説明

放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、プログラムおよび放射線画像撮影方法

【課題】放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することのできる放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、プログラムおよび放射線画像撮影方法を得る。
【解決手段】放射線検出用画素32Aにバイアス電圧が印加された第1状態で当該放射線検出用画素32Aにより検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で放射線検出用画素32Aに印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、プログラムおよび放射線画像撮影方法に係り、特に、撮影対象部位を透過した放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、プログラムおよび放射線画像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置が実用化されている。なお、この放射線画像撮影装置に用いられる放射線検出器には、放射線を変換する方式として、放射線をシンチレータで光に変換した後にフォトダイオード等の半導体層で電荷に変換する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等があり、各方式でも半導体層に使用可能な材料が種々存在する。
【0003】
ところで、この種の放射線画像撮影装置では、当該放射線画像撮影装置自身によって放射線の照射開始や照射停止、照射量等を検出することができれば、放射線画像撮影装置および放射線源等を統括的に制御する撮影制御装置(所謂コンソール)と放射線源との接続を行う必要がなくなるため、システム構成を簡略化したり、撮影制御装置による制御を簡略化したりするうえで好ましい。
【0004】
この種の放射線の照射状態を検出することのできる放射線画像撮影装置に関する技術として、特許文献1には、入射する放射線を可視光に変換する蛍光体と、前記可視光を電気信号に変換する第1の光電変換素子と該第1の光電変換素子からの電気信号の出力動作を切り換えるスイッチング素子とを含む画素を基板上に複数有してなる画素エリアを含み、前記第1の光電変換素子から出力される電気信号に基づいて画像情報が生成される放射線画像撮影装置であって、前記放射線の入射量を検出するための第2の光電変換素子を有し、前記スイッチング素子および前記第2の光電変換素子は、前記画素エリア内において前記基板と前記第1の光電変換素子との間に配置されていることを特徴とする放射線画像撮影装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、第1の変換素子を有する画素を複数備える変換部を基板の放射線が入射する側に有し、前記変換部に入射した放射線量に応じて画像情報を出力する放射線撮像装置であって、前記変換部内に入射した放射線の照射量、前記変換部内への放射線の入射および放射線の停止のうち、少なくともいずれか1つを検出するための第2の変換素子を有し、前記第2の変換素子は、前記基板の放射線が入射する側で、前記変換部内の隣接する画素の前記第1の変換素子の間に、一方の幅が前記画素のピッチよりも小さい形状で配置されていることを特徴とする放射線撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4217443号公報
【特許文献2】特許第4217506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に開示されている技術では、放射線を検出するためのセンサが画像形成用の画素間に埋め込まれているため、当該センサにより一時的に光電変換した電荷が蓄積されることとなる。この結果、これらの技術では、電荷のしみだし(ブルーミング)や、浮遊容量による誘導電荷等が発生し、これに起因して、撮影画像の品質が低下してしまう場合がある、という問題点があった。なお、この問題点は、放射線検出器による画素ピッチが小さくなるほど顕著に表れる。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することのできる放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、プログラムおよび放射線画像撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線画像撮影装置は、放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器と、前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々にバイアス電圧を印加する印加手段と、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0010】
請求項1記載の放射線画像撮影装置によれば、放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器の前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々に、印加手段によってバイアス電圧が印加される。
【0011】
ここで、本発明では、制御手段により、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段が制御される。
【0012】
このように、請求項1に記載の放射線画像撮影装置によれば、放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で当該放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように制御しているので、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【0013】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記第1状態は、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加され、かつ前記放射線画像取得用画素にバイアス電圧が印加されない状態であり、前記第2状態は、前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下され、かつ前記放射線画像取得用画素にバイアス電圧が印加される状態であるものとしてもよい。これにより、放射線画像取得用画素における暗電流の影響を抑制することができる結果、撮影画像の品質の低下を、より抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記制御手段が、前記第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量の増加の勾配(増加率)が予め定められた第2閾値以上である場合に前記制御を行ってもよい。これにより、不要な処理の実行を回避することができる。
【0015】
特に、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記制御手段が、前記第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量の増加の勾配が前記第2閾値未満であり、かつ当該照射量が前記第1閾値より大きな第3閾値以上となった場合に前記制御を行ってもよい。これにより、より確実に放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【0016】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記制御手段が、放射線画像の撮影条件を示す撮影情報に基づいて前記制御を行うか否かを切り替えてもよい。これにより、放射線の照射量の増加の勾配に基づいて前記制御を行うか否かを切り替える場合に比較して、より簡易かつ確実に不要な処理の実行を回避することができる。
【0017】
また、本発明は、請求項6に記載の発明のように、前記複数の放射線検出用画素が、前記複数の放射線画像取得用画素の間に配置されていてもよい。この構成において、ブルーミングや、浮遊容量による誘導電荷が生じやすいため、本発明の効果を、より享受することができる。
【0018】
また、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記放射線検出用画素が、前記放射線画像取得用画素に対して放射線検出用の薄膜トランジスタが追加された画素であってもよく、請求項8に記載の発明のように、前記放射線検出用画素が、前記放射線画像取得用画素のセンサ部の領域の一部が放射線の照射状態を検出するための領域として分割されて構成された画素であってもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項9に記載の発明のように、前記第2状態における前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される状態が、前記放射線検出用画素に前記バイアス電圧より低く、かつ当該バイアス電圧が印加されない状態より高いバイアス電圧が印加される状態、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されない状態、および前記放射線検出用画素に逆極性のバイアス電圧が印加される状態の何れか1つの状態としてもよい。
【0020】
さらに、請求項9に記載の発明は、請求項10に記載の発明のように、前記第2状態における前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される状態が、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されない状態であり、前記印加手段が、前記放射線検出用画素および前記放射線画像取得用画素に共通のバイアス電圧を生成する電源部と、前記電源部によって生成された単一のバイアス電圧の供給先を、前記放射線検出用画素および前記放射線画像取得用画素の何れか一方に選択的に切り替える切替手段と、を備え、前記制御手段が、前記第1状態から前記第2状態への遷移を、前記切替手段への切り替えによって行ってもよい。これにより、放射線検出用画素および放射線画像取得用画素の各々別に印加手段を設ける場合に比較して、より低コストかつ省スペースで本発明を実現することができる。
【0021】
一方、上記目的を達成するために、請求項11に記載の放射線画像撮影システムは、放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器、および前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々にバイアス電圧を印加する印加手段を備えた放射線画像撮影装置と、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段を制御する制御装置と、を有している。
【0022】
請求項11に記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線画像撮影装置により、放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器の前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々に、印加手段によってバイアス電圧が印加される。
【0023】
ここで、本発明では、制御装置により、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段が制御される。
【0024】
このように、請求項11に記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で当該放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように制御しているので、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【0025】
一方、上記目的を達成するために、請求項12に記載のプログラムは、放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器、および前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々にバイアス電圧を印加する印加手段を備えた放射線画像撮影装置により実行されるプログラムであって、コンピュータを、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となったか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記照射量が予め定められた第1閾値以上になったと判定された時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段を制御する制御手段と、として機能させるためのものである。
【0026】
従って、本発明によれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【0027】
一方、上記目的を達成するために、請求項13に記載の放射線画像撮影方法は、放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器における前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となったか否かを判定する判定工程と、前記判定工程によって前記照射量が予め定められた第1閾値以上になったと判定された時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように制御する制御工程と、を有している。
【0028】
従って、本発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で当該放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように制御しているので、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の3画素部分の概略構成を示す断面模式図である。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分の信号出力部の構成を概略的に示した断面側面図である。
【図5】実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す平面図である。
【図6】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図7】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す断面側面図である。
【図8】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態に係るバイアス設定機能の説明に供する波形図である。
【図10】実施の形態に係るバイアス設定機能の説明に供する波形図である。
【図11】実施の形態に係る放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る撮影情報入力画面の一例を示す概略図である。
【図13】第1の実施の形態に係るカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】実施の形態に係るバイアス設定機能の説明に供する波形図である。
【図15】放射線画像の表面読取方式と裏面読取方式を説明するための断面側面図である。
【図16】第2の実施の形態に係るカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】実施の形態に係る放射線検出用画素の他の配置状態例を示す平面図である。
【図18】実施の形態に係る放射線検出用画素の他の形態例を示す回路図である。
【図19】実施の形態に係る放射線検出器の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、病院における放射線科部門で取り扱われる情報を統括的に管理するシステムである放射線情報システムに適用した場合の形態例について説明する。
【0032】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS」(Radiology Information System)という。)100の構成について説明する。
【0033】
RIS100は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS」(Hospital Information System)という。)の一部を構成する。
【0034】
RIS100は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」という。)140、RISサーバ150、および病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」という。)104を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク102に各々接続されて構成されている。なお、RIS100は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク102には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0035】
端末装置140は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置140を介して行われる。各端末装置140は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ150と病院内ネットワーク102を介して相互通信が可能とされている。
【0036】
一方、RISサーバ150は、各端末装置140からの撮影依頼を受け付け、撮影システム104における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース150Aを含んで構成されている。
【0037】
データベース150Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、撮影システム104で用いられる、後述する電子カセッテ40の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ40に関する情報、および電子カセッテ40を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ40を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
【0038】
撮影システム104は、RISサーバ150からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム104は、放射線源121(図2も参照。)から曝射条件に従った線量とされた放射線X(図6も参照。)を被検者に照射する放射線発生装置120と、被検者の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器20(図6も参照。)を内蔵する電子カセッテ40と、電子カセッテ40に内蔵されているバッテリを充電するクレードル130と、電子カセッテ40および放射線発生装置120を制御するコンソール110と、を備えている。
【0039】
コンソール110は、RISサーバ150からデータベース150Aに含まれる各種情報を取得して後述するHDD116(図8参照。)に記憶し、必要に応じて当該情報を用いて、電子カセッテ40および放射線発生装置120の制御を行う。
【0040】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム104の放射線撮影室180における各装置の配置状態の一例が示されている。
【0041】
同図に示すように、放射線撮影室180には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台160と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台164とが設置されており、立位台160の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置170とされ、臥位台164の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被検者の撮影位置172とされている。
【0042】
立位台160には電子カセッテ40を保持する保持部162が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ40が保持部162に保持される。同様に、臥位台164には電子カセッテ40を保持する保持部166が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ40が保持部166に保持される。
【0043】
また、放射線撮影室180には、単一の放射線源121からの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線源121を、水平な軸回り(図2の矢印a方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印b方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印c方向)に移動可能に支持する支持移動機構124が設けられている。ここで、支持移動機構124は、放射線源121を水平な軸回りに回動させる駆動源と、放射線源121を鉛直方向に移動させる駆動源と、放射線源121を水平方向に移動させる駆動源を各々備えている(何れも図示省略。)。
【0044】
一方、クレードル130には、電子カセッテ40を収納可能な収容部130Aが形成されている。
【0045】
電子カセッテ40は、未使用時にはクレードル130の収容部130Aに収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル130から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台160の保持部162に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台164の保持部166に保持される。
【0046】
ここで、本実施の形態に係る撮影システム104では、放射線発生装置120とコンソール110との間、および電子カセッテ40とコンソール110との間で、無線通信によって各種情報の送受信を行う。
【0047】
なお、電子カセッテ40は、立位台160の保持部162や臥位台164の保持部166で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、腕部,脚部等を撮影する際には、保持部に保持されていない状態で使用することもできる。
【0048】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る放射線検出器20の3画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0049】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線検出器20は、絶縁性の基板1上に、信号出力部14、センサ部13、およびシンチレータ8が順次積層しており、信号出力部14、センサ部13により画素が構成されている。画素は、基板1上に複数配列されており、各画素における信号出力部14とセンサ部13とが重なりを有するように構成されている。
【0050】
シンチレータ8は、センサ部13上に透明絶縁膜7を介して形成されており、上方(基板1の反対側)または下方から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ8を設けることで、被写体を透過した放射線を吸収して発光することになる。
【0051】
シンチレータ8が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器20によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0052】
シンチレータ8に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜700nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0053】
センサ部13は、上部電極6、下部電極2、および当該上下の電極間に配置された光電変換膜4を有し、光電変換膜4は、シンチレータ8が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0054】
上部電極6は、シンチレータ8により生じた光を光電変換膜4に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ8の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極6としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極6は、全画素で共通の一枚構成としてもよく、画素毎に分割してもよい。
【0055】
光電変換膜4は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ8から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜4であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ8による発光以外の電磁波が光電変換膜4に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜4で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0056】
光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ8で発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ8の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ8の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ8から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ8の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0057】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ8の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0058】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20に適用可能な光電変換膜4について具体的に説明する。
【0059】
本実施の形態に係る放射線検出器20における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極2,6と、当該電極2,6間に挟まれた有機光電変換膜4を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、および層間接触改良部位等の積み重ね、もしくは混合により形成することができる。
【0060】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0061】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0062】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0063】
この有機p型半導体および有機n型半導体として適用可能な材料、および光電変換膜4の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。なお、光電変換膜4は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0064】
光電変換膜4の厚みは、シンチレータ8からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜4の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜4に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0065】
なお、図3に示す放射線検出器20では、光電変換膜4は、全画素で共通の一枚構成であるが、画素毎に分割してもよい。
【0066】
下部電極2は、画素毎に分割された薄膜とする。下部電極2は、透明または不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。
【0067】
下部電極2の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0068】
センサ部13では、上部電極6と下部電極2の間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜4で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極6に移動させ、他方を下部電極2に移動させることができる。本実施の形態の放射線検出器20では、上部電極6に配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極6に印加されるものとする。また、バイアス電圧は、光電変換膜4で発生した電子が上部電極6に移動し、正孔が下部電極2に移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であってもよい。
【0069】
各画素を構成するセンサ部13は、少なくとも下部電極2、光電変換膜4、および上部電極6を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜3および正孔ブロッキング膜5の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0070】
電子ブロッキング膜3は、下部電極2と光電変換膜4との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極2から光電変換膜4に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0071】
電子ブロッキング膜3には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0072】
実際に電子ブロッキング膜3に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0073】
電子ブロッキング膜3の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0074】
正孔ブロッキング膜5は、光電変換膜4と上部電極6との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極6から光電変換膜4に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0075】
正孔ブロッキング膜5には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0076】
正孔ブロッキング膜5の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0077】
実際に正孔ブロッキング膜5に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0078】
なお、光電変換膜4で発生した電荷のうち、正孔が上部電極6に移動し、電子が下部電極2に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5の位置を逆にすればよい。また、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0079】
各画素の下部電極2下方の基板1の表面には信号出力部14が形成されている。図4には、信号出力部14の構成が概略的に示されている。
【0080】
同図に示すように、本実施の形態に係る信号出力部14は、下部電極2に対応して、下部電極2に移動した電荷を蓄積するコンデンサ9と、コンデンサ9に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタという場合がある。)10が形成されている。コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域は、平面視において下部電極2と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素における信号出力部14とセンサ部13とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器20(画素)の平面積を最小にするために、コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域が下部電極2によって完全に覆われていることが望ましい。
【0081】
コンデンサ9は、基板1と下部電極2との間に設けられた絶縁膜11を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極2と電気的に接続されている。これにより、下部電極2で捕集された電荷をコンデンサ9に移動させることができる。
【0082】
薄膜トランジスタ10は、ゲート電極15、ゲート絶縁膜16、および活性層(チャネル層)17が積層され、さらに、活性層17上にソース電極18とドレイン電極19が所定の間隔を開けて形成されている。
【0083】
活性層17は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層17を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0084】
活性層17を構成する非晶質酸化物としては、In、GaおよびZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、GaおよびZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、GaおよびZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0085】
活性層17を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0086】
薄膜トランジスタ10の活性層17を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部14におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0087】
また、活性層17をカーボンナノチューブで形成した場合、薄膜トランジスタ10のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低い薄膜トランジスタ10を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層17を形成する場合、活性層17に極微量の金属性不純物を混入するだけで、薄膜トランジスタ10の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0088】
ここで、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板1としては、半導体基板、石英基板、およびガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板や、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0089】
また、基板1には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0090】
一方、アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板を形成してもよい。
【0091】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ高強度、高弾性、低熱膨張である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板1を形成できる。
【0092】
本実施の形態では、基板1上に、信号出力部14、センサ部13、透明絶縁膜7を順に形成することによりTFT基板30を形成し、当該TFT基板30上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いてシンチレータ8を貼り付けることにより放射線検出器20を形成している。
【0093】
図5に示すように、TFT基板30には、上述したセンサ部13、コンデンサ9、および薄膜トランジスタ10を含んで構成される画素32が一定方向(図5の行方向)、および当該一定方向に対する交差方向(図5の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0094】
また、放射線検出器20には、上記一定方向(行方向)に延設され、各薄膜トランジスタ10をオン・オフさせるための複数本のゲート配線34と、上記交差方向(列方向)に延設され、オン状態の薄膜トランジスタ10を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線36と、が設けられている。
【0095】
放射線検出器20は、平板状で、かつ平面視において外縁に4辺を有する四辺形状、より具体的には、矩形状に形成されている。
【0096】
ここで、本実施の形態に係る放射線検出器20では、画素32の一部が放射線の照射状態を検出するために用いられており、残りの画素32によって放射線画像の撮影を行う。なお、以下では、放射線の照射状態を検出するための画素32を放射線検出用画素32Aといい、残りの画素32を放射線画像取得用画素32Bという。
【0097】
本実施の形態に係る放射線検出器20では、画素32における放射線検出用画素32Aを除いた放射線画像取得用画素32Bにより放射線画像の撮影を行うため、放射線検出用画素32Aの配置位置における放射線画像の画素情報を得ることができない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20では、放射線検出用画素32Aを分散するように配置する一方、コンソール110により、放射線検出用画素32Aの配置位置における放射線画像の画素情報を、当該放射線検出用画素32Aの周囲に位置する放射線画像取得用画素32Bにより得られた画素情報を用いて補間することにより生成する欠陥画素補正処理を実行する。
【0098】
そして、放射線の照射状態を検出するべく、本実施の形態に係る電子カセッテ40には、放射線源121からの放射線Xの照射量を示す情報(以下、「放射線量情報」という。)を取得する放射線量取得機能が設けられている。
【0099】
このため、本実施の形態に係る放射線検出器20には、図5に示すように、放射線検出用画素32Aにおけるコンデンサ9と薄膜トランジスタ10との接続部が接続された、当該コンデンサ9に蓄積された電荷を直接読み出すための直接読出配線38が上記一定方向(行方向)に延設されている。なお、本実施の形態に係る放射線検出器20では、上記一定方向に並ぶ複数の放射線検出用画素32Aに対して1本の直接読出配線38が割り当てられており、当該複数の放射線検出用画素32Aにおけるコンデンサ9と薄膜トランジスタ10との接続部が共通(単一)の直接読出配線38に接続されている。
【0100】
また、各放射線検出用画素32Aのセンサ部13は共通の信号線を介してスイッチ72Bの一方の端子に接続されており、各放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13は共通の信号線を介してスイッチ72Aの一方の端子に接続されている。このスイッチ72Aおよびスイッチ72Bの各々の他方の端子は後述する電源部70(図8参照。)に接続されており、放射線検出用画素32Aのセンサ部13へのバイアス電圧の印加/非印加および放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13へのバイアス電圧の印加/非印加を個別に制御することができる。
【0101】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、スイッチ72Aおよび72Bを放射線検出器20とは別体で設けているが、これに限らず、放射線検出器20に一体的に設ける形態としてもよい。
【0102】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成について説明する。図6には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成を示す斜視図が示されている。
【0103】
同図に示すように、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、放射線を透過させる材料からなる筐体41を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ40は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ40を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ40を繰り返し続けて使用することができる。
【0104】
筐体41の内部には、種々の部品を収容する空間Aが形成されており、当該空間A内には、放射線Xが照射される筐体41の照射面側から、被写体を透過した放射線Xを検出する放射線検出器20、および放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板43が順に配設されている。
【0105】
ここで、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、筐体41の平板状の一方の面の放射線検出器20の配設位置に対応する領域が放射線を検出可能な四辺形状の撮影領域41Aとされている。この筐体41の撮影領域41Aを有する面が電子カセッテ40における天板41Bとされており、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20が、TFT基板30が天板41B側となるように配置され、当該天板41Bの筐体41における内側の面(天板41Bの放射線が入射される面の反対側の面)に貼り付けられている。
【0106】
一方、図6に示すように、筐体41の内部の一端側には、放射線検出器20と重ならない位置(撮影領域41Aの範囲外)に、後述するカセッテ制御部58や電源部70(共に図8参照。)を収容するケース42が配置されている。
【0107】
筐体41は、電子カセッテ40全体の軽量化を図るために、例えば、カーボンファイバ(炭素繊維)、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ(セルロースミクロフィブリル)、または複合材料等で構成されている。
【0108】
複合材料としては、例えば、強化繊維樹脂を含む材料が用いられ、強化繊維樹脂には、カーボンやセルロース等が含まれる。具体的には、複合材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のもの、または発泡材の表面にCFRPをコーティングしたもの等が用いられる。なお、本実施の形態では、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のものが用いられている。これにより、筐体41をカーボン単体で構成した場合と比較して、筐体41の強度(剛性)を高めることができる。
【0109】
一方、図7に示すように、筐体41の内部には、天板41Bと対向する背面部41Cの内面に支持体44が配置されており、支持体44および天板41Bの間に、放射線検出器20および鉛板43が放射線Xの照射方向にこの順で並んで配置されている。支持体44は、軽量化の観点、寸法偏差を吸収する観点から、例えば、発泡材で構成されており、鉛板43を支持する。
【0110】
同図に示すように、天板41Bの内面には、放射線検出器20のTFT基板30を剥離可能に接着する接着部材80が設けられている。接着部材80としては、例えば、両面テープが用いられる。この場合、両面テープは、一方の接着面の接着力が他方の接着面の接着力よりも強くなるように形成されている。
【0111】
具体的には、接着力の弱い面(弱接着面)は、180°ピール接着力で1.0N/cm以下に設定されている。そして、接着力の強い面(強接着面)が天板41Bに接し、弱接着面がTFT基板30に接する。これにより、ねじ等の固定部材等によって放射線検出器20を天板41Bに固定する場合と比べて電子カセッテ40の厚みを薄くすることができる。また、衝撃や荷重で天板41Bが変形しても、放射線検出器20は剛性の高い天板41Bの変形に追従するため、大きな曲率(緩やかな曲がり)しか発生せず、局所的な低曲率で放射線検出器20が破損する可能性が低くなる。さらに、放射線検出器20が天板41Bの剛性の向上に寄与する。
【0112】
このように、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20を筐体41の天板41Bの内部に貼り付けているため、筐体41が、天板41B側と背面部41C側とで2つに分離可能とされており、放射線検出器20を天板41Bに貼り付けたり、放射線検出器20を天板41Bから剥離したりする際には、筐体41を天板41B側と背面部41C側とで2つに分離した状態とされる。
【0113】
なお、本実施の形態では、放射線検出器20の天板41Bへの接着をクリーンルーム等で行わなくてもよい。なぜなら、放射線検出器20および天板41Bの間に放射線を吸収する金属片等の異物が混入した場合に、放射線検出器20を天板41Bから剥離して当該異物を除去できるからである。
【0114】
次に、図8を参照して、本実施の形態に係る撮影システム104の電気系の要部構成について説明する。
【0115】
同図に示すように、電子カセッテ40に内蔵された放射線検出器20は、隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ52が配置され、他辺側に第1信号処理部54が配置されている。TFT基板30の個々のゲート配線34はゲート線ドライバ52に接続され、TFT基板30の個々のデータ配線36は第1信号処理部54に接続されている。
【0116】
また、筐体41の内部には、画像メモリ56と、カセッテ制御部58と、無線通信部60と、を備えている。
【0117】
TFT基板30の各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ52からゲート配線34を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ10によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線36を伝送されて第1信号処理部54に入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0118】
図示は省略するが、第1信号処理部54は、個々のデータ配線36毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路およびサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線36を伝送された電気信号は増幅回路で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0119】
第1信号処理部54には画像メモリ56が接続されており、第1信号処理部54のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。
【0120】
画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。カセッテ制御部58はマイクロコンピュータを含んで構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えており、電子カセッテ40全体の動作を制御する。
【0121】
さらに、カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、放射線画像の撮影に関する制御を行うコンソール110などの外部装置と無線通信が可能とされており、コンソール110等との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0122】
一方、本実施の形態に係る放射線検出器20は、前述した放射線量取得機能を実現するために、TFT基板30を隔ててゲート線ドライバ52の反対側に第2信号処理部55が配置されており、TFT基板30の個々の直接読出配線38は第2信号処理部55に接続されている。
【0123】
第2信号処理部55は、直接読出配線38毎に設けられた増幅器およびA/D変換器を備えており、カセッテ制御部58と接続されている。第2信号処理部55は、カセッテ制御部58からの制御により、所定の周期で各直接読出配線38のサンプリングを行って各直接読出配線38を伝送される電気信号をデジタルデータに変換し、変換したデジタルデータを順次、カセッテ制御部58へ出力する。この各直接読出配線38毎のデジタルデータの合算値が放射線量を示すものであり、前述した放射線量情報に相当する。
【0124】
また、カセッテ制御部58には、前述したスイッチ72Aおよびスイッチ72Bの制御端子が接続されており、カセッテ制御部58は、スイッチ72Aおよびスイッチ72Bの開閉状態を個別に制御することができる。
【0125】
また、電子カセッテ40には電源部70が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ52、第1信号処理部54、第2信号処理部55、画像メモリ56、無線通信部60、カセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ等)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ40の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図8では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0126】
一方、図8に示すように、コンソール110は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ111と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル112と、を備えている。
【0127】
また、本実施の形態に係るコンソール110は、装置全体の動作を司るCPU113と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM114と、各種データを一時的に記憶するRAM115と、各種データを記憶して保持するHDD(ハードディスク・ドライブ)116と、ディスプレイ111への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ117と、操作パネル112に対する操作状態を検出する操作入力検出部118と、を備えている。また、コンソール110は、無線通信により、放射線発生装置120との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行うと共に、電子カセッテ40との間で画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部119を備えている。
【0128】
CPU113、ROM114、RAM115、HDD116、ディスプレイドライバ117、操作入力検出部118、および無線通信部119は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU113は、ROM114、RAM115、HDD116へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ117を介したディスプレイ111への各種情報の表示の制御、および無線通信部119を介した放射線発生装置120および電子カセッテ40との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU113は、操作入力検出部118を介して操作パネル112に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0129】
一方、放射線発生装置120は、放射線源121と、コンソール110との間で曝射条件等の各種情報を送受信する無線通信部123と、受信した曝射条件に基づいて放射線源121を制御する線源制御部122と、を備えている。
【0130】
線源制御部122もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件等を記憶する。このコンソール110から受信する曝射条件には管電圧、管電流等の情報が含まれている。線源制御部122は、受信した曝射条件に基づいて放射線源121から放射線Xを照射させる。
【0131】
ところで、電子カセッテ40により放射線画像の撮影を実行する際に、放射線検出用画素32Aのセンサ部13に対してバイアス電圧を印加し続けると、放射線検出用画素32Aにおいて光電変換された電荷が蓄積されることとなる。この結果、電荷のしみだし(ブルーミング)や、浮遊容量による誘導電荷等が発生し、これに起因して撮影画像の品質が低下してしまう場合がある。
【0132】
そこで、本実施の形態に係る電子カセッテ40には、一例として図9に示すように、放射線画像の撮影前には、放射線検出用画素32Aのセンサ部13にバイアス電圧を印加する一方、放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13にはバイアス電圧を印加せず(以下、「第1状態」という。)、放射線Xの照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で、放射線検出用画素32Aのセンサ部13にバイアス電圧を印加せず、放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13にバイアス電圧を印加する(以下、「第2状態」という。)ように制御するバイアス切替機能が設けられている。なお、このバイアス切替機能において、放射線画像の撮影前に放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13にバイアス電圧を印加しないのは、当該画素における暗電流の発生を抑制するためである。
【0133】
ここで、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、上記第1閾値として、放射線の照射量が当該閾値以上となった場合に放射線Xの照射が開始されたと見なすものとして予め定められた値を適用しているが、これに限らず、この放射線Xの照射開始検出用の閾値より大きな他の値を適用する形態としてもよい。
【0134】
また、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、一例として図10に示すように、放射線Xの照射量の増加の勾配(増加率)が予め定められた第2閾値以上である場合に、バイアス切替機能を働かせるものとされている。これは、放射線Xの照射量の増加の勾配が小さいほど、ブルーミングや誘導電荷の発生量が少なく、バイアス切替機能を働かせる必要がないためである。このように、不要なバイアス切替機能の実行を回避することにより、電子カセッテ40からの発熱や電子カセッテ40の消費電力を抑制することができる。
【0135】
なお、放射線画像の動画像の撮影時は、静止画像に比較して高画質が要求されないこと、被検者に対する放射線の被曝量を低減させること等のために、静止画像の撮影時に比較して放射線の照射量を著しく少なくする(1/100(100分の1)から1/1000(1000分の1)程度)ことが一般的であるため、動画撮影時においてはバイアス切替機能を働かせないようにする形態としてもよい。
【0136】
次に、本実施の形態に係る撮影システム104の作用を説明する。
【0137】
まず、図11を参照して、放射線画像の撮影を行う際のコンソール110の作用を説明する。なお、図11は、操作パネル112を介して実行する旨の指示入力が行われた際にコンソール110のCPU113によって実行される放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM114の所定領域に予め記憶されている。
【0138】
同図のステップ300では、予め定められた撮影情報入力画面をディスプレイ111により表示させるようにディスプレイドライバ117を制御し、次のステップ302にて所定情報の入力待ちを行う。
【0139】
図12には、上記ステップ300の処理によってディスプレイ111により表示される撮影情報入力画面の一例が示されている。同図に示すように、本実施の形態に係る撮影情報入力画面では、これから放射線画像の撮影を行う被検者の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、および撮影時の放射線Xの曝射条件(本実施の形態では、放射線Xを曝射する際の管電圧および管電流)の入力を促すメッセージと、これらの情報の入力領域が表示される。
【0140】
同図に示す撮影情報入力画面がディスプレイ111に表示されると、撮影者は、撮影対象とする被検者の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、および曝射条件を、各々対応する入力領域に操作パネル112を介して入力する。
【0141】
そして、撮影者は、被検者と共に放射線撮影室180に入室し、撮影時の姿勢が立位または臥位である場合は、対応する立位台160の保持部162または臥位台164の保持部166に電子カセッテ40を保持させると共に放射線源121を対応する位置に位置決めした後、被検者を所定の撮影位置に位置(ポジショニング)させる。これに対し、撮影対象部位が腕部、脚部等の電子カセッテ40を保持部に保持させない状態で放射線画像の撮影を行う場合に、撮影者は、当該撮影対象部位を撮影可能な状態に被検者、電子カセッテ40、および放射線源121を位置決め(ポジショニング)する。
【0142】
その後、撮影者は、放射線撮影室180を退室し、上記撮影情報入力画面の下端近傍に表示されている終了ボタンを、操作パネル112を介して指定する。撮影者によって終了ボタンが指定されると、上記ステップ302が肯定判定となってステップ304に移行する。
【0143】
ステップ304では、上記撮影情報入力画面において入力された情報(以下、「撮影情報」という。)を電子カセッテ40に無線通信部119を介して送信した後、次のステップ306にて、上記撮影情報に含まれる曝射条件を放射線発生装置120へ無線通信部119を介して送信することにより当該曝射条件を設定する。これに応じて放射線発生装置120の線源制御部122は、受信した曝射条件での曝射準備を行う。
【0144】
次のステップ308では、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置120へ無線通信部119を介して送信する。
【0145】
これに応じて、放射線源121は、放射線発生装置120がコンソール110から受信した曝射条件に応じた管電圧および管電流での放射線Xの射出を開始する。放射線源121から射出された放射線Xは、被検者を透過した後に電子カセッテ40に到達する。
【0146】
一方、電子カセッテ40のカセッテ制御部58は、前述した放射線量取得機能によって放射線量情報を取得し、取得した放射線量情報により示される放射線量が、放射線の照射が開始されたことを検出するための値として予め定められた第1閾値以上となるまで待機する。次いで、電子カセッテ40は、放射線画像の撮影動作を開始した後、放射線Xの照射が開始されてからの経過期間が、当該放射線Xの照射期間として予め定められた期間(以下、「照射停止期間」という。)に達した時点で撮影動作を停止すると共に、曝射停止情報をコンソール110に送信する。
【0147】
そこで、次のステップ310では、上記曝射停止情報の受信待ちを行い、次のステップ312にて、放射線Xの曝射の停止を指示する指示情報を放射線発生装置120に無線通信部119を介して送信する。これに応じて、放射線源121からの放射線Xの曝射が停止される。
【0148】
一方、電子カセッテ40は、放射線画像の撮影動作を停止すると、当該撮影によって得られた画像データをコンソール110に送信する。
【0149】
そこで、次のステップ314では、上記画像データが電子カセッテ40から受信されるまで待機し、次のステップ316にて、受信した画像データに対し、前述した欠陥画素補正処理を施した後、シェーディング補正等の各種の補正を行う画像処理を実行する。
【0150】
次のステップ318では、上記画像処理が行われた画像データ(以下、「補正画像データ」という。)をHDD116に記憶し、次のステップ320にて、補正画像データにより示される放射線画像を、確認等を行うためにディスプレイ111によって表示させるようにディスプレイドライバ117を制御する。
【0151】
次のステップ322では、補正画像データをRISサーバ150へ病院内ネットワーク102を介して送信し、その後に本放射線画像撮影処理プログラムを終了する。なお、RISサーバ150へ送信された補正画像データはデータベース150Aに格納され、医師が撮影された放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる。
【0152】
次に、図13を参照して、電子カセッテ40の作用を説明する。なお、図13は、コンソール110から上記撮影情報が受信された際に電子カセッテ40のカセッテ制御部58におけるCPU58Aにより実行されるカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ58Bの所定領域に予め記憶されている。
【0153】
同図のステップ400では、前述した第1状態となるようにスイッチ72Aおよびスイッチ72Bの接続状態を制御し、次のステップ402では、前述した放射線量取得機能により放射線量情報を取得し、次のステップ404にて、取得した放射線量をメモリ58Bに記憶する。次のステップ406では、取得した情報により示される放射線量が前述した第1閾値以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ402に戻る一方、肯定判定となった場合には放射線源121からの放射線Xの曝射が開始されたものと見なしてステップ408に移行する。
【0154】
ステップ408では、上記ステップ404の処理によってメモリ58Bに記憶されている放射線量の増加の勾配を導出し、次のステップ410にて、導出した勾配が前述した第2閾値以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ412に移行する。
【0155】
ステップ412では、前述した第2状態となるようにスイッチ72Aおよびスイッチ72Bの接続状態を制御し、その後にステップ416に移行する。
【0156】
一方、上記ステップ410において否定判定となった場合にはステップ414に移行し、放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13にバイアス電圧を印加させるべく、スイッチ72Aを接続状態とするように制御した後、ステップ416に移行する。
【0157】
ステップ416では、放射線画像の撮影動作を開始し、次のステップ418にて、放射線Xの照射が開始されてからの経過期間が前述した照射停止期間となったか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ420に移行する。
【0158】
ステップ420では、放射線検出用画素32Aのセンサ部13にバイアス電圧が印加されているか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ418に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ422に移行して、前述した放射線量取得機能により放射線量情報を取得する。
【0159】
次のステップ424では、上記ステップ422の処理によって取得した放射線量を累積し、次のステップ426にて、それまでに累積した放射線量が、上記第1閾値より大きく、かつ放射線検出用画素32Aのセンサ部13へのバイアス電圧の印加を遮断させるための閾値として定められた第3閾値以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ428に移行する。
【0160】
ステップ428では、放射線検出用画素32Aのセンサ部13へのバイアス電圧の印加を遮断させるべく、スイッチ72Bを切断状態となるように制御した後、上記ステップ418に戻る。なお、上記ステップ426において否定判定となった場合には何ら処理を行うことなく、上記ステップ418に戻る。
【0161】
そして、上記ステップ418において肯定判定となった時点で、放射線Xの累積照射量が当該放射線Xの曝射を停止させる量に達したものと見なしてステップ430に移行する。
【0162】
ステップ430では、上記ステップ416の処理によって開始した撮影動作を停止し、次のステップ432にて、前述した曝射停止情報をコンソール110に無線通信部60を介して送信する。
【0163】
次のステップ434では、ゲート線ドライバ52を制御してゲート線ドライバ52から1ラインずつ順に各ゲート配線34にオン信号を出力させ、各ゲート配線34に接続された各薄膜トランジスタ10を1ラインずつ順にオンさせる。
【0164】
放射線検出器20は、各ゲート配線34に接続された各薄膜トランジスタ10を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各コンデンサ9に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線36に流れ出す。各データ配線36に流れ出した電気信号は第1信号処理部54でデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ56に記憶される。
【0165】
そこで、本ステップ434では、画像メモリ56に記憶された画像データを読み出し、次のステップ436にて、読み出した画像データをコンソール110に無線通信部60を介して送信した後、本カセッテ撮影処理プログラムを終了する。
【0166】
なお、本カセッテ撮影処理プログラムでは、上記第1状態で放射線検出用画素32Aにより検出された放射線Xの照射量の増加の勾配が第2閾値未満であり、かつ当該照射量が第1閾値より大きな第3閾値以上となった場合には、ステップ428の処理によって、一例として図14に示すように、放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13へのバイアス電圧の印加の開始から若干の遅れをもって、放射線検出用画素32Aのセンサ部13へのバイアス電圧の印加が遮断されることになる。従って、この場合にも、ブルーミングや、浮遊容量による誘導電荷等の発生に起因する撮影画像の品質の低下を抑制する効果を或る程度は得ることができる。
【0167】
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、図7に示すように、放射線検出器20がTFT基板30側から放射線Xが照射されるように内蔵されている。
【0168】
ここで、放射線検出器20は、図15に示すように、シンチレータ8が形成された側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の裏面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式とされた場合、シンチレータ8の同図上面側(TFT基板30の反対側)でより強く発光し、TFT基板30側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の表面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式とされた場合、TFT基板30を透過した放射線がシンチレータ8に入射してシンチレータ8のTFT基板30側がより強く発光する。TFT基板30に設けられた各センサ部13には、シンチレータ8で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器20は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板30に対するシンチレータ8の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0169】
また、放射線検出器20は、光電変換膜4を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜4で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20は、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも光電変換膜4による放射線の吸収量が少ないため、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFT基板30を透過してシンチレータ8に到達するが、このように、TFT基板30の光電変換膜4を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜4での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
【0170】
また、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板1を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板1は放射線の吸収量が少ないため、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0171】
また、本実施の形態によれば、図7に示すように、放射線検出器20をTFT基板30が天板41B側となるように筐体41内の天板41Bに貼り付けているが、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体の剛性が高いため、筐体41の天板41Bを薄く形成することができる。また、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体が可撓性を有するため、撮影領域41Aに衝撃が加わった場合でも放射線検出器20が破損しづらい。
【0172】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で当該放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されない第2状態に遷移するように制御しているので、放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【0173】
また、本実施の形態では、前記第1状態を、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加され、かつ前記放射線画像取得用画素にバイアス電圧が印加されない状態とし、前記第2状態を、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されず、かつ前記放射線画像取得用画素にバイアス電圧が印加される状態としているので、放射線画像取得用画素における暗電流の影響を抑制することができる結果、撮影画像の品質の低下を、より抑制することができる。
【0174】
また、本実施の形態では、前記第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量の増加の勾配が予め定められた第2閾値以上である場合に前記制御を行っているので、不要な処理の実行を回避することができる。
【0175】
特に、本実施の形態では、前記第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量の増加の勾配が前記第2閾値未満であり、かつ当該照射量が前記第1閾値より大きな第3閾値以上となった場合に前記制御を行っているので、より確実に放射線検出用画素による蓄積電荷に起因する撮影画像の品質の低下を抑制することができる。
【0176】
さらに、本実施の形態では、前記複数の放射線検出用画素が、前記複数の放射線画像取得用画素の間に配置されているので、本発明の効果を、より享受することができる。
【0177】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について詳細に説明する。なお、本第2の実施の形態に係る撮影システム104の構成は、上記第1の実施の形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本第2の実施の形態に係る放射線画像の撮影を行う際のコンソール110の作用も上記第1の実施の形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0178】
以下、図16を参照して、本第2の実施の形態に係る電子カセッテ40の作用を説明する。なお、図16は、コンソール110から上記撮影情報が受信された際に電子カセッテ40のカセッテ制御部58におけるCPU58Aにより実行されるカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ58Bの所定領域に予め記憶されている。また、同図における図13と同一の処理を行うステップには図13と同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0179】
同図のステップ409では、受信した撮影情報に基づいて、放射線検出器20の各センサ部13に対するバイアス電圧の印加状態を前述した第1状態から第2状態へ遷移させる必要があるか否かを決定する。なお、ここでは、上記撮影情報に含まれる、撮影時の放射線Xの曝射条件(本実施の形態では、放射線Xを曝射する際の管電圧および管電流)に基づいて放射線Xの照射量の増加の勾配を予測し、当該勾配が前述した第2閾値以上であるか否かを判断することにより第2状態に遷移させる必要があるか否かを決定しているが、これに限らず、例えば、撮影情報に動画撮影および静止画撮影の何れの撮影を行うのかを示す情報を含めておき、静止画撮影を行う場合に第2状態に遷移させるものと決定する形態等としてもよい。
【0180】
ステップ411では、上記ステップ409の処理による決定結果が第2状態への遷移を行う必要があるとの結果であったか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ412に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ414に移行する。
【0181】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、上記第1の実施の形態と略同様の効果を奏することができると共に、放射線画像の撮影条件を示す撮影情報に基づいて第2状態に遷移させる制御を行うか否かを切り替えているので、放射線の照射量の増加の勾配に基づいて前記制御を行うか否かを切り替える場合に比較して、より簡易かつ確実に不要な処理の実行を回避することができる。
【0182】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0183】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0184】
例えば、上記各実施の形態では、一例として図17(A)に示すように、放射線検出用画素32Aとして放射線画像取得用画素32Bの一部を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図17(B)に示すように、放射線検出用画素32Aを、放射線画像取得用画素32Bのセンサ部の領域の一部が放射線の照射状態を検出するための領域として分割されて構成された画素であるものとしてもよい。この場合、放射線検出用画素32Aが設けられた位置に対応する放射線画像取得用画素32Bの面積が小さくなるため、当該画素の感度は低減するものの、当該画素も放射線画像の検出用として用いることができるため、放射線画像の品質を向上させることができる。
【0185】
また、図18に示すように、放射線検出用画素32Aとして、放射線画像取得用画素32Bに対して、薄膜トランジスタ10と同様の構成とされた薄膜トランジスタ12が追加された画素32Cを適用してもよい。なお、この構成では、放射線の照射状態を検出する際に薄膜トランジスタ12に対してバイアス電圧を印加する。また、この形態では、放射線が照射されると薄膜トランジスタ12のチャネル部に光が照射され、薄膜トランジスタ12のオフ電流値が高くなり、リーク電流が増加する。この電流値をモニタリングすることで放射線の照射開始、照射量、および照射終了を検出することができる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0186】
また、上記各実施の形態では、第2状態における放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される状態として、放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されない状態を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線検出用画素に前記バイアス電圧より低く、かつ当該バイアス電圧が印加されない状態より高いバイアス電圧が印加される状態、および放射線検出用画素に逆極性のバイアス電圧が印加される状態の何れか一方の状態を適用する形態としてもよい。これらによっても、上記各実施の形態と略同様の効果を奏することができる。
【0187】
また、上記各実施の形態では、図5に示すように、各放射線検出用画素32Aのセンサ部13と、各放射線画像取得用画素32Bのセンサ部13とを、各々異なる配線により電源部70に接続することにより、スイッチ72Aおよびスイッチ72Bによって個別に印加/非印加を切り替え可能とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図19に示すように、スイッチ72Aおよびスイッチ72Bに代えて1入力2出力の切替部72’を備え、当該切替部72’による切り替えにより、第1状態から第2状態へ遷移させる形態としてもよい。この場合、上記各実施の形態に比較して、上記遷移のための制御を簡易に行うことができる。
【0188】
また、上記各実施の形態では、電子カセッテ40において第1状態から第2状態への遷移の制御を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、コンソール110において上記遷移の制御を行う形態としてもよい。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0189】
また、上記各実施の形態では、放射線検出器20に設けられた画素32の一部を放射線検出用画素32Aとして用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線検出用画素32Aを、画素32とは別層として放射線検出器20に積層する形態としてもよい。この場合、欠陥画素が生じることがないため、上記各実施の形態に比較して、放射線画像の品質を向上させることができる。
【0190】
また、放射線検出器20のセンサ部13として、光電変換膜4を、有機光電変換材料を含む材料で構成した有機CMOSセンサを用いてもよく、放射線検出器20のTFT基板30として、薄膜トランジスタ10としての有機材料を含む有機トランジスタを、可撓性を有するシート上にアレイ状に配列した有機TFTアレイ・シートを用いてもよい。上記の有機CMOSセンサは、例えば、特開2009−212377号公報に開示されている。また、上記の有機TFTアレイ・シートは、例えば「日本経済新聞、“東京大学、「ウルトラフレキシブル」な有機トランジスタを開発”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.nikkei.com/tech/trend/article/g=96958A9C93819499E2EAE2E0E48DE2EAE3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E0E7E2E6E0E2E3E2E2E0E2E0>」に開示されている。
【0191】
放射線検出器20のセンサ部13としてCMOSセンサを用いる場合、高速に光電変換を行うことができる利点や、基板を薄くすることができる結果、表面読取方式を採用した場合に放射線の吸収を抑制することができると共に、マンモグラフィによる撮影にも好適に適用することができる利点がある。
【0192】
また、上記各実施の形態では、センサ部13が、シンチレータ8で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部13として有機光電変換材料を含まずに構成されたものを適用する形態としてもよい。
【0193】
また、上記各実施の形態では、電子カセッテ40の筐体41の内部にカセッテ制御部58や電源部70を収容するケース42と放射線検出器20とを重ならないように配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、放射線検出器20とカセッテ制御部58や電源部70を重なるように配置してもよい。
【0194】
また、上記各実施の形態では、電子カセッテ40とコンソール110との間、放射線発生装置120とコンソール110との間で、無線にて通信を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、これらの少なくとも一方を有線にて通信を行う形態としてもよい。
【0195】
また、上記各実施の形態では、放射線としてX線を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、γ線等の他の放射線を適用する形態としてもよい。
【0196】
その他、上記各実施の形態で説明したRIS100の構成(図1参照。)、放射線撮影室の構成(図2参照。)、電子カセッテ40の構成(図3〜図7参照。)、撮影システム104の構成(図8参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0197】
また、上記各実施の形態で説明した撮影情報の構成も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な情報を削除したり、新たな情報を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0198】
また、上記各実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図11,図13,図16参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【0199】
さらに、上記実施の形態で説明した撮影情報入力画面の構成(図12参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な情報を削除したり、新たな情報を追加したりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0200】
20 放射線検出器
32 画素
32A 放射線検出用画素
32B 放射線画像取得用画素
40 電子カセッテ
58 カセッテ制御部
58A CPU(制御手段)
70 電源部(印加手段)
72A,72B スイッチ(切替手段)
72’ 切替部(切替手段)
X 放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器と、
前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々にバイアス電圧を印加する印加手段と、
前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段を制御する制御手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記第1状態は、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加され、かつ前記放射線画像取得用画素にバイアス電圧が印加されない状態であり、
前記第2状態は、前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下され、かつ前記放射線画像取得用画素にバイアス電圧が印加される状態である
請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量の増加の勾配が予め定められた第2閾値以上である場合に前記制御を行う
請求項1または請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量の増加の勾配が前記第2閾値未満であり、かつ当該照射量が前記第1閾値より大きな第3閾値以上となった場合に前記制御を行う
請求項3記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、放射線画像の撮影条件を示す撮影情報に基づいて前記制御を行うか否かを切り替える
請求項1から請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記複数の放射線検出用画素は、前記複数の放射線画像取得用画素の間に配置されている
請求項1から請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記放射線検出用画素は、前記放射線画像取得用画素に対して放射線検出用の薄膜トランジスタが追加された画素である
請求項1から請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記放射線検出用画素は、前記放射線画像取得用画素のセンサ部の領域の一部が放射線の照射状態を検出するための領域として分割されて構成された画素である
請求項1から請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記第2状態における前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される状態は、前記放射線検出用画素に前記バイアス電圧より低く、かつ当該バイアス電圧が印加されない状態より高いバイアス電圧が印加される状態、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されない状態、および前記放射線検出用画素に逆極性のバイアス電圧が印加される状態の何れか1つの状態である
請求項1から請求項8の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記第2状態における前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される状態は、前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加されない状態であり、
前記印加手段は、
前記放射線検出用画素および前記放射線画像取得用画素に共通のバイアス電圧を生成する電源部と、
前記電源部によって生成された単一のバイアス電圧の供給先を、前記放射線検出用画素および前記放射線画像取得用画素の何れか一方に選択的に切り替える切替手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1状態から前記第2状態への遷移を、前記切替手段への切り替えによって行う
請求項9記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器、および前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々にバイアス電圧を印加する印加手段を備えた放射線画像撮影装置と、
前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となった時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段を制御する制御装置と、
を有する放射線画像撮影システム。
【請求項12】
放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器、および前記放射線検出用画素の各々および前記放射線画像取得用画素の各々にバイアス電圧を印加する印加手段を備えた放射線画像撮影装置により実行されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となったか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記照射量が予め定められた第1閾値以上になったと判定された時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように前記印加手段を制御する制御手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
放射線の照射状態を検出するための放射線検出用画素と放射線画像を撮影するための放射線画像取得用画素とが各々複数配置された放射線検出器における前記放射線検出用画素にバイアス電圧が印加された第1状態で前記放射線検出用画素により検出された放射線の照射量が予め定められた第1閾値以上となったか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程によって前記照射量が予め定められた第1閾値以上になったと判定された時点で前記放射線検出用画素に印加されたバイアス電圧が低下される第2状態に遷移するように制御する制御工程と、
を有する放射線画像撮影方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−72723(P2013−72723A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211355(P2011−211355)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】