説明

放射線画像変換パネル及びその製造方法

【課題】放射線画像変換パネルのX線照射耐性を向上する。
【解決手段】支持体上に、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体であり、かつ該輝尽性蛍光体層がNaX″′(X″′はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表す)を5〜25ppm含有する。 一般式(1) M1X・aM2X′・bM3X″3:eA

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネル及びその製造方法に関し、X線照射耐性に優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像を得るために銀塩を使用した、いわゆる放射線写真法が利用されているが、銀塩を使用しないで放射線像を画像化する方法が開発されている。即ち、被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体をある種のエネルギーで励起してこの蛍光体が蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出して画像化する方法が開示されている。
【0003】
具体的な方法としては、例えば米国特許第3,859,527号には支持体上に輝尽性蛍光体層を設けたパネルを用い、励起エネルギーとして可視光線及び赤外線の一方または両方を用いる放射線画像変換方法が記載されている。
【0004】
より高輝度、高感度の輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換方法として、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−72087号等に記載されているアルカリハライド蛍光体を用いた放射線画像変換方法、同61−73786号、同61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+及びCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体が開発されている。
【0005】
さらに、近年診断画像の解析においてより高鮮鋭性の放射線画像変換パネルが要求されている。鮮鋭性改善のための手段として、例えば形成される輝尽性蛍光体の形状そのものをコントロールし感度及び鮮鋭性の改良を図る試みがされている。
【0006】
これらの試みの1つの方法として、例えば特開昭61−142497号等に記載されているような、微細な凹凸パターンを有する支持体上に輝尽性蛍光体を堆積させ形成した微細な擬柱状ブロックからなる輝尽性蛍光体層を用いる方法がある。
【0007】
また、特開昭61−142500号に記載のように微細なパターンを有する支持体上に、輝尽性蛍光体を堆積させて得た柱状ブロック間のクラックをショック処理を施してさらに発達させた輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを用いる方法、さらには、特開昭62−39737号に記載のように支持体上に形成された輝尽性蛍光体層にその表面側から亀裂を生じさせ擬柱状とした放射線画像変換パネルを用いる方法、さらには、特開昭62−110200号に記載のように、支持体上に蒸着により空洞を有する輝尽性蛍光体層を形成した後、加熱処理によって空洞を成長させ亀裂を設ける方法等も提案されている。
【0008】
さらに、特許文献1には、気相法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し一定の傾きをもった細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが提案されている。
【0009】
最近では、CsBr等のハロゲン化アルカリを母体にEuを賦活した輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルが提案され、特にEuを賦活剤とすることで従来不可能であった高いX線変換効率を導き出すことが可能となった。
【0010】
このように、放射線画像変換パネルの高画質化が進み、放射線画像変換パネルの撮影使用頻度が増加している一方で、放射線画像変換パネルはX線照射に対して輝度が劣化することが知られており、より高いX線耐久特性を有する放射線画像変換パネルが要望されている。
【特許文献1】特開平2−58000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、X線照射耐性に優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0013】
(請求項1)
支持体上に、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体であり、かつ該輝尽性蛍光体層がNaX″′(X″′はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表す)を5〜25ppm含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0014】
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″3:eA
(式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X、X′及びX″は各々F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm及びYからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。)
(請求項2)
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体が下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
【0015】
一般式(2)
CsBr:yEu
(式中、yは0<y≦0.2の範囲の数値を表す。)
(請求項3)
請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、ルツボに入れた輝尽性蛍光体原料を抵抗加熱方式で600〜880℃に加熱して、気相堆積法により支持体上に柱状結晶構造を有する輝尽性蛍光体層を形成することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、X線照射耐性に優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者は鋭意研究の結果、支持体上に、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体が前記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体であり、かつ該輝尽性蛍光体層がNaX″′(X″′はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表す)を5〜25ppm含有することにより、X線照射耐性に優れた放射線画像変換パネルが得られることを見出した。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
〔支持体〕
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては、各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられ、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラス、また、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シートまたは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが挙げられる。中でもアルミニウムを主成分とする金属基板またはガラスが好ましい。これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0020】
また、本発明においては、支持体と輝尽性蛍光体層の接着性を向上させるために、必要に応じて支持体の表面に予め接着層を設けてもよい。これら支持体の厚みは用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜2000μmであり、取り扱い上の観点からさらに好ましいのは80〜1000μmである。
【0021】
〔輝尽性蛍光体〕
本発明に用いる輝尽性蛍光体は、下記一般式(1)で表される。
【0022】
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″3:eA
一般式(1)において、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X、X′及びX″は各々F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm及びYからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。
【0023】
前記一般式(1)においては、M1がK、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属で、XがBr及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲンで、M3がY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であること、bが0≦b≦10-2であること、AがEu、Cs、Sm、Tl及びNaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。
【0024】
さらに、輝尽性蛍光体が下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体であるが好ましい。
【0025】
一般式(2)
CsBr:yEu
一般式(2)において、yは0<y≦0.2の範囲の数値を表す。より好ましくは、yは1×10-7≦y≦1×10-2である。
【0026】
〔輝尽性蛍光体層の形成〕
はじめに、気相堆積法による輝尽性蛍光体層の形成について説明する。
【0027】
輝尽性蛍光体を気相堆積させる方法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法等がある。
【0028】
蒸着法は、支持体を気相堆積装置内に設置し、装置内を排気して一旦1.33×10-4Pa程度の真空とした後、調圧ガスを導入して気相堆積装置内の真空度を1.33×10-2〜1.33Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも1つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体層を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成される。
【0029】
スパッタ法は、前記蒸着法と同様に支持体をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.33×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.33×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより支持体表面に輝尽性蛍光体層を所望の厚さに堆積させる。
【0030】
スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時または順次スパッタリングして、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成するものであり、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。さらに、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて被蒸着物を冷却または加熱してもよい。また、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0031】
CVD法は、目的とする輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、支持体上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、いずれも輝尽性蛍光体層を支持体の法線方向に対して特定の傾きをもって独立した細長い結晶に気相成長させることが可能である。
【0032】
本発明においては、これら気相堆積法により輝尽性蛍光体層を形成するが、複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することもできる。
【0033】
本発明では輝尽性蛍光体層がNaX″′(X″′はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表す)を5〜25ppm含有することが特徴である。5ppm未満では実用上十分なX線耐久特性が得られず、25ppmを超えると蛍光体の残光特性が悪化し画質が低下する。輝尽性蛍光体層にNaX″′(X″′はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表す)を5〜25ppm含有させるには、上記輝尽性蛍光体原料にNaX″′の量を調整して添加し、蒸着法、スパッタ法、CVD法等で支持体表面にNaX″′を含有する輝尽性蛍光体層を所望の厚さに堆積させる。NaX″′の濃度の測定は誘導結合プラズマ発光分光法(以下ICP−AESと呼ぶ)を用いることができる。
【0034】
本発明においては、気相堆積法として蒸着法が好ましく用いられる。以下、蒸着法による輝尽性蛍光体層の形成について詳しく説明する。なお、以下においては柱状結晶を成長させる場合について説明する。
【0035】
蒸着法によって輝尽性蛍光体層を形成する方法としては、気相堆積装置内の真空度を1.33×10-2〜1.33Paになるように調圧ガスを導入しながら、支持体上にある入射角で輝尽性蛍光体の蒸気または原料を供給し、結晶を気相成長(気相堆積法と呼ぶ)させる方法によって独立した細長い柱状結晶構造を有する輝尽性蛍光体層を得ることができる。
【0036】
真空度を1.33×10-2〜1.33Paになるようにする調圧ガスの流量は0.001〜1000sccm(standard ml/min、1×10-63/min)であることがこのましい。調圧ガスの流量が1000sccmを越えると、ガスの流れにより蒸気流が乱れ蛍光体の成長に悪影響を与える。また、調圧ガスの流量が0.001sccm未満では付着性低下が発生する。
【0037】
真空度の調整に用いる調圧ガスは窒素またはアルゴンが好ましい。
【0038】
輝尽性蛍光体または輝尽性蛍光体原料の蒸気流を支持体面に対しある入射角をつけて供給する方法には、支持体を蒸発源を仕込んだ坩堝に対し互いに傾斜させる配置を取る、または、支持体と坩堝を互いに平行に設置し、蒸発源を仕込んだ坩堝の蒸発面からスリット等により斜め成分のみ支持体上に蒸着させるよう規制する等の方法を採ることができる。これらの場合において、支持体と坩堝との最短部の間隔は輝尽性蛍光体の平均飛程に合わせて概ね10〜60cmに設置するのが好ましい。
【0039】
これらの柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層において変調伝達関数(MTF)をよくするためには、柱状結晶の大きさ(柱状結晶を支持体と平行な面から観察したときの各柱状結晶の断面積の円換算した直径の平均値であり、少なくとも100個以上の柱状結晶を視野中に含む顕微鏡写真から計算する)は1〜50μm程度がよく、さらに好ましくは1〜30μmである。即ち、柱状結晶が1μmより細い場合は、柱状結晶により輝尽励起光が散乱されるためにMTFが低下するし、柱状結晶が50μmを越える場合も輝尽励起光の指向性が低下し、MTFは低下する。
【0040】
また各柱状結晶間の間隙の大きさは30μm以下がよく、さらに好ましくは5μm以下がよい。即ち、間隙が30μmを越える場合は蛍光体層中の蛍光体の充填率が低くなり、感度が低下してしまう。
【0041】
上記方法により形成した輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によって異なるが、10〜1000μmが好ましく、さらに好ましくは20〜800μmである。
【0042】
また、上記気相堆積法を用いて輝尽性蛍光体層の作製時、蒸発源となる輝尽性蛍光体は、均一に溶解させるか、プレス、ホットプレスによって成形して坩堝に仕込まれる。この際、脱ガス処理を行うことが好ましい。蒸発源から輝尽性蛍光体を蒸発させる方法は電子銃により発した電子ビームの走査により行われるが、これ以外の方法で蒸発させることもできる。
【0043】
また、蒸発源は必ずしも輝尽性蛍光体である必要はなく、輝尽性蛍光体原料を混和したものであってもよい。
【0044】
また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよいし、母体のみを蒸着した後に賦活剤をドープしてもよい。例えば、母体であるRbBrのみを蒸着した後、例えば賦活剤であるTlをドープしてもよい。即ち、結晶が独立しているため、膜が厚くとも充分にドープ可能であるし、結晶成長が起こりにくいので、MTFは低下しないからである。ドーピングは形成された蛍光体の母体層中にドーピング剤(賦活剤)を熱拡散、イオン注入法によって行うことができる。
【0045】
また、柱状結晶間の間隙に結着剤等充填物を充填してもよく、輝尽性蛍光体層の補強となる。また高光吸収率の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい。これにより前記補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散をほぼ完全に防止できる。
【0046】
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属等、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
【0047】
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも1種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも1種である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸鉛、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウム等が挙げられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させ得る。
【0048】
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄等及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
【0049】
また、色材は、有機または無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材も挙げられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料が挙げられる。
【0050】
〔保護層〕
本発明に係る放射線画像変換パネルは輝尽性蛍光体層の上に保護層を有していてもよい。
【0051】
保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手順を取ってもよい。保護層の材料としては酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層として用いることもできる。また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al23等の無機物質を積層して形成してもよい。これらの保護層の層厚は一般的には0.1〜2000μm程度が好ましい。
【0052】
本発明の実施の形態を図をもって説明する。
【0053】
図1は輝尽性蛍光体プレートの断面図である。10は支持体、11は輝尽性蛍光体層であり、柱状結晶を示している。なお、12は柱状結晶間に形成された間隙を示している。
【0054】
図2は支持体上に輝尽性蛍光体層を蒸着により形成する様子を示す図である。輝尽性蛍光体蒸気流Vを支持体面の法線方向に入射すると、支持体面の法線方向に垂直な柱状結晶が形成される。輝尽性蛍光体蒸気流Vの支持体面の法線方向に対する入射角度をθ2とすると、形成される柱状結晶の支持体面の法線方向に対する角度はθ1で表され、この角度で柱状結晶が形成される。本発明においては0≦θ1、θ2≦20の垂直な柱状結晶が好ましい。
【0055】
図3は、本発明の放射線画像変換パネルの使用例を示す概略図である。
【0056】
図3において21は放射線発生装置、22は被写体、23は輝尽性蛍光体を含有する可視光ないし赤外光輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル、24は放射線画像変換パネル23の放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、25は放射線画像変換パネル23より放出された輝尽発光を検出する光電変換装置、26は光電変換装置25で検出された光電変換信号を画像として再生する装置、27は再生された画像を表示する装置、28は光源24からの反射光をカットし、放射線画像変換パネル23より放出された光のみを透過させるためのフィルタである。なお、図3は被写体の放射線透過像を得る場合の例であるが、被写体22自体が放射線を放射する場合には、放射線発生装置21は特に必要ない。また、光電変換装置25以降は放射線画像変換パネル23からの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、前記に限定されない。
【0057】
輝尽励起光源24としては、放射線画像変換パネル23に使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また、輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率を上げることができ、より好ましい結果が得られる。
【0058】
レーザとしては、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。また、フィルタ28を用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。
【0059】
上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0061】
実施例
(放射線画像変換パネルの作製)
厚さ0.5mm、500mm角サイズのアルミニウム支持体(住友軽金属製、A1100 XLタイプ)、及び厚さ2mm、500mm角サイズの炭素繊維強化樹脂板(東邦テナックス製、CFRP#167A、含浸樹脂硬化エポキシ樹脂)の表面に気相堆積装置(蒸着装置)を用いて輝尽性蛍光体(CsBr:0.001Eu)を有する輝尽性蛍光体層を形成した。
【0062】
蒸着にあたっては、支持体を気相堆積装置内に設置し、次いで、輝尽性蛍光体原料(CsBr:0.001Eu)とNaBrをプレス成形し水冷したルツボに入れ蒸着源とした。一旦、排気口にポンプを接続して気相堆積装置内を排気した後、ガス導入口からアルゴンガスを導入して、装置内の真空度を1.0×10-2Paに維持し、支持体の表面温度を100℃に保持し、蒸着源を850℃に加熱し、支持体の一方の面に、CsBr:0.0001Euからなるアルカリハライド蛍光体を支持体表面の法線方向から、支持体と蒸発源の距離を60cmとして、アルミニウム製のスリットを用い、支持体を回転させながら蒸着を行なった。輝尽性蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了した。次いで、この蛍光体層を150℃で加熱処理し、放射線画像変換プレートを得た。
【0063】
次に、下記構成のアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂層を含む積層保護フィルムAを作製した。
【0064】
積層保護フィルムA:VMPET12///VMPET12///PET
積層保護フィルムAにおいて、VMPETは、アルミナ蒸着したポリエチレンテレフタレート(市販品:東洋メタライジング社製)を表し、PETはポリエチレンテレフタレートを表す。また、上記「///」は、ドライラミネーション接着層における2液反応型のウレタン系接着剤層の厚みが3.0μmであることを表し、各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表す。
【0065】
上記の保護フィルムを2枚使って袋状にして、上記作製した放射線画像変換プレートを減圧しながら包み、蛍光体層側の蛍光体周縁より外側にある領域で、支持体と積層保護フィルムAを融着し、裏面の積層保護フィルムAは除去して放射線画像変換パネル1〜12を得た。なお、放射線画像変換パネル1と2、3と4、5と6、7と8、9と10、11と12はそれぞれ同じ蒸着源(6種類)を用いた。6種類の蒸着源は輝尽性蛍光体原料(CsBr:0.001Eu)とNaBrの混合比が異なる。
【0066】
得られた放射線画像変換パネルについて、NaBrの濃度を誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AESと呼ぶ)で測定した。また、下記のようにしてX線耐久特性を評価した。
【0067】
(X線耐久特性)
まず、放射線画像変換パネルの輝度(A)を下記輝度測定法により求めた。次に、放射線画像変換パネル全面に10RのX線を照射し、放射線画像変換パネルに記録されたX線定法をハロゲン光で消去した。これを繰り返し行い、累計X線量が600Rとなったところで放射線画像変換パネルの輝度(B)を求めた。下記式を用いてX線耐久特性(%)を計算した。なお、X線耐久特性は高いほどX線耐久性に優れている。
【0068】
X線耐久特性(%)=B/A×100
〈輝度測定法〉
輝度評価は、放射線画像変換パネル全面に管電圧80kVpのX線を照射した後、放射線画像変換パネルを100mWの半導体レーザー光(680nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を光電子倍増管(浜松ホトニクス製、光電子倍増管R1305)を用いて受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換してハードディスクに記録し、記録をコンピューターで分析してハードディスクに記録されているX線平面画像のシグナル値から輝度発光強度を求めこれを輝度と定義した。
【0069】
輝尽性蛍光体層のNaBr濃度及びX線耐久特性を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1より本発明の放射線画像変換パネルは比較例に比べ、X線耐久特性が優れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】輝尽性蛍光体プレートの断面図である。
【図2】支持体上に輝尽性蛍光体層を蒸着により形成する様子を示す図である。
【図3】本発明の放射線画像変換パネルの使用例を示す概略図である。
【図4】蒸着型の気相堆積装置の概略図である。
【符号の説明】
【0073】
10 支持体
11 輝尽性蛍光体層
12 柱状結晶間に形成された間隙
21 放射線発生装置
22 被写体
23 放射線画像変換パネル
24 輝尽励起光源
25 光電変換装置
26 画像再生装置
27 画像表示装置
28 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体が下記一般式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体であり、かつ該輝尽性蛍光体層がNaX″′(X″′はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンを表す)を5〜25ppm含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
一般式(1)
1X・aM2X′・bM3X″3:eA
(式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M2はM1以外のLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、M3はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属であり、X、X′及びX″は各々F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm及びYからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体が下記一般式(2)で表される輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
一般式(2)
CsBr:yEu
(式中、yは0<y≦0.2の範囲の数値を表す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法において、ルツボに入れた輝尽性蛍光体原料を抵抗加熱方式で600〜880℃に加熱して、気相堆積法により支持体上に柱状結晶構造を有する輝尽性蛍光体層を形成することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−38473(P2006−38473A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214263(P2004−214263)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】