説明

放射線画像撮影方法および装置

【課題】放射線画像検出器や放射線源の振動によって発生するアーチファクトなどの影響を適切に抑制し、より診断に適した再構成画像を提供する。
【解決手段】撮影方向毎の放射線の照射の際における放射線源および放射線画像検出器のうちの少なくとも一方の振動を示す情報を検出し、その検出した振動を示す情報に基づいて、再構成画像のボクセル解像度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出器を被写体の周りを周回させることによって、所定の回転角度毎の放射線画像信号を取得し、その回転角度毎の放射線画像信号に基づいて被写体の3次元の再構成画像を生成する放射線画像撮影方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線源と放射線画像検出器とを被験者を中心として対向させて配置し、これらの組を被験者を中心として周回させて、様々な角度から放射線を照射して放射線画像を撮像し、その各角度の放射線画像を用いて断層画像を再構成して任意断面を表示する放射線CT画像撮影システムや、同様に複数方向から撮影を行って断層画像を生成するトモシンセシス画像撮影システムといった放射線断層画像撮影システムが臨床で広く利用されている。
【0003】
ここで、上記のような放射線CT画像撮影システムやトモシンセシス画像撮影システムにおいては、より画質のよい放射線断層画像を取得するために角度分解能をあげることが望まれるが、角度分可能をあげると撮影枚数の増加につながるため、患者の拘束時間、息止め時間などによって現実的に制約された撮影時間内で撮影するためにはより高速に撮影する必要がある。
【0004】
また、厚い被写体を撮影する場合など高線量で撮影を行う際には、被写体のボケを少なくするため、放射線源の管電流を大きくし、曝射時間を短くして高速に撮影を行う必要がある。また、診断効率の観点からもより高速に撮影を行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−34450号公報
【特許文献2】特開昭59−200634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように高速な撮影を行う場合、放射線源および放射線画像検出器を高速回転させる必要があるが、機械的な回転機構の精度によっては放射線源や放射線画像検出器が振動してしまう場合があり、この振動によってモーションアーチファクトが発生し、画質の低下を招くことになる。
【0007】
また、放射線源や放射線画像検出器を高速回転させた場合に限らず、外的な要因によって放射線源や放射線画像検出器が振動してしまう場合もある。
【0008】
なお、特許文献1には、被験者に対する放射線源および放射線画像検出器の回転中心位置の位置ずれを検出し、その位置ずれ量に基づいて補正を施すことが開示されているが、上述したような放射線源や放射線画像検出器の振動に起因するモーションアーチファクトについては何の提案もされていない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、放射線画像検出器や放射線源の振動によって発生するモーションアーチファクトの影響を適切に抑制することができ、より診断に適した再構成画像を提供することができる放射線画像撮影方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射線画像撮影方法は、放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器および放射線源を被写体に対して相対的に移動させるとともに、複数の撮影方向毎に放射線を被写体へ照射することによって撮影方向毎の放射線画像信号を取得し、その撮影方向毎の放射線画像信号に基づいて被写体の3次元の再構成画像を生成する放射線画像撮影方法において、撮影方向毎の放射線の照射の際における放射線源および放射線画像検出器のうちの少なくとも一方の振動を示す情報を検出し、その検出した振動を示す情報に基づいて、再構成画像のボクセル解像度を設定することを特徴とする。
【0011】
本発明の放射線画像撮影装置は、放射線を射出する放射線源と、放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器と、放射線源および放射線画像検出器のうちの少なくとも一方を被写体に対して相対的に移動させる移動機構部と、複数の撮影方向毎の放射線の被写体への照射によって放射線画像検出器から出力された撮影方向毎の放射線画像信号を取得し、撮影方向毎の放射線画像信号に基づいて被写体の3次元の再構成画像を生成する再構成部とを備えた放射線画像撮影装置において、撮影方向毎の放射線の照射の際における放射線源および放射線画像検出器のうちの少なくとも一方の振動を示す情報を検出する振動検出部と、振動検出部により検出された振動を示す情報に基づいて、再構成画像のボクセル解像度を設定する解像度設定部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、解像度設定部を、振動検出部により検出された振動を示す情報の大きさに基づいて、再構成画像のボクセル解像度の大きさを設定するものとすることができる。
【0013】
また、解像度設定部を、振動検出部により検出された振動を示す情報が大きいほどボクセル解像度が低くなるように設定するものとすることができる。
【0014】
また、放射線画像検出器として多数の画素から構成されるものを用いるとともに、複数の画素の電荷信号を加算して読み出すビニング読出しを行う読出制御部を設け、読出制御部を、解像度設定部において設定されたボクセル解像度に基づいて、ビニング読出しの際に加算する画素の数を設定するものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放射線画像撮影方法および装置によれば、撮影方向毎の放射線の照射の際における放射線源および放射線画像検出器のうちの少なくとも一方の振動を示す情報を検出し、その検出した振動を示す情報に基づいて、再構成画像のボクセル解像度を設定するようにしたので、たとえば、振動を示す情報が大きい場合にその振動量に応じてボクセル解像度を大きくするようにすれば、放射線画像検出器や放射線源の振動によって発生するモーションアーチファクトの影響を適切に抑制することができ、より診断に適した再構成画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムの概略構成図
【図2】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムにおける放射線検出部とコンピュータの内部構成を示すブロック図
【図3】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態の作用を説明するためのフローチャート
【図4】撮影装置を模式的に示した図
【図5】振動検出部によって検出される振動量の一例を示す図
【図6】u軸オフセット量を説明するための図
【図7】被写体に2ボクセルから16ボクセルの振動を与えた際の再構成画像のシミュレーション結果を示す図
【図8】被写体に振動を与えなかった場合の再構成画像のシミュレーション結果を示す図
【図9】z方向の正の方向についてのみボクセル解像度を下げた場合の一例を示す図
【図10】z方向の正方向とx方向およびy方向の正と負の方向についてボクセル解像度を下げた場合の一例を示す図
【図11】本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムの内部構成を示すブロック図
【図12】本発明の放射線画像撮影装置のその他の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムの内部構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムについて説明する。まず、本放射線CT画像撮影システム全体の概略構成について説明する。図1は、本放射線CT画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【0018】
本放射線CT画像撮影システムは、図1に示すように、被験者Pの放射線画像の撮影を行なう撮影装置1と、被験者Pを支持するための支持台であるベッド22と、撮影装置1に接続され、撮影装置1の制御を行うとともに、撮影により得られた放射線画像信号の処理を行うコンピュータ30と、このコンピュータ30に接続されたモニタ31とを備えている。
【0019】
撮影装置1は、円錐状の放射線を射出する放射線源10、放射線源10から射出された放射線を検出する放射線検出部11、放射線源10および放射線検出部11が端部にそれぞれ対向して設けられ、これらを保持するCアーム12と、このCアーム12を回転させる回転駆動部15と、回転駆動部15を保持するアーム20と備えている。
【0020】
Cアーム12は、回転駆動部15に対して、回転軸Cの周りに360°回転可能に取り付けられている。また、アーム20は可動部20aを備えるとともに、天井に対して移動可能に設置された基部21に保持されている。そして、Cアーム12は、基部21を移動させることによって撮影室内において広範の位置に移動可能であるとともに、アーム20の可動部20aを可動させることによって回転方向(回転軸角度)も変更可能に構成されている。
【0021】
放射線源10と放射線検出部11とは回転軸Cを間に挟んで対向配置されており、放射線CT画像撮影を行うときには、回転軸C、放射線源10、放射線検出部11の互いの位置関係は固定された状態で、Cアーム12が回転駆動部15によって180°〜360°回転させられる。
【0022】
図2に、放射線検出部11とコンピュータ30の内部の概略構成を示すブロック図を示す。
【0023】
放射線検出部11は、図2に示すように、被験者Pを透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、被験者Pの放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器11aと、放射線画像検出器11aから出力された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施す信号処理部11bと、放射線画像検出器11aの振動を検出する振動検出部11cとを備えている。
【0024】
放射線画像検出器11aは、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0025】
信号処理部11bは、放射線画像検出器11aから読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプなどからなるアンプ部や、アンプ部から出力された電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などを備えている。
【0026】
振動検出部11cは、放射線画像検出器11aに放射線が照射された際における放射線画像検出器11aの振動を検出するものである。なお、ここでの放射線画像検出器11aの振動とは、放射線画像検出器11aの移動から既知である回転移動を除く揺動現象のことをいう。
【0027】
そして、振動検出部11cとしては、放射線画像検出器11aの振動を検出できるものであれば如何なるものでも良いが、たとえば、レーザー変位センサ、接触式センサ、超音波センサなどを用いることができる。また、接触式センサとしては、圧電式加速度型、動電式加速度型、サーボ式加速度型、ピエゾ抵抗型などのセンサを用いることができる。また、光学式に検出するものとしては、レーザードップラーを用いた変位センサを用いるようにしてもよい。
【0028】
また、振動検出部11cとしては、3次元空間におけるx方向、y方向およびz方向の3方向についての振動を検出可能な構成とすることが望ましく、本実施形態においては、このような構成を採用するものとする。
【0029】
コンピュータ30は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、再構成部30a、表示信号生成部30b、振動量取得部30c、解像度設定部30dおよび撮影制御部30eが構成されている。
【0030】
再構成部30aは、各回転角度の放射線画像信号に基づいて、被験者Pの3次元の放射線画像を表す放射線CT画像信号を再構成するものである。ここで、本実施形態における再構成部30aは、解像度設定部30dにおいて設定されたボクセル解像度に応じて、再構成画像を生成する際のボクセル解像度を変更するものである。その作用については後で詳述する。
【0031】
表示信号生成部30bは、再構成部30aから出力された放射線CT画像信号に基づいて表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ31に出力するものである。
【0032】
振動量取得部30cは、振動検出部11cによって検出された信号に基づいて、各回転角度の放射線の照射の際における放射線画像検出器11aの振動量を取得するものである。なお、上記振動量を取得する方法については後で詳述する。
【0033】
解像度設定部30dは、振動量取得部30cにより取得された放射線画像検出器11aの振動量に基づいて、再構成部30aにおいて再構成する際に用いられるボクセル解像度を設定するものである。なお、ボクセル解像度の設定方法については後で詳述する。
【0034】
撮影制御部30eは、回転駆動部15によるCアーム12の回転の速度と、放射線源10から射出される放射線の照射タイミングとを駆動制御するものである。
【0035】
次に、本放射線CT画像撮影システムの作用について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0036】
まず、被験者Pをベッド22上に横たわらせ、被験者Pの体の略中心を回転軸Cとして、この回転軸Cを挟んで放射線源10と放射線検出部11とが対称位置に配されるようにCアーム12の位置決めが行なわれる。Cアーム12の移動は、使用者によるコンピュータ30の操作に基づいて行なわれる。
【0037】
そして、胃、肺、頭部、乳房といった撮影対象の情報が、使用者によって所定の入力部を用いて入力され、その撮影対象の情報は撮影制御部30eに入力される(S10)。
【0038】
そして、撮影制御部30eには、種々の撮影対象に対して、FOV(Field of View)の半径、回転角度、撮影枚数、再構成する際のボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)および撮影条件が対応づけられたテーブルが予め設定されている。FOVの半径とは、撮影対象の大きさに応じて定められた撮影視野の半径のことである。
【0039】
また、撮影条件としては、たとえば、放射線源10のターゲットやフィルタの種類、放射線源10の管電圧、mAs値、露光時間などがあり、これらの条件も撮影対象の種類に応じてそれぞれ予め設定されるものである。なお、このとき設定されるボクセル解像度は、撮影対象の種類などに応じて必要とされると予測されるボクセル解像度のことである。たとえば、細かく見たい乳房ではボクセル解像度は高く設定され、細かく見る必要のない、肺、骨、消化器系、循環器系、等ではボクセル解像度は低めに設定される。また、ボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)とは、再構成を行う際の各方向の1ボクセルのサイズである。
【0040】
また、撮影対象だけでなく、拡大メニューなどの撮影目的に応じた撮影条件を予め設定するようにしてもよい。具体的には、たとえば、被検者の検診目的の場合には、FOVを広げてボクセル解像度を低めに設定し、被検者の診断目的の場合には、FOVを狭めて対象部位だけを拡大するようにし、ボクセル解像度は高めに設定するようにしてもよい。
【0041】
そして、撮影制御部30eは、撮影対象の入力に応じて、その撮影対象に対応するFOVの半径、回転角度、撮影枚数、およびボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)および撮影条件を取得し、これらをモニタ31に表示させる(S12,S14,S16)。
【0042】
そして、このモニタ31に表示されたFOVの半径、回転角度、撮影枚数、およびボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)および撮影条件が使用者によって確認され、その内容で撮影を行うか否かが判断される。そして、モニタ31に表示された内容を変更したいと使用者が判断した場合には(S18,NO)、所定の入力部において、FOVの半径、回転角度、撮影枚数、およびボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)および撮影条件の少なくとも1つが手動で入力され、その変更後の値が再びモニタ31に表示される(S20,S16)。
【0043】
そして、S18において、モニタ31に表示された条件で撮影を行うと使用者により判断された場合には、使用者により撮影ボタン(図示省略)が押下されて撮影開始指示が入力される(S18,YES、S22)。
【0044】
そして、使用者により撮影開始指示が入力されると、撮影制御部30eは、上述したように設定入力されたFOVの半径、回転角度、撮影枚数および撮影条件に基づいて、回転駆動部15および放射線源10に制御信号を出力してこれらを駆動制御し、放射線画像の撮影が開始される(S24)。
【0045】
具体的には、入力された制御信号に基づいて回転駆動部15によってCアーム12が回転させられ、被験者Pを通る回転軸Cの回りに放射線源10と放射線検出部11とが一体的に回転させられ、回転速度が一定速度になった時点から入力された制御信号に基づいて放射線源10から放射線が射出される。
【0046】
そして、上述したようにして決定したCアーム12の回転角度毎に、被験者Pを通った円錐状放射線の放射線画像検出器11aへの曝射と放射線画像検出器11aに記録された電荷信号の読出しとが行われ、被験者Pを互いに異なる角度から撮影した複数の放射線画像信号が順次読み出される。なお、Cアーム12は、回転角度毎に停止することなく、設定された回転速度で連続的に回転するものである。また、各回転角度を加算した全回転角度の範囲は、180度に円錐状放射線のコーン角度を加えて約200度以上に設定することが望ましい。
【0047】
そして、上述したように読み出された放射線画像信号は、信号処理部11bのアンプ部において電圧信号に変換され、AD変換部においてデジタル信号に変換された後、コンピュータ30の再構成部30aに出力される。
【0048】
一方、上述したような回転角度毎の放射線画像の撮影を行いながら、これと並行して振動検出部11cによって放射線画像検出器11aの振動が検出される(S24)。
【0049】
具体的には、振動検出部11cにはx方向、y方向およびz方向が予め設定されており、それぞれの方向についての放射線画像検出器11aの振動量が振動検出部11cによって検出される。なお、この振動検出部11cに設定されるx方向、y方向およびz方向は、再構成部30aにおいて放射線CT画像信号を生成する際に用いられる座標軸であるx方向、y方向およびz方向と同じ方向に設定されているものとする。
【0050】
ここで、図1に示した放射線CT画像撮影システムの撮影装置1と被験者Pとの関係を模式的に示した図を図4に示す。図4に示すように装置が構成されている場合、振動検出部11cにおいて検出される振動量は、図5の太線の波形で示されるような既知の放射線画像検出器11aの回転移動量に対して、図5の細線の波形で示されるような振動が重畳されたものとなる。
【0051】
そして、図5で示されるような、振動検出部11cにより検出されたx方向、y方向およびz方向の振動量は、コンピュータ30の振動量取得部30cによって取得される。なお、振動検出部11cから振動量取得部30cへの振動量の出力は、無線信号で出力するようにしてもよいし、有線を介して出力するようにしてもよい。
【0052】
そして、全ての回転角度での放射線画像の撮影と振動量の取得が完了した後(S26)、振動量取得部30cは、図5に示されるようなx方向、y方向およびz方向についての振動量に基づいて、各方向についての振動量の最大振動振幅(Ax,Ay,Az)を算出する。Axはx方向についての最大振動振幅、Ayはy方向についての最大振動振幅、Azはz方向についての最大振動振幅である(S28)。
【0053】
具体的には、振動量取得部30cは、図5に示される振動量から既知の放射線画像検出器11aの回転移動量(太線)を差し引いて、角度毎についてax(θ)、ay(θ)、az(θ)を算出する。なお、ax(θ)は、図5の拡大図に示すように、振動量(細線)から回転移動量(太線)を減算して2倍したものである。ay(θ)、az(θ)についても同様にして取得される。
【0054】
そして、ax(θ)の最大値がx方向についての最大振動振幅Axとして取得され、ay(θ)の最大値がy方向についての最大振動振幅Ayとして取得され、az(θ)の最大値がz方向についての最大振動振幅Azとして取得される。
【0055】
次に、振動量取得部30cにおいて取得された最大振動振幅(Ax,Ay,Az)は、解像度設定部30dに出力される。そして、解像度設定部30dは、S18において使用者によって撮影開始と判断された際のボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)と、入力された最大振動振幅(Ax,Ay,Az)とを比較し、Δx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たしているか否かを判定する(S30)。
【0056】
そして、S30において、Δx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たしていると判定された場合には、解像度設定部30dは、S18において使用者によって撮影開始と判断された際のボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を再構成部30aに出力する。
【0057】
一方、S30において、Δx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たしていないと判定された場合には、解像度設定部30dは、Δx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たすようなボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を再設定し、その再設定したボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を再構成部30aに出力する。すなわち、解像度設定部30dは、最大振動振幅(Ax,Ay,Az)が大きいほどボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)が大きくなるように設定する。なお、ボクセル解像度が大きいとはボクセルサイズが大きいことを意味し、すなわちボクセル解像度が低いことを意味し、ボクセル解像度が小さいとはボクセルサイズが小さいことを意味し、すなわちボクセル解像度が高いことを意味する。
【0058】
そして、再構成部30aは、入力された各回転角度の放射線画像信号に基づいて、3次元の放射線CT画像を表す放射線CT画像信号を再構成するが、このとき解像度設定部30dから出力されたボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を用いて放射線CT画像信号を生成し、その放射線CT画像信号を表示信号生成部30bに出力する(S32)。なお、再構成の方法としては、統計的手法でも解析的手法でも如何なる手法を用いてもよいが、画像の解析速度が速いFBP法(Filter Back Projection法)を用いることが好ましい。
【0059】
そして、表示信号生成部30bは、入力された放射線CT画像信号に基づいて表示制御信号を生成してモニタ31に出力する。そして、モニタ31は、入力された表示制御信号に基づいて被験者Pの3次元の放射線CT画像を表示する。
【0060】
ここで、本実施形態においては、上述したようにΔx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たすようにボクセル解像度を設定している。以下に、この数式を満たすようにボクセル解像度を設定する理由について説明する。
【0061】
まず、放射線画像検出器11aの振動による放射線CT画像のアーチファクトの影響を調べるための実験を行った。具体的には、直径が100μmのセラミックス粒子を被写体とし、その被写体を正弦波によって振動させたときのu軸オフセット量を算出し、そのu軸オフセット量を再構成パラメータとして与えた再構成画像をシミュレーション実験によって生成した。なお、u軸オフセット量とは、図6に示すように、被写体のずれ量を放射線画像検出器上に投影した大きさである。したがって、図6におけるずれ量をx1とするとu軸オフセット量はx1cosθとなる。なお、放射線画像検出器11aの振動は、相対的には被写体の振動とみなすことができるので上述したような実験を行っている。
【0062】
図7は、被写体に与える振動の振幅を2ボクセルから16ボクセルまで変化させたときのシミュレーション結果である。なお、比較のため、図8には被写体に振動を与えなかったときのシミュレーション結果を示している。図7に示すように、振幅が2ボクセル(±1ボクセル)を超えるとすじ状のストリークアーチファクトが次第に大きくなって現れていくのがわかる。図7に示すシミュレーション結果から、2ボクセル以下の振動であれば画質として許容できる範囲であることがわかる。すなわち、ボクセル解像度×2≧振動振幅が満たされればよいことがわかる。
【0063】
上述したような実験結果から、Δx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たすようにボクセル解像度を設定することが望ましい。なお、本実施形態においては、ボクセル解像度が最大振幅の1/2倍以上となるようにしたが、より好ましくは1〜2倍程度である。
【0064】
なお、放射線画像検出器11aの振動量が大きいほどボクセル解像度を低くするようにしたのは、ボクセル解像度を落とすとコントラストは低くなるものの、上述した放射線画像検出器11aの振動によるボケの影響およびアーチファクトの影響は小さくなるからである。
【0065】
また、ボクセル解像度の変更は、たとえば、ボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)の少なくとも1つが最大振動振幅の1/2倍より小さい場合に、x方向、y方向およびz方向の全ての方向についてボクセル解像度を低くするようにしてもよいし、もしくは、ボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)のうち、最大振動振幅の1/2倍より小さい方向についてのボクセル解像度のみ低くするようにしてもよい。
【0066】
たとえば、放射線画像検出器11aがz方向の正方向についてのみ振動し、ボクセル解像度Δzがz方向の最大振動振幅の1/2倍よりも小さい場合には、図9に示すようにz方向の正方向についてボクセルの長さを伸ばして、z方向についてのみボクセル解像度を低くするようにしてもよい。なお、図9における紙面鉛直方向がx方向である。
【0067】
または、図10に示すように、z方向については正方向についてのみボクセルの長さを伸ばし、x方向およびy方向については正と負の両方についてボクセルの長さを伸ばしてボクセル解像度を低くするようにしてもよい。すなわち、振動方向と反対の方向のみボクセルの長さを伸ばさないようにしてもよい。
【0068】
次に、本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線CT画像撮影システムについて説明する。第1の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、各回転角度の放射線画像の撮影と並行して放射線画像検出器11aの振動量を検出し、その振動量に基づいて再構成の際のボクセル解像度を設定するようにしたが、第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムは、放射線画像の撮影の前に予備回転を行って放射線画像検出器11aの振動量を検出してその振動量に基づいてボクセル解像度を設定し、放射線画像検出器11aから放射線画像信号を読み出す際に、その設定したボクセル解像度に応じたビニング処理を行うようにしたものである。その具体的な構成を以下に説明する。
【0069】
第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムにおいては、放射線画像検出器11aとして、たとえば、上述したTFT読出方式のものなどビニング読出しが可能な構成のものを用いる。なお、ビニング読出しとは、放射線画像検出器11aを構成する多数の画素の電荷信号を1つ1つ読み出すのではなく、複数の画素の電荷信号をまとめて加算して読み出す方法のことをいう。
【0070】
また、第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムは、図11に示すように、解像度設定部30dにおいて設定されたボクセル解像度を取得し、その取得したボクセル解像度に基づいて、ビニング読出しの際に加算する画素の数を設定する読出制御部30fを備えている。
【0071】
そして、上記第1の実施形態と同様にして、解像度設定部30dにおいて、放射線画像検出器11aの最大振動振幅(Ax,Ay,Az)に基づいてボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)が設定された後は、そのボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)は読出制御部30fに出力される。
【0072】
そして、読出制御部30fは、入力されたボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)に応じたビニング読出しの画素数を設定し、各回転角度の放射線画像信号が放射線画像検出器11aから読み出される際には、その設定した画素数でビニング読出しが行われるように制御する。なお、ボクセル解像度に応じたビニング読出しの画素数とは、ボクセル解像度が大きいほどビニング読出しの画素数を増加させることをいう。
【0073】
第2の実施形態の放射線CT画像撮影システムのようにボクセル解像度に応じてビニング読出しの画素数を設定するようにすれば、第1の実施形態の放射線CT画像撮影システムよりも、よりS/Nの高い放射線画像を取得することができ、放射線画像のデータ量も少なくすることができる。
【0074】
なお、上記実施形態においては、放射線画像検出器11aの振動を検出し、その振動量に応じてボクセル解像度を設定するようにしたが、これに限らず、図12に示すように、放射線源10に振動検出部10aを設け、この振動検出部10aによって放射線源10の振動量を検出し、その振動量に基づいてボクセル解像度を設定するようにしてもよい。ボクセル解像度の設定方法として、上記実施形態と同様に、放射線源10の振動量の最大振動振幅(Ax,Ay,Az)に対して、Δx≧Ax/2、Δy≧Ay/2、Δz≧Az/2を満たすようなボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を設定するようにすればよい。
【0075】
また、放射線画像検出器11aと放射線源10との両方の振動量を検出し、これらの振動量に基づいてボクセル解像度を設定するようにしてもよい。放射線画像検出器11aと放射線源10との両方の振動量を検出する場合には、簡便には、放射線画像検出器11aの振動量の最大振動振幅(Ax,Ay,Az)と放射線源10の振動量の最大振動振幅(Ax’,Ay’,Az’)とを取得し、たとえば、これらの差に基づいて相対的な最大振動振幅(Ax−Ax’,Ay−Ay’,Az−Az’)を取得し、Δx≧(Ax−Ax’)/2、Δy≧(Ay−Ay’)/2、Δz≧(Az−Az’)/2を満たすようなボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を設定するようにすればよい。
【0076】
ただし、所定の回転位置θにおける放射線画像検出器11aと放射線源10の相対位置が画質に影響するため、より厳密には、放射線画像検出器11aの振動量の振動振幅(ax(θ),ay(θ),az(θ))と、同じタイミングで測定される放射線源10の振動量の振動振幅(ax(θ)’,ay(θ)’,az(θ)’)とを取得し、これらの差に基づいて相対的な振動振幅(|ax(θ)−ax(θ)’|,|ay(θ)−ay(θ)’|,|az(θ)−az(θ)’|)を取得することが望ましい。そして、この相対的な振動振幅に基づいて、相対的な振動振幅の最大値(Ax”、Ay”、Az”)を導出し、Δx≧Ax”/2、Δy≧Ay” /2、Δz≧Az” /2を満たすようなボクセル解像度(Δx,Δy,Δz)を設定することが好ましい。
【0077】
また、上記実施形態においては、放射線画像検出器と放射線源との両方を回転させる構成としたが、たとえば、放射線画像検出器を被験者Pの周囲に多数並べて設けるようにした場合には、放射線源のみを回転させればよいことになる。また、逆に、放射線源を被験者Pの周囲に多数並べて設けるようにした場合には、放射線画像検出器のみを回転させればよいことになる。そのような構成の場合でも本発明を適用することができ、放射線画像検出器のみを回転させる構成の場合には放射線画像検出器の振動量を取得し、放射線源のみを回転させる構成の場合には放射線源の振動量を取得し、上記と同様にして振動量に応じたボクセル解像度を設定するようにすればよい。
【0078】
また、上記実施形態は、本発明の放射線画像撮影装置を、被験者の頭部や胸部のCT画像を撮影する放射線CT画像撮影システムに適用したものであるが、被写体はこれらに限らず、たとえば、被験者の乳房のCT画像を撮影する放射線CT画像撮影システムに適用するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態は、本発明の放射線画像撮影装置を放射線CT画像撮影システムに適用したものであるが、これに限らず、同様に被写体に対して相対的に放射線源を移動させて互いに異なる撮影方向から被写体を撮影することによって放射線断層画像を撮影可能なトモシンセシス画像撮影システムなどにも適用可能である。具体的には、たとえば、放射線源の振動量を検出し、その振動量に基づいて、上記と同様にしてボクセル解像度を設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 撮影装置
10 放射線源
10a 振動検出部
11 放射線検出部
11a 放射線画像検出器
11b 信号処理部
11c 振動検出部
12 Cアーム
15 回転駆動部
30 コンピュータ
30a 再構成部
30b 表示信号生成部
30c 振動量取得部
30d 解像度設定部
30d 解像度設定部
30e 撮影制御部
30f 読出制御部
31 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、前記被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器および前記放射線源のうちの少なくとも一方を前記被写体に対して相対的に移動させるとともに、複数の撮影方向毎に前記放射線を前記被写体へ照射することによって前記撮影方向毎の前記放射線画像信号を取得し、該撮影方向毎の放射線画像信号に基づいて前記被写体の3次元の再構成画像を生成する放射線画像撮影方法において、
前記撮影方向毎の前記放射線の照射の際における前記放射線源および前記放射線画像検出器のうちの少なくとも一方の振動を示す情報を検出し、
該検出した振動を示す情報に基づいて、前記再構成画像のボクセル解像度を設定することを特徴とする放射線画像撮影方法。
【請求項2】
放射線を射出する放射線源と、該放射線源から射出され、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、前記被写体の放射線画像を表す放射線画像信号を出力する放射線画像検出器と、前記放射線源および前記放射線画像検出器のうちの少なくとも一方を前記被写体に対して相対的に移動させる移動機構部と、複数の撮影方向毎の前記放射線の前記被写体への照射によって前記放射線画像検出器から出力された前記撮影方向毎の前記放射線画像信号を取得し、該撮影方向毎の放射線画像信号に基づいて前記被写体の3次元の再構成画像を生成する再構成部とを備えた放射線画像撮影装置において、
前記撮影方向毎の前記放射線の照射の際における前記放射線源および前記放射線画像検出器のうちの少なくとも一方の振動を示す情報を検出する振動検出部と、
前記振動検出部により検出された前記振動を示す情報に基づいて、前記再構成画像のボクセル解像度を設定する解像度設定部とを備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記解像度設定部が、前記振動検出部により検出された振動を示す情報の大きさに基づいて、前記再構成画像のボクセル解像度の大きさを設定するものであることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記解像度設定部が、前記振動検出部により検出された振動を示す情報が大きいほど前記ボクセル解像度が低くなるように設定するものであることを特徴とする請求項2または3記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記放射線画像検出器が多数の画素から構成されるものであり、
複数の前記画素の電荷信号を加算して読み出すビニング読出しを行う読出制御部を備え、
該読出制御部が、前記解像度設定部において設定されたボクセル解像度に基づいて、前記ビニング読出しの際に加算する画素の数を設定するものであることを特徴とする請求項2から4いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−40073(P2012−40073A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181783(P2010−181783)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】