説明

放射線測定システム

【課題】測定値の変動が激しい場合においても適切な周期で監視することを可能にし、かつ、電池の消耗を抑制することが可能な放射線測定システムを提供する。
【解決手段】放射線量を測定する電池駆動の放射線測定器100と測定された放射線量の測定値を管理する放射線管理装置101とから構成された放射線測定システムであって、放射線測定器100によって測定された放射線量の測定値が所定の範囲以内の場合には、放射線測定器100の電源ON指令の周期を長くし、測定値が所定の範囲を超える場合には、放射線測定器100の電源ON指令の周期を短くするように電源ON/OFF識別制御装置9に指令を発信するプロセッサ6(あるいは、プロセッサ21)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放射線測定システムに関し、特に、原子力プラント等の周辺の放射線量の測定を行うための放射線測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子力発電所などの放射線取扱施設では、公衆の放射線防護のために、施設周辺にて環境放射線のモニタリング(監視)が行われる。このようなモニタリングのために、施設周辺に環境放射線モニタという放射線測定システムが設置されることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来は、放射線測定器の消費電力が比較的大きいために、電池駆動による測定器が少なかった。従って、物理量を遠隔測定する場合、電源ケーブルの敷設により必要電源を確保していた。
【0004】
近来、電子回路が進歩し、小型、軽量、低消費電力化が実現され、種々の分野の測定器において、小型で電池駆動の携帯用のものが多くでまわってきた。また、携帯用の測定器でも従来と変わらない性能、特性及び機能を持たすことが不可能ではなくなってきたことから、携帯用の測定器で恒設の高性能な計測システムを構築することが可能な状況となってきた。
【0005】
更に、PHSデータ通信などの受発信機も容易に廉価で入手でき、測定器にPHS発信機をつけ、電話ジャックに計算機をつなげば遠隔監視が容易に実現できるようになった。この技術環境では携帯の測定器を現地又は現場へ気軽に設置し、配線工事、設置工事を必要としない廉価の仮設監視設備を構築することができるようになった。
【0006】
しかしながら、電池については、大容量のリチウムイオン電池等が現れたものの、電池の寿命はいずれの製品でも余り長くなく、未だ測定器を長期間運転するだけの容量が確保できないことから、保守の費用は無視できる程度のものではない。また、人が接近することが難しい環境(高放射線下、有毒ガス下、暗闇下等)などでは、電池の交換作業はできるだけ回数を減らすことが望ましい。
【0007】
【特許文献1】特許第3153484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、従来の測定器においては、測定器の消費電力が比較的多いことから、電池駆動の測定器に移行することが難しいという問題点があった。また、電池駆動の測定器においても、電池の寿命はいずれの製品でも余り長くなく、未だ測定器を長期間運転するだけの容量が確保できないという問題点があった。
【0009】
そのため、電池交換のための保守費用がかかるとともに、人が接近することが難しい環境(高放射線下、有毒ガス下、暗闇下等)などでは、電池の交換作業が大変であるという問題点があった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、測定値の変動が激しい場合においても適切な周期で監視することを可能にし、かつ、電池の消耗を抑制することが可能な放射線測定システムを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、放射線量を測定する電池駆動の放射線測定器と測定された放射線量の測定値を管理する放射線管理装置とから構成された放射線測定システムであって、前記放射線測定器によって測定された放射線量の測定値が所定の範囲以内の場合には、前記放射線測定器の電源ON指令の周期を長くし、前記測定値が前記所定の範囲を超える場合には、前記放射線測定器の電源ON指令の周期を短くする制御手段を備えた放射線測定システムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、放射線量を測定する電池駆動の放射線測定器と測定された放射線量の測定値を管理する放射線管理装置とから構成された放射線測定システムであって、前記放射線測定器によって測定された放射線量の測定値が所定の範囲以内の場合には、前記放射線測定器の電源ON指令の周期を長くし、前記測定値が前記所定の範囲を超える場合には、前記放射線測定器の電源ON指令の周期を短くする制御手段を備えた放射線測定システムであるので、測定の変動に合わせて放射線量を測定する周期を長くしたり短くしたりするように制御するため、測定値の変動が激しい場合においても適切な周期で監視し、かつ、電池の消耗を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
この発明の放射線測定システムは、例えば、原子力プラント、放射性同位元素の製造分野、放射線または放射能を用いた医療、研究機関、核燃料の再処理プラント、放射線利用の工業分野、気象観測、公害監視、化学プラント、土木管理、農業分野といった、幅広い分野において、放射線を測定する際に適用できるシステムである。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態1に係る放射線測定システムの全体の構成を示した構成図である。図1に示すように、本実施の形態は、電池1で駆動されて放射線量の測定を行う放射線測定器100と、放射線測定器100で測定した放射線量の測定値を管理する放射線管理装置101とから構成されている。
【0015】
本実施の形態においては、図1に示すように、放射線測定器100内に、放射線測定器100を駆動させるための電池1と、放射線を測定するための検出器2と、検出器2の駆動用の高圧電源3と、検出器2からの出力信号を増幅する増幅器4と、増幅された信号を処理して計数率に変換する計数率計5とが設けられている。さらに、当該計数率を工学値変換する演算機能と、工学値変換した値が所定の範囲に入っているかを確認する比較機能と、その結果で電源制御する機能と、計測値を発信する機能とを有するプロセッサ1(符号6)が設けられている。さらに、プロセッサ1で処理された計測値をRS−232Cなどのコードにコード変換するコード変換器1(符号7)が設けられている。また、コード変換器1から出力されるコード信号を無線のPHSあるいはテレメータ等で電波として発信する電波発信器1(符号8)と、プロセッサ1の電源制御信号を受けて、電池1の電源の分配制御するとともに、電波受信機1(符号10)がデータ採取指令を受けた場合にその指令を解読する電源ON/OFF識別制御器9とが設けられている。
【0016】
放射線管理装置101内には、放射線測定器100の発信した電波を受信する電波受信機2(符号20)と、プロセッサ2(符号21)と、電波受信機2により受信した受信信号をプロセッサ2(符号21)に取り込むためのコード変換器22とが設けられている。プロセッサ2は、放射線の計測値を演算し、日報、月報、四半期報、年報及びデータをグラフ化し、監視及び管理性を向上させるデータ処理機能及び測定値を監視し放射線測定器100の電源を制御するための制御信号を作る。図1の例においては、コード変換器22とプロセッサ2(符号21)とが、一体化された構成となっているが、この場合に限らず、別体で構成するようにしてもよい。放射線管理装置101内には、さらに、電波発信機2(符号24)、コード変換器22、プロセッサ2(符号21)及び電波受信機2(符号20)を駆動させるための電源23と、プロセッサ2から出力された信号を放射線測定器100に対して送信する電波発信機2(符号24)とが設けられている。
【0017】
図1の構成は、放射線測定器100のプロセッサ1(符号6)で放射線レベルを連続監視して、測定値を放射線管理装置101に転送するコード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)の電源のON/OFFを制御する方式と、放射線管理装置101で測定値を監視し、放射線測定器100の電波受信機1(符号10)および電源ON/OFF識別制御器9以外の構成要素2〜8の電源をON/OFFする方式の2つのシステムを同時に実現することができる。なお、いずれの方式を行うかについては、ユーザが適宜変更するようにしてもよく、あるいは、所定の条件を予め定義しておき、当該条件を満たした場合に、方式を自動的に切り替えるように設定しておいてもよい。あるいは、以下で説明するように、メインの監視をプロセッサ1で行い、サブの監視をプロセッサ2で行うようにしてもよい。
【0018】
放射線測定器100の検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)及び電源ON/OFF識別制御器9は電源をON状態とし、常に、検出器2により検出される放射線の測定値を監視している。放射線測定器100は、当該測定値を所定の周期で放射線管理装置101に転送する。
【0019】
ここで、その測定値が、予め設定されている、取り得る範囲以内(例えば、計測値が前日の測定値の中心値から偏差が±4σ以内、あるいは、予め設定された指示値の中心値から偏差が±4σ以内、以下まとめて±4σ以内と呼ぶ)か否かをプロセッサ1(符号6)は判定し、取り得る範囲内であれば、プロセッサ1(符号6)は、測定値を頻繁にはデータ採取の放射線管理装置101へ転送せず、プロセッサ1(符号6)に内臓されている時計にて時間の管理をして適切な長周期(例えば1時間毎)でデータを転送する。コード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)は、この適切な長周期の中で、測定値の転送に必要な時間(例えば、30秒以内)のみ電源をONとし、測定値を転送する。プロセッサ1(符号6)は、この電源ON/OFF指令を作り、電源ON/OFF識別制御器9へ与え、それにより、コード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)の電源をON/OFFする。このように、本実施の形態においては、データ転送しない期間は、データ転送に必要な機能を有するコード変換器1(符号7)及び比較的電力消費の多い電波発信機1(符号8)の電源をOFF状態とするため、電池の消耗を抑制することができる。即ち、このような状態の場合、コード変換器1(符号7)と電波発信機1(符号8)の電源は、1時間に30秒程度のみONにすることから、常時ONにしている場合に比べると、1/120(120分の1)に電池の消費を抑制できる。
【0020】
一方、放射線の測定値が通常取り得る範囲以上(例えば、±4σ以上)に変動した場合、明らかに測定対象の放射線強度に変化が生じていることから、転送の周期を短周期にするように、プロセッサ1(符号6)は、電源ON/OFF識別制御器9に対して、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONする信号を発信するとともに、測定値をコード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)から、高い頻度で、放射線管理装置101へ転送する指令を発信し、その変化を放射線管理装置101で細かく追跡、記録する。
【0021】
測定値の監視を放射線管理装置101側のプロセッサ2(符号21)でも行い、その測定値が取り得る範囲以内(例えば、±4σ以内)であれば、プロセッサ2(符号21)は、放射線測定器100側のプロセッサ1(符号6)の制御が長周期であることを確認する。万一、プロセッサ1の制御が短周期(すなわち、測定値の転送頻度が早い場合)の場合、即ち、何らかのトラブルでプロセッサ1が正常に動作していないと判断した場合には、電波発信機2(符号24)から、電波受信機1(符号10)を経由して、電源ON/OFF識別制御器9に対して、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をOFFする指令を発信する。プロセッサ2(符号21)は、次に自己の内部時計により、適切な周期(例えば1時間毎)で、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONとする指令を、電波発信機2(符号24)から、電波受信機1(符号10)を経由して、電源ON/OFF識別制御器9に対して発信するとともに、放射線の測定値を転送する指令を発信する。この場合は、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源を1時間に30秒程度ONとすることにより、1/120(120分の1)に抑制することができる。この場合、放射線測定器の電波受信機1(符号10)及び電源ON/OFF識別制御器9の電源は常にON状態として、プロセッサ2から電波発信機2(符号24)を経由した指令を受け取れる状態としておく。
【0022】
この状態において、測定値が通常取り得る値以上(例えば、±4σ以上)に変動した場合には、明らかに測定対象の放射線強度に変化が生じていることから、計測の周期を短くするように、プロセッサ2(符号21)から指令を発し、放射線測定器100の電源ON/OFF識別制御器9は全ての電源をONとして、高い頻度で放射線管理装置101へ測定値を転送し、その変化を細かく追跡する。また、放射線測定器100の周辺で放射線源が移動するなどの情報、他の機器の測定値変化の情報及び放射線測定器100の周辺で測定値に影響を与える作業内容等の情報等が予め解かっている場合など、測定値の変動が予測できる場合は、計測周期を短くするように、放射線管理装置101のプロセッサ2(符号21)に対して、ユーザにより測定周期を別途任意に設定できるようにしておくと、さらに、効率的で、利便性が向上する。
【0023】
放射線測定器100の周辺の放射線が急激に変動する場合、又は変動の殆どが予測できない場合には、常に、放射線を測定して指示値を頻繁に確認することとし、放射線レベルに変化がない場合は、連続監視を行うものの、測定値の送信頻度を少なくして電池の消耗を抑制する。この場合、指示値が大きく変化(±4σ以内)していないことを確認できたら、その測定値は放射線レベルに変化がないと判定できることから、電力消費の多い電波発信機1(符号8)は頻繁に作動させて測定値を放射線管理装置101に送信する必要はなく、1時間に1回程度の電波発信を行い、測定値を送信することで適切な監視ができる。
【0024】
即ち、電力消費の多い電波発信機1(符号8)は、1時間に1回、測定値の送信に必要な時間(30秒程度)のみ作動させればよいことから、電池1は、その都度ONとすることで、電池の消耗抑制ができる。指示値が大きく変化した場合は、放射線測定器100の周辺の放射線レベルが大きく変化していると考えられることから、電波発信機1(符号8)の電源を短い周期でON又は連続して電源をONとして、測定値を放射線管理装置101に送信し、周辺の放射線レベルの変動をきめ細かくデータ収集して、忠実度の高いデータの管理を実現する。
【0025】
放射線測定器100の周辺の放射線の変動は急激に変化することなく、又作業内容等の情報から変動が予め予測できるような場合は、放射線測定器100の作動周期は長く(1時間に1回等)することができる。このような場合に、電池の消耗抑制を効果的に行うシステムは次の通りである。
【0026】
放射線測定器100の電波受信機1(符号10)および電源ON/OFF識別制御器9の電源を常にONとして作動状態としておき、放射線管理装置101から例えば、1時間に1回、放射線の測定を行う指令を電波発信機2(符号24)を通じて発信する。放射線測定器100はその指令を受けて検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONの状態とする。次に、放射線を測定する指令を発信すると放射線測定器100は測定を開始し、測定結果は電波発信機1(符号8)を経由して放射線管理装置101に転送される。
【0027】
この場合は測定値に変化がないことを確認するには有効な方法である。また、通常、放射線測定器100の機器のうち、常に作動する機器が少ないことから電池の消耗抑制にも特に効果がある。
【0028】
一方、放射線管理装置101で監視している測定値が大きく変化(±4σ以上)した場合、常に作動している電波受信機1(符号10)および電源ON/OFF識別制御器9から、検出器2の他の機器の電源をONとする。次に、電源が確立する少しの時間経過後に測定開始指令を発信し、測定結果は電波発信機1(符号8)を経由して、放射線管理装置101に送信される。次に、測定値が大きく変化した状態が継続すれば測定開始指令は頻繁(例えば1分毎)に発信し、指示変動を細かく追跡する。また、放射線測定器100の設置場所付近で線源を扱う作業等が発生するなど設置環境が変わることにより測定値が大きく変化する恐れのある情報がある場合は、ユーザにより、放射線管理装置101側から予め適切な測定周期を設定することできるような構成になっている。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、図1の構成においては、放射線測定器100のプロセッサ1(符号6)で放射線レベルを連続監視して、測定値を転送するコード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)の電源のON/OFFを制御する方式と、放射線管理装置101で測定値を監視し、放射線測定器100の電波受信機1(符号10)および電源ON/OFF識別制御器9以外の構成要素の電源をON/OFFする方式の2つのシステムを同時に実現することができる。この構成において、測定値が通常の変動範囲または所定の指示値以内であれば、放射線測定器100の電源ON指令の周期を長くし、通常の変動範囲又は所定の指示値を超える変化が確認された場合は、放射線測定器100の電源ON周期を短くするようにしたので、電源の消費を抑制することができる。これにより、電池の無用な消耗を無くすことができ、システム運転中に電池の取り替えの不要化、もしくは、取り替え頻度の減少化を実現した。二次電池の場合は、システム運転中の充電を殆ど必要としない、もしくは、充電回数の削減を実現した放射線測定システムとなる。同時に、放射線測定器の電源線の敷設を省くことができ、工事費用を無くすことができ、廉価なシステムを提供することができる。
【0030】
なお、上述の説明においては、通常の取り得る範囲が、測定中心値あるいは指示中心値からの偏差を±4σ程度とした例について説明した。ただし、この場合に限らず、±3σ、±5σでもよく、更に機器のドリフト、温度特性などを考慮した設定値としてもよい。また、所定の指示値は管理基準値などがあればそれを流用するなど特定の判定基準があれば限定されるものではない。指示中心値については前日、1週間、1ケ月間、1年間の測定平均値等、測定対象により妥当な値を選定すればよい。
【0031】
通常の変動値又は所定の指示値以上の測定値が観測された場合の測定周期(頻度)は短周期とする。一般に連続、10秒毎、1分毎などが設定されるが。測定値の時間変化の個性が予め把握されている場合は、その個性にあわせて測定周期を決定すればよい。通常の変動値又は所定の指示値以内の場合に対する長測定周期は一般に10分間、1時間程度とするのが一般的であるが測定対象の個性が把握されており更なる長周期としても測定上、障害がない場合は特に限定されるものではない。
【0032】
また、上述の説明においては、適用機器として放射線測定器としたが、放射線測定器以外の温度、湿度、気圧、雨量日射量、風向、風速、NOX、SOX、CL2ガス、圧力、流量、流速の測定器など物理量等を測定する電池駆動の計測器すべてを対象とする。
【0033】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係る放射線測定システムの構成を示した図である。図2において、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して示し、ここでは、その説明を省略する。なお、本実施の形態においては、放射線測定器100のプロセッサ1(符号6)で放射線レベルを連続監視して、測定値を転送する、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源のON/OFFを制御する方式を示すものである。図中斜線部分は、常時電源がONの状態にあるものを示す。本実施の形態においては、図1で示した、電波受信機1(符号10)および電波発信機2(符号24)に相当するものは設けられていない点が図1の構成と異なる。
【0034】
本実施の形態においては、図2に示すように、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、電源ON/OFF識別制御器9、電池1、コード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)で構成された放射線測定器100において、測定値をプロセッサ1(符号6)で常に監視し、測定値が通常の変動範囲又は所定の指示値以内であれば測定値を放射線管理装置101へ転送せず、プロセッサ1(符号6)の内部時計で時間を管理して、予め設定した長周期ごとに測定値を放射線管理装置101へ送信する。この場合、送信時以外はコード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源はOFF状態とし、電池の消耗を抑制する。送信時は、プロセッサ1(符号6)から電源ON/OFF識別制御器9へ予め設定された測定周期(長周期)とする信号を発信し、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONにするとともに測定値を放射線管理装置101側へ転送する。
【0035】
一方、測定値が通常の変動範囲又は所定の指示値を超えた場合は、プロセッサ1(符号6)から電源ON/OFF識別制御器9へ予め設定された測定周期(短周期)とする信号又は連続的に電源ONとする信号を発信し、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONにするとともに測定値を放射線管理装置101側へ転送してきめ細かく監視する。
【0036】
以上のように、本実施の形態においては、放射線測定器100のプロセッサ1(符号6)で放射線レベルを連続監視して、電源ON/OFF識別制御器9に信号を送信することによって、長周期または短周期で、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源のON/OFFを制御する。すなわち、測定値をプロセッサ1(符号6)で常に監視し、測定値が通常の変動範囲又は所定の指示値以内であれば、当該測定値を放射線管理装置101へ頻繁に転送せず、プロセッサ1(符号6)の内部時計で時間を管理して、予め設定した長周期ごとに、測定値を放射線管理装置101へ送信する。この場合、送信時以外はコード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源はOFF状態とし、電池の消耗を抑制する。一方、測定値が通常の変動範囲又は所定の指示値を超えた場合は、プロセッサ1(符号6)から電源ON/OFF識別制御器9へ予め設定された測定周期(短周期)とする信号又は連続的に電源ONとする信号を発信し、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONにするとともに測定値を放射線管理装置101側へ転送してきめ細かく監視する。このように、本実施の形態においては、データ転送に必要な機能のコード変換器1(符号7)および比較的電力消費の多い電波発信機1(符号8)の電源を通常はOFFにして、必要最小限のみONにするようにできるので、電源の消費を抑制することができる。
【0037】
実施の形態3.
図3は、本発明の実施の形態3に係る放射線測定システムの構成を示した図である。図3において、実施の形態1および2と同様の構成については、同一符号を付して示し、ここでは、その説明を省略する。なお、本実施の形態においては、放射線管理装置のプロセッサ2(符号21)で放射線レベルを監視する。放射線測定器100の電源ON/OFF識別制御器9および電波受信機1(符号10)の電源は常にONの状態にある。それ以外の構成、すなわち、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)は常にOFFされ、放射線管理装置101からの放射線の測定を行う指令を受けたときのみ、電源ONの状態になる。このように、本実施の形態においては、放射線測定器100の構成要素のうち、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)以外の構成要素の電源のON/OFFを制御する方式を示すものである。図中斜線部分は、常時電源がONの状態にあるものを示す。
【0038】
動作について説明する。測定値を放射線管理装置101のプロセッサ2(符号21)で常に監視し、計測値が通常の変動範囲又は所定の指示値以内の場合は、放射線測定器100の検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)および電波発信機1(符号8)の電源をOFFとする信号をプロセッサ2(符号21)から電波発信機2(符号24)を介して発信し、電源をOFFとする。次に、放射線管理装置101のプロセッサ2(符号21)の内部時計で時間を管理して、予め設定された長周期で(例えば、1時間に1回)、電波発信機2(符号24)から、電源のON信号を発信する。電波受信機1(符号10)、電源ON/OFF識別制御器9は、常にONで稼動状態としていることから、当該電源ON信号を受信した場合、電源ON/OFF識別制御器9を経由して、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をON状態とする。次に、放射線を測定する指令をプロセッサ2(符号21)から発信すると、放射線測定器100は測定を開始し、測定結果は電波発信機1(符号8)を経由して放射線管理装置101に転送される。この場合は、常に作動する機器が少ないことから電池の消耗抑制にも特に効果がある。
【0039】
一方、放射線管理装置101で監視している測定値が大きく変化(±4σ以上)した場合、放射線管理装置101は、常に作動している電波受信機1(符号10)および電源ON/OFF識別制御器9を経由して、検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源を予め設定された短周期でON又は連続的にONとする指令を発信する。次に、電源が確立する少しの時間経過後に、放射線管理装置101は、測定開始指令を発信し、測定結果は電波発信機1(符号8)を経由して、放射線管理装置101に送信される。次に、測定値が大きく変化した状態が継続すれば測定開始指令は頻繁(例えば1分毎)に発信し、指示変動を細かく追跡する。また、放射線測定器100の設置場所付近で線源を扱う作業等が発生するなど設置環境が変わることにより測定値が大きく変化する恐れのある情報がある場合は、ユーザにより、放射線管理装置101側から予め適切な測定周期を設定することできるような構成になっている。
【0040】
以上のように、本実施の形態においては、放射線管理装置101のプロセッサ2(符号21)で放射線レベルを監視して、電源ON/OFF識別制御器9に信号を送信することによって、長周期または短周期で、放射線測定器100の検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源のON/OFFを制御する。すなわち、測定値をプロセッサ2(符号21)で常に監視し、測定値が通常の変動範囲又は所定の指示値以内であれば、予め設定した長周期ごとに、測定値を放射線測定器100から送信させ、受信する。この場合、測定器送信時以外は、放射線測定器100の検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源はOFF状態とし、電池の消耗を抑制する。一方、測定値が通常の変動範囲又は所定の指示値を超えた場合は、プロセッサ2(符号21)から、放射線測定器100の電源ON/OFF識別制御器9へ予め設定された測定周期(短周期)とする信号又は連続的に電源ONとする信号を発信し、放射線測定器100の検出器2、高圧電源3、増幅器4、計数率計5、プロセッサ1(符号6)、コード変換器1(符号7)及び電波発信機1(符号8)の電源をONにするとともに測定値を放射線管理装置101側へ転送させてきめ細かく監視する。このように、本実施の形態においては、ON/OFFの制御に必要な機能の電源ON/OFF識別制御器9および放射線管理装置101からの信号を受信する機能の電波受信機1(符号10)の電源のみを通常はONにして、それ以外の構成要素をすべてOFFにしておき、必要最小限のみONにするようにできるので、電源の消費を抑制することができる。
【0041】
実施の形態4.
図4は、実施の形態2(図2)に該当するシステムの測定値の時系列値とデータの送信の時系列を示す詳細図である。図中の“A”は前日の測定中心値であり、このA点よりも±4σの指示変動があった場合に、測定頻度を通常の「1時間に1回」から「1分に1回」に変更する例について説明する。図中の“b”は、測定値が通常取りうる範囲以上に変動した時点を示しており、図中の“c”は、測定値が通常取りうる範囲に戻った時点をしめしている。なお、本実施の形態における放射線測定システムの構成は、実施の形態2で示した図2と同じであるため、それを参照することとし、ここでは、その説明を省略する。また、“A”は前日の測定中心値として、説明するが、その場合に限らず、予め設定される所定の指示値の中心値(指示中心値)としてもよい。
【0042】
このように、本実施の形態においては、放射線測定器100で測定値を連続監視している。このとき、図4に示すように、測定値が通常取りうる範囲以上に変動した時点“b”以降は、測定頻度を通常の「1時間に1回」から「1分に1回」に変更している。また、測定値が通常取りうる範囲に戻った時点“c”以降は、「1分に1回」から「1時間に1回」に変更している。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、図2の構成において、測定値が通常取りうる範囲以上に変動したときは、測定頻度を通常の長周期(1時間に1回)から短周期(1分に1回)に変更し、また、測定値が通常取りうる範囲のときは、短周期(1分に1回)から長周期(1時間に1回)に変更するようにしたので、測定頻度を必要最小限にするようにできるので、電源の消費を抑制することができる。
【0044】
実施の形態5.
図5は、実施の形態3(図3)に該当するシステムの測定値の時系列値とデータの送信の時系列を示す詳細図である。図中の“A”は前日の測定中心値であり、このA点よりも±4σの指示変動があった場合に、通信頻度を通常の「1時間に1回」から「1分に1回」に変更する例について説明する。図中の“b”は、測定値が通常取りうる範囲以上に変動した時点を示している。なお、本実施の形態における放射線測定システムの構成は、実施の形態3で示した図3と同じであるため、それを参照することとし、ここでは、その説明を省略する。また、“A”は前日の測定中心値として、説明するが、その場合に限らず、予め設定される所定の指示値の中心値(指示中心値)としてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態においては、放射線管理装置101で測定値を連続監視している。このとき、図5に示すように、測定値が通常取りうる範囲以上に変動した時点“b”以降は、放射線測定器100と放射線管理装置101との間の通信頻度を通常の「1時間に1回」から「1分に1回」に変更している。また、図示されていないが、測定値が通常取りうる範囲に戻った場合は、「1分に1回」から「1時間に1回」に変更する。
【0046】
以上のように、本実施の形態においては、図3の構成において、測定値が通常取りうる範囲以上に変動したときは、通信頻度を通常の長周期(1時間に1回)から短周期(1分に1回)に変更し、また、測定値が通常取りうる範囲のときは、短周期(1分に1回)から長周期(1時間に1回)に変更するようにしたので、通信頻度を必要最小限にするようにできるので、電源の消費を抑制することができる。
【0047】
実施の形態6.
図6は、実施の形態3(図3)に該当するシステムの測定値の時系列値とデータの送信の時系列を示す詳細図である。図5と異なる点は、測定開始指令の内、指示値の閾値を管理基準値(放射線高警報値等)を超えた場合を示したものである。図中の“H”は管理基準値であり、このHの値を超える指示変動があった場合に、通信頻度を通常の「1時間に1回」から「1分に1回」に変更する例について説明する。図中の“d”は、測定値が管理基準値以上に変動した時点を示している。なお、本実施の形態における放射線測定システムの構成は、実施の形態3で示した図3と同じであるため、それを参照することとし、ここでは、その説明を省略する。
【0048】
このように、本実施の形態においては、放射線管理装置101で測定値を連続監視している。このとき、図6に示すように、測定値が管理基準値以上に変動した時点“d”以降は、放射線測定器100と放射線管理装置101との間の通信頻度を通常の「1時間に1回」から「1分に1回」に変更している。また、図示されていないが、測定値が管理基準値よりも小さい値に戻った場合は、「1分に1回」から「1時間に1回」に変更する。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、図3の構成において、測定値が管理基準値以上に変動したときは、通信頻度を通常の長周期(1時間に1回)から短周期(1分に1回)に変更し、また、測定値が管理基準値よりも小さい値になったときは、短周期(1分に1回)から長周期(1時間に1回)に変更するようにしたので、通信頻度を必要最小限にするようにできるので、電源の消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態1に係る放射能測定システムの構成を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る放射能測定システムの構成を示したブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る放射能測定システムの構成を示したブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る放射能測定システムの動作を示した説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る放射能測定システムの動作を示した説明図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る放射能測定システムの動作を示した説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 電池、2 検出器、3 高圧電源、4 増幅器、5 計数率計、6 プロセッサ1、7 コード変換器1、8 電波発信機1、9 電源ON/OFF識別制御器、10 電波受信機1、20 電波受信機2、21 プロセッサ2、22 コード変換器、23 電源AC100V/DC、24 電波発信機2、100 放射線測定器、101 放射線管理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量を測定する電池駆動の放射線測定器と測定された放射線量の測定値を管理する放射線管理装置とから構成された放射線測定システムであって、
前記放射線測定器によって測定された放射線量の測定値が所定の範囲以内の場合には、前記放射線測定器の電源ON指令の周期を長くし、前記測定値が前記所定の範囲を超える場合には、前記放射線測定器の電源ON指令の周期を短くする制御手段を備えたことを特徴とする放射線測定システム。
【請求項2】
前記放射線測定器は、放射線量を測定する検出器と、検出した放射線量の測定値を前記放射線管理装置に送信する電波発信機とを備え、前記制御手段は前記放射線測定器側に設けられているものであって、当該制御手段は、前記電波発信機の電源ON指令の周期を制御し、前記検出器は常時電源がONの状態であることを特徴とする請求項1に記載の放射線測定システム。
【請求項3】
前記制御手段は前記放射線管理装置側に設けられているものであって、前記放射線測定器は、放射線量を測定する検出器と、検出した放射線量の測定値を前記放射線管理装置に送信する電波発信機と、前記放射線管理装置に設けられた前記制御手段からの信号を受信する電波受信機とを備え、前記制御手段は、前記検出器と前記電波発信機の電源ON指令の周期を制御し、前記電波受信機は常時電源がONの状態であることを特徴とする請求項1に記載の放射線測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−84325(P2006−84325A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269515(P2004−269515)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】