部材のX線画像を取得し、その中心位置を水平面内におけるアイソセンタ想定位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置で用いられる治療用のX線は、患部への適正量照射の遂行及び周辺健全組織への照射量低減を図るために、患部性状に応じた照射領域の設定がなされた上で患部に照射することが必要である。このため、事前にCT等による患部評価に基づいて治療計画の立案を行い、当該治療計画に沿った治療が実施される。具体的には、患部相当位置をアイソセンタに位置させ、同じくアイソセンタに指向するように、ガントリに対する治療用X線発生源の設定が行われる。そして、治療用X線発生源とアイソセンタとの間に配置されるマルチリーフコリメータにより、治療用X線発生源から照射されるX線の患部に対する照射領域を適正性状に成形し、患部に対して所定線量のX線照射が行われる。
【0003】
このため、患者の載置されたカウチを位置制御して、設定されたアイソセンタの位置に対して、常に患者の患部中心を精度良く位置させることが必要となる。また、治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、常にアイソセンタを指向するように制御することが必要となる。
【0004】
特に、ガントリ上に搭載される治療用X線発生部(治療用X線発生源、マルチリーフコリメータ等)は、自重(〜数百kg)によりガントリに変形を生じさせ、ガントリにおける走行角度および旋回角度に依存して、治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸とアイソセンタとの相対位置にはズレが生じる。また、放射線治療装置の機械要素部品(例:任意位置設置用歯車)の磨耗等により、X線の照射軸とアイソセンタとの相対位置には経時的なズレも生じる場合がある。通常、ガントリに対する積載物の重量バランスを取るために、ガントリ上における治療用X線発生部取り付け位置の対向側(X線検出器設置部)にも治療用X線発生部と同等な重量物を設置するが、この場合、両者の自重によるガントリの変形量は更に大きなものとなる。このため、X線の照射軸をアイソセンタに指向させる調整を比較的高頻度で行う必要があり、治療計画に基づくX線照射角度毎に、多くの調整時間が費やされている。
【0005】
上記した技術に関連して、以下に示す提案がなされている。
【0006】
特開平10−337285号公報に開示されている「X線診断装置」では、弧状のアームにX線発生部とX線検出部とを対向配置するX線診断装置において、X線発生部から曝射されるX線束の照射野と、このX線束の照射野に対するX線検出部の受像面とが一致するように、X線検出部におけるX線の検出位置を制御する検出位置制御手段を有するX線診断装置が提案されている。
【0007】
また、特開2004−97646号公報に開示されている「放射線治療装置」では、被検体の治療野へ治療用放射線を照射する放射線照射ヘッドと、被検体の治療野に診断用X線を照射するX線源と、被検体を透過した診断用X線の透過X線を検出して、診断画像データとして出力するセンサアレイとを備え、センサアレイは、放射線照射ヘッドの移動に連動して動く、放射線治療装置が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−337285号公報
【特許文献2】特開2004−97646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、患部に対して適正量のX線を照射し、且つ患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るために、治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、常に照射対象患部の位置する所定位置に指向することのできる放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用する番号・符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明の放射線治療装置(100)は、アイソセンタ(200)を通る第1の軸の周りに回動自在であり、アイソセンタで第1の軸に交差する第2の軸の周りにも回動自在なガントリ(1)と、ガントリに配設される撮像装置(6、16、190)と、制御装置(400)と、を具備する。制御装置は、ガントリの第1の軸周りの角度として定義する旋回角度の複数の位置から、撮像装置によりマーカ部材の画像を撮像する。制御装置は、その画像それぞれにおける視野位置に基づいて、アイソセンタ同定位置を同定する。
【0012】
上記の放射線治療装置(100)において、第1の軸は、鉛直方向に平行である。制御装置は、概ねアイソセンタの位置に配置されたマーカ部材の画像を撮像するに際して、撮像装置をガントリと第1の軸とが交差する位置に配置させてマーカ部材の画像を撮像する。
【0013】
上記の放射線治療装置(100)の1形態において、撮像装置は、検出器(6)と同一である。
【0014】
上記の放射線治療装置(100)は、更に、ガントリに配設される放射線発生装置(2)と、アイソセンタを介して放射線発生装置と対向する位置の前記ガントリ上に配置され、放射線発生装置から出射されたX線の強度分布を検出する検出器(6)と、放射線発生装置のガントリに対する取付け角度を調整する為のジンバル機構(3)と、を具備する。制御装置は、アイソセンタ同定位置に前記マーカ部材を移動させ、ガントリの前記第2の軸周りの複数の走行角度のそれぞれの位置から、前記撮像装置によって前記画像を撮像する。各走行角度毎に、撮像した前記マーカ部材の位置に基いて、前記放射線発生装置から出射されるX線の照射軸を前記マーカ部材の位置に合わせるために必要な、前記ジンバル機構の調整量を求める。
【0015】
上記の放射線治療装置(100)の1形態において、撮像装置は、前記放射線発生装置のX線出射端部に、X線の照射軸に対して視野中心が一致するように取り付けられたCCDカメラである。この時、マーカ部材はナイロン球であることが好ましい。また、マーカ部材は、外表面でマーカ支持部材によって支持されていることが好ましい。
【0016】
上記の放射線治療装置(100)において、CCDカメラは、単色光のフィルタを備え、
前記アイソセンタの同定の際に、前記マーカ部材に対して前記単色光を透過することのできる波長の単色光が照射されることが好ましい。
【0017】
上記の放射線治療装置(100)は、1形態において、マーカ部材と前記マーカ支持部材は、光反射率が異なっていることが好ましい。更には、マーカ部材は、マーカ支持部材よりも光反射率が高いことがより好ましい。
【0018】
上記の放射線治療装置(100)において、制御装置は、撮像したマーカ部材の画像に対して、二値化処理を施すことが好ましい。
【0019】
上記の放射線治療装置(100)において、マーカ部材は、前記CCDカメラの検出限界より大きく、且つ、前記CCDカメラの視野範囲よりも小さい大きさである。
【0020】
上記の放射線治療装置(100)において、マーカ部材は、前記CCDカメラの視野に対して1/3〜1/4の大きさである。
【0021】
上記の放射線治療装置(100)において、制御装置は、各走行角度毎に求められたジンバル機構の調整量を、走行角度と対応付けて格納する。
【0022】
上記の放射線治療装置(100)において被照射体にX線を照射するにあたり、制御装置は、格納されたジンバル機構の調整量と走行角度との関係に基いて、放射線発生装置の取り付け角度をジンバル機構により調整し、
取り付け角度を調整した後に、放射線発生装置から被照射体に対してX線を照射する。
【0023】
上記の放射線治療装置(100)は、更に、放射線発生装置から出射されたX線の一部をカットし照射野を調整するマルチリーフコリメータ(8)、と、放射線発生装置のガントリに対する取り付け位置を調整する為の位置合わせ機構と、を具備する。撮像装置は、検出器と同一である。制御装置は、各走行角度毎にX線強度分布の回転対称性を評価する。回転対称性の評価結果に基いて、マルチリーフコリメータと放射線発生装置との相対配置を所望の関係とするのに必要な、位置合わせ機構の調整量を求める。求めた位置合わせ機構の調整量と走行角度との対応関係を格納する。
【0024】
上記の放射線治療装置(100)において被照射体にX線を照射するにあたり、制御装置は、格納された位置合わせ機構の調整量と走行角度との対応関係に基づいて、X線照射軸とマルチリーフコリメータとの相対配置が所望の関係となるように、放射線発生装置の取り付け位置を調整する。取り付け位置を調整した後に、放射線発生装置から被照射体に対してX線を照射する。
【0025】
上記の放射線治療装置(100)において、制御装置は、更に、各走行角度毎に求められたジンバル機構の調整量に基いて、各走行角度毎に放射線発生装置の取り付け角度を調整し、取り付け角度の調整された状態でX線を出射させて、マーカ部材のX線画像を検出器により撮像させる。撮像されたマーカ部材のX線画像の歪みの大きさに基いて、検出器のガントリに対する取り付け角度変位量を求める。検出器のガントリに対する取り付け角度変位量と走行角度との相関関係を、格納する。
【0026】
上記の放射線治療装置(100)において被照射体にX線を照射するに際し、制御装置は、設定された走行角度においてX線を出射させて被照射体のX線画像を検出器により検出させ、格納された検出器のガントリに対する取り付け角度変位量と走行角度との相関関係に基いて、検出された被照射体のX線画像を補正する。
【0027】
上記の放射線治療装置(100)において、走行角度は、ガントリの第1の軸周りの角度として規定される複数の旋回角度の夫々の位置に対して設定される。
【0028】
上記の放射線治療装置(100)において、制御装置は、アイソセンタを同定する前に、放射線発生装置を、ガントリと第1の軸とが交差する位置に配置する。複数の旋回角度のそれぞれの位置において、放射線発生装置からX線を出射させて検出器によりX線の強度分布を検出する。X線強度分布の検出結果に基いて、X線照射軸が何れの旋回角度でも一致するように、ガントリに対する前記放射線発生装置の取り付け角度を調整する。
【0029】
上記の放射線治療装置(100)は、更に、アイソセンタの高さ位置から水平方向に光線を出射する水平方向軸調整光源(500)を具備する。制御装置は、アイソセンタを同定する前に、水平方向軸調整光源より出射された光線を指標として、マーカ部材の高さ方向の位置を調整する。
【0030】
本発明に係る放射線治療装置の制御方法は、アイソセンタを通る第1の軸の周りに回動自在であり、アイソセンタで第1の軸に交差する第2の軸の周りにも回動自在なガントリと、ガントリに配設される撮像装置と、を具備する放射線治療装置の制御方法ある。アイソセンタ想定位置を指示するマーカ部材を、概ねアイソセンタに想定される位置に配置するステップ(ステップS30)と、ガントリの第1の軸周りの角度として定義する旋回角度の複数の位置から、概ねアイソセンタの位置に配置されたマーカ部材を撮像し、撮像されたマーカ部材の画像それぞれにおける視野位置に基づいて、アイソセンタの位置を同定するアイソセンタ同定ステップ(ステップS70、80)と、を具備する。
【0031】
上記の放射線治療装置の制御方法において、第1の軸は、鉛直方向に平行である。アイソセンタ同定ステップにおいて、マーカ部材の画像を撮像するに際し、放射線発生装置は、ガントリと第1の軸とが交差する位置から前記マーカ部材の画像を撮像する。
【0032】
上記の放射線治療装置の制御方法において、撮像装置は、前記検出器と同一であり、
複数の走行角度のそれぞれの位置から、前記マーカ部材の画像を撮像するステップにおいて、マーカ部材の画像は、放射線発生装置からX線を出射して、このX線の強度分布を検出器で検出することにより行われる。
【0033】
上記の放射線治療装置の制御方法において、放射線治療装置は、更に、ガントリに配設される放射線発生装置と、アイソセンタを介して前記放射線発生装置と対向する位置の前記ガントリ上に配置され、放射線発生装置から出射されたX線の強度分布を検出する検出器と、放射線発生装置の前記ガントリに対する取付け角度を調整する為のジンバル機構と、を具備する。更に、前記アイソセンタ同定ステップにおいて同定された位置に、前記マーカ部材を配置するステップ(ステップS100)と、ガントリの前記第2の軸周りの角度として定義される複数の走行角度のそれぞれの位置から、前記マーカ部材の画像を撮像するステップ(ステップS120)と、各走行角度毎に、撮像した前記マーカ部材の位置に基いて、X線の照射軸を前記マーカ部材の位置に合わせるために必要な、ガントリに対する前記放射線発生装置の取付け角度の調整量を求める調整量決定ステップ(ステップS130)と、を具備する。
【0034】
上記の放射線治療装置の制御方法において、撮像装置は、放射線発生装置から出射されるX線の照射軸に対して視野中心が一致するように、放射線発生装置のX線出射端部に取り付けられたCCDカメラである。
【0035】
上記の放射線照射装置の制御方法は、更に、走行角度毎に求められた取付け角度の調整量を、走行角度と対応付けて格納するステップ(ステップS140)を具備する。
【0036】
上記の放射線照射装置の制御方法は、更に、格納された取り付け角度の調整量と走行角度との関係に基いて、設定された走行角度において前記放射線発生装置の取付け角度を調整するステップと、取り付け角度を調整した後に、前記放射線発生装置から被照射照射対象に対してX線を照射させるステップと、を具備する。
【0037】
上記の放射線治療装置の制御方法において、放射線治療装置は、更に、前記放射線発生装置から出射されたX線の一部をカットし照射野を調整するマルチリーフコリメータ、を備える。撮像装置は、検出器と同一である。各走行角度毎に、放射線発生装置から出射されたX線強度分布の回転対称性を評価するステップ(ステップS150)と、回転対称性の評価結果に基いて、マルチリーフコリメータとX線照射軸との相対配置を所望の関係とするのに必要な、放射線発生装置のガントリに対する取付け位置の調整量を求めるステップ(ステップS120〜S180)と、取付け位置の調整量と走行角度との対応関係を格納するステップ(ステップS200)と、を具備する。
【0038】
上記の放射線治療装置の制御方法は、格納された取り付け位置の調整量と走行角度との対応関係に基いて、設定された角度においてX線照射軸とマルチリーフコリメータとが所望の関係となるように、放射線発生装置の取り付け位置を調整するステップと、取り付け位置を調整した後に、放射線発生装置から、被照射体に対してX線を照射するステップと、を具備する。
【0039】
上記の放射線治療装置の制御方法は、更に、各走行角度毎に求められた取り付け角度の調整量に基いて、各走行角度毎に前記放射線発生装置の取付け角度を調整し、取り付け角度を調整した状態でX線を出射して、マーカ部材のX線画像を検出器により撮像するステップ(ステップS400)と、撮像されたマーカ部材のX線画像の歪みの大きさに基いて、検出器のガントリに対する取付け角度変位量を求めるステップ(ステップS500)と、検出器のガントリに対する取付け角度変位量と走行角度との相関関係を、格納するステップ(ステップS600)と、を具備する。
【0040】
上記の放射線治療装置の制御方法は、更に、設定された走行角度において、被照射体のX線画像を撮像するステップと、格納された検出器のガントリに対する取付け角度変位量と走行角度との相関関係に基いて、撮像された被照射体のX線画像を補正するステップ(ステップS700)と、を具備する。
【0041】
上記の放射線治療装置の制御方法(100)において、走行角度は、ガントリの第1の軸周りの角度として規定される複数の旋回角度の夫々の位置に対して設定される。
【0042】
上記の放射線治療装置の制御方法は、更に、アイソセンタ同定ステップの前に実行される事前軸合わせステップ(ステップS10、20)を具備する。事前軸合わせステップは、放射線発生装置を、ガントリと第1の軸とが交差する位置に配置するステップ(ステップS10)と、複数の旋回角度のそれぞれの位置から、放射線発生装置により出射されたX線の強度分布を検出し、X線強度分布の検出結果に基いて、X線照射軸がいずれの旋回角度でも一致するように、前記ガントリに対する前記放射線発生装置の取付け角度を調整するステップ(ステップS20)と、を有する
【0043】
上記の放射線治療装置の制御方法は、更に、アイソセンタ同定ステップの前に実行され、アイソセンタの高さ位置から出射される光線を指標として、マーカ部材の高さ方向の位置を調整するアイソセンタ高さ位置設定ステップ(ステップS40、50、60)を具備する。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、患部に対して適正量のX線を照射し、且つ患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るために、ガントリに取り付けられた治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、任意のガントリ走行角度において、常に照射対象患部の位置される所定位置に指向することのできる放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
添付図面を参照して、本発明による放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0046】
本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置の概略構成を図1に、その断面構造を図2に示す。本実施の形態の放射線治療装置100は、回転ガントリー1と、治療用X線発生源2と、検出器(FPD、CCD、MWPC、X線フィルム等)6と、診断用X線発生源5と、検出器4と、患者を載置するためのカウチ7を備えている。治療用X線発生源2は、そのX線照射軸を必要に応じて2軸の周りに回動して指向角を制御することの出来るジンバル構造3を有している。さらに、本発明の実施の形態においては、患部性状に応じたX線照射領域を設定して患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るために、治療用X線発生源2と患部との間にマルチリーフコリメータ(MLC)8を備えている。尚、治療用X線発生源2とマルチリーフコリメータ8との間には、X線の強度分布をフラットにする為のフラットニングフィルタが配置されることもある。フラットニングフィルタが配置された場合でも、X線の強度分布は若干の勾配を有しており、検出器によってX線の強度中心を求めることが可能である。本実施の形態における、治療用X線発生源2とマルチリーフコリメータ(MLC)8との概略構成を図3に示す。治療用X線発生源2において、電子銃から出射された電子ビーム2bは、電子ビーム加速装置2a中を通過する間にエネルギーを得て加速され、電子ビーム加速装置2aの終端部に機械的に接続されているX線ターゲット2cに衝突する。X線ターゲット2cからは、制動放射により、電子ビーム入射方向とX線出射角度分布との関係に基づいて、電子ビームと同一の照射軸を有するX線9が発生する。X線ターゲット2cで発生したX線9は、図3に示されるように、治療用X線発生源2と患部との間に配置されているマルチリーフコリメータ(MLC)8により、患部性状に応じた利用線錐10が形成される。
【0047】
また、本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置100は、制御装置400として制御用のコンピュータを有している。そして、当該制御用のコンピュータにより、アイソセンタの同定、およびアイソセンタの同定により設定されたアイソセンタ位置に基づいて、カウチの位置と治療用X線発生源2の照射軸とをアイソセンタに位置させるための調整量の算出、そして算出量に基づいたカウチの位置と治療用X線発生源の照射軸との制御が行われる。本発明においては、アイソセンタの同定に際して、アイソセンタ想定位置を指示するためのマーカ部材が用いられる。マーカ部材としては、検出器6で撮像可能であって、その中心位置が明確に分かる形状の部材であれば何でも良いが、任意の方向からの校正が可能なる球体物が好的で、とりわけ真球度が高いもの(例:JIS B1501)の入手が容易で且つ後述手段において当該中心形状の同定が容易である、金属球、ナイロン球などが最適である。また、本形状寸法は検出限界及び検出器寸法、設置距離により選択することとなる。
【0048】
本発明の放射線治療装置において、ガントリは、アイソセンタを通り、概ね直交する2つの回転軸周りに回転自在である。1つの軸は概ね鉛直方向を指向し、この軸を旋回軸とする。また、旋回軸まわりの角度を旋回角度として規定する。一方、旋回軸に対して概ね直交する軸を走行軸とする。そして、ガントリと旋回軸の交差する位置(最頂部、あるいは最下部)を、走行角度0°あるいは±180°と規定する。本発明の実施の形態に説明においては、それぞれ上記したように、旋回軸を鉛直方向向きと規定して説明するが、旋回軸と走行軸とが概ね直交関係にあれば、旋回軸の指向方向が鉛直向きに規定されることはない。例えば、旋回軸が水平方向を指向する場合であっても同様に成立する。
【0049】
本実施の形態においては、(1)ガントリの走行角度±90°により規定される面を、アイソセンタを含む水平面とし、水平方向軸調整用レーザ(水平位置を指示できる光線であればレーザーに限定されない)を用いて、当該水平面内の最適位置にマーカ部材としての金属球を配置することにより、アイソセンタの水平位置を設定する。(2)次に、治療用X線発生源2がガントリ走行角度0度の位置に配置されたときに、治療用のX線とX線検出器とを用いて、複数のガントリ旋回角度における金属球座標を測定し、何れの旋回角度においても当該金属球の座標が同じになるように金属球の水平面内位置調整を行い(図4参照)、当該位置を水平面内におけるアイソセンタの位置とする。(3)更に任意のガントリ走行角度及び旋回角度において、前記設置金属球にX線照射軸を一致させるために必要なジンバル構造所要駆動量の同定を行う。
【0050】
また、本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置100においては、制御装置400により、(1)〜(2)に示されたアイソセンタ位置の同定を行い、(3)により当該放射線治療装置の任意のガントリ走行角度および旋回角度に対応した、カウチとアイソセンタとの相対位置、および治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸とアイソセンタとの相対位置を算出する。そして、それぞれの算出結果に基づいた、カウチおよびX線軸のアイソセンタに対するズレ量(必要調整量)をテーブルとして保持することにより、医療計画に基づいて様々な照射角度(走行角度及び旋回角度)におけるX線照射が必要になったときにおいても、迅速にX線の照射軸をアイソセンタに位置される患部に照射する。これにより、患部に対して適正量のX線を照射し、且つ患部周辺健全組織への放射線照射量の低減を図るために、ガントリに取り付けられた治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、任意のガントリ走行角度において、常に照射対象患部の位置されるアイソセンタに指向することのできる放射線治療システムを実現する。
【0051】
(実施の形態1)放射線治療装置
本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置の概略構成を図5に示す。本実施の形態に係わる放射線治療装置100は、図1および図2に示されるように、回転ガントリー1と、回転ガントリー1に取り付けられて治療用のX線を出射するための治療用X線発生源2と、回転ガントリー1の治療用X線発生源2と対向する位置に取り付けられて、治療用X線発生源2から出射されるX線を検出するためにX線照射軸に対して検出面が概ね垂直になるように配設された検出器(FPD、CCD、MWPC、X線フィルム等)6と、回転ガントリー1に取り付けられて患者の体内にある患部(癌病巣部)の位置を確認するための透視画像を取得するための診断用X線発生源5と、回転ガントリー1の診断用X線発生源5と対向する位置に取り付けられて診断用X線発生源5から出射されるX線を検出する検出器4と、患者を載置するためのカウチ7とを備えている。また、本発明の実施の形態においては、患部性状に応じたX線照射領域を設定して患部周辺健全組織への放射線照射量の低減を図るために、治療用X線発生源2と患部との間にマルチリーフコリメータ(MLC)8を備えている。
【0052】
治療用X線発生源2は、支持部12を介してガントリ1に取り付けられている。
【0053】
本実施の形態においては、アイソセンタの同定に際して、アイソセンタ想定位置を指示するための金属球を用いる。金属球は、球支持棒の先端に取り付けられており、球支持棒は、アイソセンタ同定時にカウチの所定位置に取り付けられる。
【0054】
本実施の形態に係わる放射線治療装置は、図5に示されるように、さらに、アイソセンタの同定における水平面の水平位置を設定するためのレーザ光500aを発生させるためのレーザ装置装置500を備えている。本実施の形態においては、水平面内方向のアイソセンタの位置同定をするために、治療用放射線装置2から照射されるX線と、当該X線を検出するための検出器6とを用いる。
【0055】
また、本実施の形態に係わる放射線治療装置100は、CPUおよび記憶部等を備えた図示せぬコンピュータを有している。そして、当該記憶部には、本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置におけるアイソセンタの同定、およびアイソセンタの同定により設定されたアイソセンタ位置に基づいて、カウチの位置と治療用X線発生源の照射軸とをアイソセンタに位置させるための調整量の算出、および算出結果に基づいて、カウチの位置と治療用X線発生源の照射軸とをアイソセンタに指向させるための放射線治療装置制御用プログラムが予め格納されている。
【0056】
(実施の形態1の動作原理)
以下、図8に基づいて、本実施の形態の動作フローを説明する。本実施の形態に係わる放射線治療装置100が起動すると、本実施の形態に係わる放射線治療装置100に備わる図示せぬ制御用コンピュータのCPUが、記憶部に予め格納されている放射線治療装置制御用プログラムを読み込んで実行する。放射線治療装置制御用プログラムが実行されると、CPUは、患部に対して適正量のX線を照射するために、以下の手順に沿ってアイソセンタの同定、およびアイソセンタの同定により設定されたアイソセンタ位置に基づいて、カウチの位置と治療用X線発生源の照射軸とをアイソセンタに位置させるための調整量の算出を行う。
【0057】
初めに、ガントリ1に取り付けられた治療用X線発生源2の走行角度が0度になるように、ガントリの初期設定がなされる(ステップS10)。治療用X線発生源などのガントリ搭載物を、ガントリ走行角度が0°となる位置に設置した際、荷重方向は対称性を有することから、ガントリ変形は中心方向に対するものが主体となる。このことは、当該位置から出射したX線の中心軸が、経時的にも最初の調整位置に対して大きく変化しないことを意味する。次に、ガントリの複数の任意旋回角度において、X線照射野の中心がほぼ同等となるようX線発生部取付角度を調整する(ステップS20)。これにより、ガントリの旋回軸とX線照射軸とがほぼ同一に調整される。任意の旋回角度としては、例えば0°、±60°(0°はガントリ平面がカウチ移動方向に垂直な状態に相当)といった、X線像検出感度に相違が生じるような角度選定をすることが望ましい。次に、図5に示されるアイソセンタ中心相当位置200に、アイソセンタの同定を行う為のマーカ部材として金属球150を設置する(ステップS30)。当該球の材質は、X線撮影で像を同定できる実効厚さを有するものであれば特に金属材料に限定されない。但し、X線透過特性の面からは、金属材料であることが好適である。後述するが、アイソセンタの同定は、マーカ部材を検出器で撮像することにより行われるので、当該球の寸法は、検出器における分解能及び視野サイズを考慮したうえで、検出器により十分評価可能であるものに設定する。当該球は、支持部材により固定される。当該球が嵌合部を有し、支持部材が当該球と嵌合するようにして固定される場合には、当該球内における支持棒取り付け箇所での透過性の差異を生じないように、当該球と比較して大きくX線透過特性が異ならないことが望ましい。一方、接着などの方法により、当該球の表面にて支持部材が取り付けられる場合には、当該球と支持部材との認識の容易性から、支持部材球のX線透過特性は当該球とは異なっていることが望ましい。次に、水平方向軸調整用レーザ装置500から出射されるレーザ光の水平高さが、ガントリの走行角度±90°平面(アイソセンタを含む平面)高さと同一となるように当該水平方向軸調整用レーザ装置500を設置し、実際にレーザ光を照射する(ステップS40)。そして、金属球150の高さ方向の位置を、当該方向軸調整用レーザ装置500から照射されるレーザ光500aの軌跡を基準にして、ガントリの走行角度±90°平面(アイソセンタを含む平面)高さと同一となるように調整する。調整後、当該金属球の高さ方向の位置が、レーザ光500aに基づく高さに設定されているかの確認が行われ(ステップS50)、高さ設定に誤差のある場合には、再度金属球150の高さ方向の再設定が行われ(ステップS60)、規定の範囲内であると判断された場合には、次のステップに進められる。当該金属球の高さ方向の位置が、レーザ光500aに基づく高さに設定されているかの確認がなされると、複数のガントリ旋回角度(図6、図7参照)における金属球のX線像計測が行われる(ステップS70)。ステップS70におけるX線像の計測においては、図7に示されるようなX線照射野50に、それぞれのガントリ旋回角度での金属球150の像が得られる。この金属球の像の位置に基づいて、水平面内におけるアイソセンタ中心相当位置が算出される(ステップS80)。アイソセンタ中心相当位置としては、上記それぞれの金属球の像を含む円の中心が一例として考えられる(図7参照)。そして、ステップS80で算出されたアイソセンタ中心相当位置が、上記それぞれの旋回角度におけるアイソセンタとしての全ての許容範囲内に入るか否かが評価される(ステップS90)。ステップS90の評価において、当該アイソセンタ中心相当位置が許容範囲内であると判断された場合には、当該位置がアイソセンタに相当するものと判断する。一方、ステップS90の評価において、当該アイソセンタ中心相当位置が許容範囲外であると判断された場合には、評価結果に基づくアイソセンタ中心相当位置に金属球150が調整される(ステップS91)。
【0058】
上記した一連のアイソセンタの同定作業が終了すると、設定されたアイソセンタの想定位置は制御用コンピュータの記憶部に保存される。そして、予め決められた治療計画に基づいて、適宜カウチに積載された患者の患部中心、および治療用X線発生源2のX線照射軸を規定のアイソセンタの想定位置に移動させる。これにより、患部に対して適正量のX線を照射し、且つ患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るために、ガントリに取り付けられた治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、常に照射対象患部の位置されるアイソセンタに指向することのできる放射線治療装置の制御方法を実現する。
【0059】
本実施の形態においては、アイソセンタに対して水平方向(走行角度±90°)に向けて出射したレーザ光(レーザ装置自身は床面等に固定することで絶対位置精度は確保)を、例えば当該水平面内の互いに直交する2方向から出射することでも、アイソセンタの水平位置を設定することが可能である。また、床面等に載置されたレーザ装置から出射されたレーザ光等により、ガントリの走行角度±90°を通る水平面位置にマーカーが付され、その後は当該マーカーが付されたガントリ位置に上記レーザ装置を継続的に装着することにより、アイソセンタの水平位置を同定することにより、実際的に当該作業時間を低減することが可能となる。
【0060】
本実施の形態においては、本来放射線治療装置に備えられている各構成要件及び機能を用いた位置調整手法を用いるのみで、各ガントリ走行角度におけるX線中心軸調整に供するために用いる金属球をアイソセンタ相当位置に正確に設置し、低コストかつ短時間でのアイソセンタの同定が可能となる。また、本実施の形態に係わる放射線治療装置、放射線治療装置の制御方法では、前述のように、ガントリ自身の変形の影響を受けにくい位置(治療用X線発生源がガントリ走行角度0°に配置)においてアイソセンタの同定を行うため、同定において考慮するパラメータを削減でき、短時間で同定を遂行することができる。
【0061】
(実施の形態2)放射線治療装置
本発明の実施の形態2に係わる放射線治療装置の概略構成を図9に示す。本実施の形態に係わる放射線治療装置の基本的な構成は、実施の形態1のそれと同じである。
【0062】
実際の放射線治療装置におけるX線照射は、図9に示されるように、治療用X線発生源2のガントリに対して配置される位置が走行角度=0°のみではなく、任意の走行および旋回角度で行われる。このとき、治療用X線発生源2の自重によりガントリには変形が生じる。従って、実際的には、上記したガントリ変形をも考慮したアイソセンタの同定作業および、X線照射軸のアイソセンタへの指向制御が望まれる。
【0063】
本実施の形態に係わる放射線治療装置においては、治療用X線発生源2と支持部12との間にジンバル構造3を有しており、必要に応じて治療用X線発生源2を2軸の周りに回動し、そのX線照射軸の指向角を制御することができる。
【0064】
(実施の形態2の動作原理)
本実施の形態の動作フローの基本的な構成は、実施の形態1のそれと同様である。但し、本実施の形態に係わる放射線治療装置の制御方法では、ステップS90までの動作によりアイソセンタが同定された後に、以下のステップが追加され、任意のガントリ走行角度及び旋回角度の場合における治療用X線発生源2のX線照射軸の調整が行われる。これにより設定されるアイソセンタ想定位置に対して、何れの旋回角度、走行角度であっても治療用X線発生源2のX線照射軸の指向制御が行われる。
【0065】
以下、図10に基づいて、本実施の形態の動作フローを説明する。ステップS90までの動作は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。本実施の形態に関わる方瀬線治療装置が起動すると、図示せぬ制御用コンピュータのCPUが、記憶部に予め格納されている放射線治療装置制御用プログラムを読み込んで実行する。放射線治療装置制御用プログラムによって、放射線治療装置は、以下のように動作する。
【0066】
ステップS90までの処理により同定されたアイソセンタの位置に、金属球が配置される(ステップS100)。計測対象となる走行角度、旋回角度が設定される(ステップS110)。治療用X線発生源2の位置を、ガントリ上の各旋回角度の各走行角度に移動させる。そして、各旋回角度の各走行角度毎に、X線を照射する(ステップS120)。治療用X線発生源2が、ガントリ走行角度Φに位置する模式を図11Aに示す。このとき、治療用X線発生源2の自重によりガントリには変形が生じ、これにより、アイソセンタ中心相当位置200とX線照射軸との間にはズレ(Δx、Δy)が発生する。また、治療用X線発生源2と検出器6との間の距離をLとすると、例えば図11A(d)に示す関係からは検出器6の検出面上におけるΔxは、Δx=L×tanθとなる。本実施の形態においては、検出面上においてX線強度が最も高くなる位置(X線中心軸とX線検出器入射面が交差する位置)と、検出面上における金属球像の中心位置とから、当該走行角度における前記両者の差異量を求める。
【0067】
例えば、図11Bに示すように、治療用X線発生源の発生点源のみが変形を生じた場合、X線出射角度Θ変化時のX線検出器上での照射位置ズレ量は
【数1】

【0068】
ここで、Lは既知のため、ΔX計測により現変化量Θを認識することができる。一方、X線検出器6においても入射面がΨ変化した場合、照射位置ズレ量は
【数2】

【0069】
ここで、Lは既知であるが、Ψは不明であり、ΔXXからはΘが判断つかない。但し、ここで前提となる各中心位置が変化しない程度の傾きを生じる場合、以下のとおりL及びΔXXの評価からΘを同定することが可能である。つまり、治療用X線発生源側とX線検出器側のバランスを取らない場合、Ψは無視し得るほど小さい(Ψ≒0)。このため、sinΨ≒0、cosΨ≒1であるので、
【数3】

【0070】
一方、治療用X線発生源側とX線検出器側のバランスを取る場合、Ψ≒Θとなる。このため、
【数4】

【0071】
なお、ここではX方向(X線検出器面における直交座標での1方向)のみを対象として説明したが、本概念をY方向も含めた2次元平面に広げることで任意方向に対して調整することができる。
【0072】
そして、上記により求められたX線強度が最も高くなる位置(X線中心軸2dとX線検出器入射面が交差する位置)と、検出面上における金属球像の中心位置とを一致させるために必要なX線発生部設置角度調整量(Δx、Δy)を、各旋回角度毎及び各走行角度毎に算出する(ステップS130)。
【0073】
上記した一連の作業が終了すると、算出されたX線発生部設置角度調整量は、旋回角度及び走行角度と対応付けられて、制御用コンピュータの記憶部に保存される(ステップS140)。
【0074】
尚、S130において、X線発生部設置取付角度調整量を算出した後に、算出した調整量の角度だけ実際にX線発生部の取り付け角度を調整してから再度X線を照射して、算出された角度調整量により実際に強度分布中心と金属球像とが一致するかどうかを確認してもよい。この場合、算出された角度調整量でもまだ誤差を生じる場合には、取り付け角度の微調整が行われる。そして、S140では、強度分布中心と金属球像とが実際に一致するまでの調整量が格納される。
【0075】
以下のステップは、実際に被照射体に対してX線を照射する際の動作である。被照射体に対してX線を照射する際には、被照射体に対してX線を照射するための旋回角度、走行角度が設定されている。治療用X線発生源2が、この旋回角度、走行角度に配置された後、格納されたX線発生部設置角度調整量に基いて、治療用X線発生源2のX線照射軸が規定のアイソセンタ想定位置を向くように取付け角度が調整される。そして、取り付け角度が調整された状態で、患部に対して適正量のX線が照射される。このようにして、患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るために、ガントリに取り付けられた治療用X線発生源から照射されるX線の照射軸を、常に照射対象患部の位置されるアイソセンタ想定位置に指向することのできる放射線治療装置の制御方法を実現する。
【0076】
本実施の形態においては、ジンバル構造3を有することにより、任意の走行角度及び旋回角度に配置された治療用X線発生源2に的確に対応するアイソセンタの同定を行うことができる。そして、治療用X線発生源が、ガントリ上の任意の走行角度および旋回角度に位置された場合においても、そのX線照射軸を、常に設定されたアイソセンタ想定位置に正確に指向させることができる。
【0077】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態に係わる放射線治療装置の基本的な構成は、実施の形態1のそれと同じである。但し、治療用X線発生源2は、ガントリに対して相対位置の調整が可能となるように、位置合わせ機構(図示せず)を介して支持台12に取り付けられている。尚、ガントリに対する相対位置の調整が可能とは、ガントリの接線方向に対して移動可能であることを意味している。
【0078】
(実施の形態3の動作原理)
本実施の形態の動作フローの基本的な構成は、実施の形態1のそれと同様である。但し、本実施の形態に係わる放射線治療装置の制御方法では、ステップS90までの動作によりアイソセンタが同定された後の動作が追加される。任意のガントリ走行角度及び旋回角度の場合でも治療用X線発生源2のガントリに対する相対位置の調整が行われる。これにより、何れの旋回角度、走行角度であっても治療用X線発生源2のX線照射軸と、マルチリーフコリメータとの相対配置を、所望のものとすることができる。
【0079】
図17を参照して、本実施の形態に係る動作方法を詳細に説明する。なお、ステップS90までの動作は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。まず、ステップS90までの動作によって同定されたアイソセンタの位置に、金属球が設置される(ステップS100)。計測対象となる走行角度、旋回角度が設定される(ステップS110)。治療用X線発生源2の位置を、ガントリ上の各旋回角度の各走行角度に移動させる。そして、各旋回角度の各走行角度毎に、次ぎのステップS120〜180の動作を行う。まず、X線を照射する(ステップS120)。得られたX線強度分布の回転対称性が許容範囲内であるか否かの評価が行われる(ステップS150)。回転対称性が許容範囲外であった場合、ジンバル機構を駆動して、治療用X線発生源2のガントリに対する取り付け角度が調整される(ステップS160)。取り付け角度が調整された後、再びステップS120に戻り、金属球の撮像が実施される。一方、ステップS150において、回転対称性が許容範囲内であった場合には、撮像したX線画像において、金属球の中心がX線強度分布の中心との位置が一致しているか否かの評価が行われる(ステップS170)。金属球の中心とX線強度分布の中心との位置が、一致していない場合には、位置合わせ機構により、治療用X線発生源2のガントリに対する取り付け位置が調整される(ステップS180)。取付け位置が調整された後、再びステップS120へ戻り、以降の動作を繰り返す。一方、ステップS170において、金属球の中心とX線強度分布の中心が一致した場合には、次ぎの計測対象となる走行角度、旋回角度に治療用X線発生源2を移動させ(ステップS190)、ステップS120〜180までの動作を繰り返す。各旋回角度、各走行角度において、回転対称性が許容範囲内であり、且つ、金属球の中心がX線強度中心に一致するまでのジンバル機構と位置合わせ機構の駆動量が、その旋回角度のその走行角度においてアイソセンタへ適正な照射を行う為の調整量である。このジンバル機構と位置合わせ機構の調整量と、旋回角度及び走行角度と、の相関関係が、制御用コンピュータの記憶部に格納される(ステップS200)。
【0080】
実際に被照射体に対してX線を照射するに際しては、被照射体に対してX線を照射するにあたり設定された旋回角度、走行角度において、格納されたジンバル機構及び位置合わせ機構の調整量との関係に基いて治療用X線発生源2の取付け位置、角度が調整される。そして、被照射体に対してX線が照射される。
【0081】
既述のように、治療用X線発生源2から出射されたX線は、マルチリーフコリメータにより照射野を調整されて被照射体に照射される。ここで、X線の照射軸と、マルチリーフコリメータとの相対的な位置関係が、所望の関係からはずれた関係であった場合には、X線の照射野が適正に調整されず、実際の治療計画どおりに照射を行うことが難しくなる。本実施の形態に依れば、位置合わせ機構によって、治療用X線発生源2の取り付け位置を調整することで、X線の照射軸とマルチリーフコリメータとの相対的な配置を調整することができる。X線強度分布の回転対称性を評価し、この評価結果に基いてジンバル機構、位置合わせ機構を調整しているので、X線の照射軸とマルチリーフコリメータとの配置を所望の関係とすることができる。そして、各旋回角度、各走行角度毎に求められた位置合わせ機構の調整量を格納しておくことにより、任意の旋回角度、走行角度(実際に被照射体にX線を照射する時の旋回角度、走行角度)においても、格納された調整量に基いて、治療用X線発生源の取り付け位置、取り付け角度を調整することができる。よって、X線の照射軸とマルチリーフコリメータとの配置を所望の関係とした状態で、被照射体に対するX線の照射を行うことができる。
【0082】
(実施の形態4)放射線治療装置
本発明の実施の形態4に係わる放射線治療装置の概略構成を図12に示す。本実施の形態に係わる放射線治療装置の基本的な構成は、実施の形態1乃至3と同様である。但し、本実施の形態に係わる放射線治療装置は、治療用X線発生源2のX線出射端部にCCDカメラ160を備えている。CCDカメラ160は、治療用X線発生源2のX線出射端部に対して、CCDカメラ160の視野中心と、治療用X線発生源2のX線照射軸とが一致するように取り付けられる。本実施の形態においては、アイソセンタ同定の際に、検出器6で検出されるX線金属球像を使用せずに、CCDカメラで取得される金属球の可視画像を用いる。
【0083】
本実施の形態では、CCDカメラ160により取得される金属球の可視画像を使用するために、X線検出器6により検出される金属球像に較べて、より高精度に金属球の位置を知ることが出来る。そして、X線を用いたアイソセンタ同定よりも精度の高いアイソセンタ位置が設定可能となる。これにより、本実施の形態においては、実施の形態1および2よりも更に精度良く、所望のX線照射方向にX線照射軸を指向させることが出来る。そして、任意の照射角度において、治療計画に沿った定位治療を確実に遂行することができる。
【0084】
また、本実施の形態は、マーカ部材に対して照明光を照射する手段を更に具備することも有効である。本構成要件追加に伴い、金属球からの反射光強度を所定値以上に確保することが可能になるため、検出精度を向上させうる。さらに図13に示すように、治療用X線発生源2のX線出射端部に備えられるCCDカメラ160に加えて、さらにLED等の単色照明装置300を備えても良い。このとき、CCDカメラ160には、特に単色照明装置300から出射される単色の光のみを透過するバンドパスフィルタ180が、レンズ170を介して装着される。CCDカメラ160により、金属球が反射する単色光のみにより構成される金属球画像を取得して、金属球と背景画像とをより明瞭に識別することが出来る。これにより、従来問題となっていた、カメラ視野における背景からのアイソセンタ200の分離が困難性(図14参照)を解決し、アイソセンタ200に対する金属球150の位置合わせ精度をさらに向上させることができる。また、本実施の形態においては、マーカ部材の材質としては、ナイロン球などでも構わない。これは、本実施形態では、マーカ形状映像を元にした評価を行うためであり、X線使用時のように非透過性の差異に基づく評価を行うものではない上に、加工が容易であること、マーカ内部からの多重散乱光検出になることから反射角度依存性が相対的に緩和されることなどの面で有利なためである。CCDカメラに具備させるレンズ系では、視野に対して当該球が1/3〜1/4に相当するように調整することが望ましい。これは検出精度が高くなること及び当該球の位置調整に伴いCCDが視野から外れることが回避可能であるためである。よって、最初の当該球の位置概略設定の際はレンズ強度を低くして視野を広くした上で、複数旋回角度での調整時には前記視野範囲を満足しえるようにレンズ強度を調整することが望ましい。更に、当該マーカ部材表面に反射係数の高い塗料を塗布することも有効である。本対応によりマーカ識別をより精度高く行うことができる。この際当該マーカの支持部材は反射率の低い塗料を塗布することが更に本目的のためには望ましい。更に、CCDカメラでの撮影画像に対して、マーカからの反射光を二値化処理を施すことも有効である、本対応によりマーカ形状の認識をより正確に行い得ることとなり、更に精度高い位置あわせを行い得ることとなる。
【0085】
(実施の形態4の動作原理)
本実施の形態の基本的な動作原理は、実施の形態1乃至3のそれぞれと同様である。但し、本実施の形態においては、アイソセンタ同定の前後において、治療用X線発生源2のX線出射端部に対して、CCDカメラ160の視野中心と治療用X線発生源2のX線照射軸とが一致するように、CCDカメラ160を取り付ける、あるいは取り外すステップが追加される。また、アイソセンタ同定の設定精度によっては、ガントリに対して、LED等の単色照明装置300を取り付けるステップがさらに追加されるが、単色照明装置300は、アイソセンタ同定中のみガントリに対して取り付けられても良いし、常時取り付けられても良い。検出器の位置分解能は、一般にX線検出器よりも可視カメラの方が高い。このため、本実施に基づき、より高精度でのアイソセンタ同定を行い得ることとなる。
また、可視カメラでの撮像映像に対して二値化処理を施すことで、マーカからの反射光の反射角度依存性の影響を低減させることが可能になる。この結果、例えば球状のマーカを使用した場合には、当該撮像映像をより真円にちかい画像として評価可能になるため、更に高精度でのアイソセンタ同定を行い得ることとなる。
【0086】
本実施の形態により、実施の形態1乃至3の作用効果に加えて、さらに精度の良いアイソセンタ同定を行うことができ、これにより、治療計画に基づくX線照射方向に、治療用X線発生源2のX線照射軸を極めて精度良く指向させることが出来る。
【0087】
(実施の形態5)放射線治療装置
本発明の実施の形態5に係わる放射線治療システムの概略構成を図15に示す。本実施の形態に係わる定位放射線治療装置100では、制御装置400が、実施の形態1乃至4までの動作に加えて、予め決められた治療計画に従って、アイソセンタに位置された患部に対して適正量のX線を照射し、且つ、患部周辺健全組織へのX線照射量の低減を図るため、当該患部位置のみに精度良くX線を照射するように放射線治療装置のX線照射軸の制御するように動作する。
【0088】
本実施の形態における制御用装置400は、それぞれバスライン400aに接続されたCPU400dと、記憶部400eと、指示を入力するための入力部400cと、通信部400bとを備えている。記憶部400eには、放射線治療装置におけるアイソセンタの同定、およびアイソセンタの同定により設定されたアイソセンタ想定位置に基づいて、カウチの位置と治療用X線発生源の照射軸とをアイソセンタ想定位置に移動させるための調整量の算出、および予め設定される治療計画に基づく照射線量を制御するための放射線治療装置制御用プログラムが予め格納されている。また、記憶部400eには、設定されたアイソセンタ想定位置に基づいて算出された、カウチの位置と治療用X線発生源の照射軸とをそれぞれアイソセンタ想定位置に移動させるための調整量が、治療用X線発生源の走行角度および旋回角度の関数として一覧化された制御用テーブル400gが格納される。
【0089】
(実施の形態5の動作原理)
本実施の形態に係わる放射線治療装置100の動作原理を図15に基づいて説明する。本実施の形態に係わる放射線治療装置100が起動すると、実施の形態1から3までに記載のいずれか1つの形態と同様に、制御用装置400のCPU400dが、記憶部400eに予め格納されている放射線治療装置制御用プログラム400fを読み込んで実行する。記憶部400eには、設定されたアイソセンタ想定位置に基づいて算出された、カウチの位置と治療用X線発生源の照射軸とをそれぞれ当該アイソセンタ想定位置に移動させるための調整量が、治療用X線発生源の走行角度および旋回角度の関数として一覧化された制御用テーブル400gとして格納されており、実際に測定されなかった治療用X線発生源の走行角度および旋回角度における調整量は、実際に取得された走行角度および旋回角度における調整量を補間することにより作成される。この結果、任意角度条件において、当該調整量に基づき、前記諸量は調整されることとなる。なお、ガントリの経時的変形等に対する補償を行うため、当該制御用テーブルは一定期間経過毎に更新することが望ましい。
【0090】
本実施の形態においては、放射線治療装置に備えられた検出器6から送られてくるX線性状情報を有する信号が、制御装置400の外部、あるいは制御装置400の内部機能として一体となった画像比較装置700に送られる。画像比較装置700は、予め決められている治療計画により決められている患部の照射領域とX線性状情報とに基づいて、治療用X線発生源2の出射部に備えられるマルチリーフコリメータ8の開口部形状の設定をするためのマルチリーフコリメータに備わるそれぞれのリーフの配置位置を算出する。画像比較装置700により行われた算出結果は、通信部400bを介して記憶部400eに格納される。そして、CPU400dは、入力部cからの指示、あるいは予め入力されていた治療計画に基づいて、カウチの位置およびジンバル構造3を制御して、患部中心およびX線照射軸を、それぞれ設定されたアイソセンタ想定位置に移動させる。この際、CPU400dは、治療計画に基づく照射角度にX線の照射軸を指向させるために、制御用テーブル400gを参照して、カウチの走行角度駆動部および旋回角度駆動部それぞれに対して走行角度/旋回角度設定信号を送信する。また、支持台12に対して治療用X線発生源2を支持しているジンバル構造3に対して、X線発生部設置角度制御信号およびX線発生部設置位置制御信号を送信する。
【0091】
本実施の形態においては、制御用テーブル400gを参照することにより、治療計画に基づくX線照射方向に、治療用X線発生源2のX線照射軸を精度良く短時間で指向させることが出来る。そして、任意の照射角度においても、治療計画に沿った定位治療を確実に遂行することができる。
【0092】
ここで、本実施の形態における制御用テーブル400gは、一定期間以上経過毎に更新され、ガントリ1や、支持台12を含めたシステム構造の経年変化に左右されることはない。
【0093】
(実施の形態6)放射線治療装置
本発明の実施の形態6に係わる放射線治療装置の概略構成を図16に示す。本実施の形態に係わる放射線治療装置の基本的な構成は、実施の形態5のそれと同様である。但し、本実施の形態においては、治療用X線発生源2を任意のガントリ走行角度および旋回角度に位置させた際に生じる検出器のガントリに対する取り付け角度変位量を考慮して、金属球のX線画像に対して画像処理を行う。
【0094】
このため、本実施の形態は、実施の形態4で取得された制御用テーブル400gに示される補正量に基づいてX線の照射軸をアイソセンタに指向してX線を照射し、それぞれの姿勢において検出された金属球150のX線像の円からの歪み量に基づいて、検出器6のガントリに対する取り付け角度変位量を算出し、この算出結果に基づいて、金属球のX線画像を補正するための画像処理を実行する放射線治療装置制御用プログラムを、予め記憶部400eに備えている。最終的に得られた、それぞれのガントリ走行角度およびガントリ旋回角度の関数としての補正量は、テーブル化して記憶部400eに格納しても良い。
【0095】
本実施の形態においては、検出器6のガントリに対する取り付け角度変位量を考慮して、金属球のX線画像を補正するための画像処理を実行することで、患部に対する放射線照射前後における採取データを適正に処理し得る事になり、結果として放射線治療における照射位置精度が向上する。
【0096】
なお、本実施の形態では、ガントリ1と検出器6との間に、検出器6のガントリ1に対する取り付け角度を補正する補正装置を備えることにより、検出器のガントリに対する取り付け角度変位を補正しても良い。
【0097】
(実施の形態6の動作原理)
本実施の形態に係わる放射線治療装置の基本的な動作原理は、実施の形態5に示したそれと同様である。但し、本実施の形態においては、実施の形態4に記載されるアイソセンタの同定終了後に記憶部400eに制御用テーブル400gを格納するステップに加えて、以下のステップを備えている。
【0098】
図18は、本実施の形態に関わる動作フローを示す。なお、制御用テーブル400gを格納するステップまでは、実施の形態5と同様であるので、その説明を省略する。まず、制御用テーブル400gに示されているX線中心軸調整条件(X線発生部設置角度等)に基づいて、それぞれの走行角度(θ)毎にX線照射軸を調整してX線を出射する(ステップS400)。ステップS400により取得される金属球画像に基づいて、当該金属球画像の長軸径(ΔX1)及び短軸径(ΔY1)とを求める。そして、求められた当該金属球画像の長軸径(ΔX1)及び短軸径(ΔY1)により、X線中心軸と検出器の検出面との取付角度変化量ψを、ψ=Cos−1(ΔY1/ΔX1)として算出する(ステップS500、図16参照)。そして、それぞれの走行角度(θ)における当該取付角度変化量の相関をテーブル化して記憶部に格納する(ステップS600)。
【0099】
そして、被照射体の画像を撮像した際には、予めステップS600で作成されたテーブルに示されている取付角度変化量に基づいて、撮像したX線画像を補正するための画像処理を実行する(ステップS700)。
【0100】
本実施の形態に係わる放射線治療装置においては、検出器6により、MLC開口形状確認という装置側校正を行うことに加え、治療中の患部透視画像計測等治療行為におけるデータ採取を行う。このため、各評価内容は、X線中心軸と検出器の検出面との取付角変位の影響を受ける。本実施の形態においては、本来のシステム構成をそのまま用いるという簡易な手法にて、走行角度とX線検出器取付角度の相関を把握して、本値に基づきX線検出器により評価を行った画像に補正を掛ける(画像処理を施す)ことで、当該影響の補正をおこなうことができる。これにより、治療行為前後における採取データを適正に処理し得る事になり、結果として治療行為の精度向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置の断面を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置の治療用X線発生源とマルチリーフコリメータとの概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる放射線治療装置において、治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする模式を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置において、治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする模式を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置において、治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする模式を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置において、治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする模式を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係わる放射線治療装置において、治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする動作フロー(放射線治療装置制御方法)を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係わる放射線治療装置の治療用X線発生源が任意の走行角度で配置されたときの、ガントリの変形を示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係わる放射線治療装置において、治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする動作フロー(放射線治療装置制御方法)を示す図である。
【図11A】本発明の実施の形態2に係わる放射線治療装置の治療用X線発生源が走行角度θで配置されたときの、検出器上におけるアイソセンタとX線中心軸とのズレ量を示す図である。
【図11B】図11Aにおいて、さらに検出器の検出面がψ変化したときの、検出器上におけるアイソセンタとX線中心軸とのズレ量を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係わる放射線治療装置の概略構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係わる放射線治療装置において、さらに単色照明系の光源を用いて治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする模式を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係わる放射線治療装置において、単色照明系の光源を用いずに治療用X線の照射軸をアイソセンタに位置合わせする際の課題を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係わる放射線治療システムの概略構成を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6に係わる放射線治療システムにおいて、治療用X線の照射軸をアイソセンタ想定位置に移動する模式を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態3の動作フローである。
【図18】本発明の実施の形態6の動作フローである。
【符号の説明】
【0102】
1…回転ガントリー
2…治療用X線発生源
2a…電子ビーム加速装置
2b…電子ビーム
2c…X線ターゲット
2d…X線軸
3…ジンバル構造
4…検出器
5…診断用X線発生源
6…(X線)検出器
7…カウチ
8…マルチリーフコリメータ(MLC)
9…X線
10…利用線錐
12…支持台
14…コリメータ
50…X線照射野
60…金属球位置から求めた円
100…放射線治療装置
150…金属球
160、190…CCDカメラ
170…レンズ
180…フィルタ
200…アイソセンタ
300…単色照明装置
400…制御装置
400a…バスライン
400b…通信部
400c…入力部
400d…CPU
400e…記憶部
400f…放射線治療装置制御用プログラム
400g…制御用テーブル
500…レーザ装置
500a…レーザ光
600…ミラー
700…画像比較装置
1000…放射線治療システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソセンタを通る第1の軸の周りに回動自在であり、前記アイソセンタで前記第1の軸に交差する第2の軸の周りにも回動自在なガントリと、
前記ガントリに配設される撮像装置と、
制御装置と、
を具備し、
前記制御装置は、前記ガントリの前記第1の軸の周りの角度として定義する旋回角度の複数の位置から、前記撮像装置によりマーカ部材の画像を撮像し、
前記制御装置は、前記画像それぞれにおける視野位置に基づいて、前記アイソセンタ同定位置を同定する
放射線治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載された放射線治療装置であって、
前記第1の軸は、鉛直方向に平行である
放射線治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載された放射線治療装置であって、
前記制御装置は、概ねアイソセンタの位置に配置された前記マーカ部材の画像を撮像するに際して、前記撮像装置を前記第1の軸と前記ガントリが交差する位置に配置させた状態で前記の画像を撮像する
放射線治療装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
更に、
前記ガントリに配設される放射線発生装置と、
アイソセンタを介して前記放射線発生装置と対向する位置の前記ガントリ上に配置され、前記放射線発生装置から出射されたX線の強度分布を検出する検出器と、
前記放射線発生装置の前記ガントリに対する取付け角度を調整する為のジンバル機構と、
を具備し、
前記制御装置は、
アイソセンタ同定位置に前記マーカ部材を移動させ、
前記ガントリの前記第2の軸周りの複数の走行角度のそれぞれの位置から、前記撮像装置によって前記画像を撮像し、
前記各走行角度毎に、撮像した前記マーカ部材の位置に基いて、前記放射線発生装置から出射されるX線の照射軸を前記マーカ部材の位置に合わせるために必要な、前記ジンバル機構の調整量を求める
放射線治療装置。
【請求項5】
請求項4に記載された放射線治療装置であって、
前記撮像装置は、前記検出器と同一である
放射線治療装置。
【請求項6】
請求項5に記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材は、金属球である
放射線治療装置。
【請求項7】
請求項4に記載された放射線治療装置であって、
前記撮像装置は、前記放射線発生装置のX線出射端部に取り付けられたCCDカメラである
放射線治療装置。
【請求項8】
請求項7に記載された放射線治療装置であって、
前記CCDカメラは、単色光のフィルタを備え、
前記アイソセンタの同定の際に、前記マーカ部材に対して前記単色光を透過することのできる波長の単色光が照射される
放射線治療装置。
【請求項9】
請求項8に記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材はナイロン球である
放射線治療装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材は、外表面でマーカ支持部材によって支持されている
【請求項11】
請求項10に記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材と前記マーカ支持部材は、光反射率が異なっている
放射線治療装置。
【請求項12】
請求項11に記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材は、前記マーカ支持部材よりも光反射率が高い
放射線治療装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
前記制御装置は、撮像した前記マーカ部材の画像に対して、二値化処理を施す
放射線治療装置。
【請求項14】
請求項7乃至13のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材は、前記CCDカメラの検出限界より大きく、且つ、前記CCDカメラの視野範囲よりも小さい大きさである
放射線治療装置。
【請求項15】
請求項14に記載された放射線治療装置であって、
前記マーカ部材は、前記CCDカメラの視野に対して1/3〜1/4の大きさである
放射線治療装置。
【請求項16】
請求項4乃至15のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
前記制御装置は、前記各走行角度毎に求められた前記ジンバル機構の調整量を、旋回角度及び走行角度と対応付けて格納する
放射線治療装置。
【請求項17】
請求項16に記載された放射線治療装置であって、
被照射体にX線を照射するにあたり、
前記制御装置は、
格納された前記ジンバル機構の調整量と旋回角度及び走行角度との関係に基いて、設定された旋回角度の走行角度において前記放射線発生装置の取付け角度を前記ジンバル機構により調整し、
取り付け角度を調整した後に、前記放射線発生装置から前記被照射体に対してX線を照射する
放射線治療装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載された放射線治療装置であって、
更に、
前記放射線発生装置から出射されたX線の一部をカットし照射野を調整するマルチリーフコリメータと、
前記放射線発生装置の前記ガントリに対する取付け位置を調整する為の位置合わせ機構と、
を具備し、
前記制御装置は、
前記各旋回角度の各走行角度毎に前記検出器によりX線強度分布の回転対称性を評価し、
回転対称性の評価結果に基いて、前記マルチリーフコリメータと前記放射線発生装置との相対配置を所望の関係とするのに必要な、前記位置合わせ機構の調整量を求め、
求めた前記位置合わせ機構の調整量と、旋回角度及び走行角度との対応関係を格納する
放射線治療装置。
【請求項19】
請求項18に記載された放射線治療装置であって、
被照射体にX線を照射するにあたり、
前記制御装置は、
格納されたた前記位置合わせ機構の調整量と旋回角度及び走行角度との対応関係に基いて、設定された角度においてX線照射軸と前記マルチリーフコリメータとの相対配置が所望の関係となるように、前記放射線発生装置の取付け位置を調整し、
取り付け位置を調整した後に、前記放射線発生装置から被照射体に対してX線を照射する
放射線治療装置。
【請求項20】
請求項16乃至19のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
前記制御装置は、更に、
前記旋回角度毎の走行角度毎に求められた前記ジンバル機構の調整量に基いて、各旋回角度の各走行角度毎に前記放射線発生装置の取付け角度を調整し、
取り付け角度の調整された状態でX線を出射させて、前記マーカ部材のX線画像を前記検出器により撮像させ、
撮像された前記マーカ部材のX線画像の歪みの大きさに基いて、前記検出器の前記ガントリに対する取付け角度変位量を求め、
前記検出器の前記ガントリに対する取付け角度変位量と、旋回角度及び走行角度との相関関係を、格納する
放射線治療装置。
【請求項21】
請求項20に記載された放射線治療装置であって、
前記制御装置は、更に、
設定された旋回角度の走行角度において、前記放射線発生装置からX線を出射させて被照射体のX線画像を前記検出器により検出させ、
格納された前記検出器の前記ガントリに対する取付け角度変位量と、旋回角度及び走行角度との相関関係に基いて、検出された前記被照射体のX線画像を補正する
放射線治療装置。
【請求項22】
請求項4乃至21のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
前記走行角度は、前記ガントリの前記第1の軸周りの角度として規定される複数の旋回角度の夫々の位置に対して設定される
放射線治療装置。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
前記制御装置は、アイソセンタを同定する前に、
前記放射線発生装置を、前記ガントリと前記第1の軸とが交差する位置に配置し、
複数の旋回角度のそれぞれの位置において、前記放射線発生装置からX線を出射させて前記検出器によりX線の強度分布を検出し、
X線強度分布の検出結果に基いて、X線照射軸が何れの旋回角度でも一致するように、前記ガントリに対する前記放射線発生装置の取り付け角度を調整する
放射線治療装置。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載された放射線治療装置であって、
更に、
アイソセンタの高さ位置から水平方向に光線を出射する水平方向軸調整光源
を具備し、
前記制御装置は、アイソセンタを同定する前に、
前記水平方向軸調整光源より出射された光線を指標として、前記マーカ部材の高さ方向の位置を調整する
放射線治療装置。
【請求項25】
アイソセンタを通る第1の軸の周りに回動自在であり、前記アイソセンタで前記第1の軸に交差する第2の軸の周りにも回動自在なガントリと、前記ガントリに配設される撮像装置と、を具備する放射線治療装置の制御方法であって、
アイソセンタ想定位置を指示するマーカ部材を、概ねアイソセンタに想定される位置に配置するステップと、
前記ガントリの前記第1の軸周りの角度として定義する旋回角度の複数の位置から、概ねアイソセンタの位置に配置された前記マーカ部材を撮像し、撮像された前記マーカ部材の前記画像それぞれにおける視野位置に基づいて、前記アイソセンタの位置を同定するアイソセンタ同定ステップと、
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項26】
請求項25に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
前記第1の軸は、鉛直方向に平行である
放射線治療装置の制御方法。
【請求項27】
請求項26に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
前記アイソセンタ同定ステップにおいて、前記マーカ部材の画像を撮像するに際し、前記放射線発生装置は、前記第1の軸と前記ガントリとが交差する位置から前記マーカ部材の画像を撮像する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項28】
請求項25乃至27のいずれかに記載された放射線治療装置の制御方法であって、前記放射線治療装置は、更に、前記ガントリに配設される放射線発生装置と、アイソセンタを介して前記放射線発生装置と対向する位置の前記ガントリ上に配置され、前記放射線発生装置から出射されたX線の強度分布を検出する検出器と、前記放射線発生装置の前記ガントリに対する取付け角度を調整する為のジンバル機構と、を具備し、
更に、
前記アイソセンタ同定ステップにおいて同定された位置に、前記マーカ部材を配置するステップと、
前記ガントリの前記第2の軸周りの角度として定義される複数の走行角度のそれぞれの位置から、前記マーカ部材の画像を撮像するステップと、
前記各走行角度毎に、撮像した前記マーカ部材の位置に基いて、前記X線の照射軸を前記マーカ部材の位置に合わせるために必要な、前記ガントリに対する前記放射線発生装置の取付け角度の調整量を求める調整量決定ステップと、
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項29】
請求項28に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
前記撮像装置は、前記検出器であり、
前記複数の走行角度のそれぞれの位置から、前記マーカ部材の画像を撮像するステップにおいて、前記マーカ部材の画像は、前記放射線発生装置からX線を出射して、このX線の強度分布を前記検出器で検出することにより行われる
放射線治療装置の制御方法。
【請求項30】
請求項28に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
前記撮像装置は、前記放射線発生装置から出射されるX線の照射軸に対して視野中心が一致するように、前記放射線発生装置のX線出射端部に取り付けられたCCDカメラである
放射線治療装置の制御方法。
【請求項31】
請求項28乃至30のいずれかに記載された放射線照射装置の制御方法であって、
更に、
前記走行角度毎に求められた取付け角度の調整量を、走行角度と対応付けて格納するステップ
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項32】
請求項31に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
格納された取り付け角度の調整量と走行角度との関係に基いて、設定された走行角度において前記放射線発生装置の取付け角度を調整するステップと、
取り付け角度を調整した後に、前記放射線発生装置から被照射対象に対してX線を照射させるステップと、
を具備する
放射線装置の制御方法。
【請求項33】
請求項31又は32に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
前記放射線治療装置は、更に、前記放射線発生装置から出射されたX線の一部をカットし照射野を調整するマルチリーフコリメータ、を備え、
更に、
前記各走行角度毎に、前記放射線発生装置から出射されたX線強度分布の回転対称性を評価するステップと、
回転対称性の評価結果に基いて、前記マルチリーフコリメータとX線照射軸との相対配置を所望の関係とするのに必要な、前記放射線発生装置の前記ガントリに対する取付け位置の調整量を求めるステップと、
前記取付け位置の調整量と走行角度との対応関係を格納するステップと、
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項34】
請求項33に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
格納された取り付け位置の調整量と走行角度との対応関係に基いて、設定された角度においてX線照射軸と前記マルチリーフコリメータとが所望の関係となるように、前記放射線発生装置の取り付け位置を調整するステップと、
取り付け位置を調整した後に、前記放射線発生装置から、被照射対象に対してX線を照射するステップと、
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項35】
請求項31乃至34のいずれかに記載された放射線治療装置の制御方法であって、
更に、
前記各走行角度毎に求められた前記調整量に基いて、各走行角度毎に前記放射線発生装置の取付け角度を調整し、取り付け角度を調整した状態でX線を出射して、前記マーカ部材のX線画像を前記検出器により撮像するステップと、
撮像された前記マーカ部材のX線画像の歪みの大きさに基いて、前記検出器の前記ガントリに対する取付け角度変位量を求めるステップと、
前記検出器の前記ガントリに対する取付け角度変位量と走行角度との相関関係を、格納するステップと、
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項36】
請求項35に記載された放射線治療装置の制御方法であって、
更に、
設定された走行角度において、被照射体のX線画像を撮像するステップと、
格納された前記検出器の前記ガントリに対する取付け角度変位量と走行角度との相関関係に基いて、撮像された前記被照射体のX線画像を補正するステップと、
を具備する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項37】
請求項28乃至36のいずれかに記載された放射線治療装置の制御方法であって、
前記走行角度は、前記ガントリの前記第1の軸周りの角度として定義される複数の旋回角度の夫々の位置に対して設定される
放射線治療装置の制御方法。
【請求項38】
請求項25乃至37のいずれかに記載された放射線治療装置の制御方法であって、
更に、
前記アイソセンタ同定ステップの前に実行される事前軸合わせステップ
を具備し、
前記事前軸合わせステップは、
前記放射線発生装置を、前記ガントリと前記第1の軸とが交差する位置に配置するステップと、
複数の旋回角度のそれぞれの位置から、前記放射線発生装置により出射されたX線の強度分布を検出するステップと、
X線強度分布の検出結果に基いて、X線照射軸がいずれの旋回角度でも一致するように、前記ガントリに対する前記放射線発生装置の取付け角度を調整するステップと、
を有する
放射線治療装置の制御方法。
【請求項39】
請求項25乃至38のいずれかに記載された放射線治療装置の制御方法であって、
更に、
前記アイソセンタ同定ステップの前に実行され、アイソセンタの高さ位置から出射される光線を指標として、前記マーカ部材の高さ方向の位置を調整するアイソセンタ高さ位置設定ステップ
を具備する
放射線治療装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−267972(P2007−267972A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97620(P2006−97620)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】