説明

放射線画像撮影システム

【課題】複数のカセッテ中、所望のカセッテのみと無線通信を行う。
【解決手段】カセッテ24a〜24eに搭載されるカセッテ送受信機48a〜48eの搬送周波数を異なる周波数としているので、コンソール28のコンソール送受信機96a〜96eの搬送周波数を所望のカセッテ24eの搬送周波数に選択することにより、複数のカセッテ24a〜24e中、所望のカセッテ24のみと無線通信を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被写体を透過した放射線を検出し放射線画像情報に変換する放射線変換パネルを有するカセッテと、このカセッテから送信される前記放射線画像情報を受信する外部制御装置とを備える放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、被写体に放射線を照射し、被写体を透過した放射線を放射線変換パネルに導いて放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置が広汎に使用されている。この場合、放射線変換パネルとしては、放射線画像が露光記録される従来からの放射線フイルムや、蛍光体に放射線画像としての放射線エネルギを蓄積し、励起光を照射することで放射線画像を輝尽発光光として取り出すことのできる蓄積性蛍光体パネルが知られている。これらの放射線変換パネルは、放射線画像が記録された放射線フイルムを現像装置に供給して現像処理を行い、あるいは、蓄積性蛍光体パネルを読取装置に供給して読取処理を行うことで、可視画像としての放射線画像が得られる。
【0003】
一方、手術室等の医療現場においては、患者に対して迅速且つ的確な処置を施すため、放射線変換パネルから直ちに放射線画像を読み出して表示できることが要求される。このような要求に対応可能な放射線変換パネルとして、放射線を直接電気信号に変換し、あるいは、放射線をシンチレータで可視光に変換した後、電気信号に変換して読み出す固体検出素子を用いた放射線検出器が開発されている。
【0004】
このような放射線検出器を用いた放射線画像撮影システムとして、特許文献1〜4に開示されたものがある。
【0005】
特許文献1では、放射線検出器によって検出した放射線画像情報を無線通信によって処理装置に送信し、処理装置において画像処理等の信号処理を行うようにしている。
【0006】
特許文献2では、全脊柱のような長い被写体の撮影と読取を行う際、2つの短い蓄積性蛍光体パネルを一部分重複して並べ、2つの放射線画像を画像処理により精度よく位置合わせを行うようにしている。
【0007】
特許文献3には、放射線画像情報の通信を1[GHz]超の高周波により行う第1電波通信手段により大容量の画像データの高速通信を可能にする一方1[GHz]以下の周波数の第2電波通信手段により制御信号の通信を行う無線通信可能な電子カセッテが開示されている。
【0008】
特許文献4には、電子カセッテと撮影装置のそれぞれに、光通信手段(無線通信手段)と電波通信手段(無線通信手段)とを設け、どちらか一方の無線通信手段により制御信号の通信を行い、他方の無線通信手段により画像データの通信を行う放射線画像撮影システムが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特許第3494683号公報
【特許文献2】特開2000−275760号公報
【特許文献3】特開2006−263339号公報
【特許文献4】特開2005−13310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、撮影部位・用途に応じて使い分けられる大きさの異なる複数のカセッテがカセッテ収納ボックスに収納されている場合、撮影装置によりこれから撮影に供しようとする所望のカセッテのみを選択して通信したいという場合がある。
【0011】
また、撮影部位に応じて使い分けられる放射線検出感度の異なる複数のカセッテが存在する場合でも同様の要望がある。
【0012】
さらには、移植手術等の際、撮影装置により複数のカセッテから同時に画像データを得たいという要求もある。
【0013】
しかしながら、特許文献3、4に係る従来技術では、電子カセッテの制御信号と画像データの通信周波数とを異ならせているに過ぎず、電子カセッテ相互間では、制御信号の通信が混信し、また画像データの通信が混信するという問題がある。
【0014】
しかも、特許文献4のように、電子カセッテに光通信手段と電波通信手段の両方を設けると、構成が複雑になりコストも高い。また、光通信手段は、通信領域に、患者等不透明な物体が存在すると通信ができないという欠点がある。
【0015】
この発明は、このような種々の課題を考慮してなされたものであり、外部制御装置により、複数のカセッテ中、所望のカセッテと無線通信を行うことを可能とする放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【0016】
また、この発明は、外部制御装置と複数のカセッテとの間での同時無線通信を行うことを可能とする放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る放射線画像撮影システムは、被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像情報に変換する放射線変換パネルと、変換された前記放射線画像情報を記憶する画像メモリと、前記画像メモリに記憶された前記放射線画像情報を無線通信によって外部に送信しそれぞれが異なる搬送周波数を有する第1送受信機を備える複数のカセッテと、前記複数のカセッテ中、所望のカセッテと無線通信を行うために前記搬送周波数を選択可能な第2送受信機を有する外部制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、カセッテに搭載される第1送受信機の搬送周波数を異なる周波数としているので、外部制御装置の第2送受信機の搬送周波数を所望のカセッテの搬送周波数に選択することにより、複数のカセッテ中、所望のカセッテと無線通信を行うことができる。
【0019】
この場合、前記外部制御装置と前記複数のカセッテとが、周波数多重分割多重方式により同時通信を行うように構成することが好適である。
【0020】
また、前記複数のカセッテは、さらに、電源スイッチと、スリープ・ウェイクアップ機能を有し、前記電源スイッチがオフ状態であるときにスリープ状態となり、スリープ状態にあるとき、自己の搬送周波数による起動信号を受信するとウェイクアップして前記電源スイッチをオン状態にするように構成することで、カッセテの待機時の消費電力を抑制することができる。
【0021】
ここで、前記電源スイッチがオン状態とされている場合に、前記カセッテから前記外部制御装置に対して前記放射線画像情報の送信が終了したとき、前記カセッテが、前記電源スイッチをオフ状態にしてスリープ状態に切り替えることで、一層、消費電力を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、カセッテに搭載される第1送受信機の搬送周波数を異なる周波数としているので、外部制御装置の第2送受信機の搬送周波数を選択することで、外部制御装置により複数のカセッテ中、所望のカセッテと無線通信を行うことができる。
【0023】
また、外部制御装置と複数のカセッテとの間で周波数分割多重方式により同時無線通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、この発明の一実施形態に係る放射線画像撮影システム10が設置された手術室12の説明図である。手術室12には、放射線画像撮影システム10に加えて、患者14が横臥する手術台16が配置されるとともに、医師18が手術に使用する各種器具が載置される器具台20が手術台16の側部に配置される。また、手術台16の周りには、麻酔器、吸引器、心電計、血圧計等、手術に必要な様々な機器が配置される。
【0025】
放射線画像撮影システム10は、撮影条件に従った線量からなる放射線Xを患者14に照射するための撮影装置22と、患者14を透過した放射線Xを検出する放射線検出器(後述)を内蔵したカセッテ(放射線検出カセッテ)24と、放射線検出器によって検出された放射線Xに基づく放射線画像を表示する表示装置26と、複数のカセッテ(24a〜24e)24を収納するカセッテ収納ボックス27と、撮影装置22、カセッテ24及び表示装置26を制御するコンソール(カセッテ24の外部制御装置)28とを備える。コンソール28と、撮影装置22、カセッテ24、及び表示装置26との間では、無線通信による信号の送受信が行われる。
【0026】
カセッテ収納ボックス27に収納されている複数のカセッテ24は、撮影部位・目的等に応じて選択される大きさ(この実施形態では長さ)の異なるものとされている。なお、同一の大きさのカセッテ24が複数存在していてもこの発明を適用することができる。
【0027】
図1例では、手術台16と患者14との間に長尺なカセッテ24eが配置されている。ここでは、理解の便宜のため、カセッテ24a〜24eの表面には、それぞれ、医師18等により識別するための識別表示であるアルファベットA〜Eが描かれているものとする。
【0028】
撮影装置22は、自在アーム30に連結され、患者14の撮影部位に応じた所望の位置に移動可能であるとともに、医師18による手術の邪魔とならない位置に待避可能である。同様に、表示装置26は、自在アーム32に連結され、撮影された放射線画像を医師18が容易に確認できる位置に移動可能である。
【0029】
図2は、カセッテ24の内部構成図である。カセッテ24は、放射線Xを透過させる材料からなるケーシング34を備える。ケーシング34の内部には、放射線Xが照射されるケーシング34の照射面36側から、患者14による放射線Xの散乱線を除去するグリッド38、患者14を透過した放射線Xを検出する放射線検出器40(放射線変換パネル)、及び放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板42が順に配設される。なお、ケーシング34の照射面36をグリッド38として構成してもよい。
【0030】
また、ケーシング34の内部には、カセッテ24の電源であり電圧Vccのバッテリ44と、バッテリ44から供給される電力により放射線検出器40を駆動制御するカセッテ制御部46と、放射線検出器40によって検出した放射線Xの情報を含む信号をコンソール28との間で送受信するカセッテ送受信機(第1送受信機)48とが収容される。なお、カセッテ制御部46及びカセッテ送受信機48には、放射線Xが照射されることによる損傷を回避するため、ケーシング34の照射面36側に鉛板等を配設しておくことが好ましい。
【0031】
図3は、放射線検出器40の回路構成ブロック図である。放射線検出器40は、放射線Xを感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる光電変換層51を行列状の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)52のアレイの上に配置した構造を有し、発生した電荷を蓄積容量53に蓄積した後、各行毎にTFT52を順次オンにして、電荷を画像信号として読み出す。図3では、光電変換層51及び蓄積容量53からなる1つの画素50と1つのTFT52との接続関係のみを示し、その他の画素50の構成については省略している。なお、アモルファスセレンは、高温になると構造が変化して機能が低下してしまうため、所定の温度範囲内で使用する必要がある。従って、カセッテ24内に放射線検出器40を冷却する手段を配設することが好ましい。
【0032】
各画素50に接続されるTFT52には、行方向と平行に延びるゲート線54と、列方向と平行に延びる信号線56とが接続される。各ゲート線54は、ライン走査駆動部58に接続され、各信号線56は、読取回路を構成するマルチプレクサ66に接続される。
【0033】
ゲート線54には、行方向に配列されたTFT52をオンオフ制御する制御信号Von、Voffがライン走査駆動部58から供給される。この場合、ライン走査駆動部58は、ゲート線54を切り替える複数のスイッチSW1と、スイッチSW1の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ60とを備える。アドレスデコーダ60には、カセッテ制御部46からアドレス信号が供給される。
【0034】
また、信号線56には、列方向に配列されたTFT52を介して各画素50の蓄積容量53に保持されている電荷が流出する。この電荷は、増幅器62によって増幅される。増幅器62には、サンプルホールド回路64を介してマルチプレクサ66が接続される。マルチプレクサ66は、信号線56を切り替える複数のスイッチSW2と、スイッチSW2の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ68とを備える。アドレスデコーダ68には、カセッテ制御部46からアドレス信号が供給される。マルチプレクサ66には、A/D変換器70が接続され、A/D変換器70によってデジタル信号に変換された放射線画像情報がカセッテ制御部46に供給される。
【0035】
図4は、撮影装置22、カセッテ24、表示装置26及びコンソール28からなる放射線画像撮影システム10の構成ブロック図である。なお、コンソール28には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像情報やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)29が接続され、また、RIS29には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)31が接続される。
【0036】
撮影装置22は、撮影スイッチ72と、放射線Xを出力する放射線源74と、コンソール28から無線通信により撮影条件を受信する一方、コンソール28に対して無線通信による撮影完了信号等を送信する送受信機76と、撮影スイッチ72から供給される撮影開始信号及び送受信機76から供給される撮影条件に基づいて放射線源74を制御する線源制御部78とを備える。
【0037】
カセッテ24には、放射線検出器40、バッテリ44、カセッテ制御部46、カセッテ送受信機48、及び電源スイッチ45が収容される。電源スイッチ45は、手動あるいはカセッテ送受信機48からの制御信号Ssによりオンオフが切り替えられバッテリ44から放射線検出器40、カセッテ制御部46、及びカセッテ送受信機48への電力の供給を切り替える。
【0038】
なお、バッテリ44は、スリープ・ウェイクアップ機能を司るカセッテ送受信機48に直接的にも接続され、カセッテ24がスリープ状態のときに、カセッテ送受信機48を構成する後述するカセッテ送受信制御部202とシンセサイザ212と受信部208にカセッテ送受信機48を待機させておくための待機電力(小電力)を供給する。
【0039】
カセッテ制御部46は、放射線検出器40を構成するライン走査駆動部58のアドレスデコーダ60及びマルチプレクサ66のアドレスデコーダ68に対してアドレス信号を供給するアドレス信号発生部80と、放射線検出器40によって検出された放射線画像情報を記憶する画像メモリ82と、当該カセッテ24を特定するためのカセッテID情報を記憶するカセッテIDメモリ84とを備える。
【0040】
カセッテ送受信機48は、コンソール28から後述する選択信号(起動信号)を無線通信により受信する一方、コンソール28に対して、カセッテIDメモリ84に記憶されたカセッテID情報、画像メモリ82に記憶された放射線画像情報を無線通信により送信する。
【0041】
表示装置26は、コンソール28から放射線画像情報を受信する受信機90と、受信した放射線画像情報の表示制御を行う表示制御部92と、表示制御部92によって処理された放射線画像情報を表示する表示部94とを備える。
【0042】
コンソール28は、撮影装置22、カセッテ24及び表示装置26に対して、放射線画像情報を含む必要な情報を無線通信により送受信するコンソール送受信機96と、撮影装置22による撮影に必要な撮影条件を管理する撮影条件管理部98と、カセッテ24から送信された放射線画像情報に対する画像処理を行う画像処理部100(画像処理手段)と、処理した放射線画像情報を記憶する画像メモリ101と、撮影対象である患者14の患者情報を管理する患者情報管理部102と、カセッテ情報を管理するカセッテ情報管理部104とを備える。コンソール28は、撮影装置22、カセッテ24及び表示装置26に対して無線通信による信号の送受信を行うことができるのであれば、手術室12の外に設置してもよい。
【0043】
なお、撮影条件とは、患者14の撮影部位に対して、適切な線量からなる放射線Xを照射するための管電圧、管電流、照射時間等を決定するための条件であり、例えば、撮影部位、撮影方法等の条件を挙げることができる。患者情報とは、患者14の氏名、性別、患者ID番号等、患者14を特定するための情報である。これらの撮影条件及び患者情報を含む撮影のオーダリング情報は、コンソール28で直接設定し、あるいは、RIS29を介してコンソール28に外部から供給することができる。また、カセッテ情報とは、カセッテ24を特定するためのカセッテID情報である。
【0044】
図5は、コンソール送受信機96とカセッテ送受信機48(48a〜48e)の内部構成の一部を示す、放射線画像情報送受信システム110のブロック図である。
【0045】
コンソール送受信機96は、マイクロコンピュータを備えるコンソール送受信制御部220と、このコンソール送受信制御部220により制御され同時通信可能な5台のコンソール送受信機96a〜96eとから構成される。
【0046】
コンソール送受信機96は、共通のアンテナ224と、アンテナ共用器226a〜226eと、受信部228と、送信部230と、搬送周波数f1〜f5とするためのシンセサイザ231a〜231eとを備える。
【0047】
コンソール送受信制御部220は、カセッテ選択部232とカセッテ選択表234とを備える。
【0048】
図6は、コンソール送受信制御部220のメモリにテーブルとして記憶されているカセッテ選択表(送受信機選択表又は搬送周波数選択表)234の内容を説明する表図である。
【0049】
図6から分かるように、カセッテ24a〜24eに対し、それぞれ搬送周波数fx(fx=f1〜f5)が割り当てられ、さらに、上り(カセッテ送受信機48からコンソール送受信機96への通信方向)と、下り(コンソール送受信機96からカセッテ送受信機48への通信方向)とで微小周波数±Δf分、周波数が変更されるように設定されている。このように設定すれば、各搬送周波数fx(fx=f1〜f5)でいわゆる周波数多重分割方式による同時通信が可能となり、かつ各搬送周波数fxの上りと下りとで、図1に示した5つのカセッテ24a〜24eとの同時通信及び個別通信が可能になる。
【0050】
図5において、コンソール送受信機96の受信部228は、アンテナ224により受波した電波(RF信号)をアンテナ共用器226を介して受信し中間周波信号(IF信号)にした後復調し受信データとしてコンソール送受信制御部220に出力する。復調された受信データには、放射線画像情報が含まれる。
【0051】
コンソール送受信制御部220からの情報は、送信部230、アンテナ共用器226、及びアンテナ224を介してカセッテ24に送信される。
【0052】
カセッテ送受信機48(48a〜48e)は、それぞれ、マイクロコンピュータを備えるカセッテ送受信制御部202と、アンテナ203と、アンテナ共用器205と、受信部208と、送信部210と、シンセサイザ212とを備える。
【0053】
カセッテ送受信機48a〜48eのシンセサイザ212a〜212eには、それぞれ搬送周波数f1〜f5が予め設定されている。
【0054】
受信部208は、アンテナ203により受波した電波(RF信号)をアンテナ共用器205を介して受信し中間周波信号(IF信号)にした後復調し受信データとしてカセッテ送受信制御部202に出力する。送信部210は、画像メモリ82(図4参照)から読み出されたデータ(放射線画像情報)を変調しIF信号からRF信号の送信信号に変換する。変換された送信信号は、アンテナ共用器205及びアンテナ203を介し送信電波(放射線画像情報を含む電波)として送信される。
【0055】
なお、カセッテ送受信機48a〜48eの各アンテナ共用器205には、それぞれ送信側(上り方向)に中心周波数f1+Δf〜f5+Δfの帯域通過フィルタ(BPF)が組み込まれ、受信側(下り方向)に中心周波数f1−Δf〜f5−Δfの帯域通過フィルタ(BPF)が組み込まれている。一方、コンソール送受信機96a〜96eの各アンテナ共用器205には、それぞれ受信側(上り方向)に中心周波数f1+Δf〜f5+Δfの帯域通過フィルタ(BPF)が組み込まれ、送信側(下り方向)に中心周波数f1−Δf〜f5−Δfの帯域通過フィルタ(BPF)が組み込まれている。
【0056】
放射線画像撮影システム110が適用されたこの実施形態に係る放射線画像情報撮影システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について図7に示すフローチャートをも参照して説明する。
【0057】
放射線画像撮影システム10は、手術室12に設置されており、例えば、医師18による患者14の手術中において、放射線画像の撮影が必要となった際に使用される。そのため、撮影対象である患者14の患者情報は、撮影に先立ち、コンソール28の患者情報管理部102に予め登録しておく。また、撮影部位や撮影方法が予め決まっている場合には、これらの撮影条件を撮影条件管理部98に予め登録しておく。
【0058】
以上の準備作業が終了した状態において、患者14に対する手術が実施される。
【0059】
手術中において放射線画像の撮影を行う場合、医師18又は担当する放射線技師は、患者14と手術台16との間の所定位置に、照射面36を撮影装置22側とした状態で選択したカセッテ24(ここでは、長尺なカセッテ24e)を設置する。
【0060】
次いで、医師18又は担当する放射線技師は、選択したカセッテ24eのコンソール28への入力(登録)操作を行う。
【0061】
カセッテ24eを選択する入力操作が行われたとき、カセッテ24eを選択する入力操作が行われたことがコンソール28のカセッテ情報管理部104からコンソール送受信制御部220のカセッテ選択部232に伝えられる。
【0062】
このようにしてステップS11において所望のカセッテ24eが選択されたことをカセッテ選択部232が認識すると、ステップS12において、カセッテ選択表234を参照し、使用するコンソール送受信機96、ここではコンソール送受信機96eを選択し、コンソール送受信機96eにのみ電力を供給する。
【0063】
次いで、カセッテ選択部232は、ウェイクアップ信号(起動信号)をコンソール送受信機96eから搬送周波数f5−Δfの無線電波で送信する。
【0064】
この搬送周波数f5−Δfの無線電波は、カセッテ送受信機48a〜48e中、カセッテ送受信機48eのアンテナ203、アンテナ共用器205を通じてのみ受信され、カセッテ送受信機48eの受信部208で復調され、ステップS1において、カセッテ送受信制御部202で自己のウェイクアップ信号を受信したことを認識する。
【0065】
ウェイクアップ信号を認識したカセッテ送受信制御部202は、ステップS2において、切替信号Ssにより電源スイッチ45をオフ状態からオン状態に切り替える。
【0066】
これにより、バッテリ44からの電力がカセッテ送受信機48の送信部210の他、放射線検出器40、及びカセッテ制御部46に供給されカセッテ24eの電源がオン状態とされる。
【0067】
次いで、ステップS3において、電源スイッチ45がオフ状態からオン状態に切り替えられたことをカセッテ送受信機48eからコンソール送受信機96eに搬送周波数f5+Δfの無線電波で通知する。
【0068】
ステップS14において、カセッテ24eの電源がオン状態となったことを検出したコンソール送受信機96eからの情報によりコンソール28は、カセッテ24eがスタンバイ状態(放射線画像の検出可能状態)になったことを認識する。
【0069】
次いで、撮影装置22をカセッテ24eに対向する位置に移動させた後、撮影スイッチ72を操作して撮影を行う。
【0070】
撮影装置22の線源制御部78は、コンソール送受信機96、送受信機76を介して、コンソール28の撮影条件管理部98より当該患者14の撮影部位に係る撮影条件を無線通信により取得し、取得した撮影条件に従って放射線源74を制御することにより、所定の線量からなる放射線Xを患者14に照射する。
【0071】
患者14を透過した放射線Xは、カセッテ24eのグリッド38によって散乱線が除去された後、放射線検出器40に照射され、放射線検出器40を構成する各画素50の光電変換層51によって電気信号に変換され、蓄積容量53に電荷として保持される(図3参照)。次いで、各蓄積容量53に保持された患者14の放射線画像情報である電荷情報は、カセッテ制御部46を構成するアドレス信号発生部80からライン走査駆動部58及びマルチプレクサ66に供給されるアドレス信号に従って読み出される。
【0072】
すなわち、ライン走査駆動部58のアドレスデコーダ60は、アドレス信号発生部80から供給されるアドレス信号に従って選択信号を出力してスイッチSW1の1つを選択し、対応するゲート線54に接続されたTFT52のゲートに制御信号Vonを供給する。一方、マルチプレクサ66のアドレスデコーダ68は、アドレス信号発生部80から供給されるアドレス信号に従って選択信号を出力してスイッチSW2を順次切り替え、ライン走査駆動部58によって選択されたゲート線54に接続された各画素50の蓄積容量53に保持された電荷情報である放射線画像情報を信号線56を介して順次読み出す。
【0073】
放射線検出器40の選択されたゲート線54に接続された各画素50の蓄積容量53から読み出された放射線画像情報は、各増幅器62によって増幅された後、各サンプルホールド回路64によってサンプリングされ、マルチプレクサ66を介してA/D変換器70に供給され、デジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された放射線画像情報は、カセッテ制御部46の画像メモリ82に一旦記憶される。
【0074】
同様にして、ライン走査駆動部58のアドレスデコーダ60は、アドレス信号発生部80から供給されるアドレス信号に従ってスイッチSW1を順次切り替え、各ゲート線54に接続されている各画素50の蓄積容量53に保持された電荷情報である放射線画像情報を信号線56を介して読み出し、マルチプレクサ66及びA/D変換器70を介してカセッテ制御部46の画像メモリ82に記憶させる。
【0075】
画像メモリ82に記憶された放射線画像情報は、ステップS4において、画像メモリ82から読み出され、カセッテ送受信機48eを介して搬送周波数f5+Δfでの無線通信によりコンソール28に送信される。
【0076】
コンソール28に送信された放射線画像情報は、ステップS15において、搬送周波数f5+Δfが受信部228に設定されているコンソール送受信機96eによって受信され、画像処理部100において所定の画像処理が施された後、患者情報管理部102に登録されている患者14の患者情報と関連付けられた状態で画像メモリ101に記憶される。
【0077】
次いで、画像処理の施された放射線画像情報は、コンソール送受信機96から表示装置26に送信される。受信機90によって放射線画像情報を受信した表示装置26は、表示制御部92によって表示部94を制御し、放射線画像を表示部94に表示する。
【0078】
なお、放射線画像情報の送信が終了したことがステップS4において確認されると、カセッテ送受信制御部202は、スイッチ制御信号Ssにより電源スイッチ45をオン状態からオフ状態に切り替える。この操作により、カセッテ24eが、電源スイッチ45がオン状態である待機状態(一定電力を消費している状態)で放置されることが防止され、バッテリ44の一層の省電力化を促進することができる。
【0079】
以上のようにこの発明の一実施形態に係る放射線画像撮影システム10は、患者14を透過した放射線Xを検出し、放射線画像情報に変換する放射線検出器40、変換された前記放射線画像情報を記憶する画像メモリ82、及び画像メモリ82に記憶された前記放射線画像情報を無線通信によって外部に送信しそれぞれが異なる搬送周波数f1〜f5を有するカセッテ送受信機48a〜48eを備える複数のカセッテ24a〜24eと、複数のカセッテ24a〜24e中、所望のカセッテ24eと無線通信を行うための搬送周波数f5を選択可能なコンソール送受信機96a〜96eを有するコンソール28と、を備える。
【0080】
この実施形態によれば、カセッテ24a〜24eに搭載されるカセッテ送受信機48a〜48eの搬送周波数fxを異なる周波数f1〜f5としているので、コンソール送受信機96の搬送周波数fxを所望のカセッテ24eの搬送周波数f5に選択することにより、複数のカセッテ24a〜24e中、所望のカセッテ24のみと無線通信を行うことができる。
【0081】
この場合、複数のカセッテ24a〜24eは、電源スイッチ45と、スリープ・ウェイクアップ機能を有し、電源スイッチ45がオフ状態であるときにスリープ状態となり、スリープ状態にあるとき、自己の搬送周波数fxによるウェイクアップ信号(起動信号)を受信するとウェイクアップして電源スイッチ45をオン状態にするように構成しているので、カセッテ24a〜24eの待機時の消費電力を抑制することができる。
【0082】
また、電源スイッチ45がオン状態とされている場合に、カセッテ24eからコンソール28に対して前記放射線画像情報の送信が終了したとき、カセッテ24eが、電源スイッチ45をオフ状態にしてスリープ状態に切り替えるようにしているので、一層、消費電力を抑制することができる。
【0083】
このように、この実施形態によれば、カセッテ24に搭載されるカセッテ送受信機48a〜48eの搬送周波数fxを異なる周波数f1〜f5としているので、コンソール28のコンソール送受信機96の搬送周波数fxを搬送周波数fx=f5に選択することで、コンソール28により複数のカセッテ24a〜24e中、所望のカセッテ34eと無線通信を行うことができる。
【0084】
図8は、他の実施形態の構成を示している。この図8例では、長尺なカセッテ24eが何らかの理由で使用できない場合、短尺のカセッテ24a、24bを特許文献2に示したように、一部分重複して並べて使用に供している。
【0085】
この場合、コンソール28の操作によりカセッテ24a、24bを使用することが選択されると、カセッテ選択部232は、カセッテ選択表234を参照して、コンソール送受信機96aとコンソール送受信機96bに電源を供給してスタンバイさせる。
【0086】
そうすると、ステップS13で説明したように、コンソール送受信機96a、96bから搬送周波数f1−Δf、f2−Δfで略同時に(同期している必要はない。すなわち相互に非同期で)送信されたウェイクアップ信号が、カセッテ送受信機48a、48bで略同時に受信され、それぞれの電源スイッチ45をオン状態とする。
【0087】
以下、放射線画像が撮影され、それぞれの画像メモリ82に放射線画像が記憶されると、画像メモリ82に記憶された放射線画像情報は、ステップS4で示したように、画像メモリ82から読み出され、カセッテ送受信機48a、48bを介して搬送周波数f1+Δf、f2+Δfでの無線通信(周波数分割多重通信)によりコンソール28に同時に(同期している必要はない。すなわち相互に非同期で)送信される。
【0088】
コンソール28に送信された放射線画像情報は、ステップS15と同様に、搬送周波数f1+Δf、f2+Δfが受信部228に設定されているコンソール送受信機96a、96bによって同時に受信され、画像処理部100において2つの放射線画像が画像処理により精度よく位置合わせされる。そして、さらに所定の画像処理が施された後、患者情報管理部102に登録されている患者14の患者情報と関連付けられた状態で画像メモリ101に記憶される。
【0089】
次いで、画像処理の施された放射線画像情報は、コンソール送受信機96から表示装置26に送信される。受信機90によって放射線画像情報を受信した表示装置26は、表示制御部92によって表示部94を制御し、放射線画像を表示部94に表示する。
【0090】
なお、放射線画像情報の送信が終了したことがステップS6と同様に確認されると、カセッテ送受信制御部202は、スイッチ制御信号Ssにより電源スイッチ45をオフ状態に切り替える。この操作により、カセッテ24a、24bが電源スイッチ45がオン状態である待機状態(一定電力を消費している状態)で放置されることが防止されるので、バッテリ44の一層の省電力化が促進される。
【0091】
なお、変形例として、図9に示すような臓器移植手術処理中に、患者14、14aの放射線画像情報をカセッテ24e、24cのカセッテ送受信機48e、48cからコンソール28のコンソール送受信機96a、96cで同時送受信することもできる。
【0092】
さらにカセッテ送受信機48の変形例として、図10に示すように、アンテナ共用器205a〜205dを並列的に接続し、さらに搬送周波数切替スイッチ250を設けたカセッテ送受信機48´をカセッテ24に組み込むことにより、搬送周波数切替スイッチ250の切替によりカセッテ24の搬送周波数fxを切り替えることもできる。
【0093】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0094】
例えば、カセッテ24に収容される放射線検出器40は、入射した放射線Xの線量を光電変換層51によって直接電気信号に変換するものであるが、これに代えて、入射した放射線Xをシンチレータによって一旦可視光に変換した後、この可視光をアモルファスシリコン(a−Si)等の固体検出素子を用いて電気信号に変換するように構成した放射線検出器を用いてもよい(特許第3494683号公報参照)。
【0095】
また、光変換方式の放射線検出器を利用して放射線画像情報を取得することもできる。この光変換方式の放射線検出器では、マトリクス状に配列された各固体検出素子に放射線が入射すると、その線量に応じた静電潜像が固体検出素子に蓄積記録される。静電潜像を読み取る際には、放射線検出器に読取光を照射し、発生した電流の値を放射線画像情報として取得する。なお、放射線検出器は、消去光を放射線検出器に照射することで、残存する静電潜像である放射線画像情報を消去して再使用することができる(特開2000−105297号公報参照)。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】この実施形態に係る放射線画像撮影システムが設置された手術室の説明図である。
【図2】放射線検出カセッテの内部構成図である。
【図3】放射線検出器の回路構成ブロック図である。
【図4】放射線画像撮影システムの構成ブロック図である。
【図5】放射線画像情報送受信システムの構成ブロック図である。
【図6】カセッテ選択表の内容を説明する表図である。
【図7】この実施形態に係る放射線画像撮影システムが適用された放射線画像撮影システム動作説明に供されるフローチャートである。
【図8】複数のカセッテとコンソールとの間の多重通信の説明図である。
【図9】移植手術における多重通信の説明図である。
【図10】搬送波周波数の切換可能なカセッテの説明図である。
【符号の説明】
【0097】
10…放射線画像撮影システム
24(24a〜24e)…カセッテ
40…放射線検出器
45…電源スイッチ
48(48a〜48e)…カセッテ送受信機
82…画像メモリ
96(96a〜96e)…コンソール送受信機
110…放射線画像情報送受信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像情報に変換する放射線変換パネルと、変換された前記放射線画像情報を記憶する画像メモリと、前記画像メモリに記憶された前記放射線画像情報を無線通信によって外部に送信しそれぞれが異なる搬送周波数を有する第1送受信機を備える複数のカセッテと、
前記複数のカセッテ中、所望のカセッテと無線通信を行うために前記搬送周波数を選択可能な第2送受信機を有する外部制御装置と、を備える
ことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像撮影システムにおいて、
前記外部制御装置と前記複数のカセッテとが、周波数多重分割多重方式により同時通信を行う
ことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項3】
請求項1記載の放射線画像撮影システムにおいて、
前記複数のカセッテは、さらに、電源スイッチと、スリープ・ウェイクアップ機能を有し、前記電源スイッチがオフ状態であるときにスリープ状態となり、スリープ状態にあるとき、自己の搬送周波数による起動信号を受信するとウェイクアップして前記電源スイッチをオン状態にする
ことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項4】
請求項3記載の放射線画像撮影システムにおいて、
前記カセッテから前記外部制御装置に対して前記放射線画像情報の送信が終了したとき、前記カセッテは、前記電源スイッチをオフ状態にしてスリープ状態になる
ことを特徴とする放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−45150(P2009−45150A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212242(P2007−212242)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】